(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001556
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】振動低減部材
(51)【国際特許分類】
G10K 11/172 20060101AFI20231227BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G10K11/172
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100285
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】久米田 健太
(72)【発明者】
【氏名】中島 友則
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA06
5D061BB35
5D061BB37
(57)【要約】
【課題】特定の周波数の振動を効率的に大幅に低減することができ、製造が容易な振動低減部材を提供する。
【解決手段】振動低減部材1は、平面形状が多角形である複数の区画2の輪郭を形成する壁部3と、複数の区画2内にそれぞれ位置する振動膜4と、を含む。各々の振動膜4は、当該振動膜4が位置する区画2の平面形状である多角形の各辺に繋がっている。壁部3の高さ方向において、振動膜4は壁部3の上端部と下端部との間に位置し、振動膜4の上方の空間と振動膜4の下方の空間とはそれぞれ外部に開放されている。各々の振動膜4は、上方の空間と下方の空間とを連通させる少なくとも1つの開口部4cを有しており、開口部4cは開放されている。各々の振動膜4は、ヤング率が100MPa以上10GPa以下の樹脂からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が多角形である複数の区画の輪郭を形成する壁部と、複数の前記区画内にそれぞれ位置する振動膜と、を含み、
各々の前記振動膜は、当該振動膜が位置する前記区画の平面形状である多角形の各辺に繋がっており、
前記壁部の高さ方向において、前記振動膜は前記壁部の上端部と下端部との間に位置し、前記振動膜の上方の空間と前記振動膜の下方の空間とはそれぞれ外部に開放されており、
各々の前記振動膜は、前記上方の空間と前記下方の空間とを連通させる少なくとも1つの開口部を有しており、前記開口部は開放されており、
各々の前記振動膜は、ヤング率が100MPa以上10GPa以下の樹脂からなることを特徴とする、振動低減部材。
【請求項2】
前記壁部は、ヤング率が0.1MPa以上100MPa未満の樹脂からなる、請求項1に記載の振動低減部材。
【請求項3】
前記壁部の高さは5mm以上100mm以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項4】
前記壁部の厚さは0.5mm以上10mm以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項5】
前記振動膜の、前記壁部の高さ方向の寸法は0.1mm以上1.0mm以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項6】
前記壁部と前記振動膜の固有振動数は10Hz以上3000Hz以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項7】
前記壁部の固有振動数と前記振動膜の固有振動数との差は200Hz以下である、請求項6に記載の振動低減部材。
【請求項8】
前記区画の平面形状である多角形の各辺はそれぞれ5mm以上100mm以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項9】
前記壁部は、互いに平行に延びる複数の第1の壁部と、前記第1の壁部と直交する方向に沿って互いに平行に延びる複数の第2の壁部と、を含み、前記第1の壁部および前記第2の壁部によって仕切られている前記区画の平面形状は四角形であり、前記振動膜は、互いに直交する1対の梁部からなる十字型の平面形状を有している、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項10】
前記1対の梁部のうちの一方の梁部は、前記区画内において互いに対向する前記第1の壁部同士を繋いでおり、他方の梁部は、前記区画内において互いに対向する前記第2の壁部同士を繋いでおり、前記一方の梁部の長手方向の中間部分と前記他方の梁部の長手方向の中間部分とが互いに接合されている、請求項9に記載の振動低減部材。
【請求項11】
前記壁部と前記振動膜とが一体成形されている、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項12】
