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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155562
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収設備
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241024BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241024BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241024BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241024BHJP
   C25B 1/46 20060101ALI20241024BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
C25B9/00 E
C25B1/46
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070375
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太原 俊男
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
(72)【発明者】
【氏名】柳生 基茂
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡部 寛史
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄生
(72)【発明者】
【氏名】太田 行俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
(72)【発明者】
【氏名】西村 芙美
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA02
4D002DA12
4D002EA03
4D002EA07
4D002EA13
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB09
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA08
4D020BB03
4D020BC04
4D020CB01
4D020CB08
4D020CD04
4D020DA03
4D020DB06
4D020DB08
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC22
4G146JC29
4G146JC36
4K021AA01
4K021AA03
4K021AB01
4K021BA02
4K021BA03
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB31
4K021DC03
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】熱エネルギを使用せずに二酸化炭素の吸収および分離が可能な二酸化炭素回収設備を提供することである。
【解決手段】実施形態の二酸化炭素回収設備1は、塩化ナトリム水溶液を電気分解して水酸化ナトリウム水溶液、塩素ガス、水素ガスを生成する電気分解装置10と、電気分解装置10で生成された水酸化ナトリウム水溶液を含む吸収液を用いて二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を吸収して、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを含む二酸化炭素吸収水溶液を生成する吸収装置20と、吸収装置20で生成された二酸化炭素吸収水溶液に電気分解装置10で生成された塩素ガスを反応させて二酸化炭素吸収水溶液から二酸化炭素を分離するとともに、塩化ナトリム水溶液を生成する分離装置40と、分離装置40で生成された塩化ナトリム水溶液を電気分解装置10に導入する配管70とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ナトリム水溶液を電気分解して水酸化ナトリウム水溶液、塩素ガス、水素ガスを生成する電気分解装置と、
前記電気分解装置で生成された水酸化ナトリウム水溶液を含む吸収液を用いて二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を吸収して、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを含む二酸化炭素吸収水溶液を生成する吸収装置と、
前記吸収装置で生成された前記二酸化炭素吸収水溶液に前記電気分解装置で生成された塩素ガスを反応させて前記二酸化炭素吸収水溶液から二酸化炭素を分離するとともに、塩化ナトリム水溶液を生成する分離装置と、
前記分離装置で生成された塩化ナトリム水溶液を前記電気分解装置に導入する塩化ナトリム水溶液導入系統と
を具備することを特徴とする二酸化炭素回収設備。
【請求項2】
前記電気分解装置で生成された水酸化ナトリウム水溶液が25~35wt%水酸化ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項3】
前記吸収装置は、
前記吸収液を上部から導入する吸収液導入部、前記気体を導入する気体導入部、および前記二酸化炭素吸収水溶液を底部に貯留する二酸化炭素吸収水溶液貯留部を備える吸収塔と、
前記二酸化炭素吸収水溶液貯留部から導出された前記二酸化炭素吸収水溶液から析出物を分離する析出物分離部と、
前記析出物分離部において前記析出物が分離された前記二酸化炭素吸収水溶液の一部と前記電気分解装置で生成された水酸化ナトリウム水溶液とを混合して生成された前記吸収液を前記吸収塔の前記吸収液導入部に導入する吸収液導入系統と
