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特開2024-155659骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物
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  • 特開-骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物 図1
  • 特開-骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155659
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/742 20150101AFI20241024BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241024BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K35/742 ZNA
A61P19/08
A61P19/02
A61P37/02
C12N1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113930
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】112114624
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 「Cells 2022,Jul 11;11(14):2169」に公開された「Oral Administration of Clostridium butyricum GKB7 Ameliorates Signs of Osteoarthritis in Rats」
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519298765
【氏名又は名称】葡萄王生技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】陳 勁初
(72)【発明者】
【氏名】陳 炎▲錬▼
(72)【発明者】
【氏名】林 詩偉
(72)【発明者】
【氏名】林 子淳
(72)【発明者】
【氏名】蔡 侑珊
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲啓▼憲
(72)【発明者】
【氏名】侯 毓欣
(72)【発明者】
【氏名】石 仰慈
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲静▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 雅君
(72)【発明者】
【氏名】江 佳琳
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 姿和
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲彦▼博
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA23X
4B065AC20
4B065BC03
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC68
4C087CA09
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZB07
(57)【要約】
【課題】骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物に関する。
【解決手段】クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含むことで、骨関節炎による関節痛を緩和し、硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症を改善し、且つ軟骨組織及び/又は滑膜組織におけるIL-1βの発現量及び/又はTNF-αの発現量を低下させる骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)GKB7含有組成物であって、有効量の前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含み、前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、2022年04月01日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)の生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 911120である、骨関節炎を改善するための組成物。
【請求項2】
前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、発酵工程を経た後に得られた生菌であり、前記発酵工程は、発酵基質により25℃~40℃の嫌気性環境で前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7に対して16時間~24時間行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、発酵工程及び不活化工程を経た後に得られた死菌であり、前記発酵工程は、発酵基質により25℃~40℃の嫌気性環境で前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7に対して16時間~24時間行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
被験体がラットである場合、前記有効量は50mg/kg体重/日~2000mg/kg体重/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
被験体がヒトである場合、前記有効量は1mg/kg体重/日~200mg/kg体重/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物であって、受託番号がBCRC 911120である前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含むことで、被験体の硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症を改善する、変形性関節炎を改善するための組成物。
【請求項7】
