IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 日立パワーデバイスの特許一覧

特開2024-155630半導体装置および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155630
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241024BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/78 658F
H01L29/78 658J
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L29/78 655F
H01L29/78 655B
H01L29/91 C
H01L29/06 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070505
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森塚 翼
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(57)【要約】
【課題】膜応力によるクラックの発生を抑止し、かつ高温高湿バイアス試験耐性向上を図ることができる。
【解決手段】IGBTチップ1は、n-型の半導体基板6と、n-型の半導体基板6の表面部に部分的に形成されるp型拡散層8と、n-型の半導体基板6とp型拡散層8とに接する層間絶縁膜9と、p型拡散層8と層間絶縁膜9とに接するフィールドプレート電極12と、を備え、フィールドプレート電極12は、表面に、窒化物を含んでなる無機膜からなるAlN系改質層21を有し、層間絶縁膜9は、表面に、窒化物を含んでなる無機膜からなるSiON系改質層22を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の表面部に部分的に形成される第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とに接する層間絶縁膜と、前記第2半導体層と前記層間絶縁膜とに接するフィールドプレート電極と、を備え、
前記フィールドプレート電極は、表面に、窒化物を含んでなる無機膜からなる第1改質層を有し、
前記層間絶縁膜は、表面に、前記窒化物を含んでなる無機膜からなる第2改質層を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体層と前記層間絶縁膜とに接するエミッタ電極を備え、
前記エミッタ電極は、表面に、前記窒化物を含んでなる前記第1改質層を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体層と前記層間絶縁膜とに接するアノード電極を備え、
前記アノード電極は、表面に、前記窒化物を含んでなる前記第1改質層を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フィールドプレート電極は、アルミニウム系電極であり、
前記第1改質層は、前記アルミニウム系電極を前記窒化処理により改質した窒化アルミニウムである
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2改質層は、酸窒化シリコンである
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域と、
前記アクティブ領域を囲むように前記主面に配置されたターミネーション領域と、を備え、
前記ターミネーション領域は、前記フィールドプレート電極と、前記層間絶縁膜と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域の前記エミッタ電極の前記第1改質層は、除去されている
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域の前記アノード電極の前記第1改質層は、除去されている
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1半導体層の表面部に第2導電型の第2半導体層を部分的に形成する工程と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層とに接する層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2半導体層と前記層間絶縁膜とに接するフィールドプレート電極を形成する工程と、
