(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155687
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法及びアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/50 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C07F9/50 CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190402
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023069980
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 夏博
(72)【発明者】
【氏名】田村 健
(72)【発明者】
【氏名】古井 恵里
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050BB11
4H050BB25
4H050BC10
4H050WA15
4H050WA22
4H050WA26
(57)【要約】
【課題】アリール骨格を有する化合物にジアダマンチルホスフィン基(-P(Ad)2)を導入したアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を、パラジウム触媒を用いること無く、工業的に有利な方法で、高収率で製造する方法を提供すること。
【解決手段】アリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法であって、ブロモ化合物と、アルキルリチウムとを反応させてリチオ化物を得る第1工程、次いで、得られたリチオ化物とジアダマンチルクロロホスフィンとを反応させる第2工程と、を有するアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法であって、
【化1】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
下記一般式(2)で表されるブロモ化合物と、アルキルリチウムとを反応させてリチオ化物を得る第1工程、
【化2】
(式中、Aは前記一般式(1)と同義。)
次いで、得られたリチオ化物と下記一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンとを反応させる第2工程、を有するアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【化3】
(式中、Adは前記一般式(1)と同義。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のAdが無置換のアダマンチル基であり、Aが下記一般式(4)で表されるアリール基である請求項1に記載のアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【化4】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基又は一般式:-N(Z
1)(Z
2)で表される基を示す。Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示す。)
【請求項3】
前記アルキルリチウムが、2級又は3級アルキルリチウムである請求項1又は2に記載のアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記アルキルリチウムが、s-ブチルリチウムである請求項1又は2に記載のアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【請求項5】
第1工程の反応温度が、-200℃~30℃である請求項1又は2に記載のアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【請求項6】
第2工程の反応温度が、-200℃~100℃である請求項1又は2に記載のアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【請求項7】
第2工程において、一般式(2)で表されるブロモ化合物のリチオ化物を、一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンに対して、1.5~10倍モル用いて反応させる請求項1又は2に記載のアリールアダマンチルホスフィンの製造方法。
【請求項8】
下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体と、
【化5】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
下記一般式(5)で表されるホウ酸化合物とを反応させる第3工程を有する下記一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体の製造方法。
【化6】
(式中、R
6は、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示し、前記アリール基及びアリール複素環基は置換基を有していてもよい。)
【化7】
(式中、Ad及びAは前記一般式(1)と同義。R
6は前記一般式(5)と同義。)
【請求項9】
前記一般式(5)で表されるホウ酸化合物が、テトラフルオロホウ酸である請求項8に記載のアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体の製造方法。
【請求項10】
下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法であって、
【化8】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
下記一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を塩基により中和処理する第4工程を有するアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法。
【化9】
(式中、Ad及びAは、前記一般式(1)と同義。R
6は、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示し、前記アリール基及びアリール複素環基は置換基を有していてもよい。)
【請求項11】
下記一般式(1A)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体。
【化10】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。R
7は、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項12】
下記一般式(6A)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体。
【化11】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。R
7は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法及びアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マサチューセッツ工科大学Buchwald教授らのグループは電子豊富でかさ高い一連のホスフィン類を提案した(例えば、特許文献1~3等)。これらは、Buchwaldホスフィン配位子と呼ばれ、種々のC-C、C-N、C-O結合を生成する機能が注目されている。Buchwaldホスフィン配位子として、t-BuBrettPhos、RockPhoss、BrettPhos、XPhos等のビアリールホスフィンが知られており、例えば、XPhosは、下記化学式(A)で示される構造の配位子である。
