(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155700
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リチウム補充添加剤及びその製造方法、電気化学装置、電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20241024BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241024BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241024BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208102
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】202310432269.6
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522492196
【氏名又は名称】遠景動力技術(江蘇)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology(Jiangsu)Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.66 Shentai Road,Shengang Street,Jiangyin City,Wuxi City,Jiangsu Province,214443 China
(71)【出願人】
【識別番号】522492200
【氏名又は名称】遠景睿泰動力技術(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Intelligent Innovation Dynamics Technology (Shanghai) Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101,Building No.2,No.2555 Xiupu Road,Kangqiao Town,Pudong New District,Shanghai,201315 China
(71)【出願人】
【識別番号】523454843
【氏名又は名称】遠景動力技術(湖北)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Hubei) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】523454854
【氏名又は名称】遠景動力技術(鄂爾多斯市)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Ordos) Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】呉 冠宏
(72)【発明者】
【氏名】朱 建平
(72)【発明者】
【氏名】王 文旭
(72)【発明者】
【氏名】莫 方杰
(72)【発明者】
【氏名】孫 化雨
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA30
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA12
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウム補充添加剤、その製造方法、電気化学装置、及び電子装置を提供する。
【解決手段】リチウム補充添加剤は成分Aと、成分Bと、を含む。成分Aの一般化学式は、Li6-xM1
1-yN1
yO4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択され、N1は、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択される。成分Bの一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)M2
6/(2+a)-2O2、0.2≦a≦1であり、成分Bの少なくとも一部は、成分Aの表面に位置する。本発明のリチウム補充添加剤を含む正極材料は、より安定性が高く、理論容量が高く、リチウムイオン電池に使用され、電池のエネルギー密度やサイクル安定性を向上させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aと、成分Bと、を含み、
前記成分Aの一般化学式は、Li6-xM1
1-yN1
yO4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択され、N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択され、
前記成分Bの一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)M2
6/(2+a)-2O2、0.2≦a≦1であり、M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、
前記成分Bの少なくとも一部は、前記成分Aの表面に位置する、リチウム補充添加剤。
【請求項2】
以下のa~cの1つ又は複数の条件を満たす、請求項1に記載のリチウム補充添加剤。
a.前記M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSiである。
b.前記N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSi である。
c.前記M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr、又はWである。
【請求項3】
以下のd~jの1つ又は複数の条件を満たす、請求項1に記載のリチウム補充添加剤。
