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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155558
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】農業用支柱挿入機
(51)【国際特許分類】
   A01G 17/16 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A01G17/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070365
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 文治
(72)【発明者】
【氏名】小西 健斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼吉 隼人
(57)【要約】
【課題】本発明は、土壌に対する農業用支柱の挿入作業の効率化を図ることのできる農業用支柱挿入機を提供する。
【解決手段】本発明は、起立状態の農業用支柱Pを上下方向の移動を許容した状態で支持可能な第一支持手段30と、第一支持手段30に支持された農業用支柱を下方に向けて付勢する付勢手段32と、農業用支柱Pを支持可能な第二支持手段であって、農業用支柱Pを傾倒状態で支持する第一姿勢F1と農業用支柱Pを起立状態で支持する第二姿勢F2との間で姿勢変更可能な第二支持手段33と、を備え、第一支持手段30は、第二姿勢F2の第二支持手段33によって支持された農業用支柱Pを受け取り可能に構成され、第二支持手段33は、第一支持手段30が該第二支持手段33から受け取った農業用支柱Pを支持した状態で、第一姿勢F1に姿勢変更可能になる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立状態の農業用支柱を上下方向の移動を許容した状態で支持可能な第一支持手段と、
前記第一支持手段に支持された前記農業用支柱に対して少なくとも下方に向けて付勢する付勢手段と、
前記農業用支柱を支持可能な第二支持手段であって、上下方向と直交する方向に延びる軸を中心にして回動可能に設けられ、該回動によって前記農業用支柱を傾倒状態で支持する第一姿勢と前記農業用支柱を起立状態で支持する第二姿勢との間で姿勢変更可能な第二支持手段と、を備え、
前記第一支持手段は、前記第二姿勢の前記第二支持手段によって支持された前記農業用支柱を受け取り可能に構成され、
前記第二支持手段は、前記第一支持手段が該第二支持手段から受け取った前記農業用支柱を支持した状態で、前記第一姿勢に姿勢変更可能になる農業用支柱挿入機。
【請求項2】
前記付勢手段は、上下方向に移動可能な押圧片であって、前記第一支持手段に支持される前記農業用支柱の上端に対して上方から対向可能な押圧片と、
前記押圧片を上下方向に昇降させるアクチュエータと、を備える請求項1に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項3】
前記第二支持手段の姿勢を変更させる姿勢変更手段を備え、
前記姿勢変更手段は、前記第二支持手段に繋がる索条体であって、前記押圧片の上昇によって引っ張り力が作用する索条体を含み、前記押圧片が上限位置に到達した状態で前記第二支持手段を前記第二姿勢にする一方、前記押圧片が下限位置に到達した状態で前記第二支持手段を前記第一姿勢にする請求項2に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項4】
前記第一支持手段は、起立した前記農業用支柱の上端側を支持する上部支持部を含み、前記上部支持部は、前記押圧片に対して直接的又は間接的に連結されている請求項2に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項5】
前記上部支持部は、それぞれが前記農業用支柱の受け取り側に延びる一対のガイド体であって、少なくとも前記受け取り側の先端部が上下方向と直交する方向に接離可能な一対のガイド体と、前記一対のガイド体の互いの先端部が接近するように、前記一対のガイド体を付勢するガイド付勢手段と、を備え、
前記第二姿勢になる前記第二支持手段に支持される前記農業用支柱が、前記ガイド付勢手段の付勢に抗して前記一対のガイド体の先端部を離間させつつ該一対のガイド体間に進入可能に構成される請求項4に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項6】
前記第一支持手段は、起立した前記農業用支柱の下端を受ける支柱受部を含み、
前記支柱受部は、前記付勢手段による付勢力が前記農業用支柱を介して作用した状態で、前記農業用支柱を受ける位置から退避する請求項1に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項7】
前記第一支持手段は、前記農業用支柱の下端が前記支柱受部に受けられた状態で、該農業用支柱の下端部に対して少なくとも前記第二支持手段からの受け取り側で係止可能な係止体を含む請求項6に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項8】
前記農業用支柱の挿入予定位置であって、先行して前記土壌に挿入された前記農業用支柱の位置から所定距離離れた予定位置を作業者に知らせる位置報知手段を備える請求項1に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項9】
前記第一支持手段、前記第二支持手段、及び前記付勢手段を支持するベースと、前記ベ
ースを支持する車輪と、を備え、
前記ベースは、走行可能である請求項1~8のいずれか1項に記載の農業用支柱挿入機。
【請求項10】
前記第一支持手段、前記第二支持手段、及び前記付勢手段を支持するベースを備え、
前記ベースは、作業車両に連結可能に構成される請求項1~8のいずれか1項に記載の農業用支柱挿入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用支柱を土壌に挿し込む農業用支柱挿入機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、作物を直接的又は間接的に支える農業用支柱を土壌に打ち込む支柱打込み機が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
支柱打込み機は、長尺な農業用支柱を起立させた状態で把持する支柱把持手段と、支柱把持手段を昇降駆動する昇降手段とを備える。この支柱打込み機では、昇降手段が一本の農業用支柱を把持した支柱把持手段を下降させることで、土壌に対する打込力を農業用支柱に作用させ、農業用支柱を土壌に挿入する(打ち込む)ようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-237278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圃場に打ち込まれる農業用支柱の数は、作物の作付け量(作付け面積)に応じた数になり、作付け量が多くなるほど、農業用支柱の打ち込み量(挿入作業)が増えることになる。これに伴い、一本当たりの農業用支柱の挿入作業の効率化(時間短縮)が求められる。
【0006】
しかし、上記支柱打込み機では、一本の農業用支柱を土壌に挿入するに当たり、支柱把持手段への農業用支柱のセットから農業用支柱の土壌への挿入といった一連の工程が必要となる。そのため、従来の支柱打込み機では、農業用支柱の挿入(打ち込み)作業の効率化を図るには限界がある。
【0007】
そこで、本発明は、土壌に対する農業用支柱の挿入作業の効率化を図ることのできる農業用支柱挿入機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る農業用支柱挿入機は、起立状態の農業用支柱を上下方向の移動を許容した状態で支持可能な第一支持手段と、第一支持手段に支持された農業用支柱に対して少なくとも下方に向けて付勢する付勢手段と、農業用支柱を支持可能な第二支持手段であって、上下方向と直交する方向に延びる軸を中心にして回動可能に設けられ、該回動によって農業用支柱を傾倒状態で支持する第一姿勢と農業用支柱を起立状態で支持する第二姿勢との間で姿勢変更可能な第二支持手段と、を備え、第一支持手段は、第二姿勢の第二支持手段によって支持された農業用支柱を受け取り可能に構成され、第二支持手段は、第一支持手段が該第二支持手段から受け取った農業用支柱を支持した状態で、第一姿勢に姿勢変更可能になる。
【0009】
本発明の一態様として、付勢手段は、上下方向に移動可能な押圧片であって、第一支持手段に支持される農業用支柱の上端に対して上方から対向可能な押圧片と、押圧片を上下方向に昇降させるアクチュエータと、を備えてもよい。
【0010】
この場合、第二支持手段の姿勢を変更させる姿勢変更手段を備え、姿勢変更手段は、第
二支持手段に繋がる索条体であって、押圧片の上昇によって引っ張り力が作用する索条体を含み、押圧片が上限位置に到達した状態で第二支持手段を第二姿勢にする一方、押圧片が下限位置に到達した状態で第二支持手段を第一姿勢にするようにしてもよい。
【0011】
また、第一支持手段は、起立した農業用支柱の上端側を支持する上部支持部を含み、上部支持部は、押圧片に対して直接的又は間接的に連結されていてもよい。
【0012】
この場合、上部支持部は、それぞれが農業用支柱の受け取り側に延びる一対のガイド体であって、少なくとも受け取り側の先端部が上下方向と直交する方向に接離可能な一対のガイド体と、一対のガイド体の互いの先端部が接近するように、一対のガイド体を付勢するガイド付勢手段と、を備え、第二姿勢になる第二支持手段に支持される農業用支柱が、ガイド付勢手段の付勢に抗して一対のガイド体の先端部を離間させつつ該一対のガイド体間に進入可能に構成される。
【0013】
本発明の別の態様として、第一支持手段は、起立した農業用支柱の下端を受ける支柱受部を含み、支柱受部は、付勢手段による付勢力が農業用支柱を介して作用した状態で、農業用支柱を受ける位置から退避するようにしてもよい。
【0014】
この場合、第一支持手段は、農業用支柱の下端が支柱受部に受けられた状態で、該農業用支柱の下端部に対して少なくとも第二支持手段からの受け取り側で係止可能な係止体を含むことが好ましい。
【0015】
本発明のさらに別の態様として、農業用支柱の挿入予定位置であって、先行して土壌に挿入された農業用支柱の位置から所定距離離れた予定位置を作業者に知らせる位置報知手段を備えてもよい。
【0016】
また、本発明のさらに別の態様として、第一支持手段、第二支持手段、及び付勢手段を支持するベースと、ベースを支持する車輪と、を備え、ベースは、走行可能であってもよい。
【0017】
また、本発明の別の態様として、第一支持手段、第二支持手段、及び付勢手段を支持するベースを備え、ベースは、作業車両に連結可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、土壌に対する農業用支柱の挿入作業の効率化を図ることのできるといった優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、圃場に対する農業用支柱の配置を説明するための部分平面図である。
図2図2は、圃場に対する農業用支柱の配置を説明するための部分側面図である。
図3図3は、同実施形態に係る支柱挿脱装置の左側面図であって、作業車両に連結した状態の左側面図である。
図4図4は、同実施形態に係る支柱挿脱装置の右側面図であって、作業車両に連結した状態の右側面図である。
図5図5は、同実施形態に係る支柱挿脱装置を後方側から見た概略背面図である。
図6図6は、同実施形態に係る支柱挿脱装置の左側面図であって、第二支持手段を第二姿勢にした状態の左側面図である。
図7図7は、同実施形態に係る支柱挿脱装置の右側面図であって、支柱係合体を上限位置に位置させた状態の右側面図である。
図8図8は、同実施形態に係る支柱挿脱装置の斜め後方から見た概略全体斜視図である。
図9図9は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の上部支持部を斜め下方から見た斜視図である。
図10図10は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の上部支持部の平面図である。
図11図11は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の支柱受部の右側面図である。
図12図12は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の支柱受部の右側断面を含む部分拡大図であって、第二支持手段を第一姿勢にした状態を実線で示し、第二支持手段を第二姿勢にした状態を仮想線(二点鎖線)で示した部分拡大図である。
図13図13は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の要部を拡大した斜視図であって、第二支持手段の回転中心の近傍を左斜め前方から見た要部拡大斜視図である。
図14図14は、図13に示す部分を右斜め前方から見た斜視図である。
図15図15は、図13に示す部分を後方斜め上方から見た斜視図である。
図16図16は、図13に示す部分の側面図である。
図17図17は、図13に示す部分の平面図である。
図18図18は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)における第二支持手段の動作説明図であって、(a)は、第二支持手段が第一姿勢にある状態を示し、(b)は、第二支持手段が姿勢を変更している状態を示し、(c)は、第二支持手段が第二姿勢にある状態を示す。
図19図19は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)を支柱受部の右側断面を含む部分拡大図であって、農業用支柱を下方に向けて付勢した状態の部分拡大図である。
図20図20は、同実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)をの支柱受部の右側断面を含む部分拡大図であって、農業用支柱を下方に向けて付勢するとともに、支柱受部が農業用支柱の下方位置から退避する状態の部分拡大図である。
図21図21は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の要部を斜め右前方から見た斜視図である。
図22図22は、図21に示す部分の概略右側面図である。
図23図23は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の支柱係合体の平面図であって、支柱遊嵌部に農業用支柱を遊嵌できる姿勢(支柱係合体を水平方向に延びる姿勢)にした状態の平面図である。
図24図24は、図23に示す状態の正面図である。
図25図25は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の支柱係合体が農業用支柱を保持する状態(姿勢)の平面図である。
図26図26は、図25に示す状態の正面図である。
図27図27は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の支柱係合体の常態(農業用支柱の遊嵌を待つ状態)の平面図である。
図28図28は、図27に示す状態の正面図である。
図29図29は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の支持機構及びガイド手段の平面図である。
図30図30は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の支持機構の動作説明図である。
図31図31は、同実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)のガイド機構の動作説明図である。
図32図32は、本発明の他実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の背面図である。
図33図33は、本発明の別の実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の背面図である。
図34図34は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の概略左側面図である。
図35図35は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の概略右側面図である。
図36図36は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)における第二支持手段の動作説明図であって、(a)は、第二支持手段が第一姿勢にある状態を示し、(b)は、第二支持手段が姿勢を変更している状態を示し、(c)は、第二支持手段が第二姿勢にある状態を示す。
