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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155635
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】構造体製造装置及び構造体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/04 20060101AFI20241024BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B28B11/04
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071822
(22)【出願日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2023068685
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】牛丸 北斗
(72)【発明者】
【氏名】岡野 大成
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐貴
【テーマコード(参考)】
4G019
4G055
【Fターム(参考)】
4G019FA12
4G055AA08
4G055AC09
4G055BA31
(57)【要約】
【課題】多孔質基材の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層の長さの差異を小さくする。
【解決手段】構造体製造装置は、一方端面及び他方端面を有する多孔質基材と、多孔質基材の内部に保持された機能層と、を含む構造体を製造する。構造体製造装置は、フィルム被覆部、スラリー供給部、及びスラリー吸引部を含む。フィルム被覆部は、一方端面及び他方端面の間に位置する外周側面を、樹脂フィルムで被覆する。スラリー供給部は、多孔質基材の一方端面に、機能層を形成する機能材料を含むスラリーを供給する。スラリー吸引部は、スラリー供給部により多孔質基材に供給されたスラリーを、樹脂フィルムで被覆された多孔質基材の他方端面から吸引する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向における一方側の端面である一方端面及び前記軸方向における他方側の端面である他方端面を有する多孔質基材と、前記多孔質基材の内部に保持された機能層と、を含む構造体を製造する装置であって、
前記多孔質基材の前記一方端面及び前記他方端面の間に位置する外周側面を、樹脂フィルムで被覆するフィルム被覆部と、
前記多孔質基材の前記一方端面に、前記機能層を形成する機能材料を含むスラリーを供給するスラリー供給部と、
前記スラリー供給部により前記多孔質基材に供給された前記スラリーを、前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材の前記他方端面から吸引するスラリー吸引部と、を備える、構造体製造装置。
【請求項2】
前記フィルム被覆部は、
前記外周側面の周長よりも長い周長を有する筒状の前記樹脂フィルムを、前記樹脂フィルムの内面と前記多孔質基材の前記外周側面とが対面するように、配置するフィルム配置部と、
前記外周側面に対面する前記樹脂フィルムを加熱するフィルム加熱部と、を含み、
前記フィルム加熱部によって加熱された前記樹脂フィルムは、収縮して前記外周側面に接触する、請求項1に記載の構造体製造装置。
【請求項3】
前記フィルム被覆部は、前記外周側面の前記一方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、請求項1又は2に記載の構造体製造装置。
【請求項4】
前記外周側面のうちの前記外周側面の前記一方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記一方側の周縁までの領域に接触して、前記領域を封止する封止部を、更に備える、請求項3に記載の構造体製造装置。
【請求項5】
前記フィルム被覆部は、前記外周側面の前記他方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、請求項1又は2に記載の構造体製造装置。
【請求項6】
前記外周側面のうちの前記外周側面の前記他方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記他方側の周縁までの領域に接触して、前記領域を封止する封止部を、更に備える、請求項5に記載の構造体製造装置。
【請求項7】
前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材から前記樹脂フィルムを除去するフィルム除去部を更に備え、
前記フィルム除去部は、前記樹脂フィルムのうちの、前記外周側面の周方向における一部の領域であって前記軸方向における全長に亘る領域を、加熱して、当該領域を切断するフィルム切断部を含む、請求項1又は2に記載の構造体製造装置。
【請求項8】
軸方向における一方側の端面である一方端面及び前記軸方向における他方側の端面である他方端面を有する多孔質基材と、前記多孔質基材の内部に保持された機能層と、を含む構造体を製造する方法であって、
前記多孔質基材の前記一方端面及び前記他方端面の間に位置する外周側面を、樹脂フィルムで被覆するフィルム被覆工程と、
前記多孔質基材の前記一方端面に前記機能層を形成する機能材料を含むスラリーを供給するスラリー供給工程と、
前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆された前記多孔質基材の前記他方端面から前記スラリーを吸引するスラリー吸引工程と、を備える、構造体製造方法。
【請求項9】
前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材に前記一方端面及び前記他方端面の一方から気体を供給し、前記多孔質基材内の前記スラリーを乾燥するスラリー乾燥工程を、更に備える、請求項8に記載の構造体製造方法。
【請求項10】
前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材から前記樹脂フィルムを除去するフィルム除去工程と、
前記フィルム除去工程の後に実施される工程であって、前記多孔質基材内の前記スラリーを焼成するスラリー焼成工程と、を更に備える、請求項8に記載の構造体製造方法。
【請求項11】
前記フィルム被覆工程は、
前記外周側面の周長よりも長い周長を有する筒状の樹脂フィルムを、前記樹脂フィルムの内面と前記多孔質基材の前記外周側面とが対面するように、配置するフィルム配置工程と、
前記外周側面に対面して配置された前記樹脂フィルムを加熱して収縮させることにより、前記樹脂フィルムを前記外周側面に接触させるフィルム接触工程と、を含む、請求項8に記載の構造体製造方法。
【請求項12】
前記フィルム被覆工程において、前記外周側面の前記一方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、請求項8~11のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
【請求項13】
前記スラリー吸引工程の前に実施される工程であって、前記外周側面のうちの前記外周側面の前記一方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記一方側の周縁までの領域に、封止部を接触させる封止工程を、更に備える、請求項12に記載の構造体製造方法。
【請求項14】
前記フィルム被覆工程において、前記外周側面の前記他方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、請求項8~11のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
【請求項15】
前記スラリー吸引工程の前に実施される工程であって、前記外周側面のうちの前記外周側面の前記他方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記他方側の周縁までの領域に、封止部を接触させる封止工程を、更に備える、請求項14に記載の構造体製造方法。
【請求項16】
前記多孔質基材から前記樹脂フィルムを除去するフィルム除去工程を、更に備え、
前記フィルム除去工程において、前記樹脂フィルムのうちの、前記外周側面の周方向における一部の領域であって前記軸方向における全長に亘る領域を、加熱することにより、当該領域において前記樹脂フィルムを切断する、請求項8~11のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体製造装置及び構造体製造方法に関し、特に、基材に対して機能材料を含むスラリーを供給する構造体製造装置及び構造体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質基材と、多孔質基材の内部に保持された機能層と、を有する構造体が知られている。多孔質基材は、多孔質の筒状部と、多孔質の隔壁部と、を含む。多孔質基材は、隔壁部によって仕切られた多数のセルを含む。機能層は、機能材料を含んだスラリーをセル内に供給し、セル内に形成されたスラリー層を乾燥及び焼成することによって、作製され得る。機能層として、触媒機能を有した触媒層が例示される。機能層が触媒層である構造体は、排ガス浄化用触媒装置に使用され得る。
【0003】
