(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155706
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アルミニウム合金鋳物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 21/04 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B22D21/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217502
(22)【出願日】2023-12-24
(31)【優先権主張番号】112114626
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523485320
【氏名又は名称】行富投資有限公司
【氏名又は名称原語表記】HF investment Ltd.
【住所又は居所原語表記】2F.,No.16,Ln.31,Fuxiang St.,Xitun Dist.,Taichung City407009,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】李健豪
(57)【要約】
【課題】本発明は、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質による環境汚染および鍛造加工工程が多工程且つ高コストである問題を解決するアルミニウム合金鋳物の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、複数のリサイクルアルミニウム材料を成形部材内に入れ、前記リサイクルアルミニウム材料が前記成形部材を満たすまで続けるステップと、圧縮成形した前記リサイクルアルミニウム材料を金型に入れるステップと、アルミニウム溶湯を注いで前記リサイクルアルミニウム材料を密封し、アルミニウム合金鋳物を形成するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリサイクルアルミニウム材料を成形部材内に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記成形部材を満たすまで続け、前記成形部材は、1つ以上のキャビティを含み、前記キャビティは、1つ以上の開口を含んで前記リサイクルアルミニウム材料を前記キャビティ内に入れることを可能にするステップと、
圧縮成形した前記リサイクルアルミニウム材料を金型に入れるステップと、
アルミニウム溶湯を注いで前記リサイクルアルミニウム材料を密封し、アルミニウム合金鋳物を形成するステップと、
を含む、アルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項2】
前記リサイクルアルミニウム材料を、前記金型の1つ以上の金型キャビティの少なくとも一部の領域に配置する請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項3】
前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑である請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項4】
前記リサイクルアルミニウム材料は、シュレッドしたアルミ缶またはアルミ箔パッケージである請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項5】
前記成形部材は、前記金型の金型キャビティの少なくとも一部に対応する請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項6】
前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材に充填した後、さらに、前記成形部材に圧力を加えて、前記成形部材を前記金型の金型キャビティの少なくとも一部の形状と対応させる請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項7】
前記リサイクルアルミニウム材料は、0.5~8重量%の有機物を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項8】
前記有機物は、アルカン、脂質、樹脂またはポリエステルを含む請求項6に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項9】
前記アルミニウム溶湯は、アルミニウムに次ぐ含有量のアルミニウムの共晶元素を含有する請求項1に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム溶湯は、アルミニウムに次ぐ含有量のケイ素元素を含有する請求項1又は8又は9に記載のアルミニウム合金鋳物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造方法、特にアルミニウム合金の鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環経済は、現在社会において既に顕著な科学となっており、従来の資源採掘から生産、消費および最終処分に至る直線的な経済モデルとは異なり、資源の回収および再利用を基礎とした経済モデルにより、資源の消耗及び浪費を最大限減少させることが期待されている。循環経済モデルは、資源のリサイクルを促進し、資源の回収、再生および再利用などの手段を通じて資源の価値を最大化し、持続可能な経済発展モデルを実現する。
