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  • 特開-アルミニウム合金脱酸材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155708
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】アルミニウム合金脱酸材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20241024BHJP
   C21C 7/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C22B7/00 A
C21C7/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217504
(22)【出願日】2023-12-24
(31)【優先権主張番号】112114628
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523485320
【氏名又は名称】行富投資有限公司
【氏名又は名称原語表記】HF investment Ltd.
【住所又は居所原語表記】2F.,No.16,Ln.31,Fuxiang St.,Xitun Dist.,Taichung City407009,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】李健豪
【テーマコード(参考)】
4K001
4K013
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA22
4K013EA19
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来のアルミニウムリサイクルプロセスにおける、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質による環境汚染を解決するアルミニウム合金脱酸材の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、複数のリサイクルアルミニウム材料をカバー材内に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記カバー材を満たすまで続け、アルミニウムパッケージを形成するステップと、前記アルミニウムパッケージを熱間押出によってアルミニウムストリップに成形するステップと、前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断してアルミニウム合金脱酸材を完成させるステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリサイクルアルミニウム材料をカバー材内に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記カバー材を満たすまで続け、アルミニウムパッケージを形成するステップと、
前記アルミニウムパッケージを熱間押出によってアルミニウムストリップに成形するステップと、
前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断してアルミニウム合金脱酸材を完成させるステップと、
を含む、アルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項2】
前記カバー材に単一の供給源からのリサイクルアルミニウム材料を充填する請求項1に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項3】
前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑である請求項2に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項4】
前記リサイクルアルミニウム材料は、シュレッドしたアルミ缶またはアルミ箔パッケージである請求項2に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項5】
前記カバー材は、中空管である請求項2に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項6】
前記カバー材と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金からなる請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウムパッケージを熱間押出によってアルミニウムストリップに成形する前に、更に、前記アルミニウムパッケージを金型に入れ、アルミニウム溶湯を注いで密封するステップを含む請求項1に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項8】
前記カバー材と前記アルミニウムストリップの断面積比が25:1~10:1である請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項9】
前記熱間押出の温度が400~550℃である請求項1又は2に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項10】
前記熱間押出の押出速度が0.2~2m/分である請求項1又は2に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウムストリップの気孔率が1%未満である請求項1に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項12】
前記アルミニウムストリップを複数の前記アルミニウム粒子に切断するステップを、無酸素環境下で行う請求項1に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【請求項13】
