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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155619
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】制御装置、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070482
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名倉 徹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA06
5H181BB04
5H181BB13
5H181FF10
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL09
5H181MA48
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】車両の支援効率を向上させる。
【解決手段】制御装置1は、通信回線2を通じて接続された車両V1に対する遠隔支援中に、通信回線を通じて接続された車両V2から遠隔支援要求を受け付けた場合、車両V1及び車両V2の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間Tと遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、車両V1に対する遠隔支援を中断して車両V2に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、車両V1及び車両V2に対する遠隔支援を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、
前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う制御部(10)、
を備えた制御装置(1)。
【請求項2】
前記割り込み制御を行った場合と、前記割り込み制御を行うことなく、前記第1車両に対する遠隔支援の終了後に前記第2車両に対する遠隔支援を開始した場合とについて、前記第1車両及び前記第2車両の各々における、前記目標支援時間に対する前記予測支援時間の割合から得られる値によって表される評価値を算出する算出部(13)を備え、
前記制御部は、前記算出部によってそれぞれ算出した、前記割り込み制御を行った場合の評価値である第1評価値(C)と、前記割り込み制御を行わなかった場合の評価値である第2評価値(C)を参照し、前記第2評価値よりも前記第1評価値が小さい場合は前記割り込み制御を実行し、前記第1評価値が前記第2評価値以上である場合は前記割り込み制御を行わないように前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1評価値の算出に用いる前記予測支援時間に、遠隔支援の状況を監視するオペレータが、遠隔支援の対象車両の走行情報を認知してから前記遠隔支援の対象車両に遠隔指示を行うまでの時間である予測指示時間(T)と、遠隔支援の対象車両が遠隔支援要求を送信してから制御装置において遠隔支援の準備が整うまでの時間である予測事前時間(T)と、が含まれる
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記予測事前時間に、前記制御部が遠隔支援の対象車両を切り替えるために要する時間である切替対応時間(T)が含まれる
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1車両における前記予測事前時間に、前記第2車両から遠隔支援要求を受け付けるまでに前記第1車両に対して既に実施済みの遠隔支援に費やした時間である現在支援時間(TB1)と、前記第2車両の遠隔支援に要する時間である支援時間(TV2)と、が含まれ、
前記第2車両における前記予測事前時間に、前記第2車両が遠隔支援要求を送信してから前記制御部が前記第2車両に対して割り込み制御を行うと判定するまでの待ち時間である現在待ち時間(TW2)が含まれる
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記評価値が、前記第1車両及び前記第2車両の各々における前記割合の和によって表される
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記割合が1未満である場合、前記割合を1とする
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記評価値が、前記第1車両及び前記第2車両の各々における、前記目標支援時間に対する前記予測支援時間の超過時間の和によって表される
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1車両が運行することによって前記第1車両が周囲に与える影響度合いに応じて、前記第1車両に対する前記目標支援時間を補正すると共に、前記第2車両が運行することによって前記第2車両が周囲に与える影響度合いに応じて、前記第2車両に対する前記目標支援時間を補正する
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第1車両及び前記第2車両がそれぞれ周囲に与える影響度合いに、前記第1車両又は前記第2車両のうち着目する車両の安全性に関する影響度合い、前記着目する車両が走行する道路における交通流への影響度合い、及び前記着目する車両に乗車する乗客への影響度合いの少なくとも1つが含まれる
請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1車両に対して前記割り込み制御を行わないと判定した場合、前記割り込み制御を行うか否か再度判定する制御を行う
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記割り込み制御を行わないと判定した後、前記第2車両に関する状況が変化した場合に、前記割り込み制御を行うか否か再度判定する制御を行う
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果をオペレータに通知すると共に、前記オペレータからの指示に従って前記割り込み制御を行うか否かを最終的に決定する制御を行う
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、
前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う処理をコンピュータ(3)に実行させる制御プログラム(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の自動運転車両から対象車両を特定し、対象車両周辺の交通状況に基づいて対象車両の遠隔支援に係る作業時間及び優先度を算出し、算出結果から決定した対象車両に対する処理順序に従って、遠隔支援の作業をオペレータに割り当てる制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-185279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした制御装置では、特定の車両の遠隔支援中であっても、より優先度の高い車両から遠隔支援要求を受け付けた場合、特定の車両に対する遠隔支援を中断し、遠隔支援の対象を遠隔支援要求を行った車両に切り替える割り込み処理を行うことになる。
【0005】
したがって、他の車両よりも優先度の低い車両では、先に遠隔支援要求を行ったにもかかわらず、より優先度の高い車両に対する遠隔支援が終了するまで制御装置からの指示を待ち続ける状況が発生することがある。その結果、車両全体から見た場合の支援効率が低下することがあった。
【0006】
本開示は、より優先度の高い車両から遠隔支援を行う場合と比較して、車両の支援効率を向上させることができる制御装置、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の制御装置(1)は、通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う制御部(10)を備える。
