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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155632
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】扉体
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20241024BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20241024BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/66 Z
E06B3/70 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070508
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】持田 典之
【テーマコード(参考)】
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E016AA02
2E016BA09
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016HA02
2E016JA11
2E016KA02
2E016LB09
2E016LC01
2E016MA01
2E016MA06
2E016QA06
2E239CA04
2E239CA12
2E239CA23
2E239CA26
2E239CA32
2E239CA46
(57)【要約】
【課題】防火性能が向上されたガラス脱落防止構造を備えた扉体を提供する。
【解決手段】
ガラス2が嵌め込まれた扉体1において、扉体1の上框10、左右の縦框11、12、下框13のそれぞれに設けた一対の凸部間には、上側凹溝3、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、ガラス2の四周の端部は、前記四周溝に受け入れられた状態で、一対のバックアップ材5によって挟持されることで固定されており、上側凹溝3を形成する一対の凸部4A、4Bには、各凸部の内側見付面から突出して、一対のバックアップ材5にそれぞれ突き刺された突出要素7が設けてあり、火災時において、バックアップ材5に突き刺された突出要素7によって、ガラス2の抜け出しが規制される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスが嵌め込まれた扉体において、
前記扉体の上框、左右の縦框、下框のそれぞれに設けた一対の凸部間には、上側凹溝、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、
前記ガラスの四周の端部は、前記四周溝に受け入れられた状態で、一対のバックアップ材によって挟持されることで固定されており、
火災時において、少なくとも前記ガラスの上側端部が前記上側凹溝から下方に抜け出すことを規制する抜け出し規制手段を備えたことを特徴とする扉体。
【請求項2】
前記上側凹溝を形成する一対の凸部の下面には、各凸部の内側見付面から突出して、前記一対のバックアップ材のそれぞれの下面に近接ないし当接する突出要素が設けてあり、
火災時において、前記突出要素に前記バックアップ材が引っ掛かることで、前記抜け出し規制手段を構成する、
請求項1に記載の扉体。
【請求項3】
前記上側凹溝を形成する一対の凸部には、各凸部の内側見付面から突出して、前記一対のバックアップ材にそれぞれ突き刺された突出要素が設けてあり、
火災時において、前記バックアップ材に突き刺された前記突出要素が、前記抜け出し規制手段を構成する、
請求項1に記載の扉体。
【請求項4】
前記突出要素は、前記凸部の幅方向に間隔を存して設けた複数の針状要素である、
請求項3に記載の扉体。
【請求項5】
前記上側凹溝を形成する一対の凸部の一方の凸部には、一方のバックアップ材をガラスの一方の見付面に押圧する押圧手段が設けてあり、
前記押圧手段によって、前記ガラスの上側端部が、前記上側凹溝に受け入れられた状態で、一対の圧縮されたバックアップ材によって挟持されており、
火災時において、前記一対の凸部の変形に追従して、前記圧縮されたバックアップ材が復元することで、前記抜け出し規制手段を構成する、
請求項1に記載の扉体。
【請求項6】
前記押圧手段は、前記一方のバックアップ材の外側見付面に当接する押圧板と、
前記押圧板を前記一方の凸部の内側見付面から離間する方向に移動させる螺子と、
からなる、
請求項5に記載の扉体。
【請求項7】
