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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155672
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】美白組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241024BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241024BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/02
A61Q1/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146695
(22)【出願日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】112115048
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】512020327
【氏名又は名称】ペガヴィジョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F-1,No.5,SHING YEH ST.,GUISHAN DIST.,TAOYUAN CITY 333,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン,イ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】リー,クウェイ-チャン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン,カイ-アン
(72)【発明者】
【氏名】ロ,イー-ティン
(72)【発明者】
【氏名】リー,イン-イン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ペイ-イン
(72)【発明者】
【氏名】リン,イー-シアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シン-ジャン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC682
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD572
4C083AD662
4C083BB01
4C083BB41
4C083BB47
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC14
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE10
4C083EE13
4C083EE16
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】美白組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
第1アルコール液体で桑白皮を抽出し、桑白皮アルコール抽出物を得る工程と、第2アルコール液体でカキドオシを抽出し、カキドオシアルコール抽出物を得る工程と、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出し、ギンコウボクアルコール抽出物を得る工程と、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、ギンコウボクアルコール抽出物、保湿剤、及び溶剤を混合して美白組成物を形成する工程と、を含む美白組成物の製造方法。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桑白皮アルコール抽出物と、
カキドオシアルコール抽出物と、
ギンコウボクアルコール抽出物と、
保湿剤と、
溶剤と、
を含む美白組成物。
【請求項2】
前記桑白皮アルコール抽出物と、前記カキドオシアルコール抽出物と、前記ギンコウボクアルコール抽出物との重量比は、30~95:1~20:1~20である請求項1に記載の美白組成物。
【請求項3】
前記美白組成物の総重量の100wt%に基づいて、前記桑白皮アルコール抽出物、前記カキドオシアルコール抽出物、及び前記ギンコウボクアルコール抽出物の総重量は、0.01wt%~20wt%である請求項1に記載の美白組成物。
【請求項4】
前記桑白皮アルコール抽出物は、第1アルコール液体で桑白皮を抽出して得られ、前記カキドオシアルコール抽出物は、第2アルコール液体でカキドオシを抽出して得られ、前記ギンコウボクアルコール抽出物は、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出して得られ、前記第1アルコール液体、前記第2アルコール液体、及び前記第3アルコール液体は、それぞれ炭素数が1~10のアルコールを含む請求項1に記載の美白組成物。
【請求項5】
前記第1アルコール液体、前記第2アルコール液体、及び前記第3アルコール液体は、それぞれ、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、3-メチルブタノール、2-メチルブタノール、2,2-ジメチルプロパノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、又はこれらの組み合わせを含む請求項4に記載の美白組成物。
【請求項6】
スキンコンディショナー、酸化防止剤、増粘剤、乳化剤、乳化安定剤、香料、エモリエント剤、又はこれらの組み合わせを更に含む請求項1に記載の美白組成物。
【請求項7】
前記美白組成物は、エッセンス、エッセンスクリーム、アイクリーム、フェイスクリーム、ハンドクリーム、乳液、マスク液、化粧水、日焼け止め、又はバリアクリームである請求項1に記載の美白組成物。
【請求項8】
第1アルコール液体で桑白皮を抽出し、桑白皮アルコール抽出物を得る工程と、
第2アルコール液体でカキドオシを抽出し、カキドオシアルコール抽出物を得る工程と、
第3アルコール液体でギンコウボクを抽出し、ギンコウボクアルコール抽出物を得る工程と、
前記桑白皮アルコール抽出物、前記カキドオシアルコール抽出物、前記ギンコウボクアルコール抽出物、保湿剤、及び溶剤を混合して美白組成物を形成する工程と、
を含む美白組成物の製造方法。
【請求項9】