【0003】
金属および関連製造業は、重要な資源消費者および環境汚染の原因の1つであるため、循環経済の導入はこの産業にとって極めて重要である。金属をリサイクルすると原材料とエネルギーを大幅に節約し、炭素排出量を削減でき、回収された金属は新しい製品の製造に使用できるため、多くの関連業界はすでに金属リサイクルを導入している。しかし、現在のアルミニウムのリサイクルモデルでは、回収したアルミニウムを製錬および焼き戻しする必要があり、エネルギー消費が極めて高く、作業工数が多く、可動コストが高く、加熱による酸化により生成率を損失させて大量のアルミニウム金属を浪費し、アルミニウムを再溶解すると、有毒な煙、粉塵およびスラグが発生する。
【0004】
また、現在のアルミニウムリサイクルモデルが収集するリサイクルアルミニウム材料は、例えば、アルミ缶、アルミ箔パッケージなど又はツールマシンで加工、切削した後に発生するアルミニウム廃材であり、何れもそのリサイクルアルミニウム材料の回収前の使用の必要及び特性によってそのリサイクルアルミニウム材料に一定の程度の有機物が混在し、例えば、アルミ缶は、内部表面に樹脂コーディング層および外部の印刷塗料層を含み、アルミニウム廃材は、切削液等を含み、これらのリサイクルアルミニウム材料に付着した有機物は、現在のアルミニウムリサイクルプロセスでは、そのリサイクルアルミニウム材料を再溶解する過程でダイオキシンなどの有機汚染物質が生成され、環境中に放出され、深刻な環境汚染および公害を招く。
【0005】
一方、アルミニウム業界のアルミニウム製品の製造、生産の多くは、鍛造加工が使用され、成形に多くのステップの複雑な加工が必要となるが、鋳造は鍛造加工に比べ、迅速かつ容易にアルミニウム製品を成形することができ、製造コストを低減することができる。これに鑑み、アルミニウム廃材のリサイクルにより発生する有機汚染物質を削減し、循環経済を実践する鋳造方法を開発することが、関連分野での緊急の開発目標となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のアルミニウムリサイクルプロセスにおける、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質による環境汚染および鍛造加工工程が多工程且つ高コストである問題を解決するアルミニウム合金鋳物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のアルミニウムリサイクルプロセスにおける、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質による環境汚染および鍛造加工工程が多工程且つ高コストである問題を解決するため、本発明が提供するアルミニウム合金鋳物の製造方法は、次のステップを含む。複数のリサイクルアルミニウム材料を成形部材内に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記成形部材を満たすまで続ける。ここで、前記成形部材は、1つ以上のキャビティを含み、前記キャビティは、1つ以上の開口を含んで前記リサイクルアルミニウム材料を前記キャビティ内に入れることを可能にする。圧縮成形した前記リサイクルアルミニウム材料を金型に入れる。アルミニウム溶湯を注いで前記リサイクルアルミニウム材料を密封し、アルミニウム合金鋳物を形成する。
【0008】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料を、前記金型の1つ以上の金型キャビティの少なくとも一部の領域に配置する。
【0009】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑である。
【0010】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料は、シュレッドしたアルミ缶またはアルミ箔パッケージである。
【0011】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記成形部材は、前記金型の金型キャビティの少なくとも一部に対応する。
【0012】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材に充填した後、さらに、前記成形部材に圧力を加えて、前記成形部材を前記金型の金型キャビティの少なくとも一部の形状と対応させる。
【0013】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料は、0.5~8重量%の有機物を含有する。
【0014】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記有機物は、アルカン、脂質、樹脂またはポリエステルを含む。
【0015】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記アルミニウム溶湯は、アルミニウムに次ぐ含有量のアルミニウムの共晶元素を含有する。
【0016】
前記アルミニウム合金鋳物の製造方法において、前記アルミニウム溶湯は、アルミニウムに次ぐ含有量のケイ素元素を含有する。
【発明の効果】
【0017】
上記の説明から、本発明は以下の利点を有することがわかる。
