(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155685
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂フィルム、粘着フィルム、半導体製造工程用粘着フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181602
(22)【出願日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2023070421
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03B
4F100AK05
4F100AK05A
4F100AK05B
4F100AK05C
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK12
4F100AK12B
4F100AK63
4F100AL09
4F100AL09B
4F100AR00D
4F100BA03
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4F100BA06
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4F100GB41
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4F100JL11D
4F100JN01
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4F100JN02A
4F100JN02B
4F100JN02C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な外観と十分な耐熱性と透明性、取扱い性および柔軟性を有し、且つフィルム同士のブロッキングの抑制された熱可塑性樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】押出溶融樹脂を金属ロールおよびゴムロールでニップして得られる両外層及び中間層を有する熱可塑性樹脂フィルムが以下の要件を満たす。
(1)金属ロール側の層の熱可塑性樹脂量100質量%中の高密度ポリエチレンが20~90質量%、ホモポリプロピレンが10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層の熱可塑性樹脂量100質量%中の高密度ポリエチレンが3~15質量%、ホモポリプロピレンが10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンから選択される少なくとも1種が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出された溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして得られる両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、
中間層に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、且つ、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
以下の要件を満たすことを特徴とする、該熱可塑性樹脂フィルム。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーおよび/又はオレフィン系エラストマーである請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルムのヘイズが50%以下である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムの引張弾性率が100~600MPaの範囲内である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を設けてなる粘着フィルム。
【請求項6】
半導体製造工程に用いられる請求項5に記載の半導体製造工程用粘着フィルム。
【請求項7】
両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
該製造方法は、押出された溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして前記熱可塑性樹脂フィルムを得ることを含み、
押出された溶融樹脂をニップする際に用いられる金属製ロールおよびゴム製ロールの表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下であり、
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物は、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、
中間層は、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、且つ熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
前記熱可塑性樹脂フィルムは以下の要件を満たす、当該製造方法。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
【請求項8】
ゴム製ロールの表面がシリコーン樹脂製もしくはフッ素樹脂製であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)等の基材として好適に用いられる熱可塑性樹脂フィルム、当該フィルムに粘着剤層を設けた粘着フィルム、当該フィルムからなる半導体製造工程用粘着フィルム、及び当該熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されてきた。
【0003】
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0004】
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着フィルムが用いられており、上記のような問題からポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している(例えば特許文献1)。
【0005】
近年、半導体素子の小型化・薄型化が進み、フィルムに取扱い性やエキスパンド時に求められる柔軟性だけでなく、チップの破損やエキスパンド時のチップの紛失を抑制するために、ウエハと粘着フィルムを加熱して貼り合わせより強固に密着させる、ダイシング後のエキスパンド工程を加熱して行うといった、加熱する工程が想定されることから、半導体製造工程用フィルムに耐熱性も求められるケースがある。
また、回転するブレードを用いたブレードダイシング以外にも、レーザー光を照射することで半導体ウエハの一部を改質し、半導体ウエハを引き延ばすことでウエハを分割するレーザーダイシング、ステルスダイシングといった工程への適用も求められるケースがある。このようなレーザー光を用いる工程では、半導体製造工程用フィルムやテープ越しにレーザー光を照射するケースがあり、そのような場合にレーザー光の散乱を防ぎ、精度よくウエハに集光させるために、透明性の高いフィルムが求められる傾向にある。
【0006】
特許文献2には、低温でもエキスパンド性を維持するためにポリエチレン系樹脂を用いたダイシング用基体フィルムが開示されている。
特許文献3には、帯電防止性能の付与および柔軟性と耐熱性に優れた半導体製造工程用基材フィルムが開示されている。
特許文献4には、表面粗さが小さく、透明性に優れるダイシングシートが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のフィルムには比較的融点の低いポリエチレン系樹脂のみが使用されており、低温のエキスパンド性には優れると思われるものの、耐熱性には改善の余地があると考えられる。また、特許文献3に記載されているフィルムでは、帯電防止性能や耐熱性には優れるものの、表面粗さの小さい透明性の高いフィルムを得る際の、フィルム同士のブロッキングによる不具合の抑制の観点から改善の余地があった。
特許文献4に記載のシートには、表面粗さが小さく、透明性に優れるフィルムの記載があるもの、こちらも特許文献3に記載のものと同様にブロッキングによる不具合の抑制の観点と、それに加えて樹脂の耐熱性の観点からも改善の余地があるものと推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09-008111号公報
【特許文献2】特開2018-125521号公報
【特許文献3】特開2020-84143号公報
【特許文献4】特許6980684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みて、半導体製造工程において加熱を行う工程やレーザー光の散乱の抑制を求められる場合に、表面粗さの小さく且つ透明性も高く、十分な耐熱性を有する外観の良好なフィルムを提供し、さらに、当該フィルムを取り扱う際のフィルム同士のブロッキングを抑制でき、取扱い性や柔軟性にも優れる熱可塑性樹脂フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、該熱可塑性樹脂フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、フィルム製造時に押出される溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして得られる熱可塑性樹脂フィルムの各層に特定の樹脂組成物を用いることで、耐熱性、取扱い性、柔軟性に加え、表面粗さの小さく透明性の高く、フィルム同士のブロッキングの抑制された外観の良好な熱可塑性樹脂フィルムを得ることが可能となる熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
押出された溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして得られる両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、
中間層に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、且つ、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
以下の要件を満たすことを特徴とする、該熱可塑性樹脂フィルム。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
[2]
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーおよび/又はオレフィン系エラストマーである[1]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[3]
前記熱可塑性樹脂フィルムのヘイズが50%以下である[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[4]
前記熱可塑性樹脂フィルムの引張弾性率が100~600MPaの範囲内である[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[5]
[1]~[4]のいずれか1項に請求の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を設けてなる粘着フィルム。
[6]
半導体製造工程に用いられる[5]に記載の半導体製造工程用粘着フィルム。
[7]
両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
該製造方法は、押出された溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして前記熱可塑性樹脂フィルムを得ることを含み、
押出された溶融樹脂をニップする際に用いられる金属製ロールおよびゴム製ロールの表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下であり、
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物は、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、
中間層は、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、且つ熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
前記熱可塑性樹脂フィルムは以下の要件を満たす、当該製造方法。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
[8]