特許文献1において言及されているように、スラリーは、多孔質基材の一方側の端面に供給される。スラリーは多孔質基材の他方側の端面から吸引される。このようにして、多孔質基材の一方側から他方側へ向けてスラリー層を形成する。
【0004】
多孔質基材は最外部に位置する筒状部も多孔質であるため、上述した方法でスラリー層を形成する場合、多孔質基材の周囲の気体が、多孔質の筒状部を通過して、多孔質基材の内部に流入し得る。筒状部から気体が流入することにより、多孔質基材の外周部分では、筒状部から離れた中心部分と比較して、スラリーの吸引力が低下する。結果として、多孔質基材の外周部分に形成されるスラリー層の軸方向に沿った長さは、多孔質基材の中心部分に形成されるスラリー層の軸方向に沿った長さよりも短くなる。スラリー層の軸方向に沿った長さが短い外周部分には、意図せず機能層が形成されていない領域が生じる。この場合、構造体が期待された機能を安定して発揮することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-15205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであって、多孔質基材の内部にスラリーを吸引する際に、多孔質基材の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層の長さの差異を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
[1] 軸方向における一方側の端面である一方端面及び前記軸方向における他方側の端面である他方端面を有する多孔質基材と、前記多孔質基材の内部に保持された機能層と、を含む構造体を製造する装置であって、
前記多孔質基材の前記一方端面及び前記他方端面の間に位置する外周側面を、樹脂フィルムで被覆するフィルム被覆部と、
前記多孔質基材の前記一方端面に、前記機能層を形成する機能材料を含むスラリーを供給するスラリー供給部と、
前記スラリー供給部により前記多孔質基材に供給された前記スラリーを、前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材の前記他方端面から吸引するスラリー吸引部と、を備える、構造体製造装置。
[2] 前記フィルム被覆部は、
前記フィルム被覆部は、
前記外周側面の周長よりも長い周長を有する筒状の前記樹脂フィルムを、前記樹脂フィルムの内面と前記多孔質基材の前記外周側面とが対面するように、配置するフィルム配置部と、
前記外周側面に対面する前記樹脂フィルムを加熱するフィルム加熱部と、を含み、
前記フィルム加熱部によって加熱された前記樹脂フィルムは、収縮して前記外周側面に接触する、[1]に記載の構造体製造装置。
[3] 前記フィルム被覆部は、前記外周側面の前記一方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、[1]又は[2]に記載の構造体製造装置。
[4] 前記外周側面のうちの前記外周側面の前記一方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記一方側の周縁までの領域に接触して、前記領域を封止する封止部を、更に備える、[3]に記載の構造体製造装置。
[5] 前記フィルム被覆部は、前記外周側面の前記他方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の構造体製造装置。
[6] 前記外周側面のうちの前記外周側面の前記他方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記他方側の周縁までの領域に接触して、前記領域を封止する封止部を、更に備える、[5]に記載の構造体製造装置。
[7] 前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材から前記樹脂フィルムを除去するフィルム除去部を更に備え、
前記フィルム除去部は、前記樹脂フィルムのうちの、前記外周側面の周方向における一部の領域であって前記軸方向における全長に亘る領域を、加熱して、当該領域を切断するフィルム切断部を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の構造体製造装置。
[8] 軸方向における一方側の端面である一方端面及び前記軸方向における他方側の端面である他方端面を有する多孔質基材と、前記多孔質基材の内部に保持された機能層と、を含む構造体を製造する方法であって、
前記多孔質基材の前記一方端面及び前記他方端面の間に位置する外周側面を、樹脂フィルムで被覆するフィルム被覆工程と、
前記多孔質基材の前記一方端面に前記機能層を形成する機能材料を含むスラリーを供給するスラリー供給工程と、
前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆された前記多孔質基材の前記他方端面から前記スラリーを吸引するスラリー吸引工程と、を備える、構造体製造方法。
[9] 前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材に前記一方端面及び前記他方端面の一方から気体を供給し、前記多孔質基材内の前記スラリーを乾燥するスラリー乾燥工程を、更に備える、[8]に記載の構造体製造方法。
[10] 前記樹脂フィルムで被覆された前記多孔質基材から前記樹脂フィルムを除去するフィルム除去工程と、
前記フィルム除去工程の後に実施される工程であって、前記多孔質基材内の前記スラリーを焼成するスラリー焼成工程と、を更に備える、[8]又は[9]に記載の構造体製造方法。
[11] 前記フィルム被覆工程は、
前記外周側面の周長よりも長い周長を有する筒状の樹脂フィルムを、前記樹脂フィルムの内面と前記多孔質基材の前記外周側面とが対面するように、配置するフィルム配置工程と、
前記外周側面に対面して配置された前記樹脂フィルムを加熱して収縮させることにより、前記樹脂フィルムを前記外周側面に接触させるフィルム接触工程と、を含む、[8]~[10]のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
[12] 前記フィルム被覆工程において、前記外周側面の前記一方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、[8]~[11]のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
[13] 前記スラリー吸引工程の前に実施される工程であって、前記外周側面のうちの前記外周側面の前記一方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記一方側の周縁までの領域に、封止部を接触させる封止工程を、更に備える、[12]に記載の構造体製造方法。
[14] 前記フィルム被覆工程において、前記外周側面の前記他方側の周縁が前記樹脂フィルムから露出するように、前記樹脂フィルムで前記外周側面を被覆する、[8]~[13]のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
[15] 前記スラリー吸引工程の前に実施される工程であって、前記外周側面のうちの前記外周側面の前記他方側の周縁から前記樹脂フィルムの前記他方側の周縁までの領域に、封止部を接触させる封止工程を、更に備える、[14]に記載の構造体製造方法。
[16] 前記多孔質基材から前記樹脂フィルムを除去するフィルム除去工程を、更に備え、
前記フィルム除去工程において、前記樹脂フィルムのうちの、前記外周側面の周方向における一部の領域であって前記軸方向における全長に亘る領域を、加熱することにより、当該領域において前記樹脂フィルムを切断する、[8]~[15]のいずれか一項に記載の構造体製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多孔質基材の内部にスラリーを吸引する際に、多孔質基材の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層の長さの差異を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施の形態を説明するための図であって、構造体の一例を示す側面図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。
図3図3は、図2のR部分を拡大して示す断面図である。
図4図4は、図1のB-B線に沿った断面図である。
図5図5は、一実施の形態を説明するための図であって、構造体製造装置の全体構成を示すブロック図である。
図6図6は、構造体製造装置に含まれる搬送部の一例を示す正面図である。
図7図7は、構造体製造装置に含まれるフィルム被覆部の一例を示す正面図である。
図8図8は、図7のフィルム被覆部を別の状態で示す正面図である。
図9図9は、図7のフィルム被覆部を更に別の状態で示す正面図である。
図10図10は、図7のフィルム被覆部を更に別の状態で示す正面図である。
図11図11は、構造体製造装置に含まれるスラリー塗布部の一例を示す正面図である。
図12図12は、図11のスラリー塗布部を別の状態で示す正面図である。
図13図13は、図11のスラリー塗布部を更に別の状態で示す正面図である。
図14図14は、図11のスラリー塗布部を更に別の状態で示す正面図である。
図15図15は、構造体製造装置に含まれるフィルム除去部の一例を示す正面図である。
図16図16は、図15に示されたフィルム除去部によって処理される多孔質基材及び樹脂フィルムを示す斜視図である。