図37図37は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)における第二支持手段の動作説明図であって、(a)は、第二支持手段が第一姿勢にある状態を示し、(b)は、第二支持手段が姿勢を変更している状態を示し、(c)は、第二支持手段が第二姿勢にある状態を示す。
図38図38は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の支柱受部の説明図である。
図39図39は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱挿入部(農業用支柱挿入機)の左側面図である。
図40図40は、本発明のさらに別の実施形態に係る支柱引抜部(農業用支柱引抜機)の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る装置の説明に先立ち、かかる装置の使用の対象となる圃場について説明する。ここでは、長芋を育成する圃場を一例に説明する。
【0022】
図1に示すように、長芋を育成する圃場Fは、耕された土壌を有する畑であり、圃場F内において、一列又は複数列の畝Aが作られる。この畝Aに対して、複数の苗芋が畝Aの長手方向に間隔をあけて植え込まれる。なお、図1において、種芋を植え込む位置を×印で示している。長芋は、成長に伴い、蔓が成長する。これに伴い、長芋を育成する圃場Fにおいては、図1及び図2に示すように、畝Aに沿って、複数の農業用支柱(以下、単に支柱という)Pが立設され、複数の支柱Pに跨るように農業用ネットNが張設される。すなわち、長芋の蔓を支えるための農業用ネットNは、支柱Pに支えられるように張設される。
【0023】
図2に示すように、複数の支柱Pは、畝Aの長手方向で所定の間隔Lで配置される。また、複数の支柱Pのそれぞれは、土壌に対して地面(地表)から所定の深さDまで挿し込まれる。すなわち、複数の支柱Pのそれぞれは、農業用ネットNとともに該農業用ネットNに巻き付く蔓を支えた状態で倒れが防止される必要十分な深さDまで挿し込まれる。
【0024】
長芋を育成する圃場Fにおいて、隣り合う支柱Pの間隔Lは、概ね3mに設定される。支柱Pには、約3mの長さのものが採用され、該支柱Pが土壌に挿し込まれる深さDは、地面から約60cm~1mに設定される。これに伴い、長芋を育成する圃場Fにおいては、耕運機を用いて土壌を耕す際、土壌は、支柱Pを挿し込む深さで且つ長芋の生育に必要な深さまで耕される。一般的に、長芋を育成する圃場Fの土壌は、地面から1m以上の深さまで耕される。
【0025】
そして、長芋を収穫した後、農業用ネットNに巻き付いた蔓や、農業用ネットNが取り除かれ、支柱Pは、土壌から抜き取られる。その後、土壌の改質等が行われ、長芋の種芋を植え付ける時期になると、改めて上記の態様で支柱Pや農業用ネットNが設置される。
【0026】
なお、ここでは長芋を育成する圃場Fを一例にしているが、本発明に係る装置の対象とする圃場Fは、長芋を育成する圃場Fの他、トマト、キュウリ等の作物を育成する圃場Fも含まれる。すなわち、本発明に係る装置の対象とする圃場Fは、蔓や茎が延びる作物を育成し、蔓や茎を支柱Pで支持する必要のある作物を育成する圃場である。また、本発明に係る装置の対象とする圃場Fには、農業用ネットNを張設する圃場以外にも、蔓や茎を直接支持する支柱Pを設置する圃場も含まれる。
【0027】
本実施形態に係る装置は、上記のような土壌に対する支柱Pの挿し込みや抜き取りに活用される。すなわち、本実施形態に係る装置は、支柱Pを土壌に挿し込む農業用支柱挿入機としての機能と、土壌から支柱Pを引き抜く農業用支柱引抜機としての機能とを有する。
【0028】
これに伴い、以下の説明において、本装置については、支柱挿脱装置と称することとする。また、以下の説明において、支柱Pを土壌に挿し込む機能を発揮する部分(構成)を、支柱挿脱装置の一部として支柱挿入部と称するが、支柱挿入部は、単独の機能(装置)として農業用支柱挿入機と読み替えることができる。また、農業用支柱引抜機とし土壌から支柱Pを引き抜く機能を発揮する部分(構成)を、支柱挿脱装置の一部として支柱引抜部と称するが、支柱引抜部は、単独の機能(装置)として農業用支柱引抜機と読み替えることができる。
【0029】
図3図7に示すように、支柱挿脱装置2は、トラクタ等の作業車両1に連結される。すなわち、支柱挿脱装置2は、作業車両1の直進方向(上下方向と直交する方向(以下、第一方向という))の前部又は後部にある連結機構10を介し、該作業車両1に連結される。本実施形態において、支柱挿脱装置2は、作業車両1の後部に連結機構10として装備された三点リンク機構に連結される。
【0030】
支柱挿脱装置2は、図5に示すように、第一方向と直交する方向(以下、第二方向又は幅方向という。)の中央を境にして、該第二方向の一方側に支柱挿入部3を有し、該第二方向における他方側に支柱引抜部4を有する。具体的には、支柱挿入部3は、前後方向の後方側から見て左側に配置され、支柱引抜部4は、前後方向の後方側から見て右側に配置されている。
【0031】
これに伴い、支柱挿脱装置2は、第二方向の中央において、支柱挿入部3及び支柱引抜部4に対する共用の構成を有する。すなわち、本実施形態において、支柱挿入部3は、支柱引抜部4と共用の構成を有し、支柱引抜部4は、支柱挿入部3と共用の構成を有する。
【0032】
なお、以下の説明において、重複した説明を避けるべく、支柱挿入部3及び支柱引抜部4が共用する構成については、支柱挿脱装置2の構成として説明するが、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3又は支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4のものとして読み替え可能である。
【0033】
支柱挿脱装置2は、図5及び図8に示すように、作業車両1に連結可能なベースフレーム20と、上下方向に移動可能な昇降フレーム21と、昇降フレーム21を上下方向に昇降させるアクチュエータ22(図5参照)を備える。また、支柱挿脱装置2は、昇降フレーム21の上下方向の移動を案内する昇降ガイド手段23を備える。本実施形態において、支柱挿脱装置2は、アクチュエータ22を作動させる操作部24を備える(図3図4図6図7参照)。さらに、支柱挿脱装置2は、ベースフレーム20に連結されたサブフレーム25,26であって、アクチュエータ22及び昇降ガイド手段23を支持するサブフレーム25,26を備える。
【0034】
図8に示すように、ベースフレーム20は、ベース200と、ベース200に連結され、ベース200から上方に延びる支持柱201とを含む。ベース200は、外郭を画定する枠体202と、枠体202の開放部分の一部又は全部を閉じるプレート203とを有する。枠体202は、平面視矩形状に形成される。より具体的には、枠体202は、第一方向に間隔をあけて配置される一対の横梁202a,202aであって、それぞれが第二方向に延びる一対の横梁202a,202aと、それぞれが第一方向に延びる一対の縦梁202b,202bであって、第二方向に間隔をあけ、一対の横梁202a,202aの端部同士を繋ぐ一対の縦梁202b,202bとを含む。
【0035】
本実施形態において、横梁202a及び縦梁202bのそれぞれは、金属製の角管で構成され、互いの端部同士が溶接により接続されている。プレート203は、金属製であり、枠体202(横梁202a、縦梁202b)の下面に溶接されている。
【0036】
支持柱201は、一方の横梁202aから上方に延びている。すなわち、支持柱201は、一方の横梁202aに接続され、起立している。本実施形態において、ベースフレーム20は、支持柱201を一対有する。一対の支持柱201,201は、第二方向に間隔をあけて配置されている。これに伴い、ベースフレーム20は、一対の支持柱201,201を繋ぐ連結梁204を有する。連結梁204は、第二方向に延び、一対の支持柱201,201の上端部同士を繋いでいる。
【0037】
本実施形態において、ベースフレーム20は、連結梁204から上方に延びる一対の延長フレーム205,205であって、第二方向に間隔をあけて配置される一対の延長フレーム205,205と、一対の延長フレーム205,205を繋ぐ横フレーム206とを有する。
【0038】
一対の延長フレーム205,205は、第二方向から見てL字状に形成されている。すなわち、連結梁204から上方に延びて起立する第一部位205aと、第一部位205aの上端部から、該第一部位205aに対して第一方向に延びる第二部位205bであって、一方の横梁202a側から他方の横梁202a側に向けて延びる第二部位205bとを有する。
【0039】
本実施形態において、横フレーム206は、上下に二つ設けられている。二つの横フレーム206,206のうち、一つの横フレーム206は、延長フレーム205の第一部位205aに接続され、一対の延長フレーム205,205の第一部位205a,205a同士を繋いでいる。残りの一つの横フレーム206は、第一部位205aと第二部位205bとの境界部分に接続される。すなわち、横フレーム206は、一対の延長フレーム205,205の互いの角部同士を繋いでいる。横フレーム206及び第二部位205bは、ベース200(プレート203)上に起立状態で仮置きされる支柱Pの倒れ止めとして機能する(図1及び図2参照)。
【0040】
これに伴い、ベースフレーム20は、ベース200(プレート203)上に仮置きされる支柱Pが後方側に倒れるのを防止するための金属チェーン(図示しない)であって、一対の延長フレーム205,205のそれぞれの第二部位205bの先端に跨るように金属チェーンを配置可能に構成されている。すなわち、ベースフレーム20は、図5及び図8に示すように、一対の延長フレーム205,205のそれぞれの第二部位205bに金属チェーンを係止可能な係止片207を備える。本実施形態において、係止片207は、上
端で開放する切り欠き部207aを有する。係止片207は、切り欠き部207aに金属チェーンを構成する複数のリングのうちの一つのリングを、該リングの中心線と直交する方向で嵌め込むことで、切り欠き部207aに嵌め込まれたリングの両隣りにあるリングを係止する。
【0041】
本実施形態に係る支柱挿脱装置2は、サブフレーム25,26を一対有する。一対のサブフレーム25,26は、上下方向に間隔をあけて配置される。一対のサブフレーム25,26のそれぞれは、第一方向に延びる。具体的には、図8に示すように、一対のサブフレーム25,26のそれぞれは、第一方向に延びるアーム部250,260であって、第一方向に基端と先端とを有するアーム部250,260と、アーム部250,260の先端に接続された支持部251,261であって、昇降ガイド手段23を支持する支持部251,261とを備える。
【0042】
一対のサブフレーム25,26のうち、一方のサブフレーム25は、一方の横梁202aに連結され、他方のサブフレーム26は、連結梁204に連結される。具体的には、一方のサブフレーム25のアーム部250の基端は、一方の横梁202aの第二方向における中央部に連結され、他方のサブフレーム26のアーム部260の基端は、連結梁204の第二方向における中央部に連結される。
【0043】
一対のサブフレーム25,26は、ベース200の上側において、互いの支持部251,261を上下方向で対向させている。なお、本実施形態においては、他方のサブフレーム26のアーム部260が連結梁204に連結されているが、他方のサブフレーム26の支持部261の高さを連結梁204よりも高い位置に配置する必要があるため、他方のサブフレーム26のアーム部260は、途中部分に上方側に延びる部位を有する。具体的には、他方のサブフレーム26のアーム部260は、連結梁204から水平方向に延びる第一アーム部260aと、第一アーム部260aから斜め上方に延びる第二アーム部260bと、第二アーム部260bから水平方向に延びる第三アーム部260cとを有し、第三アーム部260cの先端に支持部261が連結されている。
【0044】
本実施形態において、図5に示すように、支柱挿脱装置2は、昇降ガイド手段23を複数備える。具体的には、支柱挿脱装置2は、二つの昇降ガイド手段23,23を備える。二つの昇降ガイド手段23,23は、第二方向で互いに間隔をあけ、第一方向に延びるベースフレーム20の中央線に対して上下方向に直交する仮想基準線を基準にして対称に配置される。
【0045】
各昇降ガイド手段23は、上下方向に延びる案内シャフト230と、案内シャフト230に上下方向に案内される案内体231とを備える。本実施形態において、昇降ガイド手段23には、リニアガイドが採用され、案内体231は、丸棒状の案内シャフト230の外周上を摺動可能に構成される。案内体231は、昇降フレーム21に連結され、昇降フレーム21を案内シャフト230の延びる方向に案内する。すなわち、案内体231は、案内シャフト230に沿って上下方向に移動することにより、昇降フレーム21の上下方向の移動を案内する。
【0046】
案内シャフト230は、一対のサブフレーム25,26の支持部251,261間に位置し、一対のサブフレーム25,26に跨るように配置される。具体的には、案内シャフト230は、上下(垂直)方向に延びて起立状態で配置され、案内シャフト230の一端(下端)は、一方のサブフレーム25の支持部251に連結され、案内シャフト230の他端(上端)は、他方のサブフレーム26の支持部261に連結されている。
【0047】
本実施形態において、アクチュエータ22は、油圧式のアクチュエータである。より具
体的には、アクチュエータ22は、油圧シリンダである。油圧シリンダ22は、筒状のシリンダ220と、シリンダ220内に配置されるピストン(図示しない)を含むピストンロッド(採番しない)とを有する。ピストンロッドは、ピストンに連結されたロッド221であって、シリンダ220の一端から突出するロッド221を有する(図6及び図7参照)。
【0048】
油圧シリンダ22は、シリンダ220内のピストンが圧力(油圧)を受けることで、ロッド221を軸方向に移動させ(シリンダ220の一端に対して出退させ)、軸方向の長さを伸縮させる。
【0049】
油圧シリンダ22は、起立状態で一対のサブフレーム25,26の支持部251,261間に配置される。本実施形態では、ベースフレーム20の中心線上で且つ対称に配置された二つの昇降ガイド手段23の間に配置されている。油圧シリンダ22は、ピストンロッド(シリンダ220の一端側)を下側にして配置される。
【0050】
具体的には、油圧シリンダ22は、起立状態(垂直方向に延びた状態)で配置される前提で、ピストンロッド(ロッド221)の先端が下方側にある一方のサブフレーム25の支持部251に連結され、シリンダ220が昇降フレーム21に連結されている。この状態において、油圧シリンダ22が伸長する(シリンダ220からロッド221が出る(図6及び図7参照))と、シリンダ220が上昇する。このシリンダ220の上昇に伴って上方側にある他方のサブフレーム26の支持部261に対してシリンダ220が衝突してしまうことを防止するため、他方のサブフレーム26の支持部261には、油圧シリンダ22のシリンダ220が通過可能な逃孔(貫通孔)が設けられている。
【0051】
昇降フレーム21は、油圧シリンダ22のシリンダ220が連結される第一フレーム部210と、第一フレーム部210に連結された第二フレーム部211,212であって、第一フレーム部210から上方に向けて延びる第二フレーム部211,212とを備える。
【0052】
第一フレーム部210は、第二方向に延びるメインフレーム部材213と、メインフレーム部材213に固定された取付プレート214とを含む。
【0053】
メインフレーム部材213は、金属製の角管により構成され、長手方向(第二方向)の中央がベース200における第二方向の中央(第一方向に延びる中心線)に一致するように配置される。
【0054】
取付プレート214は、金属製のプレートであり、メインフレーム部材213に対して溶接によって固定されている。より具体的には、取付プレート214は、メインフレーム部材213と上下方向に重なり、該メインフレーム部材213に固定される固定部(採番しない)と、固定部から第一方向に延出した延出部(採番しない)とを含む。
【0055】
第一フレーム部210は、一対のサブフレーム25,26の支持部251,261間に配置される。これに伴い、取付プレート214の延出部は、メインフレーム部材213に重ならないように、メインフレーム部材213から一方の横梁202a側(前方側)に延出し、ピストンロッド(ロッド221)が遊挿されるロッド遊挿孔(図示しない)と、昇降ガイド手段23の案内シャフト230が遊挿される案内シャフト遊挿孔(図示しない)と、を有する。
【0056】
ここでは昇降ガイド手段23が二つ設けられるため、取付プレート214の延出部は、一つのロッド遊挿孔と、二つの案内シャフト遊挿孔と、を有する。なお、油圧シリンダ2
