(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155581
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】表面材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20241024BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20241024BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241024BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241024BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B32B27/12
D06M15/263
B05D7/24 301M
B05D7/00 G
B05D1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070418
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 貫
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4L033
【Fターム(参考)】
4D075AE02
4D075BB24Y
4D075BB24Z
4D075DB20
4D075DC11
4D075EA33
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK12A
4F100AK12C
4F100AK25A
4F100AK25B
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4F100AK41A
4F100AK52B
4F100BA03
4F100BA07
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4F100CA18A
4F100CA18B
4F100CA18C
4F100DG11A
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4F100HB31B
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JA05C
4F100JL10B
4F100JM01A
4F100JM01C
4L033AB04
4L033AC11
4L033CA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発色不良が発生することなく意図したプリントを備える表面材、および表面材の製造方法を提供する。
【解決手段】布帛10、前記布帛における一方の主面に部分的に存在するプリント、および、バインダの層13を備える、表面材100であって、前記布帛におけるもう一方の主面よりも内部側に、前記バインダの層が存在しており、前記プリントは、前記バインダの層を構成する組成物を含有していない、表面材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛、前記布帛における一方の主面に部分的に存在するプリント、および、バインダの層を備える、表面材であって、
前記布帛におけるもう一方の主面よりも内部側に、前記バインダの層が存在しており、
前記プリントは、前記バインダの層を構成する組成物を含有していない、
表面材。
【請求項2】
(工程1)布帛を用意する工程、
(工程2)プリントを構成する組成物と、前記組成物の溶媒および/または分散媒とを含んでいるプリント液を用意する工程、
(工程3)前記布帛における一方の主面へ、プリント液を部分的に付与する工程、
(工程4)前記プリント液を部分的に付与した布帛から、前記溶媒および/または分散媒を除去することで、前記布帛における前記一方の主面上に部分的にプリントを形成する工程、
(工程5)バインダと、前記バインダの溶媒および/または分散媒とを含んでいる、バインダ液を用意する工程、
(工程6)前記布帛におけるもう一方の主面へ、前記バインダ液を付与する工程、
(工程7)前記布帛におけるもう一方の主面へ、前記バインダの溶媒および/または分散媒を付与する工程、
(工程8)前記布帛から、前記バインダの溶媒および/または分散媒を除去する工程、
を備える、表面材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車などの内装を構成可能な表面材として、布帛と、その構成繊維を接着するバインダの層とを備える表面材が用いられている。このような表面材として、本願出願人は、特開2021-98922号公報(特許文献1)に記載しているように、表面材の主面に露出する繊維における布帛内部に存在する端部が、主として布帛内部に存在するバインダの層によって固定されている表面材を提案した。当該構成を有することによって特許文献1にかかる表面材は、主面から繊維が脱落し難い表面材である。
【0003】
なお、特許文献1にかかる表面材の製造方法では、布帛における一方の主面側からバインダ液を付与した後、同主面側からバインダの溶媒および/または分散媒を付与することで、バインダ液(正確にはバインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物)を布帛における一方の主面側からもう一方の主面側へ向かい移動させる。その後、当該溶媒および/または分散媒を除去することで、布帛における一方の主面よりも内部側にバインダの層が形成される。
【0004】
また、近年では自動車などの内装にも、色彩や柄を有するなど意匠性が求められており、その主面に部分的なプリントを備えた表面材が求められている。このような表面材として、例えば、特開2015-104848(特許文献2)や特開2016-147466(特許文献3)などに開示された表面材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-98922号公報
【特許文献2】特開2015-104848号公報
【特許文献3】特開2016-147466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1が開示するような従来技術にかかる表面材の製造方法では、表面材が備える布帛において、バインダ液を付与した側と反対側の主面に、意図せずバインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物が存在していることがあった。
【0007】
この現象が発生した理由として、次のことが考えられた。
従来技術にかかる表面材の製造方法では、バインダ液を移動させるため付与される溶媒および/または分散媒によって、バインダ液が薄められる。そして、薄められたバインダ液は、布帛中へ意図せず拡散してゆく。その結果、布帛におけるバインダ液を付与した側と反対側の主面に、意図せずバインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物が存在するものになると考えられた。そのため、当該従来技術にかかる表面材の製造方法では、バインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物の存在位置を高度に制御して、望む存在態様のバインダの層を備えた表面材を提供することは困難であると考えられた。