【0008】
本開示の制御プログラム(11)は、通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う処理をコンピュータ(3)に実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より優先度の高い車両から遠隔支援を行う場合と比較して、車両の支援効率を向上させることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】制御装置の構成例を示す図である。
図2】割り込み処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3】割り込み処理による割り込み制御の一例を示す図である。
図4】優先度の高い車両から順に遠隔支援を行った場合の割り込み制御の一例を示す図である。
図5】遠隔支援要求の受付順に従って遠隔支援を行った場合の一例を示す図である。
図6】割り込みコスト及び継続コストの算出にmax演算子を用いなかった場合における割り込み制御の一例を示す図である。
図7】保留遠隔支援要求が存在する場合に実行される割り込み制御の再判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】オペレータの指示に基づいて実行される割り込み処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】別のオペレータに遠隔支援要求を担当してもらうことができる割り込み処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、制御装置1の構成例を示す図である。制御装置1は、制御部10、通信部12、及び算出部13の各機能部と、記憶装置16を備える。制御部10、通信部12、算出部13、及び記憶装置16は、それぞれバス17を介して相互に接続され、必要に応じて各種情報を授受する。
【0013】
通信部12には通信回線2が接続されており、通信部12は、予め定めた通信プロトコルに従って通信回線2に接続された車両Vと無線を用いたデータ通信を行う。制御装置1は、通信部12を経由して車両Vとデータ通信を行うことによって、車両Vの遠隔支援を行う。
【0014】
図1に示す例では車両V1、車両V2、及び車両V3が通信回線2に接続されているが、制御装置1が遠隔支援を行う車両Vの台数に制約はなく、制御装置1は複数の車両Vに対して遠隔支援を行う。なお、車両V1、車両V2、及び車両V3を区別して説明する必要がない場合、車両V1、車両V2、及び車両V3を総称して「車両V」と表す。
【0015】
例えば制御装置1が一方の車両Vに対して遠隔支援を実行している途中で、他の車両から遠隔支援の実行を求める遠隔支援要求を受け付けた場合、算出部13は、割り込み制御を行うか否かを判定するために用いる評価値を算出する。
【0016】
割り込み制御とは、一方の車両Vに対して実行している遠隔支援を中断した上で、後から遠隔支援要求を送信してきた他の車両Vに対して遠隔支援を実行し、他の車両Vに対する遠隔支援が終了した後に、遠隔支援を中断した車両Vに対する遠隔支援を再開する制御をいう。なお、算出部13が算出する評価値の具体例については後ほど詳細に説明する。
【0017】
制御部10は、算出部13が算出した評価値を参照して、割り込み制御を行うか否かを判定し、車両Vに対する遠隔支援を行う。
【0018】
こうした制御部10は、プロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)10A、不揮発性メモリ10B、及びRAM(Random Access Memory)10Cを備える。不揮発性メモリ10Bには、CPU10Aが車両Vの遠隔支援を行うために読み込む制御プログラム11を含んだ各種のプログラム、及びCPU10Aが遠隔支援を行う上で参照する各種パラメータが予め記憶されている。RAM10Cは、CPU10Aの一時的な作業領域として使用される。すなわち、制御部10を含む制御装置1は、コンピュータ3を用いて構成される。
【0019】
通信部12には、オペレータ端末4が有線接続される。オペレータ端末4は、制御装置1を操作するオペレータに対して、制御装置1とのマンマシンインターフェースを提供する装置である。オペレータ端末4には、例えば車両Vに関する状況、車両Vからの遠隔支援要求の受付、及び車両Vに対する遠隔支援の内容のように、車両Vの遠隔支援に関する各種情報が表示される。また、オペレータ端末4は、オペレータによる操作入力を取得し、制御装置1に送信する。図1に示す構成例では、通信部12に2台のオペレータ端末4が接続されているが、通信部12に接続されるオペレータ端末4の台数に制約はない。
【0020】
車両Vに関する状況とは、例えば車両情報、道路属性、及び交通情報等によって表される車両V自体の状況と車両V周辺の状況とを併せ持った情報である。車両情報には、例えば営業用車両であるか自家用車両であるかといった車両Vの種類、車両Vの位置、速度、加速度、ステアリングの操作角、ブレーキの踏み込み量、及び車両V内部の画像といった車両Vの走行状態に関する情報が含まれる。道路属性には、例えば車両Vが走行している道路の地図情報、制限速度等の規制情報、曲率、横断歩道の位置、車両Vによって撮影された道路の画像、及び車線数といった車両Vが走行している道路に関する情報が含まれる。交通情報には、車両V周囲に存在する人や他の車両Vといった各種移動体の位置、進行方向、及び速度といった車両V周囲の交通流に関する情報が含まれる。以降では、車両Vに関する状況を表す各種情報を総称して「走行情報」という。
【0021】
オペレータは、例えば遠隔支援要求を送信してきた車両Vが撮影した画像や車両Vに関する状況を監視しながら、制御装置1による車両Vに対する遠隔支援が安全に行われているかを確認する。オペレータは、遠隔支援が安全に行われるように制御装置1に指示を出すことがある。
【0022】
記憶装置16は、例えば、走行情報、遠隔支援要求に対する割り込み制御の可否結果、遠隔支援を行った位置を表す支援地点、遠隔支援の内容、及び遠隔支援を行うのに要した時間等を日時と共に車両V毎に対応付けた遠隔支援履歴情報18を記憶する。遠隔支援履歴情報18は、制御装置1が車両Vの遠隔支援を行う毎に制御部10によって記憶装置16に記憶される。
【0023】
また、後ほど説明するように、記憶装置16は、割り込み制御の可否を判定する場合に用いる参考情報19を記憶する。
【0024】
なお、制御装置1は必ずしも記憶装置16を備える必要はなく、記憶装置16が通信回線2に接続されていてもよい。この場合、制御装置1は通信部12を介して、記憶装置16に記憶される遠隔支援履歴情報18及び参考情報19の参照及び更新を行う。
【0025】
次に、制御装置1の作用について説明する。図2は、制御装置1が何れかの車両Vに対して遠隔支援を実行している途中に、他の車両Vから遠隔支援要求を受け付けた場合に実行される割り込み処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御装置1のCPU10Aは、不揮発性メモリ10Bに記憶される制御プログラム11を読み込み、割り込み処理を実行する。なお、記憶装置16には、制御装置1がこれまでに行った遠隔支援に関する遠隔支援履歴情報18と参考情報19が予め記憶されているものとする。
【0026】
ここでは、車両V1に対する遠隔支援中に、車両V2から遠隔支援要求を受け付けた場合を例にして、本開示に係る割り込み処理について説明する。車両V1は第1車両の一例であり、車両V2は第2車両の一例である。
【0027】
まず、ステップS10において、制御部10は、車両Vに対してそれぞれ目標支援時間を設定する。目標支援時間とは、制御装置1が遠隔支援要求を受け付けてから遠隔支援を終了するまでの目標時間を規定した時間である。すなわち、制御部10では、各々の車両Vの遠隔支援に要する時間ができるだけ目標支援時間以内に収まるような遠隔支援を行う。
【0028】
目標支援時間は、車両Vから要求された遠隔支援の内容に応じて予め定められている時間である。例えば車両Vがバスである場合、車両Vがバス停から発車する際の遠隔支援では乗客の乗り降りに要する時間が必要になるため、一例として目標支援時間は60秒に設定される。一方、交差点の手前で停車した車両Vが交差点から発車する際の遠隔支援では、車両Vから乗り降りする人はいないため、バス停から発車する際の目標支援時間よりも短い20秒に設定される。
