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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155567
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報生成装置、及び情報生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20241024BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20241024BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241024BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N29/04
F03D1/06 A
G01M99/00 A
G01N29/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070382
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】志鷹 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】久保 達也
(72)【発明者】
【氏名】中谷 祐二郎
【テーマコード(参考)】
2G024
2G047
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AD02
2G024AD23
2G024BA27
2G047AA05
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC09
2G047CA03
2G047GA14
2G047GA21
2G047GG28
2G047GG30
2G047GG33
2G047GG38
2G047GG47
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB56
3H178BB63
3H178CC02
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】内部欠陥の状態を評価可能な情報生成装置、及び情報生成方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、繊維強化プラスチックが構造部材に使用された風車ブレードに関する情報生成装置は、取得部と、衝撃情報生成部と、内部欠陥評価部と、を備える。取得部は、風車ブレードの複数の位置に配され、風車ブレードの表層に対する衝撃に応じた強度の計測信号を出力する複数のセンサそれぞれから、複数の第1計測信号を取得する。衝撃情報生成部は、複数の第1計測信号に基づき、風車ブレードの面外衝撃の発生した衝撃発生位置を少なくとも生成する。欠陥情報生成部は、衝撃発生位置に基づき、繊維強化プラスチックの構造部材に発生する内部欠陥の発生領域を含む情報を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックが構造部材に使用された風車ブレードに関する情報生成装置であって、
前記風車ブレードの複数の位置に配され、風車ブレードの表層に対する衝撃に応じた強度の計測信号を出力する複数のセンサそれぞれから、複数の第1計測信号を取得する取得部と、
前記複数の第1計測信号に基づき、前記風車ブレードの面外衝撃の発生した衝撃発生位置の情報を少なくとも生成する衝撃情報生成部と、
前記衝撃発生位置に基づき、前記繊維強化プラスチックの構造部材に発生する内部欠陥の発生領域を含む情報を生成する欠陥情報生成部と、
を備える、情報生成装置。
【請求項2】
前記衝撃情報生成部は、前記複数の第1計測信号の少なくともいずれかが所定の大きさを示すときに、風車ブレードの表層に面外衝撃が発生したことを検知する、請求項1に記載の情報生成装置。
【請求項3】
前記衝撃情報生成部は、前記所定の大きさを超える計測信号が前記複数のセンサで発生した検知時刻に基づき、前記衝撃発生位置を生成する、請求項1に記載の情報生成装置。
【請求項4】
前記衝撃情報生成部は、前記複数のセンサの中において、前記検知時刻が1番最初であるセンサから最も近い位置を衝撃発生位置として生成する、請求項3に記載の情報生成装置。
【請求項5】
前記衝撃情報生成部は、前記複数のセンサで発生した検知時刻に基づき、前記面外衝撃が生じた時刻を生成する、請求項2に記載の情報生成装置。
【請求項6】
前記風車ブレードは、同等形状の複数の風車ブレードを有する風車の中の一つの風車ブレードであり、各風車ブレードの同等の位置に前記複数のセンサが配置され、
前記衝撃情報生成部は、前記複数の風車ブレードのなかの前記風車ブレードと異なる風車ブレード中の対応するセンサの第2計測信号を前記第1計測信号から減じた信号を情報生成処理に用いる、請求項1に記載の情報生成装置。
【請求項7】
前記衝撃情報生成部は、前記所定の大きさを超える第1計測信号の値の積算値に基づき、衝撃値を生成する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報生成装置。
【請求項8】
前記欠陥情報生成部は、前記衝撃発生位置、及び前記衝撃値に基づき、更に欠陥発生量の情報を生成する、請求項7に記載の情報生成装置。
【請求項9】
前記欠陥情報生成部は、前記衝撃値の大きさ、前記衝撃発生位置から所定の距離範囲の前記FRPの構造部材の構造、及び材料の情報を用いて、前記内部欠陥の範囲、及び前記欠陥発生量の情報を生成する、請求項8に記載の情報生成装置。
【請求項10】
前記欠陥発生量は、層間剥離の場合は、層間剥離のサイズに相関する量であり、トランスバースクラックの場合は、トランスバースクラックの発生数、或いは、トランスバースクラックの発生密度に相関する量である、請求項9に記載の情報生成装置。
【請求項11】
前記欠陥発生量に基づき、風車ブレードの剛性を評価する剛性評価部を更に備える、請求項9に記載の情報生成装置。
【請求項12】
前記剛性は、ヤング率であり、
前記剛性評価部は、前記風車ブレードの通常駆動時の前記計測信号の絶対値の平均値に応じて、前記ヤング率を補正する、請求項11に記載の情報生成装置。
【請求項13】
前記剛性評価部は、前記風車ブレードの外形の変化量に応じて、前記剛性を逆解析して生成する、請求項12に記載の情報生成装置。
【請求項14】
前記風車ブレードの運転状態を示す運転データ、及び各構成部材の材料データに基づき、前記欠陥発生量の時間変化量である内部欠陥進展量を評価する欠陥進展量評価部を、更に備える、請求項11に記載の情報生成装置。
【請求項15】
前記欠陥進展量評価部は、前記風車ブレードの外形の変化量に応じて、内部欠陥進展量を補正する、請求項14に記載の情報生成装置。
【請求項16】
前記発生した内部欠陥、及び内部欠陥が発生した領域の材料データに基づき、風車ブレードに折損を含む損傷が発生するリスクを時系列に評価する損傷リスク評価部を更に備える、請求項15に記載の情報生成装置。
【請求項17】
前記FRPの構造部材の構造、及び材料の情報は、繊維配向方向、積層数、前記FRPの構造部材を構成するプラスチックの種類、及び繊維の強度特性の少なくともいずれかである、請求項16に記載の情報生成装置。
【請求項18】
繊維強化プラスチックが構造部材に使用された風車ブレードに関する情報生成方法であって、
前記風車ブレードの複数の位置に配され、風車ブレードの表層に対する衝撃に応じた強度の計測信号を出力する複数のセンサそれぞれから、複数の第1計測信号を取得する取得工程と、