図17図17は、構造体製造方法の一例を示すフロチャートである。
図18図18は、図4に対応する断面図であって、図17の構造体製造方法におけるスラリー吸引工程における多孔質基材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0011】
本明細書において、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0012】
図1図18は一実施の形態を説明するための図である。図1図4は、多孔質基材を示す図である。図5図18は、構造体製造装置及び構造体製造方法を説明するための図である。
【0013】
まず、図1図4に示された具体例を参照しつつ、多孔質基材20及び構造体10について説明する。
【0014】
多孔質基材20は、空気等の気体が通過可能な多孔質構造を有する。多孔質基材20は、内部に機能層15を保持できる。多孔質基材20は、機能層15と共に、構造体10を構成する。すなわち、構造体10は、多孔質基材20と、多孔質基材20に保持された機能層15と、を含む。機能層15は、後述するスラリー16によって形成される。多孔質構造を有する多孔質基材20の内部を移動する流体は、機能層15の機能に起因して、処理される。
【0015】
多孔質基材20は、内部空間としてのセル29を含む。機能層15は、セル29内に設けられてもよい。各セル29は、軸方向D1に延びている。多孔質基材20は、一方端面21A及び他方端面21Bを含む。一方端面21Aは、軸方向D1における一方側に位置する端面である。他方端面21Bは、軸方向D1における他方側に位置する端面である。多孔質基材20は、一方端面21A及び他方端面21Bの間に位置する外周側面22を含む。
【0016】
図4に示すように、セル29は、一方端面21A及び他方端面21Bのいずれか一方で閉塞されていてもよい。図示された例において、セル29は、第1セル29A及び第2セル29Bを含む。第1セル29Aは、一方端面21Aにおいて開口し、他方端面21Bにおいて閉塞する。第2セル29Bは、他方端面21Bにおいて開口し、一方端面21Aにおいて閉塞する。第1セル29A及び第2セル29Bは、隣り合うように配置されてもよい。図4に示された多孔質基材20は、ウォールフロー型基材とも呼ばれる。
【0017】
図4に示された例と異なり、セル29は、一方端面21A及び他方端面21Bの両方で開口してもよい。この多孔質基材20は、フロースルー型の基材とも呼ばれる。
【0018】
いくつかの図面では、軸方向D1が矢印にて示されている。軸方向D1を示す矢印の先端側が軸方向D1における他方側となる。軸方向D1における、他方側は一方側の逆側である。すなわち、軸方向D1を示す矢印は、一方側から他方側を向いている。
【0019】
図2に示すように、多孔質基材20は、筒状部26及び隔壁部27を含んでもよい。筒状部26及び隔壁部27は、多孔質材料により構成され、多孔質構造を有する。筒状部26は、図示された例のように円筒状でもよいし、楕円筒状でもよく、角筒状でもよい。隔壁部27は、筒状部26の内部に保持されている。隔壁部27は、多数のセル29を区画している。隔壁部27と筒状部26との間にもセル29が区画されている。隔壁部27は、隣り合うセル29を仕切っている。
【0020】
筒状部26及び隔壁部27に用いられる材料は、特に限定されない。筒状部26及び隔壁部27に用いられる材料は、一例として、排ガス浄化用触媒の分野で一般的に使用されている材料でもよい。筒状部26及び隔壁部27に用いられる材料は、例えば400℃以上の高温の排ガスに曝露された場合にも、多孔質基材20の形状を安定して維持し得ることが好ましい。筒状部26及び隔壁部27に用いられる材料は、セラミックスでもよい。筒状部26及び隔壁部27は、セラミックスの粒子を焼結させて形成され得る。セラミックスとして、例えば、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ジルコン、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が例示される。筒状部26及び隔壁部27は、一体的に成形されてもよい。筒状部26及び隔壁部27は、つなぎ目無しで接続してもよい。
【0021】
図2及び図3に示された例において、セル29は、正方配列にて配列されている。正方配列において、セル29は直交する二つの配列方向に配列される。二つの配列方向は軸方向D1に直交してもよい。セル29の配列は、正方配列に限られない。セル29の配列は、例えば、ハニカム配列でもよい。ハニカム配列において、セル29は、互いに60°傾斜した三つの配列方向の各々に、配列される。
【0022】
多孔質基材20の軸方向D1への長さL20(図1参照)は、40mm以上300mm以下でもよい。軸方向D1に直交する方向への多孔質基材20の最大幅W20(図1参照)は、30mm以上250mm以下でもよい。筒状部26が円筒状である場合、多孔質基材20の最大幅W20は、一方端面21Aの直径に該当し、他方端面21Bの直径にも該当する。筒状部26の厚み及び隔壁部27の厚みは適宜調整可能である。筒状部26の厚みは、100μm以上3000μm以下でもよい。隔壁部27の厚みは、20μm以上1500μm以下でもよい。
【0023】
多孔質基材20の1平方インチあたりのセル29の個数は適宜調整可能である。1平方インチあたりのセル29の個数は、100セル/インチ以上1000セル/インチ以下でもよい。多孔質基材20の1平方インチあたりのセル29の個数は、多孔質基材20を軸方向D1と直交する面で切断して得られる切断面における1平方インチあたりのセル29の個数である。
【0024】
機能層15は、以上の構成を有する多孔質基材20に保持される。機能層15は、所定の機能を発揮し得る。機能層15は、種々の機能を有し得る。機能層15は、機能層15に期待される機能を有した種々の材料を用いて作製され得る。図4に二点鎖線で示すように、機能層15は、セル29を区画する壁部に保持され得る。機能層15は、多孔質基材20のセル29内のスラリー層16L(図18参照)から形成される。機能層15を形成する機能材料を含むスラリー16を多孔質基材20のセル29に供給することによって、セル29を区画する壁部上にスラリー16の塗膜(スラリー層)16Lが形成される。この塗膜(スラリー層)16Lは、必要に応じて後処理される。後処理として、乾燥や焼成が例示される。スラリー層16Lから機能層15が得られる。
【0025】
図示された例において、構造体10は、排ガス浄化用触媒装置でもよい。排ガス浄化用触媒装置としては、ガソリンエンジン用のパティキュレートフィルタ(GPF:Gasoline Particulate Filter)でもよい。排ガス浄化用触媒装置としては、ディーゼルエンジン用のパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)でもよい。
【0026】
機能層15は捕集層でもよい。捕集層としての機能層15は、排ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集してもよい。また、機能層15は触媒層でもよい。触媒層としての機能層15は、触媒活性成分を含んでもよい。捕集層や触媒層としての機能層15の厚みは、10μm以上400μm以下でもよい。
【0027】
次に、図示された具体例を参照しながら構造体製造装置30について説明する。構造体製造装置30は、多孔質基材20材と、多孔質基材20の内部に保持された機能層15と、を含む構造体10を製造する。
【0028】
まず、図5を参照して図示された構造体製造装置30の全体構成について説明する。図5に示すように、構造体製造装置30は、制御部31及び基材処理部32を含む。基材処理部32は、多孔質基材20に対して処理を行う。制御部31は、基材処理部32を制御する。基材処理部32の動作は、制御部31によって制御される。制御部31は、プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等の処理部と、RAM等の記憶部と、を含んでもよい。記憶部は、構造体製造装置30の処理手順を定めたコンピュータプログラムを記録してもよい。処理部は、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、或いは、インターフェースや通信手段を介して入力される指示に従うことにより、基材処理部32の動作を制御してもよい。
【0029】
図5に示された例において、基材処理部32は、搬送部35、スラリー塗布部50、乾燥部70、及び焼成部80を含んでいる。搬送部35は、構造体製造装置30内において、多孔質基材20を搬送する。搬送部35は、処理プロセスに応じて、基材処理部32に含まれる各処理部への多孔質基材20の搬出入を担う。スラリー塗布部50は、多孔質基材20にスラリーを供給し、多孔質基材20の内部にスラリー層16Lを形成する。乾燥部70は、スラリー層16Lを乾燥する。焼成部80は、スラリー層16Lを焼成する。
【0030】
本実施の形態による構造体製造装置30において、基材処理部32は、フィルム被覆部40を更に含む。フィルム被覆部40は、スラリー16を供給される前の多孔質基材20の外周側面22を樹脂フィルム90で被覆する。本実施の形態によれば、後述するように、多孔質基材20の外周側面22を樹脂フィルム90で被覆することによって、多孔質基材20の内部にスラリー16を吸引する際に、多孔質基材20の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層16Lの長さの差異を小さくすることができる。
【0031】