1.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、ダイオキシンなどの有機汚染物質の発生を大幅に削減できる。
2.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、多くのエネルギーを節約でき、アルミニウム廃材を溶解する時に有毒な煙、粉塵およびスラグを発生させることがない。
3.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、リサイクル工程におけるアルミニウムの酸化による生産率の低下を回避し、アルミニウム合金鋳物にリサイクルアルミニウム材料を含有させることにより、アルミニウム原料の使用量を大幅に削減できる。
4.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を形成された鋳物内に覆い包ませ、有害な有機物質が鋳物の中に密封されて包まれ、環境に漏出して汚染を引き起こすことがなく、有毒な有機物を含むアルミニウム廃材の処理問題を解決する。
5.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料に有機物を含むことによってプロセス中に有機汚染物質を生成することがなく、前記リサイクルアルミニウム材料の前処理プロセスを簡易化、更には省くことができ、時間、資源およびコストを節約し、環境保護に有利である。
6.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法により形成されたアルミニウム合金鋳物は、ハイエントロピー効果により各元素の固溶体相の形成が促進され、合金の温度に伴う相変化を相対的に単純にさせるため、ハイエントロピー合金の特性を備え、結晶構造が安定し且つ緻密であり、脆性金属化合物の形成を抑制し、アルミニウム合金鋳物の延性と靭性を大幅に向上させ、従来のアルミニウム合金鋳造プロセスにおける金属の靭性と強度が弱いという問題を改善し、アルミニウム原料の使用を減少させ、生産コストを大幅に削減し、鋳物の品質を向上させ、資源を節約することができる。
7.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、アルミニウム合金の切削加工で発生するアルミニウム屑や使用済みのアルミ缶など、従来技術では処理が困難なアルミニウム廃材をリサイクル処理することができ、これらのアルミニウム屑が大きな表面積及び体積比を有し、酸化し易く、経常的に潤滑剤、切削液又は飲料残渣及び塗料層との混合によって従来技術で再溶解及びリサイクル処理が困難である問題を解決する。
8.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、混合源からのアルミニウム廃材を原料として使用できるため、アルミニウムのリサイクルに必要な前処理および分類選別の時間と人件費を大幅に削減し、リサイクル処理のプロセスを簡素化することができ、且つ最終製品の鋳物の品質に影響を与えることがない。
9.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、重力鋳造により鋳物を形成する方法であり、他の鋳造技術と比較して、低コストであり、金属材料の浪費が少なく、気泡などを減らすことができ、他の方法に比較して表面の欠陥が少なく、且つ本発明で使用される鋳物アルミニウム溶湯は、鋳造性能と耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が小さく流動性が良いため、高精度で、複雑な形状、且つ多様な用途の鋳物を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下では、各実施例の説明に使用する必要がある図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明の一部の例示又は実施例にすぎず、当業者は、創造的な作業をすることなく、これらの図面に従って他の同様の場面に本発明を適用することもできる。文脈から明らかでない限り、又は別途説明がない限り、図中の同様の部材符号は同様の構造又は動作を表す。
【0020】
本発明及び特許請求の範囲に示すように、文脈が例外を明確に示していない限り、「一」、「1つ」、「1種」又は「前記」等の単語は、特に単数を指すものではなく、複数を含んでもよい。一般的に言えば、「備える」及び「含む」という用語は、明確に識別されたステップ及び要素を含むこと示すのみであり、これらのステップ及び要素は排他的なリストを構成するものではなく、方法又は装置は他のステップ又は要素も含んでもよい。
【0021】
本発明では、フローチャートを使用して、本発明の実施例のシステムに従って実行される操作を説明する。なお、先又は後の動作は、必ずしも順に従って正確に実行される必要はなく、逆の順序で処理又は各ステップを同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらの過程に追加してもよく、これらの過程から一つ又は幾つかの操作を除いてもよい。
【0022】
図1は、本発明のステップ図である。本発明は、主にステップS10~ステップS30を含む。
【0023】