前記組成物が投与されていない対照被験体に比べ、前記組成物が投与された前記被験体の前記軟骨組織及び/又は前記滑膜組織におけるIL-1βの発現量及び/又はTNF-αの発現量が低下する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が投与されていない対照被験体に比べ、前記組成物が投与された前記被験体の関節痛は緩和される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、週に3回~7回の頻度で前記被験体に投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、前記被験体に2週間~8週間投与される、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋骨格疾患を改善するためのプロバイオティクス含有組成物に関し、特に、骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨関節炎(Osteoarthritis;OA)は、変形性関節炎とも呼ばれ、関節に慢性変形性炎症が発生した疾患である。骨関節炎は、手部、臀部及び膝関節に発生する場合が多い。骨関節炎の患部に硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨下部再構築、軟骨組織及び滑膜組織の炎症等の症状が発生し、患部の痛み、凝り及び/又は腫れが引き起こされる。骨関節炎は、非常に一般的であり、2021年に発表された文献に基づく統計によると、世界中の65歳以上の人の三分の一に影響を与えている。人口が高齢化している国において、骨関節炎は、深刻な問題となっている。
【0003】
現段階では、骨関節炎は、治癒できず、重篤の場合、手術するしかできない。手術前に、骨関節炎による関節痛を緩和し、及び/又は関節の可動性を改善するために、保存療法を採用してよい。非ステロイド性抗炎症薬は、保存療法に一般的に使用される薬物であり、シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase;COX)の作用を阻害し、プロスタグランジン(Prostaglandin E2;PGE2)の発生を低減し、更に骨関節炎を緩和することができる。しかしながら、非ステロイド性抗炎症薬は、骨関節炎を緩和するしかできず、骨関節炎を治療できないだけでなく、プロテオグリカンの合成を阻害し、骨関節炎の悪化を加速する恐れもある。なお、非ステロイド性抗炎症薬を長期にわたって使用すれば、消化性潰瘍、下肢浮腫、腎臓と心臓機能の損傷等の副作用を招くこともある。
【0004】
腸内微生物叢の生態系は、口腔から肛門までの細菌、真菌、ウィルス、ファージ及び寄生虫を含む。微生物叢は、宿主免疫機能、腸透過性の調節、栄養素の吸収、病原体耐性、神経伝達物質の合成と分泌及び代謝恒常性等を含める多くの重要な作用に関与する。腸内菌共生バランス失調によって、腸粘膜の透過性を増やし、代謝バランスに干渉し、全身性炎症、軟骨内の分解及び腸脳軸の失調を招き、骨関節炎の肝心な要因の1つであると認められている。しかしながら、現段階では、クロストリジウム・ブチリカムが筋骨格疾患を改善できるかについての研究は少ない。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の一態様は、骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)GKB7含有組成物であって、有効量のクロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含む骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物を提供する。
【0006】
本発明の別の態様は、変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有経口組成物であって、クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含むことで、被験体の硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症を改善する変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有経口組成物を提供する。
【0007】
本発明の上記態様によれば、骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7であって、クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含み、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、2022年04月01日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)の生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 911120である骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物を提案する。
【0008】
本発明の幾つかの実施例によれば、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、発酵工程を経た後に得られた生菌であり、発酵工程は、発酵基質により25℃~40℃の嫌気性環境でクロストリジウム・ブチリカムGKB7に対して16時間~24時間行われる。
【0009】
本発明の幾つかの実施例によれば、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、発酵工程及び不活化工程を経た後に得られた死菌であり、発酵工程は、発酵基質により25℃~40℃の嫌気性環境でクロストリジウム・ブチリカムGKB7に対して16時間~24時間行われる。
【0010】
本発明の幾つかの実施例によれば、被験体がラットである場合、有効量は50mg/kg体重/日~2000mg/kg体重/日である。
【0011】
本発明の幾つかの実施例によれば、被験体がヒトである場合、有効量は1mg/kg体重/日~200mg/kg体重/日である。
【0012】
本発明の別の態様によれば、変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有経口組成物であって、受託番号がBCRC 911120であるクロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含むことで、被験体の硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症を改善する変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有経口組成物を提案する。
【0013】
本発明の幾つかの実施例によれば、組成物が投与されていない対照被験体に比べ、経口組成物が投与された被験体の軟骨組織及び/又は滑膜組織におけるIL-1βの発現量及び/又はTNF-αの発現量が低下する。
【0014】
本発明の幾つかの実施例によれば、組成物が投与されていない対照被験体に比べ、経口組成物が投与された被験体の関節痛は緩和される。
【0015】
本発明の幾つかの実施例によれば、組成物は、週に3回~7回の頻度で被験体に投与される。
【0016】