前記フィールドプレート電極および前記層間絶縁膜を窒化処理して、表面に窒化物を含んでなる無機膜からなる改質層を形成する工程と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体チップの耐圧劣化の原因の1つとして、チップ終端部における電界集中がある。パワー半導体チップの表面に接合を形成すると、逆バイアス印加時に終端部において空乏層が扇型に広がる。扇型の領域の電荷の電気力線はチップ終端部に集まり、いわゆる電界集中が生じる。その結果、理論耐圧よりかなり低い電圧でアバランシェ降伏(絶縁破壊)が起こる。
チップ終端部における電界集中を緩和するために、逆バイアス印加時に扇型に広がった空乏層領域の電荷からの電気力線の行き先をチップ終端部から終端構造(以下、ターミネーション領域とも呼ぶ)全体へ分散させる必要がある。
【0003】
パワー半導体は様々な過酷な環境下で使用されるため、複数にわたる信頼性項目を満たす必要性がある。要求される信頼性項目の1つとして高温高湿環境下において一定の電圧を印加し続ける、高温高湿バイアス試験(H3TRB)耐性がある。
Al電極で形成されたフィールドプレート構造を持つパワー半導体では、高温高湿環境下での水分により、Al電極が腐食し、リーク電流の増大や耐圧劣化を起こすことが知られている。
【0004】
特許文献1には、半導体部分と、終端絶縁膜と、第1保護膜と、第2電極と、終端電極と、第1絶縁膜と、第2保護膜と、を備える半導体装置が記載されている。特許文献1に記載の半導体装置は、Al電極上に水分の侵入を防止する無機膜で形成されるパッシベーション領域を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-047410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パッシベーション領域を形成するパッシベーション膜には、耐湿性に優れたシリコン窒化膜系の膜が使われることが多い。しかしながら、シリコン窒化膜は応力が大きく、膜厚によっては、パッシベーション膜形成後のプロセスでの熱処理による熱応力や実装時の応力等によりクラックが生じるリスクがある。クラックが生じてしまうと、水分を防止する機能が失われ、H3TRB耐性の低下につながる。
また、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域では、パッシベーション膜を除去する必要がある。このため、パッシベーション膜除去の加工工程を設ける必要があり、工程の増加を招くこととなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、膜応力によるクラックの発生を抑止し、かつ高温高湿バイアス試験耐性向上を図ることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の表面部に部分的に形成される第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とに接する層間絶縁膜と、前記第2半導体層と前記層間絶縁膜とに接するフィールドプレート電極と、を備え、前記フィールドプレート電極は、表面に、窒化物を含んでなる無機膜からなる第1改質層を有し、前記層間絶縁膜は、表面に、前記窒化物を含んでなる無機膜からなる第2改質層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膜応力によるクラックの発生を抑止し、かつ高温高湿バイアス試験耐性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の外観を示す平面図である。
図2図1のA-A’断面図である。
図3A】本発明の実施形態に係る半導体装置の表面電極形成前の製造工程の断面図である。
図3B図3Aに続く表面電極形成後の製造工程の断面図である。
図3C図3Bに続くプラズマ窒化処理後の製造工程の断面図である。
図3D図3Cに続く有機系保護膜形成後の製造工程の断面図である。
図3E図3Dに続くアクティブ領域の改質層除去後の製造工程の断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の外観を示す平面図である。
図5図4のB-B’断面図である。
図6A】本発明の実施形態に係る半導体装置の表面電極形成前の製造工程の断面図である。
図6B図6Aに続く表面電極形成後の製造工程の断面図である。
図6C図6Bに続くプラズマ窒化処理後の製造工程の断面図である。
図6D図6Cに続く有機系保護膜形成後の製造工程の断面図である。
図6E図6Dに続くアクティブ領域の改質層除去後の製造工程の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
(第1の実施形態)
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。図1は、本実施形態の半導体装置の外観を示す平面図であり、図2は、図1のA-A’断面図である。
