(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155711
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】収着式熱交換モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F25B 39/00 20060101AFI20241024BHJP
F28F 1/12 20060101ALI20241024BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20241024BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20241024BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20241024BHJP
F28D 1/047 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
F25B39/00 K
F28F1/12 G
F28F19/04 Z
B01D53/26 230
B01J20/26 A
F28D1/047 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219415
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023069629
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム、エネルギー・環境新技術先導研究プログラム、表面・構造機能化による新コンセプト熱物質交換器開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西田 良祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智三
【テーマコード(参考)】
3L103
4D052
4G066
【Fターム(参考)】
3L103AA37
3L103BB42
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC23
3L103DD06
3L103DD33
3L103DD97
4D052AA08
4D052CE00
4D052DA03
4D052DB01
4D052FA05
4D052FA07
4D052GA04
4D052GB12
4D052HA27
4D052HA39
4D052HB05
4G066AB07B
4G066AC11B
4G066AC22D
4G066AC27D
4G066AC33D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA36
4G066CA43
4G066DA03
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】従来の収着式熱交換モジュールは、収着剤層が脆いことからモジュール組み立て後に収着剤液を含浸していたが、フィン間に収着剤液が残って目詰まりしやすいため、フィン間隔を狭くできず、潜熱処理効率を向上しづらい。本発明は、収着剤層の密着力と強度を高め、フィンへの収着剤担持後の打ち抜き、組み立てを可能とすることにより、フィン間隔が狭く、単位体積当たりの収着剤量の多い、潜熱処理効率の優れた熱交換モジュールを提供するものである。
【解決手段】金属板表面上にエポキシ樹脂を含有する耐食膜と、カルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子並びにポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層とが設けられた伝熱フィンを有する収着式熱交換モジュールにおいて、隣り合う伝熱フィン同士の間で収着剤層による閉塞部分がない収着式熱交換モジュール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収着剤層が設けられた複数枚の伝熱フィンと、前記複数枚の伝熱フィンを貫通している伝熱管よりなる収着式熱交換モジュールにおいて、
前記複数枚の伝熱フィンは、熱伝導性に優れる金属板表面上にエポキシ樹脂を含有する耐食膜が設けられ、その上にカルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子並びにポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層が設けられたものであり、
前記有機高分子におけるカルボキシル基は、その含有量が3~10mmol/gであり、かつその中和度が60~100%であり、前記収着剤粒子100重量部に対して前記バインダーを30~110重量部用い、かつ前記金属板表面上の片面当たりに前記収着剤粒子及び前記バインダーが合わせて20~80g/m2担持されており、
さらに、隣り合う伝熱フィン同士の間において、収着剤層による閉塞部分がないことを特徴とする収着式熱交換モジュール。
【請求項2】
隣り合う伝熱フィン同士の間隔が2mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の収着式熱交換モジュール。
【請求項3】
単位体積当たりの収着剤量が、20~60kg/m3であることを特徴とする請求項1に記載の収着式熱交換モジュール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の収着式熱交換モジュールを用いた除湿システム。
【請求項5】
耐食膜が設けられた伝熱フィンの表面上に、分子中にカルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子、並びにポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層を設ける工程、前記収着剤層を設けられた伝熱フィンを打ち抜いて穴を設ける工程および前記複数の穴に伝熱管を挿通する工程を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の収着式熱交換モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収着剤粒子を有する収着剤層が設けられた伝熱フィンと伝熱管からなる収着式熱交換モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調における省エネルギーの観点から、潜熱と顕熱を分離して処理する空調機の検討が進められている。このうち、潜熱処理すなわち吸湿には収着剤の利用が提案されており、例えば、特許文献1に開示された除湿空調装置においては収着剤を担持したデシカントロータが用いられている。
【0003】
一方、収着剤は吸湿に伴って発熱することにより自身の温度が上昇し、吸湿率が低下するという特性を有しているため、本来有している吸湿性能を十分に発現することができない。吸湿時の収着剤の発熱を冷却除去すれば、吸湿率の低下が抑制され、潜熱処理の効率向上につながるが、デシカントロータにおいては効率的な冷却手段を設けることが困難である。
【0004】
この点を改善するものとしては、特許文献2に開示されているような、収着剤を担持した伝熱フィンと伝熱管とを組み合わせた構成である収着式熱交換モジュールを挙げられる。かかる熱交換モジュールにおいては、伝熱管内に冷媒を流すことにより、収着剤の吸湿に伴う発熱を冷却除去することができる。
【0005】
