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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155642
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】多数の孔を有する金属箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/08 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C25D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023078914
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】522278718
【氏名又は名称】株式会社電気印刷研究所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 雄二
(72)【発明者】
【氏名】本庄 和彦
(57)【要約】
【課題】電鋳加工の従来技術では、導電性の電着用基板上に、毎回、精密なレジストパターンを形成し、レジストパターンのない部分に金属めっき層を形成後、金属めっき層を電着用基板から分離し、金属箔製品とする。精密なレジストパターン形成工程は、レジストを塗工またはラミネート加工、パターン露光、現像という三工程からなり、それぞれ、大掛かりで高価な設備が必要になる。大掛かりで高価な設備を必要としない、電鋳加工の新たな技術が求められている。
【解決手段】絶縁層と導電層からなる基板Sの絶縁層上に静電気パターンを形成し、その静電気パターンをトナーと称するめっき可能な帯電粒子で現像しトナーパターンとして付着させた後、金属Aの無電解めっき処理を施して導電性パターンとし、その導電性パターン上に金属Bの電気めっき処理を施して金属Bめっき層を積層する。金属Aめっき層と金属Bめっき層からなる金属箔を基板Sから分離して多数の孔を有する金属箔を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 絶縁層と導電層からなる基板Sの絶縁層上に静電気パターンを形成する工程(静電気パターン形成工程)、
(2) 前記静電気パターンをトナーと称するめっき可能な帯電粒子で現像し、前記絶縁層上にトナーパターンを付着させる工程(現像工程)、
(3) 前記トナーパターンに触媒能を付与し、金属Aの無電解めっき処理を施す工程(金属Aの無電解めっき処理工程)、
(4) 金属Aめっき層に金属Bの電気めっき処理を施し、金属Aめっき層上に金属Bめっき層を積層する工程(金属Bの電気めっき処理工程)、
(5) 金属Aめっき層と金属Bめっき層からなる金属箔を前記基板Sから分離する工程(基板分離工程)よりなることを特徴とする多数の孔を有する金属箔の製造方法。
【請求項2】
凸版あるいは凹版あるいはグラビア版状パターンが形成されている版層と第1電極とを備える原版と、絶縁層と第2電極になる導電層とを備える基板Sを用い、前記原版の版層と前記基板Sの絶縁層を密着させ、前記原版の第1電極と前記基板Sの第2電極との間に前記版層のパターンと前記絶縁層との空隙を放電させるに足る適正な電圧を印加することによって、前記基板Sの絶縁層上に前記版層のパターンに対応した静電気パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
【請求項3】
導電性材料のみの成型体または絶縁性材料と導電性材料の積層体からなり、かつ所定のイオン透過性開口部を備えるマスクシートと、絶縁層と背面電極になる導電層とを備える基板Sを用い、前記マスクシートと前記基板Sの絶縁層を密着させ、マスクシート越しにイオン照射を行った後、前記マスクシートを前記基板Sから剥離することにより、前記基板Sの絶縁層上に前記マスクシートのイオン透過性開口部に対応した静電気パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
【請求項4】
イオン照射手段がコロナ放電によるイオン照射方式であることを特徴とする請求項3に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