を備えることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項4】
前記気体導入部は、前記二酸化炭素吸収水溶液貯留部に貯留されている前記二酸化炭素吸収水溶液に前記気体を吹き込むことを特徴とする請求項3記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項5】
前記二酸化炭素吸収水溶液の水素イオン濃度指数pHが8~12であることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項6】
前記二酸化炭素吸収水溶液の温度が30~60℃であることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項7】
前記分離装置は、
前記析出物分離部から前記二酸化炭素吸収水溶液を導入する二酸化炭素吸収水溶液導入部と、
前記二酸化炭素吸収水溶液導入部から導入された前記二酸化炭素吸収水溶液を貯留する第2の二酸化炭素吸収水溶液貯留部と、
前記第2の二酸化炭素吸収水溶液貯留部の前記二酸化炭素吸収水溶液に前記電気分解装置で生成された塩素ガスを吹き込む塩素ガス導入部と、
前記二酸化炭素吸収水溶液から分離された二酸化炭素を排出する二酸化炭素排出部と
を備えることを特徴とする請求項3記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項8】
前記二酸化炭素吸収水溶液と塩素ガスとが反応する前記第2の二酸化炭素吸収水溶液貯留部内の水溶液の水素イオン濃度指数pHが6~10であることを特徴とする請求項7記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項9】
前記二酸化炭素吸収水溶液導入部は、前記第2の二酸化炭素吸収水溶液貯留部よりも上方に設けられていることを特徴とする請求項7記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項10】
前記分離装置は、
前記二酸化炭素排出部から排出された二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部を備えることを特徴とする請求項7記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項11】
前記電気分解装置で生成された水素ガスを回収する水素回収部を備えることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収設備。
【請求項12】
前記電気分解装置で生成された塩素ガスを回収する塩素回収部を備えることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収設備に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策の一つとして、火力発電設備などから排出される二酸化炭素(CO)を回収する技術が求められている。従来の二酸化炭素回収技術として、アミン溶液を吸収剤とする大規模な二酸化炭素回収設備が検討されている。この二酸化炭素回収設備において、二酸化炭素は、アミン溶液によって吸収される。二酸化炭素を吸収したアミン溶液は、加熱されることによって二酸化炭素を放出する。そして、放出された二酸化炭素は、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5701998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアミン溶液を用いた二酸化炭素回収設備では、二酸化炭素を吸収したアミン溶液から二酸化炭素を分離する際、大量の熱エネルギを必要とする。例えば、高効率LNG火力発電設備においては、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は3~5%程度と低いため、アミン溶液による二酸化炭素の吸収効率および分離効率は低い。そのため、二酸化炭素を吸収および分離する工程でより多くの熱エネルギを必要とする。
【0005】
アミン溶液を用いた二酸化炭素回収設備を備えた火力発電設備においては、熱エネルギとして蒸気が使用される。そして、二酸化炭素を吸収したアミン溶液から二酸化炭素を分離する際、火力発電設備で生成した蒸気の数十%が消費される場合もある。そのため、二酸化炭素を分離するために使用される蒸気を余分に生成しなければならず、それによって二酸化炭素の排出量は増加する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、熱エネルギを使用せずに二酸化炭素の吸収および分離が可能な二酸化炭素回収設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の二酸化炭素回収設備は、塩化ナトリム水溶液を電気分解して水酸化ナトリウム水溶液、塩素ガス、水素ガスを生成する電気分解装置と、前記電気分解装置で生成された水酸化ナトリウム水溶液を含む吸収液を用いて二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を吸収して、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを含む二酸化炭素吸収水溶液を生成する吸収装置と、前記吸収装置で生成された前記二酸化炭素吸収水溶液に前記電気分解装置で生成された塩素ガスを反応させて前記二酸化炭素吸収水溶液から二酸化炭素を分離するとともに、塩化ナトリム水溶液を生成する分離装置と、前記分離装置で生成された塩化ナトリム水溶液を前記電気分解装置に導入する塩化ナトリム水溶液導入系統とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の二酸化炭素回収設備の構成の概要を模式的に示す系統図である。
