(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015558
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ロックソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/06 20060101AFI20240130BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20240130BHJP
H01F 7/20 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01F7/06 E
H01F7/02 F
H01F7/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117683
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】松井 健志
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA08
5E048AB10
5E048AC05
(57)【要約】
【課題】通電時のキャッチに対する吸着力が大きく、非通電時や電源失陥時にキャッチに対する吸着力を失わせてキャッチの保持を確実に解除することができるロックソレノイドを提供する。
【解決手段】ロックソレノイド100は、円環状のコイル116と、円環状の磁石118と、磁性部品120と、円柱または円筒のヨーク106とを備え、通電時にキャッチ102を吸着して保持する。ヨークは、キャッチまたは磁性部品に取り付けられていて、キャッチが吸着される位置において、コイルと磁石とヨークとがこの順に径方向に配置されていて、磁性部品は、磁石の磁極を覆ってコイルの周囲を巻回していて、非通電時には、磁石の磁束はヨークを通らずにコイルの周囲の磁性部品を通る第1の磁路Raを形成し、通電時には、コイルの磁束は磁石を通らずに磁性部品とヨークを通る第2の磁路Rbを形成し、磁石の磁束は、磁性部品とヨークを通る第3の磁路Rcを形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時にキャッチを吸着して保持するロックソレノイドであって、
円環状のコイルと、円環状の磁石と、磁性部品と、円柱または円筒のヨークとを備え、
前記ヨークは、前記キャッチまたは前記磁性部品に取り付けられていて、
前記キャッチが吸着される位置において、前記コイルと前記磁石と前記ヨークとがこの順に径方向に配置されていて、
前記磁性部品は、前記磁石の磁極を覆って前記コイルの周囲を巻回していて、
非通電時には、前記磁石の磁束は前記ヨークを通らずに前記コイルの周囲の前記磁性部品を通る第1の磁路を形成し、
通電時には、前記コイルの磁束は前記磁石を通らずに前記磁性部品と前記ヨークを通る第2の磁路を形成し、前記磁石の磁束は、前記磁性部品と前記ヨークを通る第3の磁路を形成することを特徴とするロックソレノイド。
【請求項2】
前記第1の磁路の磁気抵抗は、前記第3の磁路の磁気抵抗より低いことを特徴とする請求項1に記載のロックソレノイド。
【請求項3】
前記キャッチと前記磁性部品の吸着面のいずれか一方または両方、または、前記ヨークと前記キャッチの吸着面のいずれか一方または両方には、非磁性の表層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のロックソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電時にキャッチを吸着して保持するロックソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁石を用いたロックソレノイドには、通電時にキャッチを吸着保持するものと、通電時にキャッチの保持を解除するものがある。本発明は通電時にキャッチを吸着するものに関する。
【0003】
電磁石に加えて磁石(永久磁石)を備えた構成では、一般的には非通電時にキャッチを吸着保持し、通電時に電磁石の磁束によって磁石の吸着力を失わせる構成が取られる。しかし、通電時に電磁石の吸着力を増大するために磁石を用いる構成も知られている。
【0004】
特許文献1には、磁気保持装置が記載されている。この磁気保持装置は、固定側である壁に設けられた磁性体、磁石および電磁石と、可動側である扉に設けられた吸着板とを備える。特許文献1の
