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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155570
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F02M51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070390
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 將至
(72)【発明者】
【氏名】奥野 佳則
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 尚
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 一樹
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AB02
3G066AC09
3G066BA49
3G066BA67
3G066CC14
3G066CC26
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】部材の摩耗を抑制可能な小型の燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】中間部材60は、高圧燃料が供給される圧力制御室をニードルとの間に形成する中間部材本体61、および、中間部材本体61の圧力制御室側の面に開口し中間部材本体61に対し圧力制御室とは反対側の低圧側空間400に向かって延びる延伸通路603を有する。可動部材72は、低圧側空間400に設けられ、平面状の平面部750を有し、平面部750が中間部材60から離間または中間部材60に当接可能である。中間部材60は、中間部材本体61の低圧側空間400側に形成され平面部750と当接可能な平面状の弁座面62、弁座面62から環状に凹み弁座面62を内側弁座面621と外側弁座面622とに区画する高圧溝63、および、高圧溝63を形成する壁面に開口し高圧溝63と延伸通路603とを接続する少なくとも1つの絞り孔605を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄圧配管(2)で蓄圧された高圧燃料を内燃機関に噴射する燃料噴射装置であって、
前記高圧燃料が流入するノズル室(200)、および、前記ノズル室に連通し前記高圧燃料を噴射する噴孔(23)を有するノズルボデー(20)と、
前記ノズル室内で往復移動可能に設けられ、前記ノズル室と前記噴孔との間を開閉し前記噴孔からの前記高圧燃料の噴射を断続する弁部材(30)と、
前記弁部材に対し前記噴孔とは反対側に設けられ、前記高圧燃料が供給される圧力制御室(300)を前記弁部材との間に形成する中間部材本体(61)、および、前記中間部材本体の前記圧力制御室側の面に開口し前記中間部材本体に対し前記圧力制御室とは反対側の低圧側空間(400)に向かって延びる延伸通路(603)を有する中間部材(60)と、
前記低圧側空間に設けられ、平面状の平面部(750)を有し、前記平面部が前記中間部材から離間または前記中間部材に当接可能な可動部材(72)と、を備え、
前記中間部材は、前記中間部材本体の前記低圧側空間側に形成され前記平面部と当接可能な平面状の弁座面(62)、前記弁座面から環状に凹み前記弁座面を内側弁座面(621)と外側弁座面(622)とに区画する高圧溝(63)、および、前記高圧溝を形成する壁面に開口し前記高圧溝と前記延伸通路とを接続する少なくとも1つの絞り孔(605)を有する燃料噴射装置。
【請求項2】
前記中間部材または前記可動部材の少なくとも一方に設けられ、前記内側弁座面または前記平面部に開口する流入側開口部(641、661、761)、および、前記低圧側空間と連通する流出側開口部(642、662、762)を有し、前記平面部が前記弁座面から離間または前記弁座面に当接することにより前記流入側開口部が開閉される逃がし通路(64、66、76)をさらに備える請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記逃がし通路(64)は、管路であって、前記流入側開口部(641)が前記内側弁座面に形成され、前記流出側開口部(642)が前記低圧側空間に連通し、
前記高圧溝は、環状に形成されている請求項2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記中間部材は、前記高圧溝において前記内側弁座面と前記外側弁座面とを段差なく接続する封止部(65)を有し、
前記逃がし通路(66)は、前記内側弁座面、前記封止部の前記平面部側の端面、および、前記外側弁座面から凹むよう溝状に形成されている請求項2に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記逃がし通路(76)は、管路であって、前記流入側開口部(761)が前記平面部に形成され、前記流出側開口部(762)が前記低圧側空間に連通し、
前記高圧溝は、環状に形成されている請求項2に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
前記逃がし通路は、前記可動部材に設けられた第1逃がし通路(76)、および、前記中間部材に設けられた第2逃がし通路(66)を有し、
前記第1逃がし通路は、管路であって、前記流入側開口部(761)が前記平面部に形成され、前記流出側開口部(762)が前記低圧側空間に連通し、