図2】実施の形態の二酸化炭素回収設備における電気分解装置の構成の概要を模式的に示した図である。
図3】実施の形態の二酸化炭素回収設備における吸収装置の構成の概要を模式的に示した図である。
図4】実施の形態の二酸化炭素回収設備における分離装置の構成の概要を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、実施の形態の二酸化炭素回収設備1の構成の概要を模式的に示す系統図である。まず、ここでは、二酸化炭素回収設備1の構成の概要について説明し、二酸化炭素回収設備1の各構成部については、後に詳しく説明する。
【0011】
図1に示すように、二酸化炭素回収設備1は、電気分解装置10と、吸収装置20と、分離装置40とを備える。二酸化炭素回収設備1は、例えば、二酸化炭素を含む排ガスを排出する火力発電設備などに備えられる。また、二酸化炭素回収設備1は、例えば、大気中の二酸化炭素を回収するために設置されてもよい。なお、二酸化炭素回収設備1の用途はこれらに限られない。二酸化炭素回収設備1は、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を回収する用途で使用可能である。
【0012】
電気分解装置10は、塩化ナトリム水溶液を電気分解して水酸化ナトリウム水溶液、塩素ガス、水素ガスを生成する。電気分解装置10は、塩化ナトリム水溶液を供給する供給管61を備える。この供給管61は、分離装置40で生成(再生)された塩化ナトリム水溶液を導入する配管70と連結されている。また、電気分解装置10は、水を供給する水供給管62を備える。供給される水は、純水、軟水である。
【0013】
電気分解装置10で生成された水酸化ナトリウム水溶液は、配管63を介して吸収装置20に導入される。ここでは、水酸化ナトリウム水溶液を貯留可能なバッファタンク80が配管63に介在する一例を示している。例えば、バッファタンク80の上流側および下流側において配管63にバルブを備えてもよい。これによって、バッファタンク80は、水酸化ナトリウム水溶液の回収部としての機能を備える。なお、配管63は、バッファタンク80を備えない構成でもよい。
【0014】
電気分解装置10で生成された水素ガスは、配管64を介して水素回収部81に導入される。電気分解装置10で生成された塩素ガスは、配管65を介して分離装置40に導入される。ここでは、塩素ガスを貯留可能なバッファタンク82が配管65に介在する一例を示している。例えば、バッファタンク82の上流側および下流側において配管65にバルブを備えてもよい。これによって、バッファタンク82は、塩素ガスの回収部としての機能を備える。なお、配管65は、バッファタンク82を備えない構成でもよい。
【0015】
吸収装置20は、電気分解装置10で生成された水酸化ナトリウム水溶液を含む吸収液を用いて二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を吸収して、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを含む二酸化炭素吸収水溶液を生成する。二酸化炭素を含む気体は、導入管66から吸収装置20に導入される。また、二酸化炭素が除去された気体は、排気管67を介して排出される。生成された二酸化炭素吸収水溶液は、配管68を介して分離装置40に導入される。
【0016】
ここで、二酸化炭素を含む気体として、例えば、二酸化炭素を含む燃焼ガス、大気などが例示される。二酸化炭素を含む燃焼ガスとして、例えば、火力発電設備のボイラなどからの排ガスが例示される。二酸化炭素吸収水溶液は、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、または炭酸水素ナトリウムの結晶を含む炭酸水素ナトリウム水溶液などで構成される。例えば、結晶を含む炭酸水素ナトリウム水溶液は、スラリー状であってもよい。なお、炭酸水素ナトリウムの結晶は、析出物として機能する。
【0017】
分離装置40は、吸収装置20で生成された二酸化炭素吸収水溶液に電気分解装置10で生成された塩素ガスを反応させて二酸化炭素吸収水溶液から二酸化炭素を分離するとともに、塩化ナトリム水溶液を生成する。分離装置40において分離された気体の二酸化炭素は、配管69を介して二酸化炭素回収部83に導入されて回収される。
【0018】
分離装置40において生成された塩化ナトリム水溶液は、配管70を介して供給管61に導入される。ここでは、塩化ナトリム水溶液を貯留可能なバッファタンク84が配管70に介在する一例を示している。例えば、バッファタンク84の上流側および下流側において配管70にバルブを備えてもよい。これによって、バッファタンク84は、塩化ナトリウム水溶液の回収部としての機能を備える。なお、配管70は、バッファタンク84を備えない構成でもよい。ここで、配管70(バッファタンク84を備える場合も含む)は、分離装置40で生成(再生)された塩化ナトリム水溶液を電気分解装置に導入する塩化ナトリム水溶液導入系統として機能する。
【0019】
次に、二酸化炭素回収設備1の各構成部について説明する。
【0020】
(電気分解装置10)
図2は、実施の形態の二酸化炭素回収設備1における電気分解装置10の構成の概要を模式的に示した図である。図2に示すように、電気分解装置10は、装置容器11と、陽極室12と、陰極室13と、イオン交換膜14とを備える。装置容器11内は、イオン交換膜14によって陽極室12と陰極室13とが区画されている。
【0021】
陽極室12は、陽極15を備え、塩化ナトリウム水溶液が供給されて塩素ガスを生成する区画である。陽極室12を構成する装置容器11の下部には、塩化ナトリウム水溶液を導入する導入口12aが形成されている。陽極室12を構成する装置容器11の上部には、塩化ナトリウム水溶液を排出する排出口12bが形成されている。電気分解装置10は、陽極室12に塩化ナトリウム水溶液を循環させる循環配管16を備える。循環配管16の一端は、導入口12aに連結され、循環配管16の他端は、排出口12bに連結されている。循環配管16には、塩化ナトリウム水溶液を供給する供給管61が連結されている。