前記第1アルコール液体、前記第2アルコール液体、及び前記第3アルコール液体は、それぞれ、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、3-メチルブタノール、2-メチルブタノール、2,2-ジメチルプロパノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、又はこれらの組み合わせを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1アルコール液体は、体積パーセント濃度が50%~100%である第1アルコールを含み、
前記第2アルコール液体は、体積パーセント濃度が50%~100%である第2アルコールを含み、
前記第3アルコール液体は、体積パーセント濃度が50%~100%である第3アルコールを含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1アルコール液体は、第1アルコール及び水を含み、
前記第2アルコール液体は、第2アルコール及び水を含み、
前記第3アルコール液体は、第3アルコール及び水を含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1アルコール液体で前記桑白皮を、前記第2アルコール液体で前記カキドオシを、前記第3アルコール液体で前記ギンコウボクを、それぞれ温度20℃~70℃で抽出する請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記桑白皮と前記第1アルコール液体との重量比は、1:10~1:20であり、
前記カキドオシと前記第2アルコール液体との重量比は、1:10~1:20であり、
前記ギンコウボクと前記第3アルコール液体との重量比は、1:10~1:20である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第1アルコール液体で前記桑白皮を抽出する時間は、12時間~96時間であり、
前記第2アルコール液体で前記カキドオシを抽出する時間は、12時間~96時間であり、
前記第3アルコール液体で前記ギンコウボクを抽出する時間は、12時間~96時間である請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、美白組成物及びその製造方法に関し、特に、植物抽出物を含有する美白組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の照射、内分泌の影響、摩擦等の要因により、メラノサイトが刺激されてメラニンが生成され、皮膚にシミが生じる。しかし、美を愛することは人間の本性であり、美しく、色白で、シミのない肌を持つことは、多くの消費者が追い求める夢である。特にアジアの文化では、長い間、色白の肌は若さや美しさと結びつけられてきた。美白製品は、色素沈着の軽減、シミの軽減、肌の色合いの均一化、シミの除去等の利点のため、消費者の間で人気がある。
【0003】
しかしながら、現在の美白製品には、依然として以下の欠点がある。シミを軽減する従来の美白製品の多くは、表皮層の表層シミを除去することに重点を置いてあり、しかしながら、メラニンが表皮層の中層と深層(基底層)で形成されるが、表皮層のシミ除去のみを重視すれば、シミはすぐに再び現れる。また、現在市販されている美白成分、例えば、ハイドロキノン(Hydroquinone)、コジ酸(kojic acid)、アルブチン(Arbutun)、エラグ酸(Ellagic acid)、及びビタミンC(Ascorbic acid)及びその誘導体等は、皮膚刺激を引き起こしやすい。例えば、ハイドロキノンは、皮膚を素早く白くすることができるが、皮膚刺激や皮膚過敏症を引き起こしやすく、皮膚炎、紅斑、火傷、白板症、不規則な皮膚の色素脱失等の副作用を引き起こす。したがって、ハイドロキノンは、保健省によって化粧品への使用が禁止されている。例えば、フルーツ酸やサリチル酸等の美白成分は、赤み、皮むけ、乾燥、かゆみ、灼熱感等の局所的な皮膚刺激を引き起こしやすい。
【0004】
上記に鑑みて、優れた美白効果を有し、且つ低刺激性の美白製品の開発が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、桑白皮(Morus alba root bark)アルコール抽出物と、カキドオシ(Glechoma hederacea)アルコール抽出物と、ギンコウボク(Michelia alba flower)アルコール抽出物と、保湿剤と、溶剤と、を含む美白組成物を提供する。
【0006】
幾つかの実施形態において、桑白皮アルコール抽出物と、カキドオシアルコール抽出物と、ギンコウボクアルコール抽出物との重量比は、30~95:1~20:1~20である。
【0007】
幾つかの実施形態において、美白組成物の総重量の100wt%に基づいて、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、及びギンコウボクアルコール抽出物の総重量は、0.01wt%~20wt%である。
【0008】
幾つかの実施形態において、桑白皮アルコール抽出物は、第1アルコール液体で桑白皮を抽出して得られ、カキドオシアルコール抽出物は、第2アルコール液体でカキドオシを抽出して得られ、ギンコウボクアルコール抽出物は、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出して得られ、第1アルコール液体、第2アルコール液体、及び第3アルコール液体は、それぞれ炭素数が1~10のアルコールを含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体、第2アルコール液体、及び第3アルコール液体は、それぞれ、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、3-メチルブタノール、2-メチルブタノール、2,2-ジメチルプロパノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、美白組成物は、スキンコンディショナー、酸化防止剤、増粘剤、乳化剤、乳化安定剤、香料、エモリエント剤、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、美白組成物は、エッセンス、エッセンスクリーム、アイクリーム、フェイスクリーム、ハンドクリーム、乳液、マスク液、化粧水、日焼け止め、又はバリアクリームである。
【0012】