【0029】
また、バス停からの発車に時間を要したとしても、理由なく他の車両Vの走行を妨害することにはならないが、交差点からの発車に時間を要してしまうと、後続する車両Vの走行を妨害してしまうことになる。したがって、バス停からの発車に対する遠隔支援の優先度は、交差点での発車に対する遠隔支援の優先度よりも低く設定される。
【0030】
更に、遠隔支援の内容に応じて見守り時間Tが設定されている。見守り時間Tとは、車両Vが指示通りに動作したかをオペレータが確認するために要する時間である。制御装置1は、見守り時間Tが経過した後に次の車両Vの遠隔支援を開始する。なお、車両V毎の見守り時間Tを区別して説明する場合、車両V1の見守り時間Tを「見守り時間TQ1」、車両V2の見守り時間Tを「見守り時間TQ2」、及び車両V3の見守り時間Tを「見守り時間TQ3」のように表す。
【0031】
こうした遠隔支援の内容と、目標支援時間、優先度、及び見守り時間Tとを対応付けた情報が参考情報19である。制御部10は、記憶装置16に記憶された参考情報19を参照して、遠隔支援の内容から目標支援時間を設定する。
【0032】
以降では、車両V1の目標支援時間を目標支援時間TA1、車両V2の目標支援時間を目標支援時間TA2、及び車両V3の目標支援時間を目標支援時間TA3と表す。目標支援時間TA1、目標支援時間TA2、及び目標支援時間TA3を区別して説明する必要がない場合、「目標支援時間T」と表す。
【0033】
ステップS20において、算出部13は、制御装置1が実際に車両Vの遠隔支援を行うのに要すると予測される時間、すなわち、予測支援時間を車両V毎に算出する。
【0034】
予測支援時間の内訳は、遠隔支援を実行中の車両V1と、新たに遠隔支援要求を行った車両V2とでは異なり、更に、割り込み制御を行うか否かによっても異なる。
【0035】
したがって、算出部13は、割り込み制御を行った場合と割り込み制御を行わなかった場合における車両V1のそれぞれの予測支援時間と、割り込み制御を行った場合と割り込み制御を行わなかった場合における車両V2のそれぞれの予測支援時間を算出する。
【0036】
割り込み制御を行った場合の車両V1の予測支援時間は、車両V1の現在支援時間TB1と、切替対応時間Tと、車両V2の支援時間TV2と、車両V1の予測指示時間TX1との和によって表される。
【0037】
現在支援時間TB1とは、車両V2から遠隔支援要求を受け付けるまでに車両V1の遠隔支援に対して既に費やした時間である。算出部13は、車両V1から遠隔支援要求を受け付けてから、車両V2から遠隔支援を受け付けるまでの時間を現在支援時間TB1として算出する。
【0038】
切替対応時間Tとは、制御部10が遠隔支援の対象車両を切り替えるために要する時間である。切替対応時間Tには、例えば制御部10が車両V1に対する遠隔支援を中断するための処理を行う時間が含まれる。算出部13は、例えば車両V1に対する遠隔支援の内容と遠隔支援の進行度合いから切替対応時間Tを算出する。具体的には、算出部13は、遠隔支援の内容と遠隔支援の進行度合いの組み合わせに対して切替対応時間Tを各々対応付けた切替対応時間テーブル(図示省略)を参照して、切替対応時間Tを算出すればよい。切替対応時間テーブルは例えば記憶装置16に予め記憶されている。
【0039】
支援時間TV2とは、車両V2の遠隔支援に要する時間、すなわち、割り込んできた車両V2の遠隔支援を行うことにより、割り込まれた車両V1が制御装置1による遠隔支援が再開されるまで待機する時間である。算出部13は、車両V2から遠隔支援要求を受け付けた際の遠隔支援要求の発生時間、車両V2の支援地点、車両V2に対する遠隔支援の内容、及び車両V2の走行情報と類似する内容を有する遠隔支援履歴情報18を参照する。その上で、算出部13は、類似する遠隔支援履歴情報18と対応付けられている遠隔支援を行うのに要した時間、すなわち、実績支援時間を用いて支援時間TV2を算出する。
例えば、類似する遠隔支援履歴情報18が複数存在する場合、算出部13は類似する遠隔支援履歴情報18と対応付けられている各々の実績支援時間の平均値を支援時間TV2とすればよい。また、支援時間TV2が予想よりも長くなっても困らないように、算出部13は類似する遠隔支援履歴情報18と対応付けられている各々の実績支援時間のうち、最も長くかかった実績支援時間を支援時間TV2にしてもよい。
【0040】
予測指示時間TX1とは、オペレータが車両V1の走行情報を認知してから、制御装置1に対して遠隔指示を行うまでの時間、すなわち、オペレータの応答時間の予測値である。算出部13は、車両V1に対して遠隔支援を行う際の時間、車両V1の支援地点、車両V1に対する遠隔支援の内容、及び車両V1の走行情報と類似する内容を有する遠隔支援履歴情報18を参照する。その上で、算出部13は、類似する遠隔支援履歴情報18と対応付けられているオペレータの応答時間、すなわち、実績応答時間を用いて予測指示時間TX1を算出する。例えば、類似する遠隔支援履歴情報18が複数存在する場合、算出部13は類似する遠隔支援履歴情報18と対応付けられている各々の実績応答時間の平均値を予測指示時間TX1とすればよい。
【0041】
現在支援時間TB1、切替対応時間T、及び支援時間TV2の合計時間は、車両V1が遠隔支援要求を制御装置1に送信してから、一旦中断した遠隔支援の再開に伴い、車両V1が指示に従った動作を開始するまでに要する準備時間である。このように、車両V1が遠隔支援要求を制御装置1に送信してから、制御装置1において車両V1に対する遠隔支援の準備が整うまでの期間を、車両V1における予測事前時間Tという。遠隔支援の準備が整った後、オペレータが制御装置1に対して遠隔指示を行い、制御装置1はオペレータからの遠隔指示に従って車両V1に対する遠隔支援を行う。
【0042】
割り込み制御を行った場合の車両V2の予測支援時間は、車両V2の現在待ち時間TW2と、切替対応時間Tと、車両V2の予測指示時間TX2との和によって表される。
【0043】
車両V2は、送信した遠隔支援要求に対して割り込み制御が行われなかった場合、遠隔支援要求を送信し続ける。
【0044】
したがって、現在待ち時間TW2とは、車両V2が遠隔支援要求を行ってから、制御部10が車両V2に対して割り込み制御を行うと判定するまでの時間を表す。このように、割り込み制御を行った場合の車両V2の予測支援時間には、割り込み制御の可否判定が行われるまでに待機した現在待ち時間TW2が含まれる。
【0045】
予測指示時間TX2とは、車両V2に対するオペレータの応答時間の予測値である。算出部13は、車両V1における予測指示時間TX1の算出方法と同じ方法により予測指示時間TX2を算出する。なお、予測指示時間TX1と予測指示時間TX2とを総称して「予測指示時間T」という。
【0046】
現在待ち時間TW2と切替対応時間Tの合計時間は、車両V2が遠隔支援要求を制御装置1に送信してから、制御装置1において車両V2に対する遠隔支援の準備が整うまでの期間であり、車両V2における予測事前時間Tという。
【0047】
割り込み制御を行わなかった場合の車両V1の予測支援時間は、車両V1の現在支援時間TB1と、車両V1の残存予測指示時間TRX1との和によって表される。
【0048】
残存予測指示時間TRX1とは、予測指示時間TX1から現在支援時間TB1を減じた予測指示時間TX1の残り時間である。
【0049】
割り込み制御を行わなかった場合の車両V2の予測支援時間は、車両V2の現在待ち時間TW2と、車両V1の残存支援時間TW1と、車両V2の予測指示時間TX2との和によって表される。
【0050】
車両V1の残存支援時間TW1とは、車両V2が遠隔支援要求を制御装置1に送信してから車両V1の遠隔支援が終了するまでの時間である。車両V1の残存支援時間TW1には車両V1の見守り時間TQ1が含まれる。
なお、算出部13は、目標支援時間T又は予測支援時間を特定する情報が不足している場合、目標支援時間T又は予測支援時間を構成する項目に対して、以降に説明する割り込みコストCが最も小さくなる値を設定して、目標支援時間T又は予測支援時間を算出してもよい。
【0051】