図示された構造体製造装置30において、基材処理部32は、フィルム除去部45を更に含む。フィルム除去部45は、多孔質基材20から樹脂フィルム90を除去する。
【0032】
以下、基材処理部32に含まれる搬送部35、フィルム被覆部40、スラリー塗布部50、フィルム除去部45について、順に説明する。
【0033】
搬送部35は、構造体製造装置30に持ち込まれた多孔質基材20を搬送する。図6に示された例のように、搬送部35は、載置台36及び搬送機37を含んでもよい。載置台36は、構造体製造装置30(基材処理部32)と外部との多孔質基材20の受け渡し台となる。外部の搬送手段が処理対象である多孔質基材20を載置台36に持ち込む。構造体製造装置30(基材処理部32)での処理が終了した多孔質基材20、すなわち構造体10は、搬送機37によって、載置台36に搬送されてもよい。搬送機37は、多孔質基材20及び構造体10を把持する把持アーム38を含んでもよい。多孔質基材20及び構造体10は、一対の把持アーム38によって挟まれることによって、搬送機37に保持されてもよい。搬送機37は、把持アーム38によって多孔質基材20を把持した状態で、移動可能でもよい。図示された例において、把持アーム38は、多孔質基材20の外周側面22を把持している。
【0034】
搬送部35の構成は特に限定されない。搬送部35は、搬送機37に加えて又は搬送機37に代えて、ベルトコア等の他の搬送手段を含んでもよい。
【0035】
フィルム被覆部40は、多孔質基材20の外周側面22を樹脂フィルム90で被覆する。多孔質基材20は、空気等の気体が通過可能な多孔質構造を有する。樹脂フィルム90は、外周側面22を被覆して、外周側面22を封止する。フィルム被覆部40によって封止された外周側面22は、気体の通過が抑制される。「外周側面の封止」とは、外周側面22の気体通過を低減するように外周側面22の少なくとも一部分を覆うことを意味し、気体が外周側面の当該一部分を完全に通過しないようにすることのみを意味しない。「樹脂フィルムで被覆」とは、外周側面22に接触して外周側面22を覆うように樹脂フィルム90を配置することである。フィルム被覆部40は、外周側面22のうちの周方向に沿った全周に亘って延びる領域、すなわち環状の領域を、被覆してもよい。周方向D2とは、図2に示すように、軸方向D1からの観察において外周側面22に沿う方向である。フィルム被覆部40は、外周側面22のうちの軸方向D1の全長に亘った領域を、被覆してもよい。フィルム被覆部40は、外周側面22のうちの軸方向D1における両端部領域を除く領域を、被覆してもよい。
【0036】
図7図10に示すように、フィルム被覆部40は、処理台41、フィルム配置部42、及びフィルム加熱部43を含んでもよい。処理台41は、処理対象となる多孔質基材20を支持する。搬送部35は、多孔質基材20を処理台41に搬入する。搬送部35は、フィルム被覆部40で被覆された多孔質基材20を処理台41から搬出する。
【0037】
フィルム配置部42は、樹脂フィルム90を供給する。フィルム配置部42は、長尺の樹脂フィルムから、処理対象の多孔質基材20の軸方向長さに対応した長さの樹脂フィルム90を切り出してもよい。フィルム配置部42から供給される樹脂フィルム90は、筒状でもよい。筒状の樹脂フィルム90は、一例として、インフレーション法によって得られる。筒状の樹脂フィルム90は、内面91A及び外面91Bを有する。筒状の樹脂フィルム90の内周長は、外周側面22の外周長よりも長い。フィルム配置部42は、内面91Aが外周側面22に対面するようにして、樹脂フィルム90を多孔質基材20に供給する。
【0038】
フィルム加熱部43は、外周側面22に対面して配置された樹脂フィルム90を加熱する。フィルム加熱部43によって加熱された樹脂フィルム90は収縮する。収縮して樹脂フィルム90は、外周側面22に接触する。樹脂フィルム90が外周側面22に接触することにより、樹脂フィルム90によって外周側面22を安定して封止することができる。フィルム加熱部43は、種々の加熱機構によって構成され得る。フィルム加熱部43の加熱方法は、熱伝導を利用してもよいし、熱伝達を利用してもよいし、ふく射を利用してもよい。熱伝導を利用したフィルム加熱部43として、加熱された部材を樹脂フィルム90に直接接触させてもよい。熱伝達を利用したフィルム加熱部43として、加熱された気体を樹脂フィルム90に吹き付けてもよい。熱伝達及びふく射を利用したフィルム加熱部43は、樹脂フィルム90を非接触で加熱することができ、樹脂フィルム90の損傷を抑制することができる。
【0039】
図示された例において、フィルム加熱部43は、50℃以上200℃以下に加熱された気体を樹脂フィルム90に向けて吹き付ける。フィルム加熱部43は、処理台41上の多孔質基材20に対して、接近及び離間するよう、相対移動可能である。フィルム加熱部43が多孔質基材20から離れた状態において、処理台41への多孔質基材20の搬出入及び樹脂フィルム90の供給が実施されてもよい。フィルム加熱部43が多孔質基材20に接近した状態において、樹脂フィルム90が加熱されてもよい。加熱気体の吹き出し方向を変更することによって及び/又はフィルム加熱部43が多孔質基材20に対して周方向に相対移動することによって、樹脂フィルム90の全域が加熱されてもよい。
【0040】
収縮可能な樹脂フィルム90は、無延伸フィルムを予備加熱延伸し、延伸した状態で冷却することによって、得られ得る。この樹脂フィルム90は、加熱によって、予備加熱延伸前の無延伸の状態での大きさまで収縮することができる。加熱収縮前における筒状の樹脂フィルム90(内面91A)の周方向への周長は、外周側面22の周方向への周長の、1.0倍超1.5倍以下でもよい。加熱収縮前における樹脂フィルム90の軸方向D1への長さは、外周側面22の軸方向D1への長さの、0.8倍以上1.2倍以下でもよい。樹脂フィルム90は、ポリエチレンやポロプロピレン等のポリオレフィンでもよく、ポリ塩化ビニルでもよく、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステルでもよい。
【0041】
封止機能を考慮して、樹脂フィルム90の厚みは、10μm以上100μm以下でもよい。
【0042】
スラリー塗布部50は、多孔質基材20にスラリー16を供給する。多孔質基材20に供給されたスラリー16は、セル29内にスラリー層16L(図18参照)を形成する。スラリー層16Lは、乾燥工程や焼成工程を経て、機能層15(図4における二点鎖線)を構成する。スラリー16は、機能層15を形成する機能材料を含む。機能層15が捕集層として機能する例において、スラリー16は、Al系酸化物、Ce系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物、Ce以外の希土類元素の酸化物、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、MgO、ZnO、SnO2等をベースとした酸化物などの粒子を含んでいてもよい。スラリー16は、分散媒として、水及び有機溶剤などを含んでもよい。機能層15が触媒層として機能する例において、スラリー16は、白金、パラジウム、及び、ロジウムなどの貴金属を触媒材料として含んでもよい。スラリー16は、分散媒として、水及び有機溶剤などを含んでもよい。
【0043】
図11図14に示すように、スラリー塗布部50は、スラリー供給部52及びスラリー吸引部54を含む。スラリー供給部52は、スラリー塗布部50に搬送された多孔質基材20の一方端面21Aにスラリー16を供給する。スラリー吸引部54は、スラリー供給部52により多孔質基材20に供給されたスラリー16を、多孔質基材20の他方端面21Bから吸引する。詳細には、スラリー吸引部54は、他方端面21Bから多孔質基材20のセル29内の気体(空気)を吸い込むことにより、セル29内を大気圧未満の負圧にし、一方端面21Aを塞ぐスラリー16をセル29内に引き込む。
【0044】
一方端面21Aは、多孔質基材20の軸方向D1における一方側となる端面である。一方端面21Aには、第1セル29Aが開口している。一方端面21Aは、隔壁部27の軸方向における一方側の端によって規定される。他方端面21Bは、多孔質基材20の軸方向D1における他方側となる端面である。他方端面21Bには、第2セル29Bが開口している。他方端面21Bは、隔壁部27の軸方向における他方側の端によって規定される。
【0045】
図示された例において、スラリー供給部52は、吐出ノズル53を含む。スラリー16は、吐出ノズル53の吐出口53aから吐出される。吐出口53aの位置は、処理対象である多孔質基材20に対して、軸方向D1に相対移動可能でもよい。吐出口53aの位置は、処理対象である多孔質基材20に対して、軸方向D1に直交する方向に相対移動可能でもよい。
【0046】
図11図14に示された例において、スラリー吸引部54は、支持台55及び吸引機56を含む。支持台55は、スラリー塗布部50において、処理対象となる多孔質基材20を鉛直方向における下方から支持する。搬送部35は、多孔質基材20を支持台55に搬入する。搬送部35は、スラリー塗布部50でスラリー層16Lを形成された多孔質基材20を支持台55から搬出する。支持台55は、鉛直方向における上側に向けて開口した吸引口55aを含む。多孔質基材20の他方端面21Bが吸引口55aに対面するようにして、支持台55は多孔質基材20を支持する。吸引口55aは、吸引機56に通じている。吸引機56は、特に限定されず、種々の吸引装置でもよい。吸引機56は、真空ポンプでもよい。
【0047】
