(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155666
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機および制御弁
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20241024BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20241024BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F04C18/02 311X
F04C18/02 311J
F04C29/12 A
F04C29/12 E
F16K17/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129152
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2023070088
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】菅村 領太
(72)【発明者】
【氏名】利根川 正明
【テーマコード(参考)】
3H039
3H060
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB15
3H039BB21
3H039BB28
3H039CC24
3H039CC30
3H039CC34
3H039CC40
3H060AA05
3H060BB10
3H060CC01
3H060DA02
3H060DC05
3H060DD02
3H060DD12
3H060DD17
3H060HH01
3H060HH15
3H129AA02
3H129AA16
3H129AA21
3H129AB03
3H129BB42
3H129BB57
3H129CC12
3H129CC22
(57)【要約】
【課題】スクロール型圧縮機における背圧制御に関し、吐出圧力に応じた背圧制御の制御特性を維持しつつ、吸入圧力依存性を高める。
【解決手段】制御弁1は、吸入室、吐出室および背圧室を有するスクロール型圧縮機に適用され、背圧室の圧力を制御する。制御弁1は、吐出室から背圧室へ導入される流体、又は背圧室から吸入室へ導出される流体の流れを調整する弁部を備える。制御弁1は、弁部を流れる流体の流量に依存して弁開度特性が変化する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入室、吐出室および背圧室を有するスクロール型圧縮機に適用され、前記背圧室の圧力を制御するための制御弁であって、
前記吐出室から前記背圧室へ導入される流体、又は前記背圧室から前記吸入室へ導出される流体の流れを調整する弁部を備え、前記弁部を流れる流体の流量に依存して弁開度特性が変化することを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記弁部を流れる流体の流量に応じて変動する圧力を受圧する受圧部を備え、
前記受圧部が受ける荷重が前記弁部の開閉方向に作用することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記変動する圧力は、前記吸入室の吸入圧力よりも高く、前記吐出室の吐出圧力よりも低く、かつ前記背圧室の圧力とは異なる中間圧力であることを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記中間圧力は、前記制御弁の内部通路又は前記圧縮機の内部通路に絞り部が設けられたことにより生じることを特徴とする請求項3に記載の制御弁。
【請求項5】
前記弁部が、前記吐出室から前記背圧室へ導入される流体の流量を制御し、
前記流体の流量の増加に伴い、前記受圧部において前記弁部の開弁方向に作用する荷重が増大することを特徴とする請求項3又は4に記載の制御弁。
【請求項6】
前記弁部が、前記背圧室から前記吸入室へ導出される流体の流量を制御し、
前記流体の流量の増加に伴い、前記受圧部において前記弁部の閉弁方向に作用する荷重が増大することを特徴とする請求項3又は4に記載の制御弁。
【請求項7】
前記吐出室に連通する吐出室連通ポートと、前記背圧室に連通する背圧室連通ポートと、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートと、前記吐出室連通ポートと前記背圧室連通ポートとを連通させる弁孔と、流体が導入および導出されることにより前記中間圧力が満たされる中間圧力室と、を有するボディと、
前記弁孔に近接又は離間することにより弁部の開度を調整する弁体と、
前記弁体を含み、前記ボディ内で作動する弁駆動体と、
を備え、
前記弁駆動体は、前記吐出圧力、前記吸入圧力、前記背圧室の圧力および前記中間圧力を受圧して前記弁部の開閉方向に作動することを特徴とする請求項3に記載の制御弁。
【請求項8】
前記中間圧力室が、流体の入口および出口の少なくとも一方に絞り部を有することを特徴とする請求項7に記載の制御弁。
【請求項9】
前記ボディは、前記吐出室連通ポートと連通する吐出圧力室と、前記背圧室連通ポートと連通する制御圧力室と、前記吸入室連通ポートと連通する吸入圧力室とを有し、
前記弁駆動体は、前記吸入圧力室と前記中間圧力室とを区画しつつ、前記ボディに摺動可能に支持される前記受圧部を有し、前記受圧部が受ける前記中間圧力と前記吸入圧力との差圧に応じて作動することを特徴とする請求項7又は8に記載の制御弁。
【請求項10】
前記ボディに設けられて前記受圧部との間に前記中間圧力室を形成し、前記受圧部を係止することで前記弁駆動体の開弁方向への作動を規制する係止部材をさらに備え、
前記係止部材が、前記中間圧力室への流体の入口となる第1の絞り部を有することを特徴とする請求項9に記載の制御弁。
【請求項11】
前記受圧部が、前記中間圧力室から前記吸入圧力室への流体の出口となる第2の絞り部を有することを特徴とする請求項10に記載の制御弁。
【請求項12】
前記ボディは、吐出室連通ポートと連通する吐出圧力室と、前記吸入室連通ポートと連通する吸入圧力室と、を有し、