ステップS30において、算出部13は、ステップS10によって算出した目標支援時間TA1及び目標支援時間TA2と、ステップS20によって算出した、割り込み制御を行った場合における車両V1及び車両V2の予測支援時間を用いて割り込みコストCを算出する。割り込みコストCとは、制御装置1が割り込み制御を行った場合の車両Vに対する支援効率を表す評価値の一例である。車両Vに対する支援効率は、車両V1と車両V2に対する遠隔支援が各々の車両Vの目標支援時間T内に終了するか否かを表す度合い、すなわち、目標支援時間Tに対する予測支援時間の割合によって表される。
【0052】
したがって、割り込みコストCはその値が小さいほど、制御装置1が割り込み制御を行った場合の車両Vに対する支援効率が高いことを意味する。
【0053】
割り込みコストCは、例えば(1)式によって表される。
【0054】
【数1】
【0055】
(1)式において、CT1は、割り込み制御を行った場合における、車両V1の目標支援時間TA1に対する車両V1の予測支援時間の割合によって表される車両V1の割り込みコストである。CT2は、割り込み制御を行った場合における、車両V2の目標支援時間TA2に対する車両V2の予測支援時間の割合によって表される車両V2の割り込みコストである。
【0056】
なお、実数aと実数bに対するmax(a,b)は、実数aと実数bのうち、大きい方の実数を選択する演算子である。したがって、算出部13は、割り込みコストCT1が1未満であれば割り込みコストCT1を1に設定し、割り込みコストCT2が1未満であれば割り込みコストCT2を1に設定してから割り込みコストCを算出する。
【0057】
このように割り込みコストCT1と割り込みコストCT2の和によって表される割り込みコストCは、割り込み制御を行った場合の目標支援時間Tに対する予測支援時間の割合から得られる値によって表される第1評価値の一例である。
【0058】
ステップS40において、算出部13は、ステップS10によって算出した目標支援時間TA1及び目標支援時間TA2と、ステップS20によって算出した、割り込み制御を行わなかった場合における車両V1及び車両V2の予測支援時間を用いて継続コストCを算出する。継続コストCとは、制御装置1が割り込み制御を行わなかった場合の車両Vに対する支援効率を表す評価値の一例である。割り込みコストCと同様に、継続コストCはその値が小さいほど、制御装置1が割り込み制御を行わなかった場合の車両Vに対する支援効率が高いことを意味する。
【0059】
継続コストCは、例えば(2)式によって表される。
【0060】
【数2】
【0061】
(2)式において、CF1は、割り込み制御を行わなかった場合における、車両V1の目標支援時間TA1に対する車両V1の予測支援時間の割合によって表される車両V1の継続コストである。CF2は、割り込み制御を行わなかった場合における、車両V2の目標支援時間TA2に対する車両V2の予測支援時間の割合によって表される車両V2の継続コストである。算出部13は、継続コストCF1が1未満であれば継続コストCF1を1に設定し、継続コストCF2が1未満であれば継続コストCF2を1に設定してから継続コストCを算出する。
【0062】
このように継続コストCF1と継続コストCF2の和によって表される継続コストCは、割り込み制御を行わなかった場合の目標支援時間Tに対する予測支援時間の割合から得られる値によって表される第2評価値の一例である。
【0063】
既に説明したように、割り込みコストC及び継続コストCは、その値が小さいほど、車両Vに対する支援効率が高いことを意味する。すなわち、割り込みコストC及び継続コストCのうち、小さい値を示す方の割り込み状態を選択した方が、車両Vに対する支援効率が向上することになる。
【0064】
したがって、ステップS50において、制御部10は、ステップS30によって算出した割り込みコストCが、ステップS40によって算出した継続コストCよりも小さいか否かを判定する。割り込みコストCが継続コストCよりも小さい場合にはステップS60に移行する。
【0065】
この場合、割り込み制御を行わないよりも、割り込み制御を行った方が車両Vに対する支援効率が向上することになる。したがって、ステップS60において、制御部10はオペレータの遠隔指示に従った割り込み制御を行って、図2に示した割り込み処理を終了する。すなわち、制御部10は、現在実行中の車両V1に対する遠隔支援を中断して、車両V2に対する遠隔支援を開始し、車両V2に対する遠隔支援が終了した後に車両V1の遠隔支援を再開する。
【0066】
一方、ステップS50の判定処理によって割り込みコストCが継続コストC以上であると判定された場合、割り込み制御を行わなかった場合の車両Vに対する支援効率が、割り込み制御を行った場合の車両Vに対する支援効率以上になると考えられる。したがって、制御部10はステップS60の処理を実行することなく、図2に示した割り込み処理を終了する。すなわち、制御部10は、現在実行中の車両V1に対する遠隔支援をそのまま継続し、車両V1に対する遠隔支援が終了した後に車両V2に対する遠隔支援を開始する。
【0067】
図3は、図2に示した割り込み処理によって実行される割り込み制御の具体例を示す図である。制御装置1が、例えばバスである車両V1に対してバス停から発車するための遠隔支援を実行中の時刻Tに、別のバスである車両V2から、交差点から発車するための遠隔支援要求を受け付けたとする。
【0068】
この場合、車両V1がバス停から発車するための遠隔支援の目標支援時間TA1が60秒、車両V1の現在支援時間TB1が5秒、切替対応時間Tが10秒、及び車両V1の予測指示時間TX1が15秒であったとする。また、車両V2が交差点から発車するための遠隔支援の目標支援時間TA2が20秒、車両V2の支援時間TV2が目標支援時間TA2と同じく20秒、及び車両V2の予測指示時間TX2が10秒であったとする。また、車両V1がバス停から発車するための遠隔支援の見守り時間TQ1、及び車両V2が交差点から発車するための遠隔支援の見守り時間TQ2がそれぞれ5秒及び10秒であったとする。
【0069】
こうした状況において、車両V1の割り込みコストCT1は、(現在支援時間TB1+切替対応時間T+支援時間TV2+予測指示時間TX1)/目標支援時間TA1によって得られるため、割り込みコストCT1=(5+10+20+15)/60=5/6となる。また、車両V2の割り込みコストCT2は、(現在待ち時間TW2+切替対応時間T+予測指示時間TX2)/目標支援時間TA2によって得られるため、割り込みコストCT2=(0+10+10)/20=1となる。
【0070】
すなわち、車両V1と車両V2による割り込みコストCは(1)式により、割り込みコストC=max(5/6,1)+max(1,1)=2となる。
【0071】
一方、車両V1の継続コストCF1は、(現在支援時間TB1+残存予測指示時間TRX1)/目標支援時間TA1によって得られる。この場合の残存予測指示時間TRX1は、予測指示時間TX1から現在支援時間TB1を減じた予測指示時間TX1の残り時間であるから10秒となる。したがって、継続コストCF1=(5+10)/60=1/4となる。
【0072】
また、車両V2の継続コストCF2は、(現在待ち時間TW2+残存支援時間TW1+予測指示時間TX2)/目標支援時間TA2によって得られる。この場合の残存支援時間TW1は、残存予測指示時間TRX1と車両V1の見守り時間TQ1との和になるため、継続コストCF2=(0+15+10)/20=5/4となる。
【0073】
したがって、車両V1と車両V2による継続コストCは(2)式により、継続コストC=max(1/4,1)+max(5/4,1)=2.25となり、割り込みコストC<継続コストCとなる。
【0074】
したがって、図3に示した車両V2からの遠隔制御要求に対して、制御装置1は割り込み制御を行い、車両V1に対する遠隔支援を中断し、車両V2の遠隔支援を開始する。
【0075】
図3に示すように、車両V2に対する見守り時間TQ2が終了した後、制御装置1は中断した車両V1に対する遠隔支援を再開する。
【0076】
次に、制御装置1が車両V1に対する遠隔支援を再開してから10秒が経過した時刻Tに、今度は車両V3から、交差点から発車するための遠隔支援要求を受け付けた場合について検討する。車両V3は車両V2に代わる第2車両の一例である。したがって、車両V3の割り込みコストCT3は、車両V2の割り込みコストCT2と同じ式によって得られ、車両V3の継続コストCF3も車両V2の継続コストCF2と同じ式によって得られる。説明の便宜上、車両V3の現在待ち時間を「現在待ち時間TW3」、車両V3の予測指示時間を「予測指示時間TX3」と表す。
