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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015563
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】移送方法及びポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/12 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
F04B43/12 A
F04B43/12 J
F04B43/12 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117688
(22)【出願日】2022-07-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (刊行物1) 「蠕動運動型搬送装置の宇宙トイレ応用―管路内空気流入を利用した移送方式の提案」ロボティクス・メカトロニクス講演会講演予稿集 2022,1A1-K04
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】熊本 寛也
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 匠吾
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077AA14
3H077CC04
3H077CC10
3H077CC14
3H077CC18
3H077DD09
3H077DD14
3H077EE02
3H077FF03
3H077FF07
3H077FF34
(57)【要約】
【課題】効率を向上可能な移送方法及びポンプ装置を提供する。
【解決手段】外筒と、前記外筒の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒とを備え、外筒の内周面と内筒の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記閉空間から供給した流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされたユニットを複数連結したユニット連結体を所定の順序で膨張収縮させることにより内筒の内周側を移送路として移送物を移送する移送方法であって、前記ユニット連結体による移送動作中に移送物の移送方向に沿って前記移送路に流体を流下させる態様とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、前記外筒の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒とを備え、
外筒の内周面と内筒の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記空間から前記流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされたユニットを複数連結したユニット連結体を所定の順序で膨張収縮させることにより内筒の内周側を移送路として移送物を移送する移送方法であって、
前記ユニット連結体による移送動作中に移送物の移送方向に沿って前記移送路に流体を流下させるようにしたことを特徴とする移送方法。
【請求項2】
外筒と、前記外筒の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒とを備え、
外筒の内周面と内筒の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされたユニットを複数連結し、内筒の内周側を移送路として構成されたユニット連結体と、
前記ユニット連結体を所定の順序で膨張収縮させて前記移送路における移送物の移送を制御する制御手段と、
前記ユニット連結体による移送物の移送動作中に、前記移送路に流体を供給するとともに該流体に移送方向に沿う流れを生成する流体流れ生成手段と、
を備えたポンプ装置。
【請求項3】
外筒部と、前記外筒部の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒部とを備え、
外筒部の内周面と内筒部の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒部を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされ、該内筒部の内周側に移送物を貯留可能とされたタンク部を備え、該タンク部が、前記ユニット連結体の移送方向の最上流に連結され、内筒部が前記移送路の一部を構成する請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記タンク部の内筒部は、移送物の移送方向に沿って内径が漸次拡径する請求項3に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送方法及びポンプ装置に関し、特に、蠕動運動を模した動作により移送物を移送するための移送方法及びポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外筒と、外筒の内周面に沿って設けられた内筒と、内筒と外筒との間に加圧用媒体を供給するための通路とを有し、内筒の筒軸心方向の両端部を外筒に保持させるとともに、内筒の軸心線方向に延在され、内筒の変形を拘束する拘束体を内筒の周方向に間隔をあけて複数箇所に設けることで、内筒が加圧用媒体の圧力によって求心方向に膨張可能とされたポンプユニットを複数連結し、連結されたポンプユニットを蠕動運動を模すように膨張、収縮させることにより、内筒の内周側を移送路として移送物を移送可能とされたポンプ装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-196689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなポンプユニットは、例えば、内筒が膨張したときに、内筒の達することのない空間(デッドスペース)が存在してしまう。このような空間は、搬送物の圧送に寄与せず、搬送物の移送効率の向上に影響を与えている。