かかる熱交換モジュールにおいては、伝熱フィンの枚数を増やすほどモジュールの単位体積当たりの収着剤層面積および収着剤量が大きくなり、潜熱処理効率を向上することができる。一方、該熱交換モジュールは、組み立て後のモジュールを収着剤含有塗工液に浸漬することによって製造されるため、伝熱フィンの枚数を増やして伝熱フィン同士の間隔を狭くすると、浸漬後の液切りが不十分となって、乾燥後においても伝熱フィン間の隙間に収着剤が詰まった状態となって、閉塞しやすくなる。このため、伝熱フィンの枚数を増加することには限界がある。
【0006】
この点について、モジュール組み立て前に収着剤を伝熱フィンに担持しておけば、浸漬後の液切り不良の問題は回避できる。しかし、収着剤層を担持した伝熱フィンに対して、伝熱管を挿通させるための穴を開ける打ち抜き工程やモジュール組み立て工程を実施した場合には、収着剤層がひび割れたり、剥離したりするため、実用的な収着式熱交換モジュールを得ることは難しい。
【0007】
収着剤層のひび割れや剥離の抑制に関しては、特許文献3に、伝熱フィンの表面に耐食膜を施し、該耐食膜と収着剤をバインダーで接着する方策が開示されている。しかし、かかる方策は、吸放湿に伴う収着剤の体積変化に対応できるレベルにとどまっており、打ち抜きなどの加工に耐えうるものではない。バインダーの増量によってひび割れや剥離の抑制効果を向上させることも考えられるが、バインダーによる収着剤の被覆の程度が高まって吸湿性能を発現しづらくなるため、潜熱処理効率は低下することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-262621号公報
【特許文献2】特開2006-200850号公報
【特許文献3】特開2012-077987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、収着式熱交換モジュールにおいては、伝熱フィン間の閉塞や機械加工に耐えられない収着剤層の特性に由来するモジュール構造や製造方法の制約があり、潜熱処理の効率向上が制約されるという課題があった。本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、収着剤層を機械加工に耐えうる特性を有するものとして、収着剤層担持後の打ち抜きやモジュール組み立てを可能とすることにより、伝熱フィン間隔を狭くし、モジュールの単位体積当たりの収着剤量を多くした、潜熱処理効率の優れる熱交換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、表面上に、エポキシ樹脂を含有する耐食膜と、特定のカルボキシ基量を有する有機高分子からなる収着剤粒子並びにポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層を備えた伝熱フィンを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
[1] 収着剤層が設けられた複数枚の伝熱フィンと、前記複数枚の伝熱フィンを貫通している伝熱管よりなる収着式熱交換モジュールにおいて、
前記複数枚の伝熱フィンは、熱伝導性に優れる金属板表面上にエポキシ樹脂を含有する耐食膜が設けられ、その上にカルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子並びにポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層が設けられたものであり、
前記有機高分子におけるカルボキシル基は、その含有量が3~10mmol/gであり、かつその中和度が60~100%であり、前記収着剤粒子100重量部に対して前記バインダーを30~110重量部用い、かつ前記金属板表面上の片面当たりに前記収着剤粒子及び前記バインダーが合わせて20~80g/m2担持されており、
さらに、隣り合う伝熱フィン同士の間において、収着剤層による閉塞部分がないことを特徴とする収着式熱交換モジュール。
[2] 隣り合う伝熱フィン同士の間隔が2mm未満であることを特徴とする[1]に記載の収着式熱交換モジュール。
[3] 単位体積当たりの収着剤量が、20~60kg/m3であることを特徴とする[1]に記載の収着式熱交換モジュール。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の収着式熱交換モジュールを用いた除湿システム。
[5] 耐食膜が設けられた伝熱フィンの表面上に、カルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子、並びにポリアミン及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層を設ける工程、前記収着剤層を設けられた伝熱フィンを打ち抜いて穴を設ける工程および前記複数の穴に伝熱管を挿通する工程を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の収着式熱交換モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の収着式熱交換モジュールに採用する伝熱フィンは、アルミニウム板へのライン塗工によって収着剤を担持できるものであるため、モジュール組み立て後に収着剤含有塗工液への浸漬と乾燥を繰り返す従来の方法に比べて、生産速度が大幅に向上し、収着剤担持量の均一性も向上する。かかる伝熱フィンを用いて製造される本発明の収着式熱交換モジュールは、伝熱フィン間隔を狭くして、モジュールの単位体積当たりの収着剤量を大きいものとすることができるため、従来よりもコンパクトで潜熱処理効率の優れる熱交換モジュールとすることができる。かかる本発明の収着式熱交換モジュールはコンパクトで高効率の除湿システムを構築することができるため、潜熱顕熱分離空調機や、低温運転時に発生する霜の発生を抑制した無着霜冷凍冷蔵機器等の除湿システムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の収着式熱交換モジュールの代表的な例を示す図である。
【
図2】実施例1、実施例11および比較例3の収着式熱交換モジュールの積算吸湿量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の収着式熱交換モジュールは、収着剤層が設けられた複数枚の伝熱フィンと、前記複数枚の伝熱フィンを貫通している伝熱管よりなるものであって、複数枚の伝熱フィンは、熱伝導性に優れる金属板、該金属表面上に設けられた耐食膜、及び収着剤粒子とバインダーを含有する収着剤層を備えており、さらに隣り合う伝熱フィン同士の間において、各伝熱フィン上の収着剤層が接触して隙間を塞いでいる部分がないものである。以下に各要素について説明する。
【0015】
(1)熱伝導性に優れる金属板について
本発明における熱伝導性に優れる金属板(以下、単に基材とも表記する)は、伝熱フィンの基材部分に該当する。使用する金属の種類としては、銀、銅、金、アルミニウム、スチール等が例として挙げられるが、熱伝導率50(W/m・K)以上の場合、効率の高い熱交換を行なうことができるため好ましい。中でも、価格の点から実用的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金がより好ましい。また、基材の形状としては特に制限はなく、平板状、波状、コルゲート状、一部に穴の開いた形状のなど、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