【請求項5】
前記基板Sの絶縁層が、ポリイミド、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、フッ素系樹脂等の成形物からなることを特徴とする請求項1に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気鋳造(電鋳)という、電気めっきの応用技術に関する。さらに詳しくは、電気めっき法による金属製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JISでは、電鋳とは、電気めっき法による金属製品の製造・補修または複製法であると規定されている。電鋳加工には、原型(母型)に金属を電着させ、剥離して製品とするものと、素地金属に直接厚く電着し、機械部品の補修や肉盛りをするものがある。本発明の電鋳加工は、前者に係るものである。
電鋳加工について、下記特許文献1~3に開示されている。従来技術の概要は以下のとおりである。
導電性の電着用基板の全面に、レジストを塗工またはラミネート加工後、パターン露光と現像を行い、レジストパターンを形成する。電着手段(電気めっき等)によりレジストパターンのない部分に金属めっき層を形成後、金属めっき層を電着用基板から分離し、金属箔製品とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52―117840号公報
【特許文献2】特開平11-347491号公報
【特許文献3】特開2013-199684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電鋳加工の従来技術により、エッチング加工やレーザー加工では得られない精密な形状の多数の孔を有する製品を製造することができる。しかし、電鋳加工の従来技術では、導電性の電着用基板上に、毎回、精密なレジストパターンを形成し、レジストパターンのない部分に金属めっき層を形成後、金属めっき層を電着用基板から分離し、金属箔製品とする。精密なレジストパターン形成工程は、▲1▼レジストを塗工またはラミネート加工、▲2▼パターン露光、▲3▼現像という三工程からなり、それぞれ、大掛かりで高価な設備が必要になる。大掛かりで高価な設備を必要としない、電鋳加工の新たな技術が求められている。
【0005】
本発明では、上記課題を解決するため、電鋳加工の新たな技術を応用した多数の孔を有する金属箔の製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電鋳加工の従来技術は、導電性の電着用基板のレジストパターンのない部分に電気めっき処理を施し、レジストパターンとは逆パターンの金属めっき層を形成するものである。
本発明者らは発想を変え、先ず静電気パターンを形成し、その静電気パターンをトナーと称するめっき可能な帯電粒子で現像しトナーパターンとして付着させた後、金属Aの無電解めっき処理を施せば金属Aの導電性パターンとなり、その導電性パターンに金属Bの電気めっき処理を施せば金属Bめっき層を積層することができ、次いで金属Aめっき層と金属Bめっき層からなる金属箔を基板Sから分離すれば多数の孔を有する金属箔が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明により電鋳加工の新たな技術を応用した多数の孔を有する金属箔の製造方法が提供される。
(I)
(1)絶縁層と導電層からなる基板Sの絶縁層上に静電気パターンを形成する工程(静電気パターン形成工程)、
(2)前記静電気パターンをトナーと称するめっき可能な帯電粒子で現像し、前記絶縁層上にトナーパターンを付着させる工程(現像工程)、
(3)前記トナーパターンに触媒能を付与し、金属Aの無電解めっき処理を施す工程(金属Aの無電解めっき処理工程)、
(4)金属Aめっき層に金属Bの電気めっき処理を施し、金属Aめっき層上に金属Bめっき層を積層する工程(金属Bの電気めっき処理工程)、
(5)金属Aめっき層と金属Bめっき層からなる金属箔を前記基板Sから分離する工程(基板分離工程)よりなることを特徴とする多数の孔を有する金属箔の製造方法。