前記中間圧力室が、前記弁孔の前記吐出圧力室とは反対側に設けられ、
前記中間圧力室の出口側に、前記背圧室連通ポートと連通する絞り部が設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の制御弁。
【請求項13】
固定スクロールと可動スクロールとが背圧室の圧力によって互いに押し付けられ、吸入室に導入された流体を両スクロール間に形成される圧縮室にて圧縮し、吐出室から吐出するスクロール型圧縮機であって、
前記背圧室の圧力を制御するための制御弁を備え、
前記制御弁は、前記吐出室から前記背圧室へ導入される流体、又は前記背圧室から前記吸入室へ導出される流体の流れを調整する弁部を備え、前記弁部を流れる流体の流量に依存して弁開度特性が変化することを特徴とするスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクロール型圧縮機およびその制御弁に関し、特にスクロール型圧縮機の固定スクロールと可動スクロールとを互いに押し付けるための背圧を制御する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機として、固定スクロールと可動スクロールを備えたスクロール型圧縮機が知られている(特許文献1参照)。この圧縮機は、吸入室に導入された流体を両スクロール間に形成される圧縮室に導いた後、可動スクロールを回転させる。それにより、圧縮室の容積を徐々に小さくすることで流体を圧縮できる。圧縮された流体は、吐出室から導出される。可動スクロールに対して固定スクロールとは反対側に背圧室が設けられている。その背圧室の圧力(「背圧」ともいう)により両スクロールが互いに押し付けられることで、圧縮性能が確保されている。すなわち、圧縮運転中の圧力上昇により両スクロールが離れることによる圧縮不良が防止されている。
【0003】
このような圧縮機は一般に、背圧の制御応答性を高めるべく、高圧である吐出室の圧力(「吐出圧力」ともいう)を利用して背圧を高める。ただし、背圧が必要以上に高くなると、両スクロール間の摩擦抵抗が大きくなり、動力損失が大きくなる。そこで、吐出室と背圧室との間に制御弁を設け、吐出圧力に応じて背圧を制御する、つまり吐出圧力と背圧とが概ね比例関係を有するような制御特性が実現されている(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2の制御弁では、ボディの一端側から吐出室に連通する弁孔、背圧室に連通する第1圧力室、吸入室に連通する吸入圧力室、基準圧力として大気が導入される基準圧力室、および背圧室に連通する第2圧力室が設けられている。ボディの軸線に沿って弁体と一体変位可能な可動体が設けられている。可動体は3つのセグメント(第1~第3セグメント)が直列に連結して構成される。第1セグメントは、ボディ内の隔壁を摺動可能に貫通し、その先端に弁体が設けられる。第2セグメントおよび第3セグメントは、それぞれ周縁部のゴムを介してボディの内面と流体シール方式で連結されている。
【0005】
弁孔と隔壁との間に第1圧力室が形成され、隔壁と第2セグメントとの間に吸入圧力室が形成される。第2セグメントと第3セグメントとの間に基準圧力室が形成され、第3セグメントの基準圧力室とは反対側に第2圧力室が形成される。基準圧力室は大気に開放される。このような構成により、第2セグメントで圧縮機の吸入圧力を感知しつつ、背圧を制御できる。すなわち、吐出圧力に応じた背圧の変化を表す制御特性を維持しつつ、その背圧を吸入圧力の変化に応じた要求値に近づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-150835号公報
【特許文献2】特表2018-536110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セグメントのゴムをボディの内面に固定するには煩雑な工程を要する。また、ゴムの不良や材質などに起因して、吸入圧力室や第2圧力室の冷媒が基準圧力室に漏洩した場合、冷媒が大気に放出されるおそれもある。発明者らは、制御弁の構成を独自に工夫することで、流体シール方式を採用した特許文献2の構成を用いなくとも、上述した要求を満たすことができるとの考えに到った。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、スクロール型圧縮機における背圧制御に関し、吐出圧力に応じた背圧制御の制御特性を維持しつつ、吸入圧力依存性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、吸入室、吐出室および背圧室を有するスクロール型圧縮機に適用され、背圧室の圧力を制御するための制御弁である。この制御弁は、吐出室から背圧室へ導入される流体、又は背圧室から吸入室へ導出される流体の流れを調整する弁部を備える。弁部を流れる流体の流量に依存して弁開度特性が変化する。
【0010】
この態様によれば、弁部を流れる流体の流量に依存して制御弁の弁開度特性が変化する。このため、圧縮機の背圧制御において弁部が自律的に弁開度を調整し、吐出圧力への依存性を維持しつつ、吸入圧力依存性を高めることができる。
【0011】
本発明の別の態様は、固定スクロールと可動スクロールとが背圧室の圧力によって互いに押し付けられ、吸入室に導入された流体を両スクロール間に形成される圧縮室にて圧縮し、吐出室から吐出するスクロール型圧縮機である。この圧縮機は、背圧室の圧力を制御するための制御弁を備える。この制御弁は、吐出室から背圧室へ導入される流体、又は背圧室から吸入室へ導出される流体の流れを調整する弁部を備える。弁部を流れる流体の流量に依存して弁開度特性が変化する。
【0012】
この態様によれば、圧縮機の背圧を制御するための制御弁が設けられ、弁部を流れる流体の流量に依存してその制御弁の弁開度特性が変化する。このため、圧縮機の背圧制御において制御弁の弁部が自律的に弁開度を調整し、吐出圧力への依存性を維持しつつ、吸入圧力依存性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スクロール型圧縮機における背圧制御に関し、吐出圧力に応じた背圧制御の制御特性を維持しつつ、吸入圧力依存性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る圧縮機を含む冷凍サイクルを概略的に表す図である。