d.前記xの値の範囲は、0≦x≦5である。
e.前記yの値の範囲は、0≦y≦0.9である。
f.前記zの値の範囲は、0≦z≦2である。
g.前記aの値の範囲は、0.22≦a≦1である。
h.前記成分Bの少なくとも一部は、成分Aの表面に被覆される。
i.“前記成分Aと前記成分B”の合計質量に占める成分Aの質量割合が、89%~99.1%である。
j.前記リチウム補充添加剤が、コアシェル構造である。
【請求項4】
前記リチウム補充添加剤の化学式は、ALi5+eFe1-eCoeO4/(1-A)Li1.33MnO2又はALi2Ni1-fCufO2/(1-A)Li1.33MnO2であり、
式中、0.8≦A<1; 0≦e≦1; 0≦f≦1であり、
Aは、Li5+eFe1-eCoeO4/Li1.33MnO2におけるLi5+eFe1-eCoeO4の質量割合、又はLi2Ni1-fCufO2/Li1.33MnO2におけるLi2Ni1-fCufO2の質量割合を示す、請求項1に記載のリチウム補充添加剤。
【請求項5】
前記成分Aの一般化学式は、Li6-xM1
1-yN1
yO4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSiであり、N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSiであり、前記成分Bの一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)M2
6/(2+a)-2O2、0.2≦a≦1であり、M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr又はWであり、前記Bの少なくとも一部は、前記成分Aの表面に被覆されている、請求項1に記載のリチウム補充添加剤。
【請求項6】
前記成分A及び成分Bの前駆体を混合及び焼結して、前記リチウム補充添加剤を得るステップを含む、請求項1に記載のリチウム補充添加剤の製造方法。
【請求項7】
正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解質と、を含む電気化学装置であって、前記正極シートが、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層と、リチウム補充添加剤と、を含み、
前記正極活物質層は、活物質を含み、前記活物質は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、ニッケル・コバルト・マンガン三元系材料、リチウムリッチマンガン系酸化物、ニッケル酸マンガンリチウムのうちの1つ又は複数を含み、
前記リン酸鉄リチウム及びリン酸リチウムマンガン鉄は、それぞれ独立に、構造式:LiaMnmFe1-m-nM3
nPO4を満たし、式中、0.9≦a≦1.10、0≦m≦1.0、0≦n≦0.02、0.5≦m/(1-m-n)≦0.9であり、M3元素は、Ti、Mg、Ni、Co、Al、V、Cr、Zr、Nbのうちの1つ又は複数を含み、
前記ニッケル・コバルト・マンガン三元系材料は、構造式: Li1+a[NixCoyMnzN2
1-x-y-z]O2-bAb、0.7≦x<1、0≦y<0.3、0≦z<0.3、-0.2<a<0.2、0≦b<0.1を満たし、式中、N2元素は、Sr、Y、Al、Ti、Mg、W、Mo、B、V、Se、Nb、Ru、Rh、Pd、Sb、Te、Ce、Ca、Zn、Ni、Co、Mn、Zrのうちの1つ又は複数を含み、A元素は、F、N、Cl、S、Pのうちの1つ又は複数を含み、
前記コバルト酸リチウムは、構造式:LiaCo1-bM4
bO2-bを満たし、式中、M4元素は、Na、Mg、Al、Ti、Zr、Y、Ha、Ni、Mn、V、Cr、La、Ceのうちの1つ又は複数から選択され、0.99≦a≦1.01、0<b≦0.05であり、
前記リチウムリッチマンガン系酸化物は、構造式:zLi2MnO3・(1‐z)LiM5O2、0≦z≦1を満たし、M5は、Ni、Co、Mnのうちの1つ又は複数から選択され、
前記リチウムニッケルマンガン酸化物は、構造式:LiM6
x+yNi0.5-xMn1.5-yO4を満たし、式中、M6元素は、Co、Al、Cr、Fe、Mg、Zr、及びTiのうちの1つ又は複数から選択され、0≦x<0.2、0≦y<0.2であり、
前記リチウム補充添加剤は、成分A及び成分Bを含み、
成分Aの一般化学式はLi6-xM1
1-yN1
yO4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択され、N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択され、
成分Bの一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)M2
6/(2+a)-2O2、0.2≦a≦1であり、M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、
前記成分Bの少なくとも一部は、前記成分Aの表面に位置する、電気化学装置。
【請求項8】
前記活物質が、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、ニッケル・コバルト・マンガン三元系材料、コバルト酸リチウム、リチウムリッチマンガン系酸化物又はニッケル酸マンガンリチウムであり、前記リチウム補充添加剤の化学式が、ALi5+eFe1-eCoeO4/(1-A)Li1.33MnO2、又は、ALi2Ni1-fCufO2/(1-A)Li1.33MnO2であり、