本発明の幾つかの実施例によれば、組成物は、被験体に2週間~8週間投与される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有経口組成物を適用すれば、クロストリジウム・ブチリカムGKB7を含み、被験体の硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症を改善し、軟骨組織及び/又は滑膜組織におけるIL-1βの発現量及び/又はTNF-αの発現量を低下させ、且つ関節痛を緩和することができる。
下記の添付図面についての詳しい説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、利点と実施例をより明らかで分かりやすくするためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例による異なる群別のラットの手術6週間後の体重負荷の差の変化を示すグラフである。
図2】本発明の一実施例による異なる群別のラットの手術6週間後の体重負荷の差の変化を示すグラフである。
図3図3A図3Gは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の骨密度、骨量、骨体積分率、骨表面積密度、骨梁厚さ、骨梁数及び骨梁間隙を示す箱ひげ図である。
図4図4A図4Cは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコアを示す。
図5図5A図5Bは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の軟骨組織のIL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコアを示す箱ひげ図である。
図6図6A図6Bは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の滑膜組織のIL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコアを示す箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
引用文献における用語の定義又は使用が本明細書における当該用語の定義と矛盾するか又は反対する場合、本明細書における当該用語の定義が適用されるが、この引用文献における当該用語の定義が適用されない。また、文脈において別途定義されていない限り、単数形の用語は、複数形を含んでもよく、複数形の用語は、単数形を含んでもよい。
【0020】
前述したように、本発明は、筋骨格疾患を改善するためのクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)含有組成物を提供する。本明細書に記載の筋骨格疾患は、運動系(筋肉、骨、関節及び隣接する結合組織を含む)が損傷され、一時的又は生涯の機能制限が引き起こされることを指す。筋骨格疾患は、通常、痛み、行動性及び器用さの制限等を特徴とする。筋骨格疾患は、骨関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、強直性脊椎炎等の関節問題、骨粗鬆症、骨減少症、脆弱性骨折、外傷性骨析等の骨格問題、サルコペニア等の筋肉問題、背中及び首の痛み等の脊椎問題、及び体の多くの部位又は系の問題を含む。
【0021】
幾つかの実施例において、筋骨格疾患は骨関節炎である。骨関節炎の臨床症状は、痛み及び凝りを含み、この痛みは、活動後に悪化するが、休息後に緩和され、凝りは、活動後に改善されるが、休息後に再発する。光学イメージングツールにより検出したところ、骨関節炎の患部に、関節腔の狭小化、骨棘の形成、軟骨下骨硬化又は軟骨下骨嚢胞、硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症が現れる場合が多い。
【0022】
幾つかの実施例において、骨関節炎の評価項目は、痛みの度合い、硬骨損傷の度合い、軟骨損傷の度合い、軟骨組織及び滑膜組織の炎症性サイトカインの発現量を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの具体例において、骨関節炎が一般的に非対称であるため、痛みの度合いは、体重負荷の差によって評価されてよい。
【0023】
幾つかの具体例において、硬骨損傷の度合いは、骨密度(Bone mineral density;BMD)、骨量(Bone mineral content;BMC)、骨体積分率(Bone volume fraction)、骨表面積密度(Bone area fraction)、骨梁厚さ(Trabecular thickness)、骨梁数(Trabecular number)及び骨梁間隙(Trabecular separation)で評価されてよい。幾つかの具体例において、軟骨損傷の度合いは、国際変形性関節症学会(Osteoarthritis Research Society International;OARSI)により推奨されたラット関節組織学的スコアリングシステムを利用してスコアリングされてよい。
【0024】
幾つかの具体例において、上記炎症性サイトカインは、インターロイキン(Interleukin;IL)-1β及び腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor;TNF)-αを含んでよいが、これらに限定されない。IL-1β及びTNF-αは、タンパク質分解酵素の合成を促進し、関節部の細胞外マトリックスを分解し、骨関節炎をより深刻にすることを補足して説明しておく。
【0025】
実験により、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、骨関節炎を改善できることが実証された。具体的には、クロストリジウム・ブチリカムGKB7が投与されていない対照被験体に比べ、クロストリジウム・ブチリカムGKB7が投与された被験体の痛みの度合い、硬骨損傷の度合い、軟骨損傷の度合い、軟骨組織及び滑膜組織における炎症性サイトカインの発現量が低下する。上記クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、2022年04月01日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)の生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC、住所:新竹市食品路331号、郵便番号:300193)に寄託され、受託番号がBCRC 911120である。
【0026】
従って、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、骨関節炎及び変形性関節炎を改善するための組成物の調製に適用可能であり、この組成物は、有効量のクロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含んでよいが、これに限定されない。幾つかの実施例において、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、発酵工程を経た後に得られた生菌である。幾つかの実施例において、発酵工程は、クロストリジウム・ブチリカムGKB7が好ましい増殖活性及び/又は骨関節炎改善活性を有するように、25℃~40℃、又は35℃~40℃、又は37℃で行われる。幾つかの実施例において、発酵工程は、多くのクロストリジウム・ブチリカムGKB7の生菌を得るように、16時間~24時間、又は18時間行われる。幾つかの実施例において、発酵工程は、嫌気性環境で行われる。嫌気性環境の空気組成は、特に制限されず、酸素含有量が0%であるか又は0%に近ければよい。一具体例において、嫌気性環境は、75%~85%の窒素、5%~15%の水素及び5%~15%の二酸化炭素を含んでよいが、これらに限定されない。
