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特開2024-155713不審データ抽出装置、免税還付処理装置、およびコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155713
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】不審データ抽出装置、免税還付処理装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241024BHJP
   G06Q 20/20 20120101ALI20241024BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q20/20 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222759
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2023069946
(32)【優先日】2023-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518333063
【氏名又は名称】スマートテクノロジーズ&リソーシーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 学
(57)【要約】
【課題】 免税顧客になりすました者による多発的な免税品購入を抑制する不審データ抽出技術を提供する。
【解決手段】 不審データ抽出装置は、免税店から受信する電文データに、免税品購入者に係る顧客IDを取得した専用端末の位置データおよび前記の購買品データを取得した時刻である時刻データを含むこととする。不審データの抽出は、同一の顧客IDを含む電文データに係る位置データおよび時刻データに基づいて、位置データの差分が時刻データの差分にて移動可能か否かを判断する。移動不能であれば、不審データとして関係者へ告知する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免税顧客を特定可能な顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データを免税店に係る専用端末から受信する電文データ受信手段と、
前記の電文データが不審であるか否かを判断するのに用いるチェック用データを格納する不審チェック用データベースと、
前記の不審チェック用データベースを用いて前記の電文データが不審データであるか否かを判断する不審データ抽出手段と、
その不審データ抽出手段が不審データであると判断した場合に、前記の電文データに含まれる顧客IDとともに所定の端末へ出力する不審データ送信手段と、を備え、
前記の電文データには、前記の顧客IDを取得した専用端末の位置データおよび前記の購買品データを取得した時刻である時刻データを含むこととし、
前記の不審データ抽出手段は、複数の電文データに係る位置データおよび前記の時刻データに基づいて、複数の位置データの差分が時刻データの差分にて移動可能か否かを判断することとした不審データ抽出装置。
【請求項2】
前記の不審データ送信手段が出力する所定の端末は、前記の不審データが自らのなりすましである場合に受信を希望する旨の登録を予め実施した端末であることとした
請求項1に記載の不審データ抽出装置。
【請求項3】
前記の不審データは、その不審データを受信した所定端末に対して、免税品購入が自らのものであるか否かの問い合わせ内容を含むこととし、
前記の問い合わせ内容に対しての返信を受信する不正確定データ受信手段を備えることとした
請求項2に記載の不審データ抽出装置。
【請求項4】
不正確定データが把握できた場合に連絡を欲する旨を予め登録した登録免税店データベースと、
その登録免税店データベースに登録された免税店に対して前記の不正確定データに係るIDを停止すべき旨の停止勧告データを送信する停止勧告データ送信手段と、
を備えることとした
請求項3に記載の不審データ抽出装置。
【請求項5】
前記の不審データ送信手段が出力する所定の端末は、不審者データを収集する第三者サーバとした
請求項1に記載の不審データ抽出装置。
【請求項6】
免税顧客を特定可能な顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データが不審であるか否かを判断するのに用いるデータを不審チェック用データベースに格納する不審チェック用データ蓄積手順と、
前記の顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データを免税店に係る専用端末から受信する電文データ受信手順と、
前記の不審チェック用データベースを前記の電文データが不審データであるか否かを判断する不審データ抽出手順と、
その不審データ抽出手段が不審データであると判断した場合に、前記の電文データに含まれる顧客IDとともに所定の端末へ出力する不審データ送信手順と、
を不審データ抽出装置に実行させるコンピュータプログラムであって、
前記の電文データには、前記の顧客IDを取得した専用端末の位置データおよび前記の購買品データを取得した時刻である時刻データを含むこととし、
前記の不審データ抽出手順は、複数の電文データに係る位置データおよび前記の時刻データに基づいて、複数の位置データの差分が時刻データの差分にて移動可能か否かを判断することした
コンピュータプログラム。
【請求項7】
前記の不審データ送信手段が出力する所定の端末は、前記の不審データが自らのIDに係るものである場合に受信を希望する旨の登録を予め実施した端末であることとし、
前記の不審データは、その不審データを受信した所定端末に対して、免税品購入が自らのものであるか否かの問い合わせ内容を含むこととし、
前記の問い合わせ内容に対しての返信を受信する不正確定データ受信手順をも、
不審データ抽出装置に実行させることとした請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
電子レシートおよび還付アカウントを取得した免税顧客に対し、免税品にて先払いしていた消費税の還付処理を実行する免税還付処理装置であって、
前記の免税顧客が免税品を購入した場合に還付対象者として必要な還付対象者データを前記の還付アカウントに紐付けて蓄積する還付対象者データベースと、
前記の還付金が幾らであるかのデータ要求を前記の電子レシートとともに前記の免税顧客に係る情報端末から受信する還付金データ要求受信手段と、
前記の電子レシートに紐付けられた還付金データを蓄積する還付金データベースと、
前記の還付金データベースおよび還付対象者データベースを用いて、前記の還付アカウントに紐付いた免税顧客に対する還付金額を算出した還付金データを前記の免税顧客に係る情報端末(たとえば購買者端末Bd2が携帯可能な端末に限られない)へ送信する還付金データ送信手段と、
その還付金データを送信した情報端末からの還付処理要求を、その情報端末(購買者端末Bd2)の位置データとともに受信する還付処理要求受信手段と、
前記の位置データが日本国外か否かを判断する位置データ判断手段と、
その位置データ判断手段による判断が日本国外である場合に還付処理を実行する還付処理実行手段と、
を備えた免税還付処理装置。
【請求項9】
電子レシートおよび還付アカウントを取得した免税顧客に対し、免税品にて先払いしていた消費税の還付処理を実行する免税還付処理装置を制御するコンピュータプログラムであって、
前記の免税還付処理装置には、
前記の免税顧客が免税品を購入した場合に還付対象者として必要な還付対象者データを前記の還付アカウントに紐付けて蓄積する還付対象者データベースと、
前記の電子レシートに紐付けられた還付金データを蓄積する還付金データベースと、
を備え、
前記のコンピュータプログラムは、
前記の還付金が幾らであるかのデータ要求を前記の電子レシートとともに前記の免税顧客に係る情報端末から受信する還付金データ要求受信手順と、
前記の還付金データベースおよび還付対象者データベースを用いて、前記の電子レシートに紐付いた免税顧客に対する還付金額を算出した還付金データを前記の情報端末へ送信する還付金データ送信手順と、
その還付金データを送信した情報端末からの還付処理要求を前記の情報端末の位置データとともに受信する還付処理要求受信手順と、
その還付処理要求受信手段が受信した位置データが日本国外か否かを判断する位置データ判断手順と、
その位置データ判断手順にて日本国外であると判断した場合に還付処理を実行する還付処理実行手順と、
を前記の免税還付処理装置に実行することとしたコンピュータプログラム。
【請求項10】
免税顧客が免税品にて先払いしていた消費税の還付処理の実行を要求する通信端末において実行されるアプリケーションプログラムであって、
還付金額が幾らであるかという還付金データ要求を免税品に関する購入の証として取得した電子レシートとともに還付処理実行装置(還付処理サーバE)へ送信する電子レシート出力手順と、
その電子レシートに基づく還付金データ要求に対する還付金データを受信する還付金データ受信手順と、
還付処理の実行を要求する還付処理要求を前記の情報端末の位置データとともに送信する還付処理要求送信手順と、
前記の還付処理要求に基づいた還付処理が実行された旨を受信する還付処理受信手順と、
を前記の通信端末に実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項11】
第一の閉塞回路を全面に張り巡らせた第一シートと、
第二の閉塞回路を全面に張り巡らせた第二シートと、