前記複数の第1計測信号に基づき、前記風車ブレードの面外衝撃の発生した衝撃発生位置の情報を少なくとも生成する衝撃情報生成工程と、
前記衝撃発生位置に基づき、前記繊維強化プラスチックの構造部材に発生する内部欠陥の発生領域を含む情報を生成する欠陥情報生成工程と、
を備える、情報生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報生成装置、及び情報生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料の一種である繊維強化プラスチック(FRP)は、プラスチックに高強度な繊維材料を混ぜた軽量かつ高強度な素材である。一般的に耐候性も高いことから、航空機や船舶、風車などの構造部材としても幅広く採用されている。風力発電用の風車においては、発電量を増加させるために風車ブレードを大型化する必要があるが、大型化に伴い重量が増加し発生する遠心力も大きくなる。そのため、ブレード素材には、軽量かつ高剛性、高強度な素材が求められ、ここにガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が採用されている。
【0003】
一方で、風車ブレードは、バードストライクや飛来物との接触、落雷等によって衝撃を受けるケースがあり、ブレード構造部材にも内部欠陥が発生する。しかしながら、衝撃によって内部欠陥が発生し、進展しても早期発見が難しく、欠陥が認識されないまま更に内部欠陥が進展してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-4899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、発明が解決しようとする課題は、内部欠陥の発生領域を含む情報を生成可能な情報生成装置、及び情報生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、繊維強化プラスチックが構造部材に使用された風車ブレードに関する情報生成装置は、取得部と、衝撃情報生成部と、内部欠陥評価部と、を備える。取得部は、風車ブレードの複数の位置に配され、風車ブレードの表層に対する衝撃に応じた強度の計測信号を出力する複数のセンサそれぞれから、複数の第1計測信号を取得する。衝撃情報生成部は、複数の第1計測信号に基づき、風車ブレードの面外衝撃の発生した衝撃発生位置を少なくとも生成する。欠陥情報生成部は、衝撃発生位置に基づき、繊維強化プラスチックの構造部材に発生する内部欠陥の発生領域を含む情報を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、FRPの構造部材に発生する内部欠陥の発生領域を含む情報を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】風力発電システムの構成例を示す模式図。
図2図1の風車ブレードにおけるAA‘断面の模式図。
図3図2のA領域の拡大図。
図4】繊維強化プラスチックを用いたシェルの構成例を示す図。
図5】面外衝撃があった際の内部における内部欠陥例を模式的に示す図。
図6】本実施形態に係る情報生成装置の構成例を示すブロック図。
図7図2のBB‘断面図。
図8】データ取得部の動作を示すフローチャート。
図9】マトリクス式に構成した検知位置データ例を示す表。
図10】衝撃検知部の動作例を示すフローチャート。
図11】内部欠陥評価部の処理例を示すフローチャート。
図12】剛性評価部の処理例を示すフローチャート。
図13】内部欠陥進展量評価部の生成した欠陥発生量の時系列変化を示す図。
図14】補正を加えた欠陥発生量の時系列変化を示す図。
図15】内部欠陥進展評価部の処理例を示すフローチャート。
図16】損傷リスク評価部が用いる損傷リスクのマトリクス表。
図17】マトリクス表の生成、及び処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る情報生成装置、情報生成方法、及び風力発電システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1乃至図4を用いて、本実施の形態における情報生成装置5を有する風力発電システム1の風車側の構成について説明する。ここではまず、図1を用いて、本実施の形態における風車発電システム1の構成例について説明する。図1は、風力発電システム1の構成例を示す模式図である。
【0011】
図1に示すように、風力発電システム1は、風車ブレード12内の内部欠陥に関する情報を生成することが可能な発電システムであり、風車用回転翼2と、ナセル3と、タワー4と、情報生成装置5と、制御装置6とを備えている。風車用回転翼2は、ナセル3の水平方向に延びる中心軸線を中心にして回転可能になっている。風車用回転翼2は、風を受けると回転する。ナセル3には、図示しない発電機が収納されており、風車用回転翼2の回転によって発電を行う。また、ナセル3には、風車用回転翼2の回転角(または回転位置)を検出する回転センサが計測器として配置される。
【0012】
風車用回転翼2は、発電機に連結されたハブ11と、ハブ11に連結された3つの風車ブレード12と、を有する。ハブ11と各風車ブレード12は一体に回転するように形成されている。なお、風車ブレード12の個数は3つに限られることはなく、2つ以上の任意の個数である。
【0013】
タワー4は、地面から起立してナセル3を支持している。ナセル3は、タワー4に対して、鉛直方向に延びる軸を中心に回転可能になっている。風車用回転翼2は、ナセル3を介してタワー4に支持されている。
【0014】
また、タワー4には、計測器13、14などの複数の計測器が配置される。計測器13は、定点カメラであり、風車用回転翼2を、予め定められた回転位置で撮像し、画像を測定データとして情報生成装置5に出力する。計測器14は、測長センサであり、風車用回転翼2を、予め定められた回転位置で測長し、測長データを測定データとして情報生成装置5に出力する。例えば、計測器13は、領域A100の範囲での撮像が可能である。同様に、計測器14は、領域A100の範囲での測長が可能である
【0015】
情報生成装置5は、各風車ブレード12の内部欠陥に関する情報を生成し、内部欠陥に関する情報の評価が可能な装置である。情報生成装置5は、例えばタワー4内に配置される。或いは、ネットワークを介して、監視室内に配置することも可能である。なお、情報生成装置5の詳細は後述する。
【0016】
制御装置6は、風力発電システム1の各構成を制御する装置である。例えば、制御装置6は、不図示の風速計、及び風向計の情報を用いて風車ブレード12のピッチ角(回転軸に対するブレードの取り付け角度)を制御したり、不図示のブレーキにより、風車用回転翼2の回転速度を制御したり、することが可能である。情報生成装置5は、制御装置6の制御に関する情報も取得している。
【0017】
図2は、図1の風車ブレード12におけるAA‘断面の模式図である。図3は、図2のA領域の拡大図である。図2に示すように、風車ブレード12は、スパーキャップ12aと、ウェブ12bと、前側の2つのパネル12cと、後ろ側の2つのパネル12dとを有する。
【0018】
風車ブレード12の構造は、スパーキャップ12aとウェブ12bとが構造部材となって風車ブレード12を支える。そして、前側の2つのパネル12cと、後ろ側の2つのパネル12dとは、ブレード形状を形成している。
【0019】
図3に示すように、パネル12c、12dとは、軽量なコア材12eをFRP製のシェル12fで覆う形態で構成される。
【0020】