式中、0.8≦A<1; 0≦e≦1; 0≦f≦1であり、Aは、Li5+eFe1-eCoeO4/Li1.33MnOにおけるLi5+eFe1-eCoeO4の質量割合、又は、Li2Ni1-fCufO2/Li1.33MnO2におけるLi2Ni1-fCufO2の質量割合を示す、請求項7に記載の電気化学装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電気化学装置を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、リチウム補充添加剤及びその製造方法、電気化学装置、及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池では、正極と負極の初期クーロン効率の低い方が、電池全体の初期効率を決定する。正極と負極の効率が等しい場合、電池内の活性リチウムの利用率が最も高くなる。現在の商用システムの初期効率は、負極の初期効率が低いことによって制限されている。したがって、正極によって提供される多くの活性Liが消費され、電池全体のエネルギー密度が低下する。
【0003】
現在広く研究されているいくつかのリチウムイオン補助材料としては、Li5FeO4(LFO)、Li2NiO2(LNO)、及びLi6CoO4(LCO)があり、これらはすべて、理論容量が非常に高く、可逆性が非常に低い(クーロン効率<10%)ため、理想的なリチウム補給添加剤(つまり、正極リチウム補充添加剤)である。しかし、LFO、LNO、及びLCOは空気中で不安定であり、湿気を吸収しやすく、残留アルカリ(Li2CO3、LiOH)が生成され、その電気化学的活性を低下させるだけでなく、電池からガスが発生し、電池が膨張し、安全上の危険を引き起す可能性がある。
【0004】
上記の研究に基づいて、電池のエネルギー密度やサイクル安定性を向上させ、より優れた安定性と高い理論容量を達成するために、正極材料として使用できるリチウム補充添加剤を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によって解決される技術的課題は、電気化学的活性の低下をもたらす、空気中での既存のリチウム補助添加剤の不安定性を克服することである。既存のリチウム補助添加剤をリチウムイオン電池に使用すると、電池内でガスが発生し、潜在的な安全上の危険を引き起こす。したがって、リチウム補充添加剤及びその製造方法、正極シート、電気化学装置及び電子装置が提供される。本発明のリチウム補充添加剤を含む正極材料は、より安定性が高く、理論容量が高く、リチウムイオン電池に使用され、電池のエネルギー密度やサイクル安定性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術的解決策によって上記の技術的課題を解決する。
【0007】
第1の態様において、本発明は、成分Aと、成分Bと、を含むリチウム補充添加剤を提供する。成分Aの一般化学式は、Li6-xM1
1-yN1
yO4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、and Siのうちの1つ又は複数から選択され、N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Siのうちの1つ又は複数から選択される。成分Bの一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)M2
6/(2+a)-2O2、0.2≦a≦1であり、M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr、Wのうちの1つ又は複数から選択され、成分Bの少なくとも一部は、成分Aの表面に位置する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、成分A及び成分Bの前駆体を混合及び焼結してリチウム補充添加剤を得るステップを含む、前記リチウム補充添加剤の製造方法も提供する。
【0009】
第3の態様において、本発明は、前記リチウム補充添加剤を含む正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解質と、を含む電気化学装置も提供する。
【0010】
第4の態様において、本発明は、前記リチウム補充添加剤を含む正極材料又は前記リチウム補充添加剤を含むリチウムイオン二次電池を備える電子機器も提供する。
【0011】
第5の態様において、本発明は、活物質及びリチウム補充添加剤を含む正極材料も提供する。正極材料中、リチウム補充添加剤の質量割合は0.5%~31%である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有利な効果は次の通りである。本発明のリチウム補充添加剤を含む正極材料は、より安定性が高く、理論容量が高く、リチウムイオン電池に使用され、電池のエネルギー密度やサイクル安定性を向上させる。
【0013】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例において特に条件を明示しない実験方法については、慣用の方法及び条件、又は製品の説明書に従って選択される。
【0014】
本発明の第1の態様のリチウム補充添加剤において、好ましくは、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSiである。
【0015】
好ましくは、N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSiである.
【0016】
好ましくは、M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr、又はWである。
【0017】
好ましくは、xの値の範囲は、0≦x≦5であり、例えば、0.4、0.5、0.8、1、2又は4である。
【0018】
好ましくは、yの値の範囲は、0≦y≦0.9であり、例えば、0.2、0.5、0.6又は0.8である。
【0019】
好ましくは、zの値の範囲は、0≦z≦2であり、例えば、0.4、0.5、0.8、1又は1.5である。
【0020】
好ましくは、aの値の範囲は、0.22≦a≦1であり、例えば、0.3、0.5、0.7又は0.8である。
【0021】
好ましくは、成分Bの少なくとも一部は成分Aの表面に被覆されている。好ましくは、“成分A及び成分B”の合計質量に対する成分Aの質量割合は、89%~99.1%であり、例えば、90%、92%、95%、96%、97%、98%又は99%である。