図2の構成では、電磁石の磁路の経路上に磁石を配置することにより、磁石または電磁石に起因する磁束が、固定側に設けられた磁性体と可動側に設けられた磁性体との間を複数回往復して磁路を構成するように構成されている。これにより従来の装置に比して約2倍の吸引力を生じると説明されている(公報第3ページ左上欄)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の構成では電磁石の磁束が磁石を通過する磁路を形成するため、磁気回路の効率が悪いという問題がある。
【0007】
このため、特許文献1の磁気保持装置のように磁石を内蔵していた場合であっても、扉に対する吸着力を増幅させる効果が低く、通電時の扉に対する吸着力を大きくすることは困難である。また特に、特許文献1の
図2の構成では非通電時に磁石の吸着力が発生しているため、手動にて開放するときにそれなりの力が必要になるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、通電時のキャッチに対する吸着力が大きく、非通電時や電源失陥時にキャッチに対する吸着力を失わせてキャッチの保持を確実に解除することができるロックソレノイドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるロックソレノイドの代表的な構成は、通電時にキャッチを吸着して保持するロックソレノイドであって、円環状のコイルと、円環状の磁石と、磁性部品と、円柱または円筒のヨークとを備え、ヨークは、キャッチまたは磁性部品に取り付けられていて、キャッチが吸着される位置において、コイルと磁石とヨークとがこの順に径方向に配置されていて、磁性部品は、磁石の磁極を覆ってコイルの周囲を巻回していて、非通電時には、磁石の磁束はヨークを通らずにコイルの周囲の磁性部品を通る第1の磁路を形成し、通電時には、コイルの磁束は磁石を通らずに磁性部品とヨークを通る第2の磁路を形成し、磁石の磁束は、磁性部品とヨークを通る第3の磁路を形成することを特徴とする。
【0010】
上記構成のロックソレノイドでは、非通電時や電源失陥時には、磁石の磁束がヨークを通らず磁性部品を通る第1の磁路を形成することにより、キャッチに対する吸着力を生じず、キャッチを保持しない。
【0011】
また通電時には、コイルの磁束が磁石を通らずに磁性部品とヨークを通る第2の磁路を形成するとともに、磁石の磁束が磁性部品とヨークを通る第3の磁路を形成する。これにより、ロックソレノイドでは、通電時には、第2の磁路を通るコイルの磁束および第3の磁路を通る磁石の磁束の両方がヨークを通ることになり、キャッチに対する吸着力を大きくすることができる。このときコイルの磁束が通る第2の磁路が磁石を通らないことから、純粋にコイルの吸着力と磁石の吸着力の和を得ることができる。
【0012】
したがって上記構成によれば、通電時のキャッチに対する吸着力を大きくすることができ、非通電時や電源失陥時にはキャッチに対する吸着力を失わせてキャッチの保持を確実に解除することができる。なおヨークは、一例として、キャッチに取り付けられた円筒状の壁面、または、磁性部品に取り付けられた円柱状の柱部であってもよい。
【0013】
上記の第1の磁路の磁気抵抗は、第3の磁路の磁気抵抗より低いとよい。これにより、電源失陥時にヨークが磁性部品の近くに位置していても、磁石の磁束はヨークを通らず、磁性部品を通る第1の磁路を形成する。このため、キャッチは、電源失陥時に磁石の磁束によって保持されることがなく、キャッチに対する吸着力を失わせることができる。
【0014】
上記のヨークまたはキャッチと磁性部品の吸着面のいずれか一方または両方、または、ヨークとキャッチの吸着面のいずれか一方または両方には、非磁性の表層が設けられているとよい。
【0015】
このように、キャッチと磁性部品の間、または、ヨークとキャッチの間に、非磁性の表層を介在させて磁性ギャップを設けることにより、磁石の磁束は、キャッチと磁性部品の間、または、ヨークとキャッチの間を通過する第3の磁路を通りにくくなる。その結果、磁石の磁束は、第3の磁路に比べて、キャッチと磁性部品の間、または、ヨークとキャッチの間を通過しない第1の磁路の方が通りやすくなる。したがって、電源失陥時に磁石の磁束が第1の磁路を確実に通るため、キャッチに対する吸着力を失わせることができる。なお非磁性の表層は、例えばめっき、塗装、シート貼付などを行うことで形成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通電時のキャッチに対する吸着力が大きく、非通電時や電源失陥時にキャッチに対する吸着力を失わせてキャッチの保持を確実に解除することができるロックソレノイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるロックソレノイドの全体構成図である。