前記中間部材は、前記高圧溝において前記内側弁座面と前記外側弁座面とを段差なく接続する封止部(65)を有し、
前記第2逃がし通路は、前記内側弁座面、前記封止部の前記平面部側の端面、および、前記外側弁座面から凹むよう溝状に形成されている請求項2に記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料中に異物が多く含まれるような新興国等の市場においてディーゼル車の使用機会が増加している。これにより、燃料噴射装置に対する異物による攻撃頻度が増加している。また、近年の燃費排ガス規制に対応するため、燃料圧力の高圧化が促進されている。燃料圧力の高圧化により、燃料噴射装置に対する異物による攻撃力が増大している。これらの原因により、燃料噴射装置の噴射を制御するための弁部の平面状の弁座面において、燃料中の異物による摩耗量が増加し、可動部材との当接時に求められるシール機能を喪失するおそれがある。その結果、燃料噴射装置の性能劣化を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-153155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、弁座面の摩耗量は、可動部材と弁座面との隙間を流れる燃料の流速と燃料圧力とに比例するため、摩耗量を低減するには、可動部材と弁座面との隙間を流れる燃料の流速を低減させるアプローチが考えられる。例えば、特許文献1の燃料噴射装置では、弁座面に開口し可動部材の当接により閉塞される開口部の内径を拡大することにより、可動部材と弁座面との隙間を流れる燃料の流速を低減させることが可能である。これにより、弁座面の摩耗量の低減を図ることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の燃料噴射装置では、弁座面の摩耗量の低減を図ることを目的として、弁座面に開口する開口部の内径を拡大すると、可動部材が開口部内の燃料から受ける圧力である受圧力が増大するおそれがある。これにより、可動部材に作用する受圧力に対応可能な可動部材の駆動部が必要となり、開口部の内径を拡大することで耐異物性の向上を図ることができる一方、燃料噴射装置の大型化を招くという問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、部材の摩耗を抑制可能な小型の燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蓄圧配管(2)で蓄圧された高圧燃料を内燃機関に噴射する燃料噴射装置であって、ノズルボデー(20)と弁部材(30)と中間部材(60)と可動部材(72)とを備える。ノズルボデーは、高圧燃料が流入するノズル室(200)、および、ノズル室に連通し高圧燃料を噴射する噴孔(23)を有する。弁部材は、ノズル室内で往復移動可能に設けられ、ノズル室と噴孔との間を開閉し噴孔からの高圧燃料の噴射を断続する。
【0008】
中間部材は、弁部材に対し噴孔とは反対側に設けられ、高圧燃料が供給される圧力制御室(300)を弁部材との間に形成する中間部材本体(61)、および、中間部材本体の圧力制御室側の面に開口し中間部材本体に対し圧力制御室とは反対側の低圧側空間(400)に向かって延びる延伸通路(603)を有する。可動部材は、低圧側空間に設けられ、平面状の平面部(750)を有し、平面部が中間部材から離間または中間部材に当接可能である。
【0009】
中間部材は、中間部材本体の低圧側空間側に形成され平面部と当接可能な平面状の弁座面(62)、弁座面から環状に凹み弁座面を内側弁座面(621)と外側弁座面(622)とに区画する高圧溝(63)、および、高圧溝を形成する壁面に開口し高圧溝と延伸通路とを接続する少なくとも1つの絞り孔(605)を有する。
【0010】
弁座面に開口し可動部材の当接により閉塞される開口部を形成する環状の高圧溝の外周壁の内径を拡大することにより、可動部材と弁座面との隙間を流れる燃料の流速を低減させることができる。これにより、弁座面の摩耗量の低減を図ることができる。
【0011】
さらに、環状の高圧溝の外周壁の内径の拡大に応じて高圧溝の内周壁の外径を拡大することにより、可動部材の当接により閉塞される開口部の面積を一定の大きさに維持でき、可動部材に作用する受圧力の増大を抑制できる。これにより、可動部材の駆動部を大型化させる必要がなくなり、燃料噴射装置の大型化を抑制できる。したがって、弁座面の摩耗を抑制可能な小型の燃料噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による燃料噴射装置を示す断面図。
図2】第1実施形態による燃料噴射装置の一部を示す断面図。
図3】第1実施形態による燃料噴射装置の平面部、弁座面、および、その近傍を示す断面図。
図4】第1実施形態による燃料噴射装置の平面部、弁座面、および、その近傍を示す断面図。
図5図4のV-V線断面図。
図6図5のVI-VI線断面図。
図7】第1実施形態による燃料噴射装置の弁座面、および、その近傍を示す斜視図。
図8】比較形態による燃料噴射装置の平面部、弁座面、および、その近傍を示す模式図。
図9】比較形態による燃料噴射装置の弁座面の開口部内径の大きさと燃料流速および受圧力との関係を示す図。
図10】第1実施形態による燃料噴射装置の弁座面の開口部内径の大きさと燃料流速および受圧力との関係を示す図。
図11】第2実施形態による燃料噴射装置の弁座面、および、その近傍を示す図。
図12図11のXII-XII線断面図。
図13】第3実施形態による燃料噴射装置の弁座面、および、その近傍を示す図。
図14図13のXIV-XIV線断面図。