【
図4】中間圧力の受圧有無による作用効果の相異を表す図である。
【
図5】中間圧力の受圧有無による作用効果の相異を表す図である。
【
図6】変形例1に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【
図7】変形例2に係る圧縮機および制御弁の構成を示す部分拡大断面図である。
【
図8】変形例3に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【
図9】変形例4に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【
図10】変形例4に係る圧縮機の構成を示す断面図である。
【
図11】変形例5に係る圧縮機の構成を示す断面図である。
【
図12】変形例5に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【
図13】変形例6に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る圧縮機を含む冷凍サイクルを概略的に表す図である。
図2は、
図1のA-A矢視断面図である。
図1に示すように、圧縮機100は、モータにより駆動されるスクロール型圧縮機であり、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される。本実施形態の空調装置は、高圧で作動する二酸化炭素を冷媒とするいわゆる超臨界冷凍サイクルを備える。この空調装置は、冷凍サイクルを循環する気相状態の冷媒を圧縮する圧縮機100、圧縮された高温高圧の気相状態の冷媒を冷却する外部熱交換器としてのガスクーラ102、冷却された冷媒を断熱膨張させて減圧する膨張装置104、膨張された冷媒を蒸発させて蒸発潜熱を奪って車室内の空気を冷却する蒸発器106、蒸発された冷媒を気液分離し、分離された気相状態の二酸化炭素を圧縮機100に戻す受液器108を備える。
【0017】
圧縮機100は、そのハウジング110内にスクロールユニット112、スクロールユニット112を駆動するモータ114、モータ114の回転数を制御するインバータ116、およびスクロールユニット112の背圧を制御する制御弁1を備える。ハウジング110は、センターハウジング118と、センターハウジング118の前端側に接合されたフロントハウジング120と、センターハウジング118の後端側に接合されたリアハウジング122とを組み付けて構成される。
【0018】
センターハウジング118の内方にスクロールユニット112が配置されている。スクロールユニット112は、固定スクロール124と可動スクロール126とを軸線方向に対向配置して構成される。固定スクロール124は、段付円板状のベース128と、ベース128の前面に渦巻状に立設されたラップ130を有する。ベース128は、センターハウジング118とリアハウジング122とに挟持されるようにしてハウジング110に固定されている。ベース128は、センターハウジング118の後端部を概ね閉止している。ベース128とリアハウジング122との間には吐出室132が形成される。ベース128の中央を軸線方向に貫通するように吐出通路134が形成されている。ベース128の裏面側には、リリーフ弁136が設けられている。リリーフ弁136は、一方向弁であり、吐出通路134の吐出室132側の開口端を開閉する。
【0019】
可動スクロール126は、段付円板状のベース138と、ベース138の後面に渦巻状に立設されたラップ140を有する。ラップ140は、固定スクロール124のラップ130と噛みあい、両者の間に圧縮室142が形成される。可動スクロール126の前面中央部が円ボス状に突出し、ブッシュ144が回転可能に嵌合している。ブッシュ144には、モータ114の回転軸146が接続されている。
【0020】
センターハウジング118における前壁148の中央部がフロントハウジング120側に膨出し、その内方に軸受150が設けられている。前壁148の先端中央に挿通孔152が設けられ、回転軸146がその挿通孔152および軸受150を貫通している。前壁148と可動スクロール126との間には、環状のスラストプレート154が配置されている。前壁148は、可動スクロール126からのスラスト力を、そのスラストプレート154を介して受ける。前壁148と可動スクロール126とに囲まれる空間が背圧室156を形成する。固定スクロール124と可動スクロール126とは、背圧室156の圧力(背圧Pb)によって互いに押し付けられる。
【0021】
前壁148とスラストプレート154との間にはシールリング158が介装され、可動スクロール126とスラストプレート154との間にはシールリング160が介装されている。一方、挿通孔152と軸受150との間にはシール部材162(リップシール)が配設されている。このような構成により、背圧室156の密封性(シール性)が確保されている。
【0022】
フロントハウジング120は、隔壁164により吸入室166と制御室168とに区画されている。吸入室166にモータ114が収容され、制御室168にインバータ116が収容されている。制御室168は、ハウジング110の前端部に位置し、カバー170により閉止されている。隔壁164の後面中央には円ボス状の支持部165が突設され、軸受167(滑り軸受)が圧入されている。
【0023】
モータ114は、例えば三相交流モータであり、回転軸146と、回転軸146と一体に設けられたロータ172と、フロントハウジング120に固定されたステータ174を含む。例えば、図示しない車載バッテリから供給される直流電流がインバータ116により交流電流に変換され、モータ114に供給される。
【0024】