【0008】
特に、この薄められたバインダ液が布帛中へ意図せず拡散してゆくという現象は、増粘剤や消泡剤などの添加剤が含有されている溶媒および/または分散媒を使用した場合に、生じ易いものであった。
【0009】
そして、このようにして調製された布帛における、バインダ液を付与した側と反対側の主面上へプリントを付与した場合、プリントが不要な成分(バインダの層を構成する組成物)を含有していることに起因して、当該プリントに発色不良が発生することがあった。
その結果、主面上に意図したプリントを備える表面材を提供できないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の発明は「布帛、前記布帛における一方の主面に部分的に存在するプリント、および、バインダの層を備える、表面材であって、
前記布帛におけるもう一方の主面よりも内部側に、前記バインダの層が存在しており、
前記プリントは、前記バインダの層を構成する組成物を含有していない、
表面材。」である。
また、第二の発明は「(工程1)布帛を用意する工程、
(工程2)プリントを構成する組成物と、前記組成物の溶媒および/または分散媒とを含んでいるプリント液を用意する工程、
(工程3)前記布帛における一方の主面へ、プリント液を部分的に付与する工程、
(工程4)前記プリント液を部分的に付与した布帛から、前記溶媒および/または分散媒を除去することで、前記布帛における前記一方の主面上に部分的にプリントを形成する工程、
(工程5)バインダと、前記バインダの溶媒および/または分散媒とを含んでいる、バインダ液を用意する工程、
(工程6)前記布帛におけるもう一方の主面へ、前記バインダ液を付与する工程、
(工程7)前記布帛におけるもう一方の主面へ、前記バインダの溶媒および/または分散媒を付与する工程、
(工程8)前記布帛から、前記バインダの溶媒および/または分散媒を除去する工程、
を備える、表面材の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0011】
本願出願人は検討の結果、「布帛、前記布帛における一方の主面に部分的に存在するプリント、および、バインダの層を備える、表面材であって、前記布帛におけるもう一方の主面よりも内部側に、前記バインダの層が存在して」いる表面材について、前記プリントは、前記バインダの層を構成する組成物を含有していないという構成を有する表面材を提供するに至った。
【0012】
つまり、第一の発明にかかる表面材では、プリントがバインダの層を構成する組成物を含有することなく布帛の主面に存在している。そのため、プリントが不要な成分(バインダの層を構成する組成物)を含有していることに起因して、発色不良が発生するという問題の発生が防止されている。
【0013】
以上から、本願発明によって、布帛の主面上に意図したプリントを備える表面材を提供できる。
【0014】
また、第二の発明にかかる表面材の製造方法は、一方の主面にプリントを部分的に備えた布帛に対し、もう一方の主面へバインダ液を付与した後、同じくもう一方の主面側から前記バインダの溶媒および/または分散媒を付与することで、既に付与されているバインダ液(正確にはバインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物)を、布帛におけるもう一方の主面側から一方の主面側へ向かい移動させて、表面材を製造することを特徴としている。
【0015】
本願出願人は検討の結果、当該製造方法を採用することによって、第一の発明にかかる表面材を提供するに至った。
【0016】
加えて、当該製造方法を用いた際には、バインダの溶媒および/または分散媒によって薄められたバインダ液が、布帛中へ意図せず拡散してゆくのを抑制できるという、副次的な効果が発揮されることも見出した。そのため、当該製造方法によって、バインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物の存在位置を高度に制御して、第一の発明にかかる表面材を提供できる。更に、両主面にバインダの層が存在していない表面材を提供できる。
【0017】
なお、本発明にかかる表面材の製造方法によれば、バインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物が存在していない布帛の主面上へ、プリントを施すことができる。そのため、布帛の主面上にバインダ液に含まれるバインダの層を構成する組成物が存在することによって、プリント液が弾かれてしまい、当該主面上にプリントが上手く載らないという問題が発生するのを防止できる。その結果、プリントにかすれた箇所が生じることを防止して、主面上に意図したプリントを備える表面材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にかかる表面材の、模式断面図である。
【
図2】表面材が備えるバインダの層について、その存在態様を示した模式断面図である。
【
図3】本発明にかかる、表面材の製造工程を表した模式断面図である。
【
図4】従来技術にかかる、表面材の製造工程を表した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本願発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと温度20℃湿度65RH%条件下で測定を行う。そして、本願発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出する。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とする。また、本願発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0020】
本発明の表面材について、本発明にかかる表面材を厚さ方向へ切断した際の、模式断面図である
図1を用いて説明する。本発明の表面材(100)は、布帛(10)、前記布帛における一方の主面(紙面上における右方主面)に部分的に存在し、当該一方の主面上に露出しているプリント(11、以降プリントと略すことがある)、および、樹脂を含む組成物で構成されたバインダの層(13)を備えている。そして、バインダの層(13)は布帛(10)におけるもう一方の主面(紙面上における左方主面)よりも内部側(前記もう一方の主面よりも、紙面上における右方主面側)に存在している。
【0021】
ここで布帛(10)は、主として表面材(100)の骨格を形成する役割を担う部材である。そして、プリント(11)は、主として表面材(100)へ色彩や柄を有するなど意匠性を付与する役割やプリント(11)が存在している主面の触感を向上させる役割を担う。また、バインダの層(13)は布帛(10)の構成繊維同士を接着一体化させて、布帛(10)の形状が意図せず変形するのを防止する役割や、布帛(10)の剛性を高め諸物性を向上させる役割を担う。加えて、表面材の主面に露出している繊維における布帛(10)内に存在する端部を、布帛内部で固定して、表面材(100)の主面から繊維が脱落し難くするという役割を担う。
【0022】
本発明でいう布帛(10)とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の繊維集合体である。本発明の表面材(100)は、布帛(10)を含んでいるため柔軟であり、加熱成形性に優れる。なお、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる布帛(10、特に、不織布)を備えた表面材(100)はより柔軟であり、より加熱成形性に優れ好ましい。