図15】第4実施形態による燃料噴射装置の弁座面、および、その近傍を示す図。
図16図15のXVI-XVI線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態による燃料噴射装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の燃料噴射装置を図1に示す。燃料噴射装置1は、例えば図示しない車両に搭載された4気筒のディーゼルエンジンに適用される。燃料噴射装置1は、各気筒に設けられ、蓄圧された燃料としての軽油を貯留するコモンレール2に接続される。燃料噴射装置1は、コモンレール2から供給された高圧の燃料を各気筒の燃焼室に噴射する。つまり、燃料噴射装置1は、「蓄圧配管」としてのコモンレール2で蓄圧された高圧燃料を「内燃機関」としてのディーゼルエンジンに噴射する燃料噴射装置である。
【0015】
<1>図1、2に示すように、燃料噴射装置1は、ノズルボデー20、「弁部材」としてのニードル30、インジェクタボデー40、リテーニングナット50、中間部材60、可動部材72等を備える。ノズルボデー20は、高圧燃料が流入するノズル室200、および、ノズル室200に連通し高圧燃料を噴射する噴孔23を有する。ニードル30は、ノズル室200内で往復移動可能に設けられ、ノズル室200と噴孔23との間を開閉し噴孔23からの高圧燃料の噴射を断続する。
【0016】
中間部材60は、ニードル30に対し噴孔23とは反対側に設けられ、高圧燃料が供給される圧力制御室300をニードル30との間に形成する中間部材本体61、および、中間部材本体61の圧力制御室300側の面に開口し中間部材本体61に対し圧力制御室300とは反対側の低圧側空間400に向かって延びる延伸通路603を有する。可動部材72は、低圧側空間400に設けられ、平面状の平面部750を有し、平面部750が中間部材60から離間または中間部材60に当接可能である(図3、4参照)。
【0017】
中間部材60は、中間部材本体61の低圧側空間400側に形成され平面部750と当接可能な平面状の弁座面62、弁座面62から環状に凹み弁座面62を内側弁座面621と外側弁座面622とに区画する高圧溝63、および、高圧溝63を形成する壁面に開口し高圧溝63と延伸通路603とを接続する少なくとも1つの絞り孔605を有する(図3~7参照)。
【0018】
<2>燃料噴射装置1は、逃がし通路64をさらに備える。逃がし通路64は、中間部材60に設けられ、内側弁座面621に開口する流入側開口部641、および、低圧側空間400と連通する流出側開口部642を有し、平面部750が弁座面62から離間または弁座面62に当接することにより流入側開口部641が開閉される(図3~7参照)。
【0019】
<3>逃がし通路64は、管路であって、流入側開口部641が内側弁座面621に形成され、流出側開口部642が低圧側空間400に連通している。高圧溝63は、環状に形成されている(図3~7参照)。
【0020】
以下、燃料噴射装置1の構成について、より詳細に説明する。
【0021】
図2に示すように、ノズルボデー20は、ノズル筒部21、ノズル底部22、噴孔23を有する。ノズル筒部21は、例えば金属により形成されている。ノズル筒部21は、ノズル小径部211、ノズル大径部213を有している。ノズル小径部211は、略円筒状に形成されている。ノズル大径部213は、ノズル小径部211の一端に接続するようノズル小径部211と一体に略円筒状に形成されている。ノズル大径部213の外径は、ノズル小径部211の外径より大きい。ノズル大径部213の内径はノズル小径部211の内径より大きい。ノズル小径部211の内周壁とノズル大径部213の内周壁とは、テーパ状の壁面により接続されている。
【0022】
ノズル底部22は、ノズル筒部21のノズル小径部211のノズル大径部213とは反対側の端部を塞ぐようノズル筒部21と一体に形成されている。噴孔23は、ノズル底部22を貫くよう形成されている。噴孔23は、例えば、ノズル底部22の周方向に等間隔で複数形成されている。ノズル底部22の噴孔23に対し上流側の内壁は、テーパ状に形成され、テーパ状の弁座220を形成している。
【0023】
ノズル室200は、ノズル筒部21、ノズル底部22の内側に形成され、噴孔23に連通している。
【0024】
ニードル30は、ニードル本体31、鍔部32を有している。ニードル本体31は、例えば金属により棒状に形成されている。ニードル本体31は、軸方向に往復移動可能にノズル室200に設けられている。ニードル本体31は、一端が弁座220に当接または弁座220から離間可能なようノズル室200に設けられている。以下、適宜、ニードル本体31が弁座220に当接する方向を「閉弁方向」といい、ニードル本体31が弁座220から離間する方向を「開弁方向」という。
【0025】
鍔部32は、例えば金属により環状に形成され、ニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部から所定距離離れた位置に設けられている。ニードル本体31の一端が弁座220に当接した状態において、鍔部32は、ノズル大径部213のノズル小径部211側の端部の径方向内側に位置している。また、この状態において、ニードル本体31の他端の端面は、ノズル大径部213のノズル小径部211とは反対側の端面から所定距離噴孔23側に離れている。
【0026】
ノズル大径部213の径方向内側には、シリンダ34、ニードルスプリング33、制御プレート35、サポートスプリング36が設けられている。シリンダ34は、例えば金属により略円筒状に形成されている。シリンダ34は、ニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部の径方向外側に設けられている。