【0022】
好ましくは、リチウム補充添加剤は、コアシェル構造である。コアシェル構造のコアの平均粒径は、0.5μm~15μmであって良い。コアシェル構造のシェルの平均厚さは、20nm~200nmであって良い。
【0023】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、リチウム補充添加剤の化学式は、ALi5+eFe1-eCoeO4/(1-A)Li1.33MnO2又はALi2Ni1-fCufO2/(1-A)Li1.33MnO2であり、式中、0.8≦A<1; 0≦e≦1; 0≦f≦1である。
【0024】
Aは、Li5+eFe1-eCoeO4/Li1.33MnO2におけるLi5+eFe1-eCoeO4の質量割合、又はLi2Ni1-fCufO2/Li1.33MnO2におけるLi2Ni1-fCufO2の質量割合を示す。
【0025】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、Aの値の範囲は、好ましくは、0.89≦A≦0.991であり、例えば、0.9、0.96、0.97、0.98又は0.99である。
【0026】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、eの値の範囲は、0.2≦e≦1であり、例えば、0.5又は0.4である。
【0027】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、fの値の範囲は、0.5≦f≦1であり、例えば、0.8である。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、成分Aの一般化学式は、Li6-xM1
1-yN1
yO4-zであり、式中、0≦x≦5.95、0≦y≦1、0≦z≦2であり、M1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSi であり、N1は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、又はSi であり、成分 Bの一般化学式は、Li1+(a/(2+a))Mn2a/(2+a)M2
6/(2+a)-2O2、0.2≦a≦1であり、M2は、Fe、Ni、Co、Cu、Al、Mn、Ti、Si、Mg、Zr、Nb、La、Sr又はWであり、成分Bの少なくとも一部は、成分Aの表面に被覆される。
【0029】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、成分Aの化学式は、Li2NiO2、Li2Ni0.5Cu0.5O2、Li2Ni0.8Cu0.2O2、Li2Ni0.4Cu0.6O2、Li2Cu2O2、Li5FeO4、Li5.5Fe0.5Co0.5O4、Li5.2Fe0.8Co0.2O4、Li5.6Fe0.4Co0.6O4又はLi6CoO4であり、成分Bの化学式は、Li1.33Mn0.67O2、Li1.26Mn0.63Ni0.11O2、Li1.2Mn0.6Ni0.2O2又はLi1.1Mn0.75Ni0.25O2である。
【0030】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、成分Aの化学式は、Li2NiO2、Li2Ni0.5Cu0.5O2、Li2Ni0.8Cu0.2O2、Li2Ni0.4Cu0.6O2、Li2Cu2O2、Li5FeO4、Li5.5Fe0.5Co0.5O4、Li5.2Fe0.8Co0.2O4、Li5.6Fe0.4Co0.6O4又はLi6CoO4であり、成分Bの化学式は、Li1.33Mn0.67O2である。
【0031】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、成分Aの化学式は、Li2NiO2であり、成分Bの化学式は、Li1.26Mn0.63Ni0.11O2、Li1.2Mn0.6Ni0.2O2又はLi1.1Mn0.75Ni0.25O2である。
【0032】
本発明の第2の態様のリチウム補充添加剤の製造方法において、好ましくは、成分Aの前駆体を先に焼結して成分Aを取得し、次に成分Bの前駆体と混合する。
【0033】
成分Aの前駆体は、Li2O及びNiO又はFe2O3及びLiOHなど、上述の成分Aの一般化学式を満たすように製造され得る当該技術分野における従来の前駆体であって良い。一般に、成分Aの各成分の量は、得られる成分Aの化学式に応じて、対応する化学量論量を選択すれば良い。
【0034】
一次焼結の温度及び時間は、当該技術分野における従来の温度及び時間であって良い。一般に、望ましい一次焼結温度と時間も、選択する成分Aの前駆体の種類によって異なる。例えば、成分Aの前駆体がLi2OとNiOである場合、一次焼結の温度は600℃であり、一次焼結の時間は12時間である。成分Aの前駆体がFe2O3とLiOHである場合、一次焼結は2段階で行われ、第1段階の温度は450℃であり、第1段階の時間は12時間であり、第2段階の温度は600℃であり、第2段階の時間は24時間である。
【0035】
好ましくは、成分Bの前駆体は、MnCO3及びLi2CO3など、上述の成分Bの一般化学式を満たすように製造され得る当該技術分野における従来の前駆体であって良い。一般に、成分Bの各成分の量は、得られる成分Bの化学式に応じて、対応する化学量論量を選択すれば良い。
【0036】
好ましくは、焼結の温度及び時間は、当該技術分野における従来の温度及び時間であって良い。一般に、望ましい焼結温度と時間も、選択する成分Bの前駆体の種類によって異なる。例えば、成分Bの前駆体がMnCO3とLi2CO3である場合、焼結成分の温度は500℃であり、焼結時間は72時間である。
【0037】
第3の形態の正極シートにおいて、好ましくは、正極シートの合計質量に対するリチウム補充添加剤の質量割合は0.5%~31%であり、例えば0.9%、1%、2%、5%、10%、15%、18%、20%、25%、28%又は30%である。
【0038】