ゴム製ロールの表面がシリコーン樹脂製もしくはフッ素樹脂製であることを特徴とする[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に記載の金属製ロールおよびゴム製ロールでニップする製造方法で特定の熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、半導体製造工程に加熱を行う工程やレーザー光の散乱の抑制を求められる場合でも、十分な耐熱性を有し、且つ表面粗さの小さく透明性の高く、さらにフィルム同士のブロッキングを抑制でき、取扱い性や柔軟性にも優れる外観の良好な熱可塑性樹脂フィルムを提供することが可能となる。
また、本発明により、金属製ロールとの密着性を抑制することが可能となり、合わせて空気の巻き込みに起因するフィルムの凹凸といった外観の不具合の発生も抑制することが可能となる熱可塑性樹脂フィルムを提供することが可能となる。
また、本発明は、該熱可塑性樹脂フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
1.熱可塑性樹脂フィルム
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、押出された溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして得られる両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、中間層に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、且つ、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、以下の要件を満たすことを特徴とする該熱可塑性樹脂フィルムである(以下「本発明の熱可塑性樹脂フィルム」とも言う)。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを構成する樹脂等について以下に詳述する。
【0016】
<高密度ポリエチレン>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、金属製ロールと接する側の外層および中間層のそれぞれを構成する樹脂組成物に高密度ポリエチレンを含有する。
金属製ロールと接する側の外層に高密度ポリエチレンを含有させることにより、表層および/もしくは裏層の弾性率を向上させ、さらにフィルム表裏の表面粗さが小さい場合でも、フィルムをロール状に巻き取った際のフィルム同士のブロッキングを抑制することが可能となる。さらに、高密度ポリエチレンを所定量用いることにより、金属製ロールとゴム製ロールでニップする成形方法でフィルムを得る際に、金属製ロールへ樹脂組成物が密着しすぎることを抑制することが可能となり、金属製ロールにフィルムが巻き付くことなく、フィルムを得ることが可能となる。また、金属ロールに樹脂組成物が密着する際に空気が巻き込まれ、巻き込まれた空気が気泡となり得られるフィルムの金属ロール側の面に気泡に起因する凹凸が生じることがある。この空気の巻き込みも、高密度ポリエチレンを所定量用いることにより、金属ロールとの密着が抑制され、空気の巻き込みも抑制されることから、気泡に起因する凹凸による外観の不具合も抑制することが可能となる。
【0017】
本熱可塑性樹脂フィルムの中間層にも高密度ポリエチレンを含有させることにより、高密度ポリエチレンを含有する外層との相溶性を向上させることが可能となり、中間層との密着性を向上させることが可能となる。
用いる高密度ポリエチレンに特に制限はなく、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体(以下、他の単量体)との共重合体から構成される高密度ポリエチレンを用いることができる。
他の単量体としては、例えば、炭素数が3以上のα-オレフィンが挙げられる。炭素数が3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。単量体の入手のし易さや得られる高密度ポリエチレンの性能の観点から、炭素数が3以上の中でも3~20の範囲内であることが好ましい。
【0018】
高密度ポリエチレンの密度としては、0.940~0.970g/cm3の範囲内であることが好ましい。密度が0.940~0.970g/cm3の範囲内の高密度ポリエチレンを用いることで、得られる熱可塑性樹脂フィルムの表層および/もしくは裏層、中間層の弾性率の調整が容易となる。より好ましくは0.942~0.968g/cm3の範囲内、さらに好ましくは0.944~0.966の範囲内である。なお、密度の測定方法としては、「JIS K 7112」に記載のA法(水中置換法)、B法(ピクノメーター法)、C法(浮沈法)、D法(密度勾配管法)が挙げられる。測定方法に特に制限は無く、適切なものを適宜選択して用いることができる。
【0019】
高密度ポリエチレンの結晶融解ピークとしては、120℃以上を示すことが好ましい。120℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られる熱可塑性樹脂フィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。結晶融解ピークの測定は、示差走査熱量計を用い、「JIS K 7122」に準じて求める方法が挙げられる。
【0020】
高密度ポリエチレンの強度については、高密度ポリエチレン単独で得られるフィルムの引張弾性率が600~1800MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が600~1800MPaの範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂フィルムに適度な強度と柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは650~1750MPaの範囲内、さらに好ましくは700~1700MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、「JIS K 7127」に記載の方法に準じて測定する方法が挙げられる。測定する際の試験片の形状、試験速度、チャック間の距離等の各種条件については、適切なものを選択して用いることができる。
【0021】
高密度ポリエチレンのメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。メルトフローレートの測定方法としては、「JIS K 7210」に記載の方法を上げることができる。測定の際の温度や荷重等の条件については、用いられる材料やその特性に応じ適宜選択することができる。
【0022】
高密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、ノバテックHD「HJ360」、ノバテックHD「HJ491」、ノバテックHD「HF560」、ノバテックHD「HY350」(以上、日本ポリエチレン社製)、サンテックHD「B161」、サンテックHD「J340」、サンテックHD「J241」(以上、旭化成社製)、ニポロンハード「4000」、ニポロンハード「2000」、ニポロンハード「2500」ニポロンハード「LW13D」(以上、東ソー社製)が挙げられる。これらの高密度ポリエチレンは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの耐熱性や柔軟性、フィルム同士のブロッキング等を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0023】
<ホモポリプロピレン>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、金属製ロールと接する側の外層および中間層のそれぞれを構成する樹脂組成物にホモポリプロピレンを含有する。
金属製ロールと接する側の外層にホモポリプロピレンを含有させることにより、当該層の弾性率を向上させつつ且つ耐熱性を付与することが可能となる。さらにフィルム表裏の表面粗さが小さい場合でも、フィルムをロール状に巻き取った際のフィルム同士のブロッキングを抑制することが可能となる。
また、中間層にもホモポリプロピレンを含有させることにより、ホモポリプロピレンを含有する外層との相溶性を向上させることが可能となり、中間層との密着性を向上させることが可能となる。
本発明で用いられるホモポリプロピレンとは、プロピレンの単独重合体である。
【0024】
ホモポリプロピレンの結晶融解ピークとしては、140℃以上を示すことが好ましい。140℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られる複層フィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。結晶融解ピークの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
ホモポリプロピレンの強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が600~1800MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が600~1800MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な強度を付与することが可能となる。より好ましくは650~1750MPaの範囲内、さらに好ましくは700~1700MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
ホモポリプロピレンのメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。メルトフローレートの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0025】
ホモポリプロピレンの市販品としては、例えば、ノバテックPP「MA3U」、ノバテックPP「FY6HA」(以上、日本ポリプロ社製)、PC412A、PC600A、PC600S、PLA00A(以上、サンアロマー社製)、F-730NV、F-744NP(以上、プライムポリプロ社製)、住友ノーブレン「WF836DG3」、住友ノーブレン「FLX80H5」(以上、住友化学社製)等が挙げられる。
ホモポリプロピレンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの耐熱性や柔軟性、フィルム同士のブロッキング等を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0026】
<熱可塑性エラストマー>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの中間層には、前述した高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンに加えて、熱可塑性エラストマー及びランダムプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種が必須成分として含まれる。熱可塑性エラストマーを含有させることにより、得られるフィルムに柔軟性やエキスパンド性を適切な範囲に調整することが可能となる。
【0027】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーの中でも、前述した高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンとの相溶性や得られるフィルムへの柔軟性の付与、透明性の観点から、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーのそれぞれを単独で用いてもよいし、熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性を考慮し、それぞれを併用して用いても良い。また、オレフィン系エラストマーを2種類以上、スチレン系エラストマーを2種類以上といった複数の種類を用いても良い。中でも柔軟性の調整の観点から、オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーを併用して用いることがより好ましい。
【0028】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0029】
オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、ウェルネクス「RFG4VM」、ウェルネクス「RFX4V」、ウェルネクス「RMG02」(以上、日本ポリプロ社製)、タフマー「A-4070S」、タフマー「A-4085S」、タフマー「BL2481M」、タフマー「BL3450M」、タフマー「XM7070」、タフマー「XM7080」、ミラストマー(以上、三井化学社製)、ENGAGE、AFFINITY、VERSIFY(以上、ダウケミカル社製)等を挙げることができる。
オレフィン系エラストマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性、フィルム同士のブロッキング等を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0030】