【0027】
シリンダ34のニードル30側の端部の内径は、ニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部の外径よりやや大きい。シリンダ34は、ニードル30側の端部の内周壁がニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部の外周壁と摺動可能、かつ、ニードル本体31に対し軸方向に相対移動可能に設けられている。シリンダ34の外径は、ノズル大径部213の内径より小さい。シリンダ34の外周壁とノズル大径部213の内周壁との間には、略円筒状の隙間が形成されている。
【0028】
ニードルスプリング33は、例えばコイルスプリングであり、ニードル本体31の径方向外側において鍔部32とシリンダ34との間に設けられている。ニードルスプリング33の一端は鍔部32に当接し、他端はシリンダ34に当接している。ニードルスプリング33は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、ニードルスプリング33は、シリンダ34をニードル本体31に対し開弁方向に付勢している。
【0029】
制御プレート35は、プレート本体351、オリフィス通路350を有している。プレート本体351は、例えば金属により略円板状に形成されている。プレート本体351は、シリンダ34のニードル30とは反対側の端部の径方向内側において軸方向に往復移動可能に設けられている。オリフィス通路350は、プレート本体351の中央を板厚方向に貫くよう形成されている。オリフィス通路350は、ニードル30とは反対側の端部の内径が、ニードル30側の端部の内径より小さくなるようオリフィス状に形成されている。
【0030】
サポートスプリング36は、例えばコイルスプリングであり、シリンダ34の内周壁から径方向内側に延びる部位であるシリンダ延伸部341と制御プレート35との間に設けられている。サポートスプリング36の一端はシリンダ延伸部341に当接し、他端は制御プレート35に当接している。サポートスプリング36は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、サポートスプリング36は、制御プレート35をシリンダ34に対し開弁方向に付勢している。
【0031】
中間部材60は、ノズルボデー20に対し噴孔23とは反対側に設けられている。中間部材60は、中間部材本体61、高圧燃料通路601、供給通路602、延伸通路603を有している。中間部材本体61は、例えば金属により略円板状に形成されている。中間部材本体61は、噴孔23側の端面が、ノズル大径部213のノズル小径部211とは反対側の端面に当接するよう設けられている。
【0032】
高圧燃料通路601は、中間部材本体61の外縁部において中間部材本体61の軸に対し傾斜し、中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面と噴孔23側の端面とを接続するよう形成されている。供給通路602は、中間部材本体61の軸に対し傾斜し、中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面と噴孔23側の端面の中央とを接続するよう形成されている。ここで、供給通路602の噴孔23とは反対側の端部は、高圧燃料通路601の噴孔23とは反対側の端部に接続している。延伸通路603は、中間部材本体61の軸に対し傾斜し、中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面と噴孔23側の端面の中央とを接続するよう形成されている。
【0033】
供給通路602の噴孔23側の端部には、絞り孔604が接続している。延伸通路603の噴孔23とは反対側の端部には、絞り孔605が接続している。絞り孔605は、中間部材60に対し噴孔23とは反対側の空間に連通している。
【0034】
ノズル大径部213と中間部材本体61との接続部の径方向外側には、ガイドリング81が設けられている。ガイドリング81は、例えば金属により略円筒状に形成されている。ガイドリング81の内径は、ノズル大径部213の外径、および、中間部材本体61のノズル大径部213側の端部の外径よりやや大きい。これにより、ノズルボデー20と中間部材60との径方向の位置ズレが抑制されている。
【0035】
シリンダ34は、噴孔23とは反対側の端面が、中間部材本体61の噴孔23側の端面に当接、または、中間部材本体61の噴孔23側の端面から離間可能である。圧力制御室300は、シリンダ34の内周壁およびニードル本体31の噴孔23とは反対側の端面と中間部材本体61の噴孔23側の端面との間に形成されている。
【0036】
高圧燃料通路601の噴孔23側の端部は、ノズル大径部213の内周壁とシリンダ34の外周壁との間に開口している。これにより、高圧燃料通路601は、ノズル室200に連通している。供給通路602に接続する絞り孔604および延伸通路603の噴孔23側の端部は、シリンダ34の径方向内側、すなわち中間部材本体61の圧力制御室300側の面に開口している。これにより、供給通路602および延伸通路603は、圧力制御室300に連通している。
【0037】