(II)凸版あるいは凹版あるいはグラビア版状パターンが形成されている版層と第1電極とを備える原版と、絶縁層と第2電極になる導電層とを備える基板Sを用い、前記原版の版層と前記基板Sの絶縁層を密着させ、前記原版の第1電極と前記基板Sの第2電極との間に前記版層のパターンと前記絶縁層との空隙を放電させるに足る適正な電圧を印加することによって、前記基板Sの絶縁層上に前記版層のパターンに対応した静電気パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
(III)導電性材料のみの成型体または絶縁性材料と導電性材料の積層体からなり、かつ所定のイオン透過性開口部を備えるマスクシートと、絶縁層と背面電極になる導電層とを備える基板Sを用い、前記マスクシートと前記基板Sの絶縁層を密着させ、マスクシート越しにイオン照射を行った後、前記マスクシートを前記基板Sから剥離することにより、前記基板Sの絶縁層上に前記マスクシートのイオン透過性開口部に対応した静電気パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
(IV)イオン照射手段がコロナ放電によるイオン照射方式であることを特徴とする請求項3に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
(V)前記基板Sの絶縁層が、ポリイミド、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、フッ素系樹脂等の成形物からなることを特徴とする請求項1に記載の多数の孔を有する金属箔の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、従来技術のように毎回、大掛かりで高価な設備を必要としないため、製造コストを低減できる。また、静電気パターンを形成するための絶縁層と導電層の組合せの自由度が高いため、絶縁層として樹脂成形物を採用すれば、ロールツウロール方式等が適用でき、生産性が向上する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】静電気パターン形成工程
図2】現像工程
図3】金属Aの無電解めっき処理工程
図4】金属Bの電気めっき処理工程
図5】基板分離工程
図6】静電気パターン形成工程の一例
図7】静電気パターン形成工程の他の一例
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の静電気パターン形成工程であり、基板Sの絶縁層22上に静電気パターンが形成され、保持されている状態を示す。
基板Sは導電層21と絶縁層22から構成される。
絶縁層22は静電気パターンを保持する必要があるため電気絶縁性が高い必要がある。ポリイミド、ポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、フッ素系樹脂等の成形物を絶縁層22として用いることができる。絶縁層22の厚さは5~300μmであることが好ましい。厚さが5μm未満の場合、ハンドリングが困難である。また厚さが300μmを超えるとロールツウロール方式等の生産性向上のための手段の適用が困難になる。
【0011】
導電層21は静電気パターン形成工程で電界を供給する役割、あるいは絶縁層22上に帯電した電荷を安定化させる役割を果たせば良いため、金属、導電性酸化物、カーボン、グラファイト、導電性高分子等、導電性材料であればどのような材料で構成されていても良い。
導電層21は絶縁層22の静電気パターン形成面と反対面に配置される。導電層21は絶縁層22に圧着されていれば上記役割を果たすことができるが、絶縁層22と一体になっていれば、静電気パターン形成工程、現像工程において取扱いが容易になる。絶縁層22の静電気パターン形成面と反対面に、金属膜、導電性酸化物膜等をスパッタする方法、導電性高分子膜等をコーティングする方法、金属箔を積層する方法等により導電層21を形成すれば、絶縁層22と導電層21を一体化させることができる。逆に金属箔等からなる導電層21上に塗工法等により絶縁層22を設けることにより絶縁層22と導電層21を一体化させることができる。あるいは予め電気絶縁性材料のシートに金属膜、導電性酸化物膜、導電性高分子膜等の導電層21を設けた導電層付シートを、絶縁層22の静電気パターン形成面と反対面に積層すれば、絶縁層22と導電層21を一体化させることができる。
【0012】