そこで、本発明は、上記問題を解決すべく、移送効率を向上可能な移送方法及びポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための移送方法の態様として、外筒と、前記外筒の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒とを備え、外筒の内周面と内筒の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記空間から前記流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされたユニットを複数連結したユニット連結体を所定の順序で膨張収縮させることにより内筒の内周側を移送路として移送物を移送する移送方法であって、前記ユニット連結体による移送動作中に移送物の移送方向に沿って前記移送路に流体を流下させる態様とした。
本態様によれば、気流により移送物の移送が促進され、移送効率を向上させることができるとともに、移送路内における移送物のつまりを抑制することができる。
また、上記課題を解決するためのポンプ装置の構成として、外筒と、前記外筒の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒とを備え、外筒の内周面と内筒の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされたユニットを複数連結し、内筒の内周側を移送路として構成されたユニット連結体と、前記ユニット連結体を所定の順序で膨張収縮させて前記移送路における移送物の移送を制御する制御手段と、前記ユニット連結体による移送物の移送動作中に、前記移送路に流体を供給するとともに該流体に移送方向に沿う流れを生成する流体流れ生成手段とを備えた構成とした。
本構成によれば、気流により移送物の移送が促進され、移送効率を向上させることができるとともに、移送路内における移送物のつまりを抑制することができる。
また、ポンプ装置の他の構成として、外筒部と、前記外筒部の内周側に弾性を有する素材により構成された内筒部とを備え、外筒部の内周面と内筒部の外周面とで区画される空間に流体を供給することにより内筒部を半径方向内側に向けて膨張可能とされ、前記流体を排出することにより半径方向外側に向けて収縮可能とされ、該内筒部の内周側に移送物を貯留可能とされたタンク部を備え、該タンク部が、前記ユニット連結体の移送方向の最上流に連結され、内筒部が前記移送路の一部を構成する構成とした。
本構成によれば、気流により移送物の移送が促進され、移送効率を向上させることができるとともに、移送路内における移送物のつまりを抑制することができることに加え、移送物が貯留されるタンク部内における移送物の残留量を少なくできる。
また、ポンプ装置の他の構成として、前記タンク部の内筒部は、移送物の移送方向に沿って内径が漸次拡径する構成とすることにより、タンク部内における移送物の残留量をより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ポンプ装置の概略構成図である。
図2】タンクの軸方向平面視及び軸方向断面図である。
図3】タンクの軸方向平面視及び軸方向断面図である。
図4】ポンプユニットの軸方向平面視及び軸方向断面図である。
図5】ポンプユニットの軸方向平面視及び軸方向断面図である。
図6】タンク及びポンプユニットによる移送動作を示す図である。
図7】タンク及びポンプユニットによる移送動作を示す図である。
図8】本実施形態に係るポンプ装置の試験条件及び試験結果を纏めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0008】
図1は、ポンプ装置の一実施形態を示す概略構成図である。
本実施形態に係るポンプ装置1は、移送対象物(以下、移送物という)を一時的に貯留するタンク4と、タンク4に連結され、移送物を下流側に向けて移送するユニット連結体8と、移送物を収容する回収バッグ6と、移送物の移送を制御する制御装置100(制御手段)とを備えた構成とされる。
【0009】
[タンク4について]
図2は、タンク4の収縮状態における軸方向平面図及び軸方向断面図である。図3は、タンク4の膨張状態における軸方向平面図及び軸方向断面図である。なお、図2(b)に示す収縮状態は、内筒42が自由状態にあるときの状態を示している。なお、自由状態とは、JIS B 0026に定義されるように、重力だけを受けた状態をいい、他の外力が付加されていないことを意味する。
【0010】
図2図3に示すように、タンク4(タンク部)は、外筒44(外筒部)と、外筒44の内周側に二重管を形成するように同軸的に配置される内筒42(内筒部)と、内筒42の外周と外筒44の内周との間に形成される空間を閉塞する一対の端部部材46;46とを備える。
【0011】
内筒42の外周と外筒44の内周との間に形成される空間は、端部部材46;46により閉塞され、外筒44の内周面と、内筒42の外周面との間に形成された空間(以下流体室という)V2に圧縮空気を供給することで内筒42を軸方向に膨張可能に構成される。
【0012】
[外筒について]