2、二つの昇降ガイド手段23の配置は、上記のとおりであり、ロッド遊挿孔、及び二つの案内シャフト遊挿孔は、上記の配置に合わせて配置される。
【0057】
本実施形態において、取付プレート214は、メインフレーム部材213を上下で挟み込むように二つ設けられている。二つの取付プレート214のそれぞれの延出部は、ロッド遊挿孔、及び三つの案内シャフト遊挿孔を有し、互いのロッド遊挿孔が同芯となり、且つ、互いの案内シャフト遊挿孔が同芯となるように配置される。
【0058】
これに伴い、昇降ガイド手段23の案内体231及び油圧シリンダ22のシリンダ220は、取付プレート214に固定される。なお、昇降ガイド手段23の案内体231、及び油圧シリンダ22のシリンダ220は、二つの取付プレート214のうち、少なくとも一つの取付プレート214に固定(連結)される。
【0059】
これにより、昇降フレーム21は、昇降ガイド手段23によって上下方向の移動が案内されつつ、油圧シリンダ22の伸縮によって上下方向に昇降する。
【0060】
第二フレーム部211,212には、取付対象となる構成(例えば、支柱挿入部3の構成、支柱引抜部4の構成)が取り付けられる。第二フレーム部211,212は、要求される高さに取付対象を取り付けることができるように、上下方向の長さ(高さ)が設定される。本実施形態において、昇降フレーム21は、第二フレーム部211,212を二つ有する。
【0061】
各第二フレーム部211,212は、第一フレーム部210の端部に連結され、第一フレーム部210上で起立している。具体的には、一方の第二フレーム部211は、第一フレーム部210のメインフレーム部材213の第二方向における一端部に連結され、他方の第二フレーム部212は、メインフレーム部材213の第二方向における他端部に連結されている。各第二フレーム部211,212は、金属製の角管であり、第一フレーム部210(メインフレーム部材213)に対して溶接によって連結されている。
【0062】
上記の通り、支柱挿脱装置2は、第二方向の一方側に支柱挿入部3を有するとともに、第二方向の他方側に支柱引抜部4を有する。これに伴い、本実施形態に係る昇降フレーム21において、メインフレーム部材213の第二方向における一端部に連結された一方の第二フレーム部211は、支柱挿入部3用の第二フレーム部211とされ、メインフレーム部材213の第二方向における他端部に連結された他方の第二フレーム部212は、支柱引抜部4用の第二フレーム部212とされている。
【0063】
図3図4図6及び図7に戻り、本実施形態において、アクチュエータ22に油圧シリンダが採用されるため、操作部24は、操作レバー240付きの油圧用のマニュアルバルブ(切換バルブ)を有する。操作部24には、油圧ポンプに繋がる配管(図示しない)、油圧シリンダ22に繋がる配管(図示しない)、作動油のタンクに繋がる配管(図示しない)が接続されている。これにより、操作部24は、操作レバー240に対する操作を行うことで、油圧シリンダ22を伸縮させる。
【0064】
本実施形態において、支柱挿脱装置2は、作業車両1に連結されるため、操作部24は、ベースフレーム20に固定されている。具体的には、操作部24は、作業車両1の連結側にあるベースフレーム20の連結梁204に固定され、作業車両1の油圧回路(図示しない)に接続される。すなわち、油圧ポンプに繋がる配管、油圧シリンダ22に繋がる配管、作動油のタンクに繋がる配管は、作業車両1の油圧回路に繋がり、操作部24に接続されることで、該支柱挿脱装置2に対して油圧を作用させる。なお、作業車両1は、PTO(Power Take Off)によって、油圧ポンプに対してエンジンからの動力(駆動)が伝達され、外部機器用の油圧を発生させるようになっている。
【0065】
次に、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3について説明する。図8に示すように、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3は、起立状態の支柱Pを上下方向の移動を許容した状態で支持可能な第一支持手段30と、第一支持手段30に支持された支柱Pに対して少なくとも下方に向けて付勢する付勢手段(以下、挿入用付勢手段という。)32と、支柱Pを支持可能な第二支持手段33であって、上下方向と直交する方向(本実施形態においては第二方向)に延びる軸を中心にして回動可能に設けられ、該回動によって支柱Pを傾倒状態で支持する第一姿勢F1と支柱Pを起立状態で支持する第二姿勢F2との間で姿勢変更可能な第二支持手段33と、を備える。また、支柱挿入部3(農業用支柱挿入機3)は、第二支持手段33の姿勢を変更させる姿勢変更手段34を備える。さらに、支柱挿入部3(農業用支柱挿入機3)は、支柱Pの挿入予定位置であって、先行して土壌に挿入された支柱Pの位置から所定距離離れた予定位置を作業者に知らせる位置報知手段35を備える。
【0066】
第一支持手段30及び第二支持手段33の説明に先立ち、支柱挿入部3の挿入用付勢手段32について説明する。図5に示すように、挿入用付勢手段32は、上下方向に移動可能な押圧片320であって、第一支持手段30に支持される支柱Pの上端に対して上方から対向可能な押圧片320と、押圧片320を上下方向に昇降させるアクチュエータ22と、を備える。
【0067】
本実施形態において、挿入用付勢手段32は、アクチュエータ22の伸縮による付勢を押圧片320に伝える昇降フレーム21を備える。
【0068】
押圧片320は、起立状態にある支柱Pの上端と対向可能に配置される。アクチュエータ22は、先に説明した油圧シリンダ22である。これに伴い、昇降フレーム21の一方の第二フレーム部211に対して押圧片320が連結されている。押圧片320は、第二方向において第二フレーム部211から外方に延出している。具体的には、昇降フレーム21は、一方の第二フレーム部211の上端部に連結された補強部材215であって、該一方の第二フレーム部211に対して直角をなす補強部材215を備えている。これに伴い、押圧片320は、補強部材215の下面に固定されている。
【0069】
これにより、昇降フレーム21がアクチュエータ22によって付勢されて上昇位置から下降することにより、押圧片320が起立状態にある支柱Pの上端部を下方に向けて付勢する。
【0070】
図3及び図6に戻り、第一支持手段30は、第二姿勢F2の第二支持手段33によって支持された支柱Pを受け取り可能に構成される。すなわち、第一支持手段30は、起立状態になった、或いは、起立状態になりつつある支柱Pを受け取り、該支柱Pを起立状態で支持するように構成される。
【0071】
具体的には、第一支持手段30は、起立した支柱Pの上端側を支持する上部支持部300を含む。また、第一支持手段30は、起立した支柱Pの下端を受ける支柱受部301を含む。さらに、第一支持手段30は、支柱Pの下端が支柱受部301に受けられた状態で、該支柱Pの下端部に対して少なくとも第二支持手段33からの受け取り側で係止可能な係止体302を含む(図13図17参照)。
【0072】
図9に示すように、上部支持部300は、押圧片320に対して直接的又は間接的に連結されている。具体的には、上部支持部300は、押圧片320に連結された垂下部材303であって、押圧片320から垂下する垂下部材303に連結されている。なお、垂下部材303は、押圧片320が支柱Pを押圧する領域及び支柱Pを受け取る側の領域を避
けて配置される。本実施形態において、垂下部材303は、押圧片320の第一方向の一方側(作業車両1側)の端部に連結されている。
【0073】
図10に示すように、上部支持部300は、それぞれが支柱Pの受け取り側に延びる一対のガイド体304,304であって、少なくとも受け取り側の先端部が上下方向と直交する方向に接離可能な一対のガイド体304,304と、一対のガイド体304,304の互いの先端部が接近するように、一対のガイド体304,304を付勢するガイド付勢手段305と、を備える。
【0074】
上部支持部300は、第二姿勢F2になる第二支持手段33に支持される支柱Pが、ガイド付勢手段305の付勢に抗して一対のガイド体304,304の先端部を離間させつつ該一対のガイド体304,304間に進入可能に構成される。
【0075】
より具体的には、上部支持部300は、平面視コの字状を呈する支持フレーム体306であって、第二方向に間隔をあけて配置される一対の支持部306a,306aを有する支持フレーム体306と、一対の支持部306a,306aのそれぞれに対して上下方向に延びる軸S1周り回動可能に取り付けられた一対のガイド体304,304とを備える。
【0076】
支持フレーム体306は、垂下部材303を取り囲んだ状態で、垂下部材303に固定されている。具体的には、一対の支持部306a,306aのそれぞれは、第一方向に延び、第一方向に基端と先端とを有する。支持フレーム体306は、平面視コの字状を呈するため、一対の支持部306a,306aの基端同士を繋ぐ連結部306bを有する。
【0077】
図9及び図10に示すように、垂下部材303は、一対の支持部306a,306a間に配置され、この状態において、連結部306bの第二方向における中央部が第一方向に延びる接続部材216aを介して垂下部材303に連結されている。本実施形態において、接続部材216aは、上下方向に延びる取付部材216bを介して垂下部材303に連結されている。具体的には、垂下部材303には、第一方向で重ね合わされた状態で取付部材216bが連結されている。取付部材216bは、上下方向に延び、垂下部材303を延長した態様をなしている。接続部材216aの一端は、取付部材216bの上下方向の中央部に接続され、接続部材216aの他端は、連結部306bの第二方向の中央部に接続されている。
【0078】
一対の支持部306a,306aは、ガイド体304,304を回転自在に支持するための枢支部(採番しない)を有する。ガイド体304,304は、一端と該一端の反対側の他端とを有し、一端と他端との間の中間位置が軸S1を介して枢支部に枢支されている。ガイド体304,304の一端側には、上下方向の軸心回りで回転自在なローラ307が配置されている。すなわち、ガイド体304,304は、先端部に上下方向の軸心回りで回転自在なローラ307を有する。
【0079】
上部支持部300は、ガイド体304,304を付勢するガイド付勢手段305としての引っ張りコイルバネを有する。引っ張りコイルバネ305は、ガイド体304,304の他端部と連結部306bとの間に張設されている。
【0080】
これにより、一対のガイド体304,304は、互いのローラ307を接近させた状態になっている。なお、一対のガイド体304,304は、常態において、引っ張りコイルバネ305による付勢力が作用し、互いのローラ307同士の間隔(隙間)が、支柱Pの外径よりも狭くなるように配置される。また、一対のガイド体304,304のローラ307間を支柱Pが通過することによって、一対のガイド体304,304のローラ307
の間隔が広がっても、支柱Pの通過後において、引っ張りコイルバネの付勢でローラ307の間隔が常態の間隔に戻るようになっている。
【0081】
本実施形態において、上部支持部300は、一対のガイド体304,304(ローラ307,307)間に支柱Pを誘導するための支柱ガイド部材309を備える。支柱ガイド部材309は、起立状態にある支柱Pを受け入れる領域を画定している。支柱Pを受け入れる領域は、起立状態にある支柱Pを受け入れるべく、上下方向及び支柱Pの受け入れ側が開放し、支柱Pを受け入れる側ほど拡大している。
【0082】
より具体的には、支柱ガイド部材309は、棒材を曲げ加工したもので、平面視V字状を呈している。これにより、支柱ガイド部材309は、折り曲げの頂部から先端側ほど互いの間隔が広くなるように配置された一対のガイド部309a,309aを有する。一対のガイド部309a,309aの先端同士の間隔は、一対のガイド体304,304(ローラ307,307)の間隔よりも広く設定されており、第二方向において大きく位置ずれしても支柱Pを受け入れることができるようになっている。
【0083】
本実施形態において、支柱ガイド部材309は、一対のガイド体304,304の上方位置と下方位置との二カ所に配置されている(図9参照)。なお、二つの支柱ガイド部材309において、垂下部材303に固定された取付部材216bであって、上下に延びる取付部材216bに平面視V字状の支柱ガイド部材309の頂部が固定されている。
【0084】
支柱受部301は、挿入用付勢手段32による付勢力が支柱Pを介して作用した状態で、支柱Pを受ける位置から退避する。
【0085】
具体的には、図11及び図12に示すように、支柱受部301は、上下方向及び第一方向の一方側が開放した受部本体310であって、支持した支柱Pの下端部の外周と対向可能な受部本体310と、支柱Pの下端面と対向する支柱受片311であって、受部本体310の下端部に枢結され、第二方向に延びる軸S2回りで回動可能な支柱受片311と、支柱受片311を付勢する引っ張りコイルバネ312とを備える。受部本体310は、作業車両1の走行方向(前進方向)に対する後方側が開放している。すなわち、受部本体310は、第一方向における作業車両1の前進方向側に位置する第一壁310aと、第一壁310aの第二方向の両端のそれぞれから延出する一対の第二壁310b,310bとを有し、平面視においてコの字状を呈する。
【0086】
支柱受片311は、第一壁310aの下端部に枢結されている。支柱受片311は、第一壁310aの下端及び一対の第二壁310b,310bの下端に取り囲まれる矩形領域を閉塞可能なサイズに設定される。
【0087】
引っ張りコイルバネ312は、支柱受片311と一方の第二壁310bとを繋ぐように張設されており、引っ張りコイルバネ312による付勢により、支柱受片311が第一壁310aの下端及び一対の第二壁310b,310bの下端に取り囲まれる矩形領域を閉じた姿勢で維持するようになっている。
【0088】
本実施形態において、支柱受部301は、第二支持手段33における支柱Pを支える構成としても兼用される。支柱受部301は、第二支持手段33の姿勢変更に合わせて、起立状態にある支柱Pを受ける状態と、挿入用付勢手段32による付勢が生じたときに、起立状態にある(押圧片320によって押圧状態にある)支柱Pの下端から退避状態とに切り替わる。すなわち、第二支持手段33が姿勢変更する際の回転中心を基準にして、支柱受部301も回転するようになっている。
【0089】
本実施形態において、支柱受部301は、第二支持手段33に連結されているが、第二支持手段33の回転中心を基準にして、第二支持手段33とは反対側に配置されている。これにより、第二姿勢F2から第一姿勢F1に姿勢変更する際に、支柱受部301は、作業車両1側に移動(退避)する。また、この支柱受部301が退避する際に、押圧片320によって支柱Pが押圧(付勢)している状態になると、支柱Pが支柱受片311に押し付けられて退避できなくなる可能性があるが、上記の通り、支柱受片311は、引っ張りコイルバネ312の付勢で開放領域を閉じた状態で維持しているため、押圧片320による付勢が引っ張りコイルバネ312の付勢より大きくなると、支柱受片311は、回転して支柱Pの下端から退避した状態になる。
【0090】
上記の通り、支柱受部301が作業車両1側に退避した状態(第二支持手段33が第一姿勢F1になった状態)で、第一壁310aが上方側に位置し、開放部分が下を向く。従って、第一姿勢F1になった第二支持手段33に支柱Pを支持させたとき(支柱Pを傾倒させた状態で支持させたとき)、支柱Pの下端が上側に跳ね上がろうとするのを抑えた状態になり、支柱Pを支持する。従って、本実施形態において、支柱受部301は、第二支持手段33における支柱Pの受け部としても機能する。
【0091】
図13図17に示すように、係止体302は、起立状態になった支柱Pを係止可能に構成される。本実施形態において、係止体302は、支柱Pを係止できる位置P1と、支柱Pの係止を解除する位置P2とに位置変更可能に構成される(図17参照)。
【0092】
より具体的に説明すると、図13に示すように、ベース200の一方の縦梁202bには、係止体302等を取り付けるための支持アーム5が固定されている。この支持アーム5は、ベース200の一方の縦梁202bから第二方向で外方に延出し、図13図17に示すように、長手方向(延出方向)の適宜位置には、係止体302を取り付ける取付ブラケット50、支持バー330を支持する支持ブラケット51が取り付けられている。なお、支持アーム5は、ベース200に対してねじ固定されている。
【0093】
係止体302は、支持アーム5に対して取付ブラケット50を介して固定されている。取付ブラケット50は、上下方向の軸(図においては、ボルト)S3が取り付けられる。軸S3は、係止体302の回転中心となる。係止体302は、基端と先端とを有し、基端側が軸S3を介して取付ブラケット50に枢着されている。
【0094】