以下では、半導体装置としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)チップを例に説明するが、本発明の対象はこれに限定されるものではなく、ダイオード(Diode)やサイリスタ、パワーMOSFET、DMOSFET(Double-Diffused MOSFET)等にも適用することが可能である。ダイオードに適用した例については後記する。
【0012】
図1に示すように、IGBTチップ1(半導体装置)は、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域5と、アクティブ領域5の周囲を囲むように配置されたターミネーション領域4を備えている。アクティブ領域5上には、エミッタ電極2およびゲート電極パッド3が形成されている。ターミネーション領域4は、IGBTチップ1のチップ終端部における電界集中を緩和する終端構造、すなわち電界緩和領域である。
【0013】
図2に示すように、ターミネーション領域4は、例えば、n-型の半導体基板6(第1導電型の第1半導体層)の主面に形成された複数のガードリング7(第2導電型の第2半導体層)と、p型拡散層8(第2導電型の第2半導体層)と、半導体基板6の主面上に形成された層間絶縁膜9と、層間絶縁膜9中に形成されたゲート配線10と、層間絶縁膜9上に形成され、層間絶縁膜9に形成された開孔を貫通してゲート配線10に接続されたゲート電極11と、層間絶縁膜9上に形成され、層間絶縁膜9に形成された開孔を貫通してガードリング7に接続されたフィールドプレート電極12と、層間絶縁膜9上に形成され、層間絶縁膜9に形成された開孔を貫通してp型拡散層8に接続されたエミッタ電極2と、層間絶縁膜9およびAl電極(エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12)を覆うように形成された有機系保護膜13と、を有する。ゲート電極11は、図1に示すゲート電極パッド3に電気的に接続される。
【0014】
IGBTチップ1は、電流を通電するアクティブ領域であるアクティブ部31と、ゲート配線10およびゲート電極11を有する領域であるゲートフィンガー部32と、耐圧を保持するターミネーション領域であるターミネーション部33と、を有する。
ゲートフィンガー部32は、拡散層であるウエル領域(P-well)と、ウエル領域に電気的に接続されたゲート電極11を有し、ターミネーション領域(ターミネーション部33)は、拡散層であるウエル領域(P-well)と、ウエル領域に電気的に接続されたフィールドプレート電極12を有する。
【0015】
n型の半導体基板6は、Si基板である。n型の半導体基板6は、SiC基板やGaN基板などを用いてもよい。
ガードリング7およびp型拡散層8は、イオン注入により半導体基板6の表面に形成されたp型拡散層である。
層間絶縁膜9は、後述するパイロジェニック酸化等により形成されたゲート酸化膜、およびTEOS(Tetra Ethoxy Silane)膜やBPSG(Boron-phospho silicate glass)膜等の層間膜からなり、いずれもシリコン酸化膜(SiO)である。
【0016】
フィールドプレート電極12は、例えばTi/(以下の説明において、「/」は「または」を表記する)TiN/Al、MoSi/Alなどの積層膜からなる電極膜であり、アクティブ領域(アクティブ部31)のエミッタ電極2やゲート電極パッド3(図1)と同層で形成される。
【0017】
エミッタ電極2、ゲート配線10、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12は、Al電極(Al系電極)からなる。
【0018】
非アクティブ領域のエミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12の各電極の表面は、Al電極そのものがプラズマ窒化処理(例えば、NプラズマやNHプラズマ処理)され、AlN系改質層21(第1改質層)が形成されている。すなわち、非アクティブ領域のエミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12は、表面部分にプラズマ窒化処理により形成されたAlN系改質層21を有する。
本実施形態では、プラズマ窒化処理を用いているが、プラズマ以外の窒化処理、例えば熱窒化処理、イオン窒化処理やラジカル窒化処理を用いてもよい。
【0019】
AlN系改質層21は、各電極の表面を改質するだけであるため、各電極の膜厚はプラズマ窒化処理前と変わらない。
【0020】