図4は、繊維強化プラスチック(FRP)を用いたシェル12fの構成例を示す図である。図4に示すように、風車ブレード12のシェル12fは、例えば長繊維を一方向に揃え、繊維配向方向の強度を高めたUD(Unidirectional)材を90°交差させたクロスプライ積層により構成される。すなわち、シェル12fは、長繊維を0度方向に揃えた0度層f0と、長繊維を90度方向に揃えた90度層f90と、を交互に積層して、構成される。このように、FRP部材のシェル12fは、繊維にプラスチックを含浸させ半硬化状態にした材料であるプリプレグを、所定の厚さになるように、交互に積層させて、製造される。本実施形態に係るシェル12fには、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、及び炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などが使用される。
【0021】
なお、本実施形態に係るシェル12fは、UD材を90°交差させて構成するが、これに限定されない。例えば、UD材を0°、及び±45°或いは、±30°の複数方向に積層してもよい。また、シェル12fを、多方向の強度、及び剛性に優れるクロス材(織物)材で構成してもよい。或いは、UD材を全て同一方向に、積層してもよい。例えばUD材を全て0°の一方向に揃えて積層することも可能である。
【0022】
図5は、シェル12fに面外衝撃があった際の内部における内部欠陥例を模式的に示す図である。図5に示すように、FRP部材のシェル12fは、繊維方向をコントロールすることでその方向の強度を高めることが可能であるが、プリプレグの積層方向に対しては繊維が無く、平面方向に比べて強度が低下してしまう。
【0023】
このため、FRP部材は工具落下等の軽度な面外衝撃(プリプレグ積層方向の衝撃)を受けただけでも、その内部ではプリプレグの層間での剥離や、各層内で積層方向のクラック(以下、トランスバースクラック)が発生し得る。この層間剥離やトランスバースクラック等の内部欠陥はFRP部材の剛性低下の要因となる。また、風車ブレード12の使用中に部材が受ける荷重や変形によって、これらの内部欠陥が進展ないしは、欠陥を起点とした新たな内部損傷が発生することで、更に剛性が低下する。そのためFRPを構造部材に使用する場合、このような内部欠陥を考慮した設計や保守メンテナンスが必要となる。なお、トランスバースクラック、層間剥離は、内部欠陥の例であり、内部欠陥はこれに限定されない。本実施形態では、トランスバースクラック、層間剥離などのFRP部材の損傷のある領域、或いは、劣化のある領域を内部欠陥と称する。また、内部欠陥には、内部欠陥を起点とした新たな内部損傷も含まれる。
【0024】
航空機では翼や胴部にFRPが採用されており、点検時の工具落下や、離着陸時の小石の跳ね等によってFRP内部でトランスバースクラックや層間剥離等の内部欠陥が発生するケースがある。そのためこれらの部材の強度設計では着陸後ないしは離陸前の検査によって発見できないサイズの内部欠陥は部材内に存在すると仮定して、機体運用中にこれらの欠陥から致命的な破壊が発生しないように強度の裕度を持たせた設計となっている。そしてこれらの内部欠陥が進展し、機体の点検時に発見可能なサイズになった場合、適切な補修を施し、強度を回復させている。
【0025】
一方で、風車ブレードにおいてもバードストライクや飛来物との接触、落雷等によって衝撃を受けるケースがあり、ブレード構造部材にも内部欠陥が発生する。しかしながら風車ブレードでは厳格な保守管理の規定がなく、航空機に比べ検査頻度も少ない。そのため、衝撃によって内部欠陥が発生・進展しても早期発見が難しく、欠陥が認識されないまま更に内部欠陥が進展するケースがある。
【0026】
このような、内部欠陥は、表面からの目視検査では、発見が困難である。このため、内部欠陥は、一般に超音波探傷などの非破壊検査により検査される。しかしながら、風車ブレード12は、数十メートルの長さに及び、おおよその損傷位置が特定できなければブレード全体に対する検査が必要となり、コストや時間の観点から現実的ではなくなってしまう。また、この内部欠陥が運転中に進展することで構造部材の剛性は徐々に低下し、ブレード全体の剛性が低下する。これによって風車ブレード12のたわみ量が増加し、ブレード折損の危険性も増加してしまう。しかしながら、軽度な内部欠陥の発生で風車ブレード12を交換した場合、メンテナンスコストや風車の停止時間が増加し、運用効率が低下してしまう。このため、風車を停止させない場合にも、風車ブレード12の内部欠陥などの発生状況をより客観的に評価することが求められている。
【0027】
(情報生成装置5)
図6は、本実施形態に係る情報生成装置5の構成例を示すブロック図である。図6に示すように、情報生成装置5は、風車ブレード12の内部欠陥などを評価する装置であり、複数のセンサ10、データ取得部20、データ記憶部30、衝撃検知部40、構造データ記憶部50、入力部55、内部欠陥評価部60、剛性評価部70、欠陥進展量評価部80、損傷リスク評価部90、及び保守情報提示部100を有する。情報生成装置5は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。CPUが、例えばデータ記憶部30に記憶される処理プログラムを実行することにより、情報生成装置5のデータ取得部20、衝撃検知部40、内部欠陥評価部60、剛性評価部70、欠陥進展量評価部80、及び損傷リスク評価部90が構成される。或いは、データ取得部20、衝撃検知部40、内部欠陥評価部60、剛性評価部70、欠陥進展量評価部80、及び損傷リスク評価部90を、電子回路で構成してもよい。
【0028】
センサ10は、風車ブレード12の複数の位置に配され、風車ブレードの表層に対する衝撃に応じた強度の計測信号を出力する。センサ10は、例えばひずみゲージ、加速度センサ、音響センサであり、衝撃データとしてひずみや音響、振動等の強度に応じた計測信号を出力する。複数のセンサ10は、風車ブレード12の表層に対する衝撃を風車ブレード12内の異なる位置で計測する。なお、複数のセンサ10の配置例は、図7を用いて後述する。また、センサ10は、ひずみゲージ、加速度センサ、音響センサなどで構成されるが、これに限定されない。例えば、センサ10には、衝撃に応じて計測値が変動する計測データを取得するセンサを用いることが可能である。
【0029】
複数のセンサ10の計測データは、面外衝撃(図5参照)のあった位置からの距離に応じて、特性が異なる。例えば、面外衝撃のあった位置に近いほど、衝撃に起因する計測信号の検知時刻が速く、且つ信号強度が大きくなる。本実施形態では、センサ10が計測信号を出力する時刻を検知時刻と称し、また計測信号の値を信号強度と称する場合がある。
【0030】
また、後述するように、計測器(定点カメラ)13の撮像した画像の画像解析や、計測器(測長センサ)14の測長データを解析して、回転する風車ブレード12の変形量を計測することも可能である。センサ10は、風車ブレード12の設計、製造時に予め取り付けられるか、評価のために新たに追設される。なお、ドローンで撮像した画像の画像解析により、回転する風車ブレード12の変形量を計測することも可能である。
【0031】
データ取得部20は、風車ブレード12に取り付けられた複数のセンサ10、及び各計測器13、14などから、風車ブレード12の内部欠陥などを評価するために用いる評価データを取得する。なお、本実施形態では、風車ブレード12の損傷、或いは劣化の評価に用いるデータを評価データと称する場合がある。この評価データには、複数のセンサ10の計測信号、各種の計測器13、14の計測データ、及び、制御装置6から入力部55を介して取得した運転データ、或いは、ネットワーク及び入力部55を介して取得した気象データなどが含まれる。
【0032】