【0027】
発酵工程の発酵基質は、特に制限されず、例えば市販の発酵基質であってよい。幾つかの具体例において、発酵基質は、強化クロストリジア培地(Reinforced clostridial medium;RCM)であってよい。幾つかの実施例において、発酵基質は、1wt%~10wt%の糖類、0.1wt%~5.0wt%の酵母エキス、0.1wt%~5.0wt%のペプトン、0.01wt%~2.00wt%の微量元素、0.01wt%~0.10wt%のシステイン、0.05wt%~1.00wt%のTWEEN-80及びバランスが取れた量の水を含んでよいが、これらに限定されない。上記糖類は、単糖及び/又は二糖を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの具体例において、糖類は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、ラクトース、スクロース及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてよい。上記微量元素は、マグネシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、塩素イオン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてよい。
【0028】
幾つかの実施例において、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、上記発酵工程及び不活化工程を経た後に得られた死菌である。不活化工程の方法は、特に制限されず、クロストリジウム・ブチリカムGKB7が増殖活性を失うようにすればよい。幾つかの実施例において、不活化工程は、熱不活化工程、放射線不活化工程及び/又は化学的不活化工程を含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの具体例において、不活化工程は、110℃~120℃の飽和蒸気圧で10分間~20分間の熱不活化工程を行うことである。クロストリジウム・ブチリカムGKB7の死菌は、増殖活性を失ったが、実験により、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の死菌は、依然として骨関節炎を改善する活性を有することが実証されたことに留意されたい。次に、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の生菌に比べ、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の死菌の保存及び/又は剤形は、より制限されず、多くの製品の種類に適用可能である。
【0029】
幾つかの実施例において、発酵工程を経た後、又は発酵工程及び不活化工程を経た後、発酵基質を除去するために、クロストリジウム・ブチリカムGKB7に固液分離工程を選択的に行ってよい。固液分離工程は、特に制限されないが、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の生菌又は死菌を保留しながら、発酵基質を除去できる必要がある。幾つかの具体例において、固液分離工程は、濾過工程及び/又は遠心分離工程を含んでよいが、これらに限定されない。熱不活化工程と固液分離工程の順序は、特に制限されないことを補足して説明しておく。幾つかの実施例において、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、発酵工程後に、固液分離工程を経てから、不活化工程を経てよい。
【0030】
幾つかの実施例において、上記クロストリジウム・ブチリカムGKB7の生菌及び/又は死菌は、更に乾燥工程を経ることで、凍結乾燥粉末を得てよく、その保存時間が延長される。幾つかの実施例において、凍結乾燥粉末は、5.5×107CFU/gのクロストリジウム・ブチリカムGKB7を含む。生菌、死菌、生菌の凍結乾燥粉末及び死菌の凍結乾燥粉末の活性物質は、細胞壁、細胞膜に分泌された細胞外マトリックス、細胞質及び/又は細胞が発酵工程を経た後に生じた代謝物(例えば、脂質、糖類、タンパク質、糖タンパク質、糖脂質及び/又は他の生体分子)を含んでよいが、これらに限定されず、その中の単一の物質を利用し、及び/又は未知の分離不能な成分を排除することによっても、骨関節炎及び変形性関節炎を改善する効果を達成できると合理的に予期できないことに留意されたい。従って、本発明に記載のクロストリジウム・ブチリカムGKB7の死菌は、成分、特性又はパラメータによって定義することができず、即ち、本発明は、成分、特性又はパラメータによる定義が可能ではないか又は実際的ではない場合がある。
【0031】
被験体は、特に限定されないが、例えばラット、マウス、ウサギ、ネコ、イヌ又はヒト等の哺乳類動物であってよい。幾つかの実施例において、被験体がラットである場合、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の有効量は、比較的少ない投与量で好ましい効果を達成するように、例えば50mg/kg体重/日~2000mg/kg体重/日であってよく、例えば50mg/kg~500mg/kg又は80mg/kg~100mg/kgである。幾つかの実施例において、被験体がヒトである場合、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の有効量は、例えば、1mg/kg体重/日~200mg/kg体重/日であってよく、例えば1mg/kg体重/日~100mg/kg体重/日、又は1mg/kg体重/日~50mg/kg体重/日である。動物実験により、100mg/kg~1000mg/kgのクロストリジウム・ブチリカムGKB7を投与すれば、確かに骨関節炎を改善することができるが、この動物実験では、前十字靭帯切断術によって骨関節炎を誘発したため、骨関節炎の経過が非常に速いことに留意されたい。臨床に適用される際に、比較的少ない投与量で同じ効果を達成できるはずである。幾つかの実施例において、被験体がヒトである場合、クロストリジウム・ブチリカムGKB7の有効量は、1mg/kg体重/日~10mg/kg体重/日である。上記実施例において、被験体は、骨関節炎を予防しようとしているか、又は早期の骨関節炎(少なくとも1つで4つ未満の関節が炎症を起こし、且つ発病から2年以内)に罹患している。
【0032】
クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、被験体に一定の時間にわたって連続して投与する必要がある。幾つかの実施例において、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、例えば、週に5回等、週に3回~7回の頻度で被験体に投与されてよい。幾つかの実施例において、クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、被験体に2週間~8週間投与され、又はそれよりも長くても短くてもよい。