前記アルミニウムパッケージを形成するステップは、更に、マグネシウム、マンガン、ケイ素、亜鉛又は銅の元素を前記アルミニウムパッケージに入れることを含む請求項1に記載のアルミニウム合金脱酸材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱酸材の製造方法、特にアルミニウム合金脱酸材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環経済は、現在社会において既に顕著な科学となっており、従来の資源採掘から生産、消費および最終処分に至る直線的な経済モデルとは異なり、資源の回収および再利用を基礎とした経済モデルにより、資源の消耗及び浪費を最大限減少させることが期待されている。循環経済モデルは、資源のリサイクルを促進し、資源の回収、再生および再利用などの手段を通じて資源の価値を最大化し、持続可能な経済発展モデルを実現する。
【0003】
金属および関連製造業は、重要な資源消費者および環境汚染の原因の1つであるため、循環経済の導入はこの産業にとって極めて重要である。金属をリサイクルすると原材料とエネルギーを大幅に節約し、炭素排出量を削減でき、回収された金属は新しい製品の製造に使用できるため、多くの関連業界はすでに金属リサイクルを導入している。しかし、現在のアルミニウムのリサイクルモデルでは、回収したアルミニウムを製錬および焼き戻しする必要があり、エネルギー消費が極めて高く、作業工数が多く、可動コストが高く、加熱による酸化により生成率を損失させて大量のアルミニウム金属を浪費し、アルミニウムを再溶解すると、有毒な煙、粉塵およびスラグが発生する。
【0004】
また、現在のアルミニウムリサイクルモデルが収集するリサイクルアルミニウム材料は、例えば、アルミ缶、アルミ箔パッケージなど又はツールマシンで加工、切削した後に発生するアルミニウム廃材であり、何れもそのリサイクルアルミニウム材料の回収前の使用の必要及び特性によってそのリサイクルアルミニウム材料に一定の程度の有機物が混在し、例えば、アルミ缶は、内部表面に樹脂コーディング層および外部の印刷塗料層を含み、アルミニウム廃材は、切削液等を含み、これらのリサイクルアルミニウム材料に付着した有機物は、現在のアルミニウムリサイクルプロセスでは、そのリサイクルアルミニウム材料を再溶解する過程でダイオキシンなどの有機汚染物質が生成され、環境中に放出され、深刻な環境汚染および公害を招く。
【0005】
一方、鉄鋼産業では、溶鋼から酸素を除去し、溶鋼の品質と性能を効果的に改善し、溶鋼の純度と均一性を高め、欠陥を減らし、鋼の靭性と耐食性を向上させるため、脱酸材料は製鉄プロセスで広く使用されており、特に酸素と迅速に反応できるアルミニウム合金が脱酸材料として使用される。しかし、アルミニウム合金はコストが高く、従来の技術でアルミニウム合金脱酸材を製造する場合のエネルギー消費量も非常に大きいため、アルミニウム廃材のリサイクルにより発生する有機汚染物質を削減し、循環経済を実践する方法を開発することが、関連分野での緊急の開発目標となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のアルミニウムリサイクルプロセスにおける、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質による環境汚染を解決するアルミニウム合金脱酸材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のアルミニウムリサイクルプロセスにおける、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質による環境汚染を解決するため、本発明が提供するアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、次のステップを含む。複数のリサイクルアルミニウム材料をカバー材内に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記カバー材を満たすまで続け、アルミニウムパッケージを形成する。前記アルミニウムパッケージを熱間押出しによってアルミニウムストリップに成形する。前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断してアルミニウム合金脱酸材を完成させる。
【0008】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記カバー材に単一の供給源からのリサイクルアルミニウム材料を充填する。
【0009】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑である。
【0010】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記リサイクルアルミニウム材料は、シュレッドしたアルミ缶またはアルミ箔パッケージである。
【0011】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記カバー材は、中空管である。
【0012】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記中空管と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金からなる。
【0013】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記アルミニウムパッケージを熱間押出によってアルミニウムストリップに成形する前に、更に、前記アルミニウムパッケージを金型に入れ、アルミニウム溶湯を注いで密封するステップを含む。
【0014】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記カバー材と前記アルミニウムストリップの断面積比が25:1~10:1である。