【0023】
これらシート状の繊維集合体を複数積層して構成された布帛(10)であっても、単層構造を有する布帛(10)であっても良い。しかし、単層構造を有する布帛(10)を採用することによって、層間剥離が発生し難い布帛(10)を提供でき、布帛(10)の両主面における構成繊維の種類と配合比率を同一なものにして、布帛(10)の両主面における成形型への追従性を均一的なものにして、内装材を製造する際の成形性に優れる表面材(100)を提供でき好ましい。
【0024】
なお、ここでいう単層構造とは、個別に用意したシート状の繊維集合体を複数積層して構成された布帛(10)ではないことを意味する。布帛(10)から容易に層を剥離できる場合、または、布帛(10)の一方の主面ともう一方の主面における構成繊維の種類と配合比率が同一でない場合には、布帛(10)が単層構造を有していないと判断できる。
【0025】
布帛(10)の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂、アクリルスチレン樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0026】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。
更に、構成繊維は複数の樹脂を含んでいいても良い。
【0027】
また、表面材(100)に難燃性が求められる場合には、布帛(10)の構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。
【0028】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0029】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0030】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維は、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0031】
布帛(10)が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、布帛(10)に強度と形態安定性を付与し、削れや意図しない毛羽立ちの発生を抑制でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維における熱融着性を発揮する成分として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を採用できる。
【0032】
布帛(10)が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して成形型への追従性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維が捲縮を発現した繊維や機械的捲縮が付与された繊維などを使用することができる。
【0033】
なお、布帛(10)の構成繊維は顔料を練り込み構成されてなる、あるいは、染色されてなる原着繊維(例えば、黒色の原着繊維など)であってもよい。
【0034】
まず、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法)などによって、繊維ウェブを調製できる。
【0035】
そして、調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどして熱融着性繊維によって構成繊維同士を接着一体化させる方法などを挙げることができる。
【0036】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0037】
布帛(10)が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を用いて織物や編物を調製できる。
【0038】
なお、繊維ウェブ以外にも織物や編物などの布帛を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0039】
布帛(10)の構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、外観保持性が向上するように、0.1dtex以上であることができ、0.5dtex以上であることができ、1.0dtex以上であることができる。他方、成形性に優れた表面材(100)を調製可能なように、100dtex以下であることができ、50dtex以下であることができ、30dtex以下であることができ、10dtex以下であることができる。
【0040】
また、布帛(10)の構成繊維の繊維長も特に限定するものではないが、外観保持性が向上するように、20mm以上であることができ、25mm以上であることができ、30mm以上であることができる。他方、繊維長が110mmを超えると、布帛(10)の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、成形性に優れた表面材(100)を調製するのが困難となるおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、80mm以下であることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0041】
布帛(10)の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。
【0042】
布帛(10)の厚さは、500~50000μmであることができ、1000~3000μmであることができ、1100~1900μmであることができる。なお、本発明において布帛(10)の厚さとは、後述する(バインダの層の存在態様の確認方法)の項目で算出される、線分における端点(
図2中のA)と端点(
図2中のB)間の長さ(
図2中ではXとして図示する)をいう。
【0043】
また、布帛(10)の目付は、例えば、50~500g/m2であることができ、80~300g/m2であることができ、100~250g/m2であることができる。なお、本発明において目付とは、測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0044】
バインダの層を構成する組成物は、布帛(10)の構成繊維同士を接着一体化させる役割を担う樹脂として、例えば、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂、バーサチック酸ビニルエステル共重合アクリル系樹脂など)などの各種樹脂を必須構成として含む。バインダの層を構成する樹脂としてアクリル系樹脂を採用すると、熱成形時に適度に軟化するため成形型への追従性に優れる表面材(100)を提供でき好ましい。
【0045】
なお、バインダの層は当該組成物として、樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、シリカなどの無機粒子、加熱され発泡する粒子あるいは既発泡粒子などの中空粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤(例えば、フッ素系撥水撥油剤)などの添加剤を含有していてもよい。
【0046】