ステップS10:複数のリサイクルアルミニウム材料を成形部材に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が成形部材を満たすまで続ける。このステップS10では、収集した前記リサイクルアルミニウム材料を集中させ、前記成形部材に入れて圧縮する。前記成形部材中の前記リサイクルアルミニウム材料の密度や緻密性は、必要に応じて調整することができ、前記リサイクルアルミニウム材料が圧縮により収縮する場合、前記リサイクルアルミニウム材料が完全に前記成形部材を満たすまで、より多くの前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材に投入することができる。ここで、前記成形部材は、1つ以上のキャビティを含み、前記キャビティは、1つ以上の開口を含み、前記リサイクルアルミニウム材料を前記キャビティ内に入れることを可能にする。アルミニウム合金ハンマー鋳物を製造する実施例では、前記成形部材は中空管であり、前記中空管の断面は円形であり、前記中空管は、両端に前記開口を有するか、一端のみに前記開口を有する管材であってよい。ここで、前記成形部材の材質は限定されない。好ましくは、前記成形部材は、アルミニウム合金で形成される。
【0024】
更に、前記成形部材に前記リサイクルアルミニウム材料を充填した後、前記成形部材に圧力を加えて所望の形状に成形することもできる。アルミニウム合金ハンマー鋳物を製造する実施例では、前記成形部材は、ハンマーヘッドの形状に成形される。
【0025】
ここで、前記リサイクルアルミニウム材料としては、各種リサイクルアルミニウム廃材を使用することができる。例えば、前記リサイクルアルミニウム材料としては、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生されるアルミニウム屑、又は前処理してシュレッドした後のリサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップなどであってよい。一実施例では、前記成形部材に充填される前記リサイクルアルミニウム材料は、何れも単一の供給源からのリサイクルアルミニウム材料としてもよい。いわゆる単一の供給源とは、前記リサイクルアルミニウム材料がすべて、同じ合金系、同じ米国アルミニウム協会合金番号、または同じプロセスで生産されたアルミニウム合金製品から生成又はリサイクルされたアルミニウム合金廃材であることを意味する。一実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源は、同じ工作機械で同じ切削加工を施して製造されたアルミニウム合金のアルミニウム屑である。別の実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源は、リサイクルアルミニウム合金のイージーオープン缶の破片である。別の実施例では、同様の供給源からのリサイクルアルミニウム合金のイージーオープン缶がシュレッドされた後に前記成形部材内に入れて圧縮及び充填される。ただし、他の実施例では、前記成形部材には、様々な異なる供給源からの前記リサイクルアルミニウム材料が含まれ、アルミニウム廃材の複雑な選別及び分類過程を必要としない場合もある。
【0026】
ここで、前記リサイクルアルミニウム材料は、まず一連の前処理を経た後、前記成形部材内に入れて圧縮および充填することができる。一実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、予備洗浄と空気分離を経て大きな不純物が除去され、その後磁気分離を使用して強磁性金属が除去される。ただし、これらの前処理は必ずしも必要なわけではなく、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源に応じて適切な前処理方法を選択することができる。例えば、一実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑であり、前記リサイクルアルミニウム材料に対して予備洗浄と切削液の粗除去を行うだけで前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材内に投入し、充填及び圧縮することができる。
【0027】
したがって、前記リサイクルアルミニウム材料には、残留する複数種の有機化合物が含まれる。ここで、一実施例において、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑であり、前記リサイクルアルミニウム材料に残留する複数種の前記有機化合物は、ほとんどが切削液であり、前記切削液には、鉱物油、乳化剤、水、防錆添加剤、消泡剤などの成分を含み得る。別の実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、前記リサイクルアルミニウム材料は、リサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップであり、前記リサイクルアルミニウム材料に残留する複数種の前記有機化合物は、アルミ箔パッケージに含まれるセルロースおよび半繊維またはリグニンなどの紙成分、又はアルミニウム缶胴部に完全に除去されていない印刷層およびアルミ缶内装の塗料層でありえ、前記塗料層の成分は、蝋等の各種脂質、又はエポキシ樹脂などの各種樹脂、又はアクリル酸共重合体やポリカーボネートなどの各種ポリエステルの成分であり得る。別の実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑およびリサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップを同時に含み、従って、前記リサイクルアルミニウム材料は、上記多種の有機物質が残留し、これらの有機化合物が膨大な時間、エネルギー及び資源を費やすことなく、前処理過程で完全に除去されることが困難である。しかし、本ステップS10では、前記リサイクルアルミニウム材料は、煩雑な前処理工程を必要とせずにそれを前記成形部材に投入し、圧縮および充填することができる。