また、かかる基材の厚さ(以下、板厚とも表記する)としては、好ましくは0.03~1.0mm、より好ましくは0.04~0.6mm、さらに好ましくは0.05~0.4mmである。板厚が0.03mm未満であると外力により容易に割れ、破れ、変形などを生じやすくなるため、熱交換モジュールへの加工の各工程における取り扱いが困難になる恐れがある。また、板厚が1.0mmを超えると、伝熱管の冷熱が収着剤層に伝わりにくくなるため、十分な性能を得られなくなる恐れがある。
【0017】
(2)耐食膜について
本発明における耐食膜は、基材の腐食を防ぐとともに、収着剤層と基材の密着性を向上させる目的で、基材表面上に設けられる。かかる耐食膜を形成するプライマー成分は、基材及び収着剤層との密着性が良好なエポキシ樹脂であり、中でもアクリル変性エポキシ樹脂が好ましい。また、基材がアルミニウム系材料である場合には、通常、リン酸クロメート処理などの下地処理を施してから、上記プライマー成分を塗布して耐食膜を形成する。
【0018】
(3)収着剤層について
本発明における収着剤層は、主に収着剤粒子並びに2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤、ポリアミン及びエポキシ樹脂からなるバインダー(以下、バインダーとも表記する)で構成されている。
【0019】
(3-1)収着剤粒子について
前記収着剤粒子は、カルボキシル基を有する有機高分子で構成されている。カルボキシル基には空気中の水蒸気を可逆的に吸着する特性があるため、前記有機高分子からなる前記収着剤粒子は吸放湿能を有している。該有機高分子中に含まれる全カルボキシル基量としては、下限としては3mmol/gが好ましく、4mmol/gがより好ましい。カルボキシル基量が3mmol/g未満となる場合、本発明に要求される吸放湿性が十分に得られなくなる。また、上限としては10mmol/gが好ましく、7mmol/gがより好ましい。カルボキシル基量が10mmol/gを超える場合、前記収着剤粒子が必要以上に水分を吸収して膨潤してしまい、耐水性が損なわれることになる。
【0020】
また、前記カルボキシル基は、吸湿性能を向上させるため、少なくとも一部が中和されている。このとき、対となるカチオンは、例えばLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、NH4、アミン等の有機カチオン類を挙げることができるが、吸放湿速度の観点から、アルカリ金属やアルカリ土類金属のカチオンであることが好ましく、ナトリウムやカリウムがより好ましい。このとき、全カルボキシル基のうち対イオンが上記カチオンである割合、すなわち、中和度は、下限として60%であり、65%が好ましい。中和度が下限を下回ると、前記収着剤粒子が十分な吸湿性能を得られない。また、上限としては特に制限はないが、上述の中和度の定義から、中和度が100%を超えることはない。
【0021】
前記収着剤粒子の重量平均粒子径は、下限としては3μmが好ましく、10μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。重量平均粒子径が3μm未満となる場合、粒子がバインダーに埋もれてしまい、十分な吸湿性能を発揮できなくなる。また、上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。重量平均粒子径が100μmを超える場合、造膜性が低下し、塗膜のひび割れや剥離を招くため好ましくない。
【0022】
前記収着剤粒子の水への膨潤倍率は、5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。水への膨潤倍率が5倍を超えると、該収着剤粒子を含む前記収着剤層が基材から剥離しやすくなるため、好ましくない。
【0023】
上記収着剤粒子は、単量体を重合して高分子とする従来の方法で製造することができる。この時、単量体については特に制限はなく、ビニル単量体をはじめ、適宜選択できる。また、どの方法を採用するかは特に限定は無く、例えば、塩型カルボキシル基を有する単量体を単独重合又は共重合可能な他の単量体と共重合することによって重合体を得る方法(第1法)、カルボキシル基を有する重合体を得た後に塩型に変える方法(第2法)、カルボキシル基に誘導することが可能である官能基を有した単量体を重合し、得られた重合体の該官能基を化学変性によりカルボキシル基に変換しさらに塩型に変える方法(第3法)、あるいはグラフト重合により前記3法を実施する方法等が挙げられる。
【0024】
上記第1法の塩型カルボキシル基を有する単量体を重合する方法としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボキシル基を含有する単量体の対応する塩型単量体を単独で、又はこれらの単量体の2種以上を、あるいは同一種であるがカルボン酸型と対応する塩型との混合物を重合する、さらにはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを共重合する等の方法が挙げられる。
【0025】
また、第2法に言うカルボキシル基を有する重合体を得た後に塩型に変える方法とは、例えば、先に述べたようなカルボキシル基を含有する酸型単量体の単独重合体、あるいは該単量体の2種以上からなる共重合体、または、共重合可能な他の単量体との共重合体を重合により得た後、塩型に変える方法である。カルボキシル基を塩型に変換する方法としては特に限定はなく、得られた前記酸型重合体にLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属イオン、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属イオン、NH4、アミン等の有機カチオンを含む溶液を作用させてイオン交換を行う等の方法により変換することができる。
【0026】
第3法の化学変性法によりカルボキシル基を導入する方法としては、例えば化学変性処理によりカルボキシル基に変性可能な官能基を有する単量体の単独重合体、あるいは2種以上からなる共重合体、または、共重合可能な他の単量体との共重合体を重合し、得られた重合体を加水分解によってカルボキシル基に変性する方法があり、得られた状態が塩型でない場合は、変性されたカルボキシル基に上記の塩型にする方法が適用される。このような方法をとることのできる単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボン酸基を有する単量体の無水物やエステル誘導体、アミド誘導体、架橋性を有するエステル誘導体等を上げることができる。
【0027】
カルボン酸基を有する単量体の無水物としては、無水マレイン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、N-フェニルマレイミド、N-シクロマレイミド等をあげることができる。
【0028】