本開示は、第1アルコール液体で桑白皮を抽出し、桑白皮アルコール抽出物を得る工程と、第2アルコール液体でカキドオシを抽出し、カキドオシアルコール抽出物を得る工程と、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出し、ギンコウボクアルコール抽出物を得る工程と、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、ギンコウボクアルコール抽出物、保湿剤、及び溶剤を混合して美白組成物を形成する工程と、を含む美白組成物の製造方法を提供する。
【0013】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体、第2アルコール液体、及び第3アルコール液体は、それぞれ、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、3-メチルブタノール、2-メチルブタノール、2,2-ジメチルプロパノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体は、体積パーセント濃度が50%~100%である第1アルコールを含み、第2アルコール液体は、体積パーセント濃度が50%~100%である第2アルコールを含み、第3アルコール液体は、体積パーセント濃度が50%~100%である第3アルコールを含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体は、第1アルコール及び水を含み、第2アルコール液体は、第2アルコール及び水を含み、第3アルコール液体は、第3アルコール及び水を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体で桑白皮を、第2アルコール液体でカキドオシを、第3アルコール液体でギンコウボクを、それぞれ温度20℃~70℃で抽出する。
【0017】
幾つかの実施形態において、桑白皮と第1アルコール液体との重量比は、1:10~1:20である。カキドオシと第2アルコール液体との重量比は、1:10~1:20である。ギンコウボクと第3アルコール液体との重量比は、1:10~1:20である。
【0018】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体で桑白皮を抽出する時間は、12時間~96時間であり、第2アルコール液体でカキドオシを抽出する時間は、12時間~96時間であり、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出する時間は、12時間~96時間である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下の実施形態の詳細な説明を読んで、図面を参照することにより、本開示の内容をより完全に理解することができる。
図1】本開示の実施例1、対照群、及び陽性対照群の皮膚刺激性試験結果である。
図2】本開示の実施例1、対照群、及び陽性対照群の眼刺激性試験結果である。
図3】本開示の実施例のエッセンス及び市販の美白製品の表層シミ改善結果である。
図4】本開示の実施例のエッセンス及び市販の美白製品の中層シミ改善結果である。
図5】本開示の実施例のエッセンス及び市販の美白製品の深層シミ改善結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の複数の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。明らかに説明するために、多くの実務上の細部を下記叙述で合わせて説明する。しかしながら、理解すべきなのは、これらの実務上の細部は本開示を制限するためのものではない。即ち、本開示の一部の実施形態において、これらの実務上の細部は、必要ではない。また、図面を簡略化するために、幾つかの周知の構造及び素子は、図面において模式に示される。
【0021】
本明細書において、「ある数値~他の数値」で表される範囲は、明細書において当該範囲内の全ての数値を一々列挙することを避けるための概略的な表現である。したがって、特定の数値範囲の記載は、明細書に任意の数値及びより小さい数値範囲が明示的に記載されているように、その数値範囲内の任意の数値及びその数値範囲内の任意の数値によって定義されるより小さい数値範囲を含む。
【0022】
人の肌の色は皮膚のメラノサイトで生成されるメラニン(Melanin)によって決まるが、メラニンは主に皮膚のメラノソーム(Melanosome)で合成される。メラニンの生成過程(Melanogenesis)には酵素が関与し、複雑な化学反応であり、この反応によって、ユーメラニン(Eumelanin)とフェオメラニン(Pheomelanin)が生成され、両者はL-ドーパメラニン(L-DOPA melanin)と総称する。メラニンの生成過程は、L-チロシン(L-tyrosine)がチロシナーゼ(Tyrosinase;TYR)(速度決定工程)によって酸化されて、L-ドーパキノン(L-dopaquinone;DQ)を生成することから始まる。DQは生成後、分子内の環化(cyclization)と酸化(oxidation)によって、ユーメラニンとフェオメラニンを生成する基質(Substrate)となる。また、この合成を駆動する調節メカニズムは、(1)メラノコルチニン受容体1(Melanocortin-1 receptor;MC1R)シグナル伝達と、(2)Wnt/β-カテニン(Wnt/β-catenin)シグナル伝達と、(3)チロシン酸キナーゼ受容体/幹細胞因子(Tyrosine kinase receptor(TKR)/stem cell factor(SCF))シグナル伝達との3つの細胞シグナル伝達経路を含むことが現在知られている。これらの細胞シグナル経路の共通特徴は、いずれもTYRを活性化する上流のマスターレギュレーター小眼球症関連転写因子(Master-regulator-microphthalmia-associated transcription factor;MITF)である。よく見られるMC1Rメッセージ伝達を例として、α-MSHは、プロオピオメラノコルチン(Pro-opiomelanocortin)に由来する前駆体ポリペプチドであり、MC1Rに結合すると、下流のアデニリルシクラーゼ(adenylyl cyclase)を活性化し、環状アデノシン一リン酸(cyclic adenosine monophosphate;cAMP)の生成を触媒し、そしてTYRとチロシナーゼ関連タンパク質1/2(Tyrosinase related protein-1/2;TRP-1/2)の発現を促進し、メラニンの増加を引き起こす。
