(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155662
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】でんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法、農作物の育成方法、でんぷんの製造方法、でんぷん系吸水性樹脂の製造方法、及びそれらを有するリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
C05F 9/00 20060101AFI20241024BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20241024BHJP
C05F 3/04 20060101ALI20241024BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20241024BHJP
B09B 3/70 20220101ALN20241024BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20241024BHJP
【FI】
C05F9/00
B09B5/00 Z ZAB
C05F3/04 ZBP
C08L3/00
B09B3/70
B09B101:67
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121639
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2023069815
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一充
(72)【発明者】
【氏名】森田 英二
【テーマコード(参考)】
4D004
4H061
4J002
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA04
4D004CA08
4D004CA10
4D004CA12
4D004CA34
4D004CB13
4D004CC07
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA20
4H061AA01
4H061CC39
4H061CC55
4H061EE63
4H061GG13
4H061GG18
4H061GG52
4H061JJ01
4H061KK02
4H061LL25
4J002AB041
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】使用済み衛生用品を分別回収し、多くの栄養素を吸収している使用済み吸水性樹脂を肥料としてリサイクルできるシステムを構築することで、使用済み衛生用品の処理、使用済み衛生用品に含まれるし尿に由来するリン、窒素、及びカリウム等の栄養素の有効活用、さらには使用済み衛生用品を吸水性樹脂の原材料となる農作物の育成に有効活用することができる吸水性樹脂の循環システムを提供すること。
【解決手段】
でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を含む使用済み衛生用品を回収する回収工程、及び
前記回収工程で回収された前記衛生用品から、前記でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を回収する分離回収工程、
を有する、でんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を含む使用済み衛生用品を回収する回収工程、及び
前記回収工程で回収された前記衛生用品から、前記でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を回収する分離回収工程、
を有する、でんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法。
【請求項2】
前記でんぷん系吸水性樹脂のバイオベース炭素含有率が70%以上である、請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】
請求項1に記載の回収方法で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物を含む肥料。
【請求項4】
請求項3に記載の肥料を使用し、農作物を育成する、農作物の育成方法。
【請求項5】
請求項1に記載の回収方法で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物に含有されるでんぷん系吸水性樹脂を分解処理して得られるでんぷん系吸水性樹脂分解物、及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂分解組成物を含む肥料。
【請求項6】
請求項5に記載の肥料を使用して農作物を育成する、農作物の育成方法。
【請求項7】