図示されたスラリー塗布部50は、第1封止部60及び第2封止部65を更に含む。第1封止部60及び第2封止部65は、それぞれ、外周側面22に接触して、接触した領域において外周側面22を封止する。第1封止部60及び第2封止部65は、それぞれ、外周側面22に接触して多孔質基材20を保持する。第1封止部60は、第2封止部65よりも軸方向における一方側において、外周側面22に接触する。第2封止部65は、第1封止部60よりも軸方向における他方側において、外周側面22に接触する。第1封止部60及び第2封止部65は、それぞれ、外周側面22のうちの軸方向D1における一部の領域に接触する。第1封止部60及び第2封止部65は、それぞれ、周方向に沿った全周に亘って、すなわち環状に延びてもよい。第1封止部60及び第2封止部65は、それぞれ、外周側面22のうちの周方向に沿った全周に亘る領域に接触してもよい。
【0048】
図示された例において、第1封止部60は、第1袋体61、駆動機62、及び保持部63を含む。保持部63及び第1袋体61は、共に、周方向に沿った全周に亘って延びる、すなわち環状に延びる。環状に延びる保持部63は筒状であり、軸方向D1に沿った長さを有する。
【0049】
第1袋体61は膨張可能でもよい。第1袋体61は収縮可能でもよい。第1袋体61は、流体源から流体を供給されることによって、膨張してもよい。膨張した第1袋体61から流体を排出することにより、当該第1袋体61は収縮してもよい。図13及び図14に示すように、膨張した第1袋体61は外周側面22に接触し得る。図12に示すように、収縮した第1袋体61は外周側面22から離れ得る。
【0050】
第1袋体61は、内部空間を有した弾性体でもよい。第1袋体61の材料は、ゴム又は樹脂でもよい。ゴム又は樹脂は、空気等の気体の通過を規制する。ゴム又は樹脂を用いた第1袋体61は、外周側面22に接触することによって、外周側面22を封止できる。第1袋体61の内部空間に供給される流体は、空気等の気体でもよい。
【0051】
環状に延びる第1袋体61は、外周側面22のうちの周方向に沿った全周に亘る領域に接触することができる。第1袋体61は、風船式チャックとして機能する。
【0052】
駆動機62は、保持部63に接続し、保持部63を駆動する。駆動機62に駆動されることによって、保持部63は移動する。駆動機62は、シリンダ、ボール螺子、多関節ロボット、及びモータ等の動力発生源を含んでもよい。図11図14に示された例において、駆動機62は直動機構である。駆動機62は、保持部63を軸方向D1に移動させる。図11図14に示された例において、スラリー供給部52の吐出ノズル53は、保持部63に接続している。吐出ノズル53は、保持部63と共に、軸方向D1に移動する。
【0053】
図11図14に示された例において、第1袋体61は、外周側面22のうちの軸方向D1における一方側の周縁である一方周縁23Aを含む端部領域に対面する。第1封止部60は、外周側面22のうちの軸方向D1における一方側となる端部領域を、封止しかつ保持する。
【0054】
第2封止部65は、第2袋体66を有する。第2袋体66は、上述の第1袋体61と同一の構成を有する。第1袋体61についての説明は、第2袋体66にも当てはまる。第2袋体66は、流体源から流体を供給されることによって、膨張し得る。膨張した第2袋体66は、環状の領域で外周側面22に接触して外周側面22を封止する。膨張した第2袋体66は、環状の領域で外周側面22に接触して多孔質基材20を保持する。
【0055】
図11図14に示された例において、環状に延びる第2袋体66は、スラリー吸引部54の支持台55に取り付けられている。第2袋体66は、吸引口55aの周囲に位置している。第2袋体66は、外周側面22のうちの軸方向D1における他方側の周縁である他方周縁23Bを含む端部領域に対面する。第2封止部65は、外周側面22のうちの軸方向D1における他方側となる端部領域を、封止しかつ保持する。
【0056】
フィルム除去部45は、多孔質基材20から樹脂フィルム90を除去する。図15及び図16に示すように、フィルム除去部45は、フィルム切断部46及び処理台47を含んでいてもよい。処理台47は、フィルム被覆部40の処理台41と同様に構成され得る。フィルム切断部46は、樹脂フィルム90を加熱することによって、加熱した領域A90で樹脂フィルム90を切断する。図16に示すように、フィルム除去部45によって加熱される加熱領域A90は、樹脂フィルム90の一部分でもよい。
【0057】
フィルム切断部46は、種々の加熱機構によって構成され得る。フィルム切断部46の加熱方法は、熱伝導を利用してもよいし、熱伝達を利用してもよいし、ふく射を利用してもよい。熱伝導を利用したフィルム切断部46として、加熱された部材を樹脂フィルム90に直接接触させてもよい。熱伝達を利用したフィルム切断部46として、加熱された気体を樹脂フィルム90に吹き付けてもよい。熱伝達及びふく射を利用したフィルム切断部46は、樹脂フィルム90を非接触で切断することができ、多孔質基材20の損傷を抑制することができる。
【0058】
図15及び図16に示された例において、フィルム切断部46は、220℃以上450℃以下に加熱された気体を樹脂フィルム90に向けて吹き付ける。フィルム切断部46は、処理台47上の多孔質基材20に対して、接近及び離間するよう、相対移動可能である。フィルム切断部46が多孔質基材20から離れた状態において、処理台47への多孔質基材20の搬出入が実施されてもよい。フィルム切断部46が多孔質基材20に接近した状態において、樹脂フィルム90が加熱及び切断されてもよい。加熱気体の吹き出し方向を変更することによって及び/又はフィルム切断部46が多孔質基材20に対して軸方向に相対移動することによって、樹脂フィルム90の所望の加熱領域A90(図16参照)が加熱されてもよい。
【0059】
次に、図示された具体例を参照しながら構造体の製造方法について説明する。製造方法は、多孔質基材20材と、多孔質基材20の内部に保持された機能層15と、を含む構造体10を製造する。
【0060】
製造方法は、フィルム被覆工程と、スラリー供給工程と、スラリー吸引工程と、を含む。図17に示された例において、製造方法は、封止工程と、封止解除工程と、乾燥工程と、フィルム除去工程と、焼成工程と、を更に含む。すなわち、図17に示された例において、製造方法は、フィルム被覆工程S1、封止工程S2、スラリー供給工程S3、スラリー吸引工程S4、封止解除工程S5、乾燥工程S6、フィルム除去工程S7、及び焼成工程S8を、この順で含む。以下、各工程について説明する。以下の各工程における構造体製造装置30の動作は、制御部31からの制御信号によって制御される。
【0061】
まず、処理対象の多孔質基材20が、搬送部35の載置台36に持ち込まれる。載置台36上に載置された多孔質基材20は、図6に示すように、搬送機37の把持アーム38によって把持される。搬送機37は、把持アーム38を用いて多孔質基材20を保持した状態で、移動する。搬送機37は、図7に示すように、フィルム被覆部40の処理台41に多孔質基材20を載置する。
【0062】
フィルム被覆工程S1では、多孔質基材20の外周側面22が樹脂フィルム90で被覆される。外周側面22の被覆には、フィルム被覆部40が用いられてもよい。被覆方法は、特に限定されない。例えば、作業者が、処理台41上に保持された多孔質基材20の外周側面22を、手作業にて、樹脂フィルム90で被覆してもよい。
【0063】
図7図10に示すように、フィルム被覆工程S1は、樹脂フィルム90を配置するフィルム配置工程と、樹脂フィルム90を外周側面22に接触させるフィルム接触工程と、を含んでもよい。図7に示すように、フィルム被覆部40のフィルム配置部42は、長尺の樹脂フィルムから所定長さの樹脂フィルム90を切り出す。樹脂フィルム90は、内面91A及び外面91Bを含む筒状でもよい。図8に示すように、フィルム配置部42は、所定長さに切り出された樹脂フィルム90を、樹脂フィルム90の内面91Aと外周側面22とが対面するようにして、配置する。以上にて、フィルム配置工程が終了する。
【0064】
次に、図9に示すように、フィルム配置部42が多孔質基材20から離れる。フィルム加熱部43が多孔質基材20の外周側面22に接近する。図示された例において、外周側面22に対面して配置された樹脂フィルム90が、フィルム加熱部43によって、加熱される。樹脂フィルム90は、加熱によって収縮する。収縮した樹脂フィルム90は、外周側面22に接触する。その後、図10に示すように、フィルム加熱部43が、樹脂フィルム90で被覆された多孔質基材20から離れる。以上にて、フィルム接触工程が終了する。すなわち、フィルム被覆工程S1が終了する。
【0065】
フィルム加熱部43での加熱は、樹脂フィルム90が溶融しないように実施する。樹脂フィルム90の融点以下の温度、例えば50℃以上200℃以下に、樹脂フィルム90が加熱される。樹脂フィルム90の融点以下の温度で樹脂フィルム90を加熱することによって、樹脂フィルム90が外周側面22に溶着することを抑制できる。これにより、後述する樹脂フィルム90の除去を容易に行うことができる。
【0066】
図9に示された例において、フィルム加熱部43は、非接触で、樹脂フィルム90を加熱している。非接触での加熱によれば、フィルム加熱部43と樹脂フィルム90及び多孔質基材20との接触により、樹脂フィルム90及び多孔質基材20が損傷することを抑制することができる。
【0067】
次に、図11に示すように、搬送部35によって、多孔質基材20がフィルム被覆部40からスラリー塗布部50へ搬送される。スラリー塗布部50では、封止工程S2が実施される。スラリー供給工程S3及びスラリー吸引工程S4も、スラリー塗布部50において、実施される。