係止体302は、先端側が湾曲しており、この湾曲した先端側を起立状態にある支柱Pの外周に対向させることで、支柱Pの移動を規制する。本実施形態において、係止体302は、支柱Pが起立状態で配置される領域及び第二支持手段33によって支持される支柱Pが通過する領域から退避した退避位置P2と、上記のとおり、少なくとも先端側を支柱Pが通過する領域に介在させる係止位置P1との位置変更可能である(図17参照)。
【0095】
本実施形態において、係止体302の基端には、軸S3を中心に係止体302を回転させ、係止体302を退避位置P2から係止位置P1に位置変更させる位置変更片313が連接されている。この位置変更片313は、後述するカムフォロア334aによって押圧可能に配置される。
【0096】
これに伴い、係止体302は、支持アーム5に連接されたブラケット52に繋がる引っ張りコイルバネ314が掛止されている。すなわち、係止体302とブラケット52と間には、引っ張りコイルバネ314が張設されている。この引っ張りコイルバネ314の付勢により、係止体302は退避位置P2に位置し、カムフォロア334aが位置変更片313を押圧することで、係止体302を退避位置P2から係止位置P1に移動させる。また、カムフォロア334aによる位置変更片313への押圧を解除すると、引っ張りコイルバネ314による付勢により、係止体302が退避位置P2に復帰する。
【0097】
第二支持手段33は、図3及び図6に示すように、第二方向と直交する方向に長手をなす支持バー330であって、第二方向に延びる軸回りで回転可能な支持バー330と、支持バー330に取り付けられた支柱受部材331であって、支柱Pの途中位置を支持する支柱受部材331と、支柱Pの下端部を支持する支柱受部301とを含む。
【0098】
図16及び図17に示すように、支持バー330は、支持アーム5に連結された支持ブラケット51に支持されている。具体的には、支持バー330は、真っすぐ延びる長尺なバー本体332であって、長手方向に基端部と先端部とを有するバー本体332と、バー本体332の基端部から該バー本体332の長手方向に対して直交方向に延出した支持片333であって、第二方向に延びる軸S4を介して支持ブラケット51に枢結される支持片333と、バー本体332の基端部から該バー本体332の長手方向に対して直交方向に延出した押圧用突片334であって、先端部に位置変更片313を押圧するカムフォロア334aが取り付けられた押圧用突片334とを含む。
【0099】
支持片333と押圧用突片334とは、支持バー330の長手方向に並んで配置されているが、支持片333は、軸S4によって支持ブラケット51に回転可能に支持されるため、押圧用突片334(カムフォロア334a)は、支持片333を支持する軸S4を中心に回転する。すなわち、支持バー330が支持片333(軸S4)を中心に第一姿勢F1及び第二姿勢F2に姿勢変更するのに併せ、押圧用突片334(カムフォロア334a)も軸S4を中心に正逆転して位置変更する。これにより、押圧用突片334(カムフォロア334a)による位置変更片313に対する押圧とその解除を行えるようになっている。本実施形態において、押圧用突片334には、引っ張りコイルバネ361が取り付けられており、第一姿勢F1にある支持バー330を第一姿勢F1にする方向の回転力を作用させるようになっている。
【0100】
なお、支柱挿入部3は、図13に示すように、支持バー330が第二姿勢F2から第一姿勢F1に姿勢変更する際に第一姿勢F1の傾倒状態を超えないようにするためのストッパー36を備えている。ストッパー36は、支持アーム5に繋がる支持体360に接続されており、その支持体360には、図16及び図17に示すように引っ張りコイルバネ361を取り付けるために取付片362が延設されている。これに伴い、引っ張りコイルバネ361は、押圧用突片334と取付片362との間に張設されている。
【0101】
支柱受部材331は、支柱Pを配置可能且つ支持可能な形態に形成される。すなわち、支柱受部材331は、支柱Pを配置可能な窪みを有する部材であり、図5に示すように、本実施形態においては、U字状の部材である。さらに、本実施形態において、支柱受部材331(U字状の部材)は、一方の片(軸)を中心に全体が回転可能な状態で支持バー330に取り付けられている。これにより、支柱Pが意図せずに支柱受部材331に不用意に引っ掛かりそうになった場合、支柱受部材331が一方の片(軸)を中心に回転して逃げる(退避)するようになっている。
【0102】
本実施形態において、第一支持手段30の支柱受部301が第二支持手段33における支柱Pを受ける部材として兼用されるため、支柱受部301が支持バー330の基端部に連結されている。支柱受部301は、支柱受片311が支柱受部材331の円弧部の中心線(仮想的な中心線)と直交するように配置される。また、上述のように、第二支持手段33が第二姿勢F2になっている状態において、支柱受部301の受部本体310は開放した部分が下方に向き、第一壁310aが開放した部分よりも上側に位置するようになっている。これにより、第二支持手段33は、図12に示すように、支柱受部材331に支柱Pの一部を支持させた状態において、支柱Pの下端部の浮き上がりが、第一壁310a
との干渉によって防止される。
【0103】
図8に示すように、姿勢変更手段34は、第二支持手段33に繋がる索条体340であって、押圧片320の上昇によって引っ張り力が作用する索条体340を含み、図3及び図6に示すように、押圧片320が上限位置に到達した状態で第二支持手段33を第二姿勢F2にする一方、押圧片320が下限位置に到達した状態で第二支持手段33を第一姿勢F1にする。
【0104】
より具体的には、姿勢変更手段34は、図13図14、及び図16に示すように、支持バー330の先端部と支持バー330の基端側とに跨る索条体340と、昇降フレーム21に対して回転可能に取り付けられたプーリー341であって、索条体340が巻き掛けられるプーリー341とを備える。索条体340の一端は、支持バー330の先端部に固定されている。これに対し、索条体340の他端は、支持バー330の基端側に連結される。本実施形態において、索条体340の他端は、引っ張りコイルバネ342を介して支持アーム5に連結されている。
【0105】
姿勢変更手段34は、図18に示すように、押圧片320が上昇するとき(昇降フレーム21が上昇するとき)に、プーリー341が昇降フレーム21とともに垂直方向に上昇する。これに伴い、索条体340がプーリー341側に引っ張られる結果、支持バー330(支持された支柱P)は、傾倒した状態から徐々に起き上がり、最終的に第二姿勢F2になる。この際、支柱Pは第一支持手段30の一対のガイド体304,304間を通過し、起立状態で支持される。この状態で昇降フレーム21が下降すると押圧片320も下降し、起立状態の支柱Pを上方から下方に向けて付勢(押圧)する。なお、プーリー341の下限位置から上限位置の移動量は、押圧片320の移動量と同じであるため、支柱Pを土壌に挿し込む深さDに対して支柱Pを配置するために必要な余裕代(第二支持手段33を第二姿勢F2にするときに支柱Pが押圧片320に干渉することのない余裕代)αを加えた量(D+α)に設定される。言うまでもないが、押圧片320の下限位置の高さは、支柱Pの全長から土壌に対する挿し込む深さDを差し引いた値である。
【0106】
押圧片320(昇降フレーム21)の下降に伴い、プーリー341も垂直方向で下降することになり、索条体340の引っ張りを解放する。この状態においては、支持バー330に対しては、引っ張りコイルバネ361の付勢により、逆向きの回転力が作用するため、支持バー330が引き起こされたときとは逆に、プーリー341の下降に伴って支持バー330は、第一姿勢F1に姿勢変更する。このように、第二支持手段33は、第一支持手段30が該第二支持手段33から受け取った支柱Pを支持した状態で、第一姿勢F1に姿勢変更可能になる。
【0107】
上記のように第二支持手段33が第二姿勢F2から第一姿勢F1に姿勢変更を始める初期タイミングにおいて、プーリー341と一緒に押圧片320も下降するため、上述の如く、押圧片320が起立した支柱Pの上端を付勢する。そうすると、図19に示すように、支柱受部301の支柱受片311に下向きの力が作用し、軸S2を回転中心にして支柱受片311が受部本体310の下端を解放する。すなわち、支柱受部301が支柱Pの下端を受ける位置から部分的に退避する。また、支柱受部301が第二支持手段33の支持バー330に連結されているため、図20に示すように、第二支持手段33の姿勢変更(回転)のタイミングと同じタイミングで支柱受部301全体が支柱Pの下端を受ける位置から退避する。このように、本実施形態に係る姿勢変更手段34は、支柱受部301を適正なタイミングで退避させる機能も発揮する。
【0108】
図3及び図6に戻り、位置報知手段35は、先行して挿し込まれた支柱Pの位置を基準に次の支柱Pの挿入位置を作業者に報知する。なお、ここで「報知」とは、信号や音によ
って作業者に対して警告的に知らせる態様のみならず、作業者の目視によって位置を知らしめることも意図している。本実施形態において、位置報知手段35は、圃場F上に支柱Pを挿し込む位置に目印を付し、その目印を目視によって認識することで報知する。
【0109】
具体的には、本実施形態に係る位置報知手段35は、複数の支柱Pの挿入作業を行う際に予め決定した支柱Pの間隔L以上の長さに設定される棒体350であって、長手方向に基端部及び先端部を有する棒体350と、棒体350の先端部に取り付けられたマーキング部材351とを備える。
【0110】
位置報知手段35において、棒体350の基端部は、支柱挿入部3における第二支持手段33の支持バー330の基端側(本実施形態においては、支柱受部301)に連結される。棒体350は、第二支持手段33が第二姿勢F2になった状態で横臥するように支持バー330に対して固定されている。これに伴い、棒体350は、支持バー330が第一姿勢F1になったときは、横臥状態から起き上がった姿勢に維持する。本実施形態において、棒体350は、伸縮可能になっており、全長の長さを調整可能になっている。すなわち、棒体350は、伸縮することによって、当該棒体350の軸心方向におけるマーキング部材351の位置を変更できるようになっている。
【0111】
マーキング部材351は、円板状をなし、中心部に棒材の先端部を貫通させた状態で該棒材に固定されている。マーキング部材351は、棒材の外径よりも大きな外径を有する。すなわち、マーキング部材351は、棒材の先端部に対して鍔状に取り付けられている。このように、マーキング部材351は、棒材の外周から外方に張り出した態様になるため、棒材が横臥状態になったときに、マーキング部材351が圃場Fの土壌(地面)に押し当たるようになっている。すなわち、先行の支柱Pを挿入した状態で、マーキング部材351が土壌に対して次の支柱Pの挿入場所の目印をつけるようになっている。
【0112】
従って、作業者は、マーキング部材351によって付けられた目印に対して支柱挿入部3によって支柱Pを打ち込む際に、支柱Pを起立状態に配置する位置(本実施形態においては、第一支持手段30における支柱Pの保持予定位置を合わせるように、支柱挿脱装置2の位置合わせすることで、一定間隔Lで支柱Pを挿入することができる。
【0113】
次に、支柱引抜部4について説明する。図21及び図22に示すように、支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、土壌に挿し込まれて起立状態にある支柱Pに係合可能な支柱係合体40であって、上下方向に移動可能な支柱係合体40と、支柱係合体40に対して少なくとも上方に向けて付勢する付勢手段(以下、引抜用付勢手段という。)41(図5参照)と、を備える。
【0114】
図23図28に示すように、支柱係合体40は、起立状態にある支柱Pを上下方向と直交する第一方向から遊嵌可能な支柱遊嵌部400を有する。具体的には、支柱係合体40は、金属製プレートであり、支柱遊嵌部400は、支柱係合体40に形成した切り欠きである。支柱遊嵌部400は、支柱係合体40の第一方向の一端で開放し、他端側に窪んで形成される。
【0115】
より具体的には、支柱遊嵌部400は、図23に示すように、矩形状の領域A1と、第一方向における矩形状の領域A1の一端と連続する半円状の領域A2と、第一方向における矩形領域の他端と連続する台形状の領域A3とを含む。半円状の領域A2の直径は、土壌に挿し込まれた支柱Pの外径よりも大きく設定される。これに伴い、矩形状の領域A1における第二方向の寸法は、半円状の領域A2の直径と一致している。台形状の領域A3の上辺における第二方向の長さが、半円状の領域A2の直径と一致し、台形状の領域A3の底辺における第二方向の長さは、上辺よりも長く設定されている。台形状の領域A3は
、支柱係合体40の第一方向にある端縁で開放している。すなわち、台形状の領域A3の底辺となる部分が支柱係合体40の端縁で開放した部分になっている。
【0116】
矩形状の領域A1は、第二方向で半円状の領域A2の直径に対応した間隔をあけて平行な一対の直線エッジE1によって画定されている。半円状の領域A2は、円弧状のエッジE2によって画定され、該円弧状のエッジE2の両端は、一対の直線エッジE1と連続している。台形状の領域A3は、一対の直線エッジE1と連続し、間隔が拡大する一対のテーパエッジE3によって画定されている。
【0117】
すなわち、支柱遊嵌部400は、平行な一対の直線エッジE1と、一対の直線エッジE1を繋ぐ円弧状のエッジE2と、間隔を拡大させる一対のテーパエッジE3によって画定されている。これにより、支柱係合体40の支柱遊嵌部400には、起立した支柱Pを第一方向から遊嵌できる。すなわち、支柱遊嵌部400は、直線エッジE1との間に隙間をもった状態で支柱Pを嵌め合わせることができるように形成されている。
【0118】
支柱係合体40は、第一方向に延びる軸S5を中心に回転可能に構成され、少なくとも引抜用付勢手段41が上向きに付勢した状態で、回転軸(軸)S5を中心にして該支柱係合体40を回転させる回転力が作用するように構成される。
【0119】
図5に戻り、支柱引抜部4の引抜用付勢手段41は、上下方向に移動可能な昇降フレーム21と、昇降フレーム21を上下方向に移動させるアクチュエータ22と、を備える。この引抜用付勢手段41は、上記の通り、支柱挿入部3と共用とされる。上記のとおり、アクチュエータ22は、油圧シリンダ22であり、油圧シリンダ22の伸縮によって昇降フレーム21を上下方向に昇降させる。
【0120】
本実施形態において、油圧シリンダ22が伸長することによって、昇降フレーム21を上昇させる。従って、油圧シリンダ22は、伸長時に支柱係合体40を上向きに付勢するのに対し、収縮時に押圧片320を下向きに付勢する。
【0121】
支柱係合体40は、回転軸を中心に回転可能な状態で、昇降フレーム21に直接的又は間接的に連結される。支柱引抜部4において、支柱係合体40等は、昇降フレーム21の他方の第二フレーム部212に間接的に取り付けられる。
【0122】
具体的には、支柱引抜部4は、図21及び図22に示すように、第二フレーム部212に対して上下方向で位置調整可能な位置調整部材42と、位置調整部材42に対して第二方向で位置調整可能な取付アーム43とを備える。
【0123】
位置調整部材42は、上下方向に貫通した第一筒状部420であって、他方の第二フレーム部212に対して上下方向に移動可能に外嵌される第一筒状部420と、第一筒状部420を貫通した第一ねじ部材421(図22参照)とを備える。さらに、位置調整部材42は、第二方向に貫通した第二筒状部422であって、取付アーム43が第二方向に移動可能に内嵌される第二筒状部422と、第二筒状部422を貫通した第二ねじ部材423(図21参照)とを備える。
【0124】
これにより、位置調整部材42は、第一筒状部420を上下方向に移動(位置変更)させ、適正な位置(高さ)に配置した上で、第一ねじ部材421を締め付けることで、調整した位置に固定される。また、位置調整部材42は、第二筒状部422に内嵌した取付アーム43を第二方向(幅方向)に移動(位置変更)させて適正な位置に配置した上で、第二ねじ部材423を締め付けることで、取付アーム43を適正な位置で固定する。
【0125】
第二フレーム部212及び取付アーム43は、何れも金属製の角管で構成されている。これに伴い、第一筒状部420は、第二フレーム部212の外形に即した角筒状に形成され、第二筒状部422は、取付アーム43の外形に即した角筒状に形成されている。
【0126】
本実施形態において、支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、昇降フレーム21を備えることを前提に、該昇降フレーム21に連結される支持機構44を備える。さらに、支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、支柱係合体40から延出するガイドバー45を備える。