【0033】
適用時に、上記組成物は、例えば経口組成物であってよい。幾つかの実施例において、上記組成物は、例えば医薬組成物又は食品組成物であってよい。一実施例において、経口組成物は、食品的又は医学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤、防腐剤、充填剤及び/又は添加剤を選択的に含んでよい。
【0034】
以下、複数の実施例を利用して本発明の適用を説明するが、それらは、本発明を限定するものではなく、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、各種の変更や修飾を行うことができる。
【実施例0035】
1. 調製例1
1.1 菌株の由来
健康なヒトの糞便から菌株GKB7を分離した。菌株GKB7のDNAを精製した後、遺伝子配列決定を行うことにより、配列識別番号(SEQ ID NO):1に示される菌株GKB7の16s rRNA遺伝子の核酸断片配列を得た。配列アライメントを経て、菌株GKB7がクロストリジウム・ブチリカムであると同定された。上記DNAの精製、遺伝子配列決定及び配列アライメントは、既知の手法により行われ、且つ後続の菌株GKB7による骨関節炎の改善の評価に影響を与えないため、繰り返して説明しない。クロストリジウム・ブチリカム菌株GKB7は、グラム染色陽性であり、絶対嫌気性であり、運動でき、芽胞と鞭毛がある。クロストリジウム・ブチリカム菌株GKB7は、2022年04月01日にBCRCに寄託され、受託番号がBCRC 911120である。
【0036】
1.2 凍結乾燥粉末の調製
菌株GKB7をRCM寒天に塗布し、37℃の嫌気性環境(80%のN2、10%のH2及び10%のCO2)で24時間培養することにより、単一コロニーが得られた。続いて、単一コロニーを培養液に接種してから、37℃の嫌気性環境で発酵工程を24時間行うことにより、液体培養物が得られた。培養液には、5%のグルコース、1.5%の酵母エキス、0.5%のペプトン、0.1%のMgSO4、0.2%のK2HPO4、0.1%の酢酸ナトリウム、0.2%のNaCl及びバランスが取れた量の水が含まれる。培地の種類は、菌株GKB7の骨関節炎に対する改善効果に影響を与えず、上記に列挙された培養液は、本発明を制限することを意図するものではないことを補足して説明しておく。
【0037】
続いて、液体培養物に1000rpm~15000rpmの遠心分離工程を行うことにより、菌株GKB7の生菌の菌体が得られた。遠心分離工程の前に、液体培養物と15wt%の脱脂粉乳を混合することで、菌体が団子状に凝集することに役立ち、菌体回収率を増やすことができる。その後、菌体と6wt%~50wt%の脱脂粉乳を混合してから、凍結乾燥工程を行うことにより、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末が得られた。凍結乾燥は、単に投与、定量及び保存を容易にするためであり、本発明を制限することを意図するものではないことを補足して説明しておく。
【0038】
2. 調製例2
液体培養物に対して110℃の飽和蒸気圧で熱不活化工程を行うことにより、熱不活化された液体培養物が得られた。その後、熱不活化された液体培養物に対して遠心分離工程を行うことにより、菌株GKB7の死菌の菌体が得られた。続いて、菌株GKB7の死菌の菌体に対して冷凍乾燥工程を行うことにより、菌株GKB7の死菌凍結乾燥粉末が得られた。
【0039】
3. 評価方法及び結果
3.1 動物モデル
8週齢の雄性スプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley;SD)ラットをステンレス製のラットケージに飼育し、飼育環境の温度は22±2℃であり、湿度は60%~80%であり、且つ明期と暗期はそれぞれ12時間とされた。試験中に、ラットは、飼料(標準飼料、standard chow diet)と蒸留水を自由に摂取できるようにした。上記ラットの体重は、300g~350gであり、且つ骨格の発育が成熟していた。
【0040】
ラットを偽手術対照群(n=6)、手術対照群(n=6)及び実験群1(n=8)に分けた。偽手術対照群、手術対照群、実験群1のラットの右後肢に、対応する手術を実施し、手術対照群、実験群1のラットの右後肢は、関節切開術及び前十字靭帯線維切断を含む前十字靭帯切断(Anterior cruciate ligament transaction;ACLTと略称される)を受け、ラットの右後肢にACLTによって骨関節炎を誘発し、偽手術対照群のラットの右後肢は、関節切開術を受けたが、その前十字靭帯線維が切断されなかった。
【0041】
手術の2日後、各群の飼料に1mLの蒸留水を加えた。実験群1のラットが100mg/kg bw/日(5×1011CFU/gに相当し、ヒトの投与量に換算すれば16.1mg/kg体重/日となる)の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末を得るように、実験群1の蒸留水に菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末を週に5日加えた(調製例1)。
【0042】
その後、それぞれ異なる投与量の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末及び死菌凍結乾燥粉末で試験した。8週齢のラットを6群に分け、それぞれ偽手術対照群2、手術対照群2、実験群2、実験群3、実験群4及び陽性対照群とした。1群あたりの試験動物が8匹であった。手術対照群2、実験群2、実験群3、実験群4及び陽性対照群のラットの右後肢は、前十字靭帯切断手術を受けた。
【0043】
ラットが1日~2日の回復期を経た後、各群の飼料に1mLの蒸留水を週に5日加えると共に、異なる群別の蒸留水に対応する投与量のGKB7の生菌凍結乾燥粉末とGKB7の死菌凍結乾燥粉末を加えることにより、実験群2のラットが高投与量(1g/kg bw/日、ヒトの投与量に換算すれば161.3mg/kg体重/日)の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末(調製例1)を得ることができ、実験群3のラットが低投与量(100mg/kg bw/日、実験群1の投与量と同じ)の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末(調製例1)を得ることができ、実験群4のラットが1g/kg bw/日の菌株GKB7の死菌凍結乾燥粉末(調製例2)を得ることができるようにした。陽性対照群の蒸留水に50mg/kgのセレコキシブ(Celecoxib)を加え、セレコキシブは、市販の鎮痛薬であり、シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase;COX)の活性を抑制する役割を果たすため、プロスタグランジン(Prostaglandin E2;PGE2)の合成を抑制することにより、炎症性疼痛を軽減することができる。
【0044】
3.2 静的体重負荷試験(Static weight bearing test、又はIncapacitance testと称される)