前記農作物が、でんぷん含有植物である請求項4又は6に記載の育成方法。
【請求項8】
前記農作物が、イネ科植物、ヤシ科植物、及び芋類からなる群より選ばれる1種以上である、請求項7に記載の育成方法。
【請求項9】
請求項7に記載の育成方法で育成された農作物を原料としてでんぷんを製造する、でんぷんの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法で製造されたでんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を製造する、でんぷん系吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の回収方法、請求項7に記載の農作物の育成方法、請求項9に記載のでんぷんの製造方法、及び請求項10に記載のでんぷん系吸水性樹脂の製造方法、を有するリサイクルシステム。
【請求項12】
でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂、及びし尿を含有する、肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、でんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法、農作物の育成方法、でんぷんの製造方法、でんぷん系吸水性樹脂の製造方法、及びそれらを有するリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや生理用ナプキン等の衛生用品は、その利便性から使用量が急速に増加している。特に日本国内では、これまで主流であった子供用紙おむつのみならず、高齢化社会を迎えた現在では大人用の紙おむつの使用量が急速に増加している。これらの衛生用品は、すでに生活には欠かすことができない生活必需品になった一方で、一度使用するとそのまま廃棄される使い捨て製品として扱われる。日本国内のみならず、海外でも衛生用品の使用量が急速に増加したことで廃棄物の増大が深刻な問題となりつつある。
【0003】
使用後の衛生用品は、通常、一般廃棄物又は事業系廃棄物として焼却処理又は埋立処分されるが、その使用済み衛生用品の大部分が多くの水分を含むために燃えにくく、焼却には多大な焼却エネルギーが必要となる。また、このような使用済み衛生用品を焼却炉に多量に投入すると焼却炉の温度が冷やされ、ダイオキシンの発生リスクが高まることも懸念されているほか、焼却温度の変動は、焼却炉自体にも大きな負荷を与え、結果として焼却炉の耐用寿命を短くする原因にもなっている。また、焼却処理によって発生する二酸化炭素は大気汚染や地球温暖化の原因になり、環境に負荷をかける原因になる。
【0004】
使用済み衛生用品を埋立処分すると、埋立地周囲の衛生環境悪化の原因となるだけでなく、嫌気性雰囲気化で分解されることで地球温暖化係数が高いメタンの発生原因となる等が指摘されている。特に、従来の衛生用品の主要材料として使用される吸水性樹脂は、ポリアクリル酸塩を主成分とするため、生分解性に乏しく、埋立土壌中のマイクロプラスチックが外部に流出した場合に海洋汚染等の環境汚染の原因となる等の懸念も指摘されている。
【0005】
上記課題に対し、使用済み衛生用品のみを分別回収し、再利用する検討がなされている(特許文献1)。
【0006】
さらに、生分解性を有するでんぷん系吸水材料も提案されている(特許文献2)。
【0007】
また、近年の国内の農業で使用される肥料のほとんどは海外からの輸入に依存していることから、海外依存度を下げることを目的として、下水処理場で発生する下水汚泥を肥料として緑農地に再利用する取り組みが進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-169248号公報
【特許文献2】特開2022-158813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1等に記載されている取り組みは、衛生用品に含まれる不織布、プラスチックフィルム、パルプ等を回収し、再利用することを特徴としているが、吸水性樹脂はそのまま埋立処分されるか、もしくはRPF等の固形燃料として焼却利用されている。そのため、衛生用品の処理が、埋立処分地の環境汚染の原因や温室効果ガス放出の原因になることは避けられない。
【0010】
また、特許文献2に記載の吸水材料は、自然分解されるため、環境汚染を生じないといった利点があるが、好気性微生物等で生分解される場合でも微生物から排出される二酸化炭素の放出は避けられない。さらに、埋立処理された場合は、内部の嫌気性菌によって分解されると二酸化炭素よりも地球温暖化係数が高いメタンが排出される懸念がある。
【0011】
また、下水処理場で回収される下水汚泥にはその流入経路等から混入する重金属等の夾雑物や、凝集沈殿処理時に使用する凝集剤の混入が避けられず、肥料としてそのまま利用することには課題が残る。
【0012】