ネットワーク及び入力部55を介して取得した気象データには、風車の設置される位置の風況データが含まれる。風況データには、風車ブレード12が受ける風速、風向などの情報が含まれる。また、風況データには、将来の予測データを含まれる。この予測データには、風車の設置される位置の風況データにおける数年分の過去データの平均データを用いることも可能である。
【0033】
制御装置6から取得した運転データには、風車ブレード12の回転数、振動数、風車ブレード12が受ける風速、風向、風車ブレード12のピッチ角等の風車ブレード12における実測での運用状況に関する時系列データが含まれる。なお、本実施形態に係るデータ取得部20が、取得部に対応する。
【0034】
データ記憶部30は、不揮発性メモリやハードディスクドライブなどであり、プログラム、及び制御処理に用いる各種のデータを記憶する。すなわち、このデータ記憶部30は、データ取得部20が取得した評価データを記憶する。
【0035】
衝撃検知部40は、データ取得部20を介して得られた評価データに基づき、面外衝撃の発生を検知する。また、この衝撃検知部40は、複数の計測信号に基づき、風車ブレード12の面外衝撃の発生した衝撃発生位置の情報を少なくとも生成する。なお、本実施形態に係る衝撃検知部40が、衝撃情報生成部に対応する。また、衝撃検知部40の詳細は、後述する。
【0036】
構造データ記憶部50は、不揮発性メモリやハードディスクドライブなどである。この構造データ記憶部50は、風車ブレード12の形状等のブレード全体の構造データ、各構成部材の強度、及び剛性等の強度特性データを構造データとして記憶する。これらのデータは、FEM(有限要素法)などの構造解析に用いることが可能である。
【0037】
入力部55は、ネットワークに接続可能な、入力インタフェースである。この入力部55は、風車ブレード12の構造データを、ネットワークを介して構造データ記憶部50に格納する場合や、運転データを制御装置6から取得して、データ記憶部30に格納する場合等に用いられる。また、入力部55には、キーボード、マウスなどからの操作者による操作信号も入力可能である。
【0038】
内部欠陥評価部60は、衝撃検知部40の演算結果に基づき、衝撃発生位置におけるFRP部材に発生した内部欠陥を評価する。なお、本実施形態に係る内部欠陥評価部60が、欠陥情報生成部に対応する。また、内部欠陥評価部60の詳細も、後述する。
【0039】
剛性評価部70は、内部欠陥評価部60の評価結果などを用いて、内部欠陥発生後における部材の剛性を評価する。欠陥進展量評価部80は、剛性評価部70で評価した剛性、及び運転データなどに基づき、所定の運転期間での欠陥進展量を評価する。
【0040】
損傷リスク評価部90は、欠陥発生・進展後の構造部材の剛性に基づき、風車ブレード12における全体剛性、及びたわみ量を評価し、その結果から損傷率、及び損傷リスクなどを評価する。なお、剛性評価部70、欠陥進展量評価部80、及び損傷リスク評価部90の詳細も、後述する。
【0041】
保守情報提示部100は、例えばモニタである。保守情報提示部100は、損傷率、及び損傷リスクの少なくとも一方に基づき、保守点検推奨時期や推奨検査項目をユーザに提示する。また、保守情報提示部100は、後述する図13、14、16などの図表を表示する。
【0042】
(センサ10の配置例)
図7は、図2のBB‘断面図である。図7では、風車ブレード12内部のセンサ10の取り付け位置の例を模式的に示す。図7に示すよう、配置点10a~10iにセンサが配置される。このように、複数のセンサ10は、スパーキャップ12aの長手方向、ウェブ12b、及びパネル12c、12dに配置される。
【0043】
再び図1に示すように、風車用回転翼2は、同等形状の3つの風車ブレード12を有する。これら3つの風車ブレード12のそれぞれには、配置点10a~10iに複数のセンサ10がそれぞれ配置される。このため、同じ配置点10a~10iにあるセンサは、衝撃などがない場合には、相関性の高い計測信号を出力している。なお、本実施形態では、配置点を測定点と称する場合がある。
【0044】
例えば、1つの風車ブレード12の配置点10aの時系列な計測信号から、別の風車ブレード12の配置点10aの時系列な計測信号を減算すると、時系列な計測信号の振幅は0近傍に抑制される。このように、異なる複数の風車ブレード12(図1参照)の対応するセンサ10間の計測信号をそれぞれ減算すると、風車ブレード12の回転駆動に伴う振動などのノイズ成分を抑制することができる。
【0045】
ブレードに衝撃が生じた場合、これに起因するひずみが衝撃発生位置から周辺に伝播する。このため、このひずみ伝搬をより効率的に測定可能な位置に配置点10a~10iが配置される。例えば配置点10d、及び10e間で衝撃が発生した場合、衝撃発生位置に近い配置点10dから配置点10aに向けて順に衝撃が伝播する。これにより、配置点10dから配置点10aに向けて、衝撃発生部からの距離に応じた順に計測値に変化が現れる。同様に、配置点10eから配置点10gに向けて、衝撃発生部からの距離に応じた順に計測値に変化が現れる。このようなブレード長手方向のひずみ伝播を計測するため10a乃至10gにセンサを設置し、ひずみデータを収集する。センサの数は配置点10a~10gの7カ所に限るものではなく、風車ブレード12のブレードサイズや形状、位置に応じて設置数やその間隔を変えてもよい。
【0046】
例えば、図7ではセンサの配置点10a~10gを一列に揃えているが、これに限定されない。ブレード断面方向の衝突位置も検知する場合には、センサ10を、例えば複数列に取り付けてもよい。また、配置点は、スパーキャップ12aに限るものではなく、配置点10h、10iのようにウェブ12b、及びパネル12c、12dのいずれかに設置してもよい。
【0047】
本実施形態に係る情報生成装置5は、衝撃データの伝搬特性の解析により、衝撃発生時刻、衝撃発生位置、及び、衝撃の大きさを評価する。また情報生成装置5は、衝撃発生時刻、衝撃発生位置、衝撃の大きさ、風車ブレード12の構造データ、及び、運転履歴などから風車ブレード12の経時変化を予測評価することが可能である。以下に、詳細を説明する。
【0048】
(データ取得部20)
データ取得部20は、評価データを任意のサンプリング周期で定常的に取得する。すなわち、データ取得部20は、複数のセンサ10の計測信号、計測器13、14の計測データ、運転データ、風速データなどを含む気象データなどを定常的に取得する。
【0049】
また、データ取得部20は、ノイズ除去処理を行うことも可能である。すなわち、このデータ取得部20は、計測信号などのノイズを抑制して、データ記憶部30などに出力する。この場合、データ取得部20は、時間的な平均化処理、フィルタリィング処理などにより、計測信号、計測データ、及び運転データのノイズを抑制して、データ記憶部30などに出力することも可能である。
【0050】
図8は、データ取得部の動作を示すフローチャートである。ここでは、所定のサンプリング周期で定常的にデータを取得する例について、説明する。このサンプリング周期は、衝撃解析に必要とされる時間間隔に設定される。
【0051】
まず、データ取得部20は、風車に取り付けられた配置点10a~10iのセンサ10、計測器13、14、及び制御装置6から評価データを取得し、データ記憶部30に記憶する(ステップS21)。
【0052】
続けて、データ取得部20は、評価データの取得後に、データ記憶部30に記憶した評価データに対して、ノイズ除去処理(ステップS22)、平均化処理(ステップS23)などのデータ処理を実行し、データ記憶部30に記憶する。これにより、ノイズ抑制された評価データが、時系列にデータ記憶部30に記憶される。なお、データ取得部20は、ノイズ抑制処理をセンサ10の計測信号、計測器14の計測データのみに実行することも可能である。或いは、ノイズ抑制処理を施さないデータをデータ記憶部30に記憶させてもよい。