バックアップ材は熱膨張材料から形成されている、請求項1~6いずれか1項に記載の扉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体に係り、詳しくは、防火設備として使用可能なガラス脱落防止構造を備えた扉体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼製ガラス防火戸は、火災時のガラスの脱落防止のため、ガラスが嵌め込まれる溝内に両側からガラス端部を挟み込むようにバックアップ材を嵌め込むことで、ガラスの抜け出しを抑制している。このようなバックアップ材を用いたガラスの抜け出し防止構造は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
しかしながら、扉は鋼製であるため、火災時の熱でガラスを受け入れる溝の広がりが大きくなると、バックアップ材によるガラス保持力が低下して、ガラスが溝から抜け出し、火災側と非火災側が貫通することになり防火性能が確保できなくなるおそれがある。
【特許文献1】特開2014-152581
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、防火性能が向上されたガラス脱落防止構造を備えた扉体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が採用した技術手段は、
ガラスが嵌め込まれた扉体において、
前記扉体の上框、左右の縦框、下框のそれぞれに設けた一対の凸部間には、上側凹溝、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、
前記ガラスの四周の端部は、前記四周溝に受け入れられた状態で、一対のバックアップ材によって挟持されることで固定されており、
火災時において、少なくとも前記ガラスの上側端部が前記上側凹溝から下方に抜け出すことを規制する抜け出し規制手段を備えたことを特徴とする扉体、である。
1つの態様では、前記バックアップ材は熱膨張材料から形成されている。
【0006】
1つの態様では、前記上側凹溝を形成する一対の凸部の下面には、各凸部の内側見付面から突出して、前記一対のバックアップ材のそれぞれの下面に近接ないし当接する突出要素が設けてあり、
火災時において、前記突出要素に前記バックアップ材が引っ掛かることで、前記抜け出し規制手段を構成する。
【0007】
1つの態様では、前記上側凹溝を形成する一対の凸部には、各凸部の内側見付面から突出して、前記一対のバックアップ材にそれぞれ突き刺された突出要素が設けてあり、
火災時において、前記バックアップ材に突き刺された前記突出要素が、前記抜け出し規制手段を構成する。
【0008】
1つの態様では、前記突出要素は、前記凸部の幅方向に間隔を存して設けた複数の針状要素である。
1つの態様では、針状要素は、ベースから突成されており、ベースが凸部の内側見付面の内面に位置しており、針状要素は内側見付面を貫通して突出することで、バックアップ材に挿入されている。
【0009】
1つの態様では、前記上側凹溝を形成する一対の凸部の一方の凸部には、一方のバックアップ材をガラスの一方の見付面に押圧する押圧手段が設けてあり、
前記押圧手段によって、前記ガラスの上側端部が、前記上側凹溝に受け入れられた状態で、一対の圧縮されたバックアップ材によって挟持されており、
火災時において、前記一対の凸部の変形に追従して、前記圧縮されたバックアップ材が復元することで、前記抜け出し規制手段を構成する。
この態様では、押圧手段によってガラスも移動するので、1つの形態では、押圧手段は、四周框に設けられる。あるいは、ガラスを移動させた状態で、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝にバックアップ材を取り付けるようにしてもよい。
【0010】
1つの態様では、前記押圧手段は、前記一方のバックアップ材の外側見付面に当接する押圧板と、
前記押圧板を前記一方の凸部の内側見付面から離間する方向に移動させる螺子と、
からなる。
なお、前記押圧手段は、押圧方向に作用するバネを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、扉体にガラス脱落防止構造を設けたことで、火災時の熱でガラスを受け入れる溝の広がりが大きくなった場合であっても、ガラスが溝から抜け出すことを防止し、防火性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る扉体(全閉姿勢)を含む扉装置の正面図である。
図2】第1実施形態に係るガラス抜け出し規制手段を説明する図である。
図3】第2実施形態に係るガラス抜け出し規制手段を説明する図である。