カルボン酸基を有する単量体のエステル誘導体としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ラウリル、ペンタデシル、セチル、ステアリル、ベヘニル、2-エチルヘキシル、イソデシル、イソアミル等のアルキルエステル誘導体;メトキシエチレングリコール、エトキシエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、メトキシプロピレングリコール、プロピレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリテトラエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールーポリテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールーポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールーポリテトラエチレングリコール、ブトキシエチル等のアルキルエーテルエステル誘導体;シクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ベンジル、フェノキシエチル、フェノキシポリエチレングリコール、イソボニル、ネオペンチルグリコールペンゾエート等の環状化合物エステル誘導体;ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシフェノキシプロピル、ヒドロキシプロピルフタロイルエチル、クロローヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル誘導体;ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、トリメチルアミノエチル等のアミノアルキルエステル誘導体;(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸アルキルエステル誘導体;(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホフフェート等のリン酸基またはリン酸エステル基を含むアルキルエステル誘導体;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリル、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の架橋性アルキルエステル類;トリフロロエチル、テトラフロロプロピル、ヘキサフロロブチル、パーフロロオクチルエチル等のフッ化アルキルエステル誘導体をあげることができる。
【0029】
カルボン酸基を有する単量体のアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、モノエチル(メタ)アクリルアミド、ノルマルーt一ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物等が例示できる。化学変性によりカルボキシル基を導入する他の方法として、アルケン、ハロゲン化アルキル、アルコール、アルデヒド等の酸化等も挙げることができる。
【0030】
上記第3法における重合体の加水分解反応により塩型カルボキシル基を導入する方法についても特に限定はなく、既知の加水分解条件を利用することができる。例えば、上記単量体を重合し架橋された重合体にアルカリ金属水酸化物例えば、水酸化ナトリウム,水酸化リチウム,水酸化カリウムやアンモニア等の塩基性水溶液を用い塩型カルボキシル基を導入する方法、或いは硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸または、蟻酸、酢酸等の有機酸と反応させ、カルボン酸基とした後、アルカリ金属塩類と混合することにより、イオン交換により塩型カルボキシル基を導入する方法が挙げられる。なかでも吸湿速度に優れるカリウム塩型カルボキシル基が簡単に得られる水酸化カリウムによる加水分解法が好ましい。なお、3~10mmol/gとなる条件については、反応の温度、濃度、時間等の反応因子と導入される塩型カルボキシル基量の関係を実験で明らかにすることにより、決定することができる。
【0031】
また、本発明に採用する収着剤粒子は、架橋構造を有するものであることが好ましい。かかる架橋構造は、吸湿、あるいは吸水した際に起こる粒子の膨潤を低減するものである。かかる架橋構造としては、吸湿、放湿によって物理的、化学的に変性をうけない限りは特に限定はなく、共有結合による架橋、イオン架橋、ポリマー分子間相互作用または結晶構造による架橋等いずれの構造のものでもよい。また、架橋を導入する方法においても特に限定はなく、上述した第1法、第2法、第3法の各方法における単量体の重合段階において,架橋性単量体を共重合させることによる架橋導入方法、あるいは上述した単量体をまず重合し,その後、化学的反応による、あるいは物理的なエネルギーによる架橋構造の導入といった後架橋法等を挙げることができる。中でも特に、単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法、あるいは重合体を得たあとの化学的な後架橋による方法では、共有結合による強固な架橋を導入することが可能であり、吸湿、放湿に伴う物理的、化学的変性を受け難いという点で好ましい。
【0032】
単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法では、特に塩型カルボキシル基を有する有機高分子系収着剤の場合、上述したカルボキシル基を有する、あるいはカルボキシル基に変性できる単量体と共重合することのできる架橋性単量体を用い、共重合を行なうことにより共有結合に基づく架橋構造を有する架橋重合体を得ることができる。しかし、この場合、単量体であるアクリル酸などが示す酸性条件、あるいは重合体でのカルボキシル基への変性を行う際の化学的な影響(例えば加水分解など)を受けない、あるいは受けにくい架橋性単量体である必要がある。
【0033】
単量体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法に使用できる架橋性単量体としては特に限定はなく、例えばグリシジルメタクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができ、なかでもトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミドによる架橋構造は、それらを含有してなる架橋重合体に施すカルボキシル基を導入するための加水分解等の際にも化学的に安定であるので望ましい。
【0034】
また、後架橋による方法としても特に限定はなく、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーの含有量が50重量%以上よりなるニトリル系重合体の含有するニトリル基と、ヒドラジン系化合物またはホルムアルデヒドを反応させる後架橋法を挙げることができる。なかでもヒドラジン系化合物により導入された架橋構造は、酸、アルカリに対しても安定で、しかも形成される架橋構造自体が親水性であるので吸湿性の向上に寄与でき、また、重合体に付与した多孔質等の形態を保持することができる強固な架橋を導入できるといった点で極めて優れている。なお、該反応により得られる架橋構造に関しては、その詳細は同定されていないが、トリアゾール環あるいはテトラゾール環構造に基づくものと推定されている。
【0035】
ここでいうニトリル基を有するビニルモノマーとしては、ニトリル基を有する限りにおいては特に限定はなく、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。なかでも、コスト的に有利であり、また、単位重量あたりのニトリル基量が多いアクリロニトリルが最も好ましい。
【0036】
ヒドラジン系化合物との反応により架橋を導入する方法としては、目的とする架橋構造が得られる限りにおいては特に制限はなく、反応時のアクリロニトリル系重合体とヒドラジン系化合物の濃度、使用する溶媒、反応時間、反応温度など必要に応じて適宜選定することができる。このうち反応温度については、あまり低温である場合は反応速度が遅くなり反応時間が長くなりすぎること、また、あまり高温である場合は原料アクリロニトリル系重合体の可塑化が起り、重合体に付与されていた形態が破壊されるという問題が生じる場合がある。従って、好ましい反応温度としては、50~150℃、さらに好ましくは80℃~120℃である。また、ヒドラジン系化合物と反応させるアクリロニトリル系重合体の部分についても特に限定はなく、その用途、該重合体の形態に応じて適宜選択することができる。具体的には、該重合体の表面のみに反応させる、または、全体にわたり芯部まで反応させる、特定の部分を限定して反応させる等適宜選択できる。なお、ここに使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネイト等のヒドラジンの塩類、およびエチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のヒドラジン誘導体である。