手術前に、偽手術対照群、手術対照群、実験群1のラットの左右後肢を別々のセンサプレートに10秒置き、ラットが後肢で立つ時、左右後肢間の体重負荷の差(単位:坪量、ラットの体重で標準化された)を測定した。手術後、上記測定を毎週行った。一般的には、正常なラットは、体重を左右後肢に均等に割り当てるため、左右後肢間の体重負荷の差が大きいほど、ラットの右後肢の痛みの度合いが高くなることを示す。対応のあるt検定(Paired t-test)によって異なる群別の結果を比較した。
【0045】
図1は、本発明の一実施例による異なる群別のラットの手術6週間後の体重負荷の差の変化を示すグラフであり、横軸は、時間(単位:週間)を示し、縦軸は、体重負荷の差(単位:g)を示し、曲線110、曲線120及び曲線130は、それぞれ偽手術対照群、手術対照群及び実験群1を示し、符号「*」は、手術対照群と偽手術対照群の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示し、符号「#」は、実験群1と手術対照群の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示す。
【0046】
図1に示すように、手術対照群(曲線120)の体重負荷の差は、偽手術対照群(曲線110)の体重負荷の差よりも有意に高く、且つ体重負荷の差が時間の経過につれて大きくなり、これは、ACLTが確かに骨関節炎を誘発し、関節痛を引き起こすことを意味する。逆に、実験群1の体重負荷の差は、ACLT手術2週間後に有意に低下し、且つ時間の経過につれて持続的に低下し、ACLT手術3週間後、手術対照群の体重負荷の差の三分の一に過ぎなかった。この結果により、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末は、14日間(2週間)連続して投与された後に骨関節炎による関節痛を顕著に緩和することができ、且つ21日間(3週間)連続して投与された後により理想的な効果を達成できることが示された。
【0047】
偽手術対照群2、手術対照群2、実験群2、実験群3、実験群4及び陽性対照群に対しても静的体重負荷試験を行い、その方法は以上のように説明され、ここで繰り返して説明しない。
【0048】
図2は、本発明の一実施例による異なる群別のラットの手術6週間後の体重負荷の差の変化を示すグラフであり、横軸は、時間(単位:週間)を示し、縦軸は、体重負荷の差(単位:g)を示し、曲線210、曲線220、曲線230、曲線240、曲線250及び曲線260は、それぞれ偽手術対照群2、手術対照群2、実験群2、実験群3、実験群4及び陽性対照群を示し、符号「*」は、手術対照群2と偽手術対照群2の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示し、符号「#」は、実験群2、実験群3、実験群4及び陽性対照群と手術対照群2の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示す。
【0049】
図2に示すように、手術対照群2(曲線220)に比べ、実験群2(曲線230)、実験群3(曲線240)、実験群4(曲線250)及び陽性対照群(曲線260)は、体重負荷の差が小さく、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末及びGKB7の死菌凍結乾燥粉末は、確かに骨関節炎による関節痛を緩和することができることが示され、実験群2を表す曲線230と、実験群4を表す曲線250とは、ほぼ重なり、同じ投与量の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末及び菌株GKB7の死菌凍結乾燥粉末の骨関節炎に対する改善効果が同等であることが示され、骨関節炎及び変形性関節炎に対する改善効果が同じであることが説明された。実験群2のラット及び実験群4の投与量は実験群3と異なるが、いずれも関節痛を緩和する効果を有するため、下記実験は、低投与量の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末の投与による実験群1のラットへの影響であるが、当業者であれば、高い投与量の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末及び死菌凍結乾燥粉末の投与は、いずれも同じ効果を達成できることを理解することができる。
【0050】
3.3 硬骨画像分析
ACLT手術6週間後、偽手術対照群、手術対照群及び実験群1のラットを犠牲にし、マイクロコンピュータ(又はミクロンオーダーコンピュータ、超小型コンピュータと呼ばれる)断層撮影(Micro-computerized tomography;Micro-CT、μ-CT)によってラットの右後肢の膝関節の骨パラメータを分析し、前記骨パラメータは、骨密度、骨量、骨体積分率、骨表面積密度、骨梁厚さ、骨梁数及び骨梁間隙を含む。マイクロコンピュータ断層撮影により、手術対照群のラットには確かに骨損失及び骨破壊(図示せず)を含む硬骨損傷があるが、実験群1のラットの硬骨損傷の度合いが手術対照群のラットよりも低い(図示せず)ことが示された。
【0051】
図3A図3Gは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の骨密度(図3A)、骨量(図3B)、骨体積分率(図3C)、骨表面積密度(図3D)、骨梁厚さ(図3E)、骨梁数(図3F)及び骨梁間隙(図3G)を示す箱ひげ図であり、横軸は、群を示し、左から右へそれぞれ偽手術対照群、手術対照群及び実験群1であり、図3A図3Gの縦軸は、それぞれ骨密度(単位:g/cm3)、骨量(単位:mg)、骨体積分率(即ち、骨体積と総体積の比、BV/TVと略称され、単位:%)、骨表面積密度(即ち、骨表面積と総体積の比、BS/TVと略称され、単位:1/mm)、骨梁厚さ(Tb.Thと略称され、単位:mm)、骨梁数(Tb.Nと略称され、単位:1/mm)及び骨梁間隙(Tb.Spと略称され、単位:mm)を示し、符号「*」は、手術対照群と偽手術対照群の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示し、符号「#」は、実験群1と手術対照群の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示す。
【0052】
図3A図3Gに示すように、偽手術対照群に比べ、手術対照群は、ラットの右後肢の膝関節の骨密度、骨量、骨体積分率、骨表面積密度、骨梁厚さ及び骨梁数が有意に低下するが、骨梁間隙が有意に上昇し、ACLTにより骨関節炎を誘発することで、確かに骨損失や骨破壊等の硬骨損傷を引き起こし得ることが示された。逆に、実験群1のラットの右後肢の膝関節の上記骨パラメータが顕著に改善され、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末が確かに骨関節炎による硬骨損傷を改善することができることが示された。
【0053】
3.4 組織学的分析