外筒44は、剛性を有する円筒体として構成される。外筒44を構成する素材には、例えば、金属や樹脂等の素材が利用できる。なお、剛性を有するとは、タンク4の動作時に、軸方向や半径方向等に実質的に変形しないことをいう。
【0013】
図2図3に示すように、外筒44は、円筒状の筒部44Aの両端にフランジ部44Bを備える。フランジ部44Bは、筒部44Aと一体的に形成され、筒部44Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。
【0014】
また、外筒44は、筒部44Aにチューブ接続部48を備える。チューブ接続部48は、円筒状の筒体により構成され、筒部44Aの外周面から内周面まで貫通し、外周面から所定長さ突出するように設けられる。即ち、チューブ接続部48を介して流体室V2が外部に連通可能とされる。チューブ接続部48には、制御装置100から延長し、流体室V2への流体の供給、流体室V2から流体を排出するための管108が接続される。
【0015】
なお、チューブ接続部48は、外部から流体室V2への流体の給排が可能であれば、筒部44Aに限らず、端部部材46;47に設けても良く、適宜タンク4の構成に応じて変更すれば良い。
【0016】
[内筒について]
図2図3に示すように、内筒42は、円筒状の筒部42Aと、該筒部42Aの両端にフランジ部42Bを備える。筒部42Aは、一端側から他端側に向けて漸次拡径するように形成されている。一端側から他端側に向けて漸次拡径するとは、例えば、一端側の端部から他端側の端部にかけて母線が直線状の円錐状や母線が所定の曲率を有する曲線状の円錐状などを意味し、筒部42Aの一端側を入口、他端側を出口としたときに、出口の内径よりも入口の内径直径が小さく設定されていれば良い。
【0017】
例えば、入口側の内径は移送物の移動経路である上流側配管の内径に基づいて設定すれば良く、出口側の内径は後述のポンプユニット10の内径に基づいて設定すれば良い。好ましくは、入口側の内径は移送物の移動経路である上流側配管の内径との間に段差が生じないように、例えば上流側配管の内径と同径にすると良く、出口側の内径は後述のポンプユニット10の内筒42の内径との間に段差が生じないように、例えば内筒42の内径と同径にすると良い。
【0018】
フランジ部42Bは、筒部42Aと一体的に形成され、筒部42Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。このフランジ部42Bは、先端(外周部)に、筒部42A側(軸方向内向き)に突出する突起部43が全周にわたり形成されている。
【0019】
内筒42は、気密性及び弾性を有する変形自在な筒状体として構成される。内筒42を構成する素材には、例えば、天然ラテックスゴムやシリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の弾性素材が利用できる。
【0020】
内筒42は、円筒状の筒部42Aと、該筒部42Aの両端にフランジ部42Bとを備える。フランジ部42Bは、筒部42Aと一体的に形成され、筒部42Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。このフランジ部42Bは、先端(外周部)に、筒部42A側(軸方向内向き)に突出する突起部43が全周にわたり形成されている。
【0021】
[端部部材について]
端部部材46;47は、内筒42及び外筒44の両端に配置される。端部部材46;47は、それぞれ内筒42及び外筒44の両端に固定可能とされるとともに、タンク4の上流側に設けられる上流側配管や下流側のユニット連結体8と連結可能に構成される。
【0022】
端部部材46;47は、フランジ部46A;47Aと、筒部46B;47Bとを備える。フランジ部46A;47Bは、それぞれ中空部50;51を有する平板矩形状に形成される。
中空部50は、内筒42の小径側の筒部42Aが貫通可能な円孔として形成される。中空部50の直径は、例えば、内筒42の小径側の筒部42Aの外周面に密着するような寸法とすると良い。
中空部51は、内筒42の大径側の筒部42Aが貫通可能な円孔として形成される。中空部51の直径は、例えば、内筒42の大径側の筒部42Aの外周面に密着するような寸法とすると良い。
【0023】
フランジ部46A;47Aは、軸方向外側の端面46a;47aに、環状に窪む環状溝52を備える。環状溝52は、中空部50;51と同心円状に形成され、内筒42のフランジ部42Bの先端の突起部43が嵌合可能とされる。例えば、フランジ部46A;47Aの環状溝52は、内筒42の突起部43が嵌合した状態において、内筒42のフランジ部42Bが該外側の端面46a;47aよりも外側に突出するように形成されている。
【0024】
内筒42は、端部部材46;47の環状溝52に、フランジ部42Bの突起部43を嵌め合わせることで端部部材46;47に対して所定の位置に取り付けられる。内筒42の端部部材46;47に対する気密は、端部部材46が上流側配管のフランジと連結されたり、端部部材47が下流側に連結されるポンプユニット10の端部部材16と連結されたりすることで、内筒42のフランジ部42Bが押し付けられることにより形成される。
【0025】
筒部46B;47Bは、フランジ部46A;47Aの内側の端面46b;47bから軸方向に円筒状に突出して設けられる。筒部46B;47Bは、中心軸が中空部50;51と同心とされ、例えばフランジ部46A;47Aと一体的に形成されている。筒部46B;47Bは、外径が外筒44の内周側に摺接して挿入可能な大きさ、内径が中空部51の内径よりも大きな寸法で形成される。
【0026】
外筒44は、各端部に端部部材46;47の筒部46B;47Bを挿入し、フランジ部44B;44Bを端部部材46;47のフランジ部46A;47Aの内側の端面46b;47bに衝接させた状態で、外筒44のフランジ部44B;44Bと、端部部材46;47のフランジ部46A;47Aとをボルト等の図外の固定手段を利用して固定される。