【0053】
次に、データ取得部20は、制御装置6から履歴データを読み出す(ステップS24)。履歴データには、時々刻々と得られる運転データ、データ処理後の運転データ、総運転時間などの積算履歴、風車ブレード12の回転が停止した回数などが含まれる。すなわち、データ取得部20は、取得した運転データに加えて、運転データの過去の履歴も取得する。なお、履歴データは、評価時刻における風車の運転状態を示す過渡的なデータ、これら過渡的なデータを積算したデータ、複数の任意の時間におけるデータを加算・減算して得られたデータを含んでもよい。
【0054】
また、データ取得部20は、データ記憶部30から過渡的なデータ(運転データ)を積算・演算処理して履歴データを生成する(ステップS25)。生成した履歴データは、データ記憶部30に再度記憶される(ステップS26)。なお、データ取得部20が生成する履歴データは、上述のようにネットワーク及び入力部55を介して取得されたたデータを含めてよい。情報生成装置5は、例えば一定期間運用後の風車に対して評価を開始する場合、風車の運用開始から本装置設置時までの運転履歴を予め入力し、そのデータを取得・積算しデータ記憶部30に記憶させてもよい。また、データ取得部20は、所定の期間が経過したデータをデータ記憶部30から削除してもよい。
【0055】
(衝撃検知部40)
衝撃検知部40は、データ記憶部30に記憶されたセンサ10の各計測値を取得し、風車ブレード12の衝撃発生有無を検知する。衝撃検知部40は、衝撃発生を検知した場合、発生位置、発生時刻、衝撃の大きさを評価し、後工程に出力する。すなわち、衝撃検知部40は、衝撃発生を検知した場合、衝撃発生位置、発生時刻、衝撃の大きさを示す衝撃値を出力する。
【0056】
衝撃検知部40は、複数のセンサ10の出力する計測信号の大きさが所定の大きさを示すときに、風車ブレード12の表層に面外衝撃が発生したことを検知する。また、衝撃検知部40は、風車ブレード12の回転駆動に伴い発生する振動ノイズを抑制後に、衝撃検知を実行してもよい。例えば、衝撃検知部40は、取得した各計測位置における計測信号値の時系列波形を、同一風車の他の風車ブレード12と比較し、その差分から得られた時系列計測信号の大きさが所定の閾値以上の場合、衝撃に起因して発生した波形として判定する。
【0057】
より具体的には、上述のように、各風車ブレード12の同等の位置に配置されるセンサ10の時系列値を互いに減算して得られた計測信号の大きさが所定の大きさを示すときに、風車ブレード12の表層に面外衝撃が発生したことを検知する。上述のように、各風車ブレード12の微小振動などは相関性が高く、同一の変動傾向を示すので、風車ブレード12に定常的に発生する振動データを抑制できる。このように、同一風車の他の風車ブレード12との差分信号から得られた波形を用いることにより、風車ブレード12の定常的なノイズ成分が除去され、検知精度が向上する。なお、単一ブレードの計測データの波形のみで衝撃発生を判定してもよい。また、本実施形態では、センサ10が所定の大きさの計測信号を出力した検知時刻を、衝撃に起因して発生した波形の検知時刻と称する場合がある。
【0058】
また、衝撃検知部40は、衝撃に起因して発生した計測信号として判定した場合に、風車ブレード12の各計測位置と検知時刻に応じて、衝撃発生位置、及び衝撃時刻を特定する。この場合、衝撃検知部40は、衝撃の伝播経路、材質などの情報を用いて、検知時刻、及び検知信号を補正してもよい。
【0059】
衝撃検知部40は、各センサ位置における衝撃波形の大きさから伝播経路による減衰を考慮し、衝撃の大きさ、及び衝撃発生時間を算出する。すなわち、衝撃検知部40は、衝撃に起因して発生した波形の検知時刻を、各センサ10の配置位置に対応づける。これにより、衝撃発生位置、及び衝撃時刻を求めることが可能となる。例えば、図7に示すように、10gの位置での検知時刻が最も早い場合には、衝撃発生位置は、配置点10gよりもハブ11側であることがわかる。一方で、10aの位置での検知時刻が最も早い場合には、配置点10aよりも風車ブレード12の端部側であることがわかる。このように、衝撃検知部40は、複数のセンサ10の中において、検知時刻が1番最初であるセンサから最も近い位置を衝撃発生位置として生成することができる。
【0060】
また、2つの配置点における検知時刻の差が、所定以下である場合には、衝撃発生位置は、この2つの配置点の間であることがわかる。この場合、2つ配置点の一方の配置点から他方の配置点側に距離が遠方になるに従い、検知時刻が順に遅くなる。また、衝撃検知部40は、この2つの配置点の検知時刻から、この2つの配置点の間で発生した衝撃発生位置、及び衝撃時刻を、線形演算により求めることが可能である。つまり、衝撃検知部40は、衝撃発生位置からの伝搬時間を線形加算した時刻が、2つの配置点の検知時刻に一致する点を、衝撃発生位置として検出する。例えば、2つの配置点間の衝撃伝搬時間は既知、或いは、他のセンサ10の検出時刻の差分から算出できる。これにより、衝撃検知部40は、2つの配置点間の衝撃伝搬時間を内分することで衝撃発生位置、及び衝撃発生時刻が算出できる。
【0061】
図9は、マトリクス式に構成した検知位置データ例を示す表である。図9の10a~10gは、センサ10の測定点(図7参照)の位置を示す。数字は、検知時刻の順番を示す。例えば、パターン1の1~7は、1~7の順に衝撃波の検知時刻が変動したことを示している。すなわち、パターン1では、測定点10a~10gの順に衝撃波の検知時刻が変動したことを示している。このパターン1では、衝撃発生位置は、配置点10aよりも風車ブレード12の端部側が関連づけられている。
【0062】
例えば、パターン3のLは、最初に衝撃波を検知した測定点よりも風車ブレード12の端部側であることを示し、Rは、最初に衝撃波を検知した測定点よりも風車ブレード12のハブ11側であることを示している。例えば、パターン3の2L、3Lは、測定点10cよりも風車ブレード12の端部側における測定点10b、10aの順で、衝撃波の検知時刻が変動したことを示している。一方で、パターン3の2R、3R、4R、5Rは、測定点10cよりも風車ブレード12のハブ11側で測定点10d、10e、10f、10gの順で、衝撃波の検知時刻が変動したことを示している。例えば、衝撃検知部40は、パターン3では、2Lと2Rとの検知時刻を比較し、測定点10cとの検知時刻が近いほうの測定点を選択する。例えば、衝撃検知部40は、2Rを選択する場合、衝撃発生位置は、測定点10cと測定点10dの間として検知する。次に、衝撃検知部40は、測定点10cと測定点10dとの検知時刻を線形演算することにより、つまり伝搬時時間を内分することにより、衝撃波の発生時刻と、衝撃発生位置を生成する。
【0063】
衝撃検知部40は、このような、各センサの検知時刻の時間差と、衝撃発生位置の範囲との関係をマトリクス式に構成したデータを用いて、衝撃発生位置を評価してもよい。マトリクス式に構成したデータを用いる場合には、衝撃検知部40は、検知時刻の時間差のパターンに対応するマトリクスデータに関連付けられた衝撃発生位置の範囲を出力することが可能である。次に、衝撃検知部40は、この2つ配置点間の検知時刻から、この2つ配置点間で発生した衝撃発生位置、及び衝撃時刻を求める。ここで、衝撃の大きさは、衝撃位置に発生した応力、ひずみ、衝撃のエネルギー等であり、衝撃発生時間はこれらが発生していた時間である。例えば、衝撃の大きさを示す衝撃値に相関する値は、所定値を超えた計測信号を積算することで算出可能である。
【0064】
図10は、衝撃検知部40の動作例を示すフローチャートである。衝撃検知部40は、風車を構成する複数の風車ブレード12の各所に取り付けられたセンサ10の計測値の履歴データを運転データ記憶部30より取得する(ステップS41)。