【
図2】
図1のロックソレノイドの適用例を説明する図である。
【
図3】
図1のロックソレノイドの非通電時、通電時および電源失陥時の状態を説明する図である。
【
図4】
図1のロックソレノイドのエアギャップに対する吸引力を比較例とともに示すグラフである。
【
図5】本発明の第2の実施形態におけるロックソレノイドの全体構成図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態におけるロックソレノイドの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるロックソレノイド100の全体構成図である。なお図中には、対称軸Aが一点鎖線で示されている。
図2は、
図1のロックソレノイド100の適用例を説明する図である。
【0020】
ロックソレノイド100は、キャッチ102を備え、通電時にキャッチ102を吸着して保持することにより、扉104(
図2参照)をロックするドアロック用途に使用されている。キャッチ102は磁性体であって、ヨーク106が取り付けられている。ヨーク106は、円筒状の壁面である。またキャッチ102は、ヨーク106から径方向に張り出した当接面108を有する。
【0021】
キャッチ102の当接面108は、
図2(a)に示すように扉104の一端側に取り付けられている。扉104の他端側は、ヒンジ110を介して壁112に開閉自在に取り付けられている。またキャッチ102は、
図2(b)に示すように扉104が閉じた状態で壁114に対向している。
【0022】
ロックソレノイド100はさらに、
図1に示すように円環状のコイル116と、円環状の磁石118と、磁性部品120とを備える。コイル116は、通電時に磁束を発生する。磁石118は、永久磁石であって軸方向に着磁されている。
【0023】
磁性部品120は、第1磁性部品122と第2磁性部品124を含む。第1磁性部品122は、磁石118の磁極(N極)を覆ってコイル116のキャッチ102側の周囲に回り込んでいる。第1磁性部品122が磁石118の「磁極を覆っている」のは、磁石118から出た磁束をできる限り漏れなく第1磁性部品122に通すためである。また第1磁性部品122は、キャッチ102の当接面108に対向する吸着面126を有する。
【0024】
第2磁性部品124は、壁114(
図2参照)に取り付けられ固定されている。また、第2磁性部品124は、磁石118の磁極(S極)を覆ってコイル116の壁114側(
図2参照)の周囲に回り込み、コイル116の側面128に沿って第1磁性部品122の吸着面126まで延びて、第1磁性部品122に接続されている。このようにして、磁性部品120は、磁石118の磁極を覆ってコイル116の周囲を巻回している。
【0025】
キャッチ102はさらに、当接面130を有する。当接面130は、径方向に延びていて、円筒状の壁面であるヨーク106をつないでいる。また第2磁性部品124は、キャッチ102の当接面130に対向する吸着面132を有する。
図1では、キャッチ102の当接面130と第2磁性部品124の吸着面132とがエアギャップLを介して対向している状態を示している。
【0026】
図3は、
図1のロックソレノイド100の非通電時、通電時および電源失陥時の状態を説明する図である。ロックソレノイド100は、
図3(a)に示すコイル116の非通電時に、磁石118の磁束が第1の磁路Raを形成する。
【0027】
第1の磁路Raは、磁石118からの磁束が第1磁性部品122の吸着面126を通って、さらにコイル116の側面128に沿って第2磁性部品124を通り、磁石118に戻る。このように第1の磁路Raは、ヨーク106を通らずにコイル116の周囲の磁性部品120を通る。
【0028】
これによりロックソレノイド100は、非通電時に、磁石118の磁束が第1の磁路Raを形成することにより、キャッチ102に対する吸着力を生じず、キャッチ102を保持しない。図中では、ロックソレノイド100は、非通電時にエアギャップLを生じている。
【0029】