また、外筒44は、例えば、外筒44のフランジ部44Bと、端部部材46のフランジ部46Aとの間にパッキンなどを介在させることで、端部部材46との気密性を構成することができる。
【0027】
上述のように、内筒42及び外筒44の両端が端部部材46;47に取り付けられることにより、内筒42の外周面及び外筒44の内周面の間に形成された空間を閉空間とし、タンク4における流体室V2が形成される。
【0028】
[ポンプユニット10について]
図4は、ポンプユニット10の収縮状態における軸方向平面図及び軸方向断面図である。図3は、ポンプユニット10の膨張状態における軸方向平面図及び軸方向断面図である。なお、図2(b)に示す収縮状態は、内筒12が自由状態にあるときの状態を示している。
【0029】
図4図5に示すように、ポンプユニット10は、軸方向長さがタンク4よりも短く設定される。ポンプユニット10は、外筒14と、外筒14の内周側に二重管を形成するように同軸的に配置される内筒12と、内筒12の外周と外筒14の内周との間に形成される空間を閉塞する一対の端部部材16;16とを備える。
【0030】
ポンプユニット10は、端部部材16;16により閉塞され、外筒14の内周と、内筒12の外周との間に形成された空間に圧縮空気を供給することで内筒12を軸方向に膨張可能に構成されている。
【0031】
[外筒について]
外筒14は、剛性を有する円筒体として構成される。外筒14を構成する素材には、例えば、金属や樹脂等の素材が利用できる。なお、剛性を有するとは、ポンプユニット10の動作時に、軸方向や半径方向等に実質的に変形しないことをいう。
【0032】
図4図5に示すように、外筒14は、円筒状の筒部14Aの両端にフランジ部14Bを備える。フランジ部14Bは、筒部14Aと一体的に形成され、筒部14Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。
【0033】
また、外筒14は、筒部14Aにチューブ接続部28を備える。チューブ接続部28は、円筒状の筒体により構成され、筒部14Aの外周面から内周面まで貫通し、外周面から所定長さ突出するように設けられる。チューブ接続部28には、制御装置100から延長し、流体室V1への流体の供給、流体室V1から流体を排出するための管108が接続される。
【0034】
なお、チューブ接続部28は、外部から流体室V1への流体の給排が可能であれば、筒部14Aに限定されず、端部部材16;16に設けても良く、適宜ポンプユニット10の構成に応じて変更すれば良い。
【0035】
[内筒について]
図4図5に示すように、内筒12は、円筒状の筒部12Aと、該筒部12Aの両端にフランジ部12Bを備える。フランジ部12Bは、筒部12Aと一体的に形成され、筒部12Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。このフランジ部12Bは、先端(外周部)に、筒部12A側(軸方向内向き)に突出する突起部13が全周にわたり形成されている。
【0036】
内筒12は、気密性及び弾性を有する変形自在な筒状体として構成される。内筒12を構成する素材には、例えば、天然ラテックスゴムやシリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の弾性素材が利用できる。
【0037】
内筒12は、円筒状の筒部12Aと、該筒部12Aの両端にフランジ部12Bを備える。フランジ部12Bは、筒部12Aと一体的に形成され、筒部12Aの端部において半径方向外側に向けて同心円状に広がる中空円板状に形成されている。このフランジ部12Bは、先端(外周部)に、筒部12A側(軸方向内向き)に突出する突起部13が全周にわたり形成されている。
【0038】
[端部部材について]
端部部材16;16は、内筒12及び外筒14の両端に配置される。端部部材16;16は、内筒12及び外筒14の両端に固定可能とされるとともに、タンク4やポンプユニット10と連結可能に構成される。
【0039】
端部部材16;16は、フランジ部16Aと、筒部16Bとを備える。フランジ部16Aは、中空部20を有する平板矩形状に形成される。中空部20は、内筒12の筒部12Aが貫通可能な円孔として設けられる。中空部20の直径は、例えば、内筒12の筒部12Aの外周面に密着するような寸法とすると良い。
【0040】
フランジ部16Aは、軸方向外側の端面16aに、環状に窪む環状溝22を備える。環状溝22は、中空部20と同心円状に形成され、内筒12のフランジ部12Bの先端の突起部13が嵌合可能とされる。また、フランジ部16Aの外側の端面16aは、環状溝22に内筒12の突起部13が嵌合された状態において、内筒12のフランジ部12Bが、該外側の端面16aよりも外側に突出するように形成されている。
【0041】
内筒12は、端部部材16の環状溝22に、フランジ部12Bの突起部13を嵌め合わせることで端部部材16;16に対して所定の位置に取り付けられる。内筒12の端部部材16に対する気密は、端部部材16を介してタンク4の端部部材47や他のポンプユニット10の端部部材16と連結されたりすることで、内筒12のフランジ部12Bがタンク4の端部部材47やポンプユニット10の端部部材16に押し付けられることにより形成される。
【0042】
筒部16Bは、フランジ部16Aの内側の端面16bから軸方向に円筒状に突出して設けられる。筒部16Bは、中心軸が中空部20と同心とされ、フランジ部16Aと一体的に形成されている。筒部16Bは、外径が外筒14の内周側に摺接して挿入可能な大きさ、内径が中空部20の内径よりも大きな寸法で形成される。
【0043】