【0077】
車両V2の遠隔支援を優先して行ったため、車両V1では、車両V2から遠隔支援要求を受け付ける前の現在支援時間TB1である5秒、切替対応時間Tである10秒、車両V2の予測指示時間TX2である10秒、車両V2の見守り時間TQ2である10秒、及び車両V1に対する遠隔支援を再開して車両V3から遠隔支援要求を受け付けるまでの現在支援時間TB1である10秒を加算した45秒が既に経過している。
【0078】
したがって、この場合の車両V1の割り込みコストCT1は、割り込みコストCT1=(45+10+20+15)/60=3/2となる。また、車両V3の割り込みコストCT3は、目標支援時間TA3が20秒、現在待ち時間TW3が0秒、切替対応時間Tが10秒、及び予測指示時間TX3が10秒であるから、割り込みコストCT3=(0+10+10)/20=1となる。
【0079】
すなわち、車両V1と車両V3による割り込みコストCは(1)式により、割り込みコストC=max(3/2,1)+max(1,1)=2.5となる。
【0080】
一方、この場合の残存予測指示時間TRX1は、予測指示時間TX1(=15秒)から車両V3の遠隔支援要求を受け付ける前に既に実行した現在支援時間TB1(=10秒)を減じた予測指示時間TX1の残り時間であるから5秒となる。したがって、車両V1の継続コストCF1は、継続コストCF1=(45+5)/60=5/6となる。
【0081】
また、この場合の車両V1の残存支援時間TW1は、残存予測指示時間TRX1(=5秒)と車両V1の見守り時間TQ1(=5秒)との和(=10秒)になるため、車両V3の継続コストCF3は、継続コストCF3=(0+10+10)/20=1となる。
【0082】
したがって、車両V1と車両V3による継続コストCは(2)式により、継続コストC=max(5/6,1)+max(1,1)=2となり、割り込みコストC>継続コストCとなる。
【0083】
したがって、図3に示した車両V3からの遠隔制御要求に対して、制御装置1は割り込み制御を行うことなく車両V1に対する遠隔支援をそのまま継続し、車両V1に対する遠隔支援が終了してから車両V3の遠隔支援を開始する。
【0084】
その結果、制御装置1は、車両V1、車両V2、及び車両V3の何れの車両Vについても、要求された遠隔支援を目標支援時間T以内に終了させることができる。なお、目標支援時間Tに見守り時間Tは含まれない。なぜなら、見守り時間Tは制御装置1からの指示に伴う車両Vの動作を確認するための時間であり、見守り時間Tの開始までには制御装置1によって車両Vに対する指示が完了しているためである。
【0085】
一方、図4は、図3に示した条件と同じ条件の下で、制御装置1が図2に示した割り込み処理を行わずに、より優先度の高い車両Vから遠隔支援を行った場合の一例を示す図である。
【0086】
制御装置1が、車両V1に対してバス停から発車するための遠隔支援を実行中の時刻Tに、別のバスである車両V2から、交差点から発車するための遠隔支援要求を受け付けたとする。バス停からの発車に対する遠隔支援の優先度は、交差点からの発車に対する遠隔支援の優先度よりも低く設定されている。したがって、図3と同じく制御装置1は、車両V2からの遠隔制御要求に対して割り込み制御を行い、車両V1に対する遠隔支援を中断して車両V2の遠隔支援を開始する。
【0087】
更に、制御装置1が中断していた車両V1に対する遠隔支援を再開してから10秒が経過した時刻Tに、今度は車両V3から、交差点から発車するための遠隔支援要求を受け付けたとする。バス停からの発車に対する遠隔支援の優先度は、交差点からの発車に対する遠隔支援の優先度よりも低く設定されている。したがって、この場合には図3とは異なり、制御装置1は、車両V3からの遠隔制御要求に対して割り込み制御を行い、車両V1に対する遠隔支援を中断して車両V3の遠隔支援を開始する。制御装置1は、車両V3に対する見守り時間TQ3が終了した後、中断した車両V1に対する遠隔支援を再開する。
【0088】
その結果、車両V2及び車両V3については要求された遠隔支援を目標支援時間T以内に終了することができる。しかしながら、車両V1については要求された遠隔支援を目標支援時間TA1以内に終了することができず、図4の例では目標支援時間TA1を30秒超過することになる。
【0089】
一方、図5は、図3に示した条件と同じ条件の下で、制御装置1が図2に示した割り込み処理を行わずに、遠隔支援要求の受付順に従って遠隔支援を行った場合の一例を示す図である。
【0090】
この場合、制御装置1は車両V1、車両V2、及び車両V3の順に遠隔支援を行うことになる。その結果、車両V1及び車両V3については要求された遠隔支援を目標支援時間T以内に終了することができる。しかしながら、車両V2については要求された遠隔支援を目標支援時間TA2以内に終了することができず、図5の例では目標支援時間TA2を5秒超過することになる。
【0091】
すなわち、図2に示した割り込み処理を実行する制御装置1は、より優先度の高い車両Vから遠隔支援を行う場合や、遠隔支援要求の受付順に従って遠隔支援を行う場合よりも、車両Vに対する支援効率を向上させることができる。
【0092】
なお、割り込みコストCT1及び割り込みコストCT2が共に1以下であり、かつ、継続コストCF1及び継続コストCF2も共に1以下である場合、割り込みコストC=継続コストCとなる。この場合、制御部10は、図2におけるステップS50の判定処理に従って割り込み処理を行わないようにする。割り込みコストCT1、割り込みコストCT2、継続コストCF1、及び継続コストCF2が1以下であるということは、制御装置1は、割り込み制御を行っても行わなくても要求された遠隔支援を目標支援時間T以内に終了させることができる。しかしながら、仮に割り込み制御を行うとすれば、割り込み制御を行うためのオーバーヘッドが生じる。したがって、割り込み制御を行っても行わなくても要求された遠隔支援を目標支援時間T以内に終了させることができるのであれば、割り込み制御を行わない方が、更に車両Vに対する支援効率を向上させることができる。
【0093】
以上の理由により、制御装置1が割り込み制御を行う場合の条件を「割り込みコストC<継続コストC」とすることによって、割り込みコストCと継続コストCが同じ場合には、あえて割り込み制御を行わないようにしている。
【0094】
また、制御部10は、図2のステップS10において、車両Vに対してそれぞれ目標支援時間Tを設定する場合、車両Vが運行することによって車両Vが周囲に与える影響度合いに応じて、参考情報19に基づいて設定した目標支援時間Tを補正してもよい。
【0095】
車両Vが周囲に与える影響度合いには、車両Vの安全性に関する影響度合い、車両Vが走行する道路における交通流への影響度合い、及び車両Vに乗車する乗客への影響度合いの少なくとも1つが含まれる。
【0096】
具体的には、制御部10は、車両Vに対して求められる安全性が高くなるほど目標支援時間Tが短くなるように補正する。例えば車両Vが交差点に停車している場合、停車時間が長くなるほど他の車両Vから衝突される危険性が高まるため、できるだけ早く遠隔支援を行って車両Vを交差点から移動させる必要があるためである。制御部10は、例えば車両Vの車両情報、特に車両Vの位置を用いて、車両Vの位置毎に車両Vに対して求められる安全性を判定すればよい。
【0097】
また、制御部10は、遠隔支援の遅れが交通流の妨げにつながりやすい状況であるほど目標支援時間Tが短くなるように補正する。制御部10は、例えば車両V周辺における交通情報を用いて、要求された遠隔支援がどの程度の交通流の妨げになるかを判定すればよい。
【0098】
更に、制御部10は、車両Vの乗客に対して求められる安全性が高くなるほど目標支援時間Tが長くなるように補正する。制御部10は、例えば車両Vの車両情報に含まれる車両Vの種類や車両V内部の画像を用いて、車両Vに対して求められる安全性を判定すればよい。例えば制御部10は、営業用車両の方が自家用車両よりも求められる安全性が高いと判定し、車内が混雑している方が求められる安全性が高いと判定すればよい。