上記プラズマ窒化処理により、エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12の表面にAlN系改質層21を形成する場合、各電極間の層間絶縁膜表面にも同時に、SiON系改質層22(第2改質層)が形成される。
【0021】
すなわち、1工程のプラズマ窒化処理工程で、エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12の表面に、AlN系改質層21が形成され、各電極間の層間絶縁膜9の表面に、SiON系改質層22が形成される。
【0022】
有機系保護膜13は、例えばポリイミド膜が用いられる。
半導体基板6の裏面には、基板側から順に、n型バッファ層14、p型コレクタ層15、コレクタ電極16が形成されている。
【0023】
以下、上述のように構成されたIGBTチップ1の動作について説明する。
[IGBTチップ1の動作]
アクティブ領域(アクティブ部31)内において、ゲート電極11-エミッタ電極2間に電圧が印加されると、ゲート配線10のゲート酸化膜直下にnチャネル反転層が形成され、MOSFET部分がONになる。そして、コレクタ電極16-エミッタ電極2間に電圧が印加されると、コレクタ電極16からエミッタ電極2に向かって正孔のなだれ込みが発生し、コレクタ電極16-エミッタ電極2間に電流が流れ、IGBTがオンになる。ゲート電極11-エミッタ電極2間の電圧を0(ゼロ)に戻すと反転層が無くなり、MOSFET部分のnチャネルが遮断され、IGBTがオフになる。
【0024】
[IGBTチップ1の製造方法]
図3A乃至図3Eは、IGBTチップ1の製造工程を示す断面図である。図3Aは、表面電極形成前の製造工程の断面図、図3Bは、表面電極形成後の製造工程の断面図、図3Cは、プラズマ窒化処理後の製造工程の断面図、図3Dは、有機系保護膜形成後の製造工程の断面図、図3Eは、アクティブ領域の改質層除去後の製造工程の断面図である。
なお、各図では主にターミネーション領域(ターミネーション部33)の製造過程の断面を示す。
【0025】
まず、乾燥酸素(O)を用いたドライ酸化や、酸素(O)と水素ガス(H)の燃焼反応による水蒸気を用いたウェット酸化(パイロジェニック酸化)を用いた選択酸化により、n-型の半導体基板6の主面にゲート酸化膜(SiO)(図示せず)を形成する。その後、低圧CVD装置等により、このゲート酸化膜上にポリシリコン膜(Poly-Si)(図示せず)を成膜し、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、ゲート電極(図2の符号11)を形成する。続いて、イオン注入により、半導体基板6の主面にホウ素(B)などのp型不純物を打ち込み、p型拡散層7、8を形成する。このp型拡散層7は、ガードリング(図2の符号7)として機能する。
【0026】
次に、図3Aに示すように、プラズマCVD装置や常圧CVD装置等により、ゲート酸化膜(図示せず)およびゲート配線10を覆うように、半導体基板6の主面上にTEOS膜やBPSG膜などの層間絶縁膜(SiO)9を成膜する。その後、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、層間絶縁膜9にp型拡散層8、ガードリング7まで貫通する開孔(コンタクトホール)17を形成する。この際、ゲート配線10上にも開孔(コンタクトホール)17が形成される。
【0027】
次に、図3Bに示すように、プラズマCVD装置やスパッタリング装置等により、層間絶縁膜9を覆い、なおかつ、層間絶縁膜9に形成した開孔(コンタクトホール)17内を埋め込むように、半導体基板6の主面上に例えばTi/TiN/Al、MoSi/Alなどからなる電極膜(図示略)を成膜する。その後、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12(図2)を形成する。
【0028】
次に、図3Cに示すように、N2プラズマやNH3プラズマを用いたプラズマ窒化処理により、Al電極(エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12)と層間絶縁膜9の表面に改質層(AlN系改質層21とSiON系改質層22)を形成する。すなわち、1工程のプラズマ窒化処理工程により、エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12の表面に、AlN系改質層21を形成し、各電極間の層間絶縁膜9の表面に、SiON系改質層22を形成する。
【0029】
AlN系改質層21は、各電極の表面を改質するだけであるため、各電極の膜厚はプラズマ窒化処理前と変わらない。
【0030】
次に、図3Dに示すように、塗布装置により、AlN系改質層21を有するエミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12を覆うように、半導体基板6の主面上に有機系保護膜(ポリイミド膜)13を塗布する。