硬骨画像を分析した後、ラットの右後肢の膝関節組織を37℃で4%パラホルムアルデヒド(Paraform aldehyde)のリン酸塩緩衝液(Phosphate-buffered saline;PBS)で24時間固定してから、10%のエチレンジアミン四酢酸(Ethylene diamine tetraacetic acid;EDTA)で2週間脱灰させた。濃度が漸進的に増加するエタノールで脱水した後、膝関節組織は、パラフィンブロックに包埋され、更に厚さ5μmの組織切片に切られた。次に、組織切片をヘマトキシリン-エオシン(Hematoxylin and eosin;H&E)及びサフラニンO/ファストグリーン(Safranin-O/Fast Green)で染色すると共に、光学顕微鏡で膝関節組織の組織病理学的変化を観察した。組織切片から分かるように、手術対照群のラットの膝関節組織には、確かに軟骨組織の病理学的変化及び滑膜組織の過形成等の軟骨損傷(図示せず)が生じたが、実験群1のラットの軟骨損傷の度合いが手術対照群のラットよりも低い(図示せず)。
【0054】
国際変形性関節症学会により推奨されたラット関節組織学的スコアリングシステム(国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコアを含む)を利用して膝関節組織の軟骨損傷の度合いを定量化した。国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコアは、当業者に熟知のものであり、ここで繰り返して説明しない。
【0055】
図4A図4Cは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコアを示し、横軸は、群を示し、左から右へそれぞれ偽手術対照群、手術対照群及び実験群1であり、縦軸は、それぞれ国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコア(単位:点)を示し、符号「*」は、手術対照群と偽手術対照群の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示し、符号「#」は、実験群1と手術対照群の間に統計的有意差(p<0.05)があることを示す。
【0056】
図4A図4Cに示すように、偽手術対照群に比べ、手術対照群は、国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコアが有意に向上し、ACLTにより誘発された骨関節炎の症状は、確かに軟骨損傷を含む。しかしながら、手術対照群に比べ、実験群1の国際変形性関節症学会によるスコア、軟骨変性スコア及び滑膜炎症スコアが有意に低下し、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末が確かに骨関節炎による軟骨損傷を改善することができることが示された。
【0057】
3.5 免疫組織化学染色分析(Immunohistochemistry;IHC)
内因性カタラーゼ活性を抑制するように、上記組織切片を3%過酸化水素溶液に浸漬してから、非特異的なバックグラウンドの発生を低下させるように、3%ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin)を含むPBS溶液に浸漬した。4℃で抗IL-1β又は抗TNF-αの抗体で一次抗体反応(Incubation)を行った後、室温で組織切片に二次抗体反応を1時間行い、更にジアミノベンジジン(Diaminobenzidine;DAB)で染色した。光学顕微鏡下で組織切片を観察した。IHCスコアでIL-1β及びTNF-αの免疫反応シグナルを示し、IHCスコアが高いほど、免疫反応シグナルが強くなり、即ち、IL-1β又はTNF-αの発現量が高くなることを示す。
【0058】
図5A図5Bは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の軟骨組織のIL-1βのIHCスコア(図5A)及びTNF-αのIHCスコア(図5B)を示す箱ひげ図であり、横軸は、群を示し、左から右へそれぞれ偽手術対照群、手術対照群及び実験群1であり、縦軸は、IL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコア(単位:点)を示す。図5A及び図5Bに示すように、偽手術対照群に比べ、手術対照群は、IL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコアが有意に上昇し、ACLTにより誘発された骨関節炎の軟骨組織におけるIL-1β及びTNF-α等の炎症性サイトカインの発現量が高いことを示した。逆に、手術対照群に比べ、実験群1は、IL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコアが有意に低下し、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末が確かに骨関節炎の軟骨組織における炎症性サイトカインの発現量を低下させることができることを示した。
【0059】
図6A図6Bは、それぞれ本発明の一実施例による異なる群別の滑膜組織のIL-1βのIHCスコア(図6A)及びTNF-αのIHCスコア(図6B)を示す箱ひげ図であり、横軸は、群を示し、左から右へそれぞれ偽手術対照群、手術対照群及び実験群1であり、縦軸は、IL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコア(単位:点)を示す。図6A及び図6Bに示すように、偽手術対照群に比べ、手術対照群は、IL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコアが有意に上昇し、ACLTにより誘発された骨関節炎の滑膜組織における炎症性サイトカインの発現量が確かに高いことを示した。逆に、手術対照群に比べ、実験群1は、IL-1βのIHCスコア及びTNF-αのIHCスコアが有意に低下し、菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末が確かに骨関節炎の滑膜組織における炎症性サイトカインの発現量を低下させることができることを示した。
【0060】
以上を纏めると、本発明は、特定の投与量、特定の剤形、特定の検出方法又は特定の評価方法によって単に骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物を例示して説明した。しかし、当業者にとって、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、他の投与量、他の剤形、他の検出方法又は他の評価方法も、骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物に適用されてもよく、上記に限定されない。例えば、組成物は、例えば医薬組成物又は食品組成物であってよく、医学的及び食品的に許容される担体、賦形剤及び/又は添加剤を選択的に含んでよく、粉剤、錠剤、粒剤、座剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレー又は塞栓剤等の剤形とされてよい。他の例において、菌株GKB7は、他の適切な培地又は他の培養環境を利用して培養されてもよく、得られた菌体も、上記の骨関節炎に対する改善効果を有するはずである。他の実施例において、低投与量の生菌(実験群1)が達成可能な効果は、骨関節炎による硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症等を改善する効果を含み、高投与量の生菌(実験群2)及び高投与量の死菌(実験群4)によっても達成可能である。