またロックソレノイド100では、
図3(b)に示すように、エアギャップLがゼロであってキャッチ102が吸着される位置において、コイル116が通電されると、コイル116の磁束が第2の磁路Rbを形成するとともに、磁石118の磁束が第3の磁路Rcを形成する。
【0030】
さらにロックソレノイド100は、キャッチ102が吸着される位置において、コイル116と磁石118とヨーク106とがこの順に径方向に配置されている。具体的には、ロックソレノイド100は、キャッチ102が吸着される位置において、コイル116が最も外側に配置され、ヨーク106が最も内側に配置され、コイル116とヨーク106との間に磁石118が配置されている。
【0031】
第2の磁路Rbは、コイル116の磁束がコイル116の側面128に沿って第2磁性部品124を通り、第1の磁路Raとは対向する方向に流れる。第2の磁路Rbは、磁石118を通るのは磁気抵抗が大きいため、ヨーク106を通ろうとする。そのためコイル116の磁束が第1磁性部品122の吸着面126を通って、キャッチ102の当接面108からヨーク106および当接面130を通り、さらに第2磁性部品124の吸着面132を通過する。このように第2の磁路Rbは、コイル116の磁束が磁石118を通らずに磁性部品120とヨーク106を通り、さらに当接面108、130および吸着面126、132を通過している。
【0032】
第3の磁路Rcは、磁石118からの磁束が第2の磁路Rbの影響を受けてコイル116の側面128を通りにくくなるため、ヨーク106を通る経路に切り替えられたものである。詳しくは磁石118からの磁束は、第1磁性部品122の吸着面126を通り、キャッチ102の当接面108からヨーク106および当接面130を通り、さらに第2磁性部品124の吸着面132を通過して、磁石118に戻る。このように第3の磁路Rcは、第1の磁路Raとは異なり、磁石118からの磁束が磁性部品120だけでなく、ヨーク106を通り、さらに当接面108、130および吸着面126、132を通過している。
【0033】
これによりロックソレノイド100では、通電時には、第2の磁路Rbを通るコイル116の磁束および第3の磁路Rcを通る磁石118の磁束の両方が、ヨーク106、当接面108、130および磁性部品120の吸着面126、132を通ることになり、キャッチ102に対する吸着力を大きくすることができる。このとき、コイル116の磁束が通る第2の磁路Rbが磁石118を通らないことから、純粋にコイル116の吸着力と磁石118の吸着力の和を得ることができる。
【0034】
なおロックソレノイド100では、例えば磁石118の磁極を逆転した場合は、コイル116の通電方向を逆にすることで、磁石118の磁極の方向とコイル116の磁界が対向して、磁路を切り替えることが可能となる。
【0035】
さらにロックソレノイド100では、
図3(c)に示すキャッチ102が吸着される位置において電源が失陥した場合、コイル116が磁束を発生しないため、第2の磁路Rbが形成されず、磁石118からの磁束が、第3の磁路Rcから第1の磁路Raに切り替わる。
【0036】
また第1の磁路Raの磁気抵抗は、第3の磁路Rcの磁気抵抗より低くなっている。このため、電源失陥時に図示のようにキャッチ102が磁性部品120の近くに位置していても、磁石118の磁束は、ヨーク106および当接面108、130を通らず、磁性部品120を通る第1の磁路Raを形成することになる。
【0037】
これによりロックソレノイド100では、電源失陥時に、磁石118の磁束によってキャッチ102が保持されることがなく、キャッチ102に対する吸着力を失わせることができる。このため、電源失陥時に扉104(
図2参照)を手動で開放して、緊急時の通路を確保することができ、安全性を高めることができる。さらに、ロックソレノイド100では、非通電時に磁石118の磁束漏れが少ないので、磁性異物を引き寄せることがない。
【0038】
ここで第1の磁路Raの磁気抵抗を、第3の磁路Rcの磁気抵抗よりも低くするためには、例えば、キャッチ102の当接面108、130と磁性部品120の吸着面126、132のいずれか一方または両方に非磁性の表層を設けてもよい。なお非磁性の表層は、例えばめっき、塗装、シート貼付などを行うことで形成することができる。
【0039】