オレフィン系エラストマーの強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が30~400MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が30~400MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは30~300MPaの範囲内、さらに好ましくは30~200MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0031】
オレフィン系エラストマーのメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。メルトフローレートの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0032】
スチレン系エラストマーとしては、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロック(以下、スチレン成分)で、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0033】
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
【0034】
スチレン系エラストマーのメルトフローレート(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~20g/10分であることが好ましく、0.15~15g/10分であることがより好ましく、0.2~10g/10分であることが特に好ましい。スチレン系エラストマーのメルトフローレートが0.1g/10分以上、20g/10分以下であれば、他樹脂との相溶性がよく、製膜性の点で好ましい。メルトフローレートの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0035】
スチレン系エラストマーにおけるスチレン成分の含有量は50質量%以下であることが好ましい。スチレン成分の含有量が50質量%以下であれば、得られるフィルムに柔軟性を付与することが可能となる。好ましくは47質量%以下、より好ましくは44質量%以下である。
【0036】
スチレン成分の含有量およびそれ以外の成分の含有量は、1H-NMRや13C-NMRを用いることにより測定することができる。ここで、「スチレン成分の含有量」とは、スチレン系エラストマーの質量を基準としてスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックの含有割合(質量%)をいう。
【0037】
スチレン成分の含有量が50質量%以下であるスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフテックH1221、タフテックH1062、タフテックH1521、タフテックH1517、タフテックH1052、タフテックH1041、タフテックP1083、タフテックP1913、P5051(以上、旭化成社製)、セプトン2004F、セプトン2063、ハイブラー7311、ハイブラー7311F、ハイブラー7125F、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、クラレ社製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、ダイナロン8300P、ダイナロン8903P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
【0038】
上記スチレン系エラストマーは、1種類のエラストマーを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0039】
得られる熱可塑性樹脂フィルムの柔軟性や製膜性を調整することが容易となり、さらにウエハをブレードで切削する際に発生する切削屑の低減を可能することが容易となることから、オレフィン系エラストマーとスチレン系エラストマーを併用することが好ましい。
【0040】
<ランダムポリプロピレン>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの中間層には、前述した高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンに加えて、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種が必須成分として含まれる。ランダムポリプロピレンを含有させることにより、得られるフィルムに柔軟性やエキスパンド性を適切な範囲に調整することが可能となる。
【0041】
ランダムポリプロピレンとしては、例えば、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他の単量体としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。
【0042】
ランダムポリプロピレンの結晶融解ピークとしては、110℃以上を示すことが好ましい。110℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られる熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性の調整を行うことが容易となる。より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。結晶融解ピークの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0043】
ランダムポリプロピレンの強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が200~800MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が200~800MPaの範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂フィルムに適度な強度と柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは200~700MPaの範囲内、さらに好ましくは200~600MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0044】
ランダムポリプロピレンのメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。メルトフローレートの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0045】
ランダムポリプロピレンの市販品としては、例えば、ノバテックPP「FW4BA」、ノバテックPP「FX3B」(以上、日本ポリプロ社製)、PC630A、PC630S(以上、サンアロマー社製)、F-730NV、F-744NP(以上、プライムポリプロ社製)、住友ノーブレン「FL6737」、住友ノーブレン「S131」(以上、住友化学社製)等が挙げられる。
【0046】
<その他の熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレン以外にも耐熱性や柔軟性を損なわない範囲でその他の熱可塑性樹脂を添加することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。
【0047】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性と耐熱性の調整が容易であるとの観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0048】
低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の密度としては、0.900~0.940g/cm3の範囲内であることが好ましい。密度が0.900~0.940g/cm3の範囲内のものを用いることで、得られる熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性や柔軟性の調整が容易となる。より好ましくは0.902~0.938g/cm3の範囲内、さらに好ましくは0.904~0.936の範囲内である。密度の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0049】
低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の結晶融解ピークとしては、70℃以上を示すことが好ましい。70℃以上の結晶融解ピークを有することで、得られる熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性の調整を行うことが容易となる。より好ましくは75℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。結晶融解ピークの測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0050】
低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が30~400MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が30~400MPaの範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの柔軟性の調整が容易となる。より好ましくは40~350MPaの範囲内、さらに好ましくは50~300MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0051】
低密度ポリエチレン(LDPE)の市販品としては、例えば、ノバテックLD「LC500」、ノバテックLD「LC520」、ノバテックLD「LC720」(以上、日本ポリエチレン社製)、F224N、F324C、F522N(以上、宇部丸善ポリエチレン社製)等が挙げられる。
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の市販品としては、例えば、ノバテックLL「UF420」、ノバテックLL「UF641」(以上、日本ポリエチレン社製)、ユメリット「0540F」、ユメリット「4040F」(以上、宇部丸善ポリエチレン社製)等が挙げられる。
【0052】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0053】
ポリメチルペンテン系樹脂としては、メチルペンテンをモノマーとする単独重合体またはその他のモノマーとの共重合体を用いることが好ましい。具体例としては、ポリプロピレン系樹脂についてプロピレンと共重合可能な他の単量体として例示したα-オレフィンと4-メチルペンテン-1との共重合体を挙げることができる。
ポリメチルペンテン系樹脂が、共重合体である場合は、共重合に用いられるα-オレフィン成分の含有量が20質量%以下であることが好ましい。20質量%以下とすることで、結晶融解ピークの低下を抑制することが可能となる。より好ましくは10質量%以下である。
【0054】
<その他の成分>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには帯電防止性や耐熱性、耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0055】
高分子型帯電防止剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成しているものを挙げることができる。
【0056】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0057】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0058】
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0059】
<熱可塑性樹脂フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムであって、金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、中間層に高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、且つ熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、以下の要件を満たすことを特徴とする、該熱可塑性樹脂フィルムである。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
【0060】
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂全体の質量は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、及び任意に含まれ得る前述した熱可塑性エラストマーやランダムポリプロピレン、その他の熱可塑性樹脂(以下「その他の熱可塑性樹脂」とも言う)の質量を合わせた総質量を意味し、当該熱可塑性樹脂全体の質量を100質量%として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、その他の熱可塑性樹脂の含有量が規定される。