【0031】
次に、図3Eに示すように、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、アクティブ領域のエミッタ電極2表面のAlN系改質層21を除去する。
【0032】
最後に、半導体基板6の裏面に、裏面工程として、基板側から順に、n型バッファ層14、p型コレクタ層15、コレクタ電極16を形成する。
以上のような製造工程を経て、図2に示す終端構造が形成される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のIGBTチップ1(半導体装置)(図1図2)は、n-型の半導体基板6(第1導電型の第1半導体層)と、n-型の半導体基板6の表面部に部分的に形成されるp型拡散層8(第2導電型の第2半導体層)と、n-型の半導体基板6とp型拡散層8とに接する層間絶縁膜9と、p型拡散層8と層間絶縁膜9とに接するフィールドプレート電極12と、を備え、フィールドプレート電極12は、表面に、プラズマ窒化処理により形成された無機膜からなるAlN系改質層21(第1改質層)を有し、層間絶縁膜9は、表面に、窒化処理(例えば、プラズマ窒化処理)により形成された無機膜からなるSiON系改質層22(第2改質層)を有する。
【0034】
また、IGBTチップ1の製造方法(図3A乃至図3E)は、n-型の半導体基板6(第1導電型の第1半導体層)の表面部にp型拡散層8(第2導電型の第2半導体層)を部分的に形成する工程と、n-型の半導体基板6とp型拡散層8とに接する層間絶縁膜9を形成する工程と、p型拡散層8と層間絶縁膜9とに接するフィールドプレート電極12を形成する工程と、フィールドプレート電極12および層間絶縁膜9を窒化処理(例えば、プラズマ窒化処理)して、表面に窒化物を含んでなる改質層(AlN系改質層21、SiON系改質層22)を形成する工程と、を有する。
【0035】
このように、フィールドプレート電極12を形成後、Al電極(エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12)そのものをプラズマ窒化処理(例えば、NプラズマやNHプラズマ等)する。プラズマ窒化処理により、エミッタ電極2、ゲート電極11、およびフィールドプレート電極12の表面にAlN系改質層21が形成され、各電極間の層間絶縁膜9表面にも同時に、SiON系改質層22が形成される。
【0036】
本実施形態のIGBTチップ1(図1図2)のAlN系改質層21は、Al電極の表面の耐湿性を向上させることで、Al電極の腐食を防止し、H3TRB耐性を向上させることができる。
AlN系改質層21は、各Al電極の表面を改質するだけであるため、各電極の膜厚はプラズマ窒化処理前と変わらない。このため、膜応力によるクラックの発生を抑止できる。
【0037】
また、層間絶縁膜9であるSiOも同時に窒化処理され、表面がSiON層となることで、層間絶縁膜9を介して侵入する水分も防止することが可能であり、H3TRB耐性向上が期待できる。
【0038】
以上、膜応力によるクラックの発生を抑止しつつ、IGBTチップ1の表面側からの水分の浸入を確実に防止し、高温高湿バイアス試験耐性向上を図ることができる。
【0039】
また、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域において、パッシベーション膜を除去する工程が不要となり、工程を低減することができる。
【0040】
本実施形態のIGBTチップ1(図1図2)において、p型拡散層8(第2半導体層)と層間絶縁膜9とに接するエミッタ電極2を備え、エミッタ電極2は、表面に、プラズマ窒化処理により形成されたAlN系改質層21を有する。
【0041】
このようにすることにより、IGBTチップ1は、AlN系改質層21(第1改質層)が、エミッタ電極2の表面の耐湿性を向上させることで、エミッタ電極2の腐食を防止し、H3TRB耐性を向上させることができる。また、エミッタ電極2において、膜応力によるクラックの発生を抑止できる。
【0042】
本実施形態のIGBTチップ1(図1図2)において、フィールドプレート電極12は、アルミニウム系電極であり、AlN系改質層21は、アルミニウム系電極をプラズマ窒化処理により改質した窒化アルミニウムである。
【0043】
このようにすることにより、IGBTチップ1は、AlN系改質層21が、エミッタ電極2の表面の耐湿性を向上させることで、エミッタ電極2の腐食を防止し、H3TRB耐性を向上させることができる。
【0044】
本実施形態のIGBTチップ1(図1図2)において、SiON系改質層22(第2改質層)は、酸窒化シリコンである。
【0045】