好ましくは、リン酸鉄リチウムは、LiFePO4である。
【0039】
好ましくは、リン酸マンガン鉄リチウムは、LiMn0.6Fe0.4PO4である。
【0040】
好ましくは、ニッケル・コバルト・マンガンの三元系材料は、LiNi0.9Co0.06Mn0.04O2である。
【0041】
好ましくは、コバルト酸リチウムは、LiCoO2である。
【0042】
好ましくは、リチウムリッチマンガン系酸化物は、Li1.1Ni0.4Mn0.6O2である。
【0043】
好ましくは、リチウムニッケルマンガン酸化物は、LiNi1.5Mn0.5O4である。
【0044】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、活物質は、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、ニッケル・コバルト・マンガン三元系材料、コバルト酸リチウム、リチウムリッチマンガン系酸化物又はニッケル酸マンガンリチウムである。リチウム補充添加剤の化学式は、ALi5+eFe1-eCoeO4/(1-A)Li1.33MnO2又はALi2Ni1-fCufO2/(1-A)Li1.33MnO2である。具体的には、0.8≦A<1、0≦e≦1、0≦f≦1であり、Aは、Li5+eFe1-eCoeO4/Li1.33MnO2におけるLi5+eFe1-eCoeO4の質量割合、又は、Li2Ni1-fCufO2/Li1.33MnO2におけるLi2Ni1-fCufO2の質量割合を示す。
【0045】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、活性物質は、LiMn0.6Fe0.4PO4であり、リチウム補充添加剤は、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Ni0.5Cu0.5O2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Ni0.8Cu0.2O2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Ni0.4Cu0.6O2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Cu2O2/Li1.33Mn0.67O2、Li5FeO4/Li1.33Mn0.67O2、Li5.5Fe0.5Co0.5O4/Li1.33Mn0.67O2、Li5.2Fe0.8Co0.2O4/Li1.33Mn0.67O2、Li5.6Fe0.4Co0.6O4/Li1.33Mn0.67O2、Li6CoO4/Li1.33Mn0.67O2、Li2NiO2/Li1.26Mn0.63Ni0.11O2、Li2NiO2/Li1.2Mn0.6Ni0.2O2又はLi2NiO2/Li1.1Mn0.75Ni0.25O2である。
【0046】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、活性物質は、LiMn0.6Fe0.4PO4、LiFePO4、LiNi0.9Co0.06Mn0.04O2、Li1.1Ni0.4Mn0.6O2、LiCoO2又はLiNi1.5Mn0.5O4であり、リチウム補充添加剤は、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2である。
【0047】
第4の態様の正極シートの製造方法において、好ましくは、正極集電体は、当該技術分野における従来の正極集電体、一般的にはアルミニウム箔であって良い。
【0048】
好ましくは、乾燥方法は、当該技術分野における従来の方法であって良い。
【0049】
好ましくは、乾燥温度は当該技術分野における従来の温度であって良く、例えば、120℃である。
【0050】
好ましくは、乾燥時間は、当該技術分野における通常の時間であって良く、例えば、10分である。
【0051】
好ましくは、スラリーは、通常、導電剤、溶媒、及び接着剤も含む。
【0052】
具体的には、導電剤は、当該技術分野における従来の導電剤であって良く、例えば、導電性カーボンブラック(スーパーP)である。
【0053】
具体的には、溶媒は、当該技術分野における従来の溶媒であって良く、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP)である。
【0054】
具体的には、接着剤は、当該技術分野における従来の接着剤であって良く、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0055】
好ましくは、スラリーが、活物質、リチウム補充添加剤、導電剤、及びバインダーを含む場合、「正極活物質とリチウム補充添加剤」、導電剤、バインダーの質量比は、(93-98):(1-4):(1-4)であり、例えば、97:1.5:1.5である。
【0056】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、正極シートの製造方法は、活物質及びリチウム補充添加剤を含むスラリーをアルミニウム箔の少なくとも片面に被覆し、120℃で10分間乾燥させるステップを含む。
【0057】
第7の態様の正極材料において、好ましくは、Aの値の範囲は、0.89≦A≦0.991であり、例えば、0.9、0.96、0.97、0.98又は0.99である。
【0058】
好ましくは、e の値の範囲は、0.2≦e≦1であり、例えば、0.5又は0.4である。
【0059】
好ましくは、fの値の範囲は、0.5≦f≦1であり、例えば、0.8である。
【0060】
好ましくは、正極材料中のリチウム補充添加剤の質量割合は、0.9%~31%であり、例えば、1%、2%、5%、10%、15%、18%、20%、25%、28%又は30%である。
【0061】
好ましくは、リン酸鉄リチウムは、LiFePO4である。
【0062】
好ましくは、リン酸マンガン鉄リチウムは、LiMn0.6Fe0.4PO4である。
【0063】
好ましくは、ニッケル・コバルト・マンガンの三元系材料は、LiNi0.9Co0.06Mn0.04O2である。