一方で、遠隔支援が遅れると車両Vがその場に長く留まってしまうため、例えば停留所を経由しながら予め定められた経路を走行する車両Vの定時発車性に影響を与えると共に、車両Vの乗客に待たされたとの感情が生じやすくなり、乗客の満足度が下がってしまう。したがって、車両Vの定時発車性及び乗客の満足度の観点から見れば、制御部10は、目標支援時間Tが短くなるように補正することが好ましい。ただし、車両Vに乗客がいない場合、遠隔支援が遅れたとしても乗客の満足度に影響することはない。したがって、このような場合には、制御部10は、目標支援時間Tが長くなるように補正してもよい。
【0099】
<割り込みコストC及び継続コストCの変形例>
ここまで(1)式及び(2)式に示したように、割り込みコストC及び継続コストCの算出にmax演算子を用いる例について説明してきた。しかしながら、算出部13は、(3)式及び(4)式に示すように、max演算子を用いることなく単純な加算によって割り込みコストC及び継続コストCを算出してもよい。
【0100】
【数3】
【0101】
(3)式及び(4)式に示す割り込みコストC及び継続コストCは、各々の車両Vにおいて、遠隔支援要求を受け付けてから遠隔支援を終了するまでの時間をできるだけ短くしたい場合に用いられる。
【0102】
図3に示した条件と同じ条件の下で(3)式及び(4)式を用いて、時刻Tにおける車両V1と車両V2の割り込み制御の可否について検討する。
【0103】
この場合の割り込みコストCは、割り込みコストC=5/6+1=1.83となる。また、継続コストCは、継続コストC=1/4+5/4=1.5であるから、割り込みコストC>継続コストCとなる。すなわち、図3に示した条件と同じ条件であったとしても、(3)式及び(4)式を用いて車両V1と車両V2の割り込み制御の可否を判定した場合には、制御装置1は車両V1に対する遠隔支援を継続し、車両V1に対する遠隔支援の終了後に車両V2の遠隔支援を行う。
【0104】
図6は、(3)式及び(4)式を用いて、時刻Tにおける車両V1と車両V2の割り込み制御の可否を判定した場合の一例を示す図である。図6に示すように、この場合には車両V2に対する遠隔支援が目標支援時間TA2を5秒超過することになる。しかしながら、図3と比較すれば、(1)式及び(2)式を用いて時刻Tにおける車両V1と車両V2の割り込み制御の可否を判定した場合よりも、車両V1に対する遠隔支援を開始してから車両V2に対する遠隔支援が終了するまでの期間Hは短くなることがわかる。このように、(3)式及び(4)式によって表される割り込みコストC及び継続コストCも、目標支援時間Tに対する予測支援時間の割合から得られる値によって表される評価値の一例である。
【0105】
(3)式及び(4)式では、各々の車両Vでの目標支援時間Tに対する予測支援時間の割合の和を割り込みコストC及び継続コストCとしたが、目標支援時間Tに対する予測支援時間の超過時間の和を割り込みコストC及び継続コストCとしてもよい。目標支援時間Tに対する予測支援時間の超過時間とは、予測支援時間から目標支援時間Tを引いた時間を表す。目標支援時間Tに対する予測支援時間の超過時間の和を割り込みコストC及び継続コストCとする場合の各々の算出式は、例えば(5)式及び(6)式によって表される。
【0106】
【数4】
【0107】
一例として、目標支援時間Tが30秒であり、予測支援時間が35秒であれば、予測支援時間から目標支援時間Tを引いた5秒が目標支援時間Tに対する予測支援時間の超過時間となる。
【0108】
図3に示した条件と同じ条件の下で(5)式及び(6)式を用いて、時刻Tにおける車両V1と車両V2の割り込み制御の可否について検討する。この場合の割り込みコストCは、割り込みコストC=max(-1/6,0)+max(0,0)=0となる。また、継続コストCは、継続コストC=max(-3/4,0)+max(1/4,0)=1/4であるから、割り込みコストC<継続コストCとなる。
【0109】
したがって、(5)式及び(6)式を用いて車両V1と車両V2の割り込み制御の可否を判定した場合、制御装置1は車両V2からの遠隔制御要求に対して割り込み制御を行い、車両V1に対する遠隔支援を中断し、車両V2に対する遠隔支援を開始する。
【0110】
このように、(5)式及び(6)式によって表される割り込みコストC及び継続コストCも、目標支援時間Tに対する予測支援時間の割合から得られる値によって表される評価値の一例である。
【0111】
また、算出部13は、(7)式及び(8)式を用いて、割り込みコストC及び継続コストCを算出してもよい。(7)式は(1)式の1項目を削除した式であり、(8)式は(2)式の2項目を削除した式である。
【0112】
【数5】
【0113】
例えば車両V1の遠隔支援を行っている制御装置1のオペレータ(「第1オペレータ」という)とは別のオペレータ(「第2オペレータ」という)が存在し、第2オペレータが車両V2からの遠隔支援要求に対応できる場合には、(7)式及び(8)式を用いて、割り込みコストC及び継続コストCを算出することが好ましい。
【0114】
この他、制御装置1の算出部13は、割り込みコストCT1、割り込みコストCT2、継続コストCF1、及び継続コストCF2をそれぞれ2乗して、(1)式から(8)式に示した割り込みコストC及び継続コストCを算出してもよい。
【0115】
<割り込み制御の再判定処理>
制御装置1は、車両Vからの遠隔支援要求に対して割り込み制御を行わなかった場合、割り込み制御を行わなかった遠隔支援要求の目標支援時間T内であれば、割り込み制御を行わなかった遠隔支援要求に対して割り込み制御を行うか否かを再判定する。以降では、割り込み制御を行わなかった遠隔支援要求で、かつ、まだ目標支援時間Tを過ぎていない遠隔支援要求を「保留遠隔支援要求」と表す。
【0116】
図7は、保留遠隔支援要求が存在する場合に実行される割り込み制御の再判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御装置1のCPU10Aは、不揮発性メモリ10Bに記憶される制御プログラム11を読み込み、割り込み制御の再判定処理を実行する。
【0117】
ステップS70において、制御部10は、保留遠隔支援要求を送信してきた車両Vに関する状況が変化したか否かを判定する。制御部10は、例えば車両Vの後ろに予め定めた長さ以上の渋滞が発生した場合や、車両Vの乗客の中に急病人が発生した場合等に、車両Vに関する状況が変化したと判定する。また、制御部10は、例えば保留遠隔支援要求が目標支援時間Tを超過しそうな場合や、保留遠隔支援要求によって要求されている遠隔支援の予測支援時間が経過した場合等に、車両Vに関する状況が変化したと判定する。保留遠隔支援要求が目標支援時間Tを超過しそうであるとは、ステップS70の判定処理を実行しているときの時刻が、目標支援時間Tの終了が近づいていることを通知するために目標支援時間Tの終了時刻より前に予め設定した時刻に達していることをいう。
【0118】
保留遠隔支援要求を送信してきた車両Vに関する状況が変化していない場合にはステップS80に移行する。
【0119】
ステップS80において、制御部10は、何れかの車両Vから新たな遠隔支援要求を受け付けたか否かを判定する。遠隔支援要求を受け付けていない場合にはステップS70に移行し、再び保留遠隔支援要求を送信してきた車両Vに関する状況が変化したか否かを判定する。
【0120】
一方、ステップS70の判定処理によって、保留遠隔支援要求を送信してきた車両Vに関する状況が変化したと判定された場合、及びステップS80の判定処理によって、新たな遠隔支援要求を受け付けたと判定された場合、ステップS90に移行する。
【0121】
ステップS90において、制御部10は、状況に変化があった車両Vの保留遠隔支援要求、又は新たなに受け付けた遠隔支援要求に対して、図2に示した割り込み処理を開始し、図7に示す割り込み制御の再判定処理を終了する。
【0122】
このように本開示の制御装置1によれば、保留遠隔支援要求に対して割り込み制御の可否の再判定を行う。制御装置1は、車両Vに関する状況が変化した場合に割り込み処理の可否を再判定するため、車両Vから遠隔支援要求を受け付けた時点でのみ割り込み制御の可否を判定する場合と比較して、車両の支援効率を更に向上させることができる。
【0123】
<割り込み処理の変形例>