前記壁部と前記振動膜とは熱圧着により互いに接合されている、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動低減部材に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な乗物や機器において振動の伝達を遮断するための振動低減部材が用いられている。特許文献1の制振構造体は、柱や壁で区画された内部空間を形成する骨格部と、骨格部に一端が連結されて内部空間内に延在する柱状の伝導部と、内部空間内にあり、伝導部に連結されているとともに伝導部に対して拡張している球状の励振部と、少なくとも励振部に接触する流動材と、を備えている。この制振構造体の骨格部と伝導部と励振部とは一体化されている。
【0003】
特許文献2の振動低減装置は、車体に装着されて一定空間を一定領域に区画する十字形状のフレームと、フレームによって区画される各領域のコーナー部に構成され、それぞれの固有振動数を有するように構成されて車体からフレームを通じて伝達される振動を遮断する振動子と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6911592号公報
【特許文献2】特開2020-91481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制振構造体では、骨格部の内部空間に流動材が充填されており、骨格部の振動は、骨格部に接触する流動材によって吸収されて減衰する。しかし、特許文献1では骨格部および流動材の材料や寸法や固有振動数については決められていない。すなわち、特許文献1は、特定の周波数の振動を重点的に抑えるものではない。また、特許文献1では、大きな振幅で振動し流動材と接触および衝突する球状の励振部を形成するとともに、内部空間に流動材を充填して漏出しないように保持するため、制振構造体の製造が非常に煩雑である。
【0006】
特許文献2の振動低減装置は、フレームによって区画される各領域のコーナー部に振動子を有している。フレームは振動低減に実質的に寄与せず、振動子のみによって振動を遮断する構成である。しかし、より大きな振動低減効果が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、特定の周波数の振動を効率的に大幅に低減することができ、製造が容易な振動低減部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動低減部材は、平面形状が多角形である複数の区画の輪郭を形成する壁部と、複数の前記区画内にそれぞれ位置する振動膜と、を含み、各々の前記振動膜は、当該振動膜が位置する前記区画の平面形状である多角形の各辺に繋がっており、前記壁部の高さ方向において、前記振動膜は前記壁部の上端部と下端部との間に位置し、前記振動膜の上方の空間と前記振動膜の下方の空間とはそれぞれ外部に開放されており、各々の前記振動膜は、前記上方の空間と前記下方の空間とを連通させる少なくとも1つの開口部を有しており、前記開口部は開放されており、各々の前記振動膜は、ヤング率が100MPa以上10GPa以下の樹脂からなることを特徴とする。
前記壁部は、ヤング率が0.1MPa以上100MPa未満、好ましくは1MPa以上100MPa未満、より好ましくは5MPa以上100MPa未満の樹脂からなるものであってよい。本発明の振動低減部材が防振部材として使用される時に壁部が支持体として機能するために、壁部は上記のヤング率を有することが望ましい。前記振動膜は、前述した通りヤング率が100MPa以上10GPa以下の樹脂からなり、より好ましくは800MPa以上10GPa以下、さらに好ましくは1GPa以上10GPa以下の樹脂からなるものであってよい。これは、壁部がその好ましい範囲のヤング率を有すると壁部の固有振動数の範囲が限定されるため、壁部の固有振動数に近い固有振動数を振動膜が有するように振動膜のヤング率が設定されることが望ましいからである。
前記壁部の高さは5mm以上100mm以下であってよい。
前記壁部の厚さは0.5mm以上10mm以下であってよい。
前記振動膜の、前記壁部の高さ方向の寸法は0.1mm以上1.0mm以下であってよい。
前記壁部と前記振動膜の固有振動数は10Hz以上3000Hz以下であってよい。
前記壁部の固有振動数と前記振動膜の固有振動数との差は200Hz以下であってよい。
前記区画の平面形状である多角形の各辺はそれぞれ5mm以上100mm以下であってよい。
前記壁部は、互いに平行に延びる複数の第1の壁部と、前記第1の壁部と直交する方向に沿って互いに平行に延びる複数の第2の壁部と、を含み、前記第1の壁部および前記第2の壁部によって仕切られている前記区画の平面形状は四角形であり、前記振動膜は、互いに直交する1対の梁部からなる十字型の平面形状を有していてよい。前記1対の梁部のうちの一方の梁部は、前記区画内において互いに対向する前記第1の壁部同士を繋いでおり、他方の梁部は、前記区画内において互いに対向する前記第2の壁部同士を繋いでおり、前記一方の梁部の長手方向の中間部分と前記他方の梁部の長手方向の中間部分とが互いに接合されていてよい。
前記壁部と前記振動膜とが一体成形されていてもよい。あるいは、前記壁部と前記振動膜とは熱圧着により互いに接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、特定の周波数の振動を効率的に大幅に低減することができ、製造が容易な振動低減部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の振動低減部材を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図2】(A)は