【0028】
ステップS20:圧縮成形した前記リサイクルアルミニウム材料を金型に入れる。本ステップS20では、前記リサイクルアルミニウム材料は前記成形部材に圧縮して充填されており、圧縮した前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型に投入する。本ステップS20は、前記成形部材から前記リサイクルアルミニウム材料を取り出して前記金型に入れることができる。前記リサイクルアルミニウム材料は圧縮されているため、取り出し時に前記リサイクルアルミニウム材料は、前記成形部材内での形状を維持して飛散や変形が生じることなく、前記圧縮成形された前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型に1つ以上の金型キャビティに入れることができ、前記金型は、1つ以上の締め付け装置を含み、圧縮した前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型キャビティ内に安定して固定させることができる。ここで、前記圧縮成形された前記リサイクルアルミニウム材料は、前記金型の前記金型キャビティの一部の領域にのみ配置され得る。圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料は、金型内での前記リサイクルアルミニウム材料のズレを防止するために、カバー材、固定材又は前記締付け装置などで固定することができる。
【0029】
好ましくは、本ステップS20は、前記リサイクルアルミニウム材料で満たされた前記成形部材を前記金型に直接投入して、前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材から取り出す必要がない。好ましくは、前記成形部材の材質は、アルミニウム合金であり、且つ前記成形部材及び前記金型の前記金型キャビティの形状の少なくとも一部の形状に対応し、前記成形部材を前記金型キャビティの形状に沿って貼り合わせ可能にし、前記成形部材及び前記成形部材の前記キャビティ内部の前記リサイクルアルミニウム材料が前記金型内でズレを生じることを回避する。アルミニウム合金ハンマー鋳物を製造する一実施例では、圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を含む前記成形部材は、前記金型のハンマーヘッド部分の前記金型キャビティ内に配置される円筒である。
【0030】
ステップS30:アルミニウム溶湯を注いで前記リサイクルアルミニウム材料を密封してアルミニウム合金鋳物を形成する。本ステップS30では、前記金型に入れた前記リサイクルアルミニウム材料にアルミニウム溶湯を注ぎ、前記アルミニウム溶湯が前記リサイクルアルミニウム材料を完全に覆い密閉し、冷却固化して脱型し、アルミニウム合金鋳物を成形する。ここで、前記アルミニウム溶湯は、溶融したアルミニウム合金であり、前記アルミニウム溶湯は、前記リサイクルアルミニウム材料を完全に密封し、前記リサイクルアルミニウム材料を前記アルミニウム合金鋳物の内部に完全に密封させ、前記リサイクルアルミニウム材料に含まれる有機物を前記アルミニウム合金鋳物の内部に包んで密封させる。完成した前記アルミニウム合金鋳物は、さらに加工および修正することができ、例えば、表面を平滑にするためのサンドブラストや、アルミニウム合金鋳物の特性を向上させ、内部応力を除去するための熱処理などの工程である。
【0031】
一部の実施例では、前記アルミニウム溶湯と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金組成を有し、即ち、前記アルミニウム溶湯と前記リサイクルアルミニウム材料は同じ合金系または同じ米国アルミニウム協会合金番号を有する。一実施例では、類似供給源からのリサイクルアルミニウム合金のイージーオープン缶をシュレッドした後、前記中空管に入れて圧縮および充填して成形する前記リサイクルアルミニウム材料は、本ステップでは、類似合金系の前記アルミニウム溶湯を注入して、前記鋳造したアルミニウム合金に同じ均質なアルミニウム合金の特性を維持させる。
【0032】
前記アルミニウム溶湯は、高い流動性を有し、鋳造時に鋳物の隙間を容易に埋めることができるように、アルミニウムに次ぐ含有量のアルミニウムの共晶元素を含むことが好ましい。いわゆる「アルミニウムの共晶元素」とは、本発明では、前記アルミニウム溶湯がアルミニウム元素と混合した後、それぞれの融点よりも低い温度で加熱して溶解して均一な混合物を形成できる元素が含まれていることを意味する。より好ましくは、前記アルミニウムの共晶元素はケイ素であり、即ち、前記アルミニウム溶湯は、アルミニウムに次いで含有量が多いケイ素元素を含む。一実施例では、前記アルミニウム溶湯は、6.5~12重量%のケイ素元素を含む。
【0033】
<本発明の製造方法の鋳物への応用>