インジェクタボデー40は、中間部材60に対し噴孔23とは反対側に設けられている。インジェクタボデー40は、ボデー本体41、ボデーねじ部42、配管接続部43、高圧燃料通路401を有している。ボデー本体41は、例えば金属により筒状に形成されている。ボデー本体41は、噴孔23側の端面が、中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面に当接するよう設けられている。ボデーねじ部42は、ボデー本体41の噴孔23側の端部の外周壁に形成されている。
【0038】
高圧燃料通路401は、ボデー本体41の内周壁と外周壁との間においてボデー本体41の軸に略平行となるよう形成されている。高圧燃料通路401は、ボデー本体41の噴孔23側の端面の高圧燃料通路601および供給通路602の開口部に対応する位置に開口している。これにより、高圧燃料通路401は、高圧燃料通路601および供給通路602に連通している。
【0039】
配管接続部43は、ボデー本体41の外周壁から径方向外側へ延びるようボデー本体41と一体に形成されている(図1参照)。配管接続部43の内側には、高圧燃料通路401に連通する通路が形成されている。配管接続部43には、コモンレール2から延びる燃料配管が接続される。これにより、コモンレール2から供給された高圧の燃料は、配管接続部43内の通路を経由して高圧燃料通路401に流れる。高圧燃料通路401に流れた燃料は、高圧燃料通路601を経由してノズル室200に流れ、供給通路602を経由して圧力制御室300に流れる。その結果、ノズル室200および圧力制御室300が高圧の燃料で満たされる。
【0040】
開閉部70は、ボデー本体41の噴孔23側の端部の内側に設けられている。開閉部70は、駆動部71、可動部材72を有している。可動部材72は、軸部73、磁性体部74、先端部75を有している。軸部73は、例えば金属により棒状に形成されている。磁性体部74は、例えば磁性体により環状の円板状に形成され、軸部73の一方の端部に嵌め込まれている。先端部75は、例えば金属により略球状に形成され、軸部73の他方の端部に嵌め込まれている。
【0041】
可動部材72は、ボデー本体41の噴孔23側の端部の内側において、ボデー本体41の軸に略平行な方向に往復移動可能に設けられている。可動部材72は、先端部75が、中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面の絞り孔605に対応する部位に当接可能、または、当該部位から離間可能に設けられている。中間部材60と可動部材72との当接箇所周りの構成については、後に詳述する。
【0042】
低圧側空間400は、可動部材72の軸部73の噴孔23側の端部の径方向外側に形成されている。低圧側空間400は、図示しない低圧燃料通路に連通している。可動部材72の先端部75が中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面の絞り孔605に対応する部位に当接しているとき、圧力制御室300と低圧側空間400との延伸通路603および絞り孔605を経由した連通は遮断されている。一方、可動部材72が中間部材本体61の噴孔23とは反対側の端面の絞り孔605に対応する部位から離間しているとき、圧力制御室300と低圧側空間400との延伸通路603および絞り孔605を経由した連通は許容されている。このように、開閉部70は、可動部材72を中間部材本体61に当接、または、中間部材本体61から離間させることで、圧力制御室300と低圧側空間400との間を開閉する。
【0043】
駆動部71は、可動部材72に対し噴孔23とは反対側に設けられ、通電により磁気吸引力を発生し、可動部材72の磁性体部74を噴孔23とは反対側へ吸引可能である。車両に設けられたECU100(図1参照)は、駆動部71への通電を制御可能である。ECU100は、駆動部71への通電を制御することにより、開閉部70の可動部材72の作動を制御し、圧力制御室300と低圧側空間400との間の開閉を制御可能である。
【0044】
リテーニングナット50は、ナット筒部51、ナットねじ部53を有している。ナット筒部51は、例えば金属により形成されている。ナット筒部51は、ナット小径部511、ナット中径部512、ナット大径部513を有している。ナット小径部511は、略円筒状に形成されている。ナット中径部512は、ナット小径部511の一端に接続するようナット小径部511と一体に略円筒状に形成されている。ナット中径部512の外径は、ナット小径部511の外径と同じである。ナット中径部512の内径は、ナット小径部511の内径より大きい。ナット大径部513は、ナット中径部512のナット小径部511とは反対側の端部に接続するようナット中径部512と一体に略円筒状に形成されている。ナット大径部513の外径は、ナット中径部512の外径と同じである。ナット大径部513の内径は、ナット中径部512の内径より大きい。
【0045】
ナットねじ部53は、インジェクタボデー40のボデーねじ部42に螺合可能なよう、ナット大径部513のナット中径部512とは反対側の端部の内周壁に形成されている。リテーニングナット50は、ナット小径部511のナット大径部513側の環状の端面が、ノズル大径部213のノズル小径部211側の環状の端面に当接し、ナットねじ部53がボデーねじ部42に螺合するようにして設けられている。これにより、ノズルボデー20とインジェクタボデー40とが互いに近付く方向の軸力が発生している。そのため、中間部材60は、ノズルボデー20とインジェクタボデー40との間に挟まれ、ノズル大径部213の中間部材本体61側の端面と中間部材本体61のノズル大径部213側の端面との間、および、中間部材本体61のボデー本体41側の端面とボデー本体41の中間部材本体61側の端面との間に、所定の圧力が作用した状態となっている。
【0046】