【0003】
また、下記化学式(B)で示されるAmPhosはハロゲン化アリールの鈴木-宮浦クロスカップリング反応等に用いる触媒の配位子として広く知られている。
【0004】
これらの配位子は、何れもアリール骨格を有し、アリール骨格に結合したリン原子上に嵩高い2つの基を有するホスフィン誘導体である。
【0005】
【0006】
アダマンチル基は嵩高い基として知られ、また、t-ブチル基とアダマンチル基とを比較した場合、アダマンチル基の電子供与性がより大きく、これをリン原子上に導入することで触媒活性も高くなることが期待されている。
【0007】
非特許文献1には、アリール骨格を有し、リン原子上に嵩高い基として2個のアダマンチル基を有する下記化学式(C)で表される化合物を配位子とするパラジウム錯体が、クロスカップリング反応やBuchwald-Hartwig反応で優れた触媒活性を示すことが報告されている。
【0008】
【0009】
アリール骨格にジアダマンチルホスフィノ基(-P(Ad)2)を導入する方法として、非特許文献1には、下記反応スキーム1に従って、ブロモ化合物(C1)とジ-1-アダマンチルホスフィン(C2)とをパラジウム触媒(C3)の存在下に反応させる方法が提案されている。
【0010】
【0011】
しかしながら、非特許文献1の方法は、パラジウム触媒を用いるため、反応後にパラジウム触媒を除去することが困難であり、パラジウム金属のコンタミやその後の反応でパラジウムの混入を嫌う分野では、この反応を利用することは難しい。また、パラジウム触媒は高価であり、工業的に有利な方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2000/028875号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2002/085838号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/052939号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】European Journal of Organic Chemistry,2020,1122-1128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
すなわち、本発明の目的は、アリール骨格を有する化合物にジアダマンチルホスフィノ基(-P(Ad)2)を導入したアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を、パラジウム触媒を用いること無く、工業的に有利な方法で、高収率で製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アリール骨格を有する化合物にジアダマンチルホスフィノ基(-P(Ad)2)を導入する方法において、アリール骨格を有するブロモ化合物をアルキルリチウムでリチオ化し、得られるリチオ化物と、ジアダマンチルクロロホスフィンとを反応させることにより、パラジウム触媒を用いること無く、目的とするアリールジアダマンチルホスフィン誘導体が高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0016】
すなわち、本発明が提供しようとする第1の発明は、下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法であって、
下記一般式(2)で表されるブロモ化合物と、アルキルリチウムとを反応させてリチオ化物を得る第1工程、
次いで、得られたリチオ化物と下記一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンとを反応させる第2工程、を有するアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法である。
【0017】
【化4】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
【0018】
【0019】
【化6】
(式中、Adは前記一般式(1)と同義。)
【0020】
また、本発明が提供しようする第2の発明は、下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体と、下記一般式(5)で表されるホウ酸化合物とを反応させる第3工程を有する下記一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体の製造方法である。
【0021】
【化7】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
【0022】
【化8】
(式中、R
6は、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示し、前記アリール基及びアリール複素環基は置換基を有していてもよい。)
【0023】
【化9】
(式中、Ad及びAは前記一般式(1)と同義。R
6は前記一般式(5)と同義。)
【0024】
また、本発明が提供しようとする第3の発明は、下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法であって、下記一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を塩基により中和処理する第4工程を有するアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法である。
【0025】
【化10】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
【0026】
【化11】
(式中、Ad及びAは前記一般式(1)と同義。R
6は、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示し、前記アリール基及びアリール複素環基は置換基を有していてもよい。)
【0027】
また、本発明が提供しようとする第4の発明は、下記一般式(1A)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体である。
【0028】
【化12】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。R
7は、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0029】
また、本発明が提供しようとする第5の発明は、下記一般式(6A)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体である。
【0030】
【化13】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。R
7は、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カップリング反応の触媒の配位子等として有用な、アリール骨格を有する化合物にジアダマンチルホスフィノ基(-P(Ad)2)を導入したアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を、パラジウム触媒を用いること無く、工業的に有利な方法で、高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0033】
本発明は、下記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法である。