【0061】
上記実施例によれば、本発明の骨関節炎及び変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物は、クロストリジウム・ブチリカムGKB7を使用することにより、骨関節炎による関節痛を緩和することができるだけでなく、骨関節炎による硬骨損傷、軟骨損傷、軟骨組織及び/又は滑膜組織の炎症を改善することもでき、将来、有効成分として各種の組成物の調製に使用され、骨関節炎、ひいては他の筋骨格疾患の改善に適用することができるという利点を有する。
【0062】
本発明は、複数の特定の実施例によって以上のように開示されたが、他の実施例も可能である。従って、本発明の添付される特許請求の範囲の精神や範囲は、ここに含まれる実施例に記載のものに限定されない。
【符号の説明】
【0063】
110、120、130、210、220、230、240、250、260 曲線
[生物材料の寄託]
クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)GKB7は、2022年04月01日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)の生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 911120である。
[参考配列]
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
【配列表】
2024155659000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)GKB7含有組成物であって、5.5×10 CFU/gの生細胞又は死細胞の前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含み、前記死細胞が、生細胞を110℃~120℃の飽和蒸気圧下で10分~20分間加熱不活化工程に供することによって得られ、前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7は、2022年04月01日に台湾食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute;FIRDI)の生物資源保存及び研究センター(Bioresource Collection and Research Center;BCRC)に寄託され、受託番号がBCRC 911120であり、前記組成物は、50mg/kg体重/日~2,000mg/kg体重/日の有効用量で被験体に投与され、前記被験体はラットであり、それによって被験体の軟骨組織および/または滑膜組織におけるIL-1βの発現レベルを減少させる、骨関節炎を改善するための組成物。
【請求項2】
前記組成物は、週に3回~7回の頻度で前記被験体に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、前記被験体に2週間~8週間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
食品のまたは医学的に、許容される、担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、保存剤、充填剤、および/または添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は医薬組成物または食品組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
変形性関節炎を改善するためのクロストリジウム・ブチリカムGKB7含有組成物であって、受託番号がBCRC 911120である、5.5×10 CFU/gの生細胞又は死細胞の前記クロストリジウム・ブチリカムGKB7を有効成分として含み、前記死細胞が、生細胞を110℃~120℃の飽和蒸気圧下で10分~20分間加熱不活化工程に供することによって得られ、前記組成物は、1mg/kg体重/日~100mg/kg体重/日の有効用量で被験体に投与され、前記被験体はヒトであり、それによって被験体の軟骨組織および/または滑膜組織におけるIL-1βの発現レベルを減少させる、変形性関節炎を改善するための組成物。
【請求項7】
前記組成物が投与されていない対照被験体に比べ、前記組成物が投与された前記被験体の前記軟骨組織及び/又は前記滑膜組織におけTNF-αの発現量が低下する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が投与されていない対照被験体に比べ、前記組成物が投与された前記被験体の関節痛は緩和される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、週に3回~7回の頻度で前記被験体に投与される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、前記被験体に2週間~8週間投与される、請求項6に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
幾つかの実施例において、上記クロストリジウム・ブチリカムGKB7の生菌及び/又は死菌は、更に乾燥工程を経ることで、凍結乾燥粉末を得てよく、その保存時間が延長される。幾つかの実施例において、凍結乾燥粉末は、5.5×10 CFU/gのクロストリジウム・ブチリカムGKB7を含む。生菌、死菌、生菌の凍結乾燥粉末及び死菌の凍結乾燥粉末の活性物質は、細胞壁、細胞膜に分泌された細胞外マトリックス、細胞質及び/又は細胞が発酵工程を経た後に生じた代謝物(例えば、脂質、糖類、タンパク質、糖タンパク質、糖脂質及び/又は他の生体分子)を含んでよいが、これらに限定されず、その中の単一の物質を利用し、及び/又は未知の分離不能な成分を排除することによっても、骨関節炎及び変形性関節炎を改善する効果を達成できると合理的に予期できないことに留意されたい。従って、本発明に記載のクロストリジウム・ブチリカムGKB7の死菌は、成分、特性又はパラメータによって定義することができず、即ち、本発明は、成分、特性又はパラメータによる定義が可能ではないか又は実際的ではない場合がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
手術の2日後、各群の飼料に1mLの蒸留水を加えた。実験群1のラットが100mg/kg bw/日(5.5×10 CFU/gに相当し、ヒトの投与量に換算すれば16.1mg/kg体重/日となる)の菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末を得るように、実験群1の蒸留水に菌株GKB7の生菌凍結乾燥粉末を週に5日加えた(調製例1)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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