【0023】
したがって、美白のメカニズムは、以下のことを含む:(1)メラノサイトへの刺激を阻止する。皮膚がダメージを受けると炎症反応が起こり、炎症性因子がメラニンの生成に影響を与えるため、炎症性メラニン促進因子(例えば、プロスタグランジン(Prostaglandin E;PEG2))の生成を阻止することで、メラニンの生成を減少させることができる。(2)メラニンの形成を抑制する。メラニン(例えば、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-melanocyte-stimulating hormones;α-MSH))を生成するシグナルを遮断し、メラニン形成酵素(例えば、TYR)の活性を阻害する。(3)メラニンの転移を抑制する。角質層に蓄積されたメラニンを減少させることで美白効果を向上させる。
【0024】
本開示は、天然植物抽出物を含む美白組成物及び美白組成物の製造方法を提供する。美白組成物は、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、ギンコウボクアルコール抽出物、保湿剤、及び溶剤を含む。本開示の美白組成物は、抗酸化、抗炎症、及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有し、且つ低皮膚刺激性及び低眼刺激性の利点を有する。この美白組成物は、人の皮膚の表皮層内の表層(角質層)のシミ、並びに中層及び深層(基底層)のシミを効果的に改善し、メラニンの沈着を改善し、且つシミを軽減する優れた美白効果を達成することができる。本開示の美白組成物は、スキンケア製品、化粧品又は医薬品に適用することができる。幾つかの実施形態において、保湿剤は、1,3-ブチレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、イノシトール、トレハロース、プロピレングリコール、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、溶剤は、例えば、水又はアルコールのような極性溶剤である。
【0025】
幾つかの実施形態において、桑白皮アルコール抽出物と、カキドオシアルコール抽出物と、ギンコウボクアルコール抽出物との重量比は、30~95:1~20:1~20であり、例えば、40~50:2~5:1~5である。幾つかの実施形態において、美白組成物の総重量の100wt%に基づいて、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、及びギンコウボクアルコール抽出物の総重量は、0.01wt%~20wt%であり、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、又は20wt%である。上記重量比の範囲及び/又は重量パーセントの範囲を有する美白組成物は、優れた抗酸化、抗炎症、及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有し、皮膚及び目に刺激を与える可能性が低い。幾つかの実施形態において、美白組成物の総重量の100wt%に基づいて、保湿剤は1wt%~25wt%である。
【0026】
幾つかの実施形態において、美白組成物は、化粧品学的又は生理学的に使用可能な媒体、例えば、スキンコンディショナー、抗酸化剤、増粘剤、乳化剤、乳化安定剤、香料、エモリエント剤、又はこれらの組み合わせを更に含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、スキンコンディショナーは、1,2-ヘキサンジオール、アルギニン、アラントイン、パンテノール、オクタメチルポリシロキサン、スクワラン、酢酸トコフェロール、アルギニン、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、酸化防止剤は、p-ヒドロキシアセトフェノンを含む。幾つかの実施形態において、増粘剤は、アクリル酸(エステル)/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー、アクリル酸(エステル)コポリマーナトリウム、カルボマー、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、乳化剤は、例えば、ノニオン、アニオン又は両性界面活性剤であり、例えば、ポリソルベート-60、イソステアリン酸ソルベート、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリエチレングリコール-75(ステアリン酸PEG-75)、セテス-20、ステアレス-20、レシチン、オリベートセテアリル、オリベートソルビタン、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、乳化安定剤は、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、エモリエント剤は、イソノナン酸イソノニル、ポリジメチルシロキサン、トリ(エチルヘキサン酸)、イソヘキサデカン、カプリル酸カプリン酸トリグリセリド、パルミチン酸エチルヘキシル、又はこれらの組み合わせを含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、美白組成物は、エッセンス、エッセンスクリーム、アイクリーム、フェイスクリーム、ハンドクリーム、乳液、マスク液、化粧水、日焼け止め、又はバリアクリームであるが、これらに限定されない。
【0028】