【0065】
衝撃検知部40は、衝撃の有無を判定する(ステップS42)。衝撃検知部40は、取得した各計測位置における計測信号を、同一風車の他の風車ブレード12と比較し、その差分から得られた計測信号の大きさが所定の閾値以上の場合、衝撃に起因して発生した計測信号であると判定する。
【0066】
衝撃検知部40は、衝撃に起因して発生した計測信号でないと判定した場合(ステップS42のN)、処理を終了する。一方で、衝撃検知部40は、衝撃に起因して発生した計測信号として判定した場合(ステップS42のY)、衝撃が発生した風車ブレード12の各計測位置において、衝撃に起因して発生した計測信号の検知時刻を抽出する。続けて、衝撃検知部40は、計測位置と検知時刻の情報を用いて、衝撃の伝播経路を考慮し、衝撃発生位置、及び衝撃発生時刻を特定する(ステップS43)。
【0067】
次に、衝撃検知部40は、衝撃として与えられた応力等の入力の時間変化を評価する(ステップS44)。つまり、衝撃検知部40は、特定した衝撃発生位置、時刻における衝撃の継続時間と、その大きさの積算値を衝撃値として生成する。衝撃検知部40は、各センサの検出信号を用いて衝撃の大きさを算出することが可能である。衝撃検知部40は、例えば、衝撃発生位置に最も近いセンサ10の所定値を超えた計測信号を積算することで、衝撃値を生成する。この場合、衝撃検知部40は、衝撃発生位置からセンサ10の距離と、伝搬経路の材質に応じて、衝撃値を補正してもよい。
【0068】
次に、衝撃検知部40は、生成した衝撃発生位置、衝撃発生時刻、及び衝撃の大きさを示す衝撃値を構造データ記憶部50に保存し(ステップS45)、処理を終了する。これらの、検知方法は、風車ブレード12に取り付けた各種センサの計測信号を使用した衝撃検知の一例であるが、これらに限定されない。例えば、測長センサ等を用いて計測したブレード変形量の時間変化を基に衝撃発生を検知してもよい。また、これら複数の方法を組み合わせて衝撃を検知してもよい。
【0069】
なお、衝撃検知部40は、衝撃発生位置の特定(ステップS43)、及び衝撃値の評価(ステップS44)に、有限要素法による振動解析ないしは衝突解析を用いてもよい。また、予め評価対象とする風車ブレード12の衝撃に対する各計測位置の応答を示す評価式としての実験式を用いてもよい。さらにまた、有限要素解析に用いる各種計算パラメータ、評価対象の形状(モデルデータ)、評価式、及びマトリクスデータは構造データ記憶部50に予め記憶することができる。
【0070】
(内部欠陥評価部60)
内部欠陥評価部60は、構造データ記憶部50に記憶された衝撃検知部40の演算結果、及び衝撃発生位置を含む近傍領域の材料データを用いて、衝撃により、FRP部材に発生する内部欠陥に関する内部欠陥情報を生成して、出力する。内部欠陥情報は、内部欠陥の発生領域、及び内部欠陥の欠陥発生量の情報を有する。なお、欠陥発生量は、層間剥離の場合は、層間剥離のサイズに相関する量であり、トランスバースクラックの場合は、トランスバースクラックの発生数、或いは、トランスバースクラックの発生密度に相関する量である。なお、内部欠陥の発生領域は、内部欠陥の範囲に対応し、風車ブレード12内の位置情報として生成可能である。また、内部欠陥の発生領域は、単一の位置座標で代表させることも可能である。
【0071】
内部欠陥評価部60は、衝撃検知部40の演算結果により得られた情報の内の、少なくなくとも衝撃発生位置に基づき、内部欠陥の発生領域を含む情報を生成する。より具体的には、内部欠陥評価部60は、衝撃検知部40の演算結果により得られた衝撃発生位置、及び衝撃力の積算値である衝撃値と、衝撃発生位置のシェル12fの構造情報(図4参照)を含む風車ブレード12の構造とに基づき、内部欠陥の状態を評価する。
【0072】
内部欠陥評価部60は、例えば数値シミュレーションによる予備実験により、風車ブレード12の各点の衝撃値と内部欠陥の状態を関連付けて記憶することが可能である。この場合、風車ブレード12の各点は、例えば離散点であり、数百点ぐらいを風車ブレード12の表面に均等に分散させて、予備実験をすることが可能である。これにより、衝撃発生位置に最も近い離散点の予備実験結果を用いて、内部欠陥の状態、例えば内部欠陥の発生領域を含む情報を生成可能である。
【0073】
より詳細に、図11のフローチャートを用いて内部欠陥評価部60の処理例を説明する。図11は内部欠陥評価部60の処理例を示すフローチャートである。ここでは、数値シミュレーションによる処理例を説明する。
【0074】
まず、内部欠陥評価部60は、構造データ記憶部50に記憶された衝撃検知部40の演算結果を取得する。続けて構造データ記憶部50より衝撃検知部40で評価した衝撃発生位置衝近傍の部材の材料データを取得する(ステップS61)。ここで材料データは部材を構成する素材、及びその厚さ、各素材の強度特性値、各種統計量である。またFRP素材に対しては繊維配向方向、積層数、FRPを構成するプラスチックの種類、及び繊維の強度特性も含む。
【0075】
次に、内部欠陥評価部60は、取得した衝撃データ及び部材材料データに基づき、FRP部材内部の欠陥発生量を有限要素法などの数値シミュレーションによって評価する(ステップS62)。数値シミュレーションによって評価する内容はFRP内部の層間剥離の発生位置、形状、及びサイズと、トランスバースクラックの発生位置、及び発生数ないしは密度である。
【0076】
次に、内部欠陥評価部60は、数値シミュレーションによる内部欠陥発生評価結果を統計処理し、内部欠陥発生量を決定する(ステップS63)。実機のFRP部材内部では材料の強度特性にもばらつきがあるため、同程度の衝撃を受けた場合でも内部欠陥発生範囲や発生量にばらつきが生じる。これにより、数値シミュレーションによる評価結果にも誤差が生じ得る。このため、予めこの評価誤差を統計評価し、評価誤差を考慮して衝撃に対する内部欠陥範囲、及び発生量を決定する。統計評価に用いる各種パラメータは予め構造データ記憶部50に記憶しておくことができる。そして、決定した内部欠陥発生範囲、及び欠陥発生量を構造データ記憶部50に記憶して(ステップS64)、処理を終了する。このように、複数のセンサ10の実測データを用いた、有限要素法などの数値シミュレーションを実行することにより、より高精度に欠陥発生量を含む欠陥発生情報を得ることができる。また、複数のセンサ10の実測データを、衝撃発生位置、衝撃発生時刻、及び衝撃値に集約しているので、より短時間に有限要素法などの数値シミュレーションを実行することができる。
【0077】
(剛性評価部70)
剛性評価部70は、発生した内部欠陥の種類、発生位置、サイズ、及び欠陥数ないしは密度に応じて内部欠陥が発生したFRP部材の剛性を生成する。例えば、剛性評価部70は、(1)式に示す評価式を予備実験により構成している。この(1)式は、有限要素法(FEM)などを用いたシュミレーショによる予備実験により構成可能である。
【0078】
【数1】
ここで、E:ヤング率、x:欠陥発生前のFRPのヤング率、y:欠陥密度、或いは、欠陥サイズに関するパラメータ、z:欠陥発生位置に関するパラメータである。この評価式は、欠陥発生の評価部位もしくは素材毎に設定してもよい。
【0079】
剛性評価部70は、内部欠陥評価部60が生成した内部欠陥発生領域から所定の範囲の荷重分担の変化に応じて、FRP部材の剛性変化を評価することも可能である。例えば、内部欠陥発生位置を含む領域の剛性が低下すると、周辺領域の荷重分担が増加する。このため、周辺領域の荷重分担の増加量を測定することにより、剛性変化を評価することも可能である。より具体的には風車ブレード12の定常駆動時の各センサ10の計測信号の大きさの変動から、周辺領域の荷重分担の増加量を推定可能となる。例えば、内部欠陥発生位置を含む領域の周辺位置のセンサ10の計測信号の絶対値の平均値が大きくなるほど、内部欠陥発生位置を含む領域の剛性がより低下したことを示す。このため、剛性評価部70は、内部欠陥発生位置を含む領域の周辺位置のセンサ10の計測信号の絶対値の平均値に応じて、剛性の評価、或いは、剛性の評価に関する値を補正することが可能である。