【0127】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、起立状態にある支柱Pに支柱遊嵌部400を誘導する誘導バー46を備える。支柱引抜部4(農業用支柱引抜機4)は、支持機構44に連結される支持フレーム47を備える。支柱引抜部4(農業用支柱引抜機4)は、起立状態にある支柱Pに支柱遊嵌部400を誘導するガイド機構48であって、支柱係合体40に対して上下方向で並んで配置され、支柱係合体40とともに支持機構44に支持されるガイド機構48を備える。
【0128】
支持機構44は、第二方向又は該第二方向の成分を含む方向で支柱係合体40を移動可能に直接的又は間接的に支持する。
【0129】
本実施形態に係る支持機構44は、図29に示すように、四節平行リンクであり、取付アーム43に固定されている。より具体的には、支持機構44は、取付アーム43上に設けられた二つの連結部440であって、第二方向に間隔をあけて配置された二つの連結部440と、二つの連結部440のそれぞれに連結された二つの縦リンク体441であって、それぞれが同じ長さに設定され、上下方向に延びる軸S6を介して連結部440に枢結された二つの縦リンク体441と、二つの縦リンク体441の先端に対して上下方向に延びる軸S7を介して枢結された横リンク体442であって、二つの縦リンク体441が平行又は略平行な状態になる第二方向の二カ所に対して二つの縦リンク体441が枢結される横リンク体442とを備える。
【0130】
支持機構44において、横リンク体442に対して、支柱係合体40、ガイドバー45、支持フレーム47、誘導バー46、ガイド機構48が直接的又は間接的に取り付けられる。本実施形態において、横リンク体442に対し、ガイド機構48が直接取り付けられ、支柱係合体40、ガイドバー45、及び誘導バー46が支持フレーム47を介して間接的に取り付けられている。
【0131】
支持機構44は、二つの縦リンク体441が平行状態を維持しつつ軸S6、S7を回転中心にして回転することで、横リンク体442が姿勢を維持しつつ第二方向(第二方向の成分を含む方向)で移動する。これに伴い、支持機構44に支持された支柱係合体40、ガイドバー45、支持フレーム47、誘導バー46、ガイド機構48も姿勢を維持しつつ第二方向(第二方向の成分を含む方向)で移動可能となる。
【0132】
支持機構44は、二つの縦リンク体441のそれぞれと取付アーム43との間に張設された二つの引っ張りコイルバネ443を有し、二つの引っ張りコイルバネ443による付勢(力のバランス)により、常態において、二つの縦リンク体441が取付アーム43に対して直角又は略直角の姿勢で維持する。
【0133】
ガイド機構48は、第二方向に並ぶ一対のガイド体480,480であって、それぞれが上下方向に延びる軸回りで回動可能な一対のガイド体480,480と、一対のガイド体480,480を付勢するガイド付勢手段481と、を備える。
【0134】
一対のガイド体480,480のそれぞれは、支柱遊嵌部400に遊嵌される支柱Pの予定配置位置の両側にあるガイド基端部480aと、該ガイド基端部480aとは反対側のガイド先端部480bであって、支柱Pを遊嵌させる側にあるガイド先端部480bと、を有する。
【0135】
具体的には、ガイド機構48は、一対のガイド体480,480を支持する機構用フレーム482を有する。機構用フレーム482は、第二方向の延びるベース部482aと、第二方向におけるベース部482aの両端部に連結された一対の腕部482b,482bであって、それぞれが第一方向に延びる一対の腕部482b,482bとを含む。
【0136】
ベース部482aは、支持機構44に連結される部位である。すなわち、ベース部482aは、支持機構44の横リンク体442に連結される部位である。本実施形態において、ベース部482aが横リンク体442を一体的に連結される部位であることに鑑み、支持機構44の横リンク体442は、ベース部482aに兼用されている。
【0137】
ガイド機構48は、ガイド体480,480を上下方向に延びる軸回りで回転自在に支持する回転支持部483であって、腕部482b,482bに連設された回転支持部483を有する。また、ガイド機構48は、ガイド体480,480を付勢するガイド付勢手段481を取り付ける掛止部484であって、腕部482b,482bに連設された掛止部484を有する。
【0138】
回転支持部483及び掛止部484は、一対の腕部482b,482bのそれぞれに対応して設けられている。回転支持部483は、腕部482b,482bに対して第二方向において内方(一対の腕部482b,482bの間側)に配置され、掛止部484は、腕部482b,482bに対して第二方向において外方に配置されている。
【0139】
各回転支持部483には、ガイド体480の回転中心になる軸(ピン)S8が上下方向に延びる姿勢で配置される。
【0140】
一対のガイド体480,480は、ベース部482aの第一方向に延びる中心線(仮想線)を基準に対称に配置され、形状も対称形状である。
【0141】
第二方向における一対のガイド体480,480の間隔は、ガイド基端部480a側からガイド先端部480b側に向けて拡大している。より具体的には、ガイド体480,480は、帯板を曲げ加工したガイド本体485を備え、ガイド本体485は、長手方向においてガイド基端部480aとガイド先端部480bとを有する。
【0142】
ガイド体480,480は、ガイド基端部480aとガイド先端部480bとの間に屈曲部486を有する。ガイド体480,480は、屈曲部486を跨いでガイド基端部480a側とガイド先端部480b側とを繋ぐ帯状の補強片487を備える。
【0143】
各ガイド体480,480において、ガイド基端部480aと屈曲部486との間の領域(以下、基端側領域という)とベース部482aの第一方向に延びる中心線との角度は、ガイド先端部480bと屈曲部486との間の領域(以下、先端側領域という)とベース部482aの第一方向に延びる中心線との角度よりも小さい。すなわち、先端側領域とベース部482aの第一方向に延びる中心線との角度は、基端側領域とベース部482aの第一方向に延びる中心線との角度よりも大きい。
【0144】
これにより、一対のガイド体480,480の基端部側から先端部側に向けての間隔において、基端側領域同士の間隔の拡大率よりも先端側領域同士の間隔の拡大率の方が格段
に大きくなっている。すなわち、一対のガイド体480,480の先端側領域は第二方向に大きく広がり、第二方向において腕部482b,482bより外方に位置している。
【0145】
なお、各ガイド体480,480は、基端側領域内においても屈曲しており、その屈曲した部分を境にして基端側領域同士の間隔が基端部側ほど狭くなっている。
【0146】
本実施形態において、補強片487は、一端がガイド本体485の基端側領域に接続され、他端側がガイド本体485の先端部に接続されている。補強片487の他端部は、先端側領域(先端部)から突出している。すなわち、補強片487は、ガイド体480,480全体におけるガイド先端部480bの一部を構成している。
【0147】
各ガイド体480,480において、補強片487の途中位置が回転支持部483に対して上下方向に延びる軸(ピン)を介して枢結されている。
【0148】
ガイド付勢手段481は、常態において互いのガイド基端部480aが接近するようにガイド体480,480を付勢している。具体的には、ガイド付勢手段481には、引っ張りコイルバネが採用されている。引っ張りコイルバネ481は、掛止部484に掛止されるとともに、ガイド体480,480のガイド先端部480bとなる補強片487の他端部に掛止されている。すなわち、引っ張りコイルバネ481は、掛止部484とガイド体480,480のガイド先端部480b(補強片487の他端部)との間に張設されている。これにより、一対のガイド体480,480のそれぞれは、ガイド先端部480bが支持機構44側に引き寄せられ、互いのガイド基端部480aが接近する方向に回転力を受けている。
【0149】
支持フレーム47は、図22に示すように、支持機構44の横リンク体442に連結される。支持フレーム47は、横リンク体442から垂下する垂下部470と、垂下部470に連結された取付部471であって、支柱係合体40が取り付けられる取付部471とを備える。
【0150】
垂下部470は、金属製の角管で構成され、上下方向に延びる。垂下部470の上端部は、横リンク体442(ベース部482a)に連結される。垂下部470の下端部には、取付部471が連結されている。
【0151】
取付部471は、軸を介して支柱係合体40を取付可能に構成される。取付部471は、起立状態にある支柱Pが配置される支柱P予定位置を躱した位置に配置される。本実施形態において、取付部471は、第二方向において、支柱P予定位置を躱す位置に配置される。より具体的には、支柱P予定位置と支柱遊嵌部400との配置を一致させる支柱係合体40を躱した位置に配置される。
【0152】
図23図28に示すように、取付部471には、第一方向に延びる軸S5を介して支柱係合体40が取り付けられる。支柱係合体40は、支柱遊嵌部400の開放部分を第一方向に向けている。より具体的には、作業車両1が前進することで支柱遊嵌部400に対して支柱Pが嵌まり込むように、支柱係合体40は、支柱遊嵌部400の開放部分を作業車両1の前進方向に向けて配置される。
【0153】
支柱係合体40の回転中心となる軸S5は、第二方向における支柱遊嵌部400の両側のうちの一方側に配置される。すなわち、取付部471は、第二方向における支柱遊嵌部400の両側のうちの何れか一方側に配置され、支柱係合体40は、軸S5を介して取付部471に対して回転自在に取り付けられる。本実施形態において、支柱係合体40の支柱遊嵌部400の第二方向における両側の一方側に、ガイドバー45が取り付けられる。
これに伴い、取付部471は、支柱係合体40の支柱遊嵌部400の第二方向における両側の他方側に配置される。
【0154】
支柱係合体40は、第二方向の中央に中心(重心)を有している。そのため、第二方向において中心(重心)から離れた位置で軸S5を介して取付部471に取り付けられているため、自重が軸回りの回転力として作用する。その結果、図27及び図28に示すように、支柱係合体40は、常態において取付部471(軸)から垂下した姿勢になっている。ただし、図23及び図24に示すように、支柱係合体40を水平に起こした状態においては、支柱遊嵌部400の貫通方向(上下方向の中心)が、起立状態にある支柱Pの中心と一致又は略一致し、さらに、上方にある常態の一対のガイド体480,480の間を通るガイド機構48の中心とも一致する。
【0155】
図23図28に示すように、ガイドバー45は、棒材を曲げ加工したものである。ガイドバー45は、支柱遊嵌部400の第二方向の両側のうちの一方側で支柱係合体40に固定される基端部と、該基端部に対して反対側の先端部であって、第一方向及び第二方向において基端部よりも支柱遊嵌部400から外方側の離れた位置にある先端部を有する。
【0156】
支柱係合体40が支柱遊嵌部400の開放部分を第一方向に向けて配置されるため、ガイドバー45は、第一方向の成分を含む方向に延びている。また、ガイドバー45は、支柱Pを受け入れるために、第二方向の成分を含む方向にも延びている。すなわち、本実施形態において、ガイドバー45は、第一方向及び第二方向の合成方向に延びている。
【0157】
ここで、第一方向の成分を含む方向とは、第一方向は勿論のこと、第一方向の成分と第二方向の成分とを含む合成方向、第一方向の成分と上下方向の成分とを含む合成方向を意味する。すなわち、上下方向及び第二方向と直交する第一方向に限らず、第一方向側にある斜め方向等を含むことを意味する。また、第二方向の成分を含む方向も同様の趣旨である。
【0158】
ガイドバー45の基端部が支柱係合体40に固定されるため、ガイドバー45の基端部の直近の部分における支柱Pを案内する部分が、支柱遊嵌部400を画定する一方のテーパエッジE3に極力沿うように、或いは、テーパエッジE3と連続するように配置される。
【0159】
ガイドバー45は、支柱係合体40に連結されているため、常態において、支柱係合体40とともに垂下状態にある。すなわち、ガイドバー45は、支柱Pを待ち受ける状態において、垂下した状態になるため、この状態において先端側が第二方向において支柱遊嵌部400よりも外側に位置するように曲げ加工されている(図27及び図28参照)。
【0160】
さらに、垂下状態にあるガイドバー45の傾斜角度は、起立状態にある支柱Pと接触することにより、その接触によって作用する力(第一方向の力)の分力が支柱係合体40を逆転させる回転力(上向きの力)として作用するように設定される。
【0161】
誘導バー46は、支柱遊嵌部400の第二方向の両側のうちの他方側にある支持フレーム47に連結される基端部と、該基端部に対して反対側の先端部であって、第一方向及び第二方向において基端部よりも支柱遊嵌部400から外方側の離れた位置にある先端部を有する。
【0162】
支柱係合体40が支柱遊嵌部400の開放部分を第一方向に向けて配置されるため、誘導バー46は、第一方向の成分を含む方向に延びている。また、誘導バー46は、支柱Pを受け入れるために、第二方向の成分を含む方向にも延びている。すなわち、本実施形態
において、誘導バー46は、第一方向及び第二方向の合成方向に延びている。
【0163】
ガイドバー45と誘導バー46との間隔が、互いの基端部側から先端部側に向かうほど広くなっている。
【0164】
ガイドバー45及び誘導バー46は、上記のとおり、第一方向及び第二方向の成分を含む合成方向に延びているが、支柱係合体40は、支柱遊嵌部400に対する支柱Pの遊嵌方向と作業車両1の走行方向とが一致するように配置されているため、作業車両1の前進方向に向けて延びている。
【0165】
本実施形態において、図21及び図22に示すように、支柱引抜部4は、圃場Fに立設された支柱Pの位置がガイド機構48及び支柱係合体40の支柱遊嵌部400における支柱Pの係合位置と一致しているか否かを作業者が判断するための指示部材49を備える。
【0166】
指示部材49は、上下方向に延びる棒材であり、取付アーム43に取り付けられる。具体的には、図22に示すように、取付アーム43には、上下に貫通した筒状体430であって、指示部材49が挿通される筒状体430が取り付けられている。筒状体430には、ねじ部材431が貫通しており、筒状体430に挿通した指示部材49をねじ部材431で締め付けて固定するようになっている。
【0167】
指示部材49は、自身の中心線(軸心)がガイド機構48の第二方向の中央を通って上下方向(鉛直方向)に延びる第一仮想線に対して平行で、第一方向に延びて第一仮想線に対して直交する第二仮想線を通るように、配置される。指示部材49は、下端が地面の近くに位置するように設置される。
【0168】
支柱挿脱装置2(支柱挿入部3、支柱引抜部4)の構成は、以上の通りであり、上記構成の支柱挿脱装置2によって、圃場Fに支柱Pを立設する場合、支柱挿入部3を用いる。具体的には、第一姿勢F1にある第二支持手段33に支柱Pを支持させる。すなわち、支柱受部301に支柱Pを載せ、該支柱Pの一端部を支柱受部301に配置する。この状態において、支柱Pは支柱受部301を支点に一端側が上方に向けて起き上がろうとするが、図12に示すように、支柱受部301の受部本体310の第一壁310aに係止され、支柱Pは傾倒(横臥)した状態(第一姿勢F1)で維持する。
【0169】
この状態で、作業者は、作業車両1を走行させ、支柱挿入部3による支柱Pの挿入位置(起立状態になる支柱Pの位置)が圃場Fにおける支柱Pの挿入予定位置に合わせる。支柱挿入部3による支柱Pの挿入位置が圃場Fにおける支柱Pの挿入予定位置に一致又は略一致した状態になると、作業者は作業車両1を停止し、作業車両1のPTOを作動させた上で、作業者は操作部24の操作レバーを操作する。そうすると、作業車両1からの油圧を受け、油圧シリンダ22が伸長し、油圧シリンダ22のシリンダ220に連結(固定)された昇降フレーム21が上昇する。なお、油圧シリンダ22の伸長に伴ってシリンダ220が上昇するが、シリンダ220は、上側のサブフレーム26の支持部261の貫通孔を通過して上昇を続ける。
【0170】
そして、昇降フレーム21は、図6に示すように、昇降ガイド手段23によって案内されながら上昇する。すなわち、昇降フレーム21は、上下一対のサブフレーム25,26に跨って配置された案内シャフト230に沿って移動可能な案内体231に連結されているため、横ブレすることなく真っすぐ上昇する。
【0171】
これに伴い、図18に示すように、昇降フレーム21に連結された押圧片320及びプーリー341も上昇する。本実施形態においては、上部支持部300が押圧片320に連結されているため、上部支持部300も押圧片320と一緒に上昇する。
【0172】