布帛(10)に含まれているバインダの層の目付は、本発明の構成を満足する表面材(100)を提供できるよう適宜選択する。具体的に当該目付は2g/m2以上であることができる。また、200g/m2以下であることができ、100g/m2以下であることができ、50g/m2以下であることができる。
【0047】
本発明にかかる表面材(100)は、布帛(10)の内部にバインダの層(13)を備えており、当該バインダの層(13)の存在態様に特徴を有する。つまり、バインダの層(13)は布帛(10)におけるもう一方の主面(紙面上における左方主面)よりも内部側(前記もう一方の主面よりも、紙面上における右方主面側)に存在している。
【0048】
このとき、布帛(10)の少なくとも一方の主面に露出する構成繊維は、その布帛(10)内部に存在する端部は主として布帛(10)内部に存在するバインダの層(13)によって固定されていることで当該主面から脱落し難いと共に、当該主面に露出している部分はバインダの層(13)によって固定されていないことで、起毛感があり触感に優れる主面を備える表面材(100)を提供し易いように、バインダの層(13)は、布帛(10)における一方の主面(紙面上における右方主面)よりも内部側(前記一方の主面よりも、紙面上における左方主面側)に存在しているのが好ましい。つまり、両主面にバインダの層(13)が存在していない表面材(100)であるのが好ましい。
【0049】
なお、布帛(10)に存在するバインダの層(13)の態様は、以下の測定方法によって確認できる。
【0050】
(バインダの層の確認方法)
1.測定対象(例えば、表面材(100))から試料(形状:正方形あるいは長方形)を採取する。
2.測定対象に含まれるバインダを染色可能な染色液(例えば、カヤステインQ(日本化薬(株)製)など)を用意する。
3.染色液を用いて試料中に含まれるバインダを染色する。
4.染色後の試料を厚さ方向に切断し、切断後の試料の両主面にインクジェット印刷用光沢紙を重ね、更にインクジェット印刷用光沢紙の両側からガラス板で試料を厚さ方向に挟み保持し固定(ガラス板による試料の厚さ方向へ作用させる圧力:20g/cm2)する。そして、その状態で切断後の試料における断面を、30倍の光学顕微鏡で撮影する。なお、光学顕微鏡写真における縦方向の範囲内に、染色後の試料の断面における厚さ方向の全体が収まるように撮影する。また、試料の厚さ方向の長さを示す線分を一辺として有する正方形の範囲が、光学顕微鏡写真中に納まるように撮影する。
なお、光学顕微鏡写真における前述した正方形の範囲の横方向(前記試料断面の厚さ方向と垂直を成す方向)にわたり横断するように、バインダが一続きに存在する箇所を有している場合、当該樹脂を含む組成物で構成されたバインダが一続きに存在する箇所を有する表面材(100)を、バインダの層(13)を有する表面材(100)であると判断する。
【0051】
光学顕微鏡写真を確認した結果、
・布帛(10)におけるもう一方の主面(紙面上における左方主面)にバインダの層(13)が存在しておらず、布帛(10)におけるもう一方の主面(紙面上における左方主面)よりも内部側(前記もう一方の主面よりも、紙面上における右方主面側)に、バインダの層(13)が存在している場合、
布帛(10)におけるもう一方の主面よりも内部側にバインダの層(13)が存在していると判断できる。
【0052】
また、光学顕微鏡写真を確認した結果、
・布帛(10)におけるもう一方の主面(紙面上における左方主面)にバインダの層(13)が存在しておらず、布帛(10)におけるもう一方の主面(紙面上における左方主面)よりも内部側(前記もう一方の主面よりも、紙面上における右方主面側)に、バインダの層(13)が存在していると共に、
・布帛(10)における一方の主面(紙面上における右方主面)よりも内部側(前記一方の主面よりも、紙面上における左方主面側)に、バインダの層(13)が存在している場合、
布帛(10)における両主面間にバインダの層(13)が存在していると判断できる。
【0053】
なお、布帛(10)が有するバインダの層(13)の数は適宜調整でき複数でも良い。しかし、本発明にかかる表面材(100)を容易に提供できるよう、バインダの層(13)を一層のみ有しているのが好ましい。
【0054】
バインダの層(13)の厚さは適宜調整できるが、本発明にかかる表面材(100)では、上述した光学顕微鏡写真に写る布帛(10)の厚さよりも薄いものである。一例として、布帛(10)の厚さよりも薄く、200~1000μmであることができ、300~500μmであることができる。
【0055】
なお、バインダの層(13)の厚さは、以下の方法で求めることができる。主に、
図2を用いて説明する。なお、
図2では、インクジェット印刷用光沢紙とガラス板を省略し図示していない。
【0056】
(バインダの層の厚さの測定方法)
1.上述した光学顕微鏡写真に写る布帛(10)の両主面間を最短距離で結ぶ線分を、光学顕微鏡写真上に引く。なお、線分における布帛(10)の一方の主面側の端点(一方の主面と線分との接点)を端点(A)、線分における布帛(10)のもう一方の主面側の端点(もう一方の主面と線分との接点)を端点(B)とする。そして、線分における端点(A)と端点(B)間の長さを、布帛(10)の厚さ(単位:μm)とする。なお、図中では布帛(10)の厚さをXとして図示している。
2.光学顕微鏡写真に写る、ある一つのバインダの層(13)における一方の主面側の輪郭と前記線分の交点(a)、そして、前記バインダの層(13)におけるもう一方の主面側の輪郭と前記線分の交点(b)を、光学顕微鏡写真上に作図する。
そして、前記線分における交点(a)と交点(b)間の長さを求め、当該線分におけるバインダの層(13)の厚さとする。なお、図中では当該バインダの層(13)の厚さをWとして図示している。
3.最初に引いた線分と平行を成す、上述した光学顕微鏡写真に写る布帛(10)の両主面間を結ぶ線分を、光学顕微鏡写真上に5本引く。次いで、上述した方法と同様にして各線分ごとに、端点(A)と端点(B)、そして、交点(a)と交点(b)を各々作図する。そして、各線分ごとに交点(a)と交点(b)間の長さを求める。
4.以上のようにして求めた、5本の線分における各交点(a)と交点(b)間の長さの平均値を算出し、算出した値をバインダの層(13)の厚さ(単位:μm)とする。
【0057】
なお、布帛(10)の厚さに占める、バインダの層(13)の厚さの百分率は適宜調整できるが、5%~80%の範囲であることができ、10%~60%の範囲であることができ、20%~30%の範囲であることができる。なお、当該百分率は、布帛(10)の厚さ(X)に占めるバインダの層(13)の厚さ(W)の百分率を算出することで求めることができる。
【0058】
布帛(10)における主面からどの程度、内部側にバインダの層(13)が存在しているかについては適宜調整できる。なお、バインダの層(13)の存在態様は、以下の方法で確認できる。
【0059】
(バインダの層の存在態様の確認方法)
1.上述のようにして作図した、線分における端点(A)と端点(B)間の長さ(X)、線分における端点(A)と交点(a)間の長さ(図中ではYとして図示する、一方の主面からバインダの層(13)が存在するまでの深さを意味する)、線分における端点(B)と交点(b)間の長さ(図中ではZとして図示する、もう一方の主面からバインダの層(13)が存在するまでの深さを意味する)を、各々求める。
2.100×Y/Xの値と100×Z/Xの値を算出(単位:%)する。