【0034】
【化14】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。Aは、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。)
【0035】
一般式(1)の式中のAdは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示す。前記置換基を有するアダマンチル基における置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基を示す。
【0036】
前記炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。また、炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシキ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0037】
一般式(1)の式中のAは、アリール基及びヘテロアリールから選ばれる基を示す。
【0038】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレン基、ペリレン基及びトリフェニレン基等が挙げられる。
【0039】
前記ヘテロアリール基としては、例えば、チオフェニル基、チエニレニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フェニレンジベンゾチエニレニル基及びジベンゾチエニレニルフェニル基等の含硫黄ヘテロアリール基;フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基及びジベンゾフラニルフェニル基等の含酸素ヘテロアリール基;ピリジル基、ピリジレニル基、ピリミジニル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、9-フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基、キナゾリル基、キノキサリル基、1,6-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基及びポルフィリン基等の含窒素ヘテロアリール基;ベンゾチアゾリル基等の2種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロアリール基等が挙げられる。
【0040】
前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭素数1~24の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1~24の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素数3~24のシクロアルキル基、炭素数3~24のシクロアルキルオキシ基、炭素数1~24のアルケニル基、炭素数1~24のアルキニル基、炭素数5~24のアリール基、炭素数5~24のアリールオキシ基、炭素数4~24のヘテロアリール基、炭素数1~24のアシル基、炭素数1~24のアミノ基、ハロゲノ基、シアノ基及びニトロ基等が挙げられる。これらの置換基は、更にハロゲノ基で水素原子が置換されていてもよい。
【0041】
前記ハロゲノ基としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基等が挙げられる。
【0042】
前記炭素数1~24の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0043】
前記炭素数1~24の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
前記炭素数3~24のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。また、前記シクロアルキル基は、SやN等のヘテロ原子を含むものであってもよい。
【0045】
前記炭素数3~24のシクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、シクロアルキルオキシ基は、SやN等のヘテロ原子を含むものであってもよい。
【0046】
前記炭素数1~24のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基及びオクテニル基等が挙げられる。
【0047】
前記炭素数1~24のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基及びオクチニル基等が挙げられる。
【0048】
前記炭素数5~24のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基等が挙げられる。
【0049】
前記炭素数5~24のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基及びビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
前記炭素数4~24のヘテロアリール基としては、例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基及びピリジル基等が挙げられる。
【0051】
前記炭素数1~24のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基及びヘプタノイル基、並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等が挙げられる。
【0052】
前記炭素数1~24のアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基及びジメチルアミノ基等が挙げられる。
【0053】
本発明の製造方法においては、前記一般式(1)中のAは、下記一般式(4)で表されるアリール基であることが好ましい。
【0054】
【化15】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基又は一般式:-N(Z
1)(Z
2)で表される基を示す。Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示す。)
【0055】
前記一般式(4)の式中のR1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基又は一般式:-N(Z1)(Z2)で表される基を示す。Z1及びZ2は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を示す。
【0056】
前記炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0057】
前記炭素数1~5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0058】
前記一般式:-N(Z1)(Z2)の式中のZ1及びZ2で表される炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。Z1及びZ2は、同一の基であっても異なる基であってもよい。
【0059】
本発明の製造方法においては、前記一般式(4)中のR1、R2、R4及びR5が水素原子であり、R3がメトキシ基、エトキシ基、n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~3のアルキル基、又は、ジメチルアミノ基であることが、溶解性及び触媒活性の観点から特に好ましい。
【0060】
本発明のアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の製造方法は、下記の第1工程及び第2工程を含むものである。