これにより、キャッチ102と磁性部品120の間に、非磁性の表層を介在させて磁性ギャップを設けることができる。その結果、磁石118の磁束は、キャッチ102と磁性部品120の間を通過する第3の磁路Rcを通りにくくなり、キャッチ102と磁性部品120の間を通過しない第1の磁路Raの方が通りやすくなる。これにより、第1の磁路Raの磁気抵抗が第3の磁路Rcの磁気抵抗よりも低くなり、電源失陥時に、磁石118からの磁束を第3の磁路Rcから第1の磁路Raに確実に切り替えることができる。
【0040】
なお非磁性の表層を設けるのではなく、キャッチ102の材質自体の磁路抵抗を、磁性部品120の材質自体の磁気抵抗よりも高くすることで、第3の磁路Rcの磁気抵抗を、第1の磁路Raの磁気抵抗よりも高くするようにしてもよい。
【0041】
したがってロックソレノイド100によれば、通電時のキャッチ102に対する吸着力を大きくすることができ、非通電時や電源失陥時にはキャッチ102に対する吸着力を失わせて、キャッチ102の保持を確実に解除することができる。
【0042】
図4は、
図1のロックソレノイド100のエアギャップLに対する吸着力(吸引力)を比較例とともに示すグラフである。図中、横軸はエアギャップ(mm)、縦軸は吸引力(N)をそれぞれ示している。なお比較例は、磁石118を有していない構成であり、その吸引力を図中「〇」のグラフで示している。
【0043】
ロックソレノイド100は、非通電時に図中「□」のグラフに示すように吸引力を発生せず、通電時には図中「△」のグラフに示すように、エアギャップが約0.75mm未満で比較例よりも吸引力が大幅に大きくなっている。このように磁石118を有するロックソレノイド100によれば、磁石118を有していない比較例に比べて、同体格で出力が大幅に大きくなることが明らかである。
【0044】
なおロックソレノイド100は、ドアロック用途で使用したが、これに限定されず、扉104に代えて適宜の可動部材にキャッチ102を取り付けて、通電時にキャッチ102を吸着することにより、可動部材を適宜の固定部材に保持するようにしてもよい。
【0045】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態におけるロックソレノイド100Aの全体構成図である。ロックソレノイド100Aは、
図5(a)に示すコイル116Aの非通電時に、磁石118Aの磁束が第1の磁路Rdを形成する。
【0046】
第1の磁路Rdは、磁石118Aからの磁束が第1磁性部品122Aの吸着面126Aを通って、さらに第2磁性部品124Aを通り、コイル116Aを回り込んで磁石118Aに戻る。このように第1の磁路Rdは、キャッチ102Aに設けられた円筒状の壁面であるヨーク106Aを通らずにコイル116Aの周囲の磁性部品120Aを通る。
【0047】
これによりロックソレノイド100Aは、非通電時に、磁石118Aの磁束が第1の磁路Rdを形成することにより、キャッチ102Aに対する吸着力を生じず、キャッチ102Aを保持しない。
【0048】
またロックソレノイド100Aでは、
図5(b)に示すキャッチ102Aが吸着される位置において、コイル116Aと磁石118Aとヨーク106Aとがこの順に径方向に配置されている。具体的には、ロックソレノイド100Aは、キャッチ102Aが吸着される位置において、コイル116Aが最も内側に配置され、ヨーク106Aが最も外側に配置され、コイル116Aとヨーク106Aとの間に磁石118Aが配置されている。
【0049】
さらにロックソレノイド100は、
図5(b)に示すキャッチ102Aが吸着される位置において、コイル116Aが通電されると、コイル116Aの磁束が第2の磁路Reを形成するとともに、磁石118Aの磁束が第3の磁路Rfを形成する。
【0050】
第2の磁路Reは、コイル116Aの磁束が第2磁性部品124Aを通り、第1の磁路Rdとは対向する方向に流れる。第2の磁路Reは、コイル116Aの磁束が第1磁性部品122Aの吸着面126Aを通って、キャッチ102の当接面130Aからヨーク106Aおよび当接面108Aを通り、さらに第2磁性部品124Aの吸着面132Aを通過する。このように第2の磁路Reは、コイル116Aの磁束が磁石118Aを通らずに磁性部品120Aとヨーク106Aを通り、さらに当接面108A、130Aおよび吸着面126A、132Aを通過している。
【0051】