【0061】
ここで、金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物中の高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、その他の熱可塑性樹脂の含有量としては、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%であると規定できる(高密度ポリエチレンとホモポリプロピレンとその他の熱可塑性樹脂の合計質量を100質量%とする)。
また、中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂全体の質量は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレン及び任意に含まれ得る前述したその他の熱可塑性樹脂の質量を合わせた総質量を意味し、当該熱可塑性樹脂全体の質量を100質量%として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレン及びその他の熱可塑性樹脂の含有量が規定される。
ここで、中間層を構成する樹脂組成物中の高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレンやその他の熱可塑性樹脂の含有量としては、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂の含有量が0~40質量%であると規定できる(高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレンやその他の熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とする)。
【0062】
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物には、前述した高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンを所定量含有させることで、得られるフィルムの耐熱性や柔軟性の調整が可能となり、さらにフィルム同士のブロッキングを抑制することが可能となる。金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンが20~90質量%、ホモポリプロピレンが10~75質量%である。高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%の範囲内であることで、フィルムの耐熱性を損なうことなく柔軟性の付与が可能となり、さらにフィルム同士のブロッキング性を良好なものとすることが可能となる。また、前述した通り、金属製ロールとの密着性を抑制することが可能となり、合わせて空気の巻き込みに起因するフィルムの凹凸といった外観の不具合の発生も抑制することが可能となる。高密度ポリエチレンの含有量の好ましい範囲としては、25~85質量%の範囲内がより好ましく、30~80質量%の範囲内がさらに好ましい。
ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%の範囲内であることでフィルムに耐熱性を付与しつつ柔軟性も損なうことがなく、フィルム同士のブロッキング性を良好なものとすることが可能となる。ホモポリプロピレンの含有量の好ましい範囲としては、12~65質量%の範囲内がより好ましく、14~60質量%の範囲内がさらに好ましい。また、高密度ポリエチレンとホモポリプロピレンの合計量が、45質量%以上であることが好ましい。高密度ポリエチレンとホモポリプロピレンを45質量%以上とすることで、フィルムに耐熱性と柔軟性を付与することが可能となり、フィルム同士のブロッキング性を良好なものとすることが可能となる。より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上である。
【0063】
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物には、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンの他にも前述したその他の熱可塑性樹脂、その他の成分を含有させることも可能である。その他の熱可塑性樹脂を添加する場合は、柔軟性や耐熱性を損なう可能性があり、さらにフィルム同士のブロッキングが発生しやすくなる恐れがあることから、金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、0~30質量%の範囲内となるよう調整する必要がある。より好ましくは0~25質量%の範囲内、さらに好ましくは0~20質量%の範囲内である。
また、表層および裏層に用いられる樹脂組成物は、表層と裏層とを同一の樹脂組成物としてもよいし、異なる樹脂組成物としてもよい。得られるフィルムの耐熱性や柔軟性、フィルム同士のブロッキング性を損なうことがなければ、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、その他の熱可塑性樹脂を所定の量の範囲内で異なるものとすることが可能である。
【0064】
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物の硬さについては、その樹脂組成物単独で得られるフィルムの引張弾性率が500~1800MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が500~1800MPaの範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂フィルム同士のブロッキングを抑制することが容易となる。より好ましくは550~1750MPaの範囲内、さらに好ましくは600~1700MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0065】
両外層のうちゴム製ロールと接する側の層を構成する樹脂組成物については、金属製ロールと接する側の層を構成する樹脂組成物と同じ樹脂組成物を用いてもよいし、異なる樹脂組成物を用いてもよい。フィルム同士のブロッキング性や柔軟性、耐熱性といった熱可塑性樹脂フィルムの性能に影響が無い範囲で好ましい樹脂組成物とすることができる。ゴム製ロールのゴムの材質としては、後述するようにシリコーン樹脂製、フッ素樹脂製のものが好適に用いられることから、熱可塑性樹脂との密着性は金属製ロールに比べて劣る傾向にあり、金属製ロール側の外層と同様の樹脂組成物を用いるかどうかは得られるフィルムの性能や製膜のし易さの観点で選択することができる。表裏の性能の差を無くす必要がある場合は、両外層ともに同じ樹脂組成物とすることが好ましく、表裏で異なる性能が求められる場合は、両外層を異なる樹脂組成物とすることが好ましい。また、フィルム同士のブロッキング抑制の観点から、金属製ロールと接する側の層およびゴム製ロールと接する側の層のそれぞれを構成する樹脂組成物の双方ともが上記引張弾性率の範囲内であることが好ましい。
【0066】
中間層に用いられる樹脂組成物には、前述した高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を所定量含有させることで、耐熱性を維持しつつ、得られるフィルムの柔軟性を調整することが可能となり、さらに各層間の密着性を向上させることが可能となる。
高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレンの含有量としては、フィルムの中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂全体を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンが3~15質量%、ホモポリプロピレンが10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂の含有量が0~40質量%である。
高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%の範囲内であることで、フィルムの耐熱性と柔軟性を損なうことがなく、表裏層との密着性の付与が可能となる。高密度ポリエチレンの含有量の好ましい範囲としては、5~13質量%の範囲内がより好ましく、7~11質量%の範囲内がさらに好ましい。
ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%の範囲内であることでフィルムに耐熱性を付与することが可能となる。ホモポリプロピレンの含有量の好ましい範囲としては、13~47質量%の範囲内がより好ましく、16~44質量%の範囲内がさらに好ましい。
熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種のうち少なくとも1つの含有量が10~85質量%の範囲内であることでフィルムの柔軟性の調整が容易となる。熱可塑性エラストマーとランダムポリプロピレンの含有量の好ましい範囲としては、15~80質量%が好ましく、20~75質量%の範囲内がより好ましく、25~70質量%の範囲内がさらに好ましい。
本明細書において、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種のうち少なくとも1つの含有量が10~85質量%の範囲内にあるとは、熱可塑性エラストマーあるいはランダムポリプロピレンのいずれか1種が選択された場合には、当該1種の含有量が10~85質量%の範囲内である。熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンの2種以上が選択された場合には、当該2種以上の合計の含有量が10~85質量%の範囲内である。いずれの場合も本発明の範囲に含まれる。
また、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンの2種以上が選択された場合には、当該2種以上の少なくとも1種の含有量が10~85質量%の範囲内にあり、かつ、当該2種以上の合計の含有量が10質量%より大きく、85質量%以下の範囲内であることが好ましい。
当該2種以上の少なくとも1種の含有量が10~85質量%の範囲内にあり、かつ、当該2種以上の合計の含有量が10質量%より大きく、85質量%以下の範囲内にあることで、耐熱性と柔軟性の両立が容易となる。
また、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンの2種以上が選択された場合には、当該2種以上のそれぞれの含有量が10~85質量%の範囲内にあり、かつ、当該2種以上の合計の含有量が20~85質量%の範囲内であることがより好ましい。
当該2種以上の少なくとも1種の含有量が10~85質量%の範囲内にあり、かつ、当該2種以上の合計の含有量が20~85質量%以下の範囲内にあることで、耐熱性と柔軟性の両立させることがより容易となる。
中間層に用いられる樹脂組成物の強度については、その樹脂組成物単独で得られるフィルムの引張弾性率が30~600MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が30~600MPaの範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂フィルム同士の柔軟性を調整することが容易となる。より好ましくは40~550MPaの範囲内、さらに好ましくは50~500MPaの範囲内である。引張弾性率の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0067】
中間層に用いられる樹脂組成物には、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ランダムポリプロピレンの他にも前述したその他の熱可塑性樹脂、その他の成分を含有させることも可能である。その他の熱可塑性樹脂の含有量としては0~40質量%である。得られるフィルムの耐熱性や柔軟性の調整や製膜性の付与が必要な場合に、用いる樹脂を適宜選択して用いることができる。耐熱性や柔軟性を損なわない範囲で用いる量を調整することが可能であり、より好ましくは0~38質量%、さらに好ましくは0~36質量%である。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの基本的な構成としては、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有する金属製ロールと接する側の外層、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する中間層、ゴム製ロールと接する側の外層を備える少なくとも3層フィルムの構成である。
ここで、この少なくとも3層フィルムの構成において、両外層を構成する樹脂組成物は、前述した通り、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