回転軸146は、その前端側が軸受167に支持され、後端側が軸受150に支持されている。回転軸146の後端には、その中心軸から偏心した位置に円柱状の偏心連結部178が突設されている。偏心連結部178は、ブッシュ144を介して可動スクロール126に連結されている。回転軸146の後端部には、バランスウェイト180が一体に設けられている。バランスウェイト180は、可動スクロール126の公転に伴う遠心力を相殺する。
【0025】
フロントハウジング120には、吸入室166へ冷媒を導入するための入口通路182が設けられている。センターハウジング118には、圧縮室142の入口につながる吸入圧空間184と吸入室166とを連通させる連通路186が形成されている。なお、吸入圧空間184は、圧縮機100において吸入圧力Psが満たされる空間であるため、吸入室166の一部と捉えることもできる。
【0026】
リアハウジング122には、吐出室132および取付孔187が区画形成されている。制御弁1は、取付孔187に挿入されるように取り付けられる。リアハウジング122にはまた、吐出室132からガスクーラ102側へ吐出冷媒を導出するための出口通路190が設けられている。
【0027】
リアハウジング122にはさらに、吐出室132と取付孔187とを連通させる連通路191、背圧室156と取付孔187とを連通させるための連通路193、および吸入圧空間184と取付孔187とを連通させるための連通路195が設けられている。後述のように、制御弁1には吐出室連通ポート、背圧室連通ポートおよび吸入室連通ポートが設けられている。連通路191は吐出室連通ポートと連通し、連通路193は背圧室連通ポートと連通し、連通路195は吸入室連通ポートに連通する。連通路193は、センターハウジング118に形成された連通路197を介して背圧室156に連通する。連通路195は、ベース128に形成された連通孔199を介して吸入圧空間184に連通する。また、取付孔187の開口端部と背圧室連通ポートとを連通させるための連通路200が形成されている。
【0028】
以上のように構成された圧縮機100は、入口通路182を介して吸入室166に導入された吸入圧力Psの冷媒を、スクロールユニット112の圧縮室142に導入する。
図2に示すように、固定スクロール124と可動スクロール126とを噛みあわせることにより、ラップ130,140間に圧縮室142a,142b(これらを総称して「圧縮室142と表記する」)が形成されている。
【0029】
可動スクロール126の旋回運動に伴ってその冷媒が吸入圧空間184に吸入され、圧縮室142の入口に導かれる。可動スクロール126が旋回運動することで、各圧縮室142が外周側から中央へ向けて容積を減少しながら移動する。その過程で圧縮室142内の冷媒が徐々に圧縮され、高温・高圧となる。この冷媒は、圧縮室142が吐出通路134との導通位置に達することで吐出圧力Pdの冷媒として吐出室132に吐出される。この吐出冷媒は、出口通路190からガスクーラ102へ向けて導出される。その吐出冷媒の一部は、制御弁1を介して背圧室156に導入され、背圧制御に供される。すなわち、制御弁1が吐出室132から背圧室156へ導入する冷媒の流量を制御するいわゆる「入れ制御」の制御弁として機能する。それにより、背圧室156の圧力(背圧Pb)を調整できる。
【0030】
図3は、制御弁1の構成を示す断面図である。
制御弁1は、段付円筒状のボディ5を有する。ボディ5には、その上端側からポート10,12,14が設けられている。ポート10は「吐出室連通ポート」として機能し、上述した連通路191を介して吐出室132に連通する(
図1参照)。ポート12は「背圧室連通ポート」として機能し、上述した連通路193,197を介して背圧室156に連通する。ポート14は「吸入室連通ポート」として機能し、上述した連通路195,199を介して吸入圧空間184に連通する。
【0031】
ボディ5の内部には上半部領域を軸線方向に区画するように隔壁16,隔壁18が設けられている。さらに、下部領域を軸線方向に区画するように係止部材19が設けられている。隔壁16の上方に吐出圧力室20が形成され、下方に第1圧力室22が形成されている。第1圧力室22は「制御圧力室」として機能する。
【0032】
隔壁16の中央を軸線方向に貫通するように弁孔24が設けられている。弁孔24は、吐出圧力室20と第1圧力室22とを連通させる。弁孔24の第1圧力室22側の開口端に弁座26が形成されている。吐出圧力室20は、ポート10を介して吐出室132と連通する。第1圧力室22は、ポート12を介して背圧室156と連通する。吐出圧力室20に導入された吐出圧力Pdは、弁部(弁孔24)を経ることで背圧Pbとなり、第1圧力室22から背圧室156に向けて導出される。
【0033】
隔壁18の中央を軸線方向に貫通するようにガイド孔32が設けられている。そのガイド孔32を軸線方向に貫通するように長尺状の弁駆動体34が配設されている。ボディ5の下半部(ポート14の下方)もガイド孔33として機能する。弁駆動体34は、段付円柱状をなし、その上部がガイド孔32に摺動可能に支持され、下部がガイド孔33に摺動可能に支持されている。弁駆動体34は、一端側(上端側)にテーパ状の弁体36を有する一方、下部に拡径部38を有する。その拡径部38がガイド孔33に沿って摺動する。弁体36は弁駆動体34と一体変位し、弁孔24に近接又は離間することにより弁部の開度を調整する。係止部材19は、拡径部38を係止することで弁駆動体34の開弁方向への作動を規制する。
【0034】
隔壁18と拡径部38との間に吸入圧力室28が形成される。吸入圧力室28は、ポート14を介して吸入室166に連通し、吸入圧力Psを導入する。吸入圧力室28におけるボディ5の内部底面と拡径部38との間に、弁駆動体34を開弁方向に付勢するスプリング40(付勢部材)が介装されている。
【0035】
ボディ5内における拡径部38と係止部材19との間に第2圧力室29が形成され、係止部材19の下方に第3圧力室30が形成される。すなわち、拡径部38は、吸入圧力室28と第2圧力室29とを仕切るようにボディ5に配置される。係止部材19は、第2圧力室29と第3圧力室30とを仕切るようにボディ5に設けられる。第2圧力室29は、「中間圧力室」として機能する。
【0036】