【0015】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記熱間押出の温度が400~550℃である。
【0016】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記熱間押出の押出速度が0.2~2m/分である。
【0017】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記アルミニウムストリップの気孔率が1%未満である。
【0018】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記アルミニウムストリップを複数の前記アルミニウム粒子に切断するステップを、無酸素環境下で行う。
【0019】
前記アルミニウム合金脱酸材の製造方法において、前記アルミニウムパッケージを形成するステップは、更に、マグネシウム、マンガン、ケイ素、亜鉛又は銅の元素等を前記アルミニウムパッケージに入れる。
【発明の効果】
【0020】
上記の説明から、本発明は以下の利点を有することがわかる。
1.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、ダイオキシンなどの有機汚染物質の発生を大幅に削減でき、有機汚染物が環境中に散逸するリスクを避けることができる。
2.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、多くのエネルギーを節約でき、アルミニウム廃材を溶解する時に有毒な煙、粉塵およびスラグを発生させることがない。
3.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、プロセスにおけるアルミニウムの酸化による生産率の低下を回避できる。
4.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、更に、リサイクルアルミニウム材料を製鋼用脱酸剤として使用すると同時に、製鋼時の高温を利用してリサイクルアルミニウム材料に付着した有機物を完全に分解し、ダイオキシンの発生を低減し、鉄鋼プロセスにより、脱酸剤のコストと原材料の消費量を低減する。
5.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料に有機物を含むことによってプロセス中に有機汚染物質を生成することがなく、前記リサイクルアルミニウム材料の前処理プロセスを簡易化、更には省くことができ、時間、資源およびコストを節約し、環境保護に有利である。
6.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法により形成されたアルミニウム合金鋳物は、ハイエントロピー効果により各元素の固溶体相の形成が促進され、合金の温度に伴う相変化を相対的に単純にさせるため、ハイエントロピー合金の特性を備え、結晶構造が安定し且つ緻密であり、脆性金属化合物の形成を抑制し、アルミニウム合金鋳物の延性と靭性を大幅に向上させる。
7.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、従来技術のようにアルミニウムブロックを接着剤で固定する必要がないため、コストを削減でき、接着剤による環境汚染や資源の浪費を回避できる。
8.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、前記リサイクルアルミニウム材料をアルミニウムストリップに形成し、複数のアルミニウム粒子に切断することで、前記アルミニウム合金脱酸材と大気が接触する表面積を減少させ、脱酸材の脱酸効果を向上させる。
9.本発明は、切断によって形成されるアルミニウム粒子の形状が凹面および中空の形状を含むことで、前記アルミニウム合金脱酸材の浮力を低減し、前記アルミニウム粒子を製鋼溶湯の底部に沈めて、接触表面積を増加させることができ、脱酸効果を大幅に向上させる。
10.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、熱間押出前に他の元素をさらに添加し、合金成分を調整することで前記アルミニウム粒子の酸化還元能力と比重を制御し、脱酸材の脱酸効果を向上させることができる。
11.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、アルミニウム合金の切削加工で発生するアルミニウム屑や使用済みのアルミ缶など、従来技術では処理が困難なアルミニウム廃材をリサイクル処理することができ、これらのアルミニウム屑が大きな表面積及び体積比を有し、酸化し易く、経常的に潤滑剤、切削液又は飲料残渣及び塗料層との混合によって従来技術で再溶解及びリサイクル処理が困難である問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例のステップ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下では、各実施例の説明に使用する必要がある図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明の一部の例示又は実施例にすぎず、当業者は、創造的な作業をすることなく、これらの図面に従って他の同様の場面に本発明を適用することもできる。文脈から明らかでない限り、又は別途説明がない限り、図中の同様の部材符号は同様の構造又は動作を表す。
【0023】
本発明及び特許請求の範囲に示すように、文脈が例外を明確に示していない限り、「一」、「1つ」、「1種」又は「前記」等の単語は、特に単数を指すものではなく、複数を含んでもよい。一般的に言えば、「備える」及び「含む」という用語は、明確に識別されたステップ及び要素を含むこと示すのみであり、これらのステップ及び要素は排他的なリストを構成するものではなく、方法又は装置は他のステップ又は要素も含んでもよい。
【0024】