静電気パターン形成工程の一例を図6に示す。この方法は本発明者らが提案した高精細静電印刷法(特願2018-188998号明細書参照)を応用したものである。凸版あるいは凹版あるいはグラビア版状パターンが形成されている版層12(図6は、金属箔の孔の外部に対応する箇所を凹版とした例を示す)と第1電極11とを備える原版10と、絶縁層22と第2電極になる導電層21とを備える基板Sを用い、前記原版10の版層12と前記基板Sの絶縁層22を密着させ、前記原版10の第1電極11と前記基板Sの第2電極21との間に前記版層12のパターンと前記絶縁層22との空隙を放電させるに足る適正な電圧を印加することによって、前記絶縁層22上に前記版層12のパターンに対応した静電気パターンを形成する。
【0013】
空隙が放電する状況はパッシェンの法則から計算ができる。8μm以上の空隙に対する放電開始電圧は直線で表せるとされており、空隙:d(μm)、空隙放電開始電圧:Vbとして下式で近似される。
Vb=312+6.2d (1)
空隙(前記版層12のパターンと前記絶縁層22との空隙)は20μmであり、放電開始電圧は436Vとなる。つまり、空隙に436V以上の外部電圧が加われば放電が生じイオンが発生する。発生したイオンは電界に従ってプラスイオンはマイナス電極に向かって移動し、プラスイオンはマイナス電極に向かって移動する。イオンによって絶縁層22は帯電し、空隙の電界を弱める方向に働く。そして空隙に加わる電圧が放電開始電圧436Vに達した時点で放電は終了する。
【0014】
図6の例では前記絶縁層22は厚さ75μm、比誘電率3.2のPETであり空気厚みに換算すると75÷3.2=23.4となる。この例では前記絶縁層22のパターン形成面全体に+300Vで予備帯電処理を行っている。この予備帯電処理により基板Sは原版10に確実に密着する。前記版層12と前記絶縁層22が密着した状態で、第2電極21を接地電位とし、第1電極11に-1298Vが加わるような電圧を与えた。空隙20μmに加わる電圧は(1298+300)×20÷(20+23.4)V=736Vとなる。式(1)から得られる20μm空隙の放電開始電圧436Vより大きいため空隙内で放電イオンが生じ、マイナスイオンが電極21に向かって移動して絶縁層22に帯電し、プラスイオンは電極11に流れる。絶縁層22が-(736-436)=-300Vまで帯電すると空隙に加わる電界は放電開始電圧436Vに達するため放電は止まる。その後印加電源をOFF、電極21を0Vにしてから基板Sを原版10から剥離すると、前記絶縁層22上に凹版の空隙部(金属箔の孔の外部に対応する箇所)に相当する部分が-300Vに帯電し、それ以外の部分(金属箔の孔に対応する箇所)は+300Vに帯電した静電気パターンが出来ることになる。剥離前に電極21を0Vにするのは全面いずれの部分も剥離放電しない条件を与えるためである。
【0015】
静電気パターン形成工程の他の一例を図7に示す。この方法は本発明者らが提案した静電印刷法(特願2021-132875号明細書参照)を応用したものである。導電性材料のみの成型体または絶縁性材料と導電性材料の積層体からなり、かつ所定のイオン透過性開口部(金属箔の孔に対応する箇所)を備えるマスクシートMと、絶縁層22と背面電極になる導電層21とを備える基板Sを用い、前記マスクシートMと前記基板Sの絶縁層22を密着させ、マスクシートM越しにイオン照射を行った後、前記マスクシートMを前記基板Sから剥離することにより、前記基板Sの絶縁層22上に前記マスクシートMのイオン透過性開口部に対応した静電気パターンを形成する。
【0016】
図7の例では基板Sの絶縁層22のパターン形成面と反対面に背面電極になる導電層21が密着しており、導電層21は接地されている。マスクシートMを前記絶縁層22のパターン形成面に密着させる前に、前記絶縁層22のパターン形成面全体に―300Vで予備帯電処理を行っている。この予備帯電処理によりマスクシートMは前記絶縁層22に確実に密着する。前記絶縁層22のパターン形成面に、イオン透過性開口部31を備えたマスクシートMを密着させた状態でイオン照射手段40によりマスクシートM越しにイオン照射を行った。イオン照射後、マスクシートM表面および前記絶縁層22のパターン形成面のイオン透過性開口部31に対応したイオン照射部が+300Vに帯電する。マスクシートMを接地した状態で前記絶縁層22から剥離する。前記絶縁層22のイオン透過性開口部31に対応したイオン照射部(金属箔の孔に対応する箇所)は+300Vに帯電し、イオン遮蔽部に対応した非イオン照射部(金属箔の孔の外部に対応する箇所)は―300Vに帯電した静電気パターンが出来ることになる。