また、中間層が2以上の多層から構成されていてもよい。その場合には、3層以上からなるフィルム構成も包含する。その際、2以上の多層からなる中間層の全ての層が、前述した高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を所定量含む層となることが必要となるが、各層を構成する樹脂組成物は同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フィルムの生産性や経済性の観点から、両外層、1層の中間層で構成される3層のフィルムであることが好ましい。その際、表層および裏層が同一の樹脂組成物から構成される2種3層のフィルム、表層および裏層が異なる樹脂組成物から構成される3種3層のフィルムのいずれとするかは、求められるフィルムの表裏それぞれの層の性能や用途、後述する粘着層や印刷層を設ける際の加工性を考慮し、適宜必要に応じて選択することができる。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの総厚みは、30~250μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好であり、且つ柔軟性や耐熱性を良好に保つことができ、250μm以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。本発明の熱可塑性樹脂フィルムの総厚みは、より好ましくは40~230μm、さらに好ましくは50~210μmである。
両外層のそれぞれの厚みは、熱可塑性樹脂フィルムの総厚みの1~30%の範囲内であることが好ましい。総厚みの1%以上とすることで、フィルム同士のブロッキングを抑制する効果を付与することが可能となり、30%以下とすることで、得られるフィルムの柔軟性を損なうことがなく好ましい。より好ましくは3~25%の範囲内、さらに好ましくは5~20%の範囲内である。両外層のそれぞれの厚みは、得られる熱可塑性樹脂フィルムの両外層のそれぞれに求められる性能や、フィルム同士のブロッキングを抑制できるものであれば、同一の厚みでも良く、異なるものとしてもよい。フィルムの生産性や経済性の観点から、両外層の厚みは同一とすることが好ましい。
【0070】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、表面の凹凸が小さく透明性の高いものであり、フィルムの両外層の表面粗さ(Ra)が0.5μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下であることを特徴とするフィルムである。ここで、表面粗さ(Ra)は、算術平均表面粗さ(Ra)とも言われる。
表面粗さ(Ra)が0.5μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下であることにより、表面が平滑に近く、透明性の高いフィルムとすることが可能となる。
表面粗さ(Ra)と最大高さ(Rz)のより好ましい値としては、表面粗さ(Ra)が0.4μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が2.5μm以下、さらに好ましい値としては、表面粗さ(Ra)が0.3μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が2.0μm以下である。
【0071】
両外層の表面粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)は、それぞれの層が同等程度となるよう調整してもよいし、上記の値の範囲内で異なる数値となるよう調整してもよい。異なる数値となるよう調整する場合は、どちらの層の数値を高く(低く)するかは用途や後述する粘着層や印刷層を設ける際の加工性を考慮し、適宜必要に応じて調整することができる。
【0072】
表面粗さ(Ra)や最大高さ(Rz)の測定方法としては、特に制限は無く公知の方法を用いることができる。例えば、JISB0601等に規定されている方法により、一般的に用いられている触針式や接触式、もしくは非接触式による表面粗さ計を使用することができる。
【0073】
熱可塑性樹脂フィルムの透明性としては、フィルムのヘイズが50%以下であることが好ましい。ヘイズが50%以下であれば、光源から照射されるレーザー光等の散乱が抑制でき、精度よくウエハに集光させることが可能となる。より好ましくは36%以下、さらに好ましくは32%以下である。さらに、全光線透過率が70%以上であることが好ましい。全光線透過率が70%以上であることで、フィルムを透過する際のレーザー光の減衰が抑制されるため好ましい。より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。
【0074】
全光線透過率はヘイズの測定方法としては、特に制限は無く公知の方法を用いることができる。例えば、JISK7361、JISK7136等に規定されている方法により、一般的に用いられている透過率測定装置、ヘイズメーター等を使用することができる。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの引張弾性率は、80~600MPaの範囲内であることが好ましい。80MPa以上であればフィルムが柔軟すぎず、取扱い性を良好に保つことが可能となり、600MPa以下であればフィルムの柔軟性が損なわれず、該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは100~550MPaの範囲内、さらに好ましくは120~500MPaの範囲内である。
【0076】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの引張破断伸度は、300%以上を示すものであることが好ましい。300%以上を示すものであればフィルムを取り扱う際の破断が抑制されることから、粘着加工等を施す場合においても破断による不具合が抑制され、半導体製造工程におけるエキスパンド工程においても、エキスパンド時の破断が起きにくくなり好ましい。より好ましくは400%以上、さらに好ましくは500%以上である。引張弾性率や破断伸度の測定方法は、高密度ポリエチレンの項で記載したものと同様の方法を用いることができる。
【0077】
2.熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを得る方法としては、金属製ロールとゴム製ロールでニップを行い、フィルムを製膜する溶融押出成形法を用いることが必要である。ニップを行うことにより、フィルムにそれぞれのロールの表面形状を転写させることが可能となり、フィルムの表面粗さや外観を均一なものに保つことが容易となる。
ニップする際に用いられる金属製ロールおよびゴム製ロールの表面粗さ(Ra)としては、いずれも0.5μm以下のものを用いることが好ましい。0.5μm以下のロールを用いることで、得られるフィルムの透明性を良好なものとしながら、フィルム同士のブロッキングを抑制することが容易となる。表面粗さ(Ra)は、0.45μm以下がより好ましく、0.40μm以下であることがさらに好ましい。
また、金属製ロール同士でニップを行う場合は、フィルムが破断した際にロール同士が接触し、ロールが破損する可能性がある。また、ゴム製ロール同士では、ニップの際に双方のロールが変形し圧力の調整や制御が不安定になることに加え、フィルムの外観も安定しないといったことから、金属製ロールとゴム製ロールでニップを行うことが好ましい。
ニップを行う成形方法以外の方法としては、公知のものを用いることができ、例えば、エアナイフ成形、エアチャンバー成形といった成形方法を挙げることができる。エアナイフ成形、エアチャンバー成形は、気体を供給し、圧力により溶融樹脂をロールに押し付けて成形する方法であり、表面粗さ(Ra)の低い透明性の高いフィルムを得る際に選択することができる。
【0078】
即ち、本発明のもう1つの態様は、両外層及び中間層の少なくとも3層からなる熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法であって、
該製造方法は、押出された溶融樹脂を金属製ロールおよびゴム製ロールでニップして前記熱可塑性樹脂フィルムを得ることを含み、
押出された溶融樹脂をニップする際に用いられる金属製ロールおよびゴム製ロールの表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下であり、
金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物は、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを含有し、
中間層は、高密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、且つ熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
前記熱可塑性樹脂フィルムは以下の要件を満たす、当該製造方法である(以下「本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法」とも言う)。
(1)金属製ロールと接する側の外層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が20~90質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~75質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~30質量%である。
(2)中間層を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の合計量を100質量%とした際に、高密度ポリエチレンの含有量が3~15質量%、ホモポリプロピレンの含有量が10~50質量%、熱可塑性エラストマー及びランダムポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量が10~85質量%、その他の熱可塑性樹脂が0~40質量%である。
(3)両外層の表面粗さ(Ra)がいずれも0.5μm以下、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下である。
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、ロールにてニップを行い冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
両外層および中間層からなる複層のフィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となり、本発明の両外層および中間層からなるフィルムとすることが可能となる。また、2以上の多層からなる中間層とすることも可能となる。
【0080】
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0081】
Tダイから溶融状態で押出された樹脂の冷却固化については、所定の温度に設定した金属製ロールとゴム製ロールでニップし接触させて固化させる方法を用いることが必要である。後述する表面粗さを有するロールでニップしてフィルムを得ることにより、フィルムの表面粗さと透明性を好ましい範囲に調整することが可能となる。
【0082】
金属製ロールとゴム製ロールの設定温度は特に制限されないが、80℃以下に設定することが好ましい。80℃以下であれば溶融された樹脂が冷却ロールに貼り付いたまま剥離できないといった現象を抑制することが可能となる。より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。さらに、冷却ロールの表面温度は、同様のフィルムの貼りつきによる不具合の抑制の観点から、100℃以下が好ましい。
【0083】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に用いられる金属製ロールおよびゴム製ロールの表面粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)については、表面粗さ(Ra)が0.5μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が3.0μm以下のものを用いることが好ましい。その金属製ロールとゴム製ロールを用いることにより、得られるフィルムの表面を所定の粗さのものとすることが可能となる。
ロールの表面粗さ(Ra)と最大高さ(Rz)のより好ましい値としては、表面粗さ(Ra)が0.4μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が2.5μm以下、さらに好ましい値としては、表面粗さ(Ra)が0.3μm以下であり、且つ最大高さ(Rz)が2.0μm以下である。
金属製ロールとゴム製ロールは同等程度の粗さのものを用いてもよいし、上述の粗さであれば異なる粗さのものを用いてもよい。異なる数値となるよう調整する場合は、どちらの層の数値を高く(低く)するかは用途や後述する粘着層や印刷層を設ける際の加工性を考慮し、適宜必要に応じて調整することができる。
金属製ロールとゴム製ロールの粗さの調整方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、バフ研磨、ベルト研磨、サンドブラスト法やガラスビーズブラスト法といったブラスト法、レーザー加工等といった方法を挙げることができる。加工のし易さや表面粗さの調整の容易さの観点から、バフやベルト等を用いた研磨、ブラスト法を用いることが好ましい。
