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  • 特開-試験方法及びダミーパネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155583
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】試験方法及びダミーパネル
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070422
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一貴
(72)【発明者】
【氏名】若山 恵英
(72)【発明者】
【氏名】佃 憲哉
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA19
2G067CC01
2G067DD02
2G067DD27
(57)【要約】
【課題】建物の工程上、比較的早い段階で、より簡易にクリーンルームの気密性試験を行うこと。
【解決手段】クリーンルームの気密性を試験する試験方法であって、前記クリーンルームとその天井裏との間に、空気の連通路を仮設する仮設工程と、前記クリーンルームに設置した送風機によって、前記連通路を介してクリーンルームの空気を前記天井裏に排気し、前記クリーンルームを減圧する減圧工程と、を備え、前記仮設工程では、前記クリーンルームの天井点検口を覆う点検口パネルを、前記連通路を形成するダクトが設けられたダミーパネルに交換することにより、前記連通路を仮設する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームの気密性を試験する試験方法であって、
前記クリーンルームとその天井裏との間に、空気の連通路を仮設する仮設工程と、
前記クリーンルームに設置した送風機によって、前記連通路を介してクリーンルームの空気を前記天井裏に排気し、前記クリーンルームを減圧する減圧工程と、を備え、
前記仮設工程では、
前記クリーンルームの天井点検口を覆う点検口パネルのダミーパネルであって、前記連通路を形成するダクトが設けられたダミーパネルを前記天井点検口に装着することにより、前記連通路を仮設する、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の試験方法であって、
前記減圧工程後、前記クリーンルームに設置したサーモカメラにより、前記クリーンルームの画像を撮影する撮影工程を備える、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の試験方法であって、
前記ダミーパネルは、
前記クリーンルームと前記天井裏との差圧によって開閉する差圧ダンパと、
前記クリーンルームに配置される差圧計のチューブが挿通する挿通部と、を備え、
前記減圧工程は、
前記差圧計により前記クリーンルームと前記天井裏との差圧を計測する計測工程を含む、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項4】
クリーンルームの気密性の試験の際、前記クリーンルームの天井点検口に装着される、該天井点検口を覆う点検口パネルのダミーパネルであって、
前記クリーンルームとその天井裏との間に、空気の連通路を形成するダクトを備える、
ことを特徴とするダミーパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリーンルームの気密性試験に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームは高い気密性が要求されるため、クリーンルームの施工時には気密性試験が行われる。気密性試験の結果、意図しない漏気箇所があった場合は、その補修作業が行われる。特許文献1には、クリーンルームを対象としたものではないが、建物の気密性を計測する測定装置を窓枠に設置して試験を行う技術が開示されている。しかし、クリーンルームには窓が無い場合が多く、クリーンルームの気密性試験としては適用範囲が限られる上に、測定装置の設置に工数を要すると推測される。特許文献2には、クリーンルームに設置される設備機器について局所的に気密性試験を行う技術が開示されている。特許文献2の技術では、クリーンルーム全体の気密性を確認することは困難である。特許文献3には、建物に備えられている外調機を用いてクリーンルームを陽圧に設定し、気密性試験を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3228288号公報