図1に示す振動低減部材を示す平面図、(B)はその振動低減部材の1つの区画を示す拡大平面図、(C)は1つの区画の拡大正面図である。
【
図3】(A),(B)は本発明の第1の実施形態の振動低減部材の変形例の1つの区画を示す拡大平面図である。
【
図4】(A)は本発明の第2の実施形態の振動低減部材を示す平面図、(B)はその振動低減部材の1つの区画を示す拡大平面図である。
【
図5】(A)は本発明の第3の実施形態の振動低減部材を示す平面図、(B)はその振動低減部材の1つの区画を示す拡大平面図である。
【
図6】(A)は比較例1の振動低減部材を示す平面図、(B)はその振動低減部材の1つの区画を示す拡大平面図である。
【
図7】(A)は比較例2の振動低減部材を示す平面図、(B)はその振動低減部材の1つの区画を示す拡大平面図である。
【
図8】(A)は比較例3の振動低減部材を示す平面図、(B)はその振動低減部材の1つの区画を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の振動低減部材1の一部を切り欠いて示す斜視図である。
図2(A)はその振動低減部材1を示す平面図、
図2(B)はその振動低減部材1の1つの区画2を示す拡大平面図、
図2(C)は1つの区画2の拡大正面図である。本実施形態の振動低減部材1は、複数の区画(単位構造)2の輪郭を形成する壁部3と、複数の区画2内にそれぞれ位置する複数の振動膜4と、を含む。壁部3によって仕切られている各区画2は、平面形状が多角形である。区画2の平面形状である多角形の各辺はそれぞれ5mm以上100mm以下であることが好ましい。具体的には、本実施形態の振動低減部材1の壁部3は、互いに平行に延びる複数の第1の壁部3aと、第1の壁部3aと直交する方向に沿って互いに平行に延びる複数の第2の壁部3bと、を含む格子状であり、第1の壁部3aおよび第2の壁部3bによって仕切られている区画2の平面形状は正方形である。
【0012】
各々の振動膜4は、その振動膜4が位置する区画2の平面形状である多角形(
図1~2に示す例では正方形)の各辺に繋がっている。壁部3の高さ方向において、振動膜4は壁部3の上端部と下端部との間の中間部に位置し、振動膜4の上方の空間5aと振動膜4の下方の空間5bとはそれぞれ外部に開放されている。各々の振動膜4は、上方の空間5aと下方の空間5bとを連通させる少なくとも1つの開口部4cを有している。開口部4cは、流動材などの他部材によって塞がれることなく開放されている。振動膜4は平坦な膜状であってよい。
【0013】
図1~2に示す例では、振動膜4は、互いに直交する1対の梁部4a,4bからなる十字型の平面形状を有している。1対の梁部のうちの一方の梁部4aは、区画2内において互いに対向する第1の壁部3a同士を繋いでおり、他方の梁部4bは、区画2内において互いに対向する第2の壁部3b同士を繋いでおり、一方の梁部4aの長手方向の中間部分と他方の梁部4bの長手方向の中間部分とが互いに接合されている。ただし、振動膜4は、1対の梁部4a,4bからなる十字型の平面形状を有する構成に限定されない。
【0014】
この振動低減部材1の壁部3は、ヤング率が0.1MPa以上100MPa未満、好ましくは1MPa以上100MPa未満、より好ましくは5MPa以上100MPa未満の樹脂(例えば天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)などの各種加硫ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、エチレン―酢酸ビニル共重合体などの各種熱可塑性エラストマーなど)からなることが好ましい。壁部3の高さは5mm以上100mm以下であることが好ましく、壁部3の厚さ(板厚)は0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0015】
この振動低減部材1の振動膜4は、ヤング率が100MPa以上10GPa以下、好ましくは800MPa以上10GPa以下、より好ましくは1GPa以上10GPa以下の樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PLA樹脂(ポリ乳酸樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)など)からなることが好ましい。振動膜4の、壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)は0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0016】
壁部3と振動膜4の具体的な材料、形状、寸法は、壁部3と振動膜4がそれぞれ所望の固有振動数を有するように設定されている。具体的には、壁部3と振動膜4の固有振動数は、特に低減することが求められる振動の周波数と概ね一致するように設定され、例えば10Hz以上3000Hz以下であることが好ましい。そして、壁部3の固有振動数と振動膜4の固有振動数との差は200Hz以下であることが好ましい。