次に、中間部材60と可動部材72との当接箇所周りの構成について詳細に説明する。
【0047】
図2~4に示すように、中間部材本体61には、中間部材凹部610、凹部611が形成されている。中間部材凹部610は、中間部材本体61のノズルボデー20とは反対側の端面から環状に凹むよう形成されている。凹部611は、中間部材本体61のノズルボデー20とは反対側の端面のうち中間部材凹部610の径方向内側の部位から環状に凹むよう形成されている(図3参照)。中間部材本体61のノズルボデー20とは反対側の端面のうち凹部611の径方向内側に平面状の弁座面62が形成されている(図4参照)。
【0048】
図5に示すように、高圧溝63は、円環状に形成され、弁座面62を円形の内側弁座面621と円環状の外側弁座面622とに区画している。
【0049】
図3、4に示すように、可動部材72の先端部75は、球状の部材の一部を平面状に加工することにより形成されている。この平面状の部位が平面部750に対応し、弁座面62に当接可能である。
【0050】
図4、5に示すように、絞り孔605の延伸通路603とは反対側の端部は、高圧溝63を形成する壁面である高圧溝63の底面に開口している。本実施形態では、絞り孔605は、高圧溝63の周方向に等間隔で4つ形成されている。
【0051】
図5~7に示すように、逃がし通路64は、管路であって、流入側開口部641、流出側開口部642を有している。流入側開口部641は、内側弁座面621の中央に形成されている。そのため、可動部材72の平面部750が弁座面62から離間したとき、平面部750と弁座面62との間の燃料は、流入側開口部641に流入可能である。流出側開口部642は、弁座面62の径方向外側に位置する凹部611を形成するテーパ状の壁面に形成されている。そのため、逃がし通路64の燃料は、流出側開口部642から低圧側空間400に流出可能である。なお、図4、6では、平面部750と弁座面62とが離間した状態を示している。
【0052】
次に、燃料噴射装置1の作動について説明する。
【0053】
コモンレール2からの高圧燃料は、高圧燃料通路401、高圧燃料通路601を経由してノズル室200に供給される(図2参照)。ニードルスプリング33は、ニードル30に対し閉弁方向の荷重を加える。
【0054】
高圧燃料通路401の燃料の一部は、供給通路602に接続する絞り孔604を通って圧力制御室300に供給される。図2に示すように、駆動部71への通電がオフの状態では、圧力制御室300は高圧燃料で満たされている。ニードル30は、ニードルスプリング33の荷重と圧力制御室300の燃料圧力とから、閉弁方向の力を受ける。
【0055】
駆動部71への通電がオンになると、可動部材72は、駆動部71の磁気吸引力により開弁方向に移動し、圧力制御室300と低圧側空間400との延伸通路603および絞り孔605を経由した連通が許容される。これにより、圧力制御室300の制御プレート35に対しニードル30側の燃料は、オリフィス通路350を通って制御プレート35に対し中間部材60側に流れ、延伸通路603および絞り孔605を通って低圧側空間400に流れ、低圧燃料通路に排出される。その結果、圧力制御室300の燃料圧力が低下する。このとき、制御プレート35は、圧力制御室300の燃料圧力およびサポートスプリング36の付勢力により中間部材60に押し付けられている。
【0056】
圧力制御室300の燃料圧力が低下すると、ニードル30がニードルスプリング33の荷重と圧力制御室300の燃料圧力とから閉弁方向に受ける力よりも、ニードル30がノズル室200の燃料圧力から開弁方向に受ける力の方が大きくなる。そのため、ニードル30が開弁方向に移動し、弁座220から離間する。これにより、ノズル室200の燃料が噴孔23から噴射される。
【0057】
駆動部71への通電がオフになると、可動部材72が閉弁方向に移動し、中間部材60に当接し、圧力制御室300と低圧側空間400との延伸通路603および絞り孔605を経由した連通が遮断される。そのため、圧力制御室300の燃料圧力は、供給通路602から供給される燃料により上昇する。これにより、ニードル30がノズル室200の燃料圧力から開弁方向に受ける力よりも、ニードル30がニードルスプリング33の荷重と圧力制御室300の燃料圧力とから閉弁方向に受ける力の方が大きくなる。そのため、ニードル30が閉弁方向に移動し、弁座220に当接する。これにより、ノズル室200の燃料の噴孔23からの噴射が停止する。なお、供給通路602から圧力制御室300に高圧燃料が供給されるとき、制御プレート35は、サポートスプリング36の付勢力に抗してニードル30側に移動し得る。
【0058】
次に、比較形態に対する本実施形態の優位な点について説明する。
【0059】
図8に示すように、比較形態では、延伸通路603に接続する絞り孔605が1つであり、絞り孔605の延伸通路603とは反対側の端部が弁座面62の中央に開口する構成である。可動部材72の平面部750が弁座面62から離間したとき、絞り孔605から流出する燃料の量をQ、絞り孔605を平面部750まで延長して形成される円筒状の仮想面の面積をSseat_in、平面部750と弁座面62との距離をh、絞り孔605の開口部の内径をDinとすると、可動部材72の平面部750が弁座面62から離間したときに、平面部750と弁座面62との隙間において絞り孔605から径方向外側へ流れる燃料の流速Vseat_inは、下記の式1により求めることができる。
Vseat_in=Q/Sseat_in=Q/πDin×h ・・・式1
式1のとおり、流速Vseat_inは、内径Dinに対し反比例の関係となるため、比較形態では、絞り孔605の開口部の内径Dinを大きくすると、流速Vseat_inが小さくなる(図9参照)。