【0022】
ここで、導入口12aには、水素イオン濃度指数(以下、pHと示す。)が調整された塩化ナトリウム水溶液が供給される。塩化ナトリウム水溶液のpHは、塩酸によって調整される。なお、pHは、市販のpH計測器を用いて計測される。そのため、循環配管16には、塩酸を供給する塩酸供給管17が連結されている。塩酸供給管17は、循環配管16と供給管61との連結部よりも導入口12a側で循環配管16に連結されている。
【0023】
また、陽極室12を構成する装置容器11の上部には、塩素ガスを排出するための排出口12cが形成されている。この排出口12cは、前述した配管65に連結されている。
【0024】
陰極室13は、陰極18を備え、水が供給されて水素ガスを生成するとともに、水酸化ナトリウム水溶液を生成する区画である。陰極室13を構成する装置容器11の下部には、水を導入する導入口13aが形成されている。陰極室13を構成する装置容器11の上部には、水酸化ナトリウム水溶液を排出する排出口13bが形成されている。排出口13bは、水酸化ナトリウム水溶液を吸収装置20に導く配管63に連結されている。
【0025】
導入口13aには、水を導入口13aに供給する水供給管62が連結されている。また、電気分解装置10は、配管63と水供給管62とを連結し、配管63から一部の水酸化ナトリウム水溶液を水供給管62に導入する配管19を備える。
【0026】
また、陰極室13を構成する装置容器11の上部には、水素ガスを排出するための排出口13cが形成されている。この排出口13cは、前述した配管64に連結されている。
【0027】
イオン交換膜14は、ナトリウムイオンを選択的に透過させる膜である。イオン交換膜14として、陽イオン交換膜が採用される。
【0028】
次に、電気分解装置10における作用について説明する。
【0029】
電気分解装置10において、陽極15と陰極18との間には、所定の電圧が印加されている。ここで、陽極室12に導入される塩化ナトリウム水溶液は、塩酸供給管17から供給された塩酸と混合してpH0.5~pH1.5に調整される。この範囲にpHを調整することで、陽極室12において塩素ガスを生成することができる。なお、導入口12aから導入される塩化ナトリウム水溶液は、飽和水溶液の状態である。
【0030】
ここで、塩酸供給管17から供給される塩酸は、例えば、陽極室12において生成される塩素ガスと、陰極室13において生成される水素ガスとを反応させて生成されてもよい。
【0031】
pHが調整された塩化ナトリウム水溶液は、導入口12aを介して循環配管16から陽極室12に導入される。塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって、塩素ガスが生成される。塩素ガスは、排出口12cを介して配管65に排出される。
【0032】
陽極室12を通過した塩化ナトリウム水溶液は、排出口12bから循環配管16に排出される。排出口12bから排出される塩化ナトリウム水溶液のpHは、3~5となる。排出口12bにおける塩化ナトリウム水溶液のpHの範囲を上記範囲とすることで、陽極室12において塩素ガスを生成可能な条件を維持することができる。
【0033】
排出口12bから排出された塩化ナトリウム水溶液は、供給管61から供給される塩化ナトリウム水溶液と混合され、飽和水溶液の状態となる。そして、循環配管16を流れる塩化ナトリウム水溶液は、上記したようにpHが調整され、陽極室12に導入される。
【0034】
陰極室13には、導入口13aを介して水供給管62から水が供給される。なお、陰極室13に供給される水には、配管19から水供給管62に導入される水酸化ナトリウム水溶液が混在している。
【0035】
陰極室13に供給された水の電気分解によって、水素ガスが生成される。水素ガスは、排出口13cを介して配管64に排出される。水酸化ナトリウム水溶液によって硫黄分や窒素酸化物などの不純物が除去されるため、水素ガスの純度は、99.9%以上(水分を除く)となる。生成された水素ガスは、例えば、火力発電設備のボイラの燃料として利用されてもよい。
【0036】
また、陰極室13では、水酸化ナトリウム水溶液が生成される。ここで、生成された水酸化ナトリウム水溶液は、25~35wt%水酸化ナトリウム水溶液である。陽極室12に塩化ナトリウムの飽和水溶液を供給することで、陰極室13において上記した濃度の水酸化ナトリウム水溶液を生成することができる。水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムの濃度を上記範囲とすることで、吸収装置20において効率よく二酸化炭素を吸収できるような調整が可能となる。
【0037】
陰極室13で生成された水酸化ナトリウム水溶液は、排出口13bから配管63に排出される。ここで、配管63に排出された水酸化ナトリウム水溶液のうちの一部は、配管19を介して水供給管62に導入される。
【0038】
上記したように、電気分解装置10では、陽極室12において塩素ガスが生成される。また、陰極室13において、高濃度の水素ガスおよび水酸化ナトリウム水溶液が生成される。
【0039】
(吸収装置20)
図3は、実施の形態の二酸化炭素回収設備1における吸収装置20の構成の概要を模式的に示した図である。図3に示すように、吸収装置20は、吸収塔21と、析出物分離部22と、吸収液供給管23と、二酸化炭素吸収水溶液供給管24とを備える。
【0040】
吸収塔21は、装置容器210と、吸収液導入部211と、気体導入部212と、多孔質体構成部213と、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214とを備える。
【0041】