幾つかの実施形態において、美白組成物はエッセンスであり、エッセンスは、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとのアルコール抽出物、保湿剤、溶剤、及び増粘剤を含む。幾つかの実施形態において、エッセンスは、スキンコンディショナー、抗酸化剤、乳化剤、香料、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、美白組成物はアイクリームであり、アイクリームは、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとのアルコール抽出物、保湿剤、溶剤、乳化剤、及びエモリエント剤を含む。幾つかの実施形態において、アイクリームは、スキンコンディショナー、酸化防止剤、乳化安定剤、増粘剤、香料、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、美白組成物は乳液であり、乳液は、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとのアルコール抽出物、保湿剤、溶剤、乳化剤、及びエモリエント剤を含む。幾つかの実施形態において、乳液は、スキンコンディショナー、酸化防止剤、乳化安定剤、増粘剤、エッセンス、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、美白組成物はマスク液であり、マスク液は、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとのアルコール抽出物、保湿剤、溶剤、及び増粘剤を含む。幾つかの実施形態において、マスク液は、スキンコンディショナー、酸化防止剤、乳化剤、香料、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、美白組成物は化粧水であり、化粧水は、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとのアルコール抽出物、保湿剤、及び溶剤を含む。幾つかの実施形態において、化粧水は、スキンコンディショナー、酸化防止剤、乳化剤、香料、又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0033】
美白組成物の製造方法は、第1アルコール液体で桑白皮を抽出し、桑白皮アルコール抽出物を得る工程と、第2アルコール液体でカキドオシを抽出し、カキドオシアルコール抽出物を得る工程と、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出し、ギンコウボクアルコール抽出物を得る工程と、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、ギンコウボクアルコール抽出物、保湿剤、及び溶剤を混合して美白組成物を形成する工程とを含む。幾つかの実施形態において、桑白皮、カキドオシ、及びギンコウボクの抽出工程を同時に行い、且つ第1、第2及び第3アルコール液体は同じである。幾つかの実施形態において、桑白皮、カキドオシ、及びギンコウボクの総重量と全てのアルコール液体との重量比は、1:10~1:20であり、言い換えれば、固液比は、1:10~1:20であり、例えば、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18、又は1:20である。幾つかの実施形態において、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの重量比は、100~250:1~20:1~20である。幾つかの実施形態において、桑白皮の重量は、カキドオシの重量よりも大きい。幾つかの実施形態において、カキドオシの重量は、ギンコウボクの重量よりも大きい。例えば、桑白皮の抽出率は約4.0%、カキドオシの抽出率は約6.5%、ギンコウボクの抽出率は約20.0%である。
【0034】
幾つかの実施形態において、桑白皮と第1アルコール液体との重量比は、1:10~1:20であり、例えば、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18、又は1:20である。カキドオシと第2アルコール液体との重量比は、1:10~1:20であり、例えば、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18、又は1:20である。ギンコウボクと第3アルコール液体との重量比は、1:10~1:20であり、例えば、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18、又は1:20である。
【0035】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体、第2アルコール液体、及び第3アルコール液体は、それぞれ炭素数が1~10のアルコール、例えば、炭素数が1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアルコールを含む。幾つかの実施形態において、アルコールは、一価アルコール、二価アルコール、又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、第1アルコール液体、第2アルコール液体、及び第3アルコール液体は、それぞれ、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、3-メチルブタノール、2-メチルブタノール、2,2-ジメチルプロパノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体は、第1アルコール及び溶剤を含む。溶剤は、例えば水であるが、これに限定されない。幾つかの実施形態において、第1アルコール液体は、アルコールのみを含む。幾つかの実施形態において、第2アルコール液体は、第2アルコール及び溶剤を含む。溶剤は、例えば水であるが、これに限定されない。幾つかの実施形態において、第2アルコール液体は、アルコールのみを含む。幾つかの実施形態において、第3アルコール液体は、第3アルコール及び溶剤を含む。溶剤は、例えば水であるが、これに限定されない。幾つかの実施形態において、第3アルコール液体は、アルコールのみを含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体は第1アルコールを含み、第1アルコールの体積パーセント濃度は50%~100%、例えば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100%である。第2アルコール液体は第2アルコールを含み、第2アルコールの体積パーセント濃度は50%~100%であり、例えば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100%である。第3アルコール液体は第3アルコールを含み、第3アルコールの体積パーセント濃度は50%~100%であり、例えば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100%である。
【0038】