金属製ロールの材質としては特に制限はなく、公知の材質を選択し用いることができ、例えば、鉄、スチール、ステンレススチール、ニッケル等といった材質を挙げることができる。取扱い性や経済性の観点から、スチール、ステンレススチール、ニッケルを用いることが好ましい。さらに、金属製ロールの耐久性を向上させるために、表面にクロムめっきが施されたものであることが、より好ましい。
金属製ロールの冷却方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、空気による冷却、水やオイルといった液体状の冷媒を用いる方法、電気を使用したヒーターもしくは誘電加熱といった冷却方法が挙げられる。冷却の効率や取扱いのし易さの観点から、水やオイルといった液体状の冷媒を用いる方法や、電気を使用したヒーターもしくは誘電加熱といった方法を用いることが好ましい。
ゴム製ロールの材質としては特に制限は無く、公知の材質を選択し用いることができ、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂といった材質を挙げることができる。中でもフィルムのロールからの離型性の観点から、シリコーン樹脂製、フッ素樹脂を用いたゴム製ロールを用いることが好ましい。
ゴム製ロールの冷却方法としては、前述した金属製ロールの冷却方法と同様の方法を用いることができる。
【0084】
さらに、本熱可塑性樹脂フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途やフィルム同士のブロッキングの抑制の観点から、片面または両方の面に表面処理を行うか、またはいずれの面にもコロナ処理を行わないかを選択することができる。
【0085】
3.粘着フィルム
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、両外裏の少なくとも片方の面に粘着剤層を設けることで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
粘着剤層に用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0086】
粘着剤層を設けるには、本発明の熱可塑性樹脂フィルム上に粘着剤を直接コーティングすることにより設けることもできる。また、離型層を有するセパレータ等に粘着剤層を積層し、その粘着剤層側を本発明のフィルムの両外層のいずれかに貼り合わせ、粘着剤層を転写することにより設けることもできる。
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着剤層を設ける前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、フィルムと粘着剤層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着剤層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0087】
本発明は、金属製ロールとゴム製ロールでニップすることで得られる表面粗さの小さく且つ透明性も高く、十分な耐熱性を有するフィルムであり、さらに、当該フィルムを取り扱う際のフィルム同士のブロッキングを抑制でき、取扱い性や柔軟性にも優れる外観の良好な熱可塑性樹脂フィルムを得ることを可能とする。
また、本発明は、該熱可塑性樹脂フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも可能とする。
【実施例0088】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0089】
[使用材料]
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、スチレン系エラストマーを以下に示す通り用いた。
【0090】
<高密度ポリエチレン>
日本ポリエチレン社製、「HF560」(高密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:7.0g/10分、結晶融解ピーク:134℃、密度:0.963g/cm3、単独フィルムの引張弾性率:1000MPa)
<線状低密度ポリエチレン>
宇部丸善ポリエチレン社製、「0540F」(線状低密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:4.0g/10分、結晶融解ピーク:91℃および111℃、密度:0.904g/cm3、単独フィルムの引張弾性率:90MPa)
<低密度ポリエチレン>
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC500」(低密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:4.0g/10分、結晶融解ピーク:106℃、密度:0.923g/cm3、単独フィルムの引張弾性率:140MPa)
<ホモポリプロピレン>
住友化学社製、「FLX80H5」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:8.0g/10分、結晶融解ピーク:162℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
<ランダムポリプロピレン>
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:7.5g/10分、結晶融解ピーク:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
<オレフィン系エラストマー>
日本ポリプロ社製、「RFG4VM」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:6.0g/10分、結晶融解ピーク:129℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマー(α)
旭化成社製、「タフテックH1221」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:4.5g/10分、スチレン成分含有量:12質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
スチレン系エラストマー(β)
旭化成社製、「タフテックH1517」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:5.0g/10分、スチレン成分含有量:43質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
【0091】
<樹脂組成物の調製>
上記の熱可塑性樹脂を合計で100質量部となるように配合を行った。また、2種類以上を用いる際はドライブレンドにより混合し、目視にて均一に混合できていることを確認した。
【0092】
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーに各樹脂組成物を投入し、各押出機の押出機温度を190~230℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定210~230℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、30℃に設定された冷却水を通したマット状の金属製ロール(表面クロムメッキ処理、表面粗さRaが約0.3μm、700mm幅×φ350mm)と、冷却水を通したマット状のゴム製ロール(フッ素樹脂被覆ロール、表面粗さRaが約0.3μm、700mm幅×φ200mm)とでニップ成形を行いフィルム状に冷却固化後、巻き取り機にて巻取り、厚みが約80μmの1種3層、2種3層、3種3層となるフィルムを得た。
また、本発明では、得られたフィルムの金属製ロール側を表層、ゴム製ロール側を裏層と表現している。
【0093】
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
【0094】
[表面粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)]
得られたフィルムの表層および裏層側の表面粗さ、最大高さは、東京精密社製SURFCOM FLEX-50Aを使用し、JISB0601(2001)に準じて、先端半径2μm、円錐のテーパ角度60°の触針先端を用いて、測定力0.7mNで測定した。
【0095】
[全光線透過率、ヘイズ]
フィルムの全光線透過率およびヘイズは以下の条件で測定を行った。
全光線透過率はJISK7361-1に準拠し、ヘイズはJISK7136に準拠して、日本電色工業社製のNDH2000を用いて測定した。
【0096】
[引張弾性率]
得られた熱可塑性樹脂フィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0097】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0098】
[ブロッキング評価]
得られたフィルムをロール状に50m巻き取り、1日保管後のロールからフィルムを引き出した際のフィルム同士のブロッキングの有無を以下の基準により評価した。
◎:ブロッキングが無く、容易に巻き出し可能
〇:僅かにブロッキングは見られるものの、容易に巻き出し可能
△:ブロッキングが見られるもの、巻き出しは可能
×:顕著なブロッキングが確認され、巻き出し不可
【0099】
[金属製ロール面の凹凸]
得られたフィルムの金属製ロール面側を、斉藤光学株式会社製のマイクロスコープ「SKM-Z200C-PC」を用いて、倍率約270倍にて観察を行い、フィルムに認められる気泡に起因する凹凸を以下の基準により評価した。
◎:凹凸が観察されない
〇:気泡による微小な凹凸は観察されるものの大きさの計測は不可
△:30μm未満の気泡による凹凸が複数観察される。
×:30μm以上の気泡による凹凸が複数観察される。
【0100】
[結晶融解ピーク]
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、実施例、比較例で得られたフィルムから採取した約5mgの試験片を、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温した際に測定されたチャートから結晶融解ピークを算出した。
【0101】
[実施例1]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(α)を表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールと、マット状のフッ素樹脂で被覆されたゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.11μm、最大高さ(Rz)は1.08μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は0.92μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は90.0%、ヘイズは27.0%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層および裏層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が870MPaを示したことから、巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は200MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は260MPa、引張破断伸度は820%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、161℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0102】
[実施例2]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(α)を表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.10μm、最大高さ(Rz)は0.84μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.15μm、最大高さ(Rz)は1.04μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.4%、ヘイズは22.0%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層および裏層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が860MPaを示したことから、巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は200MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は260MPa、引張破断伸度は800%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、161℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0103】