前記の第一の閉塞回路および前記の第二の閉塞回路が断線した旨を検知可能なRFIDチップと、
を備え、
前記の第一の閉塞回路および前記の第二の閉塞回路は絶縁した状態、且つ第一の閉塞回路および第二の閉塞回路を平面視した場合に交差した状態となるように前記の第一シートと前記の第二シートとを貼り合わせて形成し、
前記のRFIDチップには、免税品の特定、価格、免税品の購入者および購入日時を含むデータを読み書き可能とした包装用シート。
【請求項12】
第一の閉塞回路および前記の第二の閉塞回路の外周に糊代を備えることと
請求項11に記載の包装用シート。
【請求項13】
直方体の箱を形成可能であるように六枚の包装用シートを連結させることとした
請求項11または請求項12のいずれかに記載の包装用シート。
【請求項14】
前記の包装用シートの少なくとも一面、好ましくは両面に段ボール紙を貼付することとした
請求項13に記載の包装用シート。
【請求項15】
直方体の箱を形成可能であるように六枚の包装用シートを連結させるとともに、
前記の第一の閉塞回路および前記の第二の閉塞回路は、六枚の包装用シートにおいて一の閉塞回路として形成することとし、
前記のRFIDチップは、六枚の包装用シート全体として一つとした
請求項11に記載の包装用シート。
【請求項16】
外国人が免税品を購入した輸出物品販売場に設置された販売場端末から消費税還付の手続きに必要なデータを受信するとともに、当該外国人が出国する際に消費税還付をする税関に設置するデータ処理装置であって、
前記の販売場端末は、外国人が購入した免税品を特定するための購入品データおよび/または当該外国人を特定するための購入者データによる免税手続きデータを入力して前記のデータ処理装置へ送信するとともに、当該免税品を密封した包装用シートに備えられたRFIDチップへ前記の購入品データおよび/または前記の購入者データを書き込むものであり、
前記のデータ処理装置は、前記の販売場端末から送信された免税手続きデータを受信する免税手続きデータ受信手段と、
前記の税関にやってきた外国人旅行者が持参した免税品を密封した包装用シートに備えられたRFIDチップからデータを読み取るRFIDデータ受信手段と、
前記のRFIDデータ受信手段から読み取ったデータに基づいて前記の免税品が未開封である旨を確認するとともに、前記の免税手続きデータ受信手段が受信した免税手続きデータおよび前記のRFIDデータ受信手段から読み取ったデータの一致を確認する免税手続きデータ検証手段と、
を備えたデータ処理装置。
【請求項17】
消費税還付を受けようとして税関にやってきた外国人旅行者のパスポートからパスポートデータを受信するパスポートデータ受信手段を備えることとした
請求項16に記載のデータ処理装置。
【請求項18】
外国人が免税品を購入した輸出物品販売場に設置された販売場端末から消費税還付の手続きに必要なデータを受信するとともに、当該外国人が出国する際に消費税還付をする税関に設置するデータ処理装置(税関端末)を制御するコンピュータプログラムであって、
前記の販売場端末は、外国人が購入した免税品を特定するための購入品データおよび/または当該外国人を特定するための購入者データによる免税手続きデータを入力して前記のデータ処理装置へ送信するとともに、当該免税品を密封した包装用シートに備えられたRFIDチップへ前記の購入品データおよび/または前記の購入者データを書き込むものであり、
前記のデータ処理装置を制御するコンピュータプログラムは、
前記の販売場端末から送信された免税手続きデータを受信する免税手続きデータ受信手順と、
前記の税関にやってきた外国人旅行者が持参した免税品を密封した包装用シートに備えられたRFIDチップからデータを読み取るRFIDデータ受信手順と、
前記のRFIDデータ受信手段から読み取ったデータに基づいて前記の免税品が未開封である旨を確認する未開封確認手順と、
前記の免税手続きデータ受信手順にて受信した免税手続きデータおよび前記のRFIDデータ受信手順から読み取ったデータの一致を確認する免税手続きデータ検証手順と、
を前記のデータ処理装置に実行させるコンピュータプログラム。
【請求項19】
消費税還付を受けようとして税関にやってきた外国人旅行者のパスポートからパスポートデータを受信するパスポートデータ受信手順をも前記のデータ処理装置に実行させることとした
請求項18に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
所定の場所に貼られた場合に最外殻へ位置する台紙と、
前記の台紙の長手方向を往復して全面を張り巡らせる閉塞回路と、
前記の閉塞回路が断線した場合にその旨を検知するRFIDチップと、
前記の閉塞回路および前記のRFIDチップを覆う接着層と、を備え、
前記の閉塞回路は、印刷技術によって台紙へ固定することとし、
前記の粘着層は、粘着力が強い層と粘着力が弱い層とが長手方向へ交互に現れるように形成し、
前記の粘着力が強い層は、台紙に印刷した閉塞回路を台紙から引き剥がすことができない程度の強さとし、
前記の粘着力が弱い層は、台紙に印刷した閉塞回路を台紙から引き剥がすことができる程度の弱さとした
梱包シール。
【請求項21】
所定の場所に貼られた場合に最外殻へ位置する台紙と、
前記の台紙の幅方向を往復して全面を張り巡らせる閉塞回路と、
前記の閉塞回路が断線した場合にその旨を検知するRFIDチップと、
前記の閉塞回路および前記のRFIDチップを覆う接着層と、を備え、
前記の閉塞回路は、印刷技術によって台紙へ固定することとし、
前記の粘着層は、粘着力が強い層と粘着力が弱い層とが長手方向へ交互に現れるように形成し、
前記の粘着力が強い層は、台紙に印刷した閉塞回路を台紙から引き剥がすことができない程度の強さとし、
前記の粘着力が弱い層は、台紙に印刷した閉塞回路を台紙から引き剥がすことができる程度の弱さとした
梱包シール。
【請求項22】
前記の接着層における台紙と反対側の面には、接着層を保護するための剥離紙を備えた
請求項20または請求項21に記載の梱包シール。
【請求項23】
長手方向の寸法は、梱包用の袋体または箱体における密閉させる寸法に合わせて決定するとした
請求項20または請求項21に記載の梱包シール。
【請求項24】
前記の台紙は、前記の閉塞回路と同色とした
請求項20または請求項21に記載の梱包シール。
【請求項25】
前記の粘着層は、前記の閉塞回路と同色とした
請求項24に記載の梱包シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本へ入国した外国人旅行者および海外に在住する一時帰国の日本人(以下、「免税資格保有者」)が利用する免税制度を前提としたID不正利用による脱税購買の抑制、免税手続きの適正化支援の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本に訪れた外国人が、出国カウンターを出た場合、飛行機などの搭乗口までの間に出店されている店舗は日本国内ではない、と扱われる。そのため、物品販売に関わる日本国内の取引に課せられる税金(主に消費税)を支払う必要が無い。そのため、こうした店舗は、「免税店」と称される。
なお、以下においては、免税資格保有者が免税品を購入した場合には、「免税顧客」と略記する。
【0003】
日本国内であっても、外国人旅行者や一時帰国の日本人が免税資格保有者である旨を証明すれば、出国カウンターの外にある空港型免税店のように、消費税を支払わずに買い物ができる店舗がある。このような店舗を「輸出物品販売場」と称することとする。「空港型免税店」と区別するためである。
【0004】
図1
図1(a)では、空港型免税店にて免税が受けられる仕組みについて示している。
商品を購入しようとする購買者が免税資格保有者であることを店舗側が確認するため、パスポートの提示を求める(1)。その際の購入品は、免税価格で販売され、購入品を免税価格で支払ってもらう(2)。免税資格保有者は、出国時にパスポートと精算レシートを提示し(3)、免税品を受け取る(4)、というものである。
【0005】
図1(b)は、輸出物品販売場にて免税が受けられる仕組みについて示している。この仕組みは、旅行者の利便性と消費の促進のために導入された制度である。
外国人旅行者は入国時に「上陸許可シール」という証印が日本政府によりパスポートに貼付される。旅行者は、パスポートおよびパスポートに添付された「上陸許可シール」を免税店に提示する。免税店は、それら旅券情報および購入品内容をもとに免税可否を判定し、可の場合には旅行者は購入時の消費税支払いを免除される。その際、免税店は、パスポートや在留資格のデータと購入品データを国税庁サーバへデータ送信(報告)する、という手続きが必要である。
【0006】
新型コロナウイルスの世界的流行を機に、デジタル庁により、入国手続き「検疫」、「入国審査」、「税関申告」、「免税購入」を、ウェブを介して実施できる「Visit Japan Web」、という制度も開始された。「Visit Japan Web」は、パスポート情報(パスポート番号、国籍、氏名等)に加えて、上陸許可情報を含んでおり、スマートフォン(携帯端末)にて利用できるアプリケーションソフトウェアである。
【0007】
前記の「Visit Japan Web」では、検疫管理手続きのほか、免税品購買手続きにおいても利用可能である。免税品購買では、旅行者が免税店に訪れた際に、自らに係るスマートフォン(携帯端末)へ免税品購入手続において利用する二次元バーコードを出力させる。免税店側は、スマートフォンが出力した免税品購買用の二次元バーコードをバーコードリーダで読み取れば、旅行者のパスポート情報(パスポート番号、国籍、氏名等)や在留資格等の情報を取得できる。そのため、免税店は旅行者によるパスポートの提示がなくても、スマートフォンに出力された免税品購買用の「Visit Japan Web」(の二次元バーコード)の提示があれば、免税品の購買を認めている。旅行者としても、パスポートを持ち歩かずに済む、というメリットがある(図中では、パスポートおよび上陸許可シールと、「Visit Japan Web」との間に「or」と示している)。