吸収液導入部211は、水酸化ナトリウム水溶液を含む吸収液を装置容器210の上部から導入する。吸収液導入部211は、吸収液供給管23に連結されている。吸収液は、二酸化炭素を吸収するための液体である。吸収液は、配管63から導入された水酸化ナトリウム水溶液と、二酸化炭素吸収水溶液供給管24を介して供給された析出物分離部22からの二酸化炭素吸収水溶液とが混合された水溶液である。
【0042】
吸収液導入部211は、例えば、多孔質体構成部213の上部から吸収液を下方に噴出する噴出部211aを備える。噴出部211aは、例えば、吸収液を液滴として滴下する。噴出部211aは、例えば、吸収液を微粒子として噴出してもよい。
【0043】
気体導入部212は、二酸化炭素を含む気体を装置容器210内に導入する。気体導入部212は、図3に示すように、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に設けられる。気体導入部212は、気体を噴出する噴出部212aを備える。
【0044】
少なくとも噴出部212aは、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留された二酸化炭素吸収水溶液に浸かるように設けられる。なお、気体導入部212全体が二酸化炭素吸収水溶液貯留部214の二酸化炭素吸収水溶液に浸かるように設けられてもよい。噴出部212aから噴出された気体は、二酸化炭素吸収水溶液に直接吹き込まれる。換言すると、噴出部212aから噴出された気体は、二酸化炭素吸収水溶液にバブリングされる。そして、吹き込まれ気体は、上方に向かって流れる。
【0045】
多孔質体構成部213は、吸収液導入部211と二酸化炭素吸収水溶液貯留部214との間の装置容器210の断面に亘って配置される。多孔質体構成部213は、所定の厚さ(高さ)を有する。多孔質体構成部213は、多孔質体構成部213の表面において吸収液と気体との接触面積を増加するために多孔質体で構成される。多孔質体として、例えば、ポーラス構造体、ハニカム構造体なども含む。
【0046】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部214は、装置容器210の底部に設けられる。二酸化炭素吸収水溶液貯留部214は、吸収液導入部211から噴出され、流下しながら二酸化炭素を吸収した吸収液を貯留する。二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留された吸収液は、気体導入部212の噴出部212aから噴出される気体からも二酸化炭素を吸収する。噴出部212aから噴出される気体からも二酸化炭素を吸収した吸収液は、二酸化炭素吸収水溶液として機能する。二酸化炭素吸収水溶液貯留部214の二酸化炭素吸収水溶液は、配管25を介して析出物分離部22に導かれる。
【0047】
析出物分離部22は、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214から導出された二酸化炭素吸収水溶液から析出物221を分離する。図3に示すように、析出物221は、析出物分離部22を構成する装置容器220の底部に沈殿する。なお、析出物分離部22における析出物221の沈殿を促進するために、析出物分離部22の二酸化炭素吸収水溶液に高分子ポリマーを添加してもよい。この場合、例えば、高分子ポリマーは、析出物分離部22内の二酸化炭素吸収水溶液に直接添加されてもよい。また、配管25に高分子ポリマーを導入する導入管を連結して、二酸化炭素吸収水溶液に高分子ポリマーを添加してもよい。
【0048】
析出物221としては、例えば、吸収液と二酸化炭素とが反応して生成された炭酸水素ナトリウム(NaHCO)の結晶などが例示される。また、析出物221の上部には、析出物221が分離された二酸化炭素吸収水溶液が存在する。なお、析出物分離部22は、二酸化炭素吸収水溶液を貯留する貯留部としての機能も備える。二酸化炭素吸収水溶液は、例えば、大気圧下で貯留することができる。
【0049】
例えば、装置容器220の底部には、析出物221、二酸化炭素吸収水溶液を分離装置40に導く配管68が連結されている。また、装置容器220の側部または上部には、析出物221が分離された二酸化炭素吸収水溶液を吸収液供給管23に導入する二酸化炭素吸収水溶液供給管24の一端が連結されている。二酸化炭素吸収水溶液供給管24の他端は、吸収液供給管23に連結されている。二酸化炭素吸収水溶液供給管24には、析出物分離部22の二酸化炭素吸収水溶液を吸収液供給管23に圧送するためのポンプ24aが介在している。
【0050】
また、吸収液供給管23は、電気分解装置10で生成された水酸化ナトリウム水溶液を導く配管63と連結されている。吸収液供給管23は、配管63および二酸化炭素吸収水溶液供給管24に連結されることで、電気分解装置10で生成された水酸化ナトリウム水溶液と析出物分離部22における二酸化炭素吸収水溶液とが混合された吸収液を吸収液導入部211に供給することができる。なお、配管63、配管63に連結された吸収液供給管23および吸収液供給管23に連結された二酸化炭素吸収水溶液供給管24は、吸収液導入系統として機能する。
【0051】
装置容器210の上部には、二酸化炭素が吸収された気体を外部に排出するための排出口210aが設けられている。そして、排出口210aは、排気管67に連結されている。
【0052】
次に、吸収装置20における作用について説明する。
【0053】
ここでは、導入管66から導入される二酸化炭素を含む気体が、燃焼排ガスの場合と大気の場合とに分けて説明する。なお、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214は、二酸化炭素吸収水溶液で満たされている状態を前提に説明する。
【0054】
まず、気体が燃焼排ガスの場合について説明する。
【0055】
ここで、例えば、LNG火力発電設備から排出される燃焼排ガスは、3~5%程度の二酸化炭素を含有する。なお、導入管66は、火力発電設備などの燃焼ガスを排気する排気管に連結されている。
【0056】