プーリー341が上昇すると、姿勢変更手段34が第二支持手段33の姿勢を第一姿勢F1から第二姿勢F2に変更させる。すなわち、支持バー330に繋がる索条体340がプーリー341に引っ張られ、プーリー341の上昇に伴って支持バー330が軸を中心にして回転する。これにより、第二支持手段33の姿勢が起き上がるとともに、第二支持手段33に支持される支柱Pも起き上がる。支柱Pの傾斜角度が大きくなると、支柱Pの一端(下端)が支柱受部301の支柱受片311に当接し、支柱Pが滑り落ちることが防止される。すなわち、支柱受片311は、引っ張りコイルバネ312の付勢によって受部本体310の開放部分を閉じた状態で維持し、支柱Pを支える。
【0173】
押圧片320(昇降フレーム21)が上限位置に到達する前に、第二支持手段33に支持された支柱Pは、図10に示すように、上部支持部300と干渉する。すなわち、第二支持手段33に支持された支柱Pは、一対のガイド体304,304のローラ307、又は、一対のガイド体304,304の上方及び下方に配置された支柱ガイド部材309(ガイド部309a)に接触する。支柱Pが支柱ガイド部材309(ガイド部309a)に接触した場合、支柱Pは一対のガイド体304,304のローラ307間に誘導される。
【0174】
この状態において、第二支持手段33は、ローラ307の上昇に伴って、支柱Pが起立状態になるまで(第二姿勢F2になるまで)姿勢変更しようとするため、該第一支持手段30に支持された支柱Pは、一対のガイド体304,304(ローラ307)に押し付けられる。すなわち、U字状の支柱受部材331が支柱Pを第一方向に押し、支柱Pはローラ307に押し付けられる。
【0175】
この支柱Pの押し付け力が、ガイド体304,304を付勢する引っ張りコイルバネ305の付勢力に勝ると、一対のガイド体304,304の少なくとも何れか一方は、軸S1を中心に回転する。これにより、一対のガイド体304,304のローラ307同士の間隔が広がり、支柱Pがローラ307間を通過する。支柱Pがローラ307間を通過すると、ガイド体304,304は引っ張りコイルバネ305の付勢により、元の位置に復帰し、ローラ307同士の間隔が支柱Pの外径よりも狭くなる。これにより、起立状態の支柱Pは、第二支持手段33との受け渡し側への傾倒が防止される。また、支柱Pの周囲には、一対のガイド体304,304や支持フレーム体306が存在するため、支柱Pの他の方向への傾倒も防止される。すなわち、支柱Pは、第一支持手段30によって起立状態で支持された状態になる。
【0176】
この状態において、押圧片320及びプーリー341は、上限位置に到達し、第二支持手段33は、第二姿勢F2となって第一支持手段30に対する支柱Pの受け渡しを完了する。
【0177】
そして、上記のように第二支持手段33が第一姿勢F1から第二姿勢F2に姿勢変更するのに併せ、第二支持手段33の支持バー330に対して間接的に連結された位置報知手段35(棒体350)も軸を中心に回転し、棒体350が傾斜した姿勢から横臥した姿勢になる。上記のように、押圧片320及びプーリー341が上限位置に到達した状態で、第二支持手段33は第二姿勢F2になるため、位置報知手段35の棒体350も完全に横臥した状態になる。この状態になると、棒材の先端部に取り付けられたマーキング部材351が畝A(土壌)に当たり、地表に対して窪み状の目印をつける。すなわち、次に支柱Pを挿入する位置(現在挿入する支柱Pから所定の間隔をあけた位置)に対し、作業者が視認可能な目印が付される。
【0178】
このように、押圧片320が上限位置に到達した状態で、押圧片320の下方には起立
状態にある支柱Pが第一支持手段30によって支持された状態になる。なお、本実施形態において、操作部24には、マニュアルバルブ(切換バルブ)を含む油圧回路が装備されており、油圧回路には、油圧シリンダ22は伸長する状態から油圧シリンダ22が伸縮する状態に自動的に切り替わる自動反転回路を含んでいる。
【0179】
これに伴い、押圧片320が上限位置に到達すると、油圧シリンダ22が伸縮し、シリンダ220が真っすぐ下降するに伴い、シリンダ220に連結された昇降フレーム21も下降し、図18に示すように、昇降フレーム21に連結された押圧片320及びプーリー341も下降する。このようにプーリー341が下降すると、支持バー330に繋がる索条体340に対する引っ張りが弱まる。第二支持手段33には、第一姿勢F1に戻そうとする引っ張りコイルバネの付勢力が作用しているため、索条体340による支持バー330に対する引っ張りが弱まると、第二支持手段33は第二姿勢F2から第一姿勢F1に姿勢変更を始める。
【0180】
従って、押圧片320が下降を始めると、下方には支柱Pのみが残り、第二支持手段33は退避した状態になる。そして、押圧片320は、下降に伴って支柱Pの他端(上端)を下方に向けて付勢する。油圧シリンダ22が収縮し続けると、押圧片320は支柱Pを下方押し続けることになる。
【0181】
本実施形態において、支柱受部301は、第二支持手段33に連結されているため、第二支持手段33が姿勢変更を始めると、支柱受部301も軸を中心に回転するため、起立状態の支柱Pの下方から退避する。押圧片320が下降し始めるタイミングは、第二支持手段33が第二姿勢F2から第一姿勢F1に姿勢変更を始めるタイミングと同じであるが、支柱Pの長さのバラつきにより、支柱Pが支柱受部301の支柱受片311に接触している状態で押圧片320が支柱Pを下方に押圧することもある。
【0182】
しかし、図19及び図20に示すように、支柱受部301の支柱受片311は、軸S2を中心に回転自在に設けられるとともに、引っ張りコイルバネ312によって付勢されているため、押圧片320による押圧力が引っ張りコイルバネ312の付勢よりも大きくなると、支柱受片311が回転して支柱Pの移動を許容(支柱Pの下端位置から退避)する。また、第二支持手段33の姿勢変更に合わせて支柱受部301全体が支柱Pの下端位置から退避する。
【0183】
これにより、支柱Pは起立状態のまま押圧片320によって下方に向けて付勢され、土壌に挿し込まれる。押圧片320が下限位置に到達すると、支柱Pは土壌に対して必要な深さ(長芋の場合は60cm~1mの深さ)にまで挿し込まれる。上記のように押圧片320が下限位置に到達すると、プーリー341も下限位置に到達するため、第二支持手段33は元の第一姿勢F1に戻る。この状態で支柱Pを土壌に挿し込む一連の作業が完了する。
【0184】
そして、次の支柱Pの挿入の準備を行う。すなわち、作業者は、畝Aについた目印をたよりに作業車両1を前進させる。この状態において、別の作業者は、第一姿勢F1にある第二支持手段33に支柱Pを支持させる。すなわち、上記構成の支柱挿入部3は、長尺な支柱Pを横臥(傾倒)した姿勢でセットできるため、圃場F内で作業車両1を走行させながら支柱Pをセットすることができる。
【0185】
従って、先の目印に対して支柱挿入部3によって支柱Pを挿し込む位置(起立状態で支柱Pが支持される位置)が一致した状態になれば、操作部24を操作するだけで支柱Pを土壌に挿入することができる。このような手順で支柱Pを挿し込むことで、支柱Pを大量に挿入する必要があっても効率的に支柱Pを挿入することができる。
【0186】
次に上記構成の支柱挿脱装置2によって、圃場Fに立設された支柱Pを引き抜く場合、支柱引抜部4を用いる。すなわち、圃場Fに立設された支柱Pに対して支柱係合体40の支柱遊嵌部400に嵌め合わせるように、作業者は作業車両1を走行させる。
【0187】
具体的には、作業者は作業車両1の運転席に乗車しているため、作業者から支柱係合体40までの距離があり、支柱係合体40の適格な配置を把握しにくい場合がある。
【0188】
そこで、作業者は、地面の近傍に下端を位置させる指示部材49を目視し、その指示部材49を圃場Fに立設された支柱Pに近づけるように、作業車両1を走行させる。これにより、圃場Fに立設された支柱Pに対し、ガイド機構48及び支柱係合体40を接近させることができる。
【0189】
支柱Pに対してガイド機構48及び支柱係合体40を接近すると、ガイド機構48のガイド体480,480、誘導バー46、又はガイドバー45に支柱Pが接触する。すなわち、ガイド機構48の一対のガイド体480,480は、互いのガイド先端部480b、480b同士の間隔が広がっているため、作業車両1の操舵の熟練に関係なく、支柱Pが一対のガイド体480,480間に配置される。また、ガイドバー45及び誘導バー46は、作業車両1側に延出し、互いの間隔が先端側ほど広がっているため、作業車両1の操舵の熟練に関係なく、支柱Pが一対のガイド体480,480間に配置される。
【0190】
このように、支柱Pがガイド体480,480やガイドバー45、誘導バー46に接触する状態においては、支柱Pが支柱遊嵌部400に対して第二方向で位置ずれしている状態になるが、作業車両1を前進させると、支持機構44の横リンク体442に取り付けられた構成は、第二方向又は第二方向を成分に含む方向に移動する。
【0191】
本実施形態において、支持機構44は、四節平行リンクであるため、図30に示すように、横リンク体442は姿勢を維持させた状態で円弧状の軌道で移動する。これに伴い、ガイド機構48や支柱係合体40等は、横リンク体442と同様、姿勢を維持させつつ円弧状の軌道で移動することになるが、支持機構44における第二方向の中央を通って第一方向に延びる中心線を基準に第二方向における一方側及び他方側に移動する。
【0192】
特に、ガイド体480,480やガイドバー45、誘導バー46は、傾斜した姿勢にされているため、支柱Pの接触による力(接触力)を受けると、その力の分力(第二方向の成分を含む方向の力)が作用し、これらは、第二方向(第二方向の成分を含む方向)に移動する。
【0193】
また、図31に示すように、ガイド機構48において、支柱Pがガイド体480に当接すると、ガイド体480に案内されるが、本実施形態において、ガイド体480は軸S8を中心に回転して傾動するため、支柱Pとの接触によって無理な押圧(圧迫)が発生することなく、支柱Pは、ガイド基端部480a間に誘導される。すなわち、ガイド機構48は、支柱Pを下方にある支柱係合体40の支柱遊嵌部400に誘導する。
【0194】
その結果、支柱係合体40の支柱遊嵌部400の前方に支柱Pが位置する状態になる。支柱係合体40は、図27及び図28に示すように、自重によって軸S5を中心に回転し、斜め方向に垂下した状態になっているが、支柱Pがガイドバー45に接触する場合には、その接触力の分力の作用により、図23図26に示すように、支柱Pが支柱遊嵌部400の前方に位置した状態においては、支柱P係合部が起き上がる。また、ガイドバー45に支柱Pが接触せずに支柱係合体40の前方に位置した場合には、支柱Pが支柱遊嵌部400を画定するテーパエッジE3に接触し、その接触力の分力の作用により、支柱係合体40が起き上がる。
【0195】
従って、この状態で支柱挿脱装置2(作業車両1)を前進させると、支柱Pが支柱遊嵌部400に遊嵌される。
【0196】
この状態で、作業者は作業車両1を停止し、作業車両1のPTOを作動させた上で、作業者は操作部24の操作レバーを操作する。そうすると、作業車両1からの油圧を受け、油圧シリンダ22が伸長し、油圧シリンダ22のシリンダ220に連結(固定)された昇降フレーム21が上昇する。なお、油圧シリンダ22の伸長に伴ってシリンダ220が上昇するが、シリンダ220は、上側のサブフレーム26の支持部261の貫通孔を通過して上昇を続ける。
【0197】
そして、昇降フレーム21は、昇降ガイド手段23によって案内されながら上昇する。すなわち、昇降フレーム21は、上下一対のサブフレーム25,26に跨って配置された案内シャフト230に沿って移動可能な案内体231に連結されているため、横ブレすることなく真っすぐ上昇する。
【0198】
このとき、支柱係合体40は、軸S5を中心に回転しようとする。すなわち、支柱係合体40は、支柱Pとの接触で起き上がった状態になっているが、自重により垂下した姿勢に戻ろうとしている。すなわち、支柱係合体40の重心の影響(重心位置を基準とした重量バランスの不均衡)によって軸S5回りに生じる回転力により、支柱係合体40が軸S5を中心に回転しようとする。
【0199】
そうすると、図25及び図26に示すように、上下方向から見て支柱Pと支柱遊嵌部400を画定する直線エッジE1との間にあった隙間が無くなり、結果的に、支柱遊嵌部400に遊嵌された支柱Pに対して支柱係合体40が拗れた状態(支柱遊嵌部400を画定する直線エッジE1が支柱Pに咬み込んだ状態)になる。すなわち、支柱係合体40が支柱Pを保持し、引抜用付勢手段41による上向きの付勢力が、支柱係合体40から支柱Pに伝わる状態になる。
【0200】
これに伴い、引抜用付勢手段41が支柱係合体40に対して上方に向けて付勢し続けると、支柱Pを保持した支柱係合体40が上方に移動する結果、土壌から支柱Pが真っすぐ上方に向けて引き抜かれる。
【0201】
これにより、上記構成の農業用支柱引抜機4は、作業者の作業に熟練を要することなく、支柱Pが曲がってしまうこと(再利用不可になること)を防止しつつ支柱Pを適正な状態で引き抜くことができる。
【0202】
支柱係合体40が上限位置に到達すると、支柱Pは土壌から完全に引き抜かれた状態になる。そして、支柱係合体40が上限位置に到達すると、油圧シリンダ22が短縮し、シリンダ220が真っすぐ下降するに伴い、シリンダ220に連結された昇降フレーム21も下降する。この状態において、引き抜かれた支柱Pには、支柱係合体40のエッジ(直線エッジE1)が咬み込んだ状態になっているが、作業者が支柱Pを保持すると、支柱係合体40が下降しようする結果、軸を支点に逆向きに回転しようとする。これにより、支柱Pに対するエッジの咬み込みが解除され、支柱Pを取り出すことができる。
【0203】
以上のように、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3は、起立状態の支柱Pを上下方向の移動を許容した状態で支持可能な第一支持手段30と、第一支持手段30に支持された支柱Pに対して少なくとも下方に向けて付勢する挿入用付勢手段(付勢手段)32と、支柱Pを支持可能な第二支持手段33であって、上下方向と直交する方向に延びる軸S4を中
心にして回動可能に設けられ、該回動によって支柱Pを傾倒状態で支持する第一姿勢F1と支柱Pを起立状態で支持する第二姿勢F2との間で姿勢変更可能な第二支持手段33と、を備え、第一支持手段30は、第二姿勢F2の第二支持手段33によって支持された支柱Pを受け取り可能に構成され、第二支持手段33は、第一支持手段30が該第二支持手段33から受け取った支柱Pを支持した状態で、第一姿勢F1に姿勢変更可能になる。
【0204】
上記構成の支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3によれば、第一支持手段30に支持される支柱Pは、起立状態にあるため、挿入用付勢手段32が支柱Pに対して下方に向けて付勢すると、その付勢力が土壌に対する挿入力として作用するため、支柱Pを土壌に対して挿入することができる。また、本発明において、第二支持手段33が軸S4を中心に回動することで、第一姿勢F1と第二姿勢F2とに姿勢変更可能であり、第一支持手段30は、第二姿勢F2の第二支持手段33によって支持された支柱Pを受け取り可能に構成されているため、第一姿勢F1の第二支持手段33に対して支柱Pを起立状態にすることなくセットした後、第二支持手段33を第二姿勢F2にすることで、第一支持手段30に対して支柱Pをセットすることができる。
【0205】
そして、第二支持手段33は、第一支持手段30が該第二支持手段33から受け取った支柱Pを支持した状態で、第一姿勢F1に姿勢変更可能になるため、第一支持手段30によって支持されている支柱Pが引抜用付勢手段41によって土壌に挿入されている間に、第二支持手段33を第一姿勢F1に姿勢変更させ、該第二支持手段33に後続の支柱Pをセットすることができる。すなわち、土壌に対する支柱Pの挿入と、後続の支柱Pのセットを並行的に行うことができる。また、第一姿勢F1にある第二支持手段33に対して支柱Pをセットするため、支柱Pを起立状態にしてセットする従来のものより、セット作業が簡便になる。
【0206】
このように、上記構成を有する農業用支柱挿入機は、支柱Pのセット作業の容易化に加え、土壌に対する一本当たりの支柱Pの挿入作業が短時間化されるため、支柱Pの挿入作業の効率化を図ることができる。
【0207】
また、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3の挿入用付勢手段32は、上下方向に移動可能な押圧片320であって、第一支持手段30に支持される支柱Pの上端に対して上方から対向可能な押圧片320と、押圧片320を上下方向に昇降させるアクチュエータ22と、を備えている。
【0208】
上記構成によれば、第一支持手段30に支柱Pがセットされる(支持される)と、支柱Pの上端が押圧片320と対向する。この状態でアクチュエータ22が押圧片320を下降させると、押圧片320が支柱Pの上端に当接し、押圧片320の下降による付勢力(下向きの力)が支柱Pに伝達される。これにより、支柱Pは、土壌に対して必要深さにまで確実に挿入される。