第3の磁路Rfは、磁石118Aからの磁束が第1磁性部品122Aの吸着面126Aを通り、第2の磁路Reの影響を受けて、キャッチ102Aの当接面130Aからヨーク106Aおよび当接面108Aを通り、さらに第2磁性部品124Aの吸着面132Aを通過して、磁石118Aに戻る。このように第3の磁路Rfは、第1の磁路Rdとは異なり、磁石118Aからの磁束が磁性部品120Aだけでなく、ヨーク106Aを通り、さらに当接面108A、130Aおよび吸着面126A、132Aを通過している。
【0052】
これによりロックソレノイド100Aでは、通電時には、第2の磁路Reを通るコイル116Aの磁束および第3の磁路Rfを通る磁石118Aの磁束の両方が、ヨーク106A、当接面108A、130Aおよび磁性部品120Aの吸着面126A、132Aを通ることになり、キャッチ102Aに対する吸着力を大きくすることができる。このとき、コイル116Aの磁束が通る第2の磁路Reが磁石118Aを通らないことから、純粋にコイル116Aの吸着力と磁石118Aの吸着力の和を得ることができる。
【0053】
さらにロックソレノイド100では、
図5(c)に示すキャッチ102Aが吸着される位置において電源が失陥した場合、コイル116Aが磁束を発生しないため、第2の磁路Reが形成されず、磁石118Aからの磁束が、第3の磁路Rfから第1の磁路Rdに切り替わる。
【0054】
また第1の磁路Rdの磁気抵抗は、第3の磁路Rfの磁気抵抗より低くなっている。このため、電源失陥時に図示のようにキャッチ102Aが磁性部品120Aの近くに位置していても、磁石118Aの磁束は、ヨーク106Aおよび当接面108A、130Aを通らず、磁性部品120Aを通る第1の磁路Rdを形成することになる。
【0055】
これによりロックソレノイド100Aでは、電源失陥時に、磁石118Aの磁束によってキャッチ102Aが保持されることがなく、キャッチ102Aに対する吸着力を失わせることができる。
【0056】
したがってロックソレノイド100Aによれば、通電時のキャッチ102Aに対する吸着力を大きくすることができ、非通電時や電源失陥時にはキャッチ102Aに対する吸着力を失わせて、キャッチ102Aの保持を確実に解除することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態におけるロックソレノイド100Bの全体構成図である。ロックソレノイド100Bは、磁性部品120Bの第2磁性部品124Bにヨーク106Bが取り付けられている点で、上記のロックソレノイド100と異なる。ヨーク106Bは、円柱状の柱部であって、キャッチ102Bの当接面130Bに対向する吸着面132Bを有する。
【0058】
ロックソレノイド100Bは、
図6(a)に示すコイル116の非通電時に、磁石118の磁束が第1の磁路Raを形成する。第1の磁路Raは、磁石118からの磁束が第1磁性部品122の吸着面126を通って、さらにコイル116の側面128に沿って第2磁性部品124Bを通り、磁石118に戻る。このように第1の磁路Raは、ヨーク106Bを通らずにコイル116の周囲の磁性部品120Bを通る。
【0059】
これによりロックソレノイド100Bは、非通電時に、磁石118の磁束が第1の磁路Raを形成することにより、キャッチ102Bに対する吸着力を生じず、キャッチ102Bを保持しない。
【0060】
またロックソレノイド100Bでは、
図6(b)に示すキャッチ102Bが吸着される位置において、コイル116と磁石118とヨーク106Bとがこの順に径方向に配置されている。具体的には、ロックソレノイド100Bは、キャッチ102Bが吸着される位置において、コイル116が最も外側に配置され、ヨーク106Bが最も内側に配置され、コイル116とヨーク106Bとの間に磁石118が配置されている。
【0061】
さらにロックソレノイド100Bは、
図6(b)に示すキャッチ102Bが吸着される位置において、コイル116が通電されると、コイル116の磁束が第2の磁路Rgを形成するとともに、磁石118の磁束が第3の磁路Rhを形成する。
【0062】
第2の磁路Rgは、コイル116の磁束がコイル116の側面128に沿って第2磁性部品124Bを通り、第1の磁路Raとは対向する方向に流れる。第2の磁路Rgは、磁石118を通るのは磁気抵抗が大きいため、キャッチ108Bおよびヨーク106Bを通ろうとする。
【0063】
そのためコイル116の磁束が第1磁性部品122の吸着面126を通って、キャッチ102Bの当接面108Bから当接面130Bを通り、さらにヨーク106Bの吸着面132Bを通過する。そしてコイル116の磁束が、ヨーク106Bから第2磁性部品124Bを通過する。このように第2の磁路Rgは、コイル116の磁束が磁石118を通らずに磁性部品120Bとヨーク106Bを通り、さらにキャッチ102Bの当接面108B、130B、第1磁性部品122の吸着面126およびヨーク106Bの吸着面132Bを通過している。