図2に示した割り込み処理では、割り込みコストCと継続コストCの比較結果に基づいて、割り込み制御の可否を判定した。しかしながら、場合によってはオペレータの判断により、制御装置1が先に実行した方がよいと判定した遠隔支援要求を後回しにしたり、制御装置1が後回しにした方がよいと判定した遠隔支援要求を先に実行したりしたいことがある。
【0124】
ここでは、割り込みコストC及び継続コストCの比較結果と、オペレータの指示とを組みあわせて割り込み処理を実行する制御装置1について説明する。
【0125】
図8は、制御装置1が何れかの車両Vに対する遠隔支援を実行している途中に、他の車両Vから遠隔支援要求を受け付けた場合に実行される割り込み処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示す割り込み処理が図2に示した割り込み処理と異なる点は、ステップS51からステップS54、及びステップS57の処理が追加された点であり、その他の処理は図2に示した割り込み処理と同じである。したがって、以降では、図2に示した割り込み処理と異なる部分を中心にして、図8に示す割り込み処理の説明を行う。
【0126】
図8のステップS50の判定処理において、割り込みコストCが継続コストCよりも小さいと判定された場合、ステップS51が実行される。
【0127】
ステップS51において、制御部10は通信部12を介して、割り込み制御の実行をオペレータに提案する割り込み支援画面をオペレータ端末4に表示する。割り込み支援画面には、例えばオペレータが割り込み制御を行うか否かを決定するにあたって参考となる情報、例えば割り込み制御を行う遠隔支援の参考情報19や予測支援時間等が含まれる。
【0128】
オペレータは割り込み支援画面に表示される情報を参考にして、割り込み制御の実行指示を、通信部12を介してオペレータ端末4から制御部10に通知する。
【0129】
ステップS52において、制御部10は、オペレータから割り込み制御の実行指示を受け付けたか否かを判定する。割り込み制御の実行指示を受け付けた場合にはステップS60に移行し、制御部10は割り込み制御を行う。
【0130】
一方、割り込み制御の実行指示を受け付けなかった場合にはステップS57に移行する。なお、制御部10は、割り込み支援画面が表示されてから予め定めた時間が経過してもオペレータから割り込み制御の実行指示を受け付けなかった場合、オペレータから割り込み制御の実行指示がなかったものとみなす。
【0131】
ステップS57において、制御部10は、割り込み制御を行わなかった遠隔支援要求を保留遠隔支援要求として記憶装置16に記憶し、図8に示す割り込み処理を終了する。
【0132】
一方、ステップS50の判定処理において、割り込みコストCが継続コストC以上であると判定された場合、ステップS53が実行される。
【0133】
ステップS53において、制御部10は通信部12を介して、受け付けた遠隔支援要求を現在実行中の遠隔支援の後に実行することをオペレータに通知する切替支援画面をオペレータ端末4に表示する。切替支援画面には、後回しにした遠隔支援要求によって要求された遠隔支援の参考情報19や予測支援時間等が含まれる。
【0134】
オペレータは切替支援画面に表示される情報を参考にして、後回しにした遠隔支援要求に対して割り込み制御を行う切替指示を、通信部12を介してオペレータ端末4から制御部10に通知する。
【0135】
ステップS54において、制御部10は、切替指示を受け付けたか否かを判定する。切替指示を受け付けた場合には、後回しにした遠隔支援要求に対して割り込み制御を行う必要があるためステップS60に移行し、制御部10は割り込み制御を行う。
【0136】
一方、切替指示を受け付けていない場合にはステップS57に移行し、制御部10は、後回しにした遠隔支援要求を保留遠隔支援要求として記憶装置16に記憶し、図8に示す割り込み処理を終了する。なお、制御部10は、切替支援画面が表示されてから予め定めた時間が経過してもオペレータから切替指示を受け付けなかった場合、オペレータから切替指示がなかったものとみなす。
【0137】
すなわち、制御部10は、割り込み制御を行うか否かの判定結果をオペレータに通知すると共に、オペレータからの指示に従って割り込み制御を行うか否かを最終的に決定する。例えば制御装置1が割り込み制御を行うか否かの判定を行うために用いる情報のうち、いくつかの情報が欠損しているような場合、割り込み制御の可否の判定に必要な情報がすべて揃っている場合と比較して、割り込み制御の可否に関する判定精度は低くなる。しかしながら、このような場合であっても、制御装置1は、遠隔支援に熟知したオペレータからの指示に従って割り込み制御を行うか否かを決定することができる。したがって、割り込み制御の可否に関する制御装置1の判定結果のみに従って割り込み制御を行う場合と比較して、車両Vの遠隔支援を適切なタイミングで行うことができるようになるため、更に車両Vに対する支援効率を向上させることができる。
【0138】
なお、遠隔支援を行っている制御装置1のオペレータである第1オペレータとは異なる別の手空きのオペレータ、すなわち、第2オペレータがいれば、第2オペレータが第1オペレータの代わりに保留遠隔支援要求に対応することができる。図9は、このような場合に実行される割り込み処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0139】
図9に示す割り込み処理が図8に示した割り込み処理と異なる点は、ステップS55及びステップS56の処理が追加された点であり、その他の処理は図8に示した割り込み処理と同じである。したがって、以降では、図8に示した割り込み処理と異なる部分を中心にして、図9に示す割り込み処理の説明を行う。
【0140】
図8に示した割り込み処理では、ステップS52の判定処理によって割り込み制御の実行指示を受け付けなかったと判定された場合、及び、ステップS54の判定処理によって切替指示を受け付けなかったと判定された場合にはステップS57に移行した。一方、図9に示す割り込み処理では、ステップS55に移行する。
【0141】
この場合、第1オペレータはオペレータ端末4を通じて、後回しにした遠隔支援要求を第2オペレータが担当できるように、後回しにした遠隔支援要求を自分の担当からはずすための指示である保留支援開放指示を制御装置1に通知してもよい。したがって、ステップS55において、制御部10は、第1オペレータから保留支援開放指示を受け付けたか否かを判定する。保留支援開放指示を受け付けていない場合、第1オペレータは、後回しにした遠隔支援要求も自分が担当しようと考えていることになる。したがって、ステップS57に移行し、制御部10は、後回しにした遠隔支援要求を保留遠隔支援要求として記憶装置16に記憶して、図9に示す割り込み処理を終了する。
【0142】
一方、保留支援開放指示を受け付けた場合、第1オペレータは、後回しにした遠隔支援要求を第2オペレータに担当してもらってもよいと考えていることになる。したがって、ステップS56に移行する。
【0143】
ステップS56において、制御部10は、後回しにした遠隔支援要求を第1オペレータの担当から開放し、第2オペレータが担当できるようにして、図9に示す割り込み処理を終了する。これにより、第2オペレータは、第1オペレータが開放した遠隔支援要求を自分の担当として取り扱うことができるようになる。すなわち、第2オペレータは、第1オペレータが開放した遠隔支援要求によって要求された遠隔支援を、第1オペレータが担当中の遠隔支援と並行して実行することもできる。
【0144】
このように、図9に示した割り込み処理によれば、後回しにした遠隔支援要求を別のオペレータに担当させることができる。したがって、遠隔支援要求を担当するオペレータを、遠隔支援要求を受け付けたオペレータに固定する場合と比較して、更に車両Vに対する支援効率を向上させることができる。
【0145】
以上、実施形態を用いて制御装置1の一形態について説明したが、開示した制御装置1の形態は一例であり、制御装置1の形態は実施形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた制御装置1の形態も開示の技術的範囲に含まれる。
【0146】
例えば本開示の要旨を逸脱しない範囲で図2図7図8、及び図9に示したフローチャートにおける内部の処理順序を変更してもよい。
【0147】