3.最初に引いた線分と平行を成す、上述した光学顕微鏡写真に写る布帛(10)の両主面間を結ぶ線分を、光学顕微鏡写真上に5本引く。次いで、上述した方法と同様にして各線分ごとに、端点(A)と端点(B)、そして、交点(a)と交点(b)を各々作図する。そして、各線分ごとにX、Y、Zの長さを測り、各々100×Y/Xの値と100×Z/Xの値を求める。
4.以上のようにして求めた、5本の線分における各100×Y/Xの値の平均値(単位:%)を算出することで、一方の主面から布帛(10)の厚さ方向へ当該平均値(単位:%)以上の範囲に、バインダの層(13)が存在すると判断できる。
5.同様に、以上のようにして求めた、5本の線分における各100×Z/Xの値の平均値(単位:%)を算出することで、もう一方の主面から布帛(10)の厚さ方向へ当該平均値(単位:%)以上の範囲に、バインダの層(13)が存在すると判断できる。
【0060】
なお、本発明の構成を満足する表面材(100)においては、100×Z/Xの平均値(または100×Z/Xの平均値と100×Y/Xの平均値)は0%よりも大きい値となる。当該平均値は本発明の構成を満足するものであるならば適宜調整できるが、100×Z/Xの平均値あるいは100×Y/Xの平均値は、5%以上であることができ、7%以上であることができ、10%以上であることができ、15%以上であることができる。各平均値の上限は適宜調整できるが、73%以下であることができ、70%以下であることができ、60%以下であることができる。
【0061】
なお、本発明にかかる表面材(100)は、以下の構成を満足できる。
・XとWは0よりも大きく、100×Z/Xの平均値は0よりも大きい。
・100×Y/Xの平均値と100×Z/Xの平均値の和は、100%未満である。
本発明にかかる表面材(100)は、上述の構成を備えているため、表面材(100)の主面に露出する繊維における布帛(10)内部に存在する端部が、主として布帛(10)内部に存在するバインダの層(13)によって固定されているため、主面から繊維が脱落し難い表面材(100)である。
【0062】
加えて、
・XとWは0よりも大きく、100×Y/Xの平均値は0よりも大きい。
という構成を有することによって、布帛(10)の主面に露出する構成繊維がバインダの層(13)によって固定されていないことで、主面から繊維が脱落し難いと共に、起毛感があり触感に優れる主面を備える表面材(100)を提供でき好ましい。
【0063】
表面材(100)の目付、厚さなどの諸物性は、本発明の目的が達成できるよう適宜調整でき、例えば、目付は140~300g/m2であることができ、150~260g/m2であることができ、160~250g/m2であることができる。また、厚さは500~50000μmであることができ、1000~3000μmであることができ、1100~1900μmであることができる。
【0064】
本願発明の表面材(100)は、布帛(10)における一方の主面に部分的に、プリント(11)が露出し存在している。プリント(11)は、上述したバインダの層(13)を構成する組成物に含まれるとして挙げた樹脂のうち、少なくとも一種類の樹脂を含み構成可能なものである。
【0065】
なお、プリント(11)が含む樹脂と、バインダの層(13)を構成する組成物に含まれる樹脂とが同一である場合には、プリント(11)とバインダの層(13)の物性が近いものとなる結果、成形型への追従性を均一的なものにして、内装材を製造する際の成形性に優れる表面材(100)を提供でき好ましい。
【0066】
また、プリント(11)が含む樹脂と、バインダの層(13)を構成する組成物に含まれる樹脂とが異なる場合には、表面材(100)へ意匠性を付与可能なプリント(11)と、表面材(100)の主面から繊維が脱落するのを防止可能なバインダの層(13)とを、共に最適な樹脂を有する態様で備える表面材(100)を実現できる。その結果、より主面上に意図したプリント(11)を備えていると共に主面から繊維が脱落し難い表面材(100)を提供でき好ましい。
【0067】
なお、プリント(11)が含む樹脂と、バインダの層(13)を構成する組成物に含まれる樹脂は、FT-IR装置や熱分析装置などの各種分析機器を用いることで確認できる。あるいは、表面材(100)の製造工程を把握することで確認できる。
【0068】
プリント(11)は、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、シリカなど無機粒子、加熱され発泡する粒子あるいは既発泡粒子など中空粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤(例えば、フッ素系撥水撥油剤)などの添加剤を含有していてもよい。
【0069】
プリント(11)は、布帛の少なくとも一方の主面上に部分的に備えられていればよく、その存在態様は適宜選択できる。例えば、線状やドット状あるいは不定形状などの柄を形成するように当該主面上の一部分に備えられている態様であることができる。布帛の少なくとも一方の主面上に部分的にプリント(11)が備えられていることによって、柄を有するなど意匠性に富む表面材(100)を提供できる。
【0070】
表面材(100)が備えるプリント(11)の種類は一種類であっても良いし、複数種類であってもよい。なお、プリント(11)は表面材(100)における少なくとも一方の主面上に部分的に備えられているのであれば、表面材(100)のもう一方の主面上にプリント(11)が存在していても良い。
【0071】
布帛(10)における一方の主面上に存在するプリント(11)の質量は適宜選択するが、その質量が多過ぎると表面材(100)の成形加工性が悪くなる恐れがある。そのため、プリント(11)の質量は50g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以下であるのが好ましい。下限値は適宜選択できるが、1g/m2以上であることができ、5g/m2以上であることができ、10g/m2以上であることができる。
【0072】
本発明にかかる表面材(100)では、プリント(11)は、バインダの層(13)を構成する組成物を含有することなく、布帛(10)の主面にプリント(11)が存在している。ここでいうプリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有していないとは、プリント(11)にバインダの層(13)を構成する組成物が混ざり込んでいないことを意味する。
【0073】
なお、プリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有しているかいないかは、以下の方法で確認できる。
【0074】
(1)表面材(100)の主面に存在するプリント(11)から、当該プリント(11)の露出している箇所における、当該主面から最も離れた部分より当該プリント(11)の一部を試料(プリント試料)として採取する。そして、FT-IR装置や熱分析装置などの各種分析機器を用いて、採取したプリント試料を構成する組成物の種類を明らかにする。
(2)表面材(100)が備えるバインダの層(13)より当該バインダの層(13)の一部を試料(バインダ試料)として採取し、FT-IR装置や熱分析装置などの各種分析機器を用いて、採取したバインダ試料を構成する組成物の種類を明らかにする。
(3)プリント試料を構成する組成物の種類(例えば、樹脂の種類や顔料の有無)と、バインダ試料を構成する組成物の種類(例えば、樹脂の種類や顔料の有無)とを比較し、
・プリント試料がバインダ試料を構成する組成物を全て含んでいない場合、
「プリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有していない」と判断する。