【0209】
また、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3は、第二支持手段33の姿勢を変更させる姿勢変更手段34を備え、姿勢変更手段34は、第二支持手段33に繋がる索条体340であって、押圧片320の上昇によって引っ張り力が作用する索条体340を含み、押圧片320が上限位置に到達した状態で第二支持手段33を第二姿勢F2にする一方、押圧片320が下限位置に到達した状態で第二支持手段33を第一姿勢F1にするようになっている。
【0210】
上記構成によれば、第二支持手段33の姿勢を変更させる姿勢変更手段34が、第二支持手段33に繋がる索条体340であって、押圧片320の上昇によって引っ張り力が作用する索条体340を含むため、押圧片320の昇降に連動して第二支持手段33を第一
姿勢F1と第二姿勢F2とに姿勢変更させることができる。
【0211】
具体的には、押圧片320の上昇時に生じる上向きの力が第二支持手段33に繋がる索条体340に対する引っ張り力として作用する。この引っ張り力によって第一姿勢F1にある第二支持手段33が引き寄せられ(引き起こされ)、押圧片320が上限位置に到達した状態で第二支持手段33が第二姿勢F2になる。
【0212】
これに対し、押圧片320が下降する状態において、押圧片320が上昇するときと逆向きに移動する結果、押圧片320の移動(上昇)に伴う上向きの力が解除されることになり、第二支持手段33に対する索条体340による引き寄せ(第二姿勢F2にする力)が解除され、第二姿勢F2にあった第二支持手段33が第一姿勢F1になる。このように、姿勢変更手段34は、押圧片320に対して昇降時作用する力を索条体340に伝達することで、第二支持手段33の姿勢を変更させるため、簡単な構成で押圧片320の位置と第二支持手段33の姿勢とを対応させることができる。
【0213】
第一支持手段30は、起立した支柱Pの上端側を支持する上部支持部300を含み、上部支持部300は、押圧片320に対して直接的又は間接的に連結されている。
【0214】
上記構成によれば、押圧片320に対して第一支持手段30の上部支持部300が直接的又は間接的に連結されるため、押圧片320の昇降に併せて上部支持部300も昇降する。すなわち、上部支持部300は押圧片320と一緒に移動する。このようにすれば、押圧片320によって押圧される支柱Pの上端の近くが上部支持部300によって支持された状態が維持される。すなわち、押圧片320による押圧部分と上部支持部300によって支持される部分との距離が一定に保たれる結果、押圧片320が支柱Pを押圧する(付勢する)際に、支柱Pの上端側が不用意に横方向に触れてしまうことが防止されるため、挿入用付勢手段32による付勢力(土壌に対する挿入力)を支柱Pに対して的確に伝えることができる。従って、支柱Pが座屈する等といったトラブルを抑え、土壌に対する支柱Pの挿入を的確に行うことができる。
【0215】
上部支持部300は、それぞれが支柱Pの受け取り側に延びる一対のガイド体304,304であって、少なくとも受け取り側の先端部が上下方向と直交する方向に接離可能な一対のガイド体304,304と、一対のガイド体304,304の互いの先端部が接近するように、一対のガイド体304,304を付勢するガイド付勢手段305と、を備え、第二姿勢F2になる第二支持手段33に支持される支柱Pが、ガイド付勢手段305の付勢に抗して一対のガイド体304,304の先端部を離間させつつ該一対のガイド体304,304間に進入可能に構成される。
【0216】
上記構成によれば、一対のガイド体304,304は、ガイド付勢手段305によって付勢されているため、常態において互いの先端部同士を接近させた状態になっているが、第二支持手段33が第一姿勢F1から第二姿勢F2に変更させ、第二姿勢F2になった、或いは、第二姿勢F2になる直前において、支持されている支柱Pが一対のガイド体304,304の先端部の間に到達したときに、支柱Pが一対のガイド体304,304の先端部を両側に押しのけるように前進する。そして、先端部を通過した支柱Pは、一対のガイド体304,304に挟まれる、或いは包囲された状態になり、上下方向と直交する方向への移動が規制される。従って、上記構成にすることで、第二支持手段33から支柱Pを受け取り可能としつつ、受け取った支柱Pを起立状態で維持させつつ支持できる状態になる。
【0217】
第一支持手段30は、起立した支柱Pの下端を受ける支柱受部301を含み、支柱受部301は、挿入用付勢手段32による付勢力が支柱Pを介して作用した状態で、支柱Pを
受ける位置から退避する。
【0218】
上記構成によれば、挿入用付勢手段32による支柱Pに対する付勢がない状態で、支柱Pの下端が支柱受部301によって支持されるため、農業用支柱挿入機3を移動させるとき等において、支柱Pの下端が土壌に接触することがなく(引きずられる)ことがない。すなわち、第一支持手段30に支持させた支柱Pが移動を阻害することが防止される。そして、支柱受部301は、支柱Pに挿入用付勢手段32の付勢力が作用することで、支柱Pを受ける位置から退避する(逃げる)ため、土壌に対する支柱Pの挿入も担保される。
【0219】
第一支持手段30は、支柱Pの下端が支柱受部301に受けられた状態で、該支柱Pの下端部に対して少なくとも第二支持手段33からの受け取り側で係止可能な係止体302を含む。
【0220】
このようにすれば、係止体302が支柱Pの下端部と係止することで、支柱受部301上にある支柱Pの下端(下端側)が第二支持手段33からの受け取り側に移動することが規制される。これにより、支柱Pが起立状態にあるときに、該支柱Pが不用意に支柱受部301から脱落することも防止され、支柱Pの下端が一定の位置で維持する。その結果、支柱Pを土壌に挿入する際に、支柱Pの下端が目標となる支柱Pの挿入位置から大きくずれることなく、適正な位置に挿入される。
【0221】
支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3は、支柱Pの挿入予定位置であって、先行して土壌に挿入された支柱Pの位置から所定距離離れた予定位置を作業者に知らせる位置報知手段35を備えている。
【0222】
上記構成によれば、支柱Pの挿入予定位置が位置報知手段35によって作業者に知らされるため、一定間隔又は所定間隔で支柱Pを挿入することができる。なお、ここで「作業者に知らせる」とは、視覚を通じて予定位置を認識させることは勿論のこと、聴覚を通じて予定位置にあることを認識させることも含まれる。
【0223】
また、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3は、第一支持手段30、第二支持手段33、及び引抜用付勢手段41を支持するベース200を備え、ベース200は、作業車両1に連結可能に構成されている。
【0224】
上記構成によれば、第一支持手段30、第二支持手段33、及び挿入用付勢手段32を支持するベース200が作業車両1に連結可能に構成されるため、作業車両1を操舵(運転)することで、農業用支柱挿入機3全体を圃場F内で移動させることができる。これにより、支柱Pの挿入位置を所望する位置に容易に調整することができる。
【0225】
また、支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、土壌に挿し込まれて起立状態にある支柱Pに係合可能な支柱係合体40であって、上下方向に移動可能な支柱係合体40と、支柱係合体40に対して少なくとも上方に向けて付勢する引抜用付勢手段(付勢手段)41と、を備え、支柱係合体40は、起立状態にある支柱Pを上下方向と直交する第一方向から遊嵌可能な支柱遊嵌部400を有し、第一方向と同方向又は略同方向に延びる軸S5を中心に回転可能に構成され、少なくとも引抜用付勢手段41が上向きに付勢した状態で、軸S5を中心にして該支柱係合体40を回転させる回転力が作用するように構成される。
【0226】
上記構成の支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4によれば、土壌に挿し込まれて起立状態にある支柱Pに係合可能な支柱係合体40を備え、支柱係合体40は、起立状態にある支柱Pを上下方向と直交する第一方向から遊嵌可能な支柱遊嵌部400を有しているため、起立状態にある支柱Pを支柱遊嵌部400に対して第一方向から余裕をもって嵌めこむこ
とができる。すなわち、支柱Pとの間に隙間ができる状態で支柱遊嵌部400に支柱Pを嵌め込むことができる。
【0227】
そして、支柱係合体40は、上下方向に移動可能であり、さらに、支柱遊嵌部400に対して支柱Pの遊嵌する第一方向と同方向又は略同方向に延びる軸S5を中心に回転可能に構成されるとともに、少なくとも引抜用付勢手段41が上向きに付勢した状態で、軸S5を中心にして支柱係合体40を回転させる回転力が作用するように構成されるため、引抜用付勢手段41によって支柱係合体40が上方に向けて付勢されると、支柱係合体40は軸を中心に回転(傾倒)しようとする。すなわち、引抜用付勢手段41の付勢による上向きの力、或いは、支柱係合体40の重心の影響(重心位置を基準とした重量バランスの不均衡)によって軸S5回りに生じる回転力により、支柱係合体40が軸を中心に回転しようとする。
【0228】
そうすると、上下方向から見て支柱Pと支柱遊嵌部400を画定するエッジとの間にあった隙間が無くなり、結果的に、支柱遊嵌部400に遊嵌された支柱Pに対して支柱係合体40が拗れた状態(支柱遊嵌部400を画定するエッジが支柱Pに咬み込んだ状態)になる。すなわち、支柱係合体40が支柱Pを保持し、引抜用付勢手段41による上向きの付勢力が、支柱係合体40から支柱Pに伝わる状態になる。
【0229】
これに伴い、引抜用付勢手段41が支柱係合体40に対して上方に向けて付勢し続けると、支柱Pを保持した支柱係合体40が上方に移動する結果、土壌から支柱Pが真っすぐ上方に向けて引き抜かれる。
【0230】
これにより、上記構成の支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、作業者の作業に熟練を要することなく、支柱Pが曲がってしまうこと(再利用不可になること)を防止しつつ支柱Pを適正な状態で引き抜くことができる。
【0231】
引抜用付勢手段41は、上下方向に移動可能な昇降フレーム21と、昇降フレーム21を上下方向に移動させるアクチュエータ22と、を備え、支柱係合体40は、軸を中心に回転可能な状態で、昇降フレーム21に直接的又は間接的に連結される。
【0232】
上記構成によれば、アクチュエータ22が昇降フレーム21を上昇させるときに作用する上昇力(上向きの力)が、昇降フレーム21に直接的又は間接的に連結された支柱係合体40に対して上向きの付勢力として作用する。
【0233】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、昇降フレーム21に連結される支持機構44を備え、支持機構44は、第一方向及び上下方向のそれぞれに対して直交する第二方向又は該第二方向の成分を含む方向で支柱係合体40を移動可能に直接的又は間接的に支持する。
【0234】
上記構成によれば、昇降フレーム21に連結される支持機構44を備え、支持機構44が支柱係合体40を直接的又は間接的に支持するため、アクチュエータ22が昇降フレーム21を上昇させるときに作用する上昇力(上向きの力)が、昇降フレーム21及び支持機構44を介して支柱係合体40に対して上向きの付勢力として作用する。
【0235】
また、支持機構44は、第一方向及び上下方向のそれぞれに対して直交する第二方向又は該第二方向の成分を含む方向で支柱係合体40を移動可能に直接的又は間接的に支持するため、土壌に挿し込まれて起立状態にある支柱Pに対して支柱遊嵌部400が第二方向で位置ずれしている状態であっても、支柱係合体40が第二方向又は第二方向を成分に含む方向で移動させることで、起立状態にある支柱Pに対して支柱遊嵌部400を位置合わ
せすることができる。これにより、支柱遊嵌部400に対して支柱Pを円滑に遊嵌させることができる。
【0236】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、支柱係合体40から延出するガイドバー45を備え、ガイドバー45は、支柱遊嵌部400の第二方向の両側のうちの一方側で支柱係合体40に固定される基端部と、該基端部に対して反対側の先端部であって、第一方向及び第二方向において基端部よりも支柱遊嵌部400から外方側の離れた位置にある先端部を有する。
【0237】
上記構成によれば、支柱係合体40から延出するガイドバー45を備え、ガイドバー45は、支柱遊嵌部400の第二方向の両側のうちの一方側で支柱係合体40に固定される基端部と、該基端部に対して反対側の先端部であって、第一方向及び第二方向において基端部よりも支柱遊嵌部400から外方側の離れた位置にある先端部と、を有するため、ガイドバー45が支柱係合体40に対して偏荷重を作用させることになり、支柱係合体40に対して軸回りの回転力を作用させる。すなわち、ガイドバー45は、少なくとも先端部側を支柱係合体40よりも下方側に位置させようとして、支柱係合体40の重心回りでの重量(荷重)バランスに不均衡を生じさせ、支柱係合体40に対して軸回りに生じる回転力を生じさせる。
【0238】
これにより、軸S5を中心にして支柱係合体40が回転し、支柱係合体40が傾倒乃至垂下した姿勢になる。すなわち、支柱遊嵌部400に対して支柱Pを遊嵌させる第一方向から見て、投影的に、支柱遊嵌部400の中心線が起立状態にある支柱Pと交差した態様になり、ガイドバー45についても支柱Pと交差した態様になる。
【0239】
この状態では、支柱係合体40の支柱遊嵌部400に対して起立した支柱Pが遊嵌できない状態になるが、ガイドバー45は、基端部に対して反対側の先端部であって、第一方向及び第二方向において基端部よりも支柱遊嵌部400から外方側の離れた位置にある先端部を有するため、上記の態様では、斜め下方の延びた状態になる。
【0240】
これにより、支柱Pがガイドバー45に接近して当接すると、ガイドバー45と支柱Pとの当接(接触)により、第一方向に作用する接触力の分力がガイドバー45に作用し、支柱係合体40が起き上がる。これにより、支柱遊嵌部400の中心(嵌め合わせの中心)と起立状態にある支柱Pの中心とが対応した状態になり、最終的に支柱Pが支柱遊嵌部400に遊嵌される。
【0241】
また、支柱Pと支柱遊嵌部400とが第二方向で大きく位置ずれしている場合には、ガイドバー45と支柱Pとの当接(接触)により、第一方向に作用する接触力の分力がガイドバー45に作用し、その分力に含まれる第二方向の成分(力)によって、支持機構44に支持された支柱係合体40が第二方向で移動する。これにより、支柱Pに対して支柱遊嵌部400が位置合わせされ、支柱遊嵌部400の中心線が起立状態にある支柱Pの中心線と対応した状態(投影的に一致又は略一致した状態)になり、最終的に支柱Pが支柱遊嵌部400に遊嵌される。
【0242】
そして、上記のとおり、ガイドバー45が支柱係合体40に対して軸回りの回転力を生じさせるため、引抜用付勢手段41が支柱係合体40を付勢すると、支柱遊嵌部400に遊嵌された支柱Pに対して支柱係合体40が拗れた状態(支柱遊嵌部400を画定するエッジが支柱Pに咬み込んだ状態)になる。その結果、支柱係合体40が支柱Pを保持した状態になり、引抜用付勢手段41が支柱係合体40に対して上方に向けて付勢し続けることで、土壌から支柱Pが真っすぐ上方に向けて引き抜かれる。
【0243】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、支持機構44に連結される支持フレーム47を備え、軸S5は、支柱係合体40における支柱遊嵌部400の第二方向の両側のうちの他方側と支持フレーム47とを枢結し、支持機構44は、第二方向又は該第二方向の成分を含む方向で支柱係合体40及び支持フレーム47を移動可能に支持している。
【0244】
上記構成によれば、軸S5とガイドバー45との間に支柱係合体40が存在することになり、支持フレーム47に対して軸を介して連結された支柱係合体40は、常態においてガイドバー45の重量を受け、軸S5を中心に回転(傾倒)した姿勢になる。従って、引抜用付勢手段41が支柱係合体40を上向けに付勢した状態において、支柱遊嵌部400に遊嵌された支柱Pに対して拗れ(咬み込み)を確実に作用させることができる。
【0245】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、起立状態にある支柱Pに支柱遊嵌部400を誘導する誘導バー46を備え、誘導バー46は、支柱遊嵌部400の第二方向の両側のうちの他方側にある支持フレーム47に連結される基端部と、該基端部に対して反対側の先端部であって、第一方向及び第二方向において基端部よりも支柱遊嵌部400から外方側の離れた位置にある先端部を有し、ガイドバー45と誘導バー46との間隔が、互いの基端部側から先端部側に向かうほど広くなっている。