係止部材19の中央を軸線方向に貫通する連通孔60が設けられ、その連通孔60の下端部が縮径されて絞り部62(オリフィス)を形成している。また、拡径部38の外周縁近傍を軸線と平行に貫通する連通孔64が設けられ、その連通孔64の下端部が縮径されて絞り部66(オリフィス)を形成している。絞り部62は、第3圧力室30から第2圧力室29への冷媒の入口となる「第1の絞り部」として機能する。絞り部66は、第2圧力室29から吸入圧力室28への流体の出口となる「第2の絞り部」として機能する。
【0037】
ボディ5の下端部には、径方向に開放される複数のスリット31が設けられている。第3圧力室30は、スリット31および連通路200を介して、取付孔187におけるポート12が開口している空間(Oリング50,Oリング52により画定される空間)に連通する(
図1参照)。それにより、背圧Pbが第3圧力室30にも導入される。
【0038】
本実施形態では、弁駆動体34とガイド孔32とのクリアランスが微小に設定されており、いわゆるクリアランスシールが実現される。それにより、第1圧力室22から吸入圧力室28への冷媒の漏洩が規制されている。また、弁駆動体34とガイド孔33とのクリアランスも微小に設定されており、クリアランスシールが実現される。それにより、第2圧力室29から吸入圧力室28への冷媒の漏洩が規制されている。なお、変形例においては、弁駆動体34とガイド孔32との間、および弁駆動体34とガイド孔33との間の少なくとも一方にOリング等のシール部材を設け、冷媒の流通を規制してもよい。
【0039】
第3圧力室30に導入された背圧Pbの冷媒は、絞り部62を経ることで減圧され、連通孔60を介して第2圧力室29に導入される。第2圧力室29の冷媒は、連通孔64を介して吸入圧力室28へ導出される。この冷媒は、絞り部66を経ることで吸入圧力Psに減圧される。その結果、第2圧力室29には吸入圧力Psよりも高く、背圧Pbよりも低い中間圧力Pb'が満たされる(Ps<Pb'<Pb)。
【0040】
中間圧力Pb'は、吸入圧力Psよりも高く、吐出圧力Pdよりも低く、かつ背圧Pbとは異なる圧力となる。拡径部38は、吸入圧力室28と第2圧力室29とを区画しつつボディ5に摺動可能に支持され、中間圧力Pb'と吸入圧力Psとの差圧(Pb'-Ps)を受ける「受圧部」として機能する。弁駆動体34は、拡径部38が受ける差圧(Pb'-Ps)に応じて作動する。
【0041】
ボディ5の上端開口部には、ポート10への異物の侵入を抑制するフィルタ部材42が嵌着されている。圧縮機100の吐出冷媒には金属粉等の異物が含まれることがあるため、フィルタ部材42は、その異物が制御弁1の内部に侵入することを防止又は抑制する。フィルタ部材42は、有底筒状のフィルタ44を有し、そのフィルタ44の開口端部をリング状の金属プレート46にて補強して構成される。フィルタ44は金属メッシュからなる。フィルタ部材42は、その底部を上にした状態で金属プレート46をボディ5に圧入することにより固定される。フィルタ部材42は、図示のようにボディ5の内側に装着されることにより、外部構造物との接触による変形が防止されている。
【0042】
ポート12にも円筒状のフィルタ部材43が取り付けられている。フィルタ部材43は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのメッシュを含む。
【0043】
制御弁1の外周面には、取付孔187に取り付けられた際の各ポート間のシールを実現する複数のシールリングが設けられている。すなわち、ボディ5の外周面には、ポート12の上方にOリング50、ポート12とポート14の間にOリング52、ポート14の下方にOリング54が嵌着されている(
図1参照)。
【0044】
以上のような構成において、ガイド孔33の断面積Cが、ガイド孔32の断面積Bと弁孔24の断面積Aとの差よりも十分に大きい(C>B-A)。このため、弁駆動体34には背圧Pbによる開弁方向の力よりも中間圧力Pb'による閉弁方向の力のほうが大きく作用する。弁駆動体34には中間圧力Pb'が閉弁方向に作用する一方、吸入圧力Psおよび吐出圧力Pdが開弁方向に作用する。制御弁1は、吸入圧力Ps、吐出圧力Pdおよび中間圧力Pb'に応じてその弁部の開度を変化させつつ、背圧Pbを制御する。
【0045】
次に、圧縮機100の制御動作について説明する。
圧縮機100が駆動されると、可動スクロール126が固定スクロール124の軸線周りに旋回(公転)する。この可動スクロール126の公転によって、両スクロール間に形成される圧縮室142が外周側から中央へ向けて容積を減少しながら移動される。この過程で冷媒圧力が吸入圧力Psから吐出圧力Pdへ昇圧される。その吐出冷媒が冷凍サイクルを循環することにより、車両用空調装置の空調が行われる。
【0046】
このとき、吐出冷媒の一部が制御弁1のポート10へ供給され、圧縮機100の背圧Pbが制御される。制御弁1では、弁体36が、吐出圧力Pdによる開弁方向の力、吸入圧力Psによる開弁方向の力、背圧Pbによる開弁方向の力、中間圧力Pb'による閉弁方向の力、およびスプリング40による開弁方向の力がつり合う弁リフト位置に保たれる。
【0047】
背圧Pbの制御過程で吐出圧力Pdおよび吸入圧力Psのいずれか一方が上昇すると、弁体36に作用する開弁方向の力が大きくなる。このため、その荷重につり合う閉弁方向の力を大きくするよう、中間圧力Pb'の元圧である背圧Pbも上昇する。すなわち、吐出圧力Pdの上昇に伴って背圧Pbが比例的に上昇する制御特性(「吐出圧力依存性」ともいう)と、吸入圧力Psの上昇に伴って背圧Pbが上昇する制御特性(「吸入圧力依存性」ともいう)が得られる。
【0048】
図4および
図5は、中間圧力の受圧有無による作用効果の相異を表す図である。
図4(A)は、中間圧力Pb'を受圧する本実施形態の構成を示す。
図4(B)は、中間圧力Pb'を受圧しない比較例の構成を示す。比較例は、第2圧力室229の出入口が単一であり、絞り部を有しない点で本実施形態と異なる。第2圧力室229には連通孔260を介して背圧Pbが導入される。
【0049】