一方、
・プリント試料がバインダ試料を構成する組成物を全て含んでいる場合、
「プリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有している」と判断する。
【0075】
本発明にかかるバインダの層(13)を備えた布帛(10)は、単体で表面材(100)としてもよいが、更に別の布帛、多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層してなる表面材(100)であってもよい。このとき、当該布帛(10)におけるプリント(11)を有する主面が露出するように、構成部材を積層するのが好ましい。
【0076】
次に、本発明の表面材(100)の製造方法について、その製造工程を表した模式断面図である、
図3を用いて説明する。なお、構成を同じくする点については、説明および図中での番号の注釈を省略する。
【0077】
本発明にかかる表面材(100)の製造方法は適宜選択できるが、一例として、
(工程1)布帛を用意する工程、
(工程2)プリントを構成する組成物と、前記組成物の溶媒および/または分散媒とを含んでいるプリント液を用意する工程、
(工程3)前記布帛における一方の主面へ、プリント液を部分的に付与する工程、
(工程4)前記プリント液を部分的に付与した布帛から、前記プリントの溶媒および/または分散媒を除去することで、前記布帛における前記一方の主面上に部分的にプリントを形成する工程、
(工程5)バインダと、前記バインダの溶媒および/または分散媒とを含んでいる、バインダ液を用意する工程、
(工程6)前記布帛におけるもう一方の主面へ、前記バインダ液を付与する工程、
(工程7)前記布帛におけるもう一方の主面へ、前記バインダの溶媒および/または分散媒を付与する工程、
(工程8)前記布帛から、前記バインダの溶媒および/または分散媒を除去する工程、
を備える、表面材の製造方法であることができる。
【0078】
工程(1)について説明する。
【0079】
図3(1)に図示するように布帛(10)として、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛を用意する。なお、布帛(10)における構成繊維の繊度や繊維長、布帛(10)の厚さや目付は適宜調整できる。
【0080】
工程(2)について説明する。
【0081】
プリントを構成する組成物と、前記組成物の溶媒および/または分散媒とを含んでいるプリント液を用意する。なお、プリント液に含まれるプリントを構成する組成物は適宜調整でき、例えば、樹脂、難燃剤、香料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、シリカなど無機粒子、加熱され発泡する粒子あるいは既発泡粒子など中空粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤や消泡剤、顔料などの添加剤を含有していてもよい。
【0082】
また、溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択でき、例えば水などを採用できるが、布帛(10)へプリント液を好適に付与できるよう、プリントの組成物が分散できると共に布帛(10)が溶解しない分散媒を採用するのが好ましい。
【0083】
そして、プリント液に含まれるプリントを構成する組成物の濃度やプリント液の粘度は、本発明にかかる表面材(100)を提供できるよう、適宜調整する。
【0084】
工程(3)について説明する。
【0085】
布帛(10)における一方の主面上へ、プリント液を部分的に付与する方法は適宜選択できる。上述のようにして用意したプリント液を、布帛(10)の一方の主面へそのまま、または泡立てた状態で、グラビアローラなどを用いて布帛の主面に部分的にプリント液を付与し柄を形成する方法、あるいは、捺染して付与する方法などを選択できる。なお、一種類のプリント液を付与する以外にも、複数種類のプリント液を付与しても良い。また、複数種類のプリント液を付与する場合には、各プリント液の付与態様(各プリントを構成する組成物の種類、柄など)は異なっていても良い。
【0086】
工程(4)について説明する。
【0087】
プリント液を部分的に付与した布帛(10)から、前記プリントの溶媒および/または分散媒を除去する。本工程で当該溶媒あるいは分散媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。溶媒あるいは分散媒を除去する際の加熱温度は、溶媒あるいは分散媒が揮発可能な温度であると共に、布帛(10)の構成成分やプリント(11)を構成する組成物などが意図せず変性することがないよう、加熱温度の上限を調整する。
【0088】
本工程によって、
図3(2)に図示するように、布帛における一方の主面(プリント液を付与した側の主面、
図3(2)では、紙面上における右方主面)に部分的にプリント(11)が露出した態様で形成された布帛(10)を調製できる。
【0089】
工程(5)について説明する。
【0090】
バインダと、前記バインダの溶媒および/または分散媒とを含んでいるバインダ液を用意する。また、溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択でき、例えば水などを採用できるが、布帛(10)へバインダ液を好適に付与できるよう、バインダが分散できると共に布帛(10)やプリント(11)が溶解しない分散媒を採用するのが好ましい。また、バインダ液に含まれるバインダの層(13)を構成する組成物は適宜調整でき、例えば、樹脂、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、シリカなど無機粒子、加熱され発泡する粒子あるいは既発泡粒子など中空粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤や消泡剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0091】
そして、バインダ液に含まれるバインダの層(13)を構成する組成物の濃度やバインダ液の粘度は、本発明にかかる表面材(100)を提供できるよう、適宜調整する。
【0092】
工程(6)について説明する。
【0093】
図3(3)に図示するように、布帛(10)におけるもう一方の主面(プリントを付与した側と反対側の主面、
図3(3)では、紙面上における左方主面)へ、前記バインダ液を付与する(12)。
【0094】
バインダ液を付与する方法は適宜選択できるが、布帛(10)のもう一方の主面にそのまま、あるいは泡立てた状態で、スプレーや含浸ロールなどを用いて散布あるいは塗布する方法、布帛(10)のもう一方の主面をバインダ液に浸漬する方法などを採用できる。
なお、布帛(10)のもう一方の主面へ付与するバインダ液の量は、本発明にかかる表面材(100)を提供できるよう、適宜調整する。また、布帛(10)のもう一方の主面へバインダ液(12)を付与する回数は、一回でも複数回でもよい。
【0095】
工程(7)について説明する。
【0096】
布帛(10)におけるもう一方の主面(バインダ液を付与した側の主面、
図3(3)では、紙面上における左方主面)へ、バインダの溶媒および/または分散媒を付与する。
【0097】
本発明では本工程において、もう一方の主面に存在するバインダ液(
図3(3)の12)を、次いで付与されるバインダの溶媒および/または分散媒(以降、溶媒含有液や分散媒含有液と称することがある)によって、当該もう一方の主面から前記布帛の内部側へと移動させることで、当該もう一方の主面にバインダ液が存在しないようにできる。