【0037】
本発明に採用する架橋構造を有する収着剤粒子は、上述のようにして製造できるが、市販品を使用してもよい。かかる架橋構造を有する収着剤粒子としては、例えば東洋紡(株)製の「エコポッド(登録商標)HU-750P」が挙げられる。
【0038】
また、上述のようにして収着剤粒子を製造した後に、さらに、その表面にポリエチレンイミンなどの塩基性高分子を付与することも好適である。このようにすることで、後述するバインダーとしてウレタン変性エポキシ樹脂を用いた場合に、収着剤粒子とバインダーとの密着力が増加し、収着剤層の強度を向上させることができる。塩基性高分子を付与した収着剤粒子としては、国際公開第2014/188908号公報に開示された機能性微粒子などが挙げられる。
【0039】
(3-2)バインダーについて
前記バインダーは、エポキシ樹脂、ポリアミン及び2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤で構成されている。まずエポキシ樹脂は、収着剤粒子を基材上に担持する役割であり、中でもウレタン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂が好ましく、ウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ウレタン変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましく、これらの樹脂を複数種混合して用いてもよい。具体的には、(株)ADEKA製のアデカレジン(登録商標)EPU-11F(ウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂)やEPU-1001(ウレタン変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂)などが挙げられる。
【0040】
次にポリアミンは、硬化剤として機能し、前記樹脂を架橋することで収着剤層の強度が高まり、ひび割れを抑止することができる。このようなポリアミンとしては、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。ポリアミンは1種類のみ使用してもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、ポリアミンは市販品を採用してもよく、例えば三菱ケミカル(株)製のjERキュア(登録商標)LV11や、大都産業(株)製のダイトクラール(登録商標)D6293などが挙げられる。
【0041】
前記バインダーにおけるポリアミンの含有量は特に制限はなく、エポキシ樹脂のエポキシ当量や含有量等に応じて適宜選択すればよく、市販のポリアミンを使用する場合はメーカーが定める配合量を適宜採用してもよい。
【0042】
エポキシ基を2つ以上有する反応性希釈剤は、前記バインダー成分を含有する塗工液におけるエポキシ基の濃度低下を抑えつつ、前記塗工液の粘度を下げて基材へ塗布した際の厚塗りやムラを防止するとともに、前記バインダー内で架橋構造を形成してその強度を高めることができる。
【0043】
前記反応性希釈剤の25℃における粘度は、下限としては特に制限はなく、低いほど好ましい。また、上限としては、500mPa・sであることが好ましく、400mPa・sであることがより好ましい。粘度が500mPa・sを上回る場合、前記塗工液の粘度を十分に下げられなくなるおそれがある。
【0044】
また、前記反応性希釈剤の分子量は、下限としては特に制限はなく、例えば一般に用いられている反応性希釈剤の中で最も単純な構造であるエチレングリコールジグリシジルエーテルの分子量である174以上であれば問題ない。また、上限としては、500であることが好ましく、300であることがより好ましい。一般に、分子量と粘度には正の相関関係があるため、前記反応性希釈剤の分子量が500を上回る場合、粘度も高くなり、前記塗工液の粘度を十分に下げられなくなるおそれがある。
【0045】
前記反応性希釈剤のエポキシ当量は、下限としては50g/eqであることが好ましく、70g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量が50g/eqを下回る場合、前記架橋構造が過剰に緻密となり、硬くて脆くなるおそれがある。また、上限としては200g/eqであることが好ましく、150g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量が200g/eqを上回る場合、前記塗工液に加えた反応性希釈剤の量に対してエポキシ基が少なくなり、前述した架橋によるバインダーの強度を高める効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0046】
このような反応性希釈剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどが例示される。また、市販品を採用してもよく、例として(株)ADEKA製のデナコール(登録商標)EX810やアデカグリシロール(登録商標)ED523Tなどが挙げられる。
【0047】
前記バインダーにおける前記反応性希釈剤の含有量は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して100重量部以下とすることが好ましく、70重量部以下とすることがより好ましい。
【0048】
前記バインダーの含有量は、下限としては収着剤粒子100重量部に対して30重量部であることが好ましく、50重量部であることがより好ましく、60重量部であることがさらに好ましい。バインダーが少なすぎる場合、耐食膜と収着剤の間および収着剤間の付着力が低下し剥離しやすくなってしまう。また、上限としては、収着剤粒子100重量部に対し、110重量部であることが好ましく、100重量部であることがより好ましい。バインダーが多すぎる場合、収着剤粒子の表面をバインダーが覆いすぎてしまうことで、収着剤の機能を十分に発揮させることが困難になる。
【0049】
(3-3)収着剤層の担持量、吸湿量について
本発明における収着剤層の基材片面の表面上への担持量は、下限としては20g/m2であることが好ましく、30g/m2であることがより好ましい。収着剤層の担持量が少なすぎる場合、十分な吸湿能力を発揮することが困難になる。また、上限としては、80g/m2であることが好ましく、70g/m2であることがより好ましい。収着剤層の担持量が多すぎる場合、収着剤層が基材から剥離しやすくなり、耐久性能が低下してしまう。
【0050】
また、前記収着剤層の吸湿量は、後述する測定方法において、下限としては10g/m2が好ましく、15g/m2がより好ましい。吸湿量が下限を下回る場合、十分な吸湿性能が得られない可能性がある。
【0051】
(4)収着剤層が設けられた伝熱フィンについて