本発明では、フローチャートを使用して、本発明の実施例のシステムに従って実行される操作を説明する。なお、先又は後の動作は、必ずしも順に従って正確に実行される必要はなく、逆の順序で処理又は各ステップを同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらの過程に追加してもよく、これらの過程から一つ又は幾つかの操作を除いてもよい。
【0025】
図1は、本発明のステップ図である。本発明は、主にステップS10~ステップS50を含む。
【0026】
ステップS10:複数のリサイクルアルミニウム材料をカバー材に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記カバー材を満たすまで続け、アルミニウムパッケージを形成する。このステップS10では、収集した前記リサイクルアルミニウム材料を集中させ、前記カバー材に入れて圧縮し続ける。前記リサイクルアルミニウム材料が圧縮により収縮する場合、前記リサイクルアルミニウム材料が完全に前記カバー材を満たすまで、より多くの前記リサイクルアルミニウム材料を前記カバー材に投入することができる。好ましくは、前記カバー材は中空管であり、前記中空管は、両端に前記開口を有するか、一端のみに前記開口を有する管材であってよい。ここで、前記中空管の断面は、円形である。好ましくは、前記中空管の断面の円形の直径は、9cmであり、且つ前記中空管の長さは、60cmである。
【0027】
ここで、前記リサイクルアルミニウム材料としては、各種リサイクルアルミニウム廃材を使用することができる。例えば、前記リサイクルアルミニウム材料としては、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生されるアルミニウム屑、又は前処理してシュレッドした後のリサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップなどであってよい。好ましくは、前記カバー材に充填される前記リサイクルアルミニウム材料は、何れも単一の供給源からのリサイクルアルミニウム材料である。いわゆる単一の供給源とは、前記リサイクルアルミニウム材料がすべて、同じ合金系、同じ米国アルミニウム協会合金番号、または同じプロセスで生産されたアルミニウム合金製品から生成又はリサイクルされたアルミニウム合金廃材であることを意味する。一実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源は、同じ工作機械で同じ切削加工を施して製造されたアルミニウム合金のアルミニウム屑である。別の実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源は、リサイクルアルミニウム合金のイージーオープン缶の破片である。別の実施例では、同様の供給源からのリサイクルアルミニウム合金のイージーオープン缶がシュレッドされた後に前記カバー材内に入れて圧縮及び充填される。
【0028】
ここで、前記リサイクルアルミニウム材料は、まず一連の前処理を経た後、前記カバー材内に入れて圧縮および充填することができる。一実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、予備洗浄と空気分離を経て大きな不純物が除去され、その後磁気分離を使用して強磁性金属が除去される。ただし、これらの前処理は必ずしも必要なわけではなく、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源に応じて適切な前処理方法を選択することができる。例えば、一実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑であり、前記リサイクルアルミニウム材料に対して予備洗浄と切削液の粗除去を行うだけで前記リサイクルアルミニウム材料を前記カバー材内に投入し、充填及び圧縮することができる。
【0029】
したがって、前記リサイクルアルミニウム材料には、残留する複数種の有機化合物が含まれる。ここで、一実施例において、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑であり、前記リサイクルアルミニウム材料に残留する複数種の前記有機化合物は、ほとんどが切削液であり、前記切削液には、鉱物油、乳化剤、水、防錆添加剤、消泡剤などの成分を含み得る。別の実施例では、前記リサイクルアルミニウム材料は、前記リサイクルアルミニウム材料は、リサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップであり、前記リサイクルアルミニウム材料に残留する複数種の前記有機化合物は、アルミ箔パックに含まれるセルロースおよび半繊維またはリグニンなどの紙成分、又はアルミニウム缶胴部に完全に除去されていない印刷層およびアルミ缶内装の塗料層でありえ、前記塗料層の成分は、蝋等の各種脂質、又はエポキシ樹脂などの各種樹脂、又はアクリル酸共重合体やポリカーボネートなどの各種ポリエステルの成分であり得る。これらの有機化合物が膨大な時間、エネルギー及び資源を費やすことなく、前処理過程で完全に除去されることが困難である。しかし、本ステップS10では、前記リサイクルアルミニウム材料は、煩雑な前処理工程を必要とせずにそれを前記中空管に投入し、圧縮および充填し、アルミニウムパッケージを形成することができる。
【0030】
本発明が形成するアルミニウム合金脱酸材により良好な効果をもたせるために、前記リサイクルアルミニウム材料をさらに前記カバー材に入れて充填および圧縮するステップと同時に、マグネシウム、マンガン、ケイ素、亜鉛又は銅などの元素を前記アルミニウムパッケージに添加し、全体的な脱酸効果をさらに向上させ、本発明によって形成されるアルミニウム合金の脱酸材の割合を調整する。好ましくは、指定の割合を達成するため、異なる前記リサイクルアルミニウム材料に基づいて異なる割合の元素を添加し、前記アルミニウムパッケージに0.1~2重量%のケイ素、0~2重量%の銅、および0.1~30重量%のマグネシウム、0.1~10重量%のマンガンおよび0~10重量%の亜鉛元素を含ませる。