【0064】
第3の磁路Rhは、磁石118からの磁束が第2の磁路Rgの影響を受けてコイル116の側面128を通りにくくなるため、ヨーク106Bを通る経路に切り替えられたものである。詳しくは磁石118からの磁束は、第1磁性部品122の吸着面126を通り、キャッチ102Bの当接面108B、130Bを通り、ヨーク106Bの吸着面132Bを通過して、ヨーク106Bから磁石118に戻る。このように第3の磁路Rhは、第1の磁路Raとは異なり、磁石118からの磁束が磁性部品120Bだけでなく、ヨーク106Bを通り、さらにキャッチ102Bの当接面108B、130B、第1磁性部品122の吸着面126およびヨーク106Bの吸着面132Bを通過している。
【0065】
これによりロックソレノイド100Bでは、通電時には、第2の磁路Rgを通るコイル116の磁束および第3の磁路Rhを通る磁石118の磁束の両方が、ヨーク106B、当接面108B、130Bおよび吸着面126、132Bを通ることになり、キャッチ102Bに対する吸着力を大きくすることができる。このとき、コイル116の磁束が通る第2の磁路Rgが磁石118を通らないことから、純粋にコイル116の吸着力と磁石118の吸着力の和を得ることができる。
【0066】
さらにロックソレノイド100Bでは、
図6(c)に示すキャッチ102Bが吸着される位置において電源が失陥した場合、コイル116が磁束を発生しないため、第2の磁路Rgが形成されず、磁石118からの磁束が、第3の磁路Rhから第1の磁路Raに切り替わる。
【0067】
また第1の磁路Raの磁気抵抗は、第3の磁路Rhの磁気抵抗より低くなっている。第1の磁路Raの磁気抵抗を、第3の磁路Rhの磁気抵抗よりも低くするためには、例えば、キャッチ102Bの当接面130Bとヨーク106Bの吸着面132Bのいずれか一方または両方に非磁性の表層を設けてもよい。
【0068】
なお非磁性の表層を設けるのではなく、キャッチ102Bの材質自体の磁路抵抗を、磁性部品120Bの材質自体の磁気抵抗よりも高くすることで、第3の磁路Rhの磁気抵抗を、第1の磁路Raの磁気抵抗よりも高くするようにしてもよい。
【0069】
これにより、キャッチ102Bとヨーク106Bの間に、非磁性の表層を介在させて磁性ギャップを設けることができる。その結果、磁石118の磁束は、キャッチ102Bとヨーク106Bの間を通過する第3の磁路Rhを通りにくくなり、キャッチ102Bとヨーク106Bの間を通過しない第1の磁路Raの方が通りやすくなる。これにより、第1の磁路Raの磁気抵抗が第3の磁路Rhの磁気抵抗よりも低くなり、電源失陥時に、磁石118からの磁束を第3の磁路Rhから第1の磁路Raに確実に切り替えることができる。
【0070】
これによりロックソレノイド100Bでは、電源失陥時に、磁石118の磁束によってキャッチ102Bが保持されることがなく、キャッチ102Bに対する吸着力を失わせることができる。
【0071】
したがってロックソレノイド100Bによれば、通電時のキャッチ102Bに対する吸着力を大きくすることができ、非通電時や電源失陥時にはキャッチ102Bに対する吸着力を失わせて、キャッチ102Bの保持を確実に解除することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、通電時にキャッチを吸着して保持するロックソレノイドとして利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100、100A、100B…ロックソレノイド、102、102A、102B…キャッチ、104…扉、106、106A、106B…ヨーク、108、108A、108B、130、130A、130B…キャッチの当接面、110…ヒンジ、112、114…壁、116、116A…コイル、118、118A…磁石、120、120A、120B…磁性部品、122、122A…第1磁性部品、124、124A、124B…第2磁性部品、126、126A…第1磁性部品の吸着面、128…コイルの側面、132、132A…第2磁性部品の吸着面、132B…ヨークの吸着面、L…エアギャップ、Ra、Rd…第1の磁路、Rb、Re、Rg…第2の磁路、Rc、Rf、Rh…第3の磁路