【0008】
図2
図2では、免税制度を悪用する事例について、主なものを概念的に示している。
図2(a)は、旅行者が免税品を購買後、国内の居住者に転売して出国する、という事例である。旅行者は、消費税抜きの商品購買または前払い還付のいずれであっても、正規価格よりも消費税分(たとえば10%)だけ安い価格で商品を購入する。そして、その購買品を、たとえば購買価格に5%を上乗せした金額で、日本国内に居住する居住者へ転売する。その居住者としては5%安い価格で商品を入手することができ、旅行者は5%分の利益を手にすることができる、ということになる。
【0009】
図2(b)では、正規の旅行者が取得した免税品購買用の「Visit Japan Web」を不正取得や偽造したり、旅行者の上陸許可シール付きパスポートを不正に取得(盗難や偽造)したりして、それにより得た正規旅行者のなりすましデータ(パスポート番号、国籍、氏名等)を使用して免税額での商品購買をする場合である。
正規の旅行者に対して発行される「Visit Japan Web」やなりすましデータを不正に取得した不正所得者が、それらを免税店に提示することで免税品を購入する、というものである。
【0010】
前記の不正取得者は、不正取得した「Visit Japan Web」やなりすましデータを日本各地に滞在している複数人に配布するということが少なくない。そして、配布された複数の者が短時間に免税品の購買を実行する、という不正行為が発生している。
【0011】
たとえば、特許文献1には、外国人が免税店等で免税対象商品を選択し購入するのを支援する技術が開示されている。観光客の商品理解を助け、商品の選択から、購買、免税条件判定までを一貫したスキームで支援する。
【0012】
たとえば、特許文献2には、免税販売の機会の増加に伴う免税販売書類の作成業務を効率化するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許6947427号公報
【特許文献2】特許7024770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
正規の旅行者から取得したなりすましデータを不正に取得した者(達)による不正な免税品購入を抑制する必要性が高まっている。不正取得されたなりすましデータは、物理的な存在である偽造パスポートであっても、複製および送信を際限なく実行できてしまうため、消費税逃れによる商品購入は、大規模で多発的に発生しうる。これが第一の課題である。
【0015】
また、上述の課題は、なりすましデータの不正取得者を事前に抑制する手段を新たに提供しても、その新たな抑制手段の抜け穴をついた不正取得が発生する可能性が否定できない。言わば、不正取得者とのいたちごっこになってしまう。よって、根本的な解決に近づくには、「商品購入時の免税」から「消費税の先払いと出国後の還付」へ移行させることが望まれる。これが第二の課題である。
【0016】
前述した特許文献1および特許文献2では、第一または第二の課題を解決するには至らない。また、特許文献1および特許文献2を抽出する前提となった先行特許調査にて挙がった他の先行特許文献にも、第一または第二の課題を解決する技術は発見できなかった。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、正規の旅行者になりすますことが可能なデータを不正に取得した者による多発的な免税品購入を抑制する技術、および「消費税の先払いと出国後の還付」を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した課題を解決するため、本願発明においては、なりすましによる脱税購買の抑制に貢献する不審抽出システム(装置)、その不審抽出システムを制御するコンピュータプログラム、免税品を購入した購入者に対して免税額を還付する還付システム(装置)、その還付システムを制御するコンピュータプログラム、その還付システムを利用するアプリケーションプログラムを提供する。
【0019】
(第一の発明)
第一の発明は、免税顧客を特定可能な顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データを免税店に係る専用端末(免税手続き処理装置Ad1)から受信する電文データ受信手段と、
前記の電文データが不審であるか否かを判断するのに用いるチェック用データを格納する不審チェック用データベースと、
前記の不審チェック用データベースを用いて前記の電文データが不審データであるか否かを判断する不審データ抽出手段と、
その不審データ抽出手段が不審データであると判断した場合に、前記の電文データに含まれる顧客IDとともに所定の端末へ出力する不審データ送信手段と、を備える。
前記の電文データには、前記の顧客IDを取得した専用端末の位置データおよび前記の購買品データを取得した時刻である時刻データを含むこととし、
前記の不審データ抽出手段は、複数の電文データに係る位置データおよび前記の時刻データに基づいて、複数の位置データの差分が時刻データの差分にて移動可能か否かを判断することとした不審データ抽出装置である(図5参照)。
【0020】
「顧客ID」とは、免税品を購入した際に、免税店が取得した購入者を特定するための情報(データ)である。免税品の購入資格があるか否かを確認する際に、購入者が提示したパスポートおよび上陸許可シールにて購入資格を確認した場合であればパスポート番号、国籍、氏名のなど情報(データ)が顧客IDとなる。購入者が提示した免税品購買用の「Visit Japan Web」であれば、「Visit Japan Web」から得られるデータが顧客IDとなる。
【0021】
(作用)
免税顧客の顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データが不審であるか否かを判断するのに用いるチェック用データを、不審チェック用データベースへ格納しておく。
免税顧客による免税店での買い物があった場合に、その買い物に係る電文データを免税店に係る専用端末から電文データ受信手段が受信する。その電文データには、前記の免税顧客の顧客IDを取得した専用端末の位置データおよび前記の購買品データを取得した時刻である時刻データを含む。
不審チェック用データベースを用いて、電文データが不審データであるか否かを不審データ抽出手段が判断する。同一の顧客IDを含む複数の電文データに係る位置データおよび前記の時刻データに基づいて、それら位置データの差分が時刻データの差分にて移動可能か否かを判断する。
なお、複数の顧客IDが「同一」であるか否かの判断は、厳密な同一性ではなく、部分的に一致していれば同一(すなわち、不審データ)と判断する。たとえば、パスポート番号のみが一致していて、他のデータに不一致があったとしても、不審データと判断する。
不審データ抽出手段が不審データであると判断した場合には、電文データに含まれるIDとともに所定の端末へ不審データ送信手段が出力する。
【0022】
顧客IDを不正取得した不正取得者が、正規の顧客ID取得者とは別に複数人で異なる免税店にて少ない時間差で別々の免税店で商品を購入しようとした場合であって、それぞれの位置データへの移動が前記の時間差では物理的に不可能である場合、不審データとして判断される。そして、所定の端末の操作者は、その不審データを得ることができ、その後の対応に役立てることが可能となる。その対応が適切であれば、不正取得者による免税品の購入を抑制することに寄与する。
【0023】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明に係る不審データ抽出装置は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の不審データ送信手段が出力する電文を受信する所定の端末は、前記の不審データが自らのなりすましである場合に受信を希望する旨の登録を予め実施した端末であることとするのである。
【0024】
(作用)
正規の旅行者に係る各種のデータを用いて生成されたなりすましデータにて免税品の購入をされた場合、不審データを受信することができる。
【0025】
正規の旅行者に対しては、希望しなければ不審データの受信を拒絶しない、という設定を標準としておく、ということが現実的である。
【0026】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明に係る不審データ抽出装置におけるバリエーション1は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の不審データは、その不審データを受信した所定端末に対して、免税品購入が自らのものであるか否かの問い合わせ内容を含むこととし、
前記の問い合わせ内容に対しての返信を受信する不正確定データ受信手段を備えることとするのである(図7参照)。
【0027】
(作用)
不審データに対する問い合わせの返信を受け取ることができる。その返信内容が、免税品購入は自らのものではない、という場合であれば、不審データが不審ではなく、不正に利用された不正確定データという可能性が極めて高くなる。その場合、不正に使用されたIDに対する措置を講じるなど、次なる対処が可能となる。
【0028】
(第一の発明のバリエーション3)