本発明は、使用済み衛生用品を分別回収し、多くの栄養素を吸収している使用済み吸水性樹脂を肥料としてリサイクルできるシステムを構築することで、使用済み衛生用品の処理、使用済み衛生用品に含まれるし尿に由来するリン、窒素、及びカリウム等の栄養素の有効活用、さらには使用済み衛生用品を吸水性樹脂の原材料となる農作物の育成に有効活用することができる吸水性樹脂の循環システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を含む使用済み衛生用品を回収する回収工程、及び
前記回収工程で回収された前記衛生用品から、前記でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を回収する分離回収工程、
を有する、でんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、でんぷんを主成分とし、かつ環境汚染の懸念がないでんぷん系吸水性樹脂を用いた衛生用品を使用後に回収した後で、でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を分離、回収し、当該でんぷん系吸水性樹脂組成物を肥料としてでんぷん系吸水性樹脂の原料となるでんぷん含有植物の育成に使用することで、人々の生活に欠かせない衛生用品の循環型リサイクルシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<でんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法>
本実施形態のでんぷん系吸水性樹脂組成物の回収方法は、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を含む使用済み衛生用品を回収する回収工程、及び
前記回収工程で回収された前記衛生用品から、前記でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を回収する分離回収工程、
を有する。
【0016】
〔回収工程〕
前記回収工程は、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を含む使用済み衛生用品を回収する工程である。前記使用済み衛生用品は、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を含む。また、当該使用済み衛生用品は、使用済みであることから、し尿を含む。すなわち、当該使用済み衛生用品は、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂、及びし尿を含む。なお、でんぷん系吸水性樹脂を含む衛生用品としては、人間の尿、便および経血の処理に用いられる液体吸収機能を有する物品が挙げられ、乳幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ、軽失禁パッド、尿取りパッド、生理用ナプキンおよび吸水シート等の製品が挙げられる。これらの中で、特に乳幼児用紙おむつ、大人用紙おむつおよび尿取りパッドが好ましい。
【0017】
前記回収工程において、前記使用済み衛生用品を回収する方法は特に限定されず、公知の方法で回収することができる。前記使用済み衛生用品を回収する方法としては、でんぷん系吸水性樹脂を含む衛生用品以外の物品のコンタミネーションを低減させる観点、及び効率性の観点から、保育業務を行う施設や、介護業務を行う施設、医療業務を行う施設等の衛生用品を使用する施設等で使用済みの衛生用品を収集し、回収する方法が例示できる。
【0018】
前記衛生用品は、吸収性部材としてでんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を用いたものであり、例えば、紙おむつである。前記衛生用品は、吸収性部材としてでんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を用いていること以外は公知の衛生用品と同様である。
【0019】
前記でんぷん系吸水性樹脂のバイオベース炭素含有率は、肥料として使用した際の環境負荷低減の観点から、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。バイオベース炭素とは、植物等の生物資源(以下、バイオマスともいう)に由来する炭素を意味し、バイオベース炭素含有率とは物質を構成する全炭素質量のうち、バイオマスに由来する炭素質量の割合を意味する。天然高分子であるでんぷんはバイオマスに由来する材料であり、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂においては、でんぷんから誘導される構成単位が多いほどバイオベース炭素含有量が高くなる。また、でんぷんからの誘導にバイオマスに由来する化合物(バイオプロセスで作成されるクエン酸、イタコン酸およびマレイン酸、及びそれらの無水物、等)を用いることでバイオベース炭素含有量をさらに高くすることができる。なお、本明細書において、前記でんぷん系吸水性樹脂のバイオベース炭素含有率は、ISO16620-2バイオベース度 パート2 バイオベース炭素含有率の求め方に記載の方法(加速器質量分析装置による放射性炭素(C14)の濃度測定)によって求めることができる。