【特許文献2】特開平7-27657号公報
【特許文献3】特開2004-309160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーンルーム全体の気密性試験を行う場合、クリーンルームの気圧調整が必要である。特許文献3の技術は、外調機を用いてクリーンルームの気圧調整を行っており、試験のタイミングは外調機の稼働後である。建物の工程上、建築工事に関わった大部分の作業者が既に現場に居ない場合があり、気密性に関する大規模な是正作業が生じた場合、労務の確保等において不利である。
【0005】
本発明の目的は、建物の工程上、比較的早い段階で、より簡易にクリーンルームの気密性試験を行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
クリーンルームの気密性を試験する試験方法であって、
前記クリーンルームとその天井裏との間に、空気の連通路を仮設する仮設工程と、
前記クリーンルームに設置した送風機によって、前記連通路を介してクリーンルームの空気を前記天井裏に排気し、前記クリーンルームを減圧する減圧工程と、を備え、
前記仮設工程では、
前記クリーンルームの天井点検口を覆う点検口パネルのダミーパネルであって、前記連通路を形成するダクトが設けられたダミーパネルを前記天井点検口に装着することにより、前記連通路を仮設する、
ことを特徴とする試験方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建物の工程上、比較的早い段階で、より簡易にクリーンルームの気密性試験を行うことができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用可能なクリーンルームの例を示す図。
図2】(A)は図1のクリーンルームの天井点検口及び点検口パネルの説明図、(B)は本発明の一実施形態に係るダミーパネルの説明図。
図3】(A)は図2(B)のA-A線断面図、(B)は差圧ダンパの動作説明図。
図4】(A)及び(B)は本発明の一実施形態に係る試験方法の説明図。
図5】(A)及び(B)は本発明の一実施形態に係る試験方法の説明図。
図6】サーモカメラの撮影画像の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<クリーンルーム>
図1は本発明が適用可能なクリーンルームの例を示す図である。各図において矢印X、Yは直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向を示す。クリーンルーム10は、床11、壁12~14、不図示の手前側の壁、及び、天井15で画定される閉じた空間であり、図1は機材や空調設備が部分的に未施工の段階を示している。天井15は、天井板15aにより形成され、天井板15aと上層階の床スラブ22との間には天井裏となる空間23が形成されている。天井板15aには、点検口パネル17で塞がれた天井点検口16が形成されている。作業者は天井点検口16から空間23内に、今後の工程で配置される設備の点検が可能となっている。
【0011】
床11上には、設備18が配備されている。設備18は、クリーンルーム10の実際の使用において稼働が予定されている機器であり、図示の例では壁13を貫通する配管18aが接続されている。奥側の壁14には、クリーンルーム10に隣接する別のルームと連通した配管19~21が貫通している。これら配管19~21には、クリーンルーム10の実際の使用において稼働が予定されているが、クリーンルーム10に未配備(今後の工程で床11に配備される)の不図示の設備に接続される。
【0012】
<点検口パネルとダミーパネル>
図2(A)は天井点検口16及び点検口パネル17の説明図である。天井点検口16は、天上板15aに形成した開口部(貫通孔)を、矩形状で金属製のフレーム16aで縁取って形成されている。点検口パネル17は、その外形を規定する矩形状で金属製のフレーム17aを備える。フレーム17aはフレーム16aの内側にすっぽり収まるサイズを有しており、フレーム16aは外枠、フレーム17aは内枠を形成している。フレーム16aとフレーム17aとの間には、クリーンルーム10の気密性を維持するためのシール材(不図示)が設けられる。フレーム17aで画定される開口はパネル材17bで塞がれている。
【0013】