[実施例3]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(α)を表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.06μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.18μm、最大高さ(Rz)は1.31μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.3%、ヘイズは23.4%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層および裏層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が880MPaを示したことから、巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は200MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は260MPa、引張破断伸度は800%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、161℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0104】
[実施例4]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびランダムポリプロピレンを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.13μm、最大高さ(Rz)は1.05μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.10μm、最大高さ(Rz)は0.91μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は90.1%、ヘイズは23.3%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は800MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は790Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は270MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は320MPa、引張破断伸度は800%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、162℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0105】
[実施例5]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(α)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマーを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.01μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は0.95μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.5%、ヘイズは30.0%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は800MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は650Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は260MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は300MPa、引張破断伸度は800%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、161℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0106】
[実施例6]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(α)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマーを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.13μm、最大高さ(Rz)は1.22μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.11μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.5%、ヘイズは29.9%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は800MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は650Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は220MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は270MPa、引張破断伸度は800%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは129℃、163℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0107】
[実施例7]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(β)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマーを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.32μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は0.96μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.6%、ヘイズは31.2%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は900MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は650Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は410MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は440MPa、引張破断伸度は790%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは129℃、162℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0108】
[実施例8]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびランダムポリプロピレンを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のフッ素樹脂で被覆されたゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.13μm、最大高さ(Rz)は1.21μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.14μm、最大高さ(Rz)は1.00μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.4%、ヘイズは21.8%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は890MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は720Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は250MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は290MPa、引張破断伸度は830%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、162℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0109】
[実施例9]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびランダムポリプロピレンを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のフッ素樹脂で被覆されたゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.11μm、最大高さ(Rz)は1.18μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.02μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は88.8%、ヘイズは15.4%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は890MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は720Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)を所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は240MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は280MPa、引張破断伸度は840%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、161℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0110】
[実施例10]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレン、中間層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)、裏層の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンおよびランダムポリプロピレンを用い、それらを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のフッ素樹脂で被覆されたゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.30μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は0.95μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.0%、ヘイズは16.5%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は890MPaを示し、裏層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は720Mpaを示した。また、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。よって、本フィルムを続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にも容易に取り扱うことが可能であると推察される。
中間層は、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(α)を所定量含有しており、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は160MPaを示したことから、良好な耐熱性と柔軟性を有し、且つ表層および裏層との密着性にも優れるものであると推察される。