図4】第2実施形態に係るガラス抜け出し規制手段(針状要素)の実施例を示す図である。
図5】第3実施形態に係るガラス抜け出し規制手段を説明する図である。
図6】第3実施形態に係るガラス抜け出し規制手段の施工手順を説明する図である。
図7】第3実施形態に係るガラス抜け出し規制手段の施工手順を説明する図である。
図8】従来のガラス固定構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[A]扉体におけるガラスの固定構造の概要
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る扉体1は、上框10、戸先側縦框11、戸尻側縦框12、下框13を備えた正面視縦長方形状に形成された開き戸であり、戸先側縦框11に設けた取手14を掴んで扉体1を回動させることで、四周枠状のドア枠DFを開閉するようになっている。上框10、戸先側縦框11、戸尻側縦框12、下框13は扉体1の四周框を形成しており、四周框には当該四周框で囲まれた縦長方形状の開口に面するように凹溝が四周状に形成されており、凹溝には板ガラス2の周端部が挿入されて固定されている。本実施形態に係る扉体1は鋼製ドアであり、四周状の框及び凹溝を形成する凸部は、鋼製(スチール製やステンレス製)である。
【0014】
扉体1の四周状の凹溝は、上側凹溝3と、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝から形成されている。扉体1の四周框の開口に面する部位に一対の凸部を形成することで、この2つの凸部の間に凹溝を形成している。本明細書に添付した図面では、上框10の下端に下向きに突設した第1凸部4A、第2凸部4Bのみが示されているが、戸先側縦框11には、戸尻側に向かって一対の凸部が設けられ、戸尻側縦框12には、戸先側に向かって一対の凸部が設けられ、下框13には、上向きに一対の凸部が突設されることが当業者に理解される。典型的には、一対の凸部の一方の凸部は押縁によって形成される。
【0015】
各凹溝は、対向状の側面(見付面)と、底面と、を備えている。上側凹溝3、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝には、ガラス2の上側端部、左側端部、右側端部、下側端部が、それぞれ受け入れられており、凹溝の側面(見付面)とガラス2の第1見付面20、第2見付面21の周縁部位との間の空隙にバックアップ材5、シーリング材6を充填することで、凹溝内に受け入れられた板ガラス2の端部が固定される。下側凹溝の底面には、扉体1の幅方向に間隔を存して複数のセッティングブロック(図示せず)が設けてあり、ガラス2の下面はセッティングブロックの上面に当接している。
【0016】
ガラスが嵌め込まれる凹溝の構成について、上側凹溝3に基づいて説明する。上側凹溝3についての説明は、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝の説明にも援用され得ることが当業者に理解される。なお、扉体1の四周框にガラス2の周端部を嵌め込むための凹溝をどのように形成するかについての具体的な構成は当業者において適宜設計し得る事項であり、図示の態様に限定されない点に留意されたい。
【0017】
上側凹溝3の構成については、図5に基づいて説明する。図5は、第3実施形態を説明する図であるが、上側凹溝3の基本的構成は、第1実施形態及び第2実施形態と共通する。図5に示すように、上框10は、第1見付面100と、第2見付面101と、上面102と、下端に形成した上側凹溝3と、を備えている。上側凹溝3は、第1凸部4Aと第2凸部4Bの間に形成されている。上側凹溝3は、第1見付面と、第2見付面と、底面(上面)と、から形成されており、第1見付面は第1凸部4Aの部分(内側見付面106)からなり、第2見付面は第2凸部4Bの部分(内側見付面412)からなり、底面(上面)は下側フレーム104の下面部1040からなる。
【0018】
上框10の内部には、断面視コ字形状の上側フレーム103と、下側フレーム104が上下に離間して設けてある。上側フレーム103は、水平状の上面部1030と、上面部1030の見込方向の端部からそれぞれ垂下する第1見付片1031、第2見付片1032と、から断面視コ字形状を備えており、上面102は、上側フレーム103の上面部1030に固定されている。
【0019】
下側フレーム104は、水平状の下面部1040と、下面部1040の見込方向の端部からそれぞれ垂直に立ち上がる第1見付片1041、第2見付片1042と、から断面視コ字形状を備えており、第1見付面100は、上側フレーム103及び下側フレーム104の第1見付片1031、1041面に固定されており、第2見付面101は、上側フレーム103及び下側フレーム104の第2見付片1032、1042に固定されている。第1凸部4A、第2凸部4B、上側凹溝3は、下側フレーム104の下面部1040の下側に形成されている。