【0080】
より詳細に、図12のフローチャートを用いて剛性評価部70の処理例を説明する。図12は剛性評価部70の処理例を示すフローチャートである。ここでは、(1)式を用いる例を説明する。
【0081】
剛性評価部70は、構造データ記憶部50から、内部欠陥の発生領域、発生時刻、及び発生量等の内部欠陥データと、FRPの材料データ、剛性評価の各種統計量を取得する(ステップS71)。ここでFRPの材料データは繊維配向方向、積層数、FRPを構成するプラスチック、及び繊維の強度特性等である。
【0082】
次に、剛性評価部70は、(1)式を用いて、取得した内部欠陥データ及び材料データに基づき、欠陥発生部位の剛性を算出する(ステップS72)。なお、欠陥発生後の剛性は、予め評価対象のFRP素材の剛性と内部欠陥サイズ、及び欠陥量ないしは密度との関係のマトリクスを作成し、これを参照して評価してもよい。また、内部欠陥を再現した有限要素解析によって剛性を詳細に評価してもよい。
【0083】
次に、剛性評価部70は、評価した欠陥発生後の剛性を実機とのばらつきを考慮して統計処理し、欠陥発生部位の剛性を決定する(ステップS73)。(1)式に示すように剛性は、ヤング率Eを代表値にすることが可能である。そして、剛性評価部70は、決定した欠陥発生部位の剛性(ヤング率E)を構造データ記憶部50に記憶し(ステップS74)、処理を終了する。
【0084】
なお、統計評価に使用する各種統計値は予め構造データ記憶部50に記憶しておくことができる。このほか、前記各種センサの計測データを基に剛性を決定してもよい。例えば、衝撃発生部の剛性が低下することで、その部分の荷重を周囲の部材が受け持つことになる。これによって、周辺部材のひずみが増加するため、衝撃前後のひずみ量の変化をひずみゲージ計測データから評価し、この結果を基に剛性を決定してもよい。また、剛性低下することでブレードの変形量も変化するため、これを前述の測長センサの計測データや画像解析データより評価してもよいし、衝撃前後での定常時の振動挙動の変化を加速度センサの計測データより評価して剛性を決定してもよい。衝撃発生部の剛性は、前述の統計評価手法を用いてもよいし、統計手法にセンサ計測データを組み合わせてもよい。
【0085】
(内部欠陥進展量評価部80)
内部欠陥進展評価部80は、運転データ、ブレード構造データ、各部材の内部欠陥データを用いて、欠陥発生量の進展を評価する。なお、欠陥発生量の単位時間当たりの変化量を欠陥進展量と称する場合がある。例えば、内部欠陥進展評価部80は(2)式に示す評価式を予備実験により構成している。この(2)式は、有限要素法(FEM)などを用いたシュミレーショによる予備実験により構成可能である。
【0086】
【数2】
ここで、Δa:欠陥進展量、x:欠陥発生部材の強度パラメータ、y:欠陥サイズ、z:応力ないしはひずみである。
【0087】
また、内部欠陥進展量評価部80は、計測器13で撮像した画像、計測器14で測定した測長センサを用いて、実際の風車ブレード12の変形量やひずみ値を演算し、欠陥情報を生成することも可能である。例えば、風車ブレード12は、内部欠陥の発生により、上述のように剛性、すなわちヤング率Eが低下する。このため、風車ブレード12は、内部欠陥の発生により、その外形に変形、ひずみが生じる。例えば、風車ブレード12は、内部欠陥の発生した領域を中心にたわみが生じる傾向を示す。このため、内部欠陥進展量評価部80は、風車ブレード12の外形変形のデータを用いて、有限要素法などの解析シミュレーションにより内部構造の剛性分布としてヤング率Eの分布を演算可能である。これにより、例えば(1)式を逆解析することにより、y:欠陥密度ないしは欠陥サイズ、z:欠陥発生位置のパラメータを生成可能となる。
【0088】
図13は、内部欠陥進展量評価部80の生成した欠陥発生量の時系列変化を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は、欠陥発生量を示す。欠陥発生量には、新たに発生した欠陥も含まれる。つまり、欠陥進展量は、欠陥発生量の時間微分、或いは所定の時間間隔による時間差分に相関する。
【0089】
図13に示すように、衝撃検知部40が衝撃を検知した時刻から、現在の評価時点までの運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定線L10bを生成する。すなわち、内部欠陥進展量評価部80は、実際に測定された風車ブレード12の回転数、風車ブレード12が受ける風速、風向、風車ブレード12のピッチ角等の時系列データを用いた流体解析、有限要素法を用いた構造解析により、欠陥発生量の推定線L10bを生成する。つまり、内部欠陥進展量評価部80は、衝撃検知部40が生成した内部欠陥の領域にかかる負荷が大きくなるに従い、欠陥進展量を大きな値として出力する。
【0090】
また、内部欠陥進展量評価部80は、過去の統計量を用いて、推定線L10bの下限誤差を示す推定誤差下限線L12b、及び推定線L10bの上限誤差を示す推定誤差上限線L14bを生成する。
【0091】
また、内部欠陥進展量評価部80は、推定線L10b、推定誤差下限線L12b、推定誤差上限線L14bの形状に応じた、将来の推定線L10a、推定誤差下限線L12a、推定誤差上限線L14aを生成する。例えば、衝撃検知部40は、後述するように、外挿などの一般的な補完方法により、将来の推定線L10a、推定誤差下限線L12a、推定誤差上限線L14aを生成する。なお、補完の方法は限定されず、例えばスプライン補完、最小2乗誤差補完などの一般的な方法を用いることが可能である。
【0092】
また、内部欠陥進展量評価部80は、将来の運転データ(風速、風向等)に基づき、推定線L10a、推定誤差下限線L12a、推定誤差上限線L14aを生成することも可能である。
【0093】
より、詳細には、内部欠陥進展量評価部80は、データ記憶部30に記憶される将来の風況データを用いて、風車ブレード12が受ける風速、風向、回転数、風車ブレード12のピッチ角等の将来期間における時系列データを設定し、推定線L10bと同様に、評価時点からの予測線を生成する。すなわち、内部欠陥進展量評価部80は、現在の評価時点からの将来の運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定線L10aを生成する。この場合にも、評価時点で補正値を用いることにより、より高精度な予測が可能となる。
【0094】
このような、評価時点からの将来の運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定線L10aを生成する場合には、欠陥の進展状況に応じた、推定線L10aの生成が可能となる。例えば、欠陥がある位置に到達した場合や、ある大きさまで進展した場合に、欠陥の停止するケースも想定される。或いは、例えばスパーキャップに欠陥が生じて、ブレードの周方向進展した場合、スパーキャップの端部まで進展すると、パネルとの境界(別部材)になるために、進展が停止するケースも想定される。また、部材の厚さも位置によって異なるため、場所によって進展が速くなるケースも想定される。このような、欠陥の進展状況もより正確に反映可能となる。
【0095】