【0061】
第1工程:下記一般式(2)で表されるブロモ化合物と、アルキルリチウムとを反応させてリチオ化物を得る工程。
第2工程:第1工程で得られたリチオ化物と下記一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンとを反応させる工程。
【0062】
前記第1工程は、下記一般式(2)で表されるブロモ化合物と、アルキルリチウムとを溶媒中で反応させて、前記ブロモ化合物のリチオ化物を得る工程である。
【0063】
【0064】
一般式(2)の式中のAは、前記一般式(1)の式中のAに相当する基であり、上述したように、Aはアリール基及びヘテロアリール基から選ばれる基を表し、前記アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。なお、一般式(2)におけるAの好ましい基は、前述したとおりである。
【0065】
第1工程に用いるアルキルリチウムとしては、例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、イソプロピルリチウム、s-ブチルリチウム、t-オクチルリチウム、t-ブチルリチウム等が挙げられ、大きい求核性を有し、副反応を抑制する観点から、2級及び3級のアルキルリチウムが好ましい。取り扱いおよび工業的な入手しやすさの観点から、s-ブチルリチウムが特に好ましい。
【0066】
アルキルリチウムの添加量は、一般式(2)で表されるブロモ化合物に対するアルキルリチウムのモル比(アルキルリチウム/ブロモ化合物)で0.7~1.3、好ましくは0.95~1.1とすることが、反応性の観点から好ましい。
【0067】
第1工程に用いる反応溶媒としては、一般式(2)で表されるブロモ化合物及び生成するリチオ化物を溶解することができ、且つ反応に不活性な溶媒であれば、特に制限はない。このような溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒は混合溶媒として用いることができる。本発明においては、リチオ化物の溶解性の観点から、特にテトラヒドロフランが好ましい。
【0068】
第1工程のリチオ化反応は、反応溶媒中に一般式(2)で表されるブロモ化合物を溶解した溶液に、アルキルリチウムを添加することによって行うことが好ましい。
【0069】
第1工程の反応温度は、反応性の観点から-200~30℃、好ましくは-80~30℃とすることが好ましい。
【0070】
第1工程の反応時間は、好ましくは15分以上であり、より好ましくは0.5~3時間である。
本発明の製造方法においては、アルキルリチウムの添加を-80~-10℃の範囲で行い、その温度範囲を保持した状態で、0.1~5時間反応を行うことが好ましく、0.5~2時間反応を行うことが反応性の観点からより好ましい。
【0071】
第1工程の反応終了後、常法により、反応液から蒸留等により溶媒を除去してリチオ化物を回収し、精製を行ってもよいが、本発明においては、第1工程の反応終了後、リチオ化物を回収すること無く、そのまま引き続き第2工程を行うことが工業的に有利となる観点から好ましい。
【0072】
第2工程は、第1工程で得られたリチオ化物と下記一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンとを溶媒中で反応させ、目的とする前記一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を得る工程である。
【0073】
【0074】
一般式(3)の式中のAdは、一般式(1)の式中のAdに相当する基であり、上述したように、Adは無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示す。前記置換基を有するアダマンチル基における置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。なお、一般式(3)におけるAdの好ましい基は、前述したとおりである。
【0075】
一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンは、公知の方法により製造することができる。その一例を示すと、下記反応スキーム(2)に従って、三塩化リン(7)とアダマンタン誘導体(8)からジアダマンチルホスフィン誘導体(10)を得、次いでジアダマンチルホスフィン誘導体(10)をCCl4やCOCl2で塩素化することにより製造することができる(PhosporusSulfur Silicon Relat.Elem.,1995年,Vol.102、Page211-215、特表2004-505091号公報の0041~0046段落等参照。)。また、ジ-1-アダマンチルクロロホスフィンは市販品を用いてもよい。
【0076】
【化18】
(式中、Z
3は炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基を示す。tは0~3の整数を示す。)
【0077】
第2工程の反応においては、一般式(2)で表されるブロモ化合物のリチオ化物を、一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンに対して、1.0~10倍モル、好ましくは1.5~10.0倍モル、より好ましくは2.0~5.0倍モル使用することが、効率的に反応を進行させ、収率よく目的物を得ることができる観点から好ましい。
【0078】
第2工程の反応溶媒は、第1工程と同じ反応溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒は混合溶媒として用いることができる。
【0079】
第2工程の反応は、第1工程終了後のリチオ化物を含む溶液に、一般式(3)で表されるジアダマンチルクロロホスフィンを添加することによって行うことが好ましい。
【0080】
第2工程の反応温度は、反応性の観点から-200~100℃、好ましくは-80~30℃とすることが好ましい。
【0081】
第2工程の反応時間は、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1~4時間である。
【0082】
第2工程の反応終了後、必要により再結晶、カラム等の精製を行うことにより、目的とする一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を得ることができるが、一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体は溶媒や空気中で容易に酸化されてしまうため、後述する第3工程を実施して、一旦、ホスホニウム塩として安定化させた状態にしておき、必要なときに後述する第4工程を実施して、一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を調製することもできる。
【0083】
本発明の第3工程は、一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体と、一般式(5)で表されるホウ酸化合物とを溶媒中で反応させる工程である。
【0084】
第3工程により、下記一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体が得られる。
【0085】
【化19】
(式中のAd及びAは、前記一般式(1)と同義。R
6は、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示し、前記アリール基及びアリール複素環基は置換基を有していてもよい。)
【0086】
一般式(6)の式中のAdは、一般式(1)の式中のAdに相当する基であり、Aは、一般式(1)の式中のAに相当する基である。
【0087】