【0031】
ステップS20(選択可能):圧縮成形した前記リサイクルアルミニウム材料を金型に入れる。本ステップS20では、前記リサイクルアルミニウム材料は前記カバー材に圧縮して充填されており、前記カバー材から圧縮した前記リサイクルアルミニウム材料を取り出して前記金型に入れることができる。前記リサイクルアルミニウム材料は圧縮されているため、取り出し時に前記リサイクルアルミニウム材料は、前記カバー材内での形状を維持して飛散や変形が生じることない。好ましくは、前記カバー材は、前記中空管であり、圧縮成形された前記リサイクルアルミニウム材料を取り出した後、円柱形となる。圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型に入れる。ここで、前記金型は、長い中空円筒の形状をしており、その長さと断面は、いずれも前記中空管よりも大きい。前記金型の底部には、長軸の中心に固定リングが配置され、前記固定リングは、圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料の断面と等しいか、やや大きく、前記固定リングを圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料が前記金型の前記長軸の中心に位置してズレを生じることがないように固定することができる。前記金型は、1つ以上の締め付け装置を含み、圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型に安定して固定させることができる。好適実施例では、前記金型の開口の直径は、12.7cmであり、前記金型の長さは、60cmであり、金型の底部には、直径10cm、深さ1cmの前記固定リングが設けられ、前記金型の上部には、締め付け用のアルミシート及びネジが設けられる。好適実施例では、前記金型は、アルミニウム合金管で前記圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を固定する。好ましくは、本ステップS20は、ステップ10で形成した前記アルミニウムパッケージを、前記リサイクルアルミニウム材料を取り出さずに前記金型に直接投入し、前記アルミニウム合金管は、即ち、前記中空管であり、前記中空管を前記締め付け装置とする。好ましくは、アルミニウム合金の前記中空管と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金組成を有し、即ち、前記中空管と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金系または同じ米国アルミニウム協会合金番号を有する。
【0032】
ステップS30(選択可能):アルミニウム溶湯を注いで前記リサイクルアルミニウム材料を密封して鋳造パッケージを形成する。本ステップS30では、前記金型に入れた前記リサイクルアルミニウム材料にアルミニウム溶湯を注ぎ、前記アルミニウム溶湯が前記リサイクルアルミニウム材料を完全に覆い密閉し、冷却固化して鋳造パッケージを成形する。前記アルミニウム溶湯は、溶融したアルミニウム合金であり、且つ好ましくは、前記アルミニウム溶湯と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金組成を有し、即ち、前記アルミニウム溶湯と前記リサイクルアルミニウム材料は同じ合金系または同じ米国アルミニウム協会合金番号を有する。一実施例では、類似の供給源からのリサイクルアルミニウム合金イージーオープン缶をシュレッドした後、前記中空管に入れて圧縮および充填して成形する前記リサイクルアルミニウム材料は、本ステップでは、類似の供給源からの前記アルミニウム溶湯を注入して、前記鋳造パッケージの合金に同じ均質なアルミニウム合金の特性を維持させる。好ましくは、締め付け用の前記アルミシートおよび前記リサイクルアルミニウム材料も、同じ合金からなる。前記アルミニウム溶湯は、前記リサイクルアルミニウム材料を完全に密閉するため、複数の前記有機化合物が前記鋳造パッケージ内に封入される。
【0033】
ステップS40:前記アルミニウムパッケージ又は前記鋳造パッケージを予熱した後、熱間押出してアルミニウムストリップを形成する。本ステップS40では、前記鋳造パッケージを前記金型から取り出し、アルミブランクとし、又は、ステップS30を省略し、直接前記アルミニウムパッケージをアルミブランクとし、予熱した後に熱間押出によりアルミストリップを形成する。前記アルミニウムストリップの断面形状は、必要に応じて前記鋳造パッケージが通過する押出を設計でき、且つ前記熱間押出は、直接押出または間接押出で行うことができる。ここで、前記間接押出成形は、前記アルミニウムストリップの内部に中空構造を生成することができる。好ましくは、前記熱間押出の温度は、400~550℃であり、前記熱間押出の押出速度は、0.2~2m/分であり、いわゆる押出速度は、前記熱間押出により前記アルミニウムストリップを形成する速度である。好ましくは、前記中空管と前記アルミニウムストリップの断面積比は、25:1~10:1である。前記中空管と前記アルミニウムストリップの断面積の比は、即ち、押出比であり、本ステップS40の好ましい押出比は、10~25である。
【0034】
ステップS50:前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断し、アルミニウム合金脱酸材を完成させる。本ステップS50では、熱間押出により形成された前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断し、前記アルミニウム合金脱酸材の作製を完成する。ここで、前記アルミニウム粒子は、丸い粒子または多角形に切断することができる。好ましくは、前記アルミニウム粒子は、凹面および中空を含むこともでき、前記アルミニウム粒子の表面積を増加させ、より良好な脱酸効果を発揮することができるとともに、浮力を低減し、前記アルミニウム粒子を製鋼溶湯の底部に沈めて、脱酸効果を大幅に向上させることができる。一実施例では、ステップS40で間接熱間押出により形成された前記アルミニウムストリップは、軸方向に沿った中空部を含み、前記アルミニウムストリップを複数の前記アルミニウム粒子に切断する時、貫通孔を有する前記アルミニウム粒子を形成する。