【0060】
絞り孔605内の燃料の圧力をPinとすると、可動部材72の平面部750に作用する受圧力Fliftは、下記の式2により求めることができる。式2における「^」はべき乗を示す。
Flift=Pin×π(Din/2)^2 ・・・式2
式2のとおり、絞り孔605の開口部の内径Dinを大きくすると、受圧力Fliftが増大する(図9参照)。
【0061】
弁座面62の摩耗量は、燃料の圧力と流速Vseat_inに比例するため、比較形態では、絞り孔605の開口部の内径Dinを大きくすることにより、流速Vseat_inを小さくでき(式1、図9参照)、その結果、弁座面62の摩耗量を低減できる。しかしながら、比較形態では、絞り孔605の開口部の内径Dinを大きくすると、可動部材72の平面部750の受圧面の面積が増大し、平面部750に作用する受圧力Fliftが増大するため(式2、図9参照)、可動部材72を駆動する駆動部71を大型化する必要があり、燃料噴射装置が大型化するおそれがある。したがって、想定使用範囲においては、弁座面62の摩耗量を低減できるものの、燃料噴射装置が大型化するおそれがある(図9参照)。
【0062】
一方、本実施形態では、絞り孔605が連通する高圧溝63の外周壁の内径すなわち外側弁座面622の内径をDinとすると、Dinを大きくすることにより、流速Vseat_inを小さくでき(式1、図10参照)、その結果、弁座面62の摩耗量を低減できる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のようにDinを大きくするとともに、高圧溝63の内周壁の外径すなわち内側弁座面621の外径を大きくすることにより、可動部材72の平面部750の受圧面の面積を一定にできるため、平面部750に作用する受圧力Fliftを一定に(小さく)できる(図10参照)。
【0064】
以上より、本実施形態では、外側弁座面622の内径Dinを大きくすることにより弁座面62の摩耗量を低減しつつ、内径Dinの拡大に応じて内側弁座面621の外径を大きくすることにより平面部750に作用する受圧力Fliftを小さくし駆動部71の大型化を抑制できる点で、比較形態に対し優位である。したがって、想定使用範囲において、弁座面62の摩耗量を低減しつつ、燃料噴射装置1の大型化を抑制できる(図10参照)。
【0065】
以上説明したように、<1>本実施形態では、中間部材60は、中間部材本体61の低圧側空間400側に形成され平面部750と当接可能な平面状の弁座面62、弁座面62から環状に凹み弁座面62を内側弁座面621と外側弁座面622とに区画する高圧溝63、および、高圧溝63を形成する壁面に開口し高圧溝63と延伸通路603とを接続する少なくとも1つの絞り孔605を有する。
【0066】
弁座面62に開口し可動部材72の当接により閉塞される開口部を形成する環状の高圧溝63の外周壁の内径を拡大することにより、可動部材72と弁座面62との隙間を流れる燃料の流速を低減させることができる。これにより、弁座面62の摩耗量の低減を図ることができる。
【0067】
さらに、環状の高圧溝63の外周壁の内径の拡大に応じて高圧溝63の内周壁の外径を拡大することにより、可動部材72の当接により閉塞される開口部の面積を一定の大きさに維持でき、可動部材72に作用する受圧力の増大を抑制できる。これにより、可動部材72の駆動部71を大型化させる必要がなくなり、燃料噴射装置1の大型化を抑制できる。したがって、弁座面62の摩耗を抑制可能な小型の燃料噴射装置1を実現できる。
【0068】
また、<2>本実施形態では、燃料噴射装置1は、逃がし通路64をさらに備える。逃がし通路64は、中間部材60に設けられ、内側弁座面621に開口する流入側開口部641、および、低圧側空間400と連通する流出側開口部642を有し、平面部750が弁座面62から離間または弁座面62に当接することにより流入側開口部641が開閉される。
【0069】
可動部材72の平面部750が弁座面62から離間したとき、平面部750と内側弁座面621との間の燃料(圧力)を、逃がし通路64を経由して低圧側空間400に逃がすことができる。これにより、平面部750に対する燃料からの受圧力をさらに小さくすることができ、駆動部71の大型化をさらに抑制できる。
【0070】
また、<3>本実施形態では、逃がし通路64は、管路であって、流入側開口部641が内側弁座面621に形成され、流出側開口部642が低圧側空間400に連通している。高圧溝63は、環状に形成されている。
【0071】
高圧溝63の中心に対して軸対称形状のため、流れの偏りが少なく性能を安定させることができる。また、中間部材60側の加工で完結し、可動部材72側の加工が不要のため、加工コストを低減することができる。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態の燃料噴射装置の一部を図11、12に示す。第2実施形態は、中間部材60、逃がし通路の構成が第1実施形態と異なる。
【0073】
<4>本実施形態では、中間部材60は、高圧溝63において内側弁座面621と外側弁座面622とを段差なく接続する封止部65を有している。
【0074】
本実施形態は、逃がし通路64に代えて、逃がし通路66を備えている。逃がし通路66は、内側弁座面621、封止部65の平面部750側の端面、および、外側弁座面622から凹むよう溝状に形成されている。
【0075】
逃がし通路66の流入側開口部661は、内側弁座面621の中央に形成されている。逃がし通路66の流出側開口部662は、弁座面62の径方向外側に位置する凹部611を形成するテーパ状の壁面に形成されている。