図5は、本実施形態および比較例のそれぞれの制御特性(吐出圧力依存性および吸入圧力依存性)を示す。横軸が吐出圧力Pdを示し、縦軸が背圧Pbを示す。本図には、吸入圧力PsをPs1~Ps3(Ps1<Ps2<Ps3)まで変化させたときの吐出圧力依存性の変化が示されている。実線が本実施形態の制御特性を示し、破線が比較例の制御特性を示す。
【0050】
本実施形態によれば、弁部を流れる流体の流量に依存して制御弁の弁開度特性が変化する。中間圧力Pb'は、絞り部62,66を流れる冷媒の流量に依存して変化する。吐出圧力Pdが高くなって流量が増加すると、背圧Pbも高くなり、結果的に絞り部62,66における圧損が大きくなる。このため、中間圧力Pb'と吸入圧力Psとの差圧(Pb'-Ps)は大きくなる。この圧損ひいては差圧は、絞り部62,66の径を変更することで調整できる。圧損がより大きくなるように絞り部の径を設定すれば、中間圧力Pb'による背圧Pbへの影響度が大きくなる。圧損がより小さくなるように絞り部の径を設定すれば、中間圧力Pb'による背圧Pbへの影響度が小さくなる。ここで、絞り部62,66の流量は弁部の流量に依存する。したがって、本実施形態によれば、弁部を流れる冷媒の流量に依存して制御弁1の弁開度特性が変化することとなる。
【0051】
言い換えれば、本実施形態によれば、背圧Pbに影響するパラメータとして、流量依存のパラメータである中間圧力Pb'を追加することで、弁部の開閉方向の荷重変動を追加的に生じさせ、弁開度特性を変化させることができる。それにより、吐出圧力依存性および吸入圧力依存性を任意に調整しやすくなる。
図5に示すように、吸入圧力依存性の調整幅を大きくとることもできる。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態では、弁駆動体34が、吸入圧力Ps、吐出圧力Pdおよび背圧Pbのいずれとも異なる中間圧力Pb'を受圧して作動する。このため、制御弁1において中間圧力Pb'に影響する設計値を調整することで、圧縮機100の背圧制御において制御弁1の弁部がその設計値に応じて自律的に弁開度を調整する。それにより、吐出圧力依存性を維持しつつ、吸入圧力依存性を高めることができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0054】
[変形例]
図6は、変形例1に係る制御弁の構成を示す断面図である。
本変形例の制御弁201は、第1圧力室22が「中間圧力室」として機能し、その出口に絞り部23(オリフィス)が設けられている点で上記実施形態と異なる。絞り部23は、ポート12と連通する。制御弁201には、弁駆動体235の下方に中間圧力室は設けられていない。ボディ205における弁駆動体235の下方に第2圧力室230が形成され、スリット31を介して背圧Pbが導入されている。
【0055】
なお、弁駆動体235の下端(拡径部38)をボディ5の開口端(下端)の近傍に配置している。このため、
図1に示したように、ボディ5の開口端を圧縮機100の固定スクロール124の壁面に突き当てることにより、その壁面を弁部の最大開度を規定するストッパとして機能させることができる。弁駆動体235とストッパ(壁面)との間に緩衝部材を設けてもよい。それにより、弁駆動体235の破損や損傷を防止又は抑制できる。
【0056】
吐出圧力室20に導入された冷媒は、弁部を経ることで中間圧力Pb'減圧され、第1圧力室22に導入される。第1圧力室22の冷媒は、絞り部23を経ることで背圧Pbに減圧され、ポート12から背圧室156に向けて導出される。第1圧力室22には背圧Pbよりも高く、吐出圧力Pdよりも低い中間圧力Pb'が満たされる(Pb<Pb'<Pd)。
【0057】
中間圧力Pb'は、吸入圧力Psよりも高く、吐出圧力Pdよりも低く、かつ背圧Pbとは異なる圧力となる。すなわち、上記実施形態と同様に、背圧Pbに影響するパラメータとして、流量依存のパラメータである中間圧力Pb'を追加したことで、吐出圧力依存性および吸入圧力依存性を任意に調整しやすくなる。
【0058】
上記実施形態では、絞り部62,66を制御弁1内に設ける構成を例示した。変形例においては、絞り部62,66の少なくとも一方を圧縮機100の内部通路(ハウジングに形成された通路)に設けてもよい。例えば、絞り部62を圧縮機のハウジングに設け、その絞り部62で減圧された中間圧力Pb'を第2圧力室29(中間圧力室)に導入してもよい。制御弁のボディにその絞り部と中間圧力室とを連通させるポートを設けてもよい。
【0059】
図7は、変形例2に係る圧縮機および制御弁の構成を示す部分拡大断面図である。
本変形例は、絞り部23を圧縮機100の内部通路(ハウジングに形成された通路)に設けている点で変形例1と異なる。制御弁202は、変形例1の制御弁201と近似した構成を有するが、第1圧力室22とポート12との間に絞り部23を有していない。リアハウジング122における連通路193の途中、つまり制御弁202の外側に絞り部23が設けられている。ポート12からは、中間圧力Pb'の冷媒が導出される。この冷媒は、絞り部23を経由することで背圧Pbに減圧され、背圧室156に供給される。
【0060】
固定スクロール124およびセンターハウジング118には、制御弁202の第2圧力室230と連通路197とを連通させるための連通路250が設けられている。絞り部23を通過することで背圧Pbに減圧された冷媒は、連通路250を介して第2圧力室230に導入される。このように絞り部を圧縮機100の内部通路に設けても、流量依存のパラメータである中間圧力Pb'を追加でき、変形例1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
図8は、変形例3に係る制御弁の構成を示す断面図である。
本変形例の制御弁301は、絞り部62,66の配置が上記実施形態と異なる。弁駆動体334の上部と下部にシールリング(Oリング340,342)が嵌着されている。Oリング340がガイド孔32に沿って摺動し、Oリング342がガイド孔33に沿って摺動することで、ボディ305の内周面と弁駆動体334の外周面との間のシールが確保されている。Oリング342は、拡径部338の外周面に嵌着されている。
【0062】