外筒14は、端部部材16の筒部16Bが挿入された状態で、フランジ部14Bを端部部材16のフランジ部16Aの内側の端面16bに、図外のボルト等の固定手段により固定される。外筒14は、例えば、外筒14のフランジ部14Bと、端部部材16のフランジ部16Aとの間にパッキンなどを介在させることで、端部部材16との気密性を構成することができる。
【0044】
上述のように、内筒12及び外筒14の両端が端部部材16;16に取り付けられることにより、内筒12の外周及び外筒14の内周の間に形成された空間を閉空間とし、ポンプユニット10における流体室V1が形成される。
【0045】
上記構成によれば、タンク4及びポンプユニット10は、制御部100からチューブ接続部58やチューブ接続部28を介して流体室V2や流体室V1に圧縮空気を供給することにより、図3(a),(b)や図5(a),(b)に示すように内筒42;12が軸方向に膨張し、流体室V2や流体室V1に供給された圧縮空気を排出し、自由状態とすることにより、図2(a),(b)や図4(a),(b)に示すように収縮する。
【0046】
また、タンク4の内筒42は、上述したように、一端側と他端側で外径が異なる形状(図2参照)にあることから、流体室V2に圧縮空気を供給することにより、小径側(上流側)から優先的に膨張することになり、移送物を一端側から他端側に向けて押し出すように膨張し、最終的に図3(a),(b)に示すように、内筒42の内周側の空間を閉塞する。
【0047】
上記構成のポンプユニット10を連結したユニット連結体8は、最も上流側に位置するポンプユニット10にタンク4の大径側が連結される。このように、タンク4とユニット連結体8を連結することにより、タンク4の内筒42及び連結されたポンプユニット10の内筒12とで1つの移送路を形成する。
また、タンク4とポンプユニット10が同様の機構により動作することを考慮すれば、タンク4はユニット連結体8の一部とみなすこともできる。
【0048】
ユニット連結体8の後端には、回収バッグ6が連結され、ユニット連結体8から移送された移送物を収容する。回収バッグ6は、例えば、一方開口の袋体として構成され、開口部62が連結体64を介してユニット連結体8の後端のフランジ16Bに連結される。回収バッグ6は、開口部62を内部に流入した気体を排出する排気弁66を備える。排気弁66は、例えば、回収バッグ6内の圧力が所定圧力に達したときに排出するように構成されていても良く、回収バッグ6内から外部への気体の通過のみを許容するフィルム等のものであっても良い。
【0049】
[制御装置100について]
制御装置100は、例えば、コンプレッサー112と、複数のレギュレータ114A~114Cと、複数の弁116;118と、負圧発生器130と、シャッター機構140と、コントローラ160
と、を備えた構成とされる。
【0050】
コンプレッサー112は、所謂圧縮空気を生成する装置であって、本実施形態のポンプ装置1における駆動源として利用される。詳細については後述するが、コンプレッサー112により生成される圧縮空気は、タンク4及びポンプユニット10の膨張や収縮、移送路への供給に利用される。
【0051】
コンプレッサー112により生成された圧縮空気は、複数のレギュレータ114A;114B;114Cを介して複数の圧力に調整される。レギュレータ114A;114B;114Cは、コンプレッサー112と個別に接続され、コンプレッサー112により加圧された圧縮空気を入力とし、入力された圧縮空気を所定の圧力に減圧(調整)した一定圧の圧縮空気を出力する。
【0052】
レギュレータ114Aは、弁116を介してポンプユニット10;40と接続され、調整した圧力の圧縮空気をタンク4及びポンプユニット10の流体室V2;V1に供給する。
レギュレータ114Aを介して出力される圧縮空気は、ポンプユニット10;40の膨張に好適とされる圧力に設定される。例えば、レギュレータ114Aから出力される圧縮空気の圧力は、ポンプユニット10を膨張させたときにポンプユニット10の内筒12の少なくとも内周面同士が密接可能な圧力、或いはそれよりも大きく設定すると良い。
【0053】
弁116は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで圧縮空気を流体室V2;V1に供給し、弁を閉じることで圧縮空気の供給を停止する。弁116は、コントローラ160と電気的に接続され、コントローラ160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0054】
また、レギュレータ114Bは、真空発生器と接続され、調整した圧力の圧縮空気を負圧発生器130に供給する。レギュレータ114Bを介して出力される圧縮空気は、負圧発生器130の駆動に好適とされる圧力に設定される。
【0055】
負圧発生器130は、圧縮空気を入力として負圧を生じさせるための装置である。負圧発生器130は、弁118を介してタンク4及びポンプユニット10と接続され、生じた負圧によりタンク4及びポンプユニット10の流体室V2;V1から圧縮空気を吸引して排出する。
【0056】
弁118は、電気的な信号に基づいて開閉する弁を有し、弁を開くことで負圧発生器130と流体室Vとを連通し、負圧発生器130の機能により流体室Vから圧縮空気を排出し、弁を閉じることで圧縮空気の排出を停止する。弁118は、コントローラ160と電気的に接続され、コントローラ160から入力される信号に基づいて弁を開閉する。
【0057】
なお、弁116;118は、コントローラ160から信号が入力されない状態では弁を閉じた状態とし、信号が入力されることで弁を開くものとして説明する。
【0058】
弁116及び弁118には、例えば、ソレノイドバルブを適用することができ、その結果としてタンク4及びポンプユニット10を膨張或いは収縮させるときの応答速度を向上させることができる。
【0059】