【0068】
図12に示すように、スラリー塗布部50において、樹脂フィルム90で外周側面22を被覆された多孔質基材20は、スラリー吸引部54の支持台55上に配置される。図12に示された状態において、第2封止部65の第2袋体66は、外周側面22のうちの軸方向D1における一部分の領域に対面する。第2袋体66は、外周側面22のうちの周方向に沿った全周に亘って延びる環状の領域に対面する。
【0069】
封止工程S2は、次の手順で実施されてもよい。まず、第1封止部60の駆動機62が、保持部63を移動させる。保持部63は、図11に示された軸方向D1における一方側の位置から、図12に示された軸方向D1における一方側の位置へと移動する。保持部63の移動にともなって、第1袋体61及びスラリー供給部52は、軸方向D1に移動し、多孔質基材20に接近する。図12に示すように、第1封止部60の第1袋体61は、外周側面22のうちの軸方向D1における一部分の領域に対面する。第1袋体61は、第2袋体66よりも軸方向D1における一方側に位置している。第1袋体61は、外周側面22のうちの周方向に沿った全周に亘って延びる環状の領域に対面する。以上により、保持部63を移動させる移動工程が終了する。
【0070】
次に、図13に示すように、第2封止部65が多孔質基材20に接触する。図示された例において、流体(例えば、空気)が第2袋体66に供給され、第2袋体66は膨張する。膨張した第2袋体66は、外周側面22のうちの周方向の全周に亘って延びる環状の領域にて、外周側面22に接触する。外周側面22は、第2袋体66が接触した環状の領域にて封止され、当該領域において気体の通過が抑制される。また、支持台55に取り付けられた第2袋体66が多孔質基材20に接触することにより、多孔質基材20は第2封止部65によって保持される。このようにして、第2封止部65を用いた第2封止工程が終了する。
【0071】
その後、第1封止部60が多孔質基材20に接触する。図示された例において、流体(例えば、空気)が第1袋体61に供給され、第1袋体61は膨張する。膨張した第1袋体61は、周方向の全周に亘って延びる環状の領域にて、外周側面22に接触する。外周側面22は、第1袋体61が接触した環状の領域にて封止され、当該領域での気体の通過が抑制される。また、保持部63に取り付けられた第1袋体61が多孔質基材20に接触することにより、多孔質基材20は第1封止部60によって保持される。このようにして、第1封止部60を用いた第1封止工程が終了する。すなわち、封止工程S2が終了する。
【0072】
上述した封止工程S2は、第1封止部60を移動させる移動工程と、第2封止部65を用いた第2封止工程と、第1封止部60を用いた第1封止工程と、をこの順で含む。各工程の順番は変更可能である。例えば、第1封止部60を用いた第1封止工程は、第2封止部65を用いた第2封止工程の前に実施されてもよいし、第2封止工程と並行して実施されてもよい。保持部63を移動させる移動工程は、第2封止部65を用いた第2封止工程の後に実施されてもよいし、第2封止工程と並行して実施されてもよい。移動工程を第2封止工程の後に実施する場合、移動工程中に第1封止部60が多孔質基材20に接触したとしても、第2封止部65によって保持された多孔質基材20の姿勢を安定して維持することができる。
【0073】
上述した封止工程S2によれば、第1袋体61及び第2袋体66が、軸方向D1に離れた二つの領域で外周側面22に接触する。第1袋体61及び第2袋体66の両方を用いることによれば、多孔質基材20を安定して保持することができる。すなわち、多孔質基材20の姿勢が支持台55上で安定して維持される。したがって、後続のスラリー供給工程S3及びスラリー吸引工程S4を安定して実施することができる。
【0074】
図示された例において、第1封止部60は、外周側面22の一方周縁23Aに、軸方向D1に直交する方向から対面する。一方周縁23Aは、軸方向D1における一方側に位置する外周側面22の周縁である。第1封止部60は、軸方向D1における一方側となる外周側面22の端部領域を、封止しかつ保持する。
【0075】
図示された例において、第2封止部65は、外周側面22の他方周縁23Bに、軸方向D1に直交する方向から対面する。他方周縁23Bは、軸方向D1における他方側に位置する外周側面22の周縁である。第2封止部65は、軸方向D1における他方側となる外周側面22の端部領域を、封止しかつ保持する。この例によれば、多孔質基材20をより安定して保持することができる。
【0076】
ところで、一つの封止部が外周側面に接触する接触領域の軸方向に沿った長さが長くなると、当該封止部から外周側面に加えられる接触圧が、接触領域内でばらつく可能性がある。接触圧が不均一になり過ぎると、一つの軸方向に長い封止部が外周側面に接触する際に、多孔質基材が傾いてしまい、多孔質基材は封止部によって傾いた姿勢に維持され得る。このような観点から、各封止部60,65(各袋体61,66)が外周側面22に接触する接触領域の軸方向D1に沿った長さである接触長さL60,L65(mm)に上限を設定してもよい。接触長さL60,L65(mm)は、25mm以下でもよく、20mm以下でもよく、15mm以下でもよい。
【0077】
接触長さL60,L65が短すぎると、多孔質基材20の姿勢を維持することが難しくなる。この観点から、接触長さ(mm)に下限を設定してもよい。接触長さL60,L65(mm)は、3mm以上でもよく、5mm以上でもよく、7mm以上でもよい。接触長さL60,L65(mm)の任意の下限値を、上述の接触長さL60,L65(mm)の任意の上限値と、組み合わせてもよい。
【0078】
次に、スラリー供給工程S3が実施される。図14に示すように、スラリー供給工程S3では、多孔質基材20の一方端面21Aにスラリー16が供給される。図示された例において、多孔質基材20は、軸方向D1が鉛直方向に沿ってかつ一方側が上側となるように、保持されている。第1封止部60の保持部63で囲まれた領域に、スラリー供給部52の吐出ノズル53から、スラリー16が供給される。スラリー16は、保持部63で囲まれた領域に広がる。多孔質基材20の一方端面21Aは、スラリー16で塞がれる。スラリー16は、一方端面21Aに開口したセル29内に、流入し得る。以上にて、スラリー供給工程S3が終了する。
【0079】
図示された例において、第1封止部60及び第2封止部65により、多孔質基材20は適切に位置に保持され得る。したがって、吐出ノズル53の吐出口53aから一方端面21Aに適切にスラリー16を供給することができる。特に図示された例において、第1封止部60(第1袋体61)は多孔質基材20の一方端面21Aを適切な位置に保持する。したがって、多孔質基材20の一方端面21Aにより適切にスラリー16を供給することができる。
【0080】
更に図示された例において、スラリー供給部52(吐出ノズル53)は保持部63に接続している。スラリー供給部52(吐出ノズル53)は、保持部63と同期して移動する。外周側面22の一方側端部を把持する第1袋体61は、保持部63に取り付けられている。したがって、多孔質基材20の一方端面21A及びスラリー16の供給領域を区画する保持部63に対して、吐出ノズル53の吐出口53aが適切な位置に配置される。これにより、多孔質基材20の一方端面21Aに更に適切にスラリー16を供給することができる。
【0081】
なお、スラリー16を供給される多孔質基材20は、外周側面22を樹脂フィルム90で被覆されている。図10に示すように、フィルム被覆工程S1において、フィルム被覆部40は、外周側面22の一方周縁23Aが樹脂フィルム90から露出するように、樹脂フィルム90で外周側面22を被覆してもよい。この例によれば、樹脂フィルム90は、外周側面22から軸方向における一方側に延び出さない。したがって、外周側面22から軸方向における一方側に延び出した樹脂フィルム90が、意図せず、一方端面21Aに開口したセル29を塞いでしまうことを防止することができる。したがって、一方端面21Aに開口したすべてのセル29内にスラリー16が流入することを促進することができる。
【0082】
その後、スラリー吸引工程S4が実施される。図14に示すように、スラリー吸引工程S4では、一方端面21Aに供給されたスラリー16が、他方端面21Bから吸引される。スラリー吸引工程S4は、スラリー供給工程S3の一部又は全部と並行して実施されてもよい。
【0083】
図示された例において、多孔質基材20の他方端面21Bは、支持台55の吸引口55aに対面している。吸引口55aに通じる吸引機56が、他方端面21Bに開口したセル29内の気体(例えば、空気)を吸い込む。これにより、図18に示すように、一方端面21Aに開口した第1セル29A内において、スラリー16が、軸方向D1における一方側から他方側に向けて進む。このようにして、セル29内で広がったスラリー16によって、スラリー層16Lがセル29内に形成される。
【0084】
図示された例において、第1封止部60及び第2封止部65により、多孔質基材20は適切に位置に保持され得る。したがって、スラリー吸引部54によりスラリー16を適切に吸引することができる。特に図示された例において、第2封止部65(第2袋体66)は外周側面22の他方端部を適切な位置に保持する。外周側面22の他方端部は、スラリー吸引部54の吸引口55aに対面する他方端面21Bに隣接している。したがって、スラリー吸引部54と多孔質基材20の他方端面21Bとの間に外部の気体が流入することを抑制し、多孔質基材20の他方端面21Bから効率的にスラリー16を吸引することができる。
【0085】