【0020】
第1見付面100は、下側フレーム104の下面部1040を越えて下方に延びた延出部100´を有しており、延出部100´が第1凸部4Aの外側見付面を形成している。延出部100´の下端には第2側に向かって水平に延びる下辺が折り曲げ形成されており、下辺が第1凸部4Aの下面105を形成している。尚、本実施形態では、第1側が屋外側、第2側が屋内側であるが、これには限定されない。
【0021】
第1凸部4Aの下方の延出部100´(外側見付面)の内側に離間対向して、内側見付面106が設けてあり、内側見付面106の上端の水平辺1060が下側フレーム104の下面部1040に固定されており、内側見付面106の下端の水平辺1061が下面105に固定されている。第1凸部4Aの内側見付面106が上側凹溝3の第1見付面となっている。なお、第3実施形態に係る内側見付面106を形成する部材の形状は、第1実施形態及び第2実施形態に係る内側見付面106を形成する部材の形状と異なる点に留意されたい。
【0022】
第2見付面101は、下側フレーム104の下面部1040を越えて下方に延びた延出部101´を有しており、延出部101´の下端から第1側に向かって水平に延びる水平辺107と、水平辺107から垂直に立ち上がり、上端が下側フレーム104の下面部1040に当接する垂直辺108と、から、第2凸部4Bのベース40が形成されている。ベース40に押縁41を固定することで、第2凸部4Bが形成される。
【0023】
押縁41は、外側見付面410と、外側見付面410の下端から第1側に水平に延びる下面411と、下面411から垂直に立ち上がり、上端が下側フレーム104の下面部1040に当接し、上端部位がベース40の垂直辺108に当接する内側見付面412と、から形成されており、押縁41の下面411をベース40の水平辺107に螺子42で固定することで第2凸部4Bが形成されている。螺子42の先端は、ベース40内に設けた固定板43に螺合されている。押縁41の内側見付面412が上側凹溝3の第2見付面となっている。なお、押縁41は断面視コ字形状の一部材(図5)から形成しても、あるいは、断面視L形状の2部材(図2図3)を組み合わせて形成してもよい。
【0024】
扉体1に嵌め込まれるガラス2は正面視縦長方形状の板ガラスである。ガラス2は、所定の防火性能を備えたガラスであることが望ましい。また、複数枚のガラス板からなる積層構造を備えた耐熱合わせ板ガラスであってもよい。
【0025】
図8を参照しつつ、従来の扉体の上框におけるガラス脱落防止構造を例にとって、より具体的に説明する。扉体の上框10の下端には、一対の下向き凸部4a、4bが突設されており、凸部4a、4b間にガラス2の上端部位が嵌め込まれる上側凹溝3が形成されている。上側凹溝3内において、ガラス2の上端部位は、一対のバックアップ材5によって両側から挟まれている。バックアップ材5の下側に位置して、シーリング材6が設けてある。火災初期には、シーリング材6は消失され得るが、バックアップ材5は熱膨張材料から形成されており、加熱によりバックアップ材5が発泡して、ガラスの上端部位を両側から挟み込んで抜け出さないように抑える。なお、加熱により厚み方向に数倍に膨張して、かつ、熱膨張後も形状が維持されるような熱膨張性の材料は公知である。例えば、セラミックファイバーに熱膨張性材料を複合した不織布マットが知られている。
【0026】
しかしながら、扉は鋼製であるため、火災中期において、上側凹溝3を形成する一対の凸部4a、4bが火災時の熱で変形して開き気味となり、ガラスが嵌め込まれている上側凹溝3の溝幅が広がる。火災後期において、バックアップ材5の保持力に対して、上側凹溝3の広がりが大きくなってしまうと、バックアップ材5及びガラス2が上側凹溝3から脱落してしまうおそれがある。ガラスが脱落すると、火災側と非火災側が貫通することになり防火性能が確保できなくなる。
【0027】
本実施形態は、ガラス2が嵌め込まれた扉体1において、扉体1の上框10、左右の縦框11、12、下框13のそれぞれに設けた一対の凸部間には、上側凹溝3、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、ガラス2の四周の端部は、前記四周溝に受け入れられた状態で、一対のバックアップ材5A、5Bによって挟持されることで固定されており、火災時において、少なくともガラス2の上側端部が上側凹溝3から下方に抜け出すことを規制する抜け出し規制手段を備えたことを特徴としている。本明細書では、第1実施形態~第3実施形態の3つの実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、上側凹溝に設けた抜け出し規制手段を構成は、他の凹溝に適用し得ることが当業者に理解される。