【0020】
〔分離回収工程〕
前記分離回収工程は、前記回収工程で回収された前記衛生用品から、前記でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を回収する工程である。一般に、前記衛生用品は、前記でんぷん系吸水性樹脂組成物の他にパルプや不織布を含む部材を有するため、肥料として再使用する際の環境負荷低減の観点から、前記でんぷん系吸水性樹脂組成物を、パルプや不織布を含む部材と分離して回収することが好ましい。また、前記衛生用品を洗浄処理や脱水処理等をして衛生用品に含まれるし尿を除去することなく分離回収工程を行うことが好ましい。また、前記でんぷん系吸水性樹脂組成物を、パルプや不織布を含む部材と分離して回収する方法としては、前記でんぷん系吸水性樹脂組成物を、パルプや不織布を含む部材と物理的に分解、分離して回収する方法が例示できる。
【0021】
でんぷん系吸水性樹脂組成物を、パルプや不織布を含む部材と物理的に分解する方法としては、前記衛生用品を、破砕機などを用いて破断してから、各構成部材の比重の違いおよび各部材の大きさや形状の違い等を利用して風力分級機や液中分級機等を用いてでんぷん系吸水性樹脂組成物を分離する方法等が例示できる。また、前記衛生用品の構成部材(表面材、防水材、でんぷん系吸水性樹脂組成物を含む吸水材等)から、熱水等を用いて固定に用いている接着剤を加熱溶融させるなどして吸水材を分離し、分離した吸水材を公知の粉砕機を用いて粉砕し、ロータリースクリーン等の公知の分離装置を用いて、吸水紙および繊維状パルプ等の吸水材を構成する部材と、でんぷん系吸水性樹脂組成物とを分離することによって、衛生用品から前記でんぷん系吸水性樹脂組成物を回収することができる。
【0022】
〔肥料、及び当該肥料の製造方法〕
前記分離回収工程で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物は、そのまま肥料として使用してもよく、肥料として使用しやすい形状に加工してから肥料として使用してもよい。前記分離回収工程で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物は、ポリアクリル酸塩等の環境汚染の原因となる夾雑物の混入が無く、生分解性を有するので肥料として土壌に散布することが可能である。さらに、土壌に散布してもし尿に由来するリン、窒素、及びカリウム等の栄養素を樹脂組成物中に保持しているため、肥料として土壌に散布した場合に、栄養素が拡散せずに散布場所に留まり、施肥を効率的に行うことができる。
【0023】
また、前記分離回収工程で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物に含まれるでんぷん系吸水性樹脂に対して、さらに分解処理を行い、し尿と当該分解処理で得られたでんぷん系吸水性樹脂分解物とを含有するでんぷん系吸水性樹脂分解組成物を肥料として使用してもよいし、肥料の原料として用いても良い。前記でんぷん系吸水性樹脂分解組成物を肥料またはその原料に用いる場合、肥料の形態は液肥(液体肥料)であることが好ましい。
【0024】
前記でんぷん系吸水性樹脂を分解処理する方法は、特に限定されず、例えば、希酸や希アルカリ溶液を用いてでんぷん構造や架橋構造を加水分解する方法、アミラーゼなどの消化酵素を用いて低分子量化する方法などによってでんぷん系吸水性樹脂を分解処理することができる。前記でんぷん系吸水性樹脂を分解処理して得られるでんぷん系吸水性樹脂分解物は、アミロースやグルコースを多く含み、生分解性が高いことから、良好な土壌環境を維持できる肥料として用いることができる。
【0025】
でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂は生分解性に優れるため、前記分解処理は前記衛生用品から回収したでんぷん系吸水性樹脂組成物に菌類等を用いた嫌気性発酵処理(例えば、特開2004-123848号公報に記載の方法等)であってもよい。前記衛生用品から回収したでんぷん系吸水性樹脂組成物に前記嫌気性発酵処理をすることによってバイオガス(メタンガス、二酸化炭素等)を生産することができることから、前記衛生用品から回収したでんぷん系吸水性樹脂組成物はバイオガスの原料として好ましく用いることができる。前記嫌気性発酵処理によって生産されたバイオガスは公知の方法で燃料及び有機合成原料等に利用することができる。また、前記でんぷん系吸水性樹脂組成物に前記嫌気性発酵処理をしてバイオガスを生産した後の残存物は肥料の原料及び堆肥等として利用することができる。前記衛生用品から回収したでんぷん系吸水性樹脂組成物は前記嫌気性発酵処理に影響しない程度のパルプ等の他部材が混在していてもよい。
【0026】
前記分離回収工程で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物に含まれるし尿に由来するリン、窒素、及びカリウム等が農作物の栄養素となるが、前記肥料には、農作物の栄養素となる成分をさらに添加してもよい。