更に図示された例において、第2封止部65(第2袋体66)は、スラリー吸引部54(支持台55)に取り付けられている。したがって、スラリー吸引部54と多孔質基材20の他方端面21Bとの間に外部の気体が流入することをより効果的に抑制し、多孔質基材20の他方端面21Bから更に効率的にスラリー16を吸引することができる。
【0086】
ところで、多孔質基材を構成する隔壁部は多孔質構造を有し、気体は隔壁部を通過可能である。同様に、多孔質基材の外周側面を構成する筒状部は、多孔質構造を有し、気体は筒状部を通過可能である。上述の特許文献1(特開2006-15205号公報)に開示された製造方法のスラリー吸引工程において、多孔質基材の周囲の気体が筒状部を通過して、多孔質基材の内部に流入し得る。多孔質基材の周囲の気体がスラリー吸引部に吸い込まれると、セル内における負圧の形成が不十分となり、スラリーを十分に吸引できない。
【0087】
この不具合が生じやすいセルは、外周側面の近傍となる外周部分に位置するセルである。外周側面から離れた中心部分では、このような不具合は生じにくい。結果として、従来、多孔質基材の外周部分に形成されるスラリー層の軸方向に沿った長さは、多孔質基材の中心部分に形成されるスラリー層の軸方向に沿った長さよりも短くなっていた。スラリー層の軸方向に沿った長さが短い外周部分には、意図せず、機能層が形成されていない領域が生じ得る。多孔質基材の外周部分に機能層15がされていない領域が発生すると、構造体は期待された機能を安定して発揮することができない。
【0088】
一方、本実施の形態によれば、スラリー吸引工程S4において、多孔質基材20の外周側面22は樹脂フィルム90で被覆されている。樹脂フィルム90で外周側面22を被覆することによって、外周側面22を封止することができる。したがって、外周側面22から多孔質基材20のセル29に気体が流入することを抑制することができる。これにより、多孔質基材20の内部にスラリー16を吸引する際に、多孔質基材20の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層16Lの長さの差異を小さくすることができる。
【0089】
なお、図10に示すように、フィルム被覆工程S1において、フィルム被覆部40は、外周側面22の他方周縁23Bが樹脂フィルム90から露出するように、樹脂フィルム90で外周側面22を被覆してもよい。この例によれば、樹脂フィルム90は、外周側面22から軸方向D1における他方側に延び出さない。したがって、外周側面22から軸方向D1における他方側に延び出した樹脂フィルム90が、意図せず、他方端面21Bに開口したセル29を塞いでしまうことを防止することができる。これにより、他方端面21Bに開口したセル29内に負圧を形成して、スラリー16が効率的に吸引することができる。
【0090】
外周側面22の他方周縁23Bが樹脂フィルム90から露出する例において、図13に示すように、第2封止部65(第2袋体66)が、外周側面22のうちの、外周側面22の他方周縁23Bから樹脂フィルム90の他方周縁92Bまでの領域に接触し、この領域を封止してもよい。この例では、第2封止部65(第2袋体66)が外周側面22に接触する接触領域の軸方向D1に沿った接触長さL65(mm)は、外周側面22の他方周縁23Bと樹脂フィルム90の他方周縁92Bとの間の軸方向に沿った長さより、長くてもよい。外周側面22の他方周縁23Bは、外周側面22の軸方向D1における他方側に位置する周縁である。樹脂フィルム90の他方周縁92Bは、筒状の樹脂フィルム90の軸方向D1における他方側に位置する周縁である。
【0091】
この例によれば、樹脂フィルム90によって被覆されていない外周側面22の軸方向における他方側の端部領域を、第2封止部65(第2袋体66)によって、封止することができる。したがって、外周側面22の他方側端部領域から多孔質基材20のセル29に気体が流入することをより効果的に抑制することができる。これにより、多孔質基材20の内部にスラリー16を吸引する際に、多孔質基材20の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層16Lの長さの差異をより小さくすることができる。
【0092】
なお、外周側面22の一方周縁23Aが樹脂フィルム90から露出する例について上述した。この例によれば、樹脂フィルム90がセル29内へのスラリー16の流入を阻害することを防止することができる。この例において、図13に示すように、第1封止部60(第1袋体61)が、外周側面22のうちの、外周側面22の一方周縁23Aから樹脂フィルム90の一方周縁92Aまでの領域に接触し、この領域を封止してもよい。この例では、第1封止部60(第1袋体61)が外周側面22に接触する接触領域の軸方向D1に沿った接触長さL60(mm)は、外周側面22の一方周縁23Aと樹脂フィルム90の一方周縁92Aとの間の軸方向に沿った長さより、長くてもよい。外周側面22の一方周縁23Aは、外周側面22の軸方向D1における一方側に位置する周縁である。樹脂フィルム90の一方周縁92Aは、筒状の樹脂フィルム90の軸方向D1における一方側に位置する周縁である。
【0093】
この例によれば、樹脂フィルム90によって被覆されていない外周側面22の軸方向における一方側の端部領域を、第1封止部60(第1袋体61)によって、封止することができる。したがって、外周側面22の一方側端部領域からセル29内に気体が流入することをより効果的に抑制することができる。これにより、多孔質基材20の内部にスラリー16を吸引する際に、多孔質基材20の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層16Lの長さの差異をより小さくすることができる。
【0094】
図10に示すように、フィルム被覆部40のフィルム加熱部43での加熱によって収縮した樹脂フィルム90の軸方向D1に沿った長さL90Bは、外周側面22の軸方向D1に沿った長さL20よりも短くなっている。これにより、樹脂フィルム90が外周側面22から軸方向D1における両側に延び出さないようにすることができる。これにより、上述したように、外周側面22から軸方向D1に延び出した樹脂フィルム90が、スラリー16の供給やスラリー16の吸引を害することを抑制することができる。なお、図9に示すように、フィルム配置部42によって供給される樹脂フィルム90の軸方向D1に沿った長さL90Aは、すなわち、加熱による収縮前の樹脂フィルム90の長さL90Aは、外周側面22の軸方向D1に沿った長さL20よりも長くてもよい。
【0095】
多孔質基材20のセル29内にスラリー層16Lが形成されると、スラリー吸引工程S4が終了する。スラリー吸引工程S4の次に、封止解除工程S5が実施される。封止解除工程S5において、第1封止部60が外周側面22から離れ、第1封止部60による外周側面22の封止が解除される。第2封止部65が外周側面22から離れ、第2封止部65による外周側面22の封止が解除される。図示された例において、第1袋体61から流体(例えば空気)が排出され、第1袋体61が収縮して外周側面22から離れる。第2袋体66から流体(例えば空気)が排出され、第2袋体66が収縮して外周側面22から離れる。図示された例では、封止の解除に伴い、多孔質基材20は、封止部60,65による保持からも解放される。
【0096】
封止解除工程S5は、次の手順で実施されてもよい。まず、第1封止部60の第1袋体61が収縮する。これにより、第1封止部60による外周側面22の封止及び第1封止部60による多孔質基材20の保持が解除される。次に、第2封止部65の第2袋体66が収縮する。これにより、第2封止部65による外周側面22の封止及び第2封止部65による多孔質基材20の保持が解除される。その後、第1袋体61が取り付けられた保持部63が、駆動機62によって駆動されて、移動する。第1封止部60は、スラリー供給部52と共に、軸方向D1における一方側へ移動し、多孔質基材20から離れる。
【0097】
この封止解除工程S5は、第1封止部60による封止を解除する第1封止解除工程と、第2封止部65による封止を解除する第2封止解除工程と、保持部63を移動させる移動工程と、をこの順で含む。各工程の順番は変更可能である。例えば、第1封止解除工程は、第2封止解除工程の前に実施されもよいし、第2封止解除工程と並行して実施されてもよい。移動工程は、第2封止解除工程の前に実施されてもよいし、第2封止解除工程と並行して実施されてもよい。移動工程を第2封止解除工程の前に実施する場合、移動工程中に第1封止部60が多孔質基材20に接触したとしても、第2封止部65によって保持された多孔質基材20の姿勢を安定して維持することができる。
【0098】
以上により、封止解除工程S5が終了する。図17に示すように、封止解除工程S5の次に、乾燥工程S6が実施される。封止解除工程S5が終了すると、搬送部35によって、多孔質基材20がスラリー塗布部50から乾燥部70へ搬送される。乾燥工程S6では、スラリー層16Lが乾燥させられる。
【0099】
乾燥部70において、スラリー層16Lが形成された多孔質基材20を加熱してもよい。多孔質基材20の加熱によって、スラリー層16Lの乾燥が促進される。乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱温度は、樹脂フィルム90の融点未満の温度でもよい。乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱温度は、フィルム被覆工程S1における樹脂フィルム90の加熱温度未満でもよい。乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱温度は、70℃以上150℃以下でもよい。乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱時間は、0.2時間以上3時間以下でもよい。乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱方法は、特に限定されない。乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱方法は、熱伝導を利用してもよいし、熱伝達を利用してもよいし、ふく射を利用してもよい。