前述したバリエーション2に係る発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、不正確定データが把握できた場合に連絡を欲する旨を予め登録した登録免税店データベースと、
その登録免税店データベースに登録された免税店に対して前記の不正確定データに係るIDを停止すべき旨の停止勧告データを送信する停止勧告データ送信手段と、
を備えるのである(図7参照)。
【0029】
(作用)
不正確定データが把握できた場合に連絡を欲する免税店は、その旨を登録免税店データベースに予め登録する。
不正確定データが把握されたら、前記の不正確定データに係るIDを停止すべき旨の停止勧告データを停止勧告データ送信手段が送信する。
【0030】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明に係る不審データ抽出装置は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の不審データ送信手段が出力する所定の端末は、不審者データを収集する第三者サーバ(G)とするのである(図5参照)。
【0031】
(作用)
たとえば第三者が国税庁である場合には、不審者データを収集することができる。
【0032】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に係る不審データ抽出装置を制御するコンピュータプログラムに係る。
すなわち、免税顧客を特定可能な顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データが不審であるか否かを判断するのに用いるデータを不審チェック用データベースに格納する不審チェック用データ蓄積手順と、
前記の顧客IDおよび購買品に関する購買品データを含む電文データを免税店に係る専用端末(免税手続き処理装置Ad1)から受信する電文データ受信手順と、
前記の不審チェック用データベースを前記の電文データが不審データであるか否かを判断する不審データ抽出手順と、
その不審データ抽出手段が不審データであると判断した場合に、前記の電文データに含まれる顧客IDとともに所定の端末へ出力する不審データ送信手順と、
を不審データ抽出装置に実行させるコンピュータプログラムに係る。
前記の電文データには、前記の顧客IDを取得した専用端末の位置データおよび前記の購買品データを取得した時刻である時刻データを含むこととし、
前記の不審データ抽出手順は、複数の電文データに係る位置データおよび前記の時刻データに基づいて、複数の位置データの差分が時刻データの差分にて移動可能か否かを判断することとする。
【0033】
(第二の発明のバリエーション)
第二の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の不審データ送信手段が出力する所定の端末は、前記の不審データが自らのIDに係るものである場合に受信を希望する旨の登録を予め実施した端末であることとし、
前記の不審データは、その不審データを受信した所定端末に対して、免税品購入が自らのものであるか否かの問い合わせ内容を含むこととし、
前記の問い合わせ内容に対しての返信を受信する不正確定データ受信手順をも、
不審データ抽出装置に実行させることとしたコンピュータプログラムとするのである。
【0034】
(第三の発明)
第三の発明は、電子レシートおよび還付アカウントを取得した免税顧客に対し、免税品にて先払いしていた消費税の還付処理を実行する免税還付処理装置(還付処理サーバE)に係る。
すなわち、
前記の免税顧客が免税品を購入した場合に還付対象者として必要な還付対象者データを前記の還付アカウントに紐付けて蓄積する還付対象者データベースと、
前記の還付金が幾らであるかのデータ要求を前記の電子レシートとともに前記の免税顧客に係る情報端末から受信する還付金データ要求受信手段と、
前記の電子レシートに紐付けられた還付金データを蓄積する還付金データベースと、
前記の還付金データベースおよび還付対象者データベースを用いて、前記の還付アカウントに紐付いた免税顧客に対する還付金額を算出した還付金データを前記の免税顧客に係る情報端末(たとえば購買者端末Bd2が携帯可能な端末に限られない)へ送信する還付金データ送信手段と、
その還付金データを送信した情報端末(購買者端末Bd2)からの還付処理要求を、その情報端末(購買者端末Bd2)の位置データとともに受信する還付処理要求受信手段と、
前記の位置データが日本国外か否かを判断する位置データ判断手段と、
その位置データ判断手段による判断が日本国外である場合に還付処理を実行する還付処理実行手段と、
を備える(図9図10参照)。
なお、「電子レシート」とは、免税顧客が購入した商品に係る情報および免税顧客を特定する情報を含む電子データである(図4図8参照)。
【0035】
(作用)
免税顧客が免税品を購入した場合に、還付対象者として必要な還付対象者データを、還付アカウントに紐付けて還付対象者データベースが蓄積する。また、免税品の購入時に作成される電子レシート(に含まれたデータ)に紐付けられた還付金データを、還付金データベースが蓄積する。
還付金額が幾らであるかを知りたい免税顧客は、自らに係る通信端末(Bd2)から還付金データ要求を送信し、その還付金データ要求を免税還付処理装置の還付金データ要求受信手段が受信する。
還付金データベースおよび還付対象者データベースを用いて、前記の電子レシートに含まれたデータに紐付いた還付金額を抽出し、その還付金額のデータ(還付金データ)を還付金データ送信手段が送信する。そして、その還付金データを送信した先である免税顧客に係る通信端末(購買者端末Bd2)からの還付処理要求を還付処理要求受信手段が受信する。
還付処理要求受信手段は、前記の携帯端末の位置データを取得し、位置データ判断手段は、前記の位置データが日本国外か否かを判断し、還付処理実行手段は日本国外であると判断した場合に還付処理を実行する。
【0036】
免税顧客は、自らに係る携帯端末の位置データが日本国外となった場合、すなわち、日本を出国しなければ、還付金を受け取ることができない。日本を出国しない限り消費税は還付されないということであり、免税を本来受けられる免税顧客だけが前払いした消費税の還付を受けることができる。
なお、還付処理実行手段は、位置データの判断結果のみに基づくのではなく、還付処理要求に係る本人確認を厳格に実行した上で、還付処理の実行に移ることが一般的である。
また、還付される還付金は、現金のほか、現金に相応する暗号資産であってもよい。
【0037】
(第四の発明)
第四の発明は、電子レシートおよび還付アカウントを取得した免税顧客に対し、免税品にて先払いしていた消費税の還付処理を実行する免税還付処理装置(還付処理サーバE)を制御するコンピュータプログラムに係る。
前記の免税還付処理装置には、
前記の免税顧客が免税品を購入した場合に還付対象者として必要な還付対象者データを前記の還付アカウントに紐付けて蓄積する還付対象者データベースと、
前記の電子レシートに紐付けられた還付金データを蓄積する還付金データベースと、
を備える。
前記のコンピュータプログラムは、
前記の還付金が幾らであるかのデータ要求を前記の電子レシートとともに前記の免税顧客に係る情報端末(たとえば購買者端末Bd2)から受信する還付金データ要求受信手順と、
前記の還付金データベースおよび還付対象者データベースを用いて、前記の電子レシートに紐付いた免税顧客に対する還付金額を算出した還付金データを前記の情報端末へ送信する還付金データ送信手順と、
その還付金データを送信した情報端末からの還付処理要求を前記の情報端末の位置データとともに受信する還付処理要求受信手順と、
その還付処理要求受信手段が受信した位置データが日本国外か否かを判断する位置データ判断手順と、
その位置データ判断手順にて日本国外であると判断した場合に還付処理を実行する還付処理実行手順と、
を前記の免税還付処理装置に実行させることとしたコンピュータプログラムである(図9図10参照)。
【0038】
(第五の発明)
第五の発明は、免税顧客が免税品にて先払いしていた消費税の還付処理の実行を要求する通信端末において実行されるアプリケーションプログラムに係る。
すなわち、還付金額が幾らであるかという還付金データ要求を免税品に関する購入の証として取得した電子レシートとともに還付処理実行装置(還付処理サーバE)へ送信する電子レシート出力手順と、
その電子レシートに基づく還付金データ要求に対する還付金データを受信する還付金データ受信手順と、
還付処理の実行を要求する還付処理要求を前記の情報端末の位置データとともに送信する還付処理要求送信手順と、
前記の還付処理要求に基づいた還付処理が実行された旨を受信する還付処理受信手順と、
を前記の通信端末に実行させることとしたアプリケーションプログラムに係る(図9の中に示す「還付要求アプリ」参照)。
【0039】
(コンピュータプログラムの提供形態)
第二、第四および第五の発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-R、CD-RW、MO(光磁気ディスク)、DVD-R、DVD-RW、フラッシュメモリなどである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
【0040】
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、たとえばチェックサーバ(D)に備えられた演算装置としてのCPU、無線通信またはシリアル通信などによってデータを入力するデータ入力装置、演算の対象となるデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリ、データ蓄積のための不揮発性メモリ(たとえば、ハードディスクドライブ)などを用いて実行される。