【0027】
<農作物の育成方法>
本実施形態の農作物の育成方法は、前記分離回収工程で回収されたでんぷん系吸水性樹脂組成物を肥料として使用し、農作物を育成する、農作物の育成方法である。
【0028】
前記でんぷん系吸水性樹脂組成物は、し尿を含むでんぷん系吸水性樹脂である。そのため、当該でんぷん系吸水性樹脂組成物を農作物の育成の際の肥料として使用することによって、当該でんぷん系吸水性樹脂組成物は、し尿に由来するリン、窒素、及びカリウム等の栄養素を農作物に継続的に供給することができる。また、当該でんぷん系吸水性樹脂組成物に含まれる前記でんぷん系吸水性樹脂は生分解するため、環境への負荷は低い。
【0029】
前記でんぷん系吸水性樹脂組成物を農作物の育成の際の肥料に使用する方法としては特に限定されず、育成する農作物に適した方法によって使用することができる。
【0030】
他の実施形態の農作物の育成方法として、前記でんぷん系吸水性樹脂を分解処理して得られるでんぷん系吸水性樹脂分解物、及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂分解組成物を含む肥料を使用して農作物を育成する、農作物の育成方法が挙げられる。当該肥料は、前記でんぷん系吸水性樹脂分解物、及びし尿を含む。そのため、当該肥料によってし尿に由来するリン、窒素、及びカリウム等の栄養素を農作物に継続的に供給することができる。また、当該でんぷん系吸水性樹脂分解物は生分解するため、環境への負荷は低い。
【0031】
前記でんぷん系吸水性樹脂分解組成物を農作物の育成の際の肥料として使用する場合の使用方法は特に限定されず、育成する農作物に適した方法によって使用することができる。
【0032】
前記農作物は、循環型社会の実現の観点から、でんぷんを多く含むでんぷん含有植物が好ましい。前記でんぷん系吸水性樹脂組成物や前記でんぷん系吸水性樹脂分解組成物を肥料に用いて前記でんぷん含有植物を育成し、育成された前記でんぷん含有植物をでんぷん系吸水性樹脂の製造に用いるでんぷんの原料に用いることで循環型社会を実現することができる。
【0033】
前記でんぷん含有植物としては、でんぷんが採取できる植物であれば制限はないが、でんぷんの生産効率等の観点から、イネ科植物、ヤシ科植物、及び芋類からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。前記イネ科植物としては、イネ、麦、及びとうもろこし等からなる群より選ばれる1種以上が例示できる。前記ヤシ科植物としては、サゴ椰子等が例示できる。前記芋類としては、じゃがいも、さつまいも、及びキャッサバ等からなる群より選ばれる1種以上が例示できる。
【0034】
<でんぷんの製造方法>
本実施形態のでんぷんの製造方法は、前記育成方法で育成された農作物を原料としてでんぷんを製造する、でんぷんの製造方法である。当該でんぷんの製造方法は特に限定されず、公知の方法で製造することができる。
【0035】
<でんぷん系吸水性樹脂の製造方法>
本実施形態のでんぷん系吸水性樹脂の製造方法は、前記でんぷんの製造方法で製造された、でんぷんから誘導される構成単位を有するでんぷん系吸水性樹脂を製造する、でんぷん系吸水性樹脂の製造方法である。本実施形態のでんぷん系吸水性樹脂の製造方法において、前記でんぷん系吸水性樹脂は、前記でんぷんの製造方法で製造されたでんぷんを原料として用いる以外は、特開2012-12549号公報、特表2017-525784号公報、及び特開2022-158813号公報等に記載の公知の方法で製造することができる。前記でんぷん系吸水性樹脂の好ましい製造方法としては、でんぷんに公知の方法によりカルボキシル基、およびカチオン性基などの親水性官能基を導入し、でんぷん分子が有する水酸基同士を、水酸基と反応する多官能化合物(クエン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びそれらの無水物、等)で架橋する方法があげられる。
【0036】
<衛生用品の製造方法>
本実施形態の衛生用品の製造方法等は、吸収性部材の原料として前記でんぷん系吸水性樹脂を用いること以外は公知のもの(特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報及び特開2005-097569号公報等に記載のもの)と同様である。
【0037】
<リサイクルシステム>
本実施形態のリサイクルシステムは、前記回収方法、前記育成方法、前記でんぷんの製造方法、及び前記でんぷん系吸水性樹脂の製造方法を有する。当該リサイクルシステムは、前記衛生用品の製造方法を有してもよい。当該リサイクルシステムによって、でんぷんを主成分とし、かつ環境汚染への懸念がないでんぷん系吸水性樹脂を用いた衛生用品を使用後に回収した後で、でんぷん系吸水性樹脂及びし尿を含有するでんぷん系吸水性樹脂組成物を分離し、その回収物を肥料として再び当該吸水性樹脂の原料となる植物の育成に使用することで、人々の生活に欠かせない衛生用品の循環型リサイクルシステムを提供することができる。