一般式(6)の式中のR6は、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示す。
【0088】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレン基、ペリレン基及びトリフェニレン基等が挙げられる。
【0089】
前記アリール複素環基としては、例えば、ピリジル基、チオフェニル基等が挙げられる。
【0090】
前記アリール基及びアリール複素環基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0091】
本発明においては、R6はハロゲン原子であることが好ましく、特にフッ素原子であることが好ましい。
【0092】
第3工程に用いるホウ酸化合物は、下記一般式(5)で表される。
【0093】
【0094】
一般式(5)の式中のR6は、前記一般式(6)の式中のR6に相当する基であり、ハロゲン原子、アリール基及びアリール複素環基を示し、前記アリール基及びアリール複素環基は置換基を有していてもよい。なお、一般式(5)におけるR6の好ましい基は、前述したとおりである。
【0095】
一般式(5)で表されるホウ酸化合物の添加量は、一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体に対する一般式(5)で表されるホウ酸化合物のモル比(一般式(5)/一般式(1))で0.8~100とすることが好ましく、2~5とすることが反応性の観点からより好ましい。
【0096】
第3工程の反応溶媒は、第2工程と同じ反応溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒は混合溶媒として用いることができる。
【0097】
第3工程の反応は、第2工程終了後の一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を含む溶液に、飽和食塩水等を添加し、分液回収した有機層に一般式(5)で表されるホウ酸化合物を添加することにより、一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を単離することなく引き続き反応を行うことができる。
また、第3工程の反応は、第2工程終了後の一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を含む溶液に、飽和食塩水を添加して反応を終了した後、有機層を分液回収せずに、一般式(5)表されるホウ酸化合物を添加し反応を行ってもよい。
【0098】
第3工程の反応温度は、反応性の観点から-30~80℃とすることが好ましく、-10~30℃とすることがより好ましい。
【0099】
第3工程の反応時間は、0.5時間以上とすることが好ましく、2~5時間とすることがより好ましい。
【0100】
第3工程の反応終了後、有機層から蒸留等により溶媒を除去し、必要により再結晶等の精製を行うことにより、一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を得ることができる。
【0101】
第4工程は、前記第3工程で得られたアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を塩基により中和処理して一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を得る工程である。
【0102】
第4工程における中和処理は、アリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を溶媒に溶解した溶液に、塩基を含む水溶液を加えて行うことが好ましい。
【0103】
アリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を溶解するための溶媒としては、疎水性の有機溶媒を用いることが水層との分離を容易に行うことができることから好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。
【0104】
第4工程に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、DBU、N-エチルジイソプロピルアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0105】
塩基の添加量は、アリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体に対して1倍モルから100倍モルが好ましく、2~10倍モルがより好ましい。塩基は、アリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を溶解した溶液へ、複数回に分けて添加することができる。
【0106】
第4工程における中和処理の温度は特に制限はなく、通常-30~50℃、好ましくは-10~25℃である。
【0107】
中和処理終了後、有機層と水層とを分離し、有機層から蒸留等により溶媒を除去し、必要により再結晶等の常法の精製を行うことにより、一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体を得ることができる。
【0108】
本発明の製造方法で得られる一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体は、クロスカップリング反応に用いる配位子として特に有用であり、また、そのホスホニウム塩も安定化に寄与するだけでなく、クロスカップリング反応に用いる配位子として有用であることが知られている(例えば、WO2014/007405号パンフレット、WO2014/007404号パンフレット等参照。)
本発明の製造方法で得られる一般式(1)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体及び一般式(6)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体は、特に鈴木-宮浦反応、根岸反応、桧山反応等のカップリング反応で用いる触媒の配位子としての利用が期待できる。
【0109】
本発明で製造されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体の1つの形態としては、下記一般式(1A)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体が挙げられる。一般式(1A)で表されるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体は、特に鈴木-宮浦反応、根岸反応、桧山反応等のカップリング反応で用いる触媒の配位子としての利用が期待できる新規な化合物である。
【0110】
【化21】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。R
7は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0111】
一般式(1A)の式中のAdは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基から選ばれる基である。本発明において、一般式(1A)の式中のAdは、無置換のアダマンチル基であることが好ましい。
【0112】
一般式(1A)の式中のR7で表される炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、イソプロピル基が好ましく、特に溶解性、工業的な入手容易性の観点からイソプロピル基が好ましい。
【0113】