【0064】
好ましくは、コバルト酸リチウムは、LiCoO2である。
【0065】
好ましくは、リチウムリッチマンガン系酸化物は、Li1.1Ni0.4Mn0.6O2である。
【0066】
好ましくは、lリチウムニッケルマンガン酸化物は、LiNi1.5Mn0.5O4である。
【0067】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、活性物質は、LiMn0.6Fe0.4PO4であり、リチウム補充添加剤は、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Ni0.5Cu0.5O2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Ni0.8Cu0.2O2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Ni0.4Cu0.6O2/Li1.33Mn0.67O2、Li2Cu2O2/Li1.33Mn0.67O2、Li5FeO4/Li1.33Mn0.67O2、Li5.5Fe0.5Co0.5O4/Li1.33Mn0.67O2、Li5.2Fe0.8Co0.2O4/Li1.33Mn0.67O2、Li5.6Fe0.4Co0.6O4/Li1.33Mn0.67O2、Li6CoO4/Li1.33Mn0.67O2、Li2NiO2/Li1.26Mn0.63Ni0.11O2、Li2NiO2/Li1.2Mn0.6Ni0.2O2又はLi2NiO2/Li1.1Mn0.75Ni0.25O2である。
【0068】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、活性物質は、LiMn0.6Fe0.4PO4、LiFePO4、LiNi0.9Co0.06Mn0.04O2、Li1.1Ni0.4Mn0.6O2、LiCoO2又はLiNi1.5Mn0.5O4であり、リチウム補充添加剤は、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2である。
【0069】
当該技術分野における常識に基づいて、上記の好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の好ましい例を得ることができる。
【0070】
実施例1
【0071】
実施例1におけるリチウム補充添加剤の製造プロセスは以下の通りであった。まず成分Aを調製し、次に成分Bの前駆体を成分Aと混合し、成分Aの表面に成分Bを生成させた。具体的には、化学量論比のLi2OとNiOを取り出し、粉砕、混合し、その後、N2下で600℃で12時間焼結して、成分A(Li2NiO2)を得た。次に、0.9MのLi2NiO2を取り出し、成分Bの前駆体(0.02MのMnCO3、0.02MのLi2CO3)と均一に混合し、500℃で72時間焼結して、リチウム補充添加剤を製造した(ここで、成分Bは成分Aの表面に部分的に被覆され、成分Bの化学式は、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2で表される)。
【0072】
実施例1の正極シートにおける正極材料は、LiMn0.6Fe0.4PO4(成分C、すなわち活物質)及びLi2NiO2/Li1.33MnO2(成分A+成分B、すなわちリチウム補充添加剤)を含み、ここで、成分Cが“成分A+成分B+成分C+スーパーP+PVDF”の合計質量に占める割合は92.15%であり、“成分A+成分B+成分C”の合計質量に対する“成分A+成分B”の質量割合は5%であった。正極シートの正極材料には、さらに導電性カーボンブラック(スーパーP)とポリフッ化ビニリデン(PVDF)も含まれていた。LiMn0.6Fe0.4PO4は、Li2NiO2/Li1.33MnO2とは反応せず、物理的に混合されるだけであった。“成分A+成分B+成分C”、スーパーP、PVDFの質量割合は、97:1.5:1.5であった。
【0073】
実施例1の正極シートの作製方法は、以下の工程を含む。まず、活物質、スーパーP、及びPVDFを上記の割合で混合し、次いで、高速撹拌しながらN-メチルピロリドン(NMP)を徐々に添加して、一定の粘度を有する正極スラリーを調製した。次に、調製したスラリーをアルミ箔上に均一に塗布し、120℃の送風乾燥オーブンで10分間乾燥させた。最後に、乾燥させた電極シートを圧延、切断して正極シートを作製した。
【0074】
実施例24におけるリチウム補充添加剤の具体的な製造プロセスは、Fe2O3とLiOHを1:10の比率で混合し、次にN2下で450℃で12時間焼結し、冷却して形成した。粉砕後、混合物をN2下で600℃で24時間焼結して LFO、つまり成分A(Li5FeO4)を得た後、0.9 MのLi5FeO4を取り出し、成分Bの前駆体(0.02 MのMnCO3、0.02MのLi2CO3)と均一に混合し、500℃で72時間焼結した。
【0075】
実施例2~6では、正極材料中の成分Cの種類を変更した(表2に示す)以外は、その他の実験条件は全て実施例1と同様とした。成分Cは、従来の市販品であって良い。
【0076】
実施例7~13では、正極材料中の“成分A+成分B”の質量割合を変更した(表2に示す)以外は、その他の実験条件は全て実施例1と同様とした。
【0077】
実施例14~19は、“成分A+成分B”の合計質量に対する成分Aの質量割合を変更した(表2に示す)以外は、その他の実験条件は全て実施例1と同様とした。
【0078】
実施例20~28では、成分Aの種類を変更した(表1に示す)以外は、その他の実験条件は全て実施例1と同様とした。成分AがLixFeOyの場合、成分Aの前駆体はFe2O3及びLiOHであり、各前駆体の相対質量比は、設計された成分Aの最終化学式に従って調整することができる。成分AがLixNiCuOの場合、成分Aの前駆体はNiO、CuO、及びLi2Oであり、各前駆体の相対質量比は、設計された成分Aの最終化学式に従って調整することができる。
【0079】