また、過去の所定期間の運転データから推定される将来期間の運転データを、将来の運転データとして用いることも可能である。すなわち、内部欠陥進展量評価部80は、過去の運転データから推定される将来期間の運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定線L10aを生成する。この場合にも、評価時点で補正値を用いることにより、より高精度な予測が可能となる。なお、将来期間の運転データには、過去の所定期間の運転データを用いることも可能である。或いは、過去の所定期間の数年分の運転データの平均などの統計処理を施したデータを用いることも可能である。
【0096】
例えば、内部欠陥進展量評価部80は、過去の所定期間の数年分の運転データの偏差が小さい方向にずれた、将来期間の運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定誤差下限線L12aを生成することも可能である。同様に、内部欠陥進展量評価部80は、過去の所定期間の数年分の運転データの偏差が大きい方向にずれた、将来期間の運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定誤差上限線L14aを生成することも可能である。
【0097】
また、内部欠陥進展量評価部80は、風車ブレード12の外形変形のデータを用いて、有限要素法などの解析シミュレーションにより内部構造の剛性分布を逆解析することにより、欠陥発生量の進展量線L16を生成する。図13に示すように、内部欠陥進展量評価部80は、進展量線L16と、推定線L10bとの評価時点でのずれ量を用いて、将来の推定線L10a、推定誤差下限線L12a、推定誤差上限線L14aを補正することが可能である。
【0098】
内部欠陥進展量評価部80は、これらの推定線L10b、推定誤差下限線L12b、推定誤差上限線L14b、将来の推定線L10a、推定誤差下限線L12a、推定誤差上限線L14a、進展量線L16は、図13に示す図表として、保守情報提示部100などに表示させることが可能である。これにより、管理者は、容易に内部欠陥の状態、風車ブレード12の状態予測、すなわち風車ブレード12の評価を把握することができる。
【0099】
図14は、補正を加えた欠陥発生量の時系列変化を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は、欠陥発生量を示す。欠陥発生量には、新たに発生した欠陥も含まれる。
【0100】
図14に示すように、内部欠陥進展量評価部80は、衝撃検知部40が衝撃を検知した時刻から、現在の評価時点までの運転データ、構造データを用いて、欠陥発生量の推定線L22を生成する。このとき、内部欠陥進展量評価部80は、所定の時間間隔である時刻T1、T2、評価時点において、風車ブレード12の外形変形のデータを用いた欠陥発生量を生成する。そして、内部欠陥進展量評価部80は、推定線L22を、時刻T1、T2、評価時点の欠陥発生量で補正をする。そして、内部欠陥進展量評価部80は、補正後の推定線L22を、例えば外挿することにより、欠陥発生量の予測線L24の精度を上げることができる。
【0101】
次に、図15のフローチャートを用いて内部欠陥進展評価部80の処理例を説明する。図15は内部欠陥進展評価部80の処理例を示すフローチャートである。ここでは、流量解析、及び構造解析を用いたシミュレーションによる演算例で説明する。
【0102】
先ず、内部欠陥進展量評価部80は、データ記憶部30に記憶された所定の評価期間の過去運転データ、及び構造データ記憶部50に記憶された各部材の剛性等のブレード構造データを取得する(ステップS81)。
【0103】
次に、内部欠陥進展量評価部80は、評価期間の運転データに基づき、風車ブレードが受ける面圧や遠心力等の荷重条件を評価し、これに応じた構造解析によってブレードを構成する各部材に発生する応力、ひずみ等を評価する(ステップS82)。内部欠陥進展量評価部80は、風車ブレード12の回転数、風車ブレード12が受ける風速、風向、風車ブレード12のピッチ角等の風車ブレード12における運用状況に関する時系列データを用いて、流体解析を用いたシミュレーションにより、面圧の時系列データを生成する。そして、内部欠陥進展量評価部80は、面圧の時系列データと、各部材の剛性等のブレード構造データとを用いた、有限要素によるシミュレーションによる演算により、応力、ひずみを時系列に生成する。
【0104】
次に、内部欠陥進展量評価部80は、(2)式を用いて、評価した応力、ひずみ等に基づき、各部材に発生した内部欠陥の欠陥進展量Δa、或いは新たな内部欠陥の発生量を評価する(ステップS83)。すなわち、内部欠陥進展量評価部80は、(2)式を用いて、時系列な欠陥進展量Δa、新たな内部欠陥の発生量を演算する。
【0105】
次に、内部欠陥データに欠陥進展量Δa及び欠陥発生量を積算し、欠陥発生量の時系列変化を構造データ記憶部50に記憶し(ステップS84)、処理を終了する。
【0106】
(損傷リスク評価部90)
損傷リスク評価部90は、内部欠陥進展量評価部80で生成した欠陥発生量に応じた損傷リスクを評価する。図16は、損傷リスク評価部90が用いる損傷リスクのマトリクス表である。損傷率は、欠陥発生量の所定の許容値に対する割合を示す。総運転時間は、今後の運転時間の積算時間を示す。つまり、総運転時間には、風車ブレード12が停止している期間は含まれない。
【0107】
また、損傷リスク評価部90は、内部欠陥進展量評価部80が生成した将来の欠陥発生量に基づき、損傷率を生成することも可能である。この場合には、将来の欠陥発生量に応じた損傷リスクを評価することもできる。
【0108】
図17は、マトリクス表の生成、及びリスク評価の処理例を示すフローチャートである。ステップS91、及びS92が、マトリクス表の生成プロセスに対応する。一方で、ステップS93、及びS94が、リスク評価プロセスに対応する。
【0109】
図17に示すように、損傷リスク評価部90は、構造データ記憶部50に記憶された風車ブレード12の構造データを取得する(ステップS91)。
【0110】
次に、損傷リスク評価部90は、過去の運転データを用いた風車ブレード12の構造データを用いた有限要素解析により、損傷率、及び運転時間に対する損傷リスクを算出する(ステップS92)。この場合、損傷リスク評価部90は、評価部位での損傷率の閾値AないしB、運転時間に対する閾値aないしbを定め、マトリクス表を生成する。なお、損傷率、及び運転時間の閾値はそれぞれ2つに限るものではなく、任意の数を設定してよい。
【0111】
次に、損傷リスク評価部90は、内部欠陥進展量評価部80が生成した進展量を用いて、予め定めた許容値に対する損傷率を算出する(ステップS93)。そして、損傷リスク評価部90は、損傷率に基づき、運転時間に対するに損傷リスクを時系列に生成し、構造データ記憶部50に記憶し(S94)、処理を終了する。損傷リスク評価部90は、運転時間に対するに損傷リスクを時系列に生成し、保守情報提示部100に表示させる。
【0112】
以上説明したように、本実施形態によれば、風車ブレード12の複数の位置に配置された複数のセンサ10から、風車ブレード12の表層に対する衝撃に応じた強度の計測信号を取得するので、複数のセンサ10への衝撃の伝導時間の差から衝撃位置をより正確に求めることができる。これにより、風車ブレード12のFRPの構造部材にかかる衝撃の衝撃位置から内部欠陥の発生領域をより正確に特定可能となる。
【0113】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
5:情報生成装置、10:センサ、12:風車ブレード、20:データ取得部、40:衝撃検知部、60:内部欠陥評価部、70:剛性評価部、80:欠陥進展量評価部、90:損傷リスク評価部。
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図17