【0098】
なお、溶媒含有液や分散媒含有液は、増粘剤や消泡剤などを含有していても良い。布帛(10)のもう一方の主面へ付与する溶媒含有液および/または分散媒含有液の量は、本発明にかかる表面材(100)を提供できるよう、適宜調整する。布帛(10)のもう一方の主面へ溶媒含有液および/または分散媒含有液を付与する回数は、一回でも複数回でもよい。
【0099】
付与する溶媒含有液および/または分散媒含有液の量を少量に調整すると、布帛(10)におけるもう一方の主面(
図3(4)では、紙面上における左方主面)から内部側の浅い部分にバインダの層(13)が存在してなる表面材(100)を実現し易い。また、付与する溶媒含有液および/または分散媒含有液の量を多量に調整すると、布帛(10)におけるもう一方の主面(
図3(4)では、紙面上における左方主面)から内部側の深い部分にバインダの層(13)が存在してなる表面材(100)を実現し易い。つまり、布帛(10)のもう一方の主面へ付与する溶媒含有液および/または分散媒含有液の量を調整することによって、布帛(10)におけるバインダの層(13)の存在態様を調整できる。
【0100】
なお、従来技術にかかる表面材(100)の製造方法では、バインダ液を移動させるため付与される溶媒および/または分散媒によって薄められたバインダ液が、布帛(10)中へ意図せず拡散してゆく。そのため、布帛(10)のもう一方の主面へ付与する溶媒含有液および/または分散媒含有液の量を調整したとしても、布帛(10)におけるバインダの層(13)の存在態様を調整するのは困難であった。
【0101】
その結果、主面上に意図したプリントを備える表面材を提供できないことがあった。
【0102】
一方、本発明にかかる表面材(100)の製造方法を用いることで、溶媒および/または分散媒によって薄められたバインダ液が布帛(10)中へ意図せず拡散するのを防止できることを見出した。その結果、布帛(10)におけるバインダの層(13)の存在態様を調整することが容易である。
【0103】
なお、上述した効果が効率良く発揮されるよう、布帛(10)のもう一方の主面へ付与したバインダ液(12)が乾燥する前に、溶媒含有液および/または分散媒含有液を付与するのが好ましい。
【0104】
また、本発明にかかる表面材(100)の製造方法で製造される本発明にかかる表面材(100)では、布帛(10)の一方の主面に、バインダの層(13)を構成する組成物が存在していてもよい。本発明にかかる表面材(100)の製造方法を採用することによって、仮に当該主面にバインダの層(13)を構成する組成物が存在しているとしても、その存在量が少なくなるよう制御して表面材(100)を製造できる。
【0105】
しかし、より触感に優れる表面材(100)を提供できるように、布帛(10)における一方の主面(
図3(4)では、紙面上における右方主面)よりも内部側に、バインダ液(12)から溶媒および/または分散媒が除去されてなるバインダの層(13)が形成されるよう、布帛(10)のもう一方の主面へ付与する溶媒含有液および/または分散媒含有液の量などを調整するのが好ましい。
【0106】
工程(8)について説明する。
以上のようにして調製した布帛から、布帛に含まれている溶媒および/または分散媒を除去する。
【0107】
溶媒あるいは分散媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。溶媒あるいは分散媒を除去する際の加熱温度は、溶媒あるいは分散媒が揮発可能な温度であると共に、布帛(10)の構成成分やバインダを成す樹脂の機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を調整する。
【0108】
また、加熱を受け発泡する粒子を備えている場合には、本工程によって当該粒子を発泡させてもよい。
【0109】
上述の工程を経ることで、少なくとも布帛(10)におけるもう一方の主面(
図3(4)では、紙面上における左方主面)よりも内部側に、バインダ液(12)から溶媒および/または分散媒が除去されてなるバインダの層(13、
図3(4)では本発明にかかる表面材(100)の一例として、両主面にバインダの層(13)が存在していない表面材(100)を図示している)を形成できる。その結果、
図3(4)に図示する本発明にかかる構成を満足する表面材(100)を調製できる。
【0110】
なお、プリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有しているかいないかは、表面材(100)の製造工程を確認することで判断してもよい。つまり、バインダ液やバインダの層(13)を構成する組成物あるいはバインダの層(13)が存在する主面に、プリント液を付与して表面材(100)を調製した場合、調製された表面材(100)に存在するプリント(11)にバインダの層(13)を構成する組成物が意図せず混ざり込む。その結果、プリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有している状態となる。
【0111】
それに対し、本発明にかかる表面材(100)の製造方法では、プリント(11)を備えた布帛(10)にバインダ液を付与して表面材(100)を製造する。そのため、表面材(100)の表面に存在するプリント(11)にバインダ液を付与しても、バインダ液が布帛(10)中へ意図せず拡散するのを防止でき、プリント(11)にバインダの層(13)を構成する組成物が意図せず混ざり込むことはない。そのため、本発明にかかる表面材(100)の製造方法によって、バインダの層(13)を構成する組成物を含有していないプリント(11)を、布帛(10)の主面に備えた表面材(100)を提供できる。その結果、プリント(11)がバインダの層(13)を構成する組成物を含有していないことによって、プリント(11)に発色不良が発生するという問題の発生が防止された表面材(100)を提供できる。
【0112】
なお、本願出願人は、特許文献1にかかる表面材の製造工程を表した模式断面図である
図4に図示するように、プリントを付与する前の布帛(
図4(1)の10)における、一方の主面(紙面上における左方主面)へバインダ液を付与(
図4(2)の12)し、次いで、当該一方の主面(バインダ液を付与した側の主面、
図4では紙面上における左方主面)へ、溶媒含有液および/または分散媒含有液を付与することを検討した。
【0113】
検討の結果、バインダ液を移動させるため付与される溶媒および/または分散媒によって薄められたバインダ液が、毛細管現象によって布帛(10)中へ意図せず拡散してゆく。そのため、
図4(3)に図示するように、これからプリントを設けようとする主面(紙面上における右方主面)に意図せずバインダの層(13)を構成する組成物が存在していることがあった。
【0114】
そして、このような主面へプリント液を付与して部分的にプリント(
図4(4)の14)を形成した場合、プリント(14)は主面に意図せず存在しているバインダの層(13)を構成する組成物を含有した状態で、布帛の主面に存在するものとなる(
図4(4))。その結果、プリント(14)の発色不良が発生するという問題が発生し、主面上に意図したプリント(14)を備える表面材(100)を提供できないことがあった。
【0115】
また、バインダの層(13)を構成する組成物が存在している主面へプリント液を付与した場合には、当該組成物の存在によって主面からプリント液が弾かれる結果、プリント(14)が上手く載らないなどといった問題が発生して、主面上に意図したプリント(14)を備える表面材を提供できないことがあった。