吸収液供給管23から吸収液導入部211に供給された吸収液は、噴出部211aから下方に噴出される。また、導入管66から気体導入部212に導入された二酸化炭素を含む気体(燃焼排ガス)は、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留された二酸化炭素吸収水溶液に、噴出部212aから直接噴出される。噴出された気体は、上方に向かって流れる。
【0057】
噴出部211aから噴出された吸収液は、上方に流れる気体と気液接触して二酸化炭素を吸収する。多孔質体構成部213においては、多孔質体構成部213の表面を利用して吸収液と気体との気液接触が促進される。
【0058】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部214の上方では、主として次の式(1)で示す反応が生じる。
2NaOH + CO → NaCO + HO ・・・(1)
【0059】
上記反応により生成された炭酸ナトリウム水溶液は、流下して二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留される。上記反応により二酸化炭素が吸収された気体は、排出口210aを介して排気管67に排出される。例えば、火力発電設備などにおいては、排気管67から排出された気体は、煙突から大気中に放出される。
【0060】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留された炭酸ナトリウム水溶液に噴出部212aから二酸化炭素を含む気体(燃焼排ガス)を噴出することで、次の式(2)に示す反応が生じる。
NaCO + CO + HO → 2NaHCO ・・・(2)
【0061】
この反応によって、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214には、炭酸水素ナトリウム水溶液が生成される。この炭酸水素ナトリウム水溶液には、炭酸水素ナトリウムの結晶を含有する炭酸水素ナトリウム水溶液も含まれる。なお、炭酸水素ナトリウム水溶液は、二酸化炭素吸収水溶液として機能する。
【0062】
ここで、炭酸水素ナトリウムは、炭酸ナトリウムよりも2倍の二酸化炭素と反応して生成される。すなわち、炭酸水素ナトリウムとすることで二酸化炭素の吸収量を増加することができる。また、吸収液のpHは、二酸化炭素を溶解すると低下する。二酸化炭素を吸収した吸収液において、吸収液のpHが中性に近くなるほど、炭酸ナトリウムの割合は減少し、炭酸水素ナトリウムの割合が増加する。
【0063】
そこで、吸収液導入部211の噴出部211aから噴出される吸収液は、高濃度の水酸化ナトリウムを含み、二酸化炭素と反応する。二酸化炭素吸収水溶液貯留部214における反応終了時の二酸化炭素吸収水溶液のpHは、8~10に調整される。なお、吸収液および二酸化炭素吸収水溶液のpHは、配管63から供給される水酸化ナトリウム水溶液の流量を調整することで調整される。
【0064】
また、噴出部212aから噴出される気体である燃焼排ガスの温度を調整することで、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214内の二酸化炭素吸収水溶液の温度を30~60℃とすることが好ましい。二酸化炭素吸収水溶液の温度をこの範囲に維持することで、上記した式(2)における反応を促進することができる。
【0065】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部214の二酸化炭素吸収水溶液は、配管25を介して析出物分離部22に導かれる。析出物分離部22において、二酸化炭素吸収水溶液に含まれる炭酸水素ナトリウムの結晶は、析出物分離部22の底部に析出物221として沈殿する。なお、析出物221および二酸化炭素吸収水溶液は、配管68を通り分離装置40に導入される。なお、析出物221は、二酸化炭素吸収水溶液に含まれた状態で配管68を介して分離装置40に導入される。
【0066】
析出物分離部22における析出物221よりも上部の、析出物221を含まないまたは微量に析出物を含む二酸化炭素吸収水溶液の一部は、二酸化炭素吸収水溶液供給管24を通り吸収液供給管23に導かれる。二酸化炭素吸収水溶液は、配管63から吸収液供給管23に供給された水酸化ナトリウム水溶液と混合する。そして、二酸化炭素吸収水溶液が混合した水酸化ナトリウム水溶液は、吸収液として吸収液供給管23から吸収液導入部211に供給される。
【0067】
ここで、吸収液供給管23内において、二酸化炭素吸収水溶液である炭酸水素ナトリウムは、水酸化ナトリウムの一部と次の式(3)に示す反応を生じる。
NaOH + NaHCO → NaCO + HO ・・・(3)
【0068】
式(3)に示す反応によって、吸収液は、炭酸ナトリウムを含む水素ナトリウム水溶液で構成される。
【0069】
次に、気体が大気の場合について説明する。
【0070】
気体が大気の場合の吸収装置20における作用は、基本的には、気体が燃焼排ガスの場合、吸収装置20における作用と同じである。ここでは、気体が大気の場合の吸収装置20における作用において、上記した気体が燃焼排ガスの場合の吸収装置20における作用と異なる作用について主に説明する。
【0071】
ここで、大気は、0.04%程度の二酸化炭素を含有する。なお、大気は、導入管66の一端から導入される。
【0072】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留された炭酸ナトリウム水溶液に噴出部212aから二酸化炭素を含む気体(大気)を噴出しても、気体に含まれる二酸化炭素の濃度が低いため、上記した式(2)の反応はほとんど生じない。そのため、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214には、式(1)の反応で生成された炭酸ナトリウム水溶液が貯留する。この場合、炭酸ナトリウム水溶液において、炭酸ナトリウムは溶解し、結晶などは含まない。なお、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214に貯留される炭酸ナトリウム水溶液は、二酸化炭素吸収水溶液として機能する。