【0041】
第四の発明に係るコンピュータプログラムは、たとえば還付処理サーバ(E)に備えられた演算装置としてのCPU、無線通信またはシリアル通信などによってデータを入力するデータ入力装置、演算の対象となるデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリ、データ蓄積のための不揮発性メモリ(たとえば、ハードディスクドライブ)などを用いて実行される。
【0042】
(アプリケーションプログラムの提供形態)
第五の発明に係るアプリケーションプログラムは、所定の携帯端末にダウンロードし、その携帯端末内にて実行されるアプリケーションプログラムのほか、当該携帯端末と通信して当該携帯端末を制御するウェブサイトとの双方向通信によって実行されるプログラムも含む。
【発明の効果】
【0043】
第一の発明によれば、正規の旅行者になりすますことが可能なデータを不正に取得した者による多発的な免税品購入を抑制する不審データ抽出装置を提供することができた。
第二の発明によれば、正規の旅行者になりすますことが可能なデータを不正に取得した者による多発的な免税品購入を抑制する不審データ抽出装置の制御プログラムを提供することができた。
第三の発明によれば、「消費税の先払いと出国後の還付」を実現する免税還付処理装置を提供することができた。
第四の発明によれば、「消費税の先払いと出国後の還付」を実現する免税還付処理装置を制御する制御プログラムを提供することができた。
第五の発明によれば、「消費税の先払いと出国後の還付」を要求するアプリケーションプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】免税店の仕組みを示す概念図である。
図2】免税制度の悪用事例を示す概念図である。
図3】本発明における実施形態にて、免税品を購入した際のデータ処理について示す概念図である。
図4】本発明における実施形態にて、免税品を購入した際のデータ処理について示す概念図である。
図5】本発明における実施形態に係るチェックサーバを中心として、どのようなデータ処理が実行されるかを示すブロック図である。
図6】不審データを抽出する一例を示すフローチャートである。
図7】不審データが抽出された際にどのようなデータ処理を実行するかを示す概念図である。
図8】購買者が電子レシートを受け取る手順を示す概念図である。
図9】消費税を還付する処理を実行する還付処理サーバについて示すブロック図である。
図10】出国を確認して消費税を還付する処理手順を示すフローチャートである。
図11】免税店の専用端末の画面を示す図であって、購買者に係る携帯端末に電子レシートを出力させるための電子レシートアクセス画面である。
図12】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、電子レシートおよび還付アカウントの登録申請を実行する画面である。
図13】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、電子レシートおよび還付処理の実行をリクエストするボタンをタップする様子を示す。
図14】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、携帯端末の位置データが日本国内であることを検知された場合の画面である。
図15】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、還付処理が実行されたことを示す画面である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ここで使用する図面は、図3から図15である。必要に応じて、図1~2を参照する。また、図中、無線通信については二点破線の矢印にて、有線通信については実線矢印にて示す。
【0046】
図3
図3は、本発明における実施形態にて、免税品を購入した際のデータ処理について概念的に示している。
【0047】
免税店(A)には、免税店での商品を購入しようとする購買者(B1)との対応をするために、店員が用いる専用端末(Ad1)が配備されている。たとえば、この免税品処理システムの運用者が提供する専用のアプリケーションプログラムを予めダウンロードすることで、専用端末(Ad1)となる。
すなわち、専用端末(Ad1)は、データの送受信機能、カメラ機能、データ記憶機能、演算機能、出力機能(前述したデータ送受信機能における送信機能の他、画面出力機能やスピーカなどによる音声出力機能など)を備えており、「免税手続き処理装置」となる。
【0048】
免税店の購買者(B1)は、パスポートおよびパスポートに貼付された上陸許可シールを用いて、免税された商品を購買できる資格者であることを主張する(1)。専用端末(Ad1)では、パスポート番号を取得できるベージ、および上陸許可シールをカメラ機能で入力する。
【0049】
免税店(A)でのチェック機能または後述するチェックサーバ(D)によって免税での品物購買の資格チェックがなされた後、購買者(B1)は免税店(A)における商品を購入する。そして、紙レシートを入手する。専用端末(Ad1)は、その紙レシートを読み取る(2)。
【0050】
専用端末(Ad1)は、自らの位置データを取得する(3)。そして、購買者(B1)が資格者である旨と、前記の位置データと、その位置データを取得した時刻データとを「電文データ」としてチェックサーバ(D)へ送信する(4)。また紙レシートを読み取って得た免税品購入情報も送信する(5)。
【0051】
なお、図3に示す購買者(B1)が図9に示す消費税の還付処理を実行するには、図8に示すように、紙レシートではなく、電子レシートアクセス画面(図11)を印刷したプリントが必要となる。したがって、消費税を前払いして出国後に消費税を還付してもらうためには、紙レシートともに、電子レシートアクセス画面のプリントも受け取って保管しておく必要がある。
【0052】
図4
図4もまた、本発明における実施形態にて、免税品を購入した際のデータ処理について概念的に示している。
図3との相違点は、免税店の購買者(B2)が免税資格である旨を免税店に提示するのが、購買者端末(Bd2)に予め保存されている「Visit Japan Web」の二次元バーコートとなっている点、および購買者端末(Bd2)にて電子レシートをこの場で受け取る点である。すなわち、専用端末(Ad1)が読み取るのが、「Visit Japan Web」の二次元バーコートとなる。換言すれば、図3に示す購買者(B1)は携帯端末(Bd1)を保持しているものの、その携帯端末(Bd1)には「Visit Japan Web」がインストールされていない、あるいはインストールされているものの免税品の購買においては活用していない事例とする。
【0053】
電子レシートは、免税顧客が購入した商品に係る情報および免税顧客を特定する情報を含む電子データである。購買者端末(Bd2)にて電子レシートを受け取るには、専用端末(Ad1)が出力する電子レシートアクセス画面(図11参照)の二次元バーコードを購買者端末(Bd2)にて読み取る必要がある(図8参照)。
図3および図4で、専用端末(Ad1)が位置データを取得し、その位置データをチェックサーバ(D)へ送信しているのは、図5等を用いて説明する不審データの出力のためである。
【0054】
なお、専用端末(Ad1)は、免税店(A)に電子的に紐付けられて管理されているが、バッテリで駆動する携帯型であることが多い。そのため、免税店の店員が店舗外へ持ち出すことも可能である。悪意のある店員が店舗外へ持ち出した場合、位置データと免税店の位置データとが不一致となる。その場合に電文データがチェックサーバ(D)へ送られたとすれば、免税店の店員が不審な行動をしたか、専用端末(Ad1)が不正に持ち出されたか、といった事実をチェックサーバ(D)にて推定できることとなる。
【0055】
図5
図5では、本発明における実施形態に係るチェックサーバを中心として、どのようなデータ処理が実行されるかをブロック図にて示している。図5以降に示す情報処理においては、購買者を特定するデータに紐付けられた電子レシートなど電子データの送受信が必須となる。
【0056】
図3および図4では、専用端末(Ad1)からチェックサーバ(D)へ必要なデータが送信される(3,5)として説明したが、国税庁サーバや第三者サーバ(G)へも同じデータ(3,5)が送信されることが望ましい。
【0057】
図示は省略しているが、免税店(A)においては、多数の来店者に対して複数の店員がそれぞれ前述の専用端末(Ad1)と同機能の専用端末を保持し、操作する、ということがある。図中では専用端末は一台で説明しているが、専用端末は複数存在してもよい。
【0058】
チェックサーバ(D)は、専用端末(Ad1)から送信されるデータを電文データ受信手段が受信する(3,5)。
チェックサーバ(D)には、不審なデータを抽出するためのデータを蓄積する不審チェック用データベースが格納されている(あるいは、不審チェック用データベースが格納された外部の別のサーバと通信することで、あたかも内部に備えられているようにすることで代用しても良い)。
【0059】
不審チェック用データベースとは、たとえば、免税に関して不正に使われたことのあるパスポート番号などを格納したブラックリストのデータベースや、免税店の位置データを格納した免税店位置データベースなどがある。
【0060】
受信した電文データと不審チェック用データベースにおける各種のデータを用いて不審データ抽出手段が不審データを抽出する。不審データの抽出例については、図6を用いて後述する。