本発明に採用する収着剤層が設けられた伝熱フィンは、例えば上述したエポキシ樹脂を含有する耐食膜を設けられた熱伝導性に優れる金属板の表面に、カルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子、ポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤、エポキシ樹脂、及び溶媒を含有する塗工液を塗布し、焼き付けすることで得られる。このとき、塗布する方法としては、該塗工液に基材を浸漬した後に遠心分離や絞りローラーなどで液切りする方法、該塗工液をバーコーダー、ブレードなどを使用して基材に塗布する方法、あるいは、該塗工液を基材に噴霧する方法などが挙げられる。
【0052】
前記塗工液には、上記成分のほかにも、必要に応じてほかの成分、例えば抗菌剤、防腐剤などを加えてもよい。また、前記塗工液の溶媒として有機溶媒を採用すると、収着剤粒子の水膨潤に伴う体積変化が抑えられるため、好ましい。中でも、ケトンを溶媒とした場合は、焼き付け反応時にその一部がポリアミンとの間で可逆的にケチミンを生成して、ポリアミンとエポキシ樹脂との架橋反応の速度を抑制するため、反応のムラを少なくすることもでき、より好ましい。このようなケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ベンジルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0053】
前記塗工液を調製する際は、まずエポキシ樹脂、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤、有機溶媒、及びカルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子を含有する溶液を作成し、該溶液にポリアミンを添加することが望ましい。エポキシ樹脂以外の他の成分より先にポリアミンを添加すると、その時点でエポキシ樹脂の硬化が進行してしまい、その後の塗工液の調製や塗布の工程に支障をきたすおそれがある。
【0054】
上述してきた本発明に採用する収着剤層が設けられた伝熱フィンは、収着剤層の強度や密着力が高いため、収着剤層のひび割れや剥離が起こりにくく、機械加工に耐えうるものである。このため、該伝熱フィンにバーリング加工(パンチングで穴を開け、その穴の周囲に立ち上がり(フランジ)をつける加工)を施し、伝熱管を挿通して収着式熱交換モジュールに組み上げる製造方法(以下、プレコート方式という)であっても、収着剤層のひび割れや剥離のない収着式熱交換モジュールを得ることができる。すなわち、従来のように予め組み立てたモジュールに収着剤含有液を含浸させて収着剤層を形成するという方法(以下、含浸塗布方式という)を取る必要がなくなる。
【0055】
(5)収着式熱交換モジュールについて
本発明の収着式熱交換モジュールは、例えば
図1のような形状を有するものであり、上述した収着剤層が設けられた伝熱フィンを用い、プレコート方式によって製造する。具体的には、耐食膜が設けられた伝熱フィンの表面上に、カルボキシル基を有する有機高分子からなる収着剤粒子、並びにポリアミン、2つ以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤及びエポキシ樹脂からなるバインダーを含有する収着剤層を設ける工程、前記収着剤層を設けられた伝熱フィンを打ち抜いて穴を設ける工程および前記複数の穴に伝熱管を挿通する工程を経て製造することができる。すなわち、収着剤層が設けられた伝熱フィンを得た後は、通常の熱交換モジュールの製造方法と同じ方法で製造することができる。なお、伝熱管の材質としては、上述した熱伝導性に優れる金属板の材質と同様のものを採用することができる。
【0056】
プレコート方式では、含浸塗布方式のように、収着剤含有液の液切り不良が発生しないため、伝熱フィン同士の間隔を狭くしても伝熱フィン間の閉塞の問題が発生しない。このため、本発明の収着式熱交換モジュールにおいては、隣り合う伝熱フィン同士の間隔を好ましくは2mm未満、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下とすることが可能である。一方、隣り合う伝熱フィン同士の間隔の下限については、空気を流通させる観点から0.3mm以上であることが好ましい。なお、本発明において「隣り合う伝熱フィン同士の間隔」とは、伝熱フィンを構成する基材間の距離のことであり、後述するバーリング加工におけるバーリング高さによってコントロールされるものである。
【0057】
上述のように、本発明の収着式熱交換モジュールは隣り合う伝熱フィン同士の間隔を狭くして、単位体積当たりの収着剤層面積を広くできるので、単位体積当たりの収着剤量を多くすることが可能である。特に、単位体積当たりの収着剤量を従来よりも多くしても収着剤による伝熱フィン間の閉塞を避けられることは、本発明の大きな利点である。
【0058】
かかる単位体積当たりの収着剤量としては、20~60kg/m3であることが好ましく、22~55kg/m3であることがより好ましい。60kg/m3を超えると収着剤層が厚くなりすぎて伝熱フィン間の空隙が狭くなり、空気通過時の圧力損失が過大となる恐れがある。20kg/m3に満たない場合には、十分な吸湿性能が得られない恐れがある。
【0059】
上述してきた本発明の収着式熱交換モジュールは、伝熱フィン間隔が狭く、モジュールの単位体積当たりの収着剤量の多いものであるため、従来よりも潜熱処理効率の優れるものである。かかる本発明の収着式熱交換モジュールはコンパクトで高効率の除湿システムを構築することができるため、潜熱顕熱分離空調機や、低温運転時に発生する霜の発生を抑制した無着霜冷凍冷蔵機器等の除湿システムに好適に利用することができる。
【実施例0060】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。まず、各特性の評価方法について説明する。
【0061】
[全カルボキシル基量]
収着剤試料約1gを105℃、16時間乾燥し、重量を測定する(X[g])。これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基とし、次いで0.1N水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(V[ml])を求め、次式によって試料中に含まれる全カルボキシル基量を算出する。
〔式〕全カルボキシル基量[mmol/g]=0.1V/X
【0062】
[中和度]
上述の全カルボキシル基量測定操作中の1N塩酸水溶液添加によるpH2への調整をすることなく同様に滴定曲線を求め、試料中に含まれるH型カルボキシル基量を求める。これらの結果から次式により中和度を算出する。
〔式〕中和度={(全カルボキシル基量)-(H型カルボキシル基量)}/(全カルボキシル基量)
【0063】
[重量平均粒子径]
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD-200V」を使用して水を分散媒として測定し、体積基準で表した粒子径分布から平均粒子径を求める。
【0064】
[膨潤倍率]
収着剤粒子20gを120℃で2時間乾燥したのち、100mLメスシリンダーに入れ、その容積を読み取る(A[mL])。その後、イオン交換水を試験管目盛りの100mLまで入れて2時間静置したのち、再びサンプルの容積を読み取る(B[mL])。これらの結果から、次式により収着剤粒子の膨潤倍率を算出する。
〔式〕膨潤倍率[倍]=B/A
【0065】
[反応性希釈剤の粘度の測定方法]
粘度計(BROOKFIELD社製、LVDV-II+)を用いて、25℃での粘度を測定する。
【0066】
[エポキシ当量の測定方法]
JIS K7236に準じて測定する。
【0067】