【0028】
[B]第1実施形態
図2を参照しつつ、第1実施形態について説明する。ガラス2が嵌め込まれた扉体1において、扉体1の上框10、左右の縦框11、12、下框13のそれぞれに設けた一対の凸部4A、4B間には、上側凹溝3、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、ガラス2の四周の端部は、四周溝に受け入れられた状態で、一対のバックアップ材5A、5Bによって挟持されることで固定されている。
【0029】
より具体的には、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bは、それぞれ、第1見付面(内側見付面)、第2見付面(外側見付面)を備え、ガラス2は、第1見付面20と、第2見付面21と、を備え、第1バックアップ材5Aの第1見付面がガラス2の第1見付面20に当接し、第1バックアップ材5Aの第2見付面が第1凸部4Aの内側見付面106(上側凹溝3の第1見付面)に当接し、第2バックアップ材5Bの第1見付面がガラス2の第2見付面21に当接し、第2バックアップ材5Bの第2見付面が第2凸部4Bの内側見付面412(上側凹溝3の第2見付面)に当接している。
【0030】
第1実施形態では、上側凹溝3を形成する一対の凸部4A、4Bの下面には、第1凸部4Aの内側見付面106、第2凸部4Bの内側見付面412の下端から突出して、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bのそれぞれの下面に近接ないし当接する突出要素が設けてあり、火災時において、前記突出要素に第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが引っ掛かることで、火災時のガラス抜け出し規制手段を形成している。
【0031】
より具体的には、第1凸部4Aの下面105を形成する下辺の先端には、第1凸部4Aの内側見付面106から突出する第1突片(突出要素)105´が形成されている。第2凸部4Bの下面411を形成する下辺の先端には、第2凸部4Bの内側見付面412から突出する第2突片(突出要素)411´が形成されている。
【0032】
図2に示す態様では、第1突片105´は、第1凸部4Aの内側見付面106とガラス2の第1見付面20との間に嵌め込まれた第1バックアップ材5Aの下側に近接(離間)して位置しており、第2突片411´は、第2凸部4Bの内側見付面412とガラス2の第2見付面21との間に嵌め込まれた第2バックアップ材5Bの下側に近接(離間)して位置している。
【0033】
第1突片105´の先端とガラス2の第1見付面20は離間しており、第1バックアップ材5Aの下面と第1突片105´との隙間、第1突片105´とガラス2の第1見付面20との隙間を塞ぐようにシーリング材6が充填されている。第2突片411´の先端とガラス2の第2見付面21は離間しており、第2バックアップ材5Bの下面と第2突片411´との隙間、第2突片411´とガラス2の第2見付面21との隙間を塞ぐようにシーリング材6が充填されている。
【0034】
図2左図の状態において、火災時には、火災時の熱で第1凸部4A、第2凸部4Bが開くように変形し得るが、変形量が小さい段階では、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bは熱膨張材料から形成されているため、加熱により第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが発泡して、ガラスの上端部位を両側から挟み込んで抜け出さないように抑える。
【0035】
さらなる熱変形によって、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bの保持力に対して、上側凹溝3の広がりが大きくなってしまうと、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5B及びガラス2が上側凹溝3から脱落してしまうおそれがあるが、仮に、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが下がり気味となった場合には、第1バックアップ材5Aの下端が第1突片105´に引っ掛かり、第2バックアップ材5Bの下端が第2突片411´に引っ掛かることで、ガラス2の上端部位が上側凹溝3から抜け出すことを防止する。
【0036】
[C]第2実施形態