【0061】
不審データを抽出したら、抽出した不審データを国税庁サーバおよび予め登録している購買者の端末(Bd1)へ送信する。この点は、図7を用いて後述する。また、前記の電文データを送信した専用端末(Ad1)が所属する店舗、すなわち免税店(A)に係る端末へも送信することとしている。
【0062】
第三者サーバ(G)は、電文データを免税店の専用端末(Ad1)から受信して電文データベースに蓄積する。また、不審データをチェックサーバ(D)から受信して、クレーリストに蓄積する。グレーリストとは別に、ブラックリストも蓄積している。グレーリストやブラックリストの詳細については、本願発明と直接の関係が薄いので、説明は省略する。
【0063】
図6
図6は、不審データを抽出する手順の一例を示している。
まず、購買者(B1またはB2)の免税資格を確認済みである旨などを含む電文データを受信する(S1)。この電文データは、旅行者が買い物をしようとした段階で(買い物が済む前の免税品購買資格のチェック段階で)日本全国各地の免税店における多数の専用端末から次々と送られてくる。
【0064】
受信した電文データに含まれる購買者IDに同一のものが見つかることがある。その複数の電文データに含まれる位置データおよび時刻データを比較し、所定時間内に複数回の電文データを受信したか否かを検証する(S2)。
【0065】
それぞれの位置データ間の距離を測定し、その距離が所定時間内に移動可能か否かを判断する(S3)。たとえば、一人の旅行者が同じ免税店でフロア毎に買い物をして精算していたとすれば、同じ購買者IDの電文データが短時間に複数回、チェックサーバ(D)に届くこととなる。しかし、それら電文データに含まれる時刻データが前後するものの、位置データはほぼ同一である。これならば、不審データではない、ということが推定できることとなる(S4)。
【0066】
また、一人の旅行者が複数の免税店で買い物をして精算した場合にも、同じ購買者IDの電文データが複数回、チェックサーバ(D)に届くこととなる。そして、それら電文データに含まれる時刻データが前後し、位置データも異なる。しかし、2つの位置データから算出される距離は、物理的に移動して掛かる時間として合理的である、と判断できれば、不審データではない、ということが推定できることとなる(S4)。不審データではない場合には、免税品の購買資格を認め、免税品の購買データの受信を待つこととなる(S5)。
【0067】
ある旅行者が免税品を購入できる旨を証明するデータ(代表的には、Visit Japan Webの電子データ)を不正に取得した者(不正取得者)がいたとする。前記のデータは複製や送信が容易なので、この不正取得者は、複数存在することが多い。また、Visit Japan Webの電子データが毎日更新されるので、正規の旅行者になりすますことができるデータ(なりすましデータ)を不正取得した当日、多発的に使用する場合が多い。
【0068】
なりすましデータの取得者が免税店で買い物をした場合であっても、その買い物に関する電文データがチェックサーバ(D)に届く(S1)。すなわち、免税店における免税品購入資格の有無のチェックをなりすましデータにてすり抜けた後、多発的に複数の免税店で買い物をしようとした場合、チェックサーバ(D)は同じ購入者IDによる電文データを受信することとなる。その電文データにおけるそれぞれの位置データ間の距離を測定し、その距離が所定時間内に移動可能か否かを判断する(S3)。物理的に移動不可能な距離であるならば、不審データとして通知対象とする(S6)。二番目の電文データに係る免税品の購買希望者を拒絶することにつながる。これによって、IDの不正取得者による免税額での購買を抑制する効果が期待できる。
【0069】
図7
図7では、図5に示した不審データの通知(6)と、それ以後に関する情報処理をブロック図にて示している。
【0070】
不審データが抽出された場合における通知サービスを、旅行者(B2)は予め登録している。そして、その通知サービスを受信する端末として、購買者端末(Bd2)のメールアドレスやSNSアカウント、通知に用いる言語(英語、中国語、韓国語など)などを登録してある。
【0071】
登録したデータは、チェックサーバ(D)における登録顧客データベースに蓄積されている。そして、不審データ抽出手段が不審データを抽出した場合において、その不審データに含まれるIDが登録顧客と一致する場合には、登録顧客データベースに蓄積されたデータを用いて、不審データ送信手段が不審データを送信する(6)。
【0072】
不審データ送信手段が購買者端末(Bd2)へ送信する内容は、「不審な購買データを検知しました。以下の購買データがあなたによるものではないならば、免税IDの利用停止を連絡してください。」といった趣旨の連絡であり、登録者が登録した言語による出力となる。
【0073】
上記の連絡には、図示を省略するが「免税IDの利用停止ボタン」も送信されており、そのボタンを購買者端末(Bd2)にて正規のID取得者(B2)がタップすると、不正確定データがチェックサーバ(D)へ送信される(7)。
【0074】
購買者端末(Bd2)から送信された不正確定データは、チェックサーバ(D)の不正確定データ受信手段が受信し、ブラックリストへの登録をする。そして、そのブラックリストについては、国税庁サーバにも送信する。
【0075】
不正なIDによる免税品購買を抑制したい免税店は、不正なIDによる免税資格の確認が購買者端末(Bd3)からなされた時点で、免税品の購買を拒絶できるような通知サービスに予め登録しておく。その登録内容は、登録免税店データベースとして、チェックサーバ(D)に格納されている。
【0076】
不正確定データを受信したら、登録済みの免税店に対して、不正に使われたIDによる免税資格の確認があっても免税での購買資格を与えないように勧告する停止勧告データを送信する(8)。登録済みの免税店(A,B,・・・)は、その停止勧告データを受信した場合、不正なIDをインストールした購買者端末(Bd3)からの免税資格の確認が申請されても、取引を拒絶する(9)。これによって、免税品を購買できる正規のIDを不正に取得した不正顧客(B3)が免税価格で商品を購入することを未然に防止することが可能となる。
【0077】
図8
図8は、免税店(A)の専用端末(Ad1)に表示された電子レシートアクセス画面を、免税品の購買者(B1)に係る携帯端末(Bd1)にて読み取り、電子レシートを受け取る手順を示している。消費税還付を受けるには、電子レシートが必要だからである。
専用端末(Ad1)に表示された電子レシートアクセス画面は図11に、携帯端末(Bd1)にて受け取った電子レシートは図12に、それぞれの拡大図を示している。
【0078】
なお、消費税還付を受けるには、日本国外へ出た後でなければならないため、図8に示した専用端末(Ad1)に出力された電子レシートアクセス画面を読み取るのではなく、プリントされた電子レシートアクセス画面を使うこととなる。換言すれば、電子レシートアクセス画面をプリントしたシートは、消費税の還付を受ける際まで、免税品の購買者(B1)が保管しておく必要がある。
【0079】
図9
図9は、免税品の購入者(B1,B2)が出国後に消費税の還付処理について、還付処理サーバ(E)を中心として説明したブロック図である。こちらで示すのは、免税品であっても免税額で商品を購入させるのではなく、消費税を含んだ金額にて免税店で商品を購入して貰い、消費税を還付して貰う手続きを購買者(日本を出国した旅行者)にしてもらう仕組みである。
【0080】
免税品を購入した購買者(B2)は、還付処理アプリケーションをダウンロード、または還付処理をナビゲートするウェブページにアクセスして、以下の処理を実行することとする。図中では、「還付処理アプリ」として、購買者端末(Bd2)の各手段を図示している。
【0081】
還付処理アプリは、まず、購買者端末(Bd2)に保存されている電子レシートを画面上に出力させる。その電子レシートには、購買者(B2)が購入した免税品の購買データに加え、顧客IDも含まれている。
【0082】
還付処理サーバ(E)では、送信されてきた電子レシートおよび顧客IDを還付金データ要求受信手段にて受信する。そして、電子レシートに関わるデータは還付金データベースにて照合し、還付すべき金額が幾らとなるのかを算出し、還付金データ送信手段にて購買者端末(Bd2)および税関端末(F)へ送信する。
【0083】
購買者端末(Bd2)では、還付金データ受信手段が還付処理サーバ(E)から送信された還付金データを受信する。そのデータを画面に出力させれば、幾らの還付が受けられるかを、購買者(B2)は確認することができる。
【0084】
購買者(B2)が還付金の還付を受けたい旨の意思表示として、還付処理要求送信手段(図13に示す「還付処理実行」のボタン)を用いて還付処理要求データを送信する。すると、購買者端末(Bd2)は、その時点での位置データを還付処理サーバ(E)へ送信する。この位置データ送信は、購買者(B2)の行動は不要であり、還付処理アプリケーションが自動的に実行する。
【0085】
購買者端末(Bd2)が送信してきた位置データを受信した還付処理サーバ(E)は、その位置データが日本国外であるかどうか(空港であれば、出国ゲートを通過しているか否か)、を確認する。そして、日本国外であると判断できた場合には、還付処理実行手段が、還付金を購買者(B2)の指定した口座へ送金する。そして、購買者端末(Bd2)に対しては、還付処理が実行された旨を送信する。
【0086】
なお、前述した「購買者(B2)の指定した口座」とは、購買者(B2)が事前に登録しておく必要があり、その登録は還付処理アプリケーションまたは還付処理をナビゲートするウェブページにて、予め実行してあることとする。それらについての詳細は、省略する。