また、本発明で製造されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体の1つの形態としては、下記一般式(6A)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体が挙げられる。一般式(1A)で表されるアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体は、特に鈴木-宮浦反応、根岸反応、桧山反応等のカップリング反応で用いる触媒の配位子としての利用が期待できる新規な化合物である。
【0114】
【化22】
(式中、Adは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基である。R
7は、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0115】
一般式(6A)の式中のAdは、無置換のアダマンチル基又は置換基を有するアダマンチル基を示し、前記置換基は、炭素数1~4のアルキル基及び炭素数1~4のアルコキシ基から選ばれる基である。本発明において、一般式(6A)の式中のAdは、無置換のアダマンチル基であることが好ましい。
【0116】
一般式(6A)の式中のR7で表される炭素数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基及びイソプロピル基が好ましく、特に溶解性、工業的な入手容易性の観点からイソプロピル基が好ましい。
【0117】
本発明の製造方法で得られるアリールジアダマンチルホスフィン誘導体及びアリールジアダマンチルホスホニウム塩誘導体を配位子として用いる場合、これらの配位子と錯体を形成することができる遷移金属としては、例えば、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、ニッケル、鉄、銅等が挙げられる、これらの中でも、パラジウムが特に好ましい。
【実施例0118】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
<実施例1>
【0120】
【化23】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0121】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた500mLの4つ口フラスコに4-ジメチルアミノブロモベンゼン5.34g(26.7mmol、3.0eq)の脱酸素THF250mL溶液を加え、-78℃に冷却し、s-BuLiシクロヘキサン・ヘキサン溶液(1.2mol/L、23.4mL、28.1mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF150mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、98%以上であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。溶媒を減圧留去し、残留物に脱酸素メタノール200mLを加え、傾斜ろ過により上澄み液を除去し、残った溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。
次いで、得られた白色固体を-10℃で脱酸素THFより再結晶し、化合物(1a)の精製物を2.06g(4.89mmol)、収率54.9%で得た。
なお、Ad2PClの転化率は下記のようにして求めた。
反応系より少量をサンプリングし、脱酸素食塩水で当該サンプルを加水分解した。その有機層から一定量を正確に量り取り、そこに2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを外部標準として加え、GCにより絶対検量線法でAd2PClの残量を定量し、仕込んだAd2PClの転化率を求めた。
(化合物(1a)の同定データ)
1H-NMR(THF-d8):δ7.58(br,1H),7.30(br,1H)、6.72-6.50(m,2H),2.95(s,6H),2.12-1.62(m,30H)
31P-NMR(THF-d8):δ38.9
MS(DI-EI):m/z 421(M+)
IR(ATR):2897,2844,2810,1596,1510,1445,1361,1229,1201,1098,811,532cm-1
【0122】
<実施例2>
【0123】
【化24】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0124】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた500mLの4つ口フラスコに4-ジメチルアミノブロモベンゼン4.45g(22.2mmol、2.5eq)の脱酸素THF210mL溶液を加え、-78℃に冷却し、s-BuLiシクロヘキサン・ヘキサン溶液(1.2mol/L、19.4mL、23.3mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF150mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。実施例1と同様にして、GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、98%以上であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。溶媒を減圧留去し、残留物に脱酸素メタノール200mLを加え、傾斜ろ過により上澄み液を除去し、残った溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。
次いで、得られた白色固体を-10℃で脱酸素THFより再結晶し、化合物(1a)の精製物を2.12g(5.02mmol)、収率56.3%で得た。
(化合物(1a)の同定データ)
1H-NMR(THF-d8):δ7.58(br,1H),7.30(br,1H),6.72-6.50(m,2H),2.95(s,6H),2.12-1.62(m,30H)
31P-NMR(THF-d8):δ38.9
MS(DI-EI):m/z 421(M+)
IR(ATR):2897,2844,2810,1596,1510,1445,1361,1229,1201,1098,811,532cm-1
【0125】
<実施例3>
【0126】
【化25】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0127】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた500mLの4つ口フラスコに4-ジメチルアミノブロモベンゼン3.56g(17.8mmol、2.0eq)の脱酸素THF170mL溶液を加え、-78℃に冷却し、s-BuLiシクロヘキサン・ヘキサン溶液(1.2mol/L、15.6mL、18.7mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF150mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。実施例1と同様にして、GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、81%であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。溶媒を減圧留去し、残留物に脱酸素メタノール200mLを加え、傾斜ろ過により上澄み液を除去し、残った溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。
次いで、得られた白色固体を-10℃で脱酸素THFより再結晶し、化合物(1a)の精製物を1.80g(4.26mmol)、収率47.8%で得た。
(化合物(1a)の同定データ)
1H-NMR(THF-d8):δ7.58(br,1H),7.30(br,1H),6.72-6.50(m,2H),2.95(s,6H),2.12-1.62(m,30H)