実施例29~31では、成分Bの種類を変更した(表1に示す)以外は、その他の実験条件は全て実施例1と同様とした。成分Bの前駆体は、Li2CO3、MnCO3、NiCO3、及びCoCO3であり、各前駆体の相対質量比は、設計された成分Bの最終化学式に従って調整することができる。
【0080】
実施例1~31で製造したリチウム補充添加剤(成分A+成分B)は、コアシェル構造であった。具体的には、コアの平均粒径は0.5μm~15μmであり、シェルの平均厚さは20nm~200nmであった。
【0081】
実施例2
【0082】
LiFePO4(成分C)
【0083】
Li2NiO2/Li1.33MnO2(成分A+成分B)
【0084】
具体的には、C成分が“成分A+成分B+C成分+スーパーP+PVDF”の合計質量に占める割合は92.15%であった。“成分A+成分B+成分C”の合計質量に対する“成分A+成分B”の質量割合は5%であった。
【0085】
サイクル試験電圧範囲: 2.5V~3.65V
【0086】
実施例3
【0087】
LiNi0.9Co0.06Mn0.04O2(成分C)
【0088】
Li2NiO2/Li1.33MnO2(成分A+ 成分B)
【0089】
具体的には、C成分が“成分A+成分B+C成分+スーパーP+PVDF”の合計質量に占める割合は92.15%であった。“成分A+成分B+成分C”の合計質量に対する“成分A+成分B”の質量割合は5%であった。
【0090】
サイクル試験電圧範囲: 2.8V~4.2V
【0091】
実施例4
【0092】
LiNi1.5Mn0.5O4(成分C)
【0093】
Li2NiO2/Li1.33MnO2(成分A+成分B)
【0094】
具体的には、C成分が「成分A+成分B+C成分+スーパーP+PVDF」の合計質量に占める割合は92.15%であった。“成分A+成分B+成分C”の合計質量に対する“成分A+成分B”の質量割合は5%であった。
【0095】
サイクル試験電圧範囲:2.8V~4.45V
【0096】
実施例5
【0097】
LiCoO2(成分C)
【0098】
Li2NiO2/Li1.33MnO2(成分A+ 成分B)
【0099】
具体的には、C成分が“成分A+成分B+C成分+スーパーP+PVDF”の合計質量に占める割合は92.15%であった。“成分A+成分B+成分C”の合計質量に対する“成分A+成分B”の質量割合は5%であった。
【0100】
サイクル試験電圧範囲:2.8V~4.7V
【0101】
実施例に含まれる主な条件パラメータは、次の表1に示す通りである。
【表1】
【0102】
効果に関する実施例
【0103】
(1)固形分と粘度の反発試験
【0104】
試験対象:実施例1~31、比較例1~8で製造した正極シート。
【0105】
試験方法:正極スラリーの粘度を5000±500mPa・sに調整し、実際の固形分を試験し、正極スラリーを500mLビーカーに12時間入れて、再度粘度を試験した。
【0106】
試験結果:以下の表2に示す通りである。
【0107】
以下の効果に関する実施例(2)~(4)における試験対象電池の製造方法は以下の通りである。準備した正極シートと黒鉛負極シートを実装して、1Ahソフトパック電池を作製した。液体注入後、4.5Vの化成処理を実行した(つまり、液体注入後のバッテリーの最初の充電プロセスであり、このプロセスにより、バッテリー内の活物質が活性化され、リチウム電池が活性化される)。そして、エージングプロセスの後、新しいバッテリーを得た。
【0108】
(2)容量試験
【0109】
試験方法:実施例で作製した正極を実装した電池セルに対し、25℃、2.0V~4.2V、0.33℃で定電流定電圧充電(終止電流0.05C)を行い、0.33Cで定電流放電を行った。放電容量がその容量である。
【0110】
試験結果:以下の表2に示す通りである。
【0111】
(3)サイクル試験
【0112】
試験方法:実施例で作製した正極を実装した電池セルを2.5V~4.2Vの範囲で、45℃、1Cで500サイクル充放電し、1サイクル目に対する500サイクル目の容量比を容量維持率として記録した。
【0113】
試験結果:以下の表2に示す通りである。
【0114】
(4)貯蔵ガス製造試験
【0115】
試験方法:60℃、4.2Vで、実施例で作製した正極を実装した電池セルを満充電して貯蔵し、30日目と1日目の容量差を記録し、この値を初日の容量で割って、その貯蔵容量増加率を計算した。
【0116】
【0117】
表1~2のデータを分析すると、次のことが分かる。実施例7~13は、実施例1と比較して、“成分A+成分B+成分Cの合計質量”に占める“成分A+成分B”の質量割合のみを変更しており、その他の条件は同一である。したがって、グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率、及び60℃での貯蔵容量増加率にさまざまな程度の影響を与える。具体的には、“成分A+成分B+成分Cの合計質量”に占める“成分A+成分B”の質量割合が5%以下の場合、例えば、1%~5%の場合、質量割合が増加するにつれてグラム容量、45℃でのサイクル容量維持率も増加し、60℃での貯蔵容量増加率は減少した。“成分A+成分B+成分Cの合計質量”に占める“成分A+成分B”の質量割合が5%超、35%以下である場合、例えば、5%~31%の場合、質量割合が増加するにつれて、グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率は減少し、60℃での貯蔵容量増加率は増加した。
【0118】
実施例1と比較して、実施例14~19は、“成分A+成分Bの合計質量”に占める成分Aの質量割合のみを変更しており、その他の条件は同一である。したがって、グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率、及び60℃での貯蔵容量増加率にさまざまな程度の影響を与える。具体的には、“成分A+成分Bの合計質量”に対する成分Aの質量割合が89%を超える場合、例えば98%~99.1%の場合、質量割合が増加するにつれて、グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率は基本的に変化せず、60℃での貯蔵容量増加率は増加した。“成分A+成分Bの合計質量”に対する成分Aの質量割合が89%~97%など98%未満の場合、質量割合が低下するにつれて、グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率はわずかに減少し、60℃での貯蔵容量増加率は減少した。