また、レギュレータ114Cは、シャッター機構140を介して調整した圧力の圧縮空気をユニット連結体8の上流側から供給を可能とする。レギュレータ114Cを介して出力される圧縮空気は、移送路への供給に好適とされる圧力が設定される。
【0060】
シャッター機構140は、タンク4への移送物の移入と、移入の停止を制御するための手段である。
シャッター機構140は、例えば、シャッター弁などの開閉機構で構成することができる。
タンク4及びポンプユニット10が移送動作にあるときは、タンク4への移送物の移入を停止し、上流側配管とタンク4との連通を遮断する。また、タンク4及びポンプユニット10が非移送動作にあるときは、タンク4への移送物の移入を可能とし、上流側配管とタンク4との連通を開放する。
【0061】
また、シャッター機構140は、レギュレータ114Cとチューブを介して接続され、レギュレータ114Cを介して出力された圧縮空気が流入可能とされる。シャッター機構140に流入した圧縮空気は、シャッター機構140に設けられた図外の流通路を経てタンク4に向けて流出可能に構成される。この流通路は、例えば、上流側配管とタンク4との連通が遮断されたときに開放され、上流側配管とタンク4との連通が開放されたときに遮断されるように構成すると良い。
【0062】
また、シャッター機構140は、例えば、電気的な信号に基づいて上流側配管とタンク4との連通状態の開閉動作を制御可能とすると良い。この場合、コントローラ160から信号が入力されたときに、上流側配管とタンク4との連通を遮断し、信号の入力が停止されたときに上流側配管とタンク4との連通を開放するようにシャッター機構140を構成すると良い。
また、シャッター機構140は、コンプレッサー112や回収バッグ6に設けられた排気弁66などとともに本実施形態に係る流体生成手段を構成している。なお、流体生成手段の構成は、これに限らず、移送路に移送方向に沿う気流を生成できるものであれば良い。また、タンク4及びユニット連結体8による移送動作中に移送物の移送方向に沿って前記移送路に流下させる流体は、上述の気体に限定されず液体であっても良い。
【0063】
コントローラ160は、演算手段としてのCPU、ROM,RAM等の記憶手段、入出力手段とを備えた構成とされる。記憶手段には、ユニット連結体8を構成するタンク4及びポンプユニット10を膨張・収縮(動作)させるためのプログラム等が記憶され、CPUが記憶手段に記憶されたプログラムに従った処理を順次実行することにより、入出力手段を介して弁116;118やシャッター機構140への信号の出力及び出力の停止を制御し、タンク4及びポンプユニット10による蠕動運動を摸したポンプ動作、及び移送路への圧縮空気の供給を可能に構成される。
【0064】
また、コントローラ160は、例えば、ポンプ動作において、タンク4及びポンプユニット10を収縮させる場合、自由状態へと収縮するのではなく、自由状態における内筒42や内筒12の内周側の容積よりも大きくなるように、流体室V2:V1を減圧すると良い。言い換えれば、流体室V2:V1の容積が自由状態の容積よりも小さくなるように、流体室V2:V1を減圧すると言うこともできる。以下、この状態を過収縮という。
タンク4及びポンプユニット10を収縮させるときに、過収縮とすることで、自由状態で収縮したときよりも減圧の圧力を大きくすることができ、収縮に伴う移送物の取り込み量を多くすることができる。
【0065】
図6は、タンク4及びユニット連結体8の動作の一例を示す図である。なお、図中におけるFは、圧縮空気の流れ(以下、気流という)を示している。
図6(a)に示すように、タンク4及びユニット連結体8は、例えば、初期状態として、移送物の移入及び貯留可能となるように、タンク4及び各ポンプユニット10A~10Cが過収縮の状態とされる。
【0066】
図6(b)に示すように、タンク4に移送物が移入し、貯留されると、タンク4及びユニット連結体8による蠕動運動を模した移送動作が開始される。移送動作の開始により、シャッター機構140が上流側配管とタンク4との連通状態を遮断するとともに、回収バッグ6に向けた圧縮空気の供給を開始する。この圧縮空気の供給は、移送動作の終了まで継続される。このシャッター機構140を介してタンク4に供給された圧縮空気は、タンク4及びユニット連結体8が膨張状態とされる場合にあっても、タンク4の膨張状態にある内筒42の内周側に生じる隙間、ユニット連結体8を構成する各ポンプユニット10の膨張状態にある内筒12の内周側に生じる隙間を通過して回収バッグ6の排出弁66から排出され、タンク4の内筒42及び各ポンプユニット10A~10Cの内筒12により構成される移送路に移送方向に沿う気流を生じさせる。
【0067】
タンク4及びユニット連結体8による移送動作は、まず、タンク4の過収縮状態を維持したままポンプユニット10A~10Cを膨張状態とすることから開始される。
【0068】
次に、図6(c)に示すように、ポンプユニット10Cの膨張状態を維持したまま、タンク4を膨張状態とするとともにポンプユニット10B;10Cを過収縮状態まで収縮させる。これによりタンク4内の移送物Sがタンク4からポンプユニット10A;10Bへと移送される。このときの移送物Sの移送は、気流が移送物Sを下流側に押そうとする力と、タンク4の内筒42が膨張することにより移送物Sを加圧し、内筒42内から押し出そうとする力とに加え、タンク4の内筒42の内周側空間の容積の縮小とポンプユニット10A;10Bの内筒12の内周側空間の容積の拡大にともなう減圧により移送物を下流側に引き込もうとする力によるものとされる。
【0069】
次に、図6(d)に示すように、タンク4及びポンプユニット10Cの膨張状態と、ポンプユニット10Bの過収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Aを膨張させる。これにより、ポンプユニット10A内の移送物Sがポンプユニット10Bへと移送される。このときの移送物Sの移送は、タンク4の隙間を通過した気流が移送物Sを下流側へと押そうとする力とポンプユニット10Aの内筒12が膨張することにより移送物Sを加圧し、ポンプユニット10Aの内筒12から押し出そうとする力によるものとされる。