【0116】
以上の従来技術にかかる製造方法に対し本発明にかかる製造方法によって、バインダの層(13)を構成する組成物を含有していないプリント(11)を備えた表面材(100)を調製できる。そして、当該表面材(100)を別途用意した基材と積層した状態で成形工程へ供することで、内装材を調製できる。また、用途や使用態様に合わせて表面材(100)を、特定形状に打ち抜くなどして加工する工程や、リライアントプレス処理などの厚さや表面の平滑性といった諸物性を調整する工程などの、各種二次工程へ供して、二次工程を経た表面材(100)を成形工程へ供することで内装材を調製してもよい。
【実施例0117】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0118】
(布帛の調製)
原着ポリエステル繊維(繊度:1.3dtex、繊維長:51mm)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した。その後、片面から針密度800本/cm2でニードルパンチ処理を行い、その後、熱ロール(ロール加熱温度:150℃)へ供することで、単層構造の不織布(目付:180g/m2、厚さ:1300μm)を調製した。
【0119】
(バインダ液の調製)
以下の配合物を混合してなるバインダ液(バインダの分散液)を調製した。
・増粘剤(固形分濃度:0.41質量部)・・・27質量部
・消泡剤(固形分濃度:0.16質量部)・・・0.4質量部
・アクリルスチレン樹脂エマルジョン(アクリルスチレン樹脂のTg:-5℃、固形分濃度:15.75質量部)・・・35質量部
・25%濃度アンモニア水・・・1質量部
・水・・・36.6質量部
【0120】
(分散媒含有液の調製)
以下の配合物を混合してなる分散媒含有液を調製した。
・増粘剤(固形分濃度:0.41質量部)・・・19.5質量部
・消泡剤(固形分濃度:0.16質量部)・・・0.4質量部
・25%濃度アンモニア水・・・1質量部
・水・・・79.1質量部
なお、本分散媒含有液中にはバインダ成分は含有されていなかった。
【0121】
(プリント液の調製)
以下に記載の割合で配合したプリント液を用意した。
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):20質量部
・増粘剤(固形分質量:1.5質量%):25質量部
・消泡剤(固形分質量:14質量%):0.5質量部
・シリコン系樹脂エマルジョン(固形分質量:33.8質量%):3質量部
・黒色顔料(固形分質量:3.8質量%):0.1質量部
・25%アンモニア水:1質量部
・水:50.4質量部
【0122】
(比較例1)
前記布帛である単層構造の不織布における、一方の主面全体に、シリンダを用いてバインダ液を280g/m
2付与した。次いで、バインダ液を付与した側の主面全体に、シリンダを用いて分散媒含有液を400g/m
2付与した。
その後、温度160℃のテンタードライヤーで乾燥することによって、バインダ液中に含まれるアクリルスチレン樹脂によって構成繊維同士を接着固定すると共に分散媒を除去した。そして、放熱することによって冷却して、
図4(3)に図示するような、一方の主面よりも内部側(100×Z/Xの平均値:17%、100×Y/Xの平均値:0%)にアクリルスチレン樹脂の層(バインダの層)を備えた布帛(目付:225g/m
2、厚さ:1300μm)を調製した。
なお、このようにして調製したバインダの層を備えた布帛では、バインダ液と分散媒含有液を付与した側の主面に、バインダの層を構成する組成物は存在していなかった。一方、バインダ液と分散媒含有液を付与した側と反対側の主面には、バインダの層を構成する組成物が存在していた。
次いで、内部にバインダの層を備えた布帛における、バインダ液と分散媒含有液を付与した側と反対側の主面上に、シリンダを用いて表面にプリント液を部分的に付与した。その後、温度160℃のドライヤーを用いて乾燥することで、当該主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリント(シボ模様のプリント柄で構成されたプリント)を露出した態様で備えた表面材(目付:245g/m
2、厚さ:1300μm、)を調製した。
このようにして調製した表面材では、プリントはバインダの層を構成する組成物を含有するものであった。
【0123】
(実施例1)
前記布帛である単層構造の不織布における、一方の主面上に、比較例1で使用したシリンダを用いて、プリント液を部分的に付与した。その後、温度160℃のドライヤーを用いて乾燥することで、当該主面上の全体に、部分的にプリント液由来のプリント(シボ模様のプリント柄で構成されたプリント)を露出した態様で備えた布帛(目付:200g/m
2、厚さ:1300μm)を調製した。
そして、プリントを備えた布帛における、プリントが存在している主面と反対の主面全体に、シリンダを用いてバインダ液を280ml/m
2付与した。次いで、バインダ液を付与した側の主面全体に、シリンダを用いて分散媒含有液を400ml/m
2付与した。
その後、温度160℃のテンタードライヤーで乾燥することによって、バインダ液中に含まれるアクリルスチレン樹脂によって構成繊維同士を接着固定すると共に分散媒を除去した。そして、放熱することによって冷却して、
図3(4)に図示するような、一方の主面よりも内部側(100×Y/Xの平均値:15%)、および、もう一方の主面よりも内部側(100×Z/Xの平均値:17%)にアクリルスチレン樹脂の層(バインダの層)を備えた布帛(目付:245g/m
2、厚さ:1300μm)を調製した。
なお、このようにして調製した内部にバインダの層を備えた布帛における両主面には、バインダの層を構成する組成物は存在していなかった。
また、調製された表面材では、プリントはバインダの層を構成する組成物を含有していないものであった。
【0124】
(プリントの存在態様と色味の評価方法、および、その評価結果)
表面材における、プリントが存在している側の主面を目視で確認することによって、当該プリントの色味と存在態様を評価した。
確認の結果、実施例1で調製した表面材が備えるプリントの色は黒色であったのに対し、比較例1で調製した表面材が備えるプリントの色は、灰色であった。この理由として、比較例1で調製した表面材では、プリントがバインダの層を構成する組成物を含有しているためだと考えられた。
【0125】
また、比較例1で調製した表面材では、プリントにかすれた箇所が生じていた。この理由として、バインダの層を構成する組成物が存在している主面へプリント液を付与したため、プリント液が弾かれたと考えられた。それに対し、実施例1で調製した表面材では、プリントにかすれた箇所が生じていなかった。この理由として、バインダの層を構成する組成物が存在していない主面へプリント液を付与できたためだと考えられた。
【0126】
以上の結果から、本発明にかかる構成を満足する表面材は、プリントの発色不良の発生が防止されている表面材であった。加えて、本発明にかかる構成を満足する表面材は、バインダの層を構成する組成物の存在によって主面上にプリントが上手く載らないという問題が発生するのが防止されている表面材であった。
本発明の表面材は、各種内装材を調製可能な表面材である。特に、車両の天井、ピラーガーニッシュ、ドア、インストルメントパネル、ステアリングホイール、シフトレバー、コンソールボックス、トノカバー、ラゲッジフロア、ラゲッジサイドなどの内装材を調製できる、表面材である。