弁駆動体334の下半部は段付円孔状をなし、T字状の内部通路336が形成されている。内部通路336は、吸入圧力室28と第2圧力室29とを連通させる。内部通路336の段部には、有底円筒状の通路形成部材350が同軸状に圧入されている。通路形成部材350の底部に絞り部66が設けられている。本変形例では、弁駆動体334の下面が「受圧部」として機能する。
【0063】
ボディ305の下端部に環状の係止部材319が圧入され、係止部材319の内方にばね受け320が同軸状に圧入されている。ばね受け320の中央を軸線方向に貫通するように連通孔60が設けられ、連通孔60の下端部が縮径されて絞り部62を形成している。絞り部62,66は、弁駆動体334の軸線上に位置する。
【0064】
ボディ305と拡径部338との間にスプリング40が介装され、弁駆動体334と係止部材319との間にスプリング352が介装されている。スプリング40,352は、弁駆動体334の軸線と同軸状に配置される。ばね受け320の係止部材319への圧入量を調整することにより、弁駆動体334に負荷されるばね荷重を設定できる。
【0065】
本変形例においても、中間圧力Pb'は、絞り部62,66を流れる冷媒の流量に依存して変化する。冷媒の流量の増加に伴い、弁駆動体334に対して開弁方向に作用する荷重が増大する。流量が大きくなると、背圧Pbと中間圧力Pb'との差圧(Pb-Pb')が大きくなる。その結果、閉弁方向に作用する中間圧力Pb'の影響が小さくなり、334が開弁方向に作動する。その中間圧力Pb'の影響の程度は、絞り部62,66の径の大きさにより変更できる。絞り部62,66の流量は弁部の流量に依存する。すなわち、本変形例によっても弁部を流れる冷媒の流量に依存して制御弁301の弁開度特性が変化することとなり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
図9は、変形例4に係る制御弁の構成を示す断面図である。
図10は、変形例4に係る圧縮機の構成を示す断面図である。
図9に示すように、本変形例の制御弁401は、ボディ405における圧力室の構成が変形例3と異なる。弁駆動体434の内部通路436は、第1圧力室22と第2圧力室29とを連通させる。このため、弁部を経て背圧Pbとなった冷媒は、内部通路436に導かれ、絞り部66を経ることで中間圧力Pb'に減圧され、さらに絞り部62を経ることで吸入圧力Psに減圧される。第3圧力室30に導かれた吸入圧力Psの冷媒は、スリット31を介して吸入室166へ導出される(
図10参照)。
【0067】
本変形例において、絞り部66は、第1圧力室22から第2圧力室29へ導入される冷媒の入口となる「第1の絞り部」として機能する。絞り部62は、第2圧力室29から第3圧力室30へ導出される冷媒の出口となる「第2の絞り部」として機能する。
【0068】
図10に示すように、本変形例ではセンターハウジング118に取付孔410が設けられ、制御弁401が取り付けられている。リアハウジング122に設けられた連通路412と、センターハウジング118に設けられた連通路414が、吐出室132と取付孔410とを連通させる。センターハウジング118にはさらに、背圧室156と取付孔410とを連通させる連通路416が設けられている。
【0069】
フロントハウジング120の開口端面に係止部材319が係止されることにより、制御弁401が取付孔410から脱落することが防止される。制御弁401において、ポート10が連通路414に連通し、ポート12が連通路416に連通する。また、ポート14および第3圧力室30は、取付孔410の開口端を介して吸入室166と連通する。
【0070】
本変形例においても上記実施形態と同様、流量依存のパラメータである中間圧力Pb'を追加したことで、吐出圧力依存性および吸入圧力依存性を任意に調整しやすくなる。また、絞り部66を絞り部62の上流側に配置したことにより、第3圧力室30は冷媒の導出ポートとして機能することとなる。つまり、ボディ405の下端開口部から冷媒が導入されることがないため、異物の侵入を防止するためのフィルタ部材をその下端開口部に設ける必要もない。さらに、ポート14と第3圧力室30とがともに吸入圧力Psで満たされるため、両者の間にシールリング(Oリング等)を設ける必要もない。このため、制御弁401の部品点数を削減でき、制御弁401の外径を最小化することもできる。
【0071】
図11は、変形例5に係る圧縮機の構成を示す断面図である。
図12は、変形例5に係る制御弁の構成を示す断面図である。
本変形例の制御弁501は、背圧室156から吸入圧空間184(吸入圧力Psが満たされる空間)へ導出する冷媒の流量を制御するいわゆる「抜き制御」の制御弁として機能する点で上記実施形態と異なる。
【0072】
図11に示すように、リアハウジング122に取付孔510が設けられ、制御弁501が取り付けられている。リアハウジング122には、吐出室132と取付孔510とを連通させる連通路512、および取付孔510と吸入圧空間184とを連通させる連通路514が設けられている。センターハウジング118には、背圧室156と取付孔510とを連通させる連通路516が設けられている。制御弁501は、背圧室156から吸入圧空間184へ向けて導出される冷媒の流量を制御する。
【0073】
リアハウジング122にはまた、吐出室132と連通路197とを連通させる連通路518が設けられ、連通路518の途中には絞り部523(オリフィス)が設けられている。それにより、吐出室132から導出した吐出圧力Pdの冷媒が絞り部523を経由することで減圧され、背圧Pbの冷媒として背圧室156に供給される。
【0074】
図12に示すように、制御弁501は、段付円筒状のボディ505を有する。ボディ505の内方には、段付円柱状の弁駆動体534が同軸状に配設されている。ボディ505の上半部を軸線に沿って貫通するようにガイド孔532が設けられ、弁駆動体534の上半部が摺動可能に支持されている。弁駆動体534の外周面にはシールリング(Oリング540)が嵌着され、弁駆動体534とガイド孔532との間隙を介した冷媒の漏洩が防止されている。弁駆動体534の下端部が拡径され、弁体536を構成している。本変形例では、弁体536が「受圧部」として機能する。
【0075】