このようにすることにより、IGBTチップ1は、SiON系改質層22が、層間絶縁膜9を介して侵入する水分も防止することができ、H3TRB耐性を向上させることが。
【0046】
本実施形態のIGBTチップ1(図1図2)において、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域(アクティブ部31)と、アクティブ領域を囲むように主面に配置されたターミネーション領域(ターミネーション部33)と、を備え、ターミネーション領域は、フィールドプレート電極12と、層間絶縁膜9と、を備える。
【0047】
このようにすることにより、IGBTチップ1は、比較的簡単な方法でチップの終端構造(ターミネーション領域)の高温高湿バイアス耐性を向上しつつ、デバイス特性への影響を抑制可能な信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0048】
本実施形態のIGBTチップ1(図1図2)において、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域のエミッタ電極2のAlN系改質層21(第1改質層)は、除去されている。
【0049】
このようにすることにより、IGBTチップ1は、アクティブ領域のエミッタ電極2のAlN系改質層21を除去することで、エミッタ電極2への電気的な接続が可能になる。
【0050】
(第2の実施形態)
図4および図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。図4は、本実施形態の半導体装置の外観を示す平面図であり、図5は、図4のB-B’断面図である。半導体装置として、ダイオードに適用した例である。
【0051】
図4に示すように、ダイオード50(半導体装置)は、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域55と、アクティブ領域55の周囲を囲むように配置されたターミネーション領域54を備えている。ターミネーション領域54は、ダイオード50のチップ終端部における電界集中を緩和する終端構造、すなわち電界緩和領域である。
【0052】
図4に示すように、ターミネーション領域54は、例えば、n-型の半導体基板56の主面に形成された複数のガードリング57と、P層58と、半導体基板56の主面上に形成された層間絶縁膜59と、層間絶縁膜59上に形成され、層間絶縁膜59に形成された開孔を貫通してガードリング57に接続されたフィールドプレート電極61と、層間絶縁膜59上に形成され、層間絶縁膜59に形成された開孔を貫通してP層58に接続されたアノード電極60と、層間絶縁膜59およびAl電極(アノード電極60、フィールドプレート電極61)を覆うように形成された有機系保護膜63と、を有する。
【0053】
ダイオード50は、電流を通電するアクティブ領域であるアクティブ部81と、耐圧を保持するターミネーション領域であるターミネーション部82と、を有する。
アクティブ領域(アクティブ部81)は、P層58と、アノード電極60と、を有する。ターミネーション領域(ターミネーション部82)は、拡散層であるウエル領域(P-well)と、ウエル領域に電気的に接続されたフィールドプレート電極61を有する。
【0054】
n型の半導体基板56は、Si基板である。n型の半導体基板56は、SiC基板やGaN基板などを用いてもよい。
ガードリング57は、イオン注入により半導体基板56の表面に形成されたp型拡散層である。
P層58は、アノード電極60に接続され、ダイオード50のアノードとなる。
層間絶縁膜59は、パイロジェニック酸化等により形成されたゲート酸化膜、およびTEOS膜やBPSG膜等の層間膜からなり、いずれもシリコン酸化膜(SiO)である。
【0055】
フィールドプレート電極61は、例えばTi/TiN/Al、MoSi/Alなどの積層膜からなる電極膜であり、アクティブ領域(アクティブ部81)のアノード電極60と同層で形成される。
【0056】
アノード電極60およびフィールドプレート電極61は、Al電極(Al系電極)からなる。
【0057】
非アクティブ領域のアノード電極60およびフィールドプレート電極61の各電極の表面は、Al電極そのものがプラズマ窒化処理(例えば、NプラズマやNHプラズマ処理)され、AlN系改質層71が形成されている。すなわち、非アクティブ領域のアノード電極60およびフィールドプレート電極61は、表面部分にプラズマ窒化処理により形成されたAlN系改質層71を有する。
【0058】
AlN系改質層71は、各電極の表面を改質するだけであるため、各電極の膜厚はプラズマ窒化処理前と変わらない。
【0059】
上記プラズマ窒化処理により、アノード電極60およびフィールドプレート電極61の表面にAlN系改質層71を形成する場合、各電極間の層間絶縁膜表面にも、SiON系改質層72が形成される。