[伝熱フィン上の収着剤層の吸湿量]
下記の各実施例で作製した伝熱フィン(面積A[m2])について、105℃で16時間乾燥させた後の重量(W0[g])と、その後、20℃×65%RHで16時間放置した後の重量(Ws[g])を測定する。これらの結果から、次式により伝熱フィンの単位面積当たりの吸湿量を算出する。
〔式〕伝熱フィンの単位面積当たりの吸湿量[g/m2]=(Ws-W0)/A
【0068】
[剥離のしにくさ]
日本産業規格JIS-K5600-5-6に準拠して測定する。具体的には、まず、下記の各実施例で作製した伝熱フィンの収着剤層をカッターナイフで格子状に切断し、該収着剤層に一辺2mmの正方形小片を100枚形成する。これらの正方形小片にニチバン(株)製の粘着テープであるセロテープ(登録商標)CT-24S(幅24mm)を貼り付ける。その後、セロハンテープを伝熱フィンに対して60°の角度で引き剥はがし、基板上に残存した正方形小片の状態を次の基準で評価する。
〔評価基準〕
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
5:はがれ程度が分類4を超える場合。
収着剤層と基板の付着性の観点から、上記評価は0~1であることが好ましい。
【0069】
[収着剤層の状態]
バーリング加工した伝熱フィン上の収着剤層の状態を下記の基準に従って目視にて評価する。
〔評価基準〕
◎:穴の周囲のひび割れ・剥離箇所数の穴1個当たりの平均値が0である(ひび割れ・剥離無し)
○:穴の周囲のひび割れ・剥離箇所数の穴1個当たりの平均値が0を超え1以下である
△:穴の周囲のひび割れ・剥離箇所数の穴1個当たりの平均値が1を超え2以下である
×:穴の周囲のひび割れ・剥離箇所数の穴1個当たりの平均値が2を超える
【0070】
[単位体積当たりの収着剤量]
単位体積当たりの収着剤量は、下式により算出する。
〔式〕 単位体積当たりの収着剤量[kg/m3]
={(一枚の伝熱フィンの面積×片面当たりの塗布量×2)×(塗布量中の収着剤割合)}/{一枚の伝熱フィンの面積×(耐食膜を有する基材の厚さ+隣接する伝熱フィン同士の間隔)}
=(片面当たりの塗布量×2×塗布量中の収着剤割合)/(耐食膜を有する基材の厚さ+隣接する伝熱フィン同士の間隔)
【0071】
[収着式熱交換モジュールの吸湿性能]
収着式熱交換モジュールの伝熱管に35℃のブラインを流しながら、温度35℃、絶対湿度3.47g/kg(相対湿度10%)の空気を風速1m/sで送風する。定常状態になった後、ブラインについては循環を停止し、送風する空気については温度35℃、絶対湿度21.44g/kg(相対湿度60%)の空気に同時に切り替えて風速1m/sで送風する。送風開始からセンサーによって連続的に収着式熱交換モジュールの出入口空気の絶対湿度差と風量を測定して、これらの測定値から吸湿量を算出し、積算吸湿量の経時変化を観察する。
【0072】
[実施例1]
(株)ADEKA製のウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるアデカレジン(登録商標)EPU-11F(エポキシ当量:280g/eq)71重量部をナガセケムテックス(株)製のエポキシ系反応性希釈剤であるデナコール(登録商標)EX810(エポキシ当量:113g/eq、粘度:20mPa・s、分子量:174)29重量部で希釈したのちメチルエチルケトン(20重量部)を加え、次いで東洋紡(株)製の有機高分子系収着剤粒子であるエコポッド(登録商標)HU-750P(全カルボキシル基量:6.45mmol/g、中和度:80%、重量平均粒子径:30μm、膨潤倍率2.5倍)133.3重量部を添加し、攪拌して分散させた。ここに三菱ケミカル(株)製のポリアミンjERキュア(登録商標)LV11(アミン価:545mgKOH/g)を33.3重量部加え、塗工液を調製した。
リン酸クロメート処理後にエポキシ樹脂を含有する耐食膜を設けたアルミフィン材(板厚0.1mm、255mm×45mm)に前記塗工液を乾燥後の片面あたりの塗布量(すなわち、収着剤層の担持量)が40g/m2となるように両面塗工し、120℃で60分間焼付して伝熱フィンを得た。
【0073】
得られた伝熱フィンに対して、積層したときの伝熱フィン同士の間隔が1.5mmとなるように直径9.88mmの円孔20個のバーリング加工を行った。次いで、得られた伝熱フィン120枚を積層して外径9.52mmの銅製伝熱管を挿通し、公知の方法に従って
図1に示すような収着式熱交換モジュールを作製した。
【0074】
[実施例2]
実施例1において、エポキシ樹脂として(株)ADEKA製のキレート変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるアデカレジン(登録商標)EPU-1001(エポキシ当量:220g/eq)を61重量部、反応性希釈剤として(株)ADEKA製のアデカグリシロール(登録商標)ED523T(エポキシ当量:140g/eq、粘度:15mPa・s、分子量:216)を39重量部用いて、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が41g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例2の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0075】
[実施例3]
実施例1において、エポキシ樹脂としてEPU-1001を66重量部、反応性希釈剤としてEX810を34重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が40g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例3の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0076】
[実施例4]
実施例1において、エポキシ樹脂としてEPU-11Fを66.7重量部、反応性希釈剤としてED523Tを33.3重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が39.5g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例4の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0077】
[実施例5]
実施例4について、ポリアミンとしてLV11を25重量部、収着剤粒子としてHU-750Pを166.7重量部、メチルエチルケトンを50重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が45g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例5の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0078】
[実施例6]
実施例5について、収着剤粒子としてHU-750Pを166.5重量部、メチルエチルケトンを53.3重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が39.5g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例6の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0079】
[実施例7]