【0073】
また、気体に含まれる二酸化炭素の濃度が低いため、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214内においてpHの変化速度は遅い。そのため、二酸化炭素吸収水溶液貯留部214における反応終了時の二酸化炭素吸収水溶液のpHは、9~12となる。
【0074】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部214の二酸化炭素吸収水溶液は、配管25を介して析出物分離部22に導かれる。上記したように、二酸化炭素吸収水溶液は、結晶などの析出物を含まないため、析出物の沈殿も生じない。なお、析出物分離部22は、二酸化炭素吸収水溶液のバッファタンクまたは貯留部として機能する。
【0075】
析出物分離部22における二酸化炭素吸収水溶液の一部は、二酸化炭素吸収水溶液供給管24を通り吸収液供給管23に導かれる。二酸化炭素吸収水溶液は、配管63から吸収液供給管23に供給された水酸化ナトリウム水溶液と混合する。そして、二酸化炭素吸収水溶液が混合した水酸化ナトリウム水溶液は、吸収液として吸収液供給管23から吸収液導入部211に供給される。
【0076】
二酸化炭素吸収水溶液は、炭酸ナトリウム水溶液であるため、吸収液は、炭酸ナトリウムを含む水素ナトリウム水溶液で構成される。
【0077】
(分離装置40)
図4は、実施の形態の二酸化炭素回収設備1における分離装置40の構成の概要を模式的に示した図である。図4に示すように、分離装置40は、装置容器41と、二酸化炭素吸収水溶液導入部42と、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43と、塩素ガス導入部44とを備える。なお、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43は、第2の二酸化炭素吸収水溶液貯留部として機能する。
【0078】
二酸化炭素吸収水溶液導入部42は、吸収装置20の析出物分離部22から導入された二酸化炭素吸収水溶液を装置容器41内に導入する。ここでは、二酸化炭素吸収水溶液導入部42を二酸化炭素吸収水溶液貯留部43よりも上方、すなわち、装置容器41の上部に備えた一例を示している。二酸化炭素吸収水溶液導入部42は、配管68に連結されている。ここで、前述したように、吸収装置20に導入される気体が燃焼排ガスの場合、二酸化炭素吸収水溶液導入部42に導入される二酸化炭素吸収水溶液は、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウムの結晶を含有する炭酸水素ナトリウム水溶液である。また、吸収装置20に導入される気体が大気の場合、二酸化炭素吸収水溶液導入部42に導入される二酸化炭素吸収水溶液は、炭酸ナトリウム水溶液である。
【0079】
二酸化炭素吸収水溶液導入部42は、二酸化炭素吸収水溶液を下方に噴出する噴出部42aを備える。噴出部42aは、例えば、二酸化炭素吸収水溶液を液滴として滴下する。噴出部42aは、例えば、二酸化炭素吸収水溶液を微粒子として噴出してもよい。
【0080】
二酸化炭素吸収水溶液貯留部43は、装置容器41の底部に設けられる。二酸化炭素吸収水溶液貯留部43は、二酸化炭素吸収水溶液導入部42から噴出されて流下した二酸化炭素吸収水溶液を貯留する。
【0081】
塩素ガス導入部44は、電気分解装置10で生成された塩素ガスを装置容器41内に導入する。塩素ガス導入部44は、配管65に連結されている。塩素ガス導入部44は、図4に示すように、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43に設けられる。塩素ガス導入部44は、塩素ガスを噴出する噴出部44aを備える。
【0082】
少なくとも噴出部44aは、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43に貯留された二酸化炭素吸収水溶液に浸かるように設けられる。なお、塩素ガス導入部44全体が二酸化炭素吸収水溶液貯留部43の二酸化炭素吸収水溶液に浸かるように設けられてもよい。噴出部44aから噴出された塩素ガスは、二酸化炭素吸収水溶液に直接吹き込まれる。換言すると、噴出部44aから噴出された塩素ガスは、二酸化炭素吸収水溶液にバブリングされる。
【0083】
なお、二酸化炭素吸収水溶液は、塩素ガスと大気圧下で反応して、気体の二酸化炭素を放出するとともに塩化ナトリム水溶液を生成(再生)する。これによって、二酸化炭素吸収水溶液から二酸化炭素が分離される。
【0084】
装置容器41の上部には、分離された二酸化炭素を外部に排出するための排出口45が設けられている。また、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43を構成する装置容器41の底部には、再生された塩化ナトリム水溶液を供給管61に導入する配管70が連結されている。なお、配管70は、塩化ナトリウム水溶液導入系統として機能する。
【0085】
次に、分離装置40における作用について説明する。
【0086】
配管68から二酸化炭素吸収水溶液導入部42に供給された二酸化炭素吸収水溶液は、噴出部42aから下方に噴出される。噴出部42aから噴出された二酸化炭素吸収水溶液は、装置容器41内を流下して二酸化炭素吸収水溶液貯留部43に貯留される。
【0087】
配管65から塩素ガス導入部44に導入された塩素ガスは、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43に貯留された二酸化炭素吸収水溶液に、噴出部44aから直接噴出される。二酸化炭素吸収水溶液は、噴出された塩素ガスと大気圧下で次の式(4)または式(5)で示す反応を生じる。
【0088】