【0060】
すなわち、1工程のプラズマ窒化処理工程で、アノード電極60およびフィールドプレート電極61の表面に、AlN系改質層71が形成され、各電極間の層間絶縁膜59の表面に、SiON系改質層72が形成される。
【0061】
有機系保護膜63は、例えばポリイミド膜が用いられる。
半導体基板6の裏面には、基板側から順に、n型バッファ層64、N層65、カソード電極66が形成されている。
【0062】
以下、上述のように構成されたダイオード50の製造方法について説明する。
図6A乃至図6Eは、ダイオード50の製造工程を示す断面図である。図6Aは、表面電極形成前の製造工程の断面図、図6Bは、表面電極形成後の製造工程の断面図、図6Cは、プラズマ窒化処理後の製造工程の断面図、図6Dは、有機系保護膜形成後の製造工程の断面図、図6Eは、アクティブ領域の改質層除去後の製造工程の断面図である。
なお、各図では主にターミネーション領域(ターミネーション部82)の製造過程の断面を示す。
【0063】
まず、乾燥酸素(O)を用いたドライ酸化や、酸素(O)と水素ガス(H2)の燃焼反応による水蒸気を用いたウェット酸化(パイロジェニック酸化)を用いた選択酸化により、n-型の半導体基板56の主面にゲート酸化膜(SiO)(図示せず)を形成する。その後、低圧CVD装置等により、このゲート酸化膜上にポリシリコン膜(Poly-Si)(図示せず)を成膜し、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、ゲート電極(図2の符号11)を形成する。続いて、イオン注入により、半導体基板56の主面にホウ素(B)などのp型不純物を打ち込み、p型拡散層57、P層58を形成する。このp型拡散層57は、ガードリング(図5の符号57)として機能する。P層58は、ダイオード50のアノードとなる。
【0064】
次に、図6Aに示すように、プラズマCVD装置や常圧CVD装置等により、半導体基板56の主面上にTEOS膜やBPSG膜などの層間絶縁膜(SiO)59を成膜する。その後、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、層間絶縁膜9にガードリング57まで貫通する開孔(コンタクトホール)67を形成する。
【0065】
次に、図6Bに示すように、プラズマCVD装置やスパッタリング装置等により、層間絶縁膜59を覆い、なおかつ、層間絶縁膜59に形成した開孔(コンタクトホール)67内を埋め込むように、半導体基板56の主面上に例えばTi/TiN/Al、MoSi/Alなどからなる電極膜(図示略)を成膜する。その後、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、アノード電極60およびフィールドプレート電極61(図5)を形成する。
【0066】
次に、図6Cに示すように、N2プラズマやNH3プラズマを用いたプラズマ窒化処理により、Al電極(アノード電極60およびフィールドプレート電極61)と層間絶縁膜9の表面に改質層(AlN系改質層71とSiON系改質層72)を形成する。すなわち、1工程のプラズマ窒化処理工程により、アノード電極60およびフィールドプレート電極61の表面に、AlN系改質層71を形成し、各電極間の層間絶縁膜59の表面に、SiON系改質層72を形成する。
【0067】
AlN系改質層71は、各電極の表面を改質するだけであるため、各電極の膜厚はプラズマ窒化処理前と変わらない。
【0068】
次に、図6Dに示すように、塗布装置により、AlN系改質層71を有するアノード電極60およびフィールドプレート電極61を覆うように、半導体基板56の主面上に有機系保護膜(ポリイミド膜)63を塗布する。
【0069】
次に、図6Eに示すように、フォトリソグラフィによるパターニングおよびエッチングにより、アクティブ領域のアノード電極60表面のAlN系改質層71を除去する。
【0070】
最後に、半導体基板56の裏面に、裏面工程として、基板側から順に、n型バッファ層64、N層65、カソード電極66を形成する。
以上のような製造工程を経て、図5に示す終端構造が形成される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のダイオード50(半導体装置)(図4図5)は、n-型の半導体基板56(第1導電型の第1半導体層)と、n-型の半導体基板56の表面部に部分的に形成されるp型拡散層57(第2導電型の第2半導体層)と、n-型の半導体基板56とp型拡散層57とに接する層間絶縁膜59と、p型拡散層57と層間絶縁膜59とに接するフィールドプレート電極61と、を備え、フィールドプレート電極61は、表面に、窒化処理(例えば、プラズマ窒化処理)により形成された(窒化物を含んでなる)無機膜からなるAlN系改質層71(第1改質層)を有し、層間絶縁膜59は、表面に、窒化処理(例えば、プラズマ窒化処理)により形成された(窒化物を含んでなる)無機膜からなるSiON系改質層72(第2改質層)を有する。