【0119】
実施例1と比較して、実施例20~28は、成分Aの種類のみを変更しており、その他の条件は同一である。グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率、及び60℃での貯蔵容量増加率に様々な程度の影響を与えた。例えば、実施例23では、成分AがLi2Cu2O2の場合、グラム容量は134.8mAh/gであり、45℃でのサイクル容量維持率は92.4%であり、60℃での貯蔵容量増加率は4.6%であった。実施例1、20~22、24~28と比較すると、実施例23は、60℃での貯蔵容量増加率が最も小さかった。
【0120】
実施例1と比較して、実施例29~31は、成分Bの種類のみを変更しており、その他の条件は同一である。グラム容量、45℃でのサイクル容量維持率、及び60℃での貯蔵容量増加率に様々な程度の影響を与えた。例えば、実施例1では、成分BがLi1.33Mn0.67O2の場合、グラム容量は(137.6mAh/g)であり、45℃でのサイクル容量維持率は(92.8%)であり、60℃での貯蔵容量増加率(5.3%)であり、いずれも実施例29~31より良好であった。
【0121】
実施例1と比較して、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2は、比較例1には含まれていないが、比較例1のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0122】
実施例2と比較して、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2は、比較例2には含まれていないが、比較例2のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0123】
実施例3と比較して、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2は、比較例3には含まれていないが、比較例3のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0124】
実施例4と比較して、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2は、比較例4には含まれていないが、比較例4のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0125】
実施例5と比較して、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2は、比較例5には含まれていないが、比較例5のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0126】
実施例6と比較して、Li2NiO2/Li1.33Mn0.67O2は、比較例6には含まれていないが、比較例6のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0127】
実施例1~19と比較して、比較例7は“成分A+成分B”を含まないが、比較例7のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はともに低下し、60℃での貯蔵容量増加率が増加した。
【0128】
実施例24と比較して、比較例8は“成分A+成分B”を含まないが、比較例8のグラム容量及び45℃でのサイクル容量維持率はいずれも大幅に低下し、60℃での貯蔵容量増加率が大幅に増加した。
【0129】
上記のデータを分析することにより、発明者らは、上記の実験現象の理由は次のとおりであると結論付けた。1.活物質成分Cに対するリチウム補充添加剤“成分A+成分B”の量の増加により、循環及び貯蔵が改善される。しかしながら、リチウム補充添加剤“成分A+成分B”は導電性が悪く、多すぎると正極材料の電気的特性に悪影響を及ぼし、正極材料の劣化を招く。
【0130】
2.成分Bの主作用は成分Aの安定化であり、副次作用はリチウムの補給であり、成分Aの主作用はリチウムの補給である。成分Bの増量により、リチウム補充添加剤“成分A+成分B”の安定性が向上するが、成分Bが多すぎると、リチウム補充添加剤“成分A+成分B”のリチウム補給効果が低下する。
【0131】
3.成分Aの種類が異なると、電気化学的特性も異なる。
【0132】
さらに、本発明者らは、焼成温度を調整することにより、リチウム補充添加剤中の成分Bを成分Aの表面により均一に被覆できることを実験により見出した。具体的には、成分Bの前駆体中のMn源は、まず低温(例えば、300℃~500℃)で焼成され、成分Aの表面に被覆され、次に高温(例えば、600℃~900℃)で焼成され、成分Bの前駆体中のLi源と反応して、成分Bが成分Aの表面により均一に被覆されたリチウム補充添加剤をよりよく形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のリチウム補充添加剤を含む正極材料は、より安定性が高く、理論容量が高く、リチウムイオン電池に使用され、電池のエネルギー密度やサイクル安定性を向上させる。
【0134】
以上、特定の実施形態により、本発明の目的、技術的解決策、及び有利な効果をさらに詳細に説明した。上記の説明は本発明の特定の実施形態にすぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。本発明の精神及び原理内で行われるあらゆる修正、同等の置換、改良などはすべて本発明の範囲内に含まれるものとする。
【外国語明細書】