図3、4を参照しつつ、第2実施形態について説明する。ガラス2が嵌め込まれた扉体1において、扉体1の上框10、左右の縦框11、12、下框13のそれぞれに設けた一対の凸部4A、4B間には、上側凹溝3、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、ガラス2の四周の端部は、四周溝に受け入れられた状態で、一対のバックアップ材5A、5Bによって挟持されることで固定されている。
【0037】
より具体的には、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bは、それぞれ、第1見付面(内側見付面)、第2見付面(外側見付面)を備え、ガラス2は、第1見付面20と、第2見付面21と、を備え、第1バックアップ材5Aの第1見付面がガラス2の第1見付面20に当接し、第1バックアップ材5Aの第2見付面が第1凸部4Aの内側見付面106(上側凹溝3の第1見付面)に当接し、第2バックアップ材5Bの第1見付面がガラス2の第2見付面21に当接し、第2バックアップ材5Bの第2見付面が第2凸部4Bの内側見付面412(上側凹溝3の第2見付面)に当接している。
【0038】
第2実施形態では、上側凹溝3を形成する第1凸部4A、第2凸部4Bには、第1凸部4Aの内側見付面106、第2凸部4Bの内側見付面412から突出して、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bにそれぞれ突き刺された突出要素が設けてあり、火災時において、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bに突き刺された前記突出要素が、火災時のガラス抜け出し規制手段を形成している。
【0039】
より具体的には、前記突出要素は、第1凸部4A、第2凸部4Bの幅方向(扉体1ないし上框10の幅方向)に間隔を存して設けた複数の針状要素7であり、第1凸部4Aの内側見付面106から突出した針状要素7が第1バックアップ材5Aに挿入されており、第2凸部4Bの内側見付面412から突出した針状要素7が第2バックアップ材5Bに挿入されている。
【0040】
図3左図の状態において、火災時には、火災時の熱で第1凸部4A、第2凸部4Bが開くように変形し得るが、変形量が小さい段階では、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bは熱膨張材料から形成されているため、加熱により第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが発泡して、ガラスの上端部位を両側から挟み込んで抜け出さないように抑える。
【0041】
さらなる熱変形によって、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bの保持力に対して、上側凹溝3の広がりが大きくなってしまうと、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5B及びガラス2が上側凹溝3から脱落してしまうおそれがあるが、仮に、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが下がり気味となった場合には、複数本の針状要素7によって、第1バックアップ材5Aの外側見付面と第1凸部4Aの内側見付面106との固定状態及び第2バックアップ材5Bの外側見付面と第2凸部4Bの内側見付面412との固定状態が維持されることで、ガラス2の上端部位が上側凹溝3から抜け出すことを防止する。
【0042】
図4を参照しつつ、針状要素7の実施形態について説明する。図4(A)に示すように、針状要素7は、ベース70から突成されている。ベース70は、第1凸部4Aの内側見付面106の裏面、第2凸部4Bの内側見付面412の裏面に位置しており、針状要素7は内側見付面106、内側見付面412を貫通して突出している。
【0043】
図4(B)に示す態様では、ベース70は、上框10(内側見付面106、内側見付面412)の幅方向に延びる長尺プレートであり、ベース70の長さ方向に間隔を存して複数の針状要素7が突成されている。図4(C)に示す態様では、針状要素7は、1つのベース70に1本の針状要素7が突成された鋲であり、複数個の鋲が、内側見付面106、内側見付面412の幅方向に間隔を存して設けてある。
【0044】
[D]第3実施形態
図5~7を参照しつつ、第3実施形態について説明する。ガラス2が嵌め込まれた扉体1において、扉体1の上框10、左右の縦框11、12、下框13のそれぞれに設けた一対の凸部4A、4B間には、上側凹溝3、左側凹溝、右側凹溝、下側凹溝からなる四周溝が形成されており、ガラス2の四周の端部は、四周溝に受け入れられた状態で、圧縮状態にある一対のバックアップ材5A´、5B´によって挟持されることで固定されている。