31P-NMR(THF-d8):δ38.9
MS(DI-EI):m/z 421(M+)
IR(ATR):2897,2844,2810,1596,1510,1445,1361,1229,1201,1098,811,532cm-1
【0128】
<実施例4>
【0129】
【化26】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0130】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた700mLの4つ口フラスコに4-ジメチルアミノブロモベンゼン8.92g(44.6mmol、5.0eq)の脱酸素THF400mL溶液を加え、-78℃に冷却し、s-BuLiシクロヘキサン・ヘキサン溶液(1.2mol/L、39.0mL、46.8mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF150mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。実施例1と同様にして、GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、98%以上であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。溶媒を減圧留去し、残留物に脱酸素メタノール200mLを加え、傾斜ろ過により上澄み液を除去し、残った溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。
次いで、得られた白色固体を-10℃で脱酸素THFより再結晶し、化合物(1a)の精製物を1.60g(3.79mmol)、収率42.5%で得た。
(化合物(1a)の同定データ)
1H-NMR(THF-d8):δ7.58(br,1H),7.30(br,1H),6.72-6.50(m,2H),2.95(s,6H),2.12-1.62(m,30H)
31P-NMR(THF-d8):δ38.9
MS(DI-EI):m/z 421(M+)
IR(ATR):2897,2844,2810,1596,1510,1445,1361,1229,1201,1098,811,532cm-1
【0131】
<実施例5>
【0132】
【化27】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0133】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた500mLの4つ口フラスコに4-ジメチルアミノブロモベンゼン4.45g(22.2mmol、2.5eq)の脱酸素THF210mL溶液を加え、-78℃に冷却し、t-BuLiペンタン溶液(1.6mol/L、29.1mL、46.6mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF150mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。実施例1と同様にして、GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、98%以上であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。溶媒を減圧留去し、残留物に脱酸素メタノール200mLを加え、傾斜ろ過により上澄み液を除去し、残った溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。
次いで、得られた白色固体を-10℃で脱酸素THFより再結晶し、化合物(1a)の精製物を1.90g(4.51mmol)、収率50.6%で得た。
(化合物(1a)の同定データ)
1H-NMR(THF-d8):δ7.58(br,1H),7.30(br,1H),6.72-6.50(m,2H),2.95(s,6H),2.12-1.62(m,30H)
31P-NMR(THF-d8):δ38.9
MS(DIEI):m/z 421(M+)
IR(ATR):2897,2844,2810,1596,1510,1445,1361,1229,1201,1098,811,532cm-1
【0134】
【表1】
注)表中の「(2a)の当量」は、仕込んだジアダマンチルクロロホスフィン(3a)に対する、ブロモ化合物(2a)のリチオ化物のモル比である。
【0135】
<実施例6>
【0136】
【化28】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0137】
<第3工程>
実施例1の第2工程終了後の溶液に、-10℃で脱酸素飽和食塩水100mLを添加した。-10℃で有機層を分液し、42%HBF4水溶液6.0gを添加して2時間撹拌した後、室温で一昼夜撹拌した。室温で有機層を飽和食塩水100mLで3回洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、黄色粘性固体を得た。-30℃で7倍量のメタノールから再結晶し、化合物(6a)の白色固体を2.82g(5.54mmol)、収率62.2%で得た。
(化合物(6a)の同定データ)
1H-NMR(CDCl3):δ7.56(d,J=78Hz,2H),6.96(s,2H),5.77(d,J=456Hz,1H),3.14(s,6H),2.27-2.18(m,6H),2.16-2.05(m,12H),1.90-1.80(m,12H)
13C-NMR(CDCl3):δ153.6,139.2,132.4,112.7,112.2,95.0(d,J=83.0Hz),39.8,38.7,38.5,35.6,27.7,27.6
31P-NMR(CDCl3):δ39.5(J=458Hz)
IR(ATR):2911,2855,1599,1524,1454,1378,1345,1306,1214,1119,1058,997,819cm-1
【0138】
<実施例7>
【0139】
【化29】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0140】
<第3工程>
実施例1の第2工程において-10℃で脱酸素飽和食塩水100mlを添加して反応を停止した後、-10℃で42%HBF4水溶液6.0gをゆっくり添加し、そのまま-10℃で2時間撹拌した。その後室温で一昼夜撹拌した。室温で有機層を飽和食塩水100mLで3回洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、黄色粘性固体を得た。-30℃で7倍量のメタノールから再結晶し、化合物(6a)の白色固体を2.69g(5.28mmol)、収率59.3%で得た。
(化合物(6a)の同定データ)
1H-NMR(CDCl3):δ7.56(d,J=78Hz,2H),6.96(s,2H),5.77(d,J=456Hz,1H),3.14(s,6H),2.27-2.18(m,6H),2.16-2.05(m,12H),1.90-1.80(m,12H)
13C-NMR(CDCl3):δ153.6,139.2,132.4,112.7,112.2,95.0(d,J=83.0Hz),39.8,38.7,38.5,35.6,27.7,27.6
31P-NMR(CDCl3):δ39.5(J=458Hz)
IR(ATR):2911,2855,1599,1524,1454,1378,1345,1306,1214,1119,1058,997,819cm-1
【0141】
<実施例8>
【0142】
【化30】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0143】