【0017】
壁部3と振動膜4とは、射出成形等により一体成形可能である。しかし、壁部3と振動膜4とを別々に形成した後に、熱圧着等により互いに接合して振動低減部材1を製造することも可能である。その場合、例えば、図示しないが、壁部3をその高さ方向の上部と下部とに分けて別々に成形し、その壁部3の上部と下部とを、別途成形された振動膜4を間に挟んで重ね合わせて、壁部3の上部と振動膜4と壁部3の下部とを互いに接着することによって、振動低減部材1を製造することができる。振動膜4の開口部4c内や、振動膜4の上方の空間5aおよび下方の空間5bに、他の部材が配置されたり充填されたりすることはないため、非常に容易に振動低減部材1を製造することができる。
【0018】
以上説明した構成の振動低減部材1は、例えば、自動車等の乗物や建物等の内部の平面部材(図示しないが、例えば鉄板やトリムなど)の上に載置され、防振ゴム、防音材等として用いられる。また、この構成の振動低減部材1は、洗濯機、冷蔵庫、食器洗浄機、電子レンジ、エアコンなど家電製品の内部に設置され、モーターや圧縮機などの回転体から伝搬される振動を減少させることができる。また、この構成の振動低減部材は、室外機やモーターなどの振動源と床との間に設置される防振パッドとして用いることができる。この振動低減部材1では、壁部3の固有振動数と振動膜4の固有振動数とが近いため、平面部材の振動に合わせて壁部3が共振する際に、振動膜4も同時に共振し、壁部3および平面部材の振動が減衰する。このように、壁部3と振動膜4とがともに作用して、振動低減部材1が載置された平面部材の振動が低減する。
【0019】
次に、本発明の第1の実施形態の振動低減部材1の変形例について説明する。
図3(A),3(B)はそれぞれ、振動低減部材1の変形例の1つの区画2を示す拡大平面図である。
図3(A)に示す変形例では、区画2内において隣接する第1の壁部3aと第2の壁部3bとをそれぞれ繋ぐ4つの梁部からなる振動膜6を有している。
図3(B)に示す変形例では、区画2内において全ての壁部3の全体を繋ぐ振動膜7を有しており、この振動膜7に円形の4つの開口部7aが設けられている。
図3(A),3(B)に示す振動膜6,7の、壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)はいずれも、
図1~2に示す振動膜4と同様に0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。その他の構成は
図1,2に示す例と同様であるため、説明を省略する。
図3(A),3(B)に示す変形例でも、壁部3と振動膜6,7との作用により、振動低減部材1が載置された部材の振動が低減する。そして、振動膜6,7の開口部6a,7a内や、振動膜6,7の上方の空間および下方の空間には、他の部材が配置されたり充填されたりすることはない。壁部3と振動膜6,7とは、射出成形等により一体成形することも、別々に形成した後に熱圧着等により互いに接合することもできる。従って、振動低減部材1の製造は容易である。
【0020】
[第2の実施形態]
図4(A)は本発明の第2の実施形態の振動低減部材8を示す平面図、
図4(B)はその振動低減部材8の1つの区画9を示す拡大平面図である。本実施形態の振動低減部材8の壁部10は、平面形状が三角形である複数の区画9の輪郭をそれぞれ形成している。すなわち、壁部10によって仕切られている複数の区画9のそれぞれの平面形状が三角形である。振動低減部材8は、各区画9の平面形状である三角形の中心と各辺とをそれぞれ繋ぐ3つの梁部からなる振動膜11を有している。振動膜11は開口部11aを有している。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
[第3の実施形態]
図5(A)は本発明の第3の実施形態の振動低減部材12を示す平面図、
図5(B)はその振動低減部材12の1つの区画13を示す拡大平面図である。本実施形態の振動低減部材12の壁部14は、平面形状が六角形である複数の区画13の輪郭をそれぞれ形成している。すなわち、壁部14によって仕切られている複数の区画13のそれぞれの平面形状が六角形であり、ハニカム構造が構成されている。振動低減部材12は、各区画13の平面形状である六角形の中心と各辺とをそれぞれ繋ぐ6つの梁部からなる振動膜15を有している。振動膜15は開口部15aを有している。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0022】
図5~6に示す第2~3の実施形態でも、壁部10,14と振動膜11,15との作用により、振動低減部材8,12が載置された部材の振動が低減する。そして、振動膜11,15の開口部11a,15a内や、振動膜11,15の上方の空間および下方の空間には、他の部材が配置されたり充填されたりすることはない。壁部10,14と振動膜11,15とは、射出成形等により一体成形することも、別々に形成した後に熱圧着等により互いに接合することもできる。従って、振動低減部材8,12の製造は容易である。
【0023】