幾つかの実施形態において、第1アルコール液体で桑白皮を、第2アルコール液体でカキドオシを、第3アルコール液体でギンコウボクを、それぞれ温度20℃~70℃、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70℃で抽出する。幾つかの実施形態において、第1アルコール液体で桑白皮を抽出する時間は、12時間~96時間であり、例えば、12、24、36、48、60、72、84又は96時間である。幾つかの実施形態において、第2アルコール液体でカキドオシを抽出する時間は、12時間~96時間であり、例えば、12、24、36、48、60、72、84又は96時間である。幾つかの実施形態において、第3アルコール液体でギンコウボクを抽出する時間は、12時間~96時間であり、例えば、12、24、36、48、60、72、84、96時間である。上記温度範囲及び/又は抽出時間範囲であれば、桑白皮、カキドオシ、及びギンコウボク中の美白成分を効果的に抽出することができ、それにより抗酸化、抗炎症、及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する混合植物抽出物を得る。
【0039】
以下、実験例1~9を参照しながら、本開示の特徴をより具体的に説明する。以下の実施例を説明するが、使用する材料、その量や割合、処理内容、処理フロー等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更してよい。したがって、本開示は、以下に示す実施形態によって限定的に解釈されるべきではない。
【0040】
実験例1:植物アルコール抽出物の作製
【0041】
比較例1において、桑白皮アルコール抽出物の作製方法は、桑白皮を粉砕乾燥した後、桑白皮と体積パーセント濃度95%のアルコールとを、1:15の固液比で混合する工程と、桑白皮を室温(25℃)で浸漬して、72時間撹拌する工程と、固液分離を行い、濾液を濃縮した後、凍結乾燥を行い、比較例1の桑白皮アルコール抽出物を得る工程とを含む。
【0042】
比較例2において、桑白皮アルコール抽出物の作製方法は、乾燥したカキドオシ全草と体積パーセント濃度95%のアルコールとを、1:15の固液比で混合する工程と、カキドオシを室温(25℃)で浸漬して、72時間撹拌する工程と、固液分離を行い、濾液を濃縮した後、凍結乾燥を行い、比較例2のカキドオシアルコール抽出物を得る工程とを含む。
【0043】
比較例3において、桑白皮アルコール抽出物の作製方法は、乾燥したギンコウボクと体積パーセント濃度95%のアルコールとを、1:15の固液比で混合する工程と、ギンコウボクを室温(25℃)で浸漬して、72時間撹拌する工程と、固液分離を行い、濾液を濃縮した後、凍結乾燥を行い、比較例3のギンコウボクアルコール抽出物を得る工程とを含む。
【0044】
実施例1において、桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物を作製する方法は、乾燥した桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとを、220:8:1の重量比で粉砕機で粉砕し、植物片を得る工程と、植物片と体積パーセント濃度95%のアルコールとを、1:15の固液比で混合する工程と、植物片を室温(25℃)で浸漬して、72時間撹拌する工程と、固液分離を行い、濾液を濃縮した後、凍結乾燥を行い、実施例1の桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物を得る工程とを含む。桑白皮の抽出率は約4.0%、カキドオシの抽出率は約6.5%、ギンコウボクの抽出率は約20.0%である。桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとのアルコール抽出物の重量比は約44:2.6:1である。
【0045】
実験例2:チロシナーゼ活性抑制試験
【0046】
実験例2において、実施例1の桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物及びコジ酸(kojic acid)のそれぞれの、チロシナーゼ活性に対する抑制効果を試験する。試験結果は以下の表1に示される。
【表1】
【0047】
チロシナーゼが皮膚にメラニンが生じる過程における肝心な酵素であるため、チロシナーゼの活性を効果的に低下させることにより、メラニンの生成を減少させ、皮膚の美白効果を達成することができる。コジ酸は公知の市販美白成分であり、表1から分かるように、実施例1の抽出物のIC50の数値はコジ酸のIC50の数値より低く、それは実施例1の抽出物のチロシナーゼへの抑制効果が高いことを示す。したがって、実施例1の抽出物のメラニンへの抑制効果は、コジ酸のメラニンへの抑制効果より優れている。具体的には、実施例1の抽出物の抑制効果は、コジ酸の抑制効果の5倍である。
【0048】
実験例3:抗酸化試験、抗炎症試験、及びチロシナーゼ活性抑制試験
【0049】
実験例3において、上記比較例1、比較例2、比較例3、及び実施例1の抽出物に、水溶性抗酸化試験、脂溶性抗酸化試験、炎症性メラニン促進因子PGE2の抑制試験、及びチロシナーゼの抑制試験を行う。試験結果は以下の表2に示される。
【0050】
水溶性抗酸化試験は、以下の工程を含む。まず、等体積の2,2-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid;ABTS)(14mM)と過硫酸カリウム(4.9mM)とでABTSラジカル溶液を調製し、そして溶液を室温で16時間遮光保存する。ABTSは、酸化剤の作用によって酸化されて緑色のABTSとなり、抗酸化物が存在する場合、ABTSの生成が抑制され、ABTSの734nmでの吸光度を測定すれば、サンプルの総合抗酸化能力を算出することができる。ABTSラジカル溶液を使用する前に、この溶液を約0.7のOD734吸光値になるまで希釈する。試験方法としては、濃度7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500又は1000μg/mLの実施例1の抽出物溶液100μL、又は濃度7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500又は1000μg/mLの比較例1~比較例3の抽出物溶液100μLを、100μLのABTSラジカル溶液を含有する96ウェルマイクロプレートに添加する。反応が20分経過した後、SpectraMax M2多機能マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を用いてOD734で吸光度値を記録する。
【0051】