【0100】
一具体例として、樹脂フィルム90で被覆された多孔質基材20に、一方端面21A及び他方端面21Bの一方から気体又は加熱された気体を供給することによって、スラリー層16Lを乾燥させてもよい。この例によれば、多孔質基材20に供給された乾燥のための気体が、外周側面22を介して、多孔質基材20の外へ漏れることを、樹脂フィルム90による封止によって、抑制することができる。したがって、多孔質基材20の内部に形成されたスラリー層16Lを効率的に乾燥させることができる。
【0101】
図17に示すように、乾燥工程S6の次に、フィルム除去工程S7が実施される。乾燥工程S6が終了すると、搬送部35によって、多孔質基材20が乾燥部70からフィルム除去部45へ搬送される。図15に示すように、多孔質基材20は、フィルム除去部45の処理台47上に載置されてもよい。フィルム除去工程S7では、多孔質基材20から樹脂フィルム90を除去する。樹脂フィルム90の除去に、フィルム除去部45が用いられてもよい。フィルム除去方法は、特に限定されない。例えば、作業者が、処理台47上に保持された多孔質基材20から、手作業で、樹脂フィルム90を除去してもよい。
【0102】
図15及び図16に示すように、フィルム切断部46が、樹脂フィルム90の加熱領域A90を加熱して、加熱領域A90にて樹脂フィルム90を切断してもよい。図15及び図16に示された例において、加熱領域A90は、樹脂フィルム90のうちの、軸方向D1における全長に亘る領域である。この加熱領域A90は、樹脂フィルム90のうちの、外周側面22の周方向D2における一部の領域である。この加熱領域A90を加熱することによって、樹脂フィルム90は軸方向D1に切断される。図16に二点鎖線の矢印で示すように、切断された樹脂フィルム90を開くことにより、多孔質基材20から樹脂フィルム90が除去される。この例によれば、樹脂フィルム90の小さな領域を加熱することによって、樹脂フィルム90の除去を容易かつ迅速に行うことができる。また、非接触加熱によれば、多孔質基材に接触して損傷させることを抑制することができる。
【0103】
フィルム除去工程S7において、樹脂フィルム90を加熱して切断する際、樹脂フィルム90の加熱温度は、樹脂フィルム90の融点前後の温度でもよい。樹脂フィルム90の加熱温度は、樹脂フィルム90の融点±25℃でもよい。フィルム除去工程S7における樹脂フィルム90の加熱温度は、フィルム被覆工程S1における樹脂フィルム90の加熱温度より高くてもよい。フィルム除去工程S7における樹脂フィルム90の加熱温度は、乾燥工程S6における多孔質基材20の加熱温度より高くてもよい。
【0104】
図17に示すように、フィルム除去工程S7の次に、焼成工程S8が実施される。フィルム除去工程S7が終了すると、搬送部35によって、多孔質基材20がフィルム除去部45から焼成部80へ搬送される。焼成工程S8では、スラリー層16Lが形成された多孔質基材20を加熱し、スラリー層16Lを焼成する。焼成工程S8における多孔質基材20の加熱温度は、400℃以上900℃以下でもよい。焼成工程S8における多孔質基材20の加熱時間は、1時間以上10時間以下でもよい。この例によれば、多孔質基材20から樹脂フィルム90を除去した後に焼成工程が実施される。したがって、高温で実施される焼成工程中に、樹脂フィルム90が外周側面22に焼き付くことを防止することができる。
【0105】
焼成されたスラリー層16Lが機能層15を構成する。以上により、多孔質基材20及び機能層15を含む構造体10が得られる。
【0106】
以上に説明してきた一実施の形態において、構造体製造装置30は、一方端面21A及び他方端面21Bを有する多孔質基材20と、多孔質基材20の内部に保持された機能層15と、を含む構造体10を製造する装置である。構造体製造装置30は、フィルム被覆部40、スラリー供給部52、及びスラリー吸引部54を含む。フィルム被覆部40は、一方端面21A及び他方端面21Bの間に位置する外周側面22を、樹脂フィルム90で被覆する。スラリー供給部52は、多孔質基材20の一方端面21Aに、機能層15を形成する機能材料を含むスラリー16を供給する。スラリー吸引部54は、スラリー供給部52により多孔質基材20に供給されたスラリー16を、樹脂フィルム90で被覆された多孔質基材20の他方端面21Bから吸引する。
【0107】
以上に説明してきた一実施の形態において、構造体製造方法は、一方端面21A及び他方端面21Bを有する多孔質基材20と、多孔質基材20の内部に保持された機能層15と、を含む構造体10を製造する方法である。構造体製造方法は、フィルム被覆工程S1、スラリー供給工程S3、及びスラリー吸引工程S4を含む。フィルム被覆工程S1において、一方端面21A及び他方端面21Bの間に位置する外周側面22を、樹脂フィルム90で被覆する。スラリー供給工程S3において、多孔質基材20の一方端面21Aに、機能層15を形成する機能材料を含むスラリー16を供給する。スラリー吸引工程S4において、樹脂フィルム90で被覆された多孔質基材20の他方端面21Bからスラリー16を吸引する。
【0108】
本実施の形態の構造体製造装置30又は構造体製造方法によれば、樹脂フィルム90で外周側面22を被覆することによって、外周側面22を封止することができる。これにより、外周側面22から多孔質基材20の内部に気体が流入することを抑制することができる。したがって、多孔質基材20の内部にスラリー16を吸引する際に、多孔質基材20の外周部分と中心部分とにおいて形成されるスラリー層16Lの長さの差異を小さくすることができる。結果として、構造体10の内部に機能層15が形成されていない領域を生じにくくすることができる。得られた構造体10は、期待された機能を安定して発揮することができる。
【0109】
本実施の形態による構造体製造装置30の一具体例において、フィルム被覆部40は、フィルム配置部42及びフィルム加熱部43を含む。フィルム配置部42は、外周側面22の周長よりも長い周長を有する筒状の樹脂フィルム90を、樹脂フィルム90の内面91Aと多孔質基材20の外周側面22とが対面するように、配置する。フィルム加熱部43は、外周側面22に対面する樹脂フィルム90を加熱する。フィルム加熱部43によって加熱された樹脂フィルム90は、収縮して外周側面22に接触する。
【0110】
本実施の形態による構造体製造方法の一具体例において、フィルム被覆工程S1は、フィルム配置工程及びフィルム接触工程を含む。フィルム配置工程において、外周側面22の周長よりも長い周長を有する筒状の樹脂フィルム90を、樹脂フィルム90の内面91Aと前記多孔質基材の前記外周側面とが対面するように、配置する。フィルム接触工程において、外周側面22に対面して配置された樹脂フィルム90を加熱して収縮させることにより、樹脂フィルム90を外周側面22に接触させる。
【0111】
本実施の形態による構造体製造装置30及び構造体製造方法のこれらの一具体例によれば、樹脂フィルム90の正確な位置決めを必要とせず、加熱による樹脂フィルム90の収縮を利用して、樹脂フィルム90を用いて外周側面22を封止することができる。また、非接触加熱によれば、多孔質基材に接触して損傷させることを抑制することができる。
【0112】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0113】
例えば、多孔質基材20のセル29は、一方端面21A及び他方端面21Bの一方で閉塞している例を示した。しかしながら、本実施の形態による構造体製造装置30及び構造体製造方法は、この例に限定されない。多孔質基材20のセル29は、一方端面21A及び他方端面21Bの両方で開口してもよい。
【0114】
また、図示された具体例において、フィルム被覆部40及びフィルム除去部45が別個に設けられている例を示した。しかしながら、本実施の形態は、この例に限られない。
フィルム被覆部40の処理台41とフィルム除去部45の処理台47とが、同一であってもよい。すなわち、一つの処理台上に保持された多孔質基材20に対して、フィルム配置部42及びフィルム加熱部43を用いた外周側面22の被覆と、フィルム切断部46を用いた樹脂フィルム90の切断とが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
D1:軸方向、10:構造体、15:機能層、16:スラリー、20:多孔質基材、21A:一方端面、21B:他方端面、22:外周側面、23A:一方周縁、23B:他方周縁、30:構造体製造装置、40:フィルム被覆部、42:フィルム配置部、43:フィルム加熱部、45:フィルム除去部、46:フィルム切断部、52:スラリー供給部、54:スラリー吸引部、60:第1封止部、63:保持部、65:第2封止部、70:乾燥部、80:焼成部、90:樹脂フィルム、91A:内面、92A:一方周縁、92B:他方周縁、93:加熱領域
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10
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図18