上記の表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率は210MPa、引張破断伸度は820%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、さらに得られたフィルムの結晶融解ピークは128℃、160℃を示し、良好な耐熱性を示すことも確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムでありながら、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであることが確認された。
【0111】
[比較例1]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンおよびオレフィン系エラストマーを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は1.05μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.15μm、最大高さ(Rz)は1.10μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.3%、ヘイズは29.2%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、高密度ポリエチレンの含有量が少ないことから、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸が確認された。
本フィルムの表層および裏層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを含むものの含有量が少なく、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が280MPaを示したことから、巻き取って得られたロールのフィルム同士のブロッキングが顕著であり、フィルムを巻き出すことができなかった。
よって、本フィルムは耐熱性や柔軟性を有するものの、続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にフィルムを巻き出すことのできない取扱い性に劣るフィルムであることが確認された。
【0112】
[比較例2]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびオレフィン系エラストマーを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.15m、最大高さ(Rz)は1.20μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.10μm、最大高さ(Rz)は0.98μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.4%、ヘイズは28.7%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡によると思われる大きさの計測ができない程度の僅かな凹凸が確認されただけであり、良好な外観を有することが確認された。
本フィルムの表層および裏層には、高密度ポリエチレンを含むものの含有量が少なく、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が270MPaを示したことから、巻き取って得られたロールのフィルム同士のブロッキングが顕著であり、フィルムを巻き出すことができなかった。また、表層、中間層、表層のいずれにもホモポリプロピレンを含有しておらず、ホモポリプロピレンに由来する結晶融解ピークが見られないことから、耐熱性に劣るフィルムであることも確認された。
よって、本フィルムはブロッキング性や耐熱性に劣ることから、続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時にフィルムを巻き出すことのできず、加工時の熱によっても不具合の発生する可能性の高い、取扱い性に劣るフィルムであることが確認された。
【0113】
[比較例3]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびオレフィン系エラストマーを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.15m、最大高さ(Rz)は0.99μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.15μm、最大高さ(Rz)は1.11μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.3%、ヘイズは32.1%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層および裏層は、高密度ポリエチレンを多く含み、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が820MPaを示したことから、本表層および裏層を有するフィルムを巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際にも、ブロッキングは見られず、容易に巻き出すことが可能であった。
ただし、表層、中間層、表層のいずれにもホモポリプロピレンを含有しておらず、ホモポリプロピレンに由来する結晶融解ピークが見られないことから、耐熱性に劣るフィルムであることが確認された。
よって、本フィルムは、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、気泡に起因する凹凸も無い良好な外観と透明性を有するフィルムであるものの、加工時の熱によっても不具合の発生する可能性の高い、取扱い性に劣るフィルムであることが確認された。
【0114】
[比較例4]
表層、中間層および裏層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびホモポリプロピレンを表1に記載の配合量とし、各層に用いる樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールとマット状のシリコーンゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.10μm、最大高さ(Rz)は0.98μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.10μm、最大高さ(Rz)は0.95μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.5%、ヘイズは27.0%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
さらに、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸も観察されず、良好な外観を有していることが確認された。
本フィルムの表層および裏層には、高密度ポリエチレンと、ホモポリプロピレンを所定量含み、さらに表層と裏層のそれぞれの樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率が550MPaを示したことから、巻き取って得られたロールからフィルムを巻き出す際に僅かにブロッキングは見られたものの、容易に巻き出すことが可能であった。
中間層は、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレンを含有しているもののホモポリプロピレンの含有量が多く、中間層の樹脂組成物のみから得られるフィルムの引張弾性率は870MPaを示し、表層、中間層、裏層からなるフィルムの引張弾性率も830MPaと高い値を示し、引張破断伸度は820%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えており、柔軟性に劣るフィルムであることが確認された。
よって、本フィルムは外観、透明性、ブロッキング性および耐熱性にも優れるものの、柔軟性に劣り、続く粘着層や印刷層を設ける際の加工時に取扱いが困難である可能性の高いフィルムであることが確認された。
【0115】
[比較例5]
実施例5に記載の樹脂組成物を調製し、前述のマット状(表面粗さRaが約0.3μm)のゴム製冷却ロールに代えてマット状(表面粗さRaが約1.0μm)のゴム製冷却ロールを用いた以外は、実施例5と同様の製造条件および方法で製膜を行い、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.14μm、最大高さ(Rz)は1.11μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は1.01μm、最大高さ(Rz)は7.21μmであり、表層側は表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下であったが、裏層側は所定の表面粗さを上回るフィルムであることが確認された。
本フィルムの全光線透過率は89.3%、ヘイズは93.8%を示したことから、ヘイズが高くマット状で透明性に劣るフィルムであることが確認された。
よって、本フィルムはブロッキング性および耐熱性にも優れるものの、透明性に劣るため、レーザー光を用いる工程を有する半導体工程には用いることが困難であるフィルムであることが確認された。
【0116】
[比較例6]
比較例5に記載の樹脂組成物を調製し、前述のマット状(表面粗さRaが約0.3μm)の金属製冷却ロールに代えてマット状(表面粗さRaが約0.8μm)の金属製冷却ロールを用いた以外は、比較例5と同様の製造条件および方法で製膜を行い、3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.84μm、最大高さ(Rz)は5.51μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は1.05μm、最大高さ(Rz)は7.53μmであり、表層および裏層が共に所定の表面粗さを上回るフィルムであることが確認された。
本フィルムの全光線透過率は89.4%、ヘイズは94.4%を示したことから、ヘイズが高くマット状で透明性に劣るフィルムであることが確認された。
よって、本フィルムはブロッキング性および耐熱性にも優れるものの、透明性に劣るため、レーザー光を用いる工程を有する半導体工程には用いることが困難であるフィルムであることが確認された。
【0117】
[比較例7]
表層の熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレンを用いなかったこと以外は実施例1と同様に樹脂組成物の調製を行った。
上記の表層、中間層および裏層用の樹脂組成物を用い、前述したマット状の金属製冷却ロールと、マット状のフッ素樹脂で被覆されたゴム製ロールを用いたニップ成形による製造方法にて、2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
得られたフィルムの表層側の表面粗さ(Ra)は0.14μm、最大高さ(Rz)は1.06μmであり、裏層側の表面粗さ(Ra)は0.12μm、最大高さ(Rz)は0.94μmであり、表裏面が共に表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、最大高さ(Rz)が3.0μm以下のフィルムであることが確認された。
全光線透過率は89.9%、ヘイズは26.6%を示し、マット状の透明性に優れるフィルムであった。
しかしながら、得られたフィルムの金属製ロールと接する側である表層をマイクロスコープにて観察したところ、表層側に高密度ポリエチレンを含有しておらず、金属製ロールとの密着と空気の巻き込みに起因する気泡による凹凸が顕著に観察されたことから、気泡による凹凸のある外観に劣るフィルムであることが確認された。
よって、本フィルムは、十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さが小さく、フィルム同士のブロッキングの抑制されたものであるものの、気泡による凹凸が顕著に確認された外観に劣るフィルムであることが確認された。
【0118】
【0119】
[実施例11]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
作製したセパレータの粘着剤層側の面を、実施例1で得られたフィルムの表層側の面にコロナ処理を施した後に貼り合わせることで本発明のフィルムと粘着剤層とが十分に密着し、積層された粘着フィルムを得た。
十分な耐熱性を有し、取扱い性や柔軟性にも優れ、且つ表面粗さの小さく透明性の高い粘着フィルムが得られたことから、透明性の高いフィルムが求められるレーザーダイシング等のレーザー光を用いる工程を有する半導体製造工程においても、好適に用いることが可能な粘着フィルムが得られたと推察される。
【0120】
[産業上の利用可能性]
本発明により、半導体製造工程に加熱を行う工程への適性やレーザー光の散乱の抑制を求められる場合でも、十分な耐熱性を有し、且つ表面粗さの小さく透明性の高い、外観の良好なフィルムを提供し、さらに、当該フィルムを取り扱う際のフィルム同士のブロッキングを抑制でき、取扱い性や柔軟性にも優れる熱可塑性樹脂フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該熱可塑性樹脂フィルムに粘着剤層を設けることで、半導体製造工程用に好適に用いることができる粘着フィルムを提供することも目的とする。