脂溶性抗酸化試験は以下の工程を含む。濃度7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500又は1000μg/mLの実施例1の抽出物溶液50μL、又は濃度7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500又は1000μg/mLの比較例1~比較例3の抽出物溶液50μLを、150μLの1、1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジン(di(phenyl)-(2,4,6-trinitrophenyl)iminoazanium;DPPH)(200μM)を含有する96ウェルマイクロプレートに添加する。反応が15分経過した後、SpectraMax M2多機能マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を用いて515nmの波長で吸光度値を記録する。
【0052】
炎症性メラニン促進因子PGE2の抑制試験は、以下の工程を含む。まず、HaCaT細胞を12ウェル培養プレート(1.5×105/ウェル)に播種し、18時間~20時間培養して、それを安定に付着生長させる。翌日、濃度7.8、15.6、31.3、62.5、125、250又は500μg/mLの実施例1の抽出物溶液、又は濃度7.8、15.6、31.3、62.5、125、250又は500μg/mLの比較例1~3の抽出物溶液を培養プレートに加えて12時間反応させた後、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)(10ng/mL)でインターフェロン-γ(IFNγ)(100U/mL)と48時間反応させ、最後に上清を収集して、PGE2 ELISA(R&D Systems)で含有量を測定する。
【0053】
チロシナーゼ抑制試験は、以下の工程を含む。本試験は96ウェルマイクロプレートで行う。まず、チロシナーゼ溶液(10Uをリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline;PBS)に)50μLと、濃度0.975、1.95、3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500又は1000μg/mLの実施例1の抽出物溶液50μL、又は濃度0.975、1.95、3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500又は1000μg/mLの比較例1~3の抽出物溶液50μLとを混合した後、37℃で15分反応させ、そしてその最終濃度が1mMになるまでチロシン溶液100μLを添加する。反応が15分経過した後、SpectraMax M2多機能マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を用いて492nmの波長で吸光度値を記録し、それによりチロシナーゼの活性及び試験物質の抑制活性を評価する。
【表2】
【0054】
以上の表2に示すように、実施例1の抽出物は、抗酸化、抗炎症、及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する。実施例1の抽出物は、比較例1、比較例2及び比較例3の抽出物に比べて、より全面的な美白効果を有する。
【0055】
実験例4:安全性評価
【0056】
本実験例は、インビトロバイオニックスキンプラットフォームで安全性評価試験を行い、実施例1の抽出物に皮膚刺激性試験及び眼刺激性試験を行う。
【0057】
皮膚刺激性試験は、以下の工程を含む。本試験は、OECD TG 439に認められたEpiDermTM SIT(EPI-200-SIT)ヒト皮膚モデルに基づいて行う。試験に際して、実施例1の抽出物を最終濃度が2wt%になるようにグリセリンに溶解した後、そのまま皮膚モデルの表面の一部に塗布し、60分間の反応を経たら洗浄し、皮膚モデルを42時間培養し、最後に細胞生存率分析(MTT assay)で実施例1又は陽性対照群(5wt%SDS)の細胞活性に対する作用を評価する。刺激性の評価基準は、UN GHS(タイプ2)に基づき、細胞生存率≦50%の場合は皮膚刺激性を有すると見なす。試験結果は図1を参照されたい。図1は本開示の実施例1、対照群、及び陽性対照群の皮膚刺激性試験結果である。実験データは平均値±標準偏差(mean±SD)で表し、サンプル数はそれぞれ3とする。
【0058】
眼刺激性試験は、以下の工程を含む。本試験は、OECD TG 492に認められたEpiOcularTM EIT(OCL-200ーEIT)ヒト角膜上皮モデルに基づいて試験する。試験に際して、実施例1の抽出物を最終濃度が2wt%になるようにグリセリンに溶解した後、そのまま角膜上皮モデルの表面の一部に塗布し、30分間の反応を経たら洗浄し、上皮モデルを120時間培養し、最後に細胞生存率分析(MTT)で実施例1又は陽性対照群(5wt%酢酸メチル(Methyl acetate))の細胞活性に対する作用を評価する。刺激性の評価基準は、UN GHS(タイプ2:刺激性又は分類なし(Irritant or No Category))に基づき、細胞生存率≦60%の場合は眼刺激性を有すると見なす。試験結果は図2を参照されたい。図2は本開示の実施例1、対照群、及び陽性対照群の眼刺激性試験結果である。実験データは平均値±標準偏差(mean±SD)で表し、サンプル数はそれぞれ2とする。
【0059】
皮膚刺激性試験の結果、図1に示すように、対照群の生存率は100.0±3.0%であり、実施例1の生存率は74.5±5.9%であり、陽性対照群は3.2±0.3%である。眼刺激性試験の結果、図2に示すように、対照群の生存率は100.0±0.9%、実施例1の生存率は104.9±2.8%、陽性対照群は36.1±1.1%である。図1及び図2から明らかなように、実施例1の抽出物は、皮膚刺激性試験及び眼刺激性試験のいずれにおいても無刺激性を示す。
【0060】
実験例5:エッセンス作製及びヒト皮膚美白効果試験
【0061】
エッセンスの成分及び含有量の範囲、及び実施例2のエッセンスの各成分の含有量は、以下の表3を参照されたい。桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物の作製プロセスは、前述の実施例1を参照されたい。
【表3】
【0062】