【0076】
可動部材72の平面部750が弁座面62から離間したとき、平面部750と弁座面62との間の燃料は、流入側開口部661に流入し、逃がし通路66を通って、流出側開口部662から低圧側空間400に流出可能である。
【0077】
以上説明したように、<4>本実施形態では、中間部材60は、高圧溝63において内側弁座面621と外側弁座面622とを段差なく接続する封止部65を有している。逃がし通路66は、内側弁座面621、封止部65の平面部750側の端面、および、外側弁座面622から凹むよう溝状に形成されている。
【0078】
逃がし通路66が溝状のため、第1実施形態と比べ、加工実現性が高い。また、中間部材60側の加工で完結し、可動部材72側の加工が不要のため、加工コストを低減することができる。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態の燃料噴射装置の一部を図13、14に示す。第3実施形態は、可動部材72、逃がし通路の構成が第1実施形態と異なる。
【0080】
<5>本実施形態では、先端部75は円柱状に形成されている(図14参照)。先端部75の中間部材60側の端面が平面部750に対応し、弁座面62に当接可能である。
【0081】
本実施形態は、逃がし通路64に代えて、逃がし通路76を備えている。逃がし通路76は、横通路765、縦通路766、流入側開口部761、流出側開口部762を有している。横通路765は、先端部75の軸に対し垂直に延びるよう形成されている。これにより、先端部75の外周壁において先端部75の軸を挟む位置に流出側開口部762が形成されている。
【0082】
縦通路766は、横通路765の中央と平面部750の中央とを接続するよう形成されている。これにより、平面部750の中央に流入側開口部761が形成されている。
【0083】
可動部材72の平面部750が弁座面62から離間したとき、平面部750と弁座面62との間の燃料は、流入側開口部761に流入し、逃がし通路76の縦通路766、横通路765を通って、流出側開口部762から低圧側空間400に流出可能である。
【0084】
以上説明したように、<5>本実施形態では、逃がし通路76は、管路であって、流入側開口部761が平面部750に形成され、流出側開口部762が低圧側空間400に連通している。高圧溝63は、環状に形成されている。
【0085】
高圧溝63の中心に対して軸対称形状のため、流れの偏りが少なく性能を安定させることができる。また、逃がし通路76を可動部材72側に設けることで、中間部材60側の通路構造の複雑化を回避でき、加工コストを低減できる。
【0086】
(第4実施形態)
第4実施形態の燃料噴射装置の一部を図15、16に示す。第4実施形態は、中間部材60、可動部材72、逃がし通路の構成が第1実施形態と異なる。
【0087】
<6>本実施形態では、「逃がし通路」として、第2実施形態で示した逃がし通路66、および、第3実施形態で示した逃がし通路76を備えている。ここで、逃がし通路76は「第1逃がし通路」に対応し、逃がし通路66は「第2逃がし通路」に対応する。
【0088】
本実施形態は、逃がし通路66を含む第2実施形態の構成と逃がし通路76を含む第3実施形態の構成とを組み合わせた構成である。
【0089】
以上説明したように、<6>本実施形態では、逃がし通路は、可動部材72に設けられた「第1逃がし通路」としての逃がし通路76、および、中間部材60に設けられた「第2逃がし通路」としての逃がし通路66を有する。逃がし通路76は、管路であって、流入側開口部761が平面部750に形成され、流出側開口部762が低圧側空間400に連通している。
【0090】
中間部材60は、高圧溝63において内側弁座面621と外側弁座面622とを段差なく接続する封止部65を有する。逃がし通路66は、内側弁座面621、封止部65の平面部750側の端面、および、外側弁座面622から凹むよう溝状に形成されている。
【0091】
本実施形態では、逃がし通路66および逃がし通路76の2つの逃がし通路を備えるため、1つの逃がし通路のみ備える第1~3実施形態と比べ、逃がし通路に流せる燃料の流量を増大できる。燃料圧力がより高圧の場合でも、平面部750に対する燃料からの受圧力を効果的に低減できる。
【0092】
(他の実施形態)
他の実施形態では、高圧溝を形成する壁面に開口し高圧溝と延伸通路とを接続する絞り孔は、4つに限らず、1つ以上であればいくつ形成されていてもよい。また、絞り孔は、高圧溝の底面に限らず、高圧溝を形成する壁面であれば、高圧溝の内周壁または外周壁等どの壁面に開口していてもよい。
【0093】
また、他の実施形態は、逃がし通路を備えていなくてもよい。逃がし通路を備えていなくても、中間部材が、弁座面を内側弁座面と外側弁座面とに区画する環状の高圧溝、および、高圧溝と延伸通路とを接続する絞り孔を有する構成により、燃料噴射装置を大型化させることなく、弁座面の摩耗を抑制可能である。
【0094】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 燃料噴射装置、2 コモンレール(蓄圧配管)、20 ノズルボデー、23 噴孔、30 ニードル(弁部材)、60 中間部材、61 中間部材本体、62 弁座面、63 高圧溝、72 可動部材、200 ノズル室、300 圧力制御室、400 低圧側空間、603 延伸通路、605 絞り孔、621 内側弁座面、622 外側弁座面、750 平面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16