【0246】
上記構成によれば、起立状態にある支柱Pに対して支柱遊嵌部400が位置ずれしている状態において、支柱Pを支柱遊嵌部400に遊嵌させようとすると、ガイドバー45又は誘導バー46の何れかに支柱Pが接触する。この接触による力によって、支持機構44に支持された支持フレーム47及び支柱係合体40を移動する。その結果、支柱Pの配置(中心線)と支柱遊嵌部400の配置(中心)とが対応(一致)する。これによって、支柱遊嵌部400に支柱Pを円滑に遊嵌させることができる。
【0247】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、起立状態にある支柱Pに支柱遊嵌部400を誘導するガイド機構48であって、支柱係合体40に対して上下方向で並んで配置され、支柱係合体40とともに支持機構44に支持されるガイド機構48を備え、ガイド機構48は、第二方向に並ぶ一対のガイド体480,480であって、それぞれが上下方向に延びる軸S8回りで回動可能な一対のガイド体480,480と、一対のガイド体480,480を付勢するガイド付勢手段481と、を備え、一対のガイド体480,480のそれぞれは、支柱遊嵌部400に遊嵌される支柱Pの予定配置位置の両側にあるガイド基端部480aと、該ガイド基端部480aとは反対側のガイド先端部480bであって、支柱Pを遊嵌させる側にあるガイド先端部480bと、を有し、第二方向における一対のガイド体480,480の間隔は、ガイド基端部480a側からガイド先端部480b側に向けて拡大し、常態において互いのガイド基端部480aが接近するようにガイド付勢手段481がガイド体480,480を付勢していてもよい。
【0248】
上記構成によれば、一対のガイド体480,480のそれぞれは、支柱遊嵌部400に対して遊嵌される支柱Pの予定配置位置の両側にあるガイド基端部480aと、該ガイド基端部480aとは反対側のガイド先端部480bとを有し、ガイド基端部480aからガイド先端部480bに向けて互いの間隔が拡大しているため、起立状態にある支柱Pに対して支柱遊嵌部400が位置ずれしている状態において、支柱Pを支柱遊嵌部400に遊嵌させようとすると、支柱Pがガイドバー45又は誘導バー46に接触するか、一対のガイド体480,480の何れかに接触する。
【0249】
支柱Pがガイドバー45又は誘導バー46に接触した場合は、上記の通りであるが、一対のガイド体480,480に接触した場合、支柱Pに接触したガイド体480,480は、ガイド付勢手段481による付勢に抗して軸回りで回転する。これによって、支柱Pがガイド体480,480に接触(衝突)するときの衝撃が緩和される。
【0250】
そして、ガイド体480,480と支柱Pとの接触(接触による力)によって、支持機構44に支持された支柱係合体40が第二方向に移動する。そして、一対のガイド体480,480のガイド基端部は、支柱遊嵌部400に対して遊嵌される支柱Pの予定配置位置の両側にあるため、支柱Pが一対のガイド体480,480のガイド基端部480aに到達することで、支柱Pと支柱遊嵌部400とが一致する。これによって、支柱遊嵌部400に支柱Pを円滑に遊嵌させることができる。
【0251】
支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4は、支柱係合体40、及び引抜用付勢手段41を支持するベース200を備え、ベース200は、作業車両1に連結可能に構成され、支柱係合体40は、第一方向と作業車両1の走行方向とが一致するように配置されている。
【0252】
上記構成によれば、作業車両1を走行させることで、土壌に挿し込まれて起立状態にある支柱Pに対して支柱係合体40の支柱遊嵌部400を容易に遊嵌させることができる。
【0253】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加え得ることは勿論のことである。
【0254】
上記実施形態において、昇降フレーム21を昇降させるアクチュエータ22に油圧シリンダが採用されたが、これに限定されない。例えば、アクチュエータ22は、モータであってもよい。モータは、油圧モータであっても、電動モータであってもよい。この場合、例えば、モータの出力軸に取り付けられるピニオンギアと、ピニオンギアと噛合するラックギアであって、上下方向に延びて昇降フレームに固定されるラックギアとを設けてもよい。また、モータの出力軸に巻き取りドラムを連結し、昇降フレームに繋がる索条体を巻き取りドラムに巻き付けたり、巻きを解いたりすることで、昇降フレームを昇降させるようにしてもよい。この場合、索条体を巻き掛ける滑車(プーリー)を適宜配置することは言うまでもない。
【0255】
上記実施形態の支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3において、押圧片320の昇降と第二支持手段33の姿勢変更とを連動させたが、これに限定されない。押圧片320の昇降と第二支持手段33の姿勢変更とを独立して動作させるようにしてもよい。すなわち、押圧片320を昇降させる駆動と、第二支持手段33を姿勢変更させる駆動とを別個にしてもよい。
【0256】
上記実施形態において、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3と支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4とを備え、これらにおいてアクチュエータ22及び昇降フレーム21を共用させたが、これに限定されない。例えば、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3用のアクチュエータ22及び昇降フレーム21と、支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4用のアクチュエータ22及び昇降フレーム21とを別個独立して設けてもよい。
、これらの
上記実施形態において、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3と支柱引抜部(農業用支柱引抜機)4とを備えるため、機器全体を支柱挿脱機としたが、これに限定されない。例えば、圃場Fの土壌に対する支柱Pの挿し込み専用として全体を農業用支柱挿入機3(農業用支柱挿入機3)としてもよい。
【0257】
具体的には、装置全体を農業用支柱挿入機3とする場合、上記実施形態において装備した支柱引抜部4を取り外したものにしてもよい。また、図32に示すように、上記実施形態における支柱引抜部4に代えて、支柱挿入部3を配置してもよい。すなわち、第二方向の中央を境にして、第二方向の両側に支柱挿入部3を配置してもよい。なお、言うまでもないが、このように専用機とする場合には、上記実施形態において支柱引抜部4と共用と
されていた構成(アクチュエータ22及び昇降フレーム21)は、農業用支柱挿入機3の専用の構成として採用される。
【0258】
また、支柱Pの引き抜き専用機として全体を農業用支柱引抜機4(農業用支柱引抜機4)としてもよい。具体的には、装置全体を農業用支柱引抜機4とする場合、上記実施形態において装備した支柱挿入部3を取り外したものにしてもよい。また、図33に示すように、上記実施形態における支柱挿入部3に代えて、支柱引抜部4を配置してもよい。すなわち、第二方向の中央を境にして、第二方向の両側に支柱引抜部4を配置してもよい。なお、言うまでもないが、このように専用機とする場合には、上記実施形態において支柱挿入部3と共用とされていた構成(アクチュエータ22及び昇降フレーム21)は、農業用支柱引抜機4の専用の構成として採用される。
【0259】
上記実施形態において、支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3の位置報知手段35は、支柱Pの間隔L以上の長さに設定される棒体350と、棒体350の先端部に取り付けられたマーキング部材351とを備えたが、これに限定されない。例えば、図34に示すように、位置報知手段35は、レーザーポインターであってもよい。
【0260】
具体的には、位置報知手段35は、昇降フレーム21又はベースフレーム20の何れかに固定されるレーザーポインターであってもよい。位置報知手段35をレーザーポインターとした場合、レーザーポインターの設置高さHと、レーザーポインターから出射するレーザー光LBの角度θを決定することで、レーザー光LBの照射ポイントを先行の支柱P(立設した支柱P)の根本に合わせた状態で、先行の支柱Pから所定間隔Lをあけた位置を後続の支柱Pを挿し込む位置として認識(把握)することができる。すなわち、先行の支柱Pを土壌に挿入した後、農業用支柱挿入機3を前進させ、レーザーポインター35からのレーザー光LBの照射ポイントを先行の支柱P(立設した支柱P)の根本も合った位置が、後続の支柱Pの挿入位置となる。従って、簡易な構成で支柱Pを所定間隔Lで立設することができる。
【0261】
また、図35に示すように、位置報知手段35は、圃場Fの地面上で回転する測定用車輪を備え、測定用車輪の回転量に基づいて移動量L1を把握し、その移動量L1が所定間隔Lとなったときに、作業者に対して報知するようにしてもよい。このようにすれば、農業用支柱挿入機3で先行の支柱Pを挿入した後、農業用支柱挿入機3を前進(移動)させると、位置報知手段35の測定用車輪が回転する。この測定用車輪の回転量は、農業用支柱挿入機3の移動量と対応するため、支柱Pの設置する間隔の精度が高くなるメリットがある。なお、測定用車輪の回転量の把握は、ロータリーエンコーダによる電気的な出力(パルス)で把握してもよいが、所定の回転量(距離)でスイッチがオン又はオフとなるリミットスイッチで電気信号の切り換えを行い、この電気的信号に基づいて、音及び光の何れか1つで作業者に対して報知してもよい。
【0262】
上記実施形態の支柱挿入部(農業用支柱挿入機)3において、姿勢変更手段34の索条体340が支持バー330とベース200(支持アーム5)との跨って配置されたが、これに限定されない。例えば、図36に示すように、姿勢変更手段34において、索条体340の一端が支持バー330(第二支持手段33)に連結され、索条体340の他端が押圧片320に直接的又は間接的に連結されてもよい。この場合、プーリー341を一定位置に固定し、このプーリー341に索条体340が巻き掛けされる。このようにすれば、押圧片320の昇降に応じた張力が索条体340に作用するため、上記実施形態と同様、押圧片320の昇降に連動して第二支持手段33(支持バー330)を姿勢変更させることができる。なお、図36において、索条体340は押圧片320に直接接続されているが、押圧片320と連動する昇降フレーム21に連結されても勿論よい。
【0263】
また、この場合においても、押圧片320の下限位置から上限位置の移動量は、支柱Pを土壌に挿し込む深さDに対して支柱Pを配置するために必要な余裕代(第二支持手段33を第二姿勢F2にするときに支柱Pが押圧片320に干渉することのない余裕代)αを加えた量(D+α)に設定される。また、言うまでもないが、押圧片320の下限位置の高さは、支柱Pの全長から土壌に対する挿し込む深さDを差し引いた値である。
【0264】
さらに、図37に示すように、姿勢変更手段34において、索条体340の一端が支持バー330の先端側に連結され、索条体340の他端が支持バー330の基端側に連結されてもよい。この場合、上記実施形態と同様に、プーリー341は昇降フレーム21に取り付けられ、昇降可能な状態で索条体340が巻き掛けられる。なお、図37には、索条体340の他端が直接支持バー330に連結されているが、上記実施形態と同様に、引っ張りコイルバネを介して連結されてもよい。この場合においても、プーリー341が昇降することで、索条体340に引っ張り力とその解除が作用するため、上記実施形態と同様、押圧片320の昇降に連動して第二支持手段33(支持バー330)を姿勢変更させることができる。
【0265】
なお、上記の何れの場合においても、押圧片320又は押圧片320と一緒に昇降する部材の下限位置から上限位置の移動量は、支柱Pを土壌に挿し込む深さDに対して支柱Pを配置するために必要な余裕代(第二支持手段33を第二姿勢F2にするときに支柱Pが押圧片320に干渉することのない余裕代)αを加えた量(D+α)に設定される。また、言うまでもないが、押圧片320の下限位置の高さは、支柱Pの全長から土壌に対する挿し込む深さDを差し引いた値である。
【0266】
上記実施形態において、支柱受部301が第二支持手段33における支柱Pを支持する構成として兼用されたが、これに限定されない。例えば、支柱受部301は、第一支持手段30の専用部材としても勿論よい。
【0267】
具体的に、図38に示すように、支柱受部301は、支柱受片311が受部本体310の下側の開放部分を開閉可能に受部本体310に枢着されるとともに、引っ張りコイルバネ312で付勢されることを前提に、一定位置(押圧片320と上下方向と対向する位置)に固定され、第二支持手段33が第二姿勢F2になったとき、或いは、第二姿勢F2になりつつあるときに、支柱Pの下端が乗り移るようにされてもよい。
【0268】
このようにすれば、押圧片320によって支柱Pが押圧(付勢)されたときに、その押圧力が引っ張りコイルバネ312の付勢に抗して支柱受片311を押し下げることで、押圧片320が退避する。すなわち、第一支持手段30の支柱受部301は、挿入用付勢手段32による付勢力が支柱Pを介して作用した状態で、全体が支柱Pを受ける位置から退避するものに限定されるものではなく、上記の通り、一部(支柱受片311)が支柱Pを受ける位置から退避するものであってもよい。なお、この場合、第二支持手段33は、例えば支持バー330に対して長手方向に間隔をあけてU字状の支柱受部材331を複数(二つ以上)取り付ければよい。このようにすると、第二支持手段33が第二姿勢F2になるにつれ、支柱Pの傾斜角度が大きくなり、支柱Pが自身の軸心方向に移動(滑る)ことが考えられるため、支柱受部301の受部本体310の少なくとも第一壁310aの高さを高くしておき、第一壁310aで支柱Pを受け止めるようにすることが好ましい。
【0269】
上記実機形態において、支柱挿脱装置2が作業車両1に連結可能に構成され、作業車両1の走行によって移動可能にされたが、これに限定されない。例えば、ベース200を支持する車輪を備え、ベースが走行可能に構成されてもよい。
【0270】
具体的には、農業用支柱挿入機3の場合、図39に示すように、第一支持手段30、第
二支持手段33、及び挿入用付勢手段32を支持するベース200(ベースフレーム20)と、ベース200(ベースフレーム20)を支持する車輪60と、を備え、ベース200(ベースフレーム20)が走行可能となるようにしてもよい。
【0271】
また、農業用支柱引抜機4の場合、図40に示すように、支柱係合体40、及び引抜用付勢手段41を支持するベース200(ベースフレーム20)と、ベース200(ベースフレーム20)を支持する車輪60と、を備え、ベース200(ベースフレーム20)が走行可能となるようにし、支柱係合体40は、第一方向(支柱Pを支柱遊嵌部400に遊嵌する方向)とベース200(ベースフレーム20)の走行方向とが一致するように配置されてもよい。
【0272】
上記の何れの場合においても、油圧式のアクチュエータを採用するには、ベース200(ベースフレーム20)に対して電動式又エンジン駆動式の油圧ユニット61を搭載することは勿論である。また、動力による駆動によって自走するようにしてもよいし、手押し式(人力)で走行可能にしてもよいが、装置全体を走行させるために、操舵を行うためのハンドル62を設けることも勿論である。なお、この場合、ハンドル62の近傍に操作部24を設置すれば、一人で支柱Pの挿入作業や引抜作用を行うことも可能となる。
【符号の説明】
【0273】
1 :作業車両
2 :支柱挿脱装置
3 :支柱挿入部(農業用支柱挿入機)
4 :支柱引抜部(農業用支柱引抜機)
5 :支持アーム
10 :連結機構
20 :ベースフレーム
21 :昇降フレーム
22 :アクチュエータ(油圧シリンダ)
23 :昇降ガイド手段
30 :第一支持手段
32 :挿入用付勢手段(付勢手段)
33 :第二支持手段
34 :姿勢変更手段
35 :位置報知手段
40 :支柱係合体
41 :引抜用付勢手段(付勢手段)
43 :取付アーム
44 :支持機構
45 :ガイドバー
46 :誘導バー
47 :支持フレーム
48 :ガイド機構
300 :上部支持部
301 :支柱受部
302 :係止体
304 :ガイド体
305 :ガイド付勢手段(引っ張りコイルバネ)
309 :支柱ガイド部材
309a :ガイド部
340 :索条体
341 :プーリー
400 :支柱遊嵌部
480 :ガイド体
480a :ガイド基端部
480b :ガイド先端部
481 :ガイド付勢手段
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