なお、二酸化炭素吸収水溶液が炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウムの結晶を含有する炭酸水素ナトリウム水溶液で構成される場合は、式(4)の反応を生じる。二酸化炭素吸収水溶液が炭酸ナトリウム水溶液で構成される場合は、式(5)の反応を生じる。
2NaHCO + Cl → NaCl + 2CO + HO + NaClO ・・・(4)
NaCO + Cl → NaCl + CO + NaClO ・・・(5)
【0089】
上記反応で分離された気体の二酸化炭素は、排出口45から配管69に流れる。そして、二酸化炭素は、配管69を介して二酸化炭素回収部83に導入されて回収される。
【0090】
なお、式(4)、式(5)の反応において生成されるNaClOは、触媒や活性炭により還元分解され、また塩酸との反応や真空による脱気により、塩素ガスとして分離することもできる。
【0091】
ここで、二酸化炭素吸収水溶液導入部42を二酸化炭素吸収水溶液貯留部43よりも上方、すなわち、装置容器41の上部に設けることで、例えば、分離された二酸化炭素に塩素ガスが混在する場合であっても、噴出部42aから噴出された二酸化炭素吸収水溶液と塩素ガスが気液接触して、上記式(4)、式(5)の反応が生じて塩素ガスはなくなる。なお、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43において塩素ガスが完全に反応する場合には、二酸化炭素吸収水溶液導入部42は、例えば、二酸化炭素吸収水溶液貯留部43を構成する装置容器41の底部に設けられてもよい。
【0092】
ここで、二酸化炭素吸収水溶液と塩素ガスとが反応する二酸化炭素吸収水溶液貯留部43内の水溶液のpHは、6~10に調整されることが好ましい。また、この二酸化炭素吸収水溶液貯留部43内の水溶液のpHは、6~8に調整されることがさらに好ましい。この水溶液のpHは、二酸化炭素吸収水溶液導入部42に導入される二酸化炭素吸収水溶液の流量、塩素ガス導入部44に導入される塩素ガスの流量を調整することで調整される。二酸化炭素吸収水溶液貯留部43内の水溶液のpHを上記範囲に設定することで、二酸化炭素吸収水溶液と塩素ガスとの反応が促進される。
【0093】
また、上記式(4)、式(5)の反応によって、ナトリウムイオンと塩素イオンが共存する塩化ナトリウム水溶液と次亜塩素酸化合物が生成される。すなわち、上記式(4)、式(5)の反応が完了した後の二酸化炭素吸収水溶液貯留部43に存在する水溶液は、塩化ナトリウム水溶液と次亜塩素酸化合物の混合液である。
【0094】
生成された塩化ナトリウム水溶液は、配管70を介してバッファタンク84、供給管61に導入される。すなわち、生成された塩化ナトリウム水溶液は、電気分解装置10に供給される。
【0095】
上記した本実施の形態の二酸化炭素回収設備1によれば、塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって生成された水酸化ナトリウム水溶液、塩素ガスを利用して、蒸気などの熱エネルギを使用せずに、二酸化炭素の吸収および分離が可能である。
【0096】
また、二酸化炭素回収設備1によれば、塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって高濃度の水素ガスを生成することができる。生成された水素ガスは、例えば、火力発電設備の燃料として利用できる。生成された水素ガスを貯留し、例えば、火力発電量の比率が増加するときに火力発電設備の燃料として利用できる。
【0097】
二酸化炭素回収設備1では、使用する原料は、主に、塩化ナトリウムと水のみであり、従来の二酸化炭素回収設備に使用される特殊な廃棄処理が必要なアミンなどの物質を利用しない。また、二酸化炭素の回収と水素製造を同時に実施する従来の設備に比べて、二酸化炭素回収設備1では、設備の運用に必要なエネルギを低減することができる。
【0098】
また、季節により余剰となる再生エネルギを使用して電気分解装置10を稼働して、水酸化ナトリウム水溶液、水素ガス、塩素ガスを貯留することができる。そして、火力発電設備において二酸化炭素の排出量が増加するときに、貯留された水酸化ナトリウム水溶液、塩素ガスを利用して、二酸化炭素を吸収および回収することができる。また、貯留された水素ガスを燃料として利用することで、COを排出しない火力発電設備が実現できる。また、貯留された水素ガスを火力発電設備の燃料の一部として利用することで、CO2の排出量を削減することができる。
【0099】
さらに、二酸化炭素回収設備1では、二酸化炭素吸収水溶液に塩素ガスを反応させることで、二酸化炭素を分離するとともに、塩化ナトリウム水溶液を生成することができる。そして、生成された塩化ナトリウム水溶液を電気分解装置10において利用できる。このように、二酸化炭素回収設備1では、塩化ナトリウム水溶液を再生して利用する機能を備える。
【0100】
以上説明した実施形態によれば、熱エネルギを使用せずに二酸化炭素の吸収および分離が可能となる。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…二酸化炭素回収設備、10…電気分解装置、11、41、210、220…装置容器、12…陽極室、12a、13a…導入口、12b、12c、13b、13c、45、210a…排出口、13…陰極室、14…イオン交換膜、15…陽極、16…循環配管、17…塩酸供給管、18…陰極、19、25、63、64、65、68、69、70…配管、20…吸収装置、21…吸収塔、22…析出物分離部、23…吸収液供給管、24…二酸化炭素吸収水溶液供給管、24a…ポンプ、40…分離装置、42…二酸化炭素吸収水溶液導入部、42a、44a、211a、212a…噴出部、43、214…二酸化炭素吸収水溶液貯留部、44…塩素ガス導入部、66…導入管、61…供給管、62…水供給管、67…排気管、80、82、84…バッファタンク、81…水素回収部、83…二酸化炭素回収部、211…吸収液導入部、212…気体導入部、213…多孔質体構成部、221…析出物。
図1
図2
図3
図4