【0070】
次に、図6(e)に示すように、タンク4とポンプユニット10Aの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Bを膨張状態とするとともに、ポンプユニット10Cを過収縮状態とする。これにより、ポンプユニット10B内の移送物Sがポンプユニット10Cへと移送される。
このときの移送物Sの移送は、膨張状態にあるタンク4の隙間、及びポンプユニット10Aの隙間を通過した気流が移送物Sを下流側へと押そうとする力とポンプユニット10Bの内筒12が膨張することにより移送物Sを加圧し、ポンプユニット10Bの内筒12内から押し出そうとする力によるものとされる。
【0071】
次に、図6(f)に示すように、タンク4の膨張状態とポンプユニット10A;10の膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Cを膨張状態とする。
これにより、ポンプユニット10C内の移送物Sが回収バッグ6へと移送される。このときの移送物Sの移送は、タンク4、ポンプユニット10A;10Bの隙間を通過した気流が移送物Sを下流側へ押そうとする力と、ポンプユニット10Cの内筒12が膨張することにより移送物Sを加圧し、ポンプユニット10Cの内筒12内から押し出そうとする力によるものとされる。
【0072】
そして、タンク4及びポンプユニット10A~10Cを過収縮状態とすることにより、図6(a)に示す初期状態に復帰することでタンク4から回収バッグ6への移送物の移送が完了する。
なお、タンク4及びポンプユニット10A~10Cによる移送動作は、上述した図6(a)~図6(f)に示す行程を1つの移送サイクルとし、この移送サイクルを例えば、所定回数繰り返して、タンク4内に貯留された移送物を回収バッグ6内に移送するようにしても良い。
【0073】
図7は、タンク4及びユニット連結体8による移送動作の他の例を示す図である。なお、図中におけるFは、圧縮空気の流れ(以下、気流という)を示している。
図7(a)に示すように、タンク4及びユニット連結体8は、例えば、初期状態として、移送物の移入及び貯留可能となるように、タンク4及びポンプユニット10A~10Cが過収縮の状態とされる。
【0074】
次に、図7(b)に示すように、タンク4内に移送物が移入し、貯留されると、タンク4及びユニット連結体8による蠕動運動を模した移送動作が開始される。移送動作の開始により、シャッター機構140が上流側配管とタンク4との連通状態を遮断するとともに、回収バッグ6に向けた圧縮空気の供給を開始する。この圧縮空気の供給は、移送動作の終了まで継続される。このシャッター機構140を介してタンク4に供給された圧縮空気は、タンク4及びユニット連結体8が膨張状態とされる場合にあっても、タンク4の膨張状態にある内筒42の内周側に生じる隙間、ユニット連結体8を構成する各ポンプユニット10の膨張状態にある内筒12の内周側に生じる隙間を通過して回収バッグ6の排出弁66から排出され、タンク4の内筒42及び各ポンプユニット10A~10Cの内筒12により構成される移送路に移送方向に沿う気流を生じさせる。
【0075】
タンク4及びユニット連結体8による移送動作は、まず、ポンプユニット10A~10Cの過収縮状態を維持したまま、タンク4を膨張状態とすることから開始される。これにより、タンク4内の移送物Sは、タンク4からユニット連結体8側へと移送される。このときの移送物Sの移送は、気流が移送物Sを下流側に押そうとする力と、タンク4の内筒42が膨張することにより移送物Sを加圧し、タンク4の内筒42内から押し出そうとする力によるものとされる。
【0076】
次に、図7(c)に示すように、タンク4の膨張状態及びポンプユニット10B;10Cの過収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Aを膨張状態とする。これにより、ポンプユニット10A内の移送物Sは、ポンプユニット10B;10Cへと移送される。このときの移送物Sの移送は、気流が移送物Sを下流側に押そうとする力と、ポンプユニット10Aの内筒12が膨張することにより移送物Sを加圧し、ポンプユニット10Aの内筒12内から押し出そうとする力によるものとされる。
【0077】
次に、図7(d)に示すように、ポンプユニット10Aの膨張状態及びポンプユニット10Cの過収縮状態を維持したまま、タンク4を過収縮状態とするとともにポンプユニット10Bを膨張状態とする。
これにより、ポンプユニット10B内の移送物Sは、ポンプユニット10Cへと移送される。このときの移送物Sの移送は、気流が移送物Sを下流側に押そうとする力と、ポンプユニット10Bの内筒12が膨張することにより移送物Sを加圧し、ポンプユニット10Bの内筒12内から押し出そうとする力によるものとされる。
【0078】
次に、図7(e)に示すように、タンク4の過収縮状態及びポンプユニット10Bの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Aを過収縮状態とするとともにポンプユニット10Cを膨張状態とする。
これにより、ポンプユニット10C内の移送物Sは、回収タンク6へと移送される。
このときの移送物Sの移送は、気流が移送物Sを下流側に押そうとする力と、ポンプユニット10Cの内筒12が膨張することにより移送物Sを加圧し、ポンプユニット10Cの内筒12内から押し出そうとする力によるものとされる。
【0079】