上記含有量範囲又は実施例2のエッセンスの成分含有量で作製されたエッセンスは、優れた抗酸化、抗炎症及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する。美白効果については、上記実施例2のエッセンスを、エチルビタミンC(3-o-ethyl ascorbic acid)及びサリチル酸(Salicylic acid)を含む市販の美白製品と比較する。複数のボランティアをランダムに2グループに分け、各グループにおける女性の人数:男性の人数が6:1であり、単盲検試験を行う。ボランティアは毎朝と夕方に洗顔後、適量の試験物質を取り、4週間(28日間)顔全体に塗布する。ボランティアは、試験期間の0日目、7日目、14日目及び28日目にVISIA肌質検査(VISIA skin analysis)を受ける。ボランティアは、同じ洗顔料とメイク落とし製品を使用した後、温度20℃~25℃、湿度50±10%RHの肌質検査室で15分間待ち、その後、第7世代のVISIA肌質検査用の肌質検査装置(メーカー:Canfield Scientific)を使用して皮膚を撮影する。撮影条件は、肌質検査室内の照明が完全に明るく、肌質検査室の外部光源を布製のカーテンで遮光する。バージョン8.5.2のVISIA肌質検査分析ソフトで表層シミ、中層シミ(紫外線シミ)、及び深層シミ(ブラウンシミ)のデータを分析する。
【0063】
図3は、本開示の実施例のエッセンス及び市販の美白製品の表層シミ改善結果である。棒310は実施例2のエッセンスの試験結果であり、棒320は市販の美白製品の試験結果である。図3に示すように、市販の美白製品を7日間使用した結果、ボランティアの表層シミは、-7.8%のマイナス改善度を示し、実施例2のエッセンスを7日間使用した結果、ボランティアの表層シミは、7.1%の改善度を示し、28日間使用した結果、ボランティアの表層シミは、3.0%の改善度を維持する。図4は、本開示の実施例のエッセンス及び市販の美白製品の中層シミ改善結果である。棒410は実施例2のエッセンスの試験結果であり、棒420は市販の美白製品の試験結果である。図4に示すように、市販の美白製品を7日間使用した結果、ボランティアの中層シミは、-0.68%のマイナス改善度を示し、実施例2のエッセンスを7日間使用した結果、ボランティアの中層シミは、4.9%の改善度を受け、28日間使用した結果、ボランティアの中層シミは、0.5%の改善度を維持する。図5は、本開示の実施例のエッセンス及び市販の美白製品の深層シミ改善結果である。棒510は実施例2のエッセンスの試験結果であり、棒520は市販の美白製品の試験結果である。図5に示すように、市販の美白製品を7日間使用した結果、ボランティアの深層シミは、0.7%のマイナス改善度を示し、実施例2のエッセンスを7日間使用した結果、ボランティアの深層シミは、10.8%の改善度を受け、28日間使用した結果、ボランティアの深層シミは、7.9%の改善度を維持する。図3図5から分かるように、市販の美白製品とは別に、実施例2のエッセンスは、表皮層の表層、中層及び深層のメラニンによるシミを効果的且つ顕著に軽減することができる。
【0064】
実験例6:アイクリームの作製
【0065】
アイクリームの成分及び含有量の範囲、及び実施例3のアイクリームの各成分の含有量を以下の表4を参照されたい。桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物の作製プロセスは、前述の実施例1を参照されたい。
【表4-1】
【表4-2】
【0066】
上記含有量範囲又は実施例3のアイクリームの成分含有量で作製されたアイクリームは、優れた抗酸化、抗炎症及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する。
【0067】
実験例7:乳液の作製
【0068】
乳液の成分及び含有量の範囲、及び実施例4の乳液の各成分の含有量は、以下の表5を参照されたい。桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物の作製プロセスは、前述の実施例1を参照されたい。
【表5】
【0069】
上記含有量範囲又は実施例4の乳液の成分含有量で作製された乳液は、優れた抗酸化、抗炎症及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する。
【0070】
実験例8:マスク液の作製
【0071】
マスク液の成分及び含有量の範囲、及び実施例5のマスク液の各成分の含有量は、以下の表6を参照されたい。桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物の作製プロセスは、前述の実施例1を参照されたい。
【表6】
【0072】
上記含有量範囲又は実施例5のマスク液の成分含有量で作製されたマスク液は、優れた抗酸化、抗炎症及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する。
【0073】
実験例9:化粧水の作製
【0074】
化粧水の成分及び含有量の範囲、及び実施例6の化粧水の各成分の含有量は、以下の表7を参照されたい。桑白皮と、カキドオシと、ギンコウボクとの混合アルコール抽出物の作製プロセスは、前述の実施例1を参照されたい。
【表7】
【0075】
上記含有量範囲又は実施例6の化粧水の成分含有量で作製された化粧水は、優れた抗酸化、抗炎症及びチロシナーゼ活性抑制の三重美白効果を有する。
【0076】
以上より、本開示は、3種の植物アルコール抽出物を含む美白組成物及びその製造方法を提供する。植物アルコール抽出物は、桑白皮アルコール抽出物、カキドオシアルコール抽出物、及びギンコウボクアルコール抽出物を含む。これらの植物アルコール抽出物は、優れた抗酸化性及び抗炎症性を有し、且つチロシナーゼ活性抑制に有効であるため、皮膚の表層シミ、中層シミ、及び深層シミを軽減するために共に働くことができる。本開示の美白組成物は、優れた美白効果を有し、目及び皮膚に刺激を与えにくい。
【0077】
本開示を幾つかの実施形態に基づいて詳細に説明したが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書の実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0078】
当然ながら、当業者にとって、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示の構成に対して様々な修正や変更を行うことができる。以上の内容に鑑み、本開示は、添付の特許請求の範囲に入る本開示の修正及び変更を網羅することを意図する。
【符号の説明】
【0079】
310、320、410、420、510、520 棒
図1
図2
図3
図4
図5