【0087】
図10
図10は、図9で示した情報処理を、還付処理サーバ(E)による動きとして説明したフローチャートである。
【0088】
還付処理サーバ(E)は、購買者端末(Bd2)に出力された電子レシートの二次元バーコードから読み取ったデータに基づき、還付金が幾らであるかという還付金データ要求を受信する(S11)。
【0089】
受信したデータに基づいて、還付金額が幾らであるかを情報検索するとともに、還付アカウントが登録済みであるかを確認する(S12)。そして、還付アカウントが登録済みか否か、還付する現金を受け取る銀行口座が有効であるか、などについて検証する(S13)。
【0090】
還付アカウントが登録されていなかったり、情報が不十分であったりする場合には、アカウント登録画面を購買者端末(Bd2)へ送信する(S14)。そして、アカウントの登録が実行されない場合には終了する。
還付アカウントが登録されれば、還付金額を購買者端末(Bd2)へ送信する(S16)。そして、還付実行要求を購買者端末(Bd2)から受信する(S17)。
【0091】
購買者端末(Bd2)からの還付実行要求には、購買者端末(Bd2)の現在位置データを伴っている。その位置データが国外であるか否かを検証する(S18)。その位置データが国外であると判断できた場合には、還付金の送金手続を実行する(S19)。一方、日本国内に留まっている場合には、還付金の還付は実行されず、終了する。
なお、S19においては、本人確認を実行した上で還付金の送金手続を実行することが標準である。たとえば、電子レシートアクセス画面をプリントしたシートを、購買者(B1)ではない者が取得した場合(より具体的には、購買者(B1)が紛失したシートを拾得した者が還付手続を実行する場合)を排除するためである。
【0092】
図11
図11は、免税店の購買者(B2)に係る購買者端末(Bd2)の画面推移を示す図であって、電子レシートを出力させた画面である。
画面の下には、二次元バーコードが表示されている。この二次元バーコードで示されたURLにアクセスすると、還付金データベースにアクセスすることができる。
【0093】
二次元バーコードには、顧客IDが含まれており、その顧客IDに紐付いた還付アカウントが、登録済みであるか否かを確認する。アカウントが未登録であれば、図12の画面に推移する。アカウントが登録済みであれば、図13の画面へ推移する。
【0094】
電子レシート情報内には、パスポート情報が含まれている。一方、免税品購買用の「Visit Japan Web」にもパスポート情報が含まれている。両者が一致するか否かを検証し、一致していれば購買履歴を画面表示させることができる。一致していない場合には、アラートが表示される。
【0095】
図12
図12は、還付アカウントの登録申請を実行する画面である。画面全体には、免税品の購入履歴などのデータが出力されている。そして、画面の下部分に、「還付アカウント登録申請」というボタンがあり、このボタンをタップすると、還付アカウントに必要なデータ入力をするための画面が現れる(図示は省略)。必要なデータ入力を終えると、図12の画面が現れる。
【0096】
「還付アカウント登録申請」というボタンの上には、「還付処理実行」というボタンがあるが、「還付アカウント登録申請」が済んでいない場合には、タップすることができない非アクティブ状態となっている。
【0097】
図13
図13は、還付処理の実行をリクエストするボタンをタップする様子を示す。
図12と同じ画面構成であるが、還付アカウント登録が済んでいるので、「還付アカウント登録申請」のボタンは非アクティブ状態となっており、「還付処理実行」のボタンがアクティブとなっている。
【0098】
「還付処理実行」のボタンをタップすると、電子レシート情報内のパスポート情報と、購買者端末(Bd2)内のパスポート情報と一致するか否かが検証される。一致したら、購買者端末(Bd2)が取得した端末位置データを検証することとなる。
【0099】
電子レシート情報内のパスポート情報と、購買者端末(Bd2)内のパスポート情報とが不一致ならば、アラートが表示される。
【0100】
端末位置データが日本国内である場合には、図14の画面となり、端末位置データが日本国外である場合には、図15の画面となる。
【0101】
図14
図14は、端末位置データが日本国内であると判断された場合に出力される画面であり、還付処理が実行できない旨が表示されている。
そして、画面の下には、「リトライ(もう一度)」のボタンと、「画面を閉じる」のボタンが両方ともアクティブ状態となっている。
【0102】
「リトライ(もう一度)」のボタンをタップした場合には、図13に示した画面に戻る。たとえば、「リトライ(もう一度)」のボタンをタップする直前は、出国ゲートを出る前であったが、出国ゲートを出てから「リトライ(もう一度)」のボタンをタップしたとすれば、還付処理が実行されることとなる。
【0103】
「画面を閉じる」のボタンをタップした場合には、一連のアプリケーションソフトウェアが終了する。たとえば旅行者が旅行を継続中であれば、出国ゲートを出る前に「還付処理実行」のボタン操作は無駄である、ということを知ることとなり、「画面を閉じる」のボタンをタップすることとなる。
【0104】
図15
図15は、還付処理が実行されたことを示す画面である。画面には、還付処理の日時、還付金額、還付した銀行口座などが表示される。
なお、還付方法の選択については、図38および図39を用いて後述する。
【0105】
画面の下には、「画面を閉じる」のボタンがアクティブ状態となっている。「画面を閉じる」のボタンをタップすることで、一連のアプリケーションソフトウェアが終了する。
【0106】
図3から図15を用いて、免税顧客による免税店での商品購入、その商品購入に伴う不審データの抽出、不審データの抽出による免税制度の悪用抑制、消費税の前払いと出国後の還付制度の実行などについて説明した。前述した実施形態は、本発明の一形態に過ぎない。
たとえば、各種サーバは、もっと細分化されている場合もあるし、複数のサーバとして示した実施形態を現実には統合したサーバにて実現することも可能である。
【0107】
前述してきた実施形態においては、税還付が実行可能となる時点について、外国人旅行者に係る携帯端末の位置情報の取得によって、出国したか否かを判断することとして説明した。出国したか否かについては、税関が発行する税関審査完了の旨を電子データにて取得する、という手法を採用することも、当然可能である。
【0108】
税関審査の完了の有無を税還付の実行是非とすることとすれば、外国人旅行者の位置データを補足できない場合であっても、税還付の可否を判定することができる。
【0109】
(技術分野)
以下で説明する発明は、免税店にて購入した免税品を包装した場合に開封した旨を検知可能な包装用シートや、その包装用シートを用いた消費税還付の手続き円滑化に寄与する情報処理の技術に関する。
【0110】
(背景技術)
図2(a)を用いて示したように、外国人旅行者が免税品を購買後、国外に持ち出さずに転売する、という事態が頻発している。この事態は消費税の脱税行為であり、防止策が望まれる。そのための防止策として、以下のような方策が有効と考えられる。
【0111】
すなわち、このような脱税行為を未然に防止するためには、輸出物品販売場において購入した外国人旅行者に対して、出国時の税関審査を通過するまで未開封にしておくことを免税の条件とすること(以下、「免税品未開封条件」とする)が考えられる。
そのような技術を、先行する特許出願にて検索したところ、以下の2件を抽出した。
【0112】
特許文献3には、不正開封を抑止でき、仮に不正開封された場合にはその痕跡を容易に確認できる包装箱が開示されている。
【0113】
特許文献4には、商品を購入する前の情報コードの不正読み取りが防止可能であり、商品を購入した後に手間を掛けることなく簡便に情報コードを読取り可能な包装ラベルが開示されている。
【0114】
(先行技術文献)
(特許文献)
特許文献3 特許7320117号公報
特許文献4 特開2022-92415号公報
【0115】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする課題)
前述の免税品未開封条件を審査できる技術であれば、特許文献1や特許文献2を基礎として実現できる可能性はある。
【0116】
しかし、新たに考え出されるかもしれない不正行為(たとえば、外観上が類似した梱包資材を入手し別の偽商品とすり替えたり、梱包時の封印とは別の箇所から包装を開封し中身を別の偽商品にすり替えたりする行為)などが想定される。それらを含めた不正行為を防止するためには、免税品未開封条件を審査することができ、更には購入者情報や購入店情報などのトレーサビリティに関わるデータを免税品に紐付けることができる梱包や包装が望ましい。
【0117】
以下に説明する発明が解決しようとする課題は、購入者情報や購入店情報などのトレーサビリティに関わるデータを免税品に紐付けて付加することが可能な包装技術を提供することにある。
【0118】
(課題を解決するための手段)
前述した課題を解決するための発明は、免税品未開封条件を充足した上で、更に購入者情報や購入店情報などのトレーサビリティに関わるデータを免税品に紐付けることが可能な包装用シート(第六の発明)、およびその包装用シートを用いて免税販売制度を円滑に運用する情報技術(第七の発明、第八の発明)に係る。
【0119】
(第六の発明)
第六の発明は、複層構造をなす包装用シートに係る。
すなわち、第一の閉塞回路(A)を全面に張り巡らせた第一シート(α)と、