【0072】
また、ダイオード50の製造方法(図6A乃至図6E)は、n-型の半導体基板56(第1導電型の第1半導体層)の表面部にp型拡散層57(第2導電型の第2半導体層)を部分的に形成する工程と、n-型の半導体基板56とp型拡散層57とに接する層間絶縁膜59を形成する工程と、p型拡散層57と層間絶縁膜59とに接するフィールドプレート電極61を形成する工程と、フィールドプレート電極61および層間絶縁膜59を窒化処理(例えば、プラズマ窒化処理)して、表面に窒化物を含んでなる無機膜からなる改質層(AlN系改質層71、SiON系改質層72)を形成する工程と、を有する。
【0073】
このようにすることにより、本実施形態のダイオード50(図4図5)は、第1の実施形態のIGBTチップ1(図1図2)と同様に、AlN系改質層71が、Al電極の表面の耐湿性を向上させることで、Al電極の腐食を防止し、H3TRB耐性を向上させることができる。
【0074】
AlN系改質層71は、各Al電極の表面を改質するだけであるため、各電極の膜厚はプラズマ窒化処理前と変わらない。このため、膜応力によるクラックの発生を抑止できる。
【0075】
また、層間絶縁膜59であるSiOも同時に窒化処理され、表面がSiON層となることで、層間絶縁膜59を介して侵入する水分も防止することが可能であり、H3TRB耐性向上が期待できる。
【0076】
以上、膜応力によるクラックの発生を抑止しつつ、ダイオード50の表面側からの水分の浸入を確実に防止し、高温高湿バイアス試験耐性向上を図ることができる。
【0077】
また、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域において、パッシベーション膜を除去する工程が不要となり、工程を低減することができる。
【0078】
本実施形態のダイオード50(図4図5)において、p型拡散層57(第2半導体層)と層間絶縁膜59とに接するアノード電極60を備え、アノード電極60は、表面に、プラズマ窒化処理により形成されたAlN系改質層71を有する。
【0079】
このようにすることにより、ダイオード50は、AlN系改質層71(第1改質層)が、エミッタ電極2の表面の耐湿性を向上させることで、アノード電極60の腐食を防止し、H3TRB耐性を向上させることができる。また、アノード電極60において、膜応力によるクラックの発生を抑止できる。
【0080】
本実施形態のダイオード50(図4図5)において、半導体基板の主面に配置されたアクティブ領域のアノード電極60のAlN系改質層71(第1改質層)は、除去されている。
【0081】
このようにすることにより、ダイオード50は、アクティブ領域のアノード電極60のAlN系改質層71を除去することで、アノード電極60への電気的な接続が可能になる。
【0082】
なお、本発明は、上述したようなターミネーション領域にガードリング7,57およびフィールドプレート電極12,61を設ける構造とすることが多い高耐圧製品に対して特に有効であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。ガードリング7,57やフィールドプレート電極12,61を用いない他の終端構造を採用する半導体チップや、比較的低耐圧の製品にも適用することができる。
【0083】
また、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、IGBTを用いているが、これらに限らず、他の種類の素子を適用することも可能である。なお、デバイスに応じて、主端子やセンス端子の名称が、上述の「コレクタ」および「エミッタ」に代えて、「ドレイン」および「ソース」と呼称される。
【符号の説明】
【0084】
1 IGBTチップ(半導体装置)
2 エミッタ電極
3 ゲート電極パッド
6,56 半導体基板(第1導電型の第1半導体層)
7,57 ガードリング
8 p型拡散層(第2導電型の第2半導体層)
9,59 層間絶縁膜
10 ゲート配線
11 ゲート電極
12,61 フィールドプレート電極
13,63 有機系保護膜
14 n型バッファ層
15 p型コレクタ層
16 コレクタ電極
21,71 AlN系改質層(第1改質層)
22,72 SiON系改質層(第2改質層)
31,81 アクティブ部(アクティブ領域)
32 ゲートフィンガー部
33,82 ターミネーション部(ターミネーション領域)
50 ダイオード(半導体装置)
58 P層
64 n型バッファ層
65 N
66 カソード電極
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E