【0045】
より具体的には、上側凹溝3を形成する一対の凸部4A、4Bの一方の第1凸部4Aには、第1バックアップ材5Aをガラス2の第1見付面20に押圧する押圧手段が設けてあり、前記押圧手段によって、ガラス2の上側端部が、上側凹溝3に受け入れられた状態で、一対の圧縮されたバックアップ材5A´、5B´によって挟持されており、火災時において、一対の凸部4A、4Bの変形に追従して、前記圧縮されたバックアップ材5A´、5B´が復元かつ発泡することで、ガラス2の上端部位が上側凹溝3から抜け出すことを防止する。
【0046】
図示の態様では、前記押圧手段は、第1バックアップ材5A(圧縮前)の外側見付面に当接する押圧板9と、押圧板9を第1凸部4Aの内側見付面106から離間する方向に移動させる螺子8と、からなる。第1凸部4Aの内側見付面106には、螺子8が貫設された螺子孔80が形成されている。第1バックアップ材5A(圧縮前)の第1見付面がガラス2の第1見付面20に当接し、第1バックアップ材5Aの第2見付面が押圧板9に当接し、第2バックアップ材5Bの第1見付面がガラス2の第2見付面21に当接し、第2バックアップ材5Bの第2見付面が第2凸部4Bの内側見付面412に当接しており、この状態で螺子8を第2側へ締め込むことで、押圧板9が第2側へ移動し、第1バックアップ材5A、ガラス2、第2バックアップ材5Bが一体で第2側へ押し付けられ、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが圧縮状態となり、ガラス2の保持力が強化される。
【0047】
図5の状態において、火災時には、火災時の熱で第1凸部4A、第2凸部4Bが開くように変形し得るが、第1凸部4A、第2凸部4Bの変形に追従して、圧縮された第1バックアップ材5A´、第2バックアップ材5B´が復元かつ発泡することで、ガラス2の上端部位が上側凹溝3から抜け出すことを防止し、さらなる熱変形によって、上側凹溝3の広がりが大きくなった場合には、通常の厚さに復元かつ発泡した第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bがさらに発泡して膨張することで、ガラスの上端部位を両側から挟み込んで抜け出さないように抑えて、ガラス2の上端部位が上側凹溝3から抜け出すことを防止する。
【0048】
図6図7を参照して、第3実施形態に係る抜け出し規制構造の施工手順を説明する。上框10から第2凸部4Bを形成する押縁41を取り外して、第1凸部4Aに螺子8及び押圧板9を取り付ける。螺子8は、第1凸部4Aに見込方向に貫設されており、先端は内側見付面106から突出している。第1凸部4Aの内側見付面106の外面(上側凹溝3に面する面)には押圧板9が設けられる。図示の態様では、押圧板9の下端は第1凸部4Aの下面105を形成する下辺の先端の第1突片105´に載置されている。
【0049】
押圧板9に第1バックアップ材5Aを貼り付け、ガラス2の第1見付面20の上端部を第1バックアップ材5Aに当接させ、押縁41を取り付けることで、上側凹溝3内にガラス2の上端部を嵌め込む。ガラス2の第2見付面21の上端部と第2凸部4Bの内側見付面412との間に第2バックアップ材5Bを嵌め込む。あるいは、押縁41の内側見付面412に第2バックアップ材5Bを貼り付けた状態で、押縁41を取り付けてもよい。
【0050】
この状態で、螺子8を締め込んで、押圧板9を第2側へ移動させることで、第1バックアップ材5A、ガラス2、第2バックアップ材5Bが一体で第2側へ押し付けられ、第1バックアップ材5A、第2バックアップ材5Bが圧縮状態となる。圧縮された第1バックアップ材5A´の下端、ガラス2の第1見付面20、第1凸部4Aの下辺の第1突片105´との隙間をシーリング材6で塞ぎ、圧縮された第2バックアップ材5B´の下端、ガラス2の第2見付面21、第2凸部4Bの下面411と内側見付面412の角部との隙間をシーリング材6で塞ぐことで、図5の状態となる。
【符号の説明】
【0051】
1 扉体
10 上框
11 縦框
12 縦框
13 下框
2 ガラス(板ガラス)
3 上側凹溝
4A 第1凸部
105 下面
105´ 第1突片(突出要素、抜け出し規制手段)
106 内側見付面
4B 第2凸部
411 下面
411´ 第2突片(突出要素、抜け出し規制手段)
412 内側見付面
5A 第1バックアップ材
5B 第2バックアップ材
7 針状要素(突出要素、抜け出し規制手段)
8 螺子(押圧手段、抜け出し規制手段)
9 押圧板(押圧手段、抜け出し規制手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8