本実施形態の点検口パネル17は、天井点検口16に対して二か所のヒンジ部hを回動中心として回動自在に設けられている。ヒンジ部hは、フレーム16a側のヒンジ部材16bと、フレーム17a側のヒンジ部材17bとで構成されている。ヒンジ部hと反対側の部位にはロック機構Lが設けられている。ロック機構Lは、フレーム17aに回動自在に設けられたハンドル17cと、フレーム16a側のストライカ16cとで構成されており、ハンドル17cの回動操作により、ハンドル17cとストライカ16cとのロック及びロック解除が可能となっている。ロック機構Lによって点検口パネル17を、天井点検口16を覆う閉状態に維持できる。また、ハンドル17cの回動操作によってロックを解除し、ヒンジ部hを中心として点検口パネル17を回動することで、点検口パネル17を天井点検口16を開放する開状態に変化させることができる。なお、図2(A)は閉状態を示している。
【0014】
図2(B)は本発明の一実施形態に係るダミーパネル1の説明図である。本実施形態ではクリーンルーム10の気密性試験の際、点検口パネル17に代えてこのダミーパネル1を天井点検口16に装着する。
【0015】
ダミーパネル1は、点検口パネル17の基本的な構成部品を転用して作成されている。具体的には、ダミーパネル1は、点検口パネル17のフレーム17a、ヒンジ部材17b、及び、ハンドル17cを転用している。したがって、点検口パネル17と同様に天井点検口16に装着可能である。
【0016】
ダミーパネル1は、点検口パネル17のパネル部材17bに代えてパネル部材2を有する。パネル部材2にはダクト3、差圧ダンパ4、挿通部5が設けられている。図2(B)に加えて図3(A)及び図3(B)を参照してダミーパネル1について更に説明する。図3(A)は図2(B)のA-A線断面図であり、図3(B)は差圧ダンパ4の動作説明図である。
【0017】
ダクト3はパネル部材2を貫通する筒状の部材であり、ダクト3とパネル部材2との間は適宜方法にて気密にシールされる。ダクト3の一端はクリーンルーム10に開口し、他端は天井裏の空間23に開口している。ダクト3は、クリーンルーム10と天井裏の空間23との間を空気が流通可能な連通路3aを形成する。
【0018】
差圧ダンパ4は、気密性試験においてクリーンルーム10と天井裏の空間23との気圧差を調整するダンパである。差圧ダンパ4は、パネル部材2に設けた軸受け2cで支持される軸2dを回動中心として回動自在に設けられている。本実施形態では、気密性試験の際、クリーンルーム10の気圧を陰圧に調整する。
【0019】
差圧ダンパ4は、クリーンルーム10と天井裏の空間23との差圧が規定範囲の場合、差圧ダンパ4はその自重によって図3(A)に示すようにパネル部材2に形成した開口部2bを閉鎖する閉状態となる。一方、クリーンルーム10と天井裏の空間23との差圧が規定範囲外の場合(クリーンルーム10の気圧が低すぎる場合)、図3(B)に示すように差圧ダンパ4が気圧差によって回動し、開口部2bを開放する開状態となる。
【0020】
差圧ダンパ4によって、クリーンルーム10と天井裏の空間23との気圧差が自動的に調整されるため、安全で、再現性のよい気密性試験を行える。
【0021】
挿通部5は、パネル部材2を貫通する孔であり、孔の内壁面にゴム等のシール材が設けられる。挿通部5は後述する差圧計8のチューブ8aが挿通される。差圧計8は、気密性試験中、クリーンルーム10と天井裏の空間23との差圧を計測する計測器である。
【0022】
<気密性試験>
図4(A)~図5(B)を参照して本発明の一実施形態に係る試験方法について説明する。図4(A)~図5(B)はその説明図である。
【0023】
まず、クリーンルーム10とその天井裏の空間23との間に、空気の連通路を仮設する。ここではダミーパネル1を用いて連通路を仮設する。図4(A)はその一例を示している。天井点検口16から点検口パネル17を取り外し、ダミーパネル1を天井点検口16に装着する。ダミーパネル1のダクト3によってクリーンルーム10と空間23とを連通する連通路3a(図3(A)参照)が形成される。また、クリーンルーム10において、外部と連通している箇所を閉鎖する作業を行う。例えば、図4(A)の例では配管19、20がシール材6a、6bで閉鎖されている。この他、図4(A)では図示されていないが配管21も同様に閉鎖される。
【0024】