<第4工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた100mLの4つ口フラスコに実施例6で得られた化合物(6a)100mg(0.196mmol)の脱酸素トルエン30mL溶液を加え、-20℃に冷却した。そこへ、0.1Nの脱酸素NaOH水溶液30mLを滴下した。-20℃で2時間撹拌した後、有機層を分取し、脱酸素水で1回洗浄した後、溶媒を減圧留去し、化合物(1a)の白色固体を50mg得た。
(化合物(1a)の同定データ)
1H-NMR(THF-d8):δ7.58(br,1H),7.30(br,1H),6.72-6.50(m,2H),2.95(s,6H),2.12-1.62(m,30H)
31P-NMR(THF-d8):δ38.9
MS(DI-EI):m/z 421(M+)
IR(ATR):2897,2844,2810,1596,1510,1361,1098,811,532cm-1
【0144】
<実施例9>
【0145】
【化31】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0146】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた500mLの4つ口フラスコに4-メトキシブロモベンゼン(2b)4.17g(22.3mmol、2.5eq)の脱酸素THF220mL溶液を加え、-78℃に冷却し、s-BuLiシクロヘキサン・ヘキサン溶液(1.2mol/L、19.3mL、23.2mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF150mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。実施例1と同様にして、GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、98%以上であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。溶媒を減圧留去し、残留物に脱酸素メタノール200mLを加え、傾斜ろ過により上澄み液を除去し、残った溶媒を減圧留去し、白色固体を得た。
白色固体のGC-MS分析より、m/z=408に分子イオンピークを認め、化合物(1b)であることを確認した。
【0147】
<実施例10>
【0148】
【化32】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0149】
<第3工程>
実施例9の第2工程で得た化合物(1b)をTHF400mLに懸濁させ、-10℃で42%HBF4水溶液6.0g添加した後、-10℃で2時間、室温で一晩撹拌した。室温で有機層を飽和食塩水100mLで3回洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、白色固体を得た。-10℃で10倍量のメタノールから再結晶し、化合物(6b)の白色固体を3.2g(6.45mmol)、収率72.4%で得た。
(化合物(6b)の同定データ)
1H-NMR(CDCl3):δ7.91(dd,J=13Hz,9.0Hz,1H),7.59(dd,J=8.0Hz,8.0Hz,1H),7.19(d,J=8.5Hz,1H),7.12(d,J=8.5Hz,1H),6.46(d,J=479Hz,1H),3.91(s,3H),2.24-2.18(m,6H),2.13-2.04(m,12H),1.82-1.73(m,12H)
13C-NMR(CDCl3):δ164.4,139.9(d,J=8.4Hz),133.2(d,J=8.4Hz),116.4(J=12.0Hz),115.6(J=13.2Hz),103.5,102.9,55.7,38.6,38.4,35.5,27.6(d,J=10.8Hz)
IR(ATR)2927,2859,2886,1593,1496,1456,1304,1257,1184,1116,1064,1018,841cm-1
【0150】
<実施例11>
【0151】
【化33】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0152】
<第1工程>
撹拌装置、N2導入管、温度計、および滴下管を備えた500mLの4つ口フラスコにp-イソプロピルオキシブロモベンゼン(2c)4.78g(22.2mmol、2.5eq)の脱酸素THF180mL溶液を加え、-78℃に冷却し、s-BuLiシクロヘキサン・ヘキサン溶液(1.2mol/L、19.3mL、23.2mmol)を滴下して30分反応させ、リチオ化物を含む溶液を得た。
<第2工程>
前記溶液にジ-1-アダマンチルクロロホスフィン(Ad2PCl)(3a)3.00g(8.91mmol、1.0eq)の脱酸素THF130mL溶液を滴下した。滴下後、-78℃で1時間反応させ、徐々に昇温して-10℃で3時間反応させた。実施例1と同様にして、GCによりAd2PClの転化率を求めたところ、98%以上であった。
<分離・精製>
反応後の溶液に脱酸素飽和食塩水100mLを-10℃でゆっくり加えた。30分撹拌の後、水層を廃棄した。さらに2回、有機層を同量の脱酸素飽和食塩水で洗浄し、水層を分液した後、有機溶媒を減圧留去した。-10℃で残留物に脱酸素メタノール100mLを加え、撹拌し、白色固体をろ別した。
次いで、得られた白色固体を、-10℃で10倍量の脱酸素トルエン:脱酸素メタノール=1:3の混合液から再結晶し、化合物(1c)の精製物を2.4g(5.50mmol)、収率61.7%で得た。
(化合物(1c)の同定データ)
1H-NMR(C6D6):δ7.82-7.70(m,2H),7.01-6.75(m,2H),4.20(sept,J=6.2,1H),2.16-2.02(m,12H),1.90-1.84(m,6H),1.68-1.60(m,12H),1.10(d,J=6.0Hz,6H)
13C-NMR(C6D6):δ159.8,126.1(d,J=21.6Hz),69.7,42.6(d,J=13.2Hz),37.7,37.1(d,J=22.9Hz),29.7(J=8.3Hz),22.4
31P-NMR(C6D6):δ39.2
IR(ATR):2923,2899,2846,1590,1495,1278,1241,1186,824,535cm-1
MS(DI-EI)m/z 436(M+)
【0153】
<実施例12>
【0154】
【化34】
(式中、Adは1-アダマンチル基を示す。)
【0155】
<第3工程>
実施例11の第2工程において-10℃で脱酸素飽和食塩水100mlを添加して反応を停止した。次いで、-10℃で42%HBF4水溶液6.0gをゆっくり添加し、そのまま-10℃で2時間、続いて室温で一昼夜撹拌した。有機層を飽和食塩水100mLで3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。粗生成物を-30℃で8倍量のメタノールから再結晶させ、化合物(6c)の白色固体を3.00g(5.72mmol)、収率64.2%で得た。
(化合物(6c)の同定データ)
1H-NMR(CDCl3):δ7.88(dd,J=9.0Hz,9.0Hz,1H),7.54(t,J=8.0Hz,1H),7.09(t,dd,J=22.0Hz,8.5Hz,2H),6.47(d,J=480Hz,1H),4.66(sept,J=6.0Hz,1H),2.24-2.16(m,6H),2.12-2.03(m,12H),1.81-1.72(m,12H),1.39(d,J=6.0Hz,6H)
13C-NMR(CDCl3):δ162.9,140.1(J=7.2Hz),133.0(J=9.6Hz),117.7(J=12.0Hz),116.3(J=12.1Hz),102.8,102.2,70.7,38.6,38.4,35.5,27.6(d,J=9.7Hz),21.8
31P-NMR(C6D6):δ35.2(d,J=480Hz)
IR(ATR):2936,2908,2859,1590,1491,1454,1300,1190,1105,1061,841,542,517cm-1