上記の実施形態では、一例として、図2図7図8、及び図9に示した各処理をソフトウェアで実現する形態について説明した。しかしながら、各処理のフローチャートと同等の処理をハードウエアで実行させるようにしてもよい。この場合、各処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0148】
上記の実施形態では、不揮発性メモリ10Bに制御プログラム11が記憶されている例について説明した。しかしながら、制御プログラム11の記憶先は不揮発性メモリ10Bに限定されない。制御プログラム11は、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。
【0149】
例えば制御プログラム11をCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びブルーレイディスクのような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、制御プログラム11を、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。不揮発性メモリ10B、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、USB、及びメモリカードは非一時的(non-transitory)記憶媒体の一例である。
【0150】
更に、制御部10は通信部12を通じて、通信回線2に接続された外部装置(図示省略)から制御プログラム11をダウンロードし、ダウンロードした制御プログラム11を不揮発性メモリ10Bに記憶してもよい。
【0151】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
以下に本実施形態に係る付記を示す。
【0152】
(付記1)
通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、
前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う制御部(10)、
を備えた制御装置(1)。
【0153】
(付記2)
前記割り込み制御を行った場合と、前記割り込み制御を行うことなく、前記第1車両に対する遠隔支援の終了後に前記第2車両に対する遠隔支援を開始した場合とについて、前記第1車両及び前記第2車両の各々における、前記目標支援時間に対する前記予測支援時間の割合から得られる値によって表される評価値を算出する算出部(13)を備え、
前記制御部は、前記算出部によってそれぞれ算出した、前記割り込み制御を行った場合の評価値である第1評価値(C)と、前記割り込み制御を行わなかった場合の評価値である第2評価値(C)を参照し、前記第2評価値よりも前記第1評価値が小さい場合は前記割り込み制御を実行し、前記第1評価値が前記第2評価値以上である場合は前記割り込み制御を行わないように前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う
付記1に記載の制御装置。
【0154】
(付記3)
前記第1評価値の算出に用いる前記予測支援時間に、遠隔支援の状況を監視するオペレータが、遠隔支援の対象車両の走行情報を認知してから前記遠隔支援の対象車両に遠隔指示を行うまでの時間である予測指示時間(T)と、遠隔支援の対象車両が遠隔支援要求を送信してから制御装置において遠隔支援の準備が整うまでの時間である予測事前時間(T)と、が含まれる
付記2に記載の制御装置。
【0155】
(付記4)
前記予測事前時間に、前記制御部が遠隔支援の対象車両を切り替えるために要する時間である切替対応時間(T)が含まれる
付記3に記載の制御装置。
【0156】
(付記5)
前記第1車両における前記予測事前時間に、前記第2車両から遠隔支援要求を受け付けるまでに前記第1車両に対して既に実施済みの遠隔支援に費やした時間である現在支援時間(TB1)と、前記第2車両の遠隔支援に要する時間である支援時間(TV2)と、が含まれ、
前記第2車両における前記予測事前時間に、前記第2車両が遠隔支援要求を送信してから前記制御部が前記第2車両に対して割り込み制御を行うと判定するまでの待ち時間である現在待ち時間(TW2)が含まれる
付記3又は付記4に記載の制御装置。
【0157】
(付記6)
前記評価値が、前記第1車両及び前記第2車両の各々における前記割合の和によって表される
付記2から付記5の何れか1つに記載の制御装置。
【0158】
(付記7)
前記算出部は、前記割合が1未満である場合、前記割合を1とする
付記2から付記6の何れか1つに記載の制御装置。
【0159】
(付記8)
前記評価値が、前記第1車両及び前記第2車両の各々における、前記目標支援時間に対する前記予測支援時間の超過時間の和によって表される
付記2から付記5の何れか1つに記載の制御装置。
【0160】
(付記9)
前記制御部は、前記第1車両が運行することによって前記第1車両が周囲に与える影響度合いに応じて、前記第1車両に対する前記目標支援時間を補正すると共に、前記第2車両が運行することによって前記第2車両が周囲に与える影響度合いに応じて、前記第2車両に対する前記目標支援時間を補正する
付記1から付記8の何れか1つに記載の制御装置。
【0161】
(付記10)
前記第1車両及び前記第2車両がそれぞれ周囲に与える影響度合いに、前記第1車両又は前記第2車両のうち着目する車両の安全性に関する影響度合い、前記着目する車両が走行する道路における交通流への影響度合い、及び前記着目する車両に乗車する乗客への影響度合いの少なくとも1つが含まれる
付記9に記載の制御装置。
【0162】
(付記11)
前記制御部は、前記第1車両に対して前記割り込み制御を行わないと判定した場合、前記割り込み制御を行うか否か再度判定する制御を行う
付記1から付記10の何れか1つに記載の制御装置。
【0163】
(付記12)
前記制御部は、前記割り込み制御を行わないと判定した後、前記第2車両に関する状況が変化した場合に、前記割り込み制御を行うか否か再度判定する制御を行う
付記11に記載の制御装置。
【0164】
(付記13)
前記制御部は、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果をオペレータに通知すると共に、前記オペレータからの指示に従って前記割り込み制御を行うか否かを最終的に決定する制御を行う
付記1から付記12の何れか1つに記載の制御装置。
【0165】
(付記14)
通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、
前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定し、前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行う処理をコンピュータ(3)に実行させる制御プログラム(11)。
【0166】
(付記15)
割り込み処理を実行するようにコンピュータ(3)によって実行可能な制御プログラム(11)を記憶した非一時的記憶媒体(10B)であって、
通信回線(2)を通じて接続された第1車両(V1)に対する遠隔支援中に、前記通信回線を通じて接続された第2車両(V2、V3)から遠隔支援要求を受け付けた場合、
前記割り込み処理が、
前記第1車両及び前記第2車両の各々における、遠隔支援の内容に応じて予め定めた目標支援時間(T)と遠隔支援に要する予測支援時間を用いて、前記第1車両に対する遠隔支援を中断して前記第2車両に対する遠隔支援を開始する割り込み制御を行うか否かを判定するステップと、
前記割り込み制御を行うか否かの判定結果に応じた態様で前記第1車両及び前記第2車両に対する遠隔支援を行うステップと、
を含む非一時的記憶媒体。
【符号の説明】
【0167】
1 制御装置、2 通信回線、3 コンピュータ、4 オペレータ端末、10 制御部、10A CPU、10B 不揮発性メモリ、10C RAM、11 制御プログラム、12 通信部、13 算出部、16 記憶装置、17 バス、18 遠隔支援履歴情報、19 参考情報、C 継続コスト、C 割り込みコスト、T 目標支援時間、TB1 現在支援時間、TRX1 残存予測指示時間、T 切替対応時間、TV2 支援時間、TW1 残存支援時間、TW2 現在待ち時間、T 予測指示時間、T 予測事前時間、T 見守り時間、V(V1、V2、V3) 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9