次に、クリーンルーム10に試験機材を配備する。図4(B)はその一例を示す。クリーンルーム10には送風機7が設置され、ダクト7aによって送風機7とダクト3とが接続される。また、クリーンルーム10には差圧計8が設置される。差圧計8はチューブ8aを介して天井裏の空間23と連通する。チューブ8aはダミーパネル1の挿通部5を通してクリーンルーム10から空間23へ延設される。差圧計8は空間23とクリーンルーム10との気圧の差圧を計測する。クリーンルーム10にはまた、サーモカメラ9が設置される。サーモカメラ9はクリーンルーム10の温度分布を画像で撮影する。
【0025】
試験機材の配備が完了すると、気密性試験を開始する。送風機7を稼働し、ダクト3(連通路3a)を介してクリーンルーム10の空気を天井裏の空間23に排気する。図5(A)はその一例を示している。これによりクリーンルーム10が減圧される。減圧中、差圧計8によって空間23とクリーンルーム10との気圧の差圧を計測してその計測結果を監視し、送風機7の出力を調整する。これにより、クリーンルーム10を意図する陰圧に調整することができる。
【0026】
クリーンルーム10が所定の気圧に減圧されると、サーモカメラ9によりクリーンルーム10を撮影する。図5(B)はその一例を示している。撮影は、クリーンルーム10全体が撮影されるように、サーモカメラ9の向きを変えて複数回行ってもよい。撮影が終わると、送風機7の稼働を停止し、クリーンルーム10での作業は終了する。その後、パソコン等に撮影画像を表示し、漏気箇所を検証する作業に移行する。
【0027】
隣接する別のルームよりもクリーンルーム10が陰圧に調整された結果、クリーンルーム10に漏気箇所が存在すると、隣接する別のルームから空気がクリーンルーム10に流入する。クリーンルーム10内の空気と、隣接する別のルームからの空気との温度差がサーモカメラ9の画像に現れる。撮影画像から漏気箇所を特定することができる。空気の温度差が顕著に生じるように、隣接する別のルームの空気は事前にヒータ等で加温しておいてもよい。
【0028】
図6はサーモカメラ9の撮影画像の例を模式的に示している。画像の濃淡(或いは色)によってクリーンルーム10の温度分布が表される。指標30は画像の濃淡と、空気温度の高低との関係を示しており、図示の例では濃い部分は空気の温度が相対的に高く、薄い部分は空気の温度が相対的に低い。
【0029】
図6の例では、クリーンルーム10が全体的に一様な温度分布であることを示す一方、局所的に温度の高い部分31~33が示されている。部分31は画像の濃度が最も濃い部分であり、隣接する別のルームから、温度の高い空気が流入していると推測される。すなわち、配管20の周囲に漏気箇所が存在する可能性がある。部分32、33も比較的画像の濃度が高い部分であり、配管19、配管20に漏気箇所が存在する可能性を示唆している。一方、配管21や配管18aの周囲の画像は比較的濃度が薄く、漏気箇所が存在する可能性は低いと評価できる。
【0030】
このようにして本実施形態では、クリーンルーム10の全体に渡って漏気の可能性のある個所を特定し、是正作業に進むことができる。気密性試験は、ダミーパネル1や試験機材を持ち込めば行うことができ、建物の工程上、比較的早い段階で、より簡易に行える。
【0031】
ダミーパネル1は、同じ仕様の点検口パネル17を有するクリーンルームであれば使い回すことができ、その構造も点検口パネル17を概ね転用して作成できるから、簡単に得られる。一般にクリーンルームには天井点検口と点検口パネルが少なくとも一つはあるので、クリーンルームに広く適用できる。試験機材も、送風機7、差圧計8、サーモカメラ9程度で足りるのでその準備に手間も生じず、格別の専門性も要求されない。気密性試験及び是正作業の後の片づけ作業は、機材の撤去と、ダミーパネル1を点検口パネル17に付け替える程度の作業で足り、後処理がほとんど必要ない。
【0032】
なお、本実施形態では、漏気箇所の検証にサーモカメラ9の撮影画像を用いたが、漏気箇所の検証はこれに限らない。例えば、クリーンルーム10を陽圧に調整した状態で、作業者が気流の音を基準に漏気箇所を点検する手法でもよい。或いは、隣接するルームに事前に着色した空気や、着臭した空気を導入しておき、クリーンルーム10を陽圧に調整した状態で作業者が空気の色やにおいを基準に漏気箇所を点検する手法でもよい。
【0033】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ダミーパネル、3 ダクト、7 送風機、10クリーンルーム、16 天井点検口、17 点検口パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6