以上説明した通り、本発明の振動低減部材1,8,12は、単純な構造であり作製が容易であって、かつ振動の低減が可能である。特に、壁部3,10,14と振動膜4,11,15の材料や形状や寸法を調整して、それらの固有振動数を、振動を低減することが望まれる周波数(例えば10Hz以上3000Hz以下の周波数)に近づけることにより、特定の周波数帯の振動を重点的に低減することができる。従って、自動車等の乗物や建物において、それらの用途や特性に応じた適切な防振効果や遮音効果を効率良く発揮することができる。また、自動車等の乗物や建物等の部材上に振動低減部材1,8,12を固定することなく載置するだけで、防振効果や遮音効果を発揮することができるため、設置が容易であるとともに、設置場所の制約が小さい。
【実施例0024】
本発明の具体的な実施例と比較例について以下に説明する。
[実施例1]
本発明の実施例1の振動低減部材1は、
図1~2に示す第1の実施形態と同じ構造である。壁部3はスチレン系エラストマーからなり、厚さ(板厚)は2mmで高さは40mmである。この壁部3が構成する各区画2の平面形状は、1辺が35mmの正方形である。この壁部3のヤング率は50MPaであり、固有振動数は990Hzである。実施例1の振動膜4はABS樹脂からなり、壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)は0.6mmである。この振動膜4は、互いに直交する1対の梁部4a,4bからなる十字型の平面形状を有している。振動膜4のヤング率は2.2GPaであり、固有振動数は920Hzである。この振動低減部材1の壁部3の振動は、後述する比較例1の振動低減部材に比べて5dB以上低減した(良好な振動低減効果が得られた)。
【0025】
[比較例1]
図6に示す比較例1の振動低減部材は、実施例1の振動低減部材1と同じ壁部3のみを有し、振動膜を持たない構成である。比較例1の振動低減部材は振動低減効果が乏しい。この比較例1の壁部3の振動を基準にして、それよりも振動が5dB以上低減した場合を、振動低減効果が良好であるとみなす。比較例1の壁部3の振動に対する振動の低減量が5dB未満である場合、振動低減効果が乏しいと判断する。
【0026】
[実施例2]
本発明の実施例2の振動低減部材1は、
図1~2に示す第1の実施形態と同じ構造である。実施例2の振動低減部材1は、実施例1の壁部3と同じ壁部3を有している。実施例2の振動膜4は、壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)が0.8mmであって固有振動数が950Hzであり、それ以外の構成は実施例1の振動膜4と同じである。実施例2では、振動膜4の固有振動数が壁部3の固有振動数に近く、良好な振動低減効果が得られた。
【0027】
[比較例2]
図7に示す比較例2の振動低減部材は、実施例1の振動低減部材1と同じ壁部3を有し、壁部3に仕切られている各区画2内にそれぞれ、平面形状が四角形の枠状部材16を有している。枠状部材16は壁部に接合されておらず、振動低減の対象である部材等の上に壁部3とともに載置される。枠状部材16はABS樹脂からなり、壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)は0.6mmである。枠状部材16のヤング率は2.2GPaである。この振動低減部材の振動低減効果は乏しい。
【0028】
[比較例3]
図8に示す比較例3の振動低減部材は、実施例1の振動低減部材1と同じ壁部3を有している。比較例3の振動膜17は、各区画2の壁部3の2組の対向する各辺のうちの1組を接続する1本の梁状であって平面形状が長方形状であり、もう1組の辺には接触していない。つまり、比較例3の振動膜17は、各区画2の平面形状である四角形の4辺のうちの互いに対向する2辺のみを接続している。比較例3の振動膜は壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)が0.6mmであって固有振動数が800Hzであり、ABS樹脂からなる。比較例3の振動低減部材の振動低減効果は乏しい。
【0029】
[比較例4]
比較例4の振動低減部材は、
図1~2に示す第1の実施形態と実質的に同じ構造であるが、振動膜4の、壁部3の高さ方向の寸法(膜厚)は0.6mmであってヤング率は20MPaであり、その固有振動数は150Hzである。それ以外の構成は実施例1の振動低減部材1と同じである。比較例4の振動膜4は、互いに直交する1対の梁部からなる十字型の平面形状を有しているが、固有振動数が、壁部3の固有振動数から大きく離れている。この比較例4の振動低減部材の振動低減効果は乏しい。
【0030】
[結果]
前述した本発明の実施例1~2と比較例1~4とを対比すると、本発明の振動低減部材1によって振動低減効果が向上することが判る。特に、実施例1~2と比較例2~3とを対比すると、実施例1,2の振動低減部材1では、振動膜4が各壁部3に繋がっていることにより、良好な振動低減効果が得られることが判る。そして、実施例1~2と比較例4とを対比すると、実施例1,2の振動低減部材1では、振動膜4のヤング率が大きくて振動膜4が硬く、かつ振動膜4の固有振動数と壁部3の固有振動数とが近いため、特に良好な振動低減効果が得られることが判る。