次に、図7(f)に示すように、タンク4及びポンプユニット10Aの過収縮状態及びポンプユニット10Cの膨張状態を維持したまま、ポンプユニット10Bを過収縮状態とする。
【0080】
そして、タンク4及びポンプユニット10A;10Bの過収縮状態を維持したまま、ポンプユニット10Cを過収縮状態とすることにより、図7(a)に示す初期状態に復帰することでタンク4から回収バッグ6への移送物の移送が完了する。
なお、タンク4及びポンプユニット10A~10Cによる移送動作は、上述した図7(a)~図7(f)に示す行程を1つの移送サイクルとし、この移送サイクルを例えば、所定回数繰り返して、タンク4内に貯留された移送物を回収バッグ6内に移送するようにしても良い。
【0081】
以上説明したように、移送物を貯留するタンク4がポンプユニット10A乃至10Cと同様に膨縮するように構成するとともに、さらに、タンク4及びユニット連結体8の移送動作中に、移送路に圧縮空気を上流側から下流側に向けて流すことにより、タンク4内に貯留された移送物やタンク4やポンプユニット10A乃至10Cの連結部分における移送物の残留量を少なくし、移送効率を向上させることができる。
【0082】
図8(a)は、移送率の比較試験の試験環境を示す図、図8(b)は、その試験結果を示す図である。
本実施形態に係るポンプ装置1の効果を検証するために、図8に示す試験環境において移送率の試験を行った。移送率の試験は、移送動作時に移送路に圧縮空気を供給した場合と、圧縮空気を供給しない場合とで比較した。
また、移送率は、図8(a)に示すように、(I)タンク4から回収バッグ6まで、(II)タンク4からポンプユニット10Aまで、(III)ポンプユニット10Aから回収バッグ6まで、の3つの区間について求めた。
なお、移送率Rは、(排除した試験移送物 ÷ 投入した試験移送物)× 100 により算出した。
具体的には、(I)については、過収縮状態のタンク4内に移送物を投入し、図6に示す行程を経て移送物を回収バッグ6まで移送する移送動作をタンク4及びユニット連結体8を動作させるたときに、タンク4に残留した試験移送物の質量をタンク4に投入した試験移送物の質量から減じて排除した試験移送物の質量として移送率を算出した。
また、(II)については、タンク4を過収縮状態、ポンプユニット10A~10Cを膨張状態とし、過収縮状態のタンク4内に移送物を投入し、タンク4の過収縮状態、及びポンプユニット10B;10Cの膨張状態を維持したままポンプユニット10Aを過収縮させたときに、ポンプユニット10Aに移送された試験移送物の質量をタンク4に投入した試験移送物の質量から減じて排除した試験移送物の質量として移送率を算出した。
また、(III)については、(II)によりポンプユニット10Aに移送された移送物を回収バッグ6まで移送したときに、ポンプユニット10Aに残留した試験移送物の質量を、(II)によりポンプユニット10Aに移送された試験移送物の質量から減じて排除した試験移送物の質量として移送率を算出した。
【0083】
試験方法・条件
1.試験に用いる移送物には、模擬便108.1グラムに水27.1グラム(模擬便に対する質量比の20%)を混合したものを使用した。なお、模擬便とは、人間の便の物性を想定したみそ等を主原料としたものである。
2.レギュレータ114A及び114Bの調整圧力を70kpaに設定した。
3.レギュレータ114Bの調整圧力を-70kpaに設定した。
その結果、図8(b)に示すように、いずれの区間においても移送率が向上した。
【0084】
以上説明したように、タンク4及びユニット連結体8による移送動作中に移送方向に圧縮空気を流すことによって、移送効率を向上させることができる。
【0085】
なお、上記実施形態では、タンク4の上流側から圧縮空気を供給して移送路に移送方向に向かう気流を生じさせるものとして説明したが、例えば、上流側から圧縮空気の供給をせずに大気開放とし、移送方向の最下流に位置する回収バッグ6を(例えば、回収バッグ6の排気弁66を利用して)減圧することにより移送路に気流の流れを生じさせても良い。
【0086】
また、ユニット連結体8を構成するポンプユニット10の数量は、上記実施形態で説明した3つに限定されず、それ以上や1つ、2つなどとしても良い。
【0087】
また、タンク4を構成する内筒42の形状は、上記実施形態で説明したような移送方向に沿って内径が漸次拡径するものに限定されず、ポンプユニット10の内筒12のように円筒状としても良い。
【0088】
なお、ユニット連結体8の動作は、図6,7に示したものに限定されず適宜変更するようにしても良い。
【0089】
例えば、図6に示すように、下流側のポンプユニット10を閉鎖した状態で上流側から順に収縮させるポンプユニット10を下流側へと移動させるようにユニット連結体8を動作させる場合、上流側のポンプユニット10は、下流側が閉じられた閉鎖空間とされる。
このようなユニット連結体8の動作とともに移送路の上流側から下流側に向けて圧縮空気などの加圧された流体を流すことにより、上流側の閉鎖空間とされたポンプユニット10には移送物と加圧された流体が詰め込まれることになり、これに隣接する下流側のポンプユニット10が開いたときに、移送物と詰め込まれた流体とが勢いよく下流側のポンプユニット10へと移送されることになる。
したがって、移送路には、上流側から下流側に向けて圧縮空気などの加圧された流体とともに、移送物と詰め込まれた流体の下流側への移送による勢いにより生じる気流の相乗効果によって効率良く移送物を上流側から下流側へと移送することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 ポンプ装置、4 タンク、6 回収バッグ、8 ユニット連結体、
10 ポンプユニット、12 内筒、14 外筒、16 端部部材、100 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8