ボディ505の側部にポート14が設けられ、吸入圧力室28と連通している。ボディ505の下部領域を軸線方向に区画するように弁座形成部材519が設けられている。弁座形成部材519の上部に弁孔524が設けられ、弁孔524の開口端部にテーパ状の弁座526が形成されている。ボディ505と弁体536との間には、弁体536を閉弁方向に付勢するスプリング542が介装されている。弁体536が、吸入圧力室28側から弁座526に着脱することにより弁部を開閉する。
【0076】
弁座形成部材519の下部中央に連通孔60が設けられ、その下端部に絞り部62が形成されている。弁座形成部材519の上方に第2圧力室29が形成され、弁座形成部材519の下方に第3圧力室30が形成される。弁体536の有効受圧面積A5は、ガイド孔532の断面積B5よりも十分に大きい(A5>B5)。ボディ505の外周面におけるポート14の上部と下部には、それぞれシールリング(Oリング550,552)が嵌着される。第3圧力室30が連通路516に連通し、ポート14が連通路514に連通する(
図11参照)。制御弁501は、吸入圧力Ps、吐出圧力Pdおよび中間圧力Pb'に応じてその弁部の開度を変化させつつ、背圧Pbを制御する。
【0077】
本変形例では、中間圧力Pb'が、絞り部62を流れる冷媒の流量に依存して変化する。冷媒の流量の増加に伴い、弁駆動体534に対して閉弁方向に作用する荷重が増大する。吐出圧力Pdが高くなると、絞り部523を経て吸入圧空間184に導入される背圧Pbも高くなり、結果的に絞り部62における圧損が大きくなる。このため、中間圧力Pb'と吸入圧力Psとの差圧(Pb'-Ps)は大きくなる。この圧損ひいては差圧は、絞り部62の径を変更することで調整できる。絞り部62の流量は弁部の流量に依存する。すなわち、本変形例においても、弁部を流れる冷媒の流量に依存して制御弁501の弁開度特性が変化することとなる。背圧Pbに影響するパラメータとして中間圧力Pb'が追加されることで、吐出圧力依存性および吸入圧力依存性を任意に調整しやすくなる。
【0078】
図13は、変形例6に係る制御弁の構成を示す断面図である。
本変形例の制御弁601は、吸入圧力室28が「中間圧力室」として機能し、その出口に絞り部623(オリフィス)が設けられている点で上記変形例5と異なる。絞り部623は、ポート14と連通する。制御弁601には、弁座形成部材619に絞り部は設けられていない。第2圧力室29に導入される背圧Pbの冷媒は、弁部を経ることで中間圧力Ps'となり、さらに絞り部623を経ることで吸入圧力Psとなってポート14から導出される。
【0079】
中間圧力Ps'は、吸入圧力Psよりも高く、吐出圧力Pdよりも低く、かつ背圧Pbとは異なる圧力となる。すなわち、本変形例でも背圧Pbに影響するパラメータとして、流量依存のパラメータである中間圧力Ps'を追加したことで、吐出圧力依存性および吸入圧力依存性を任意に調整しやすくなる。
【0080】
[他の変形例]
上記実施形態では、制御弁1において、弁体を弁駆動体と一体成形する構成を例示した。変形例においては、弁体とロッド状の伝達部材とを連結して弁駆動体としてもよい。すなわち、弁駆動体が複数の部材を含むものとしてもよい。
【0081】
上記実施形態では、
図3に示したように、ガイド孔32の断面積Bを弁孔24の断面積Aよりも大きくした構成を例示した(B>A)。変形例においては、ガイド孔32の断面積Bと弁孔24の断面積Aとを等しくし(B=A)、弁駆動体34に作用する背圧Pbの影響をキャンセルしてもよい。
【0082】
上記実施形態では、上記圧縮機を、二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに適用する例を示した。変形例においては、二酸化炭素以外を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに適用してもよい。あるいは、超臨界域での動作はしないものの、冷媒の圧力が高圧となる冷凍サイクルに適用してもよい。例えば、HFC-134aやHFO-1234yf等を冷媒とする冷凍サイクルに適用してもよい。その場合、冷凍サイクルにおいて、外部熱交換器としてガスクーラ102に代えて凝縮器が設けられる。
【0083】
上記実施形態では、制御弁1が適用されるスクロール型圧縮機として、自動車用空調装置に搭載される圧縮機を例示した。変形例においては、一般用(家庭用、業務用)の空調装置に搭載されるスクロール型圧縮機に対し、制御弁1を適用してもよい。また、冷媒以外を作動流体とするスクロール型圧縮機に制御弁1を適用してもよい。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 制御弁、5 ボディ、10 ポート、12 ポート、14 ポート、19 係止部材、20 吐出圧力室、22 第1圧力室、23 絞り部、24 弁孔、26 弁座、28 吸入圧力室、29 第2圧力室、30 第3圧力室、32 ガイド孔、33 ガイド孔、34 弁駆動体、36 弁体、38 拡径部、40 スプリング、60 連通孔、62 絞り部、64 連通孔、66 絞り部、100 圧縮機、102 ガスクーラ、104 膨張装置、106 蒸発器、110 ハウジング、112 スクロールユニット、124 固定スクロール、126 可動スクロール、132 吐出室、134 吐出通路、142 圧縮室、146 回転軸、152 挿通孔、156 背圧室、166 吸入室、172 ロータ、174 ステータ、182 入口通路、184 吸入圧空間、186 連通路、187 取付孔、201 制御弁、205 ボディ、229 第2圧力室、230 第2圧力室、235 弁駆動体、260 連通孔、301 制御弁、305 ボディ、319 係止部材、320 ばね受け、334 弁駆動体、336 内部通路、338 拡径部、350 通路形成部材、401 制御弁、405 ボディ、410 取付孔、434 弁駆動体、436 内部通路、501 制御弁、505 ボディ、510 取付孔、519 弁座形成部材、523 絞り部、524 弁孔、526 弁座、532 ガイド孔、534 弁駆動体、536 弁体、601 制御弁、619 弁座形成部材、623 絞り部。