【0035】
好ましくは、前記ステップS50は、無酸素環境で行うことができ、例えば、窒素ガス環境で前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断してパッケージし、前記アルミニウム粒子の切断が形成する表面に酸化アルミニウムを形成させることがないようにし、前記アルミニウム合金脱酸材の脱酸能力及び効率を向上させる。
【0036】
<アルミニウム合金脱酸材の応用>
本発明の製法により製造された前記アルミニウム合金脱酸材は、溶鋼の脱酸材とすることができる。製鋼炉の温度は、900℃をはるかに超えており、前記リサイクルアルミニウム材料には残留する複数種の有機化合物が含まれているため、前記アルミニウム合金脱酸材に依然として含まれる前記有機化合物がこの温度で完全に分解され、ダイオキシンなどの有毒な有機汚染物の生成を回避し、溶鋼の脱酸を効果的に促進することができる。
【0037】
上記の説明から、本発明は以下の効果を達成することが分かる。
1.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、ダイオキシンなどの有機汚染物質の発生を大幅に削減できる。
2.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、多くのエネルギーを節約でき、アルミニウム廃材を溶解する時に有毒な煙、粉塵およびスラグを発生させることがない。
3.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、プロセスにおけるアルミニウムの酸化による生産率の低下を回避できる。従来技術のアルミニウム廃材リサイクルでは、新たな廃材の生成量が高く、最終的にリサイクルされる金属の割合は52%を超えないが、本発明のリサイクル材料の利用率は約96%であり、リサイクル可能なアルミニウムを大幅に増加させる。
4.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、更に、リサイクルアルミニウム材料を製鋼用脱酸剤として使用すると同時に、製鋼時の高温を利用してリサイクルアルミニウム材料に付着した有機物を完全に分解し、ダイオキシンの発生を低減し、鉄鋼プロセスにより、脱酸剤のコストと原材料の消費量を低減する。
5.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、リサイクルアルミニウム材料に有機物を含むことによってプロセス中に有機汚染物質を生成することがなく、前記リサイクルアルミニウム材料の前処理プロセスを簡易化、更には省くことができ、時間、資源およびコストを節約し、環境保護に有利である。
6.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法により形成されたアルミニウム合金鋳物は、ハイエントロピー効果により各元素の固溶体相の形成が促進され、合金の温度に伴う相変化を相対的に単純にさせるため、ハイエントロピー合金の特性を備え、結晶構造が安定し且つ緻密であり、脆性金属化合物の形成を抑制し、アルミニウム合金鋳物の延性と靭性を大幅に向上させる。
7.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、従来技術のようにアルミニウムブロックを接着剤で固定する必要がないため、コストを削減でき、接着剤による環境汚染や資源の浪費を回避できる。
8.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、前記リサイクルアルミニウム材料をアルミニウムストリップに形成し、複数のアルミニウム粒子に切断することで、前記アルミニウム合金脱酸材と大気が接触する表面積を減少させ、脱酸材の脱酸効果を向上させる。
9.本発明は、切断によって形成されるアルミニウム粒子の形状が凹面および中空の形状を含むことで、前記アルミニウム合金脱酸材の浮力を低減し、前記アルミニウム粒子を製鋼溶湯の底部に沈めて、接触表面積を増加させることができ、脱酸効果を大幅に向上させる。
10.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、熱間押出前に他の元素をさらに添加し、合金成分を調整することで前記アルミニウム粒子の酸化還元能力と比重を制御し、脱酸材の脱酸効果を向上させることができる。
11.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法は、アルミニウム合金の切削加工で発生するアルミニウム屑や使用済みのアルミ缶など、従来技術では処理が困難なアルミニウム廃材をリサイクル処理することができ、これらのアルミニウム屑が大きな表面積及び体積比を有し、酸化し易く、経常的に潤滑剤、切削液又は飲料残渣及び塗料層との混合によって従来技術で再溶解及びリサイクル処理が困難である問題を解決する。
【0038】
上記の説明及び詳述に基づき、当業者は、上記の実施方式に変更及び修正を加えることもできることに留意されたい。従って、本開示は、上で開示及び説明した具体的実施例に限定するものではなく、本開示に対するいくつかの均等の修正及び変更も、本開示の特許請求の範囲の保護範囲内にあるべきである。また、本明細書では一連の特定の用語を使用しているが、これらの用語は説明の便宜のためのみであり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0039】
S10 ステップ
S20 ステップ
S30 ステップ
S40 ステップ
S50 ステップ
図1