実施例6について、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が50.4g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例7の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0080】
[実施例8]
実施例1において、ポリアミンとして大都産業(株)製の変性脂肪族ポリアミンであるダイトクラール(登録商標)D6293(アミン価:262mgKOH/g)を50重量部、収着剤粒子としてHU-750P(pH8)(全カルボキシル基量:6.45mmol/g、中和度:65%、重量平均粒子径:30μm、膨潤倍率2.0倍)を150重量部、メチルエチルケトンを35.1重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が40.5g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例8の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。ここで、HU-750P(pH8)とは、HU-750Pをイオン交換水に分散して分散液を調製し、該分散液のpHが8になる様に希硝酸を添加したのち、濾過、水洗、乾燥を経て得られたものである。
【0081】
[実施例9]
実施例1において、エポキシ樹脂としてEPU-11Fを61重量部、反応性希釈剤としてED523Tを39重量部、ポリアミンとしてD6293を50重量部、収着剤粒子としてHU-750Pを159.7重量部、メチルエチルケトンを53.9重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が40.6g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例9の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0082】
[実施例10]
実施例1において、収着剤粒子として日本エクスラン工業(株)製の吸放湿性粒子であるHU-720SF(全カルボキシル基量:6.45mmol/g、中和度:65%、重量平均粒子径:4μm、膨潤倍率2.5倍)を133.3重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が39.8g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例10の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0083】
[実施例11]
実施例1において、積層したときの伝熱フィン同士の間隔が1.2mmとなるようにバーリング加工すること、および塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が40.6g/m2となるように塗布すること以外は同様にして、実施例11の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0084】
[実施例12]
実施例1において、有機高分子系収着剤粒子として、HU-750Pの代わりに、国際公開第2014/188908号公報の実施例1に開示された塩基性高分子を付与した有機高分子系収着剤粒子(全カルボキシル基量:6.6mmol/g、中和度:94%、重量平均粒子径:40μm、膨潤倍率2.3倍)を用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が45g/m2となるように塗布するほかは同様にして、実施例12の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。なお、上記の塩基性高分子を付与した有機高分子系収着剤粒子は、以下のようにして製造した。
【0085】
2L容積の反応槽に水700重量部を仕込み、アクリロニトリル210重量部及びジビニルベンゼン90重量部を混合したものを追加で仕込んだ。反応槽を撹拌しながら、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)を3重量部添加して溶解させた。その後、反応槽を70℃に加温して3時間反応させた。反応終了後、撹拌を継続しながら約20℃まで冷却し、平均粒子径40μmの架橋アクリロニトリル系重合体粒子を得た。次に、2L容積の反応槽に水800gとNaOH100gと該架橋アクリロニトリル系重合体粒子100gを仕込み、90℃で60時間加水分解反応を実施して、塩型カルボキシル基含有粒子を得た。さらに、2L容積の反応槽に水900gと該塩型カルボキシル基含有粒子100gを仕込み、撹拌しながらポリエチレンイミン(平均分子量70000)を0.5g添加して50℃で30分間反応させ、その後、洗浄・乾燥処理を行い、塩基性高分子を付与した有機高分子系収着剤粒子を得た。
【0086】
[比較例1]
実施例1において、ポリアミンとしてD6293を50重量部、収着剤粒子としてHU-750Pを150重量部、メチルエチルケトンを16.8重量部、アルミ板として工業用純アルミニウムであるJIS A1050を用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が40g/m2となるように塗布するほかは同様にして、比較例1の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0087】
[比較例2]
実施例1において、収着剤粒子としてHU-750Pを533.2重量部、メチルエチルケトンを70重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が40.6g/m2となるように塗布するほかは同様にして、比較例2の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0088】
[比較例3]
実施例1について、収着剤粒子としてHU-750Pを90重量部、メチルエチルケトンを10重量部用い、塗工液の乾燥後の片面あたりの塗布量が39.7g/m2となるように塗布するほかは同様にして、比較例3の伝熱フィンおよび収着式熱交換モジュールを得た。
【0089】
[比較例4]
リン酸クロメート処理後にエポキシ樹脂を含有する耐食膜を設けたアルミフィン材(板厚0.1mm、幅110mm、長さ360mm)に得られた伝熱フィンに対して、積層したときの伝熱フィン同士の間隔が1.5mmとなるように直径9.88mmの円孔20個のバーリング加工を行った。次いで、得られた伝熱フィン120枚を積層して外径9.52mmの銅製伝熱管を挿通し、公知の方法に従って熱交換モジュールを作製した。かかる熱交換モジュールに対して、実施例1で調整された塗工液への浸漬、引き上げ、および圧縮空気の吹き付けによる液切りを5回繰り返した後、120℃で60分間焼付して比較例4の収着式熱交換モジュールを得た。
【0090】
各実施例、比較例の伝熱フィンについて、前述の評価試験を行い、その結果を表1に示す。また、
図2に実施例1、11および比較例3の収着式熱交換モジュールの吸湿量の経時変化の様子を示す。
【0091】
【0092】
表1のとおり、各実施例に記載の伝熱フィンは、いずれも収着剤層の吸湿性を維持しながら、剥離しにくく、かつ、バーリング加工においてもほとんどひび割れを発生しないものである。また、この性質により、かかる伝熱フィンを採用する本発明の収着式熱交換モジュールにおいては、従来よりも狭い2mm未満という伝熱フィン間隔を閉塞なく実現でき、単位体積当たりの収着剤量を大きくすることができ、
図2に示すように、空気の温度、湿度、量の各条件を同一にした際に、空気中からより多くの湿分を除去することができる。