本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、上記実施例と同様に軽量で耐久性のあるアルミニウムハンマーの製造に使用できるほか、本発明の製造方法は、彫像、芸術品又は装飾品などのアルミニウム合金鋳物を製造することもでき、前記リサイクルアルミニウム材料は、彫像、芸術品又は装飾品のアルミニウム合金鋳物の充填材料としても使用でき、アルミニウム原料の必要を減少させることができるだけでなく、アルミニウム廃材が処理が困難であるという問題も解決できる。一実施例では、本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、アルミニウム鋳物ドアの製造に用いることができる。
【0034】
また、本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、自動車のバンパや交通信号柱、街路灯柱などの製造にも利用でき、前記リサイクルアルミニウム材料が前記金型に配置されるレイアウト又は前記成形部材の配置によって前記アルミニウム合金鋳物の異なる領域の材料特性を変化させることができ、例えば、一実施例では、アルミニウム合金の自動車バンパの鋳物において、前記リサイクルアルミニウム材料を前記アルミニウム合金自動車バンパの両端付近部分に設置し、前記部分が衝撃を受ける時に比較的大きく変形し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収することができる。別の実施形態では、アルミニウム合金街路灯柱の鋳物において、前記アルミニウム合金街路灯柱の基部に近い部分に前記リサイクルアルミニウム材料を充填して配置することにより、前記アルミニウム合金街路灯柱の基部をより安定させる。
【0035】
上記の説明から、本発明は以下の効果を達成することが分かる。
1.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、ダイオキシンなどの有機汚染物質の発生を大幅に削減できる。
2.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、多くのエネルギーを節約でき、アルミニウム廃材を溶解する時に有毒な煙およびスラグを発生させることがない。
3.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、リサイクル工程におけるアルミニウムの酸化による生産率の低下を回避し、アルミニウム合金鋳物にリサイクルアルミニウム材料を含有させることにより、アルミニウム原料の使用量を大幅に削減できる。従来技術のアルミニウム廃材リサイクルでは、新たな廃材の生成量が高く、最終的にリサイクルされる金属の割合は52%を超えないが、本発明のリサイクル材料の利用率は約96%であり、リサイクル可能なアルミニウムを大幅に増加させる。
4.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料を形成された鋳物内に覆い包ませ、有害な有機物質が鋳物の中に密封されて包まれ、環境に漏出して汚染を引き起こすことがなく、有毒な有機物を含むアルミニウム廃材の処理問題を解決する。
5.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料に有機物を含むことによってプロセス中に有機汚染物質を生成することがなく、前記リサイクルアルミニウム材料の前処理プロセスを簡易化、更には省くことができ、時間、資源およびコストを節約し、環境保護に有利である。
6.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、アルミニウム合金の切削加工で発生するアルミニウム屑や使用済みのアルミ缶など、従来技術では処理が困難なアルミニウム廃材をリサイクル処理することができ、これらのアルミニウム屑が大きな表面積及び体積比を有し、酸化し易く、経常的に潤滑剤、切削液又は飲料残渣及び塗料層との混合によって従来技術で再溶解及びリサイクル処理が困難である問題を解決する。
7.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、混合源からのアルミニウム廃材を原料として使用できるため、アルミニウムのリサイクルに必要な前処理および分類選別の時間と人件費を大幅に削減し、リサイクル処理のプロセスを簡素化することができ、且つ最終製品の鋳物の品質に影響を与えることがない。
8.本発明のアルミニウム合金鋳物の製造方法は、重力鋳造により鋳物を形成する方法であり、他の鋳造技術と比較して、低コストであり、金属材料の浪費が少なく、気泡などを減らすことができ、他の方法に比較して表面の欠陥が少なく、且つ本発明で使用される鋳物アルミニウム溶湯は、鋳造性能と耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が小さく流動性が良いため、高精度で、複雑な形状、且つ多様な用途の鋳物を生成することができる。
【0036】
上記の説明及び詳述に基づき、当業者は、上記の実施方式に変更及び修正を加えることもできることに留意されたい。従って、本開示は、上で開示及び説明した具体的実施例に限定するものではなく、本開示に対するいくつかの均等の修正及び変更も、本開示の特許請求の範囲の保護範囲内にあるべきである。また、本明細書では一連の特定の用語を使用しているが、これらの用語は説明の便宜のためのみであり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0037】
S10 ステップ
S20 ステップ
S30 ステップ