【0017】
図2は現像工程を示す。静電気パターン形成工程で出来た静電気パターンをトナーと称するめっき可能な帯電粒子で現像する。めっき可能なトナーとして、本発明者らが提案した電子写真用トナーを応用できる(特願2019-209237号明細書参照)。このトナーは、金属を取り込んで錯体となる配位子を持つ樹脂で構成され、触媒金属あるいは触媒金属イオンを吸着する機能を持つ。
図2はプラス帯電したトナーを用いた例であり、この場合トナーは、上記絶縁層22の+300Vに帯電した部分(金属箔の孔に対応する箇所)には付着せず、―300Vに帯電した部分(金属箔の孔の外部に対応する箇所)に付着し、絶縁層22上にトナーパターン23が出来ることになる。
【0018】
図3は金属Aの無電解めっき処理工程を示す。触媒金属を含む溶液に浸漬することにより前記トナーパターン23上にのみ触媒金属を付着させ触媒能を付与する。触媒金属がイオンとして吸着しているときは、状況によっては次亜リン酸やホルマリン等で還元して金属化する工程の追加が必要な場合がある。触媒金属としてパラジウム、銅、金、白金等が挙げられる。
絶縁層22上のトナーパターン23に触媒能を付与したのち、金属Aの無電解めっき処理を施すことにより、絶縁層22上に多数の孔を有する金属Aめっき層50が形成される。
図3の例では、絶縁層上にトナーパターン23を形成した基板Sを以下の触媒能付与液、無電解ニッケルめっき浴または無電解銅めっき浴で処理した。
【0019】
[触媒能付与液、無電解ニッケルめっき浴および無電解銅めっき浴]
触媒能付与液の組成を下表に示す。
無電解ニッケルめっき浴の組成を下表に示す。
無電解銅めっき浴の組成を下表に示す。
【0020】
絶縁層22上にトナーパターン23を形成した基板Sを上記触媒能付与液に40℃で5分間浸漬後、室温で1分間水洗し、上記トナーパターン23に触媒能を付与した。
次に上記基板Sを、無電解ニッケルめっき浴にpH8.0、70℃で10分間浸漬後、水洗することにより、トナーパターン23上にニッケルめっき層50を形成した。
または上記基板Sを無電解銅めっき浴に25℃で12分間浸漬後、室温で1分間水洗することにより、トナーパターン23上に銅めっき層50を形成した。
【0021】
図4は金属Bの電気めっき処理工程を示す。金属Bを陽極、基板Sを陰極として、金属Bめっき浴を用いて、金属Aめっき層50に金属Bの電気めっき処理を施し、金属Aめっき層50上に金属Bめっき層60を積層する。トナーパターン23上に金属Aめっき層50と金属Bめっき層60からなる金属箔が形成される。
図4の例では、ニッケルめっき層50の場合、スルファミン酸ニッケル浴を用いて、50℃、3A/dm2の条件で25分間、電気めっきをおこなった。また、銅めっき層50の場合、ピロリン酸銅浴を用いて、50℃、1A/dm2の条件で25分間、電気めっきをおこなった。
【0022】
図5は金属Aめっき層50と金属Bめっき層60からなる金属箔を前記基板Sから分離する工程を示す。金属Aと金属Bからなる多数の孔を有する金属箔が得られる。金属Aと金属Bは同種の金属であっても異種の金属であっても良い。
図5は、同種の金属を組み合わせた例であり、多数の孔を有するニッケル箔または多数の孔を有する銅箔の断面図を示す。ニッケル箔は、厚さが15μm、孔の直径が150μm、孔の間隔が150μmである。また銅箔は、厚さが15μm、孔の直径が100μm、孔の間隔が100μmである。
【産業上の利用の可能性】
【0023】
本発明の多数の孔を有する金属箔は、用途に応じて金属Aめっき層と金属Bめっき層の組合せ、各層の厚さ、孔の形状、孔の大きさ、孔の間隔を変えることができるため、スクリーン印刷用メタルマスク、分級用フィルター、リチウムイオンキャパシタ用電極集電箔等、種々の産業分野で利用が可能である。
【符号の説明】
【0024】
10:原版
11:第1電極
12:版層
S:基板
21:導電層
22:絶縁層
23:トナーパターン
M:マスクシート
31:イオン透過性開口部
32:イオン遮蔽部
40:イオン照射手段
50:金属Aめっき層
60:金属Bめっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7