第二の閉塞回路(B)を全面に張り巡らせた第二シート(β)と、
前記の第一の閉塞回路(A)および前記の第二の閉塞回路(B)が断線した旨を検知可能なRFIDチップと、
を備える(図16図17参照)。
前記の第一の閉塞回路(A)および前記の第二の閉塞回路(B)は絶縁した状態、且つ第一の閉塞回路(A)および第二の閉塞回路(B)を平面視した場合に交差した状態となるように前記の第一シート(α)と前記の第二シート(β)とを貼り合わせて形成する(図18参照)。
前記のRFIDチップには、免税品の特定、価格、免税品の購入者および購入日時を含むデータを読み書き可能とした包装用シートである。
【0120】
(作用)
第六の発明に係る包装用シートを用いて、購入された免税品を密封する。そして、密封された免税品の特定、価格、免税品の購入者および購入日時を含むデータをRFIDチップへ書き込む。
包装用シートを用いて密封された免税品が出国時の税関に持ち込まれた場合には、RFIDチップから免税品の特定、価格、免税品の購入者および購入日時を含むデータを読み出す。そして、読み出したデータに含まれる購入者データと、その免税品を持ち込んだ人物のパスポートとを照合する。照合結果が一致した場合には、免税品の価格に応じた消費税の還付手続を実行する。
【0121】
密封されたはずの包装用シートが開けられたり、一部を切断するなどして免税品が入れ換えられたりするなどの不正行為があった場合には、第一の閉塞回路(A)または第二の閉塞回路(B)のいずれか一方または双方が断線する。そしてその断線した旨はRFIDチップに記録される。税関においてRFIDチップのデータを読み出した場合には、断線した旨のデータが読み出されるので、前記の不正行為があった旨を把握でき、消費税の免税対象にはならない旨を、その免税品を持ち込んだ人物に伝える。
【0122】
(第六の発明のバリエーション1)
第六の発明に係る包装用シートは、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、第一の閉塞回路(A)および前記の第二の閉塞回路(B)の外周に糊代を備えることとするのである(図19参照)
【0123】
(作用)
糊代を備えることによって、免税品の密封作業が容易となる。
【0124】
(第六の発明のバリエーション2)
第六の発明に係る包装用シートは、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、直方体の箱を形成可能であるように六枚の包装用シートを連結させることとするのである(図21参照)。
【0125】
(作用)
直方体の箱を形成可能であるように六枚の包装用シートを連結しているので、免税品を収納して密閉させる際の収納箱を形成できる。
【0126】
(第六の発明のバリエーション3)
第六の発明のバリエーション2は、前記の包装用シートの少なくとも一面、好ましくは両面に段ボール紙を貼付するのである。
【0127】
(作用)
箱を形成するためには、包装用シートが単独では可撓性のある素材である場合、箱体として充分に帰欧するように、段ボール紙によって補強する。一面にのみ段ボール紙を貼付した場合、箱を形成した際に段ボール紙は外側に位置させることが望ましい。閉塞回路(A,B)の破損を防ぐためである。
【0128】
(第六の発明のバリエーション4)
第六の発明に係る包装用シートは、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、直方体の箱を形成可能であるように六枚の包装用シートを連結させるとともに、
前記の第一の閉塞回路(A)および前記の第二の閉塞回路(B)は、六枚の包装用シートにおいて一の閉塞回路として形成することとし、
前記のRFIDチップは、六枚の包装用シート全体として一つとするのである(図22参照)
【0129】
(作用)
RFIDチップは、六枚の包装用シート全体として一つであるので、断線したか否かは、一つのRFIDチップを検証すれば良い。
【0130】
(第七の発明)
第七の発明は、外国人が免税品を購入した輸出物品販売場に設置された販売場端末から消費税還付の手続きに必要なデータを受信するとともに、当該外国人が出国する際に消費税還付をする税関に設置するデータ処理装置(税関端末)に係る(図24参照)。
前記の販売場端末は、外国人が購入した免税品を特定するための購入品データおよび/または当該外国人を特定するための購入者データによる免税手続きデータを入力して前記のデータ処理装置へ送信するとともに、当該免税品を密封した包装用シート(第六の発明)に備えられたRFIDチップへ前記の購入品データおよび/または前記の購入者データを書き込むものである。
前記のデータ処理装置は、前記の販売場端末から送信された免税手続きデータを受信する免税手続きデータ受信手段と、
前記の税関にやってきた外国人旅行者が持参した免税品を密封した包装用シートに備えられたRFIDチップからデータを読み取るRFIDデータ受信手段と、
前記のRFIDデータ受信手段から読み取ったデータに基づいて前記の免税品が未開封である旨を確認するとともに、前記の免税手続きデータ受信手段が受信した免税手続きデータおよび前記のRFIDデータ受信手段から読み取ったデータの一致を確認する免税手続きデータ検証手段と、
を備える。
【0131】
(作用)
輸出物品販売場にて免税品を購入した後に、当該免税品を密封した包装用シートを破るなどして免税品を取り出した場合には、包装用シートを開封した旨のデータがRFIDチップに書き込まれる。そして、RFIDデータ受信手段がその旨を読み取ることができる。
免税品を取り出したということは、免税品を入れ替えるなどの不正行為をした疑いが濃いため、税関において税金還付を拒否することができる。
【0132】
(第七の発明のバリエーション1)
第七の発明は、消費税還付を受けようとして税関にやってきた外国人旅行者のパスポートからパスポートデータを受信するパスポートデータ受信手段を備えることとしてもよい図24参照)。
【0133】
(作用)
RFIDチップに購入者データが書き込まれている場合には、パスポートデータ受信手段が受信したパスポートデータとの照合を実行することで、実際の購入者と税関にやってきた外国人との一致不一致を検証することができることとなる。不一致であれば、何らかの不正行為が介在する可能性があるので、税関において税金還付を拒否することができる。
【0134】
(第八の発明)
第八の発明は、外国人が免税品を購入した輸出物品販売場に設置された販売場端末から消費税還付の手続きに必要なデータを受信するとともに、当該外国人が出国する際に消費税還付をする税関に設置するデータ処理装置(税関端末)を制御するコンピュータプログラムに係る(図24参照)。
前記の販売場端末は、外国人が購入した免税品を特定するための購入品データおよび/または当該外国人を特定するための購入者データによる免税手続きデータを入力して前記のデータ処理装置へ送信するとともに、当該免税品を密封した包装用シート(第六の発明)に備えられたRFIDチップへ前記の購入品データおよび/または前記の購入者データを書き込むものである。
前記のデータ処理装置を制御するコンピュータプログラムは、
前記の販売場端末から送信された免税手続きデータを受信する免税手続きデータ受信手順と、
前記の税関にやってきた外国人旅行者が持参した免税品を密封した包装用シートに備えられたRFIDチップからデータを読み取るRFIDデータ受信手順と、
前記のRFIDデータ受信手段から読み取ったデータに基づいて前記の免税品が未開封である旨を確認する未開封確認手順と、
前記の免税手続きデータ受信手順にて受信した免税手続きデータおよび前記のRFIDデータ受信手順から読み取ったデータの一致を確認する免税手続きデータ検証手順と、
を前記のデータ処理装置に実行させるコンピュータプログラムである。
【0135】
(第八の発明のバリエーション1)
第八の発明は、消費税還付を受けようとして税関にやってきた外国人旅行者のパスポートからパスポートデータを受信するパスポートデータ受信手順をも前記のデータ処理装置に実行させることとしてもよい図24参照)。
【0136】
(コンピュータプログラムの提供形態)
第八の発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-R、CD-RW、MO(光磁気ディスク)、DVD-R、DVD-RW、フラッシュメモリなどである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
【0137】
第八の発明に係るコンピュータプログラムは、たとえば税関端末に備えられた演算装置としてのCPU、無線通信またはシリアル通信などによってデータを入力するデータ入力装置、演算の対象となるデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリ、データ蓄積のための不揮発性メモリ(たとえば、ハードディスクドライブ)などを用いて実行される。
【0138】
(発明の効果)
第六の発明によれば、免税品未開封条件を充足した上で、更に購入者情報や購入店情報などのトレーサビリティに関わるデータを免税品に紐付けることが可能な包装用シートを提供することができた。
第七の発明によれば、第六の発明に係る包装用シートを活用することによって税関における消費税還付の手続きを円滑にするとともに、消費税還付における不正行為を防止することに寄与するデータ処理装置(税関端末)を提供することができた。
第八の発明によれば、第六の発明に係る包装用シートを活用することによって税関における消費税還付の手続きを円滑にするとともに、消費税還付における不正行為を防止することに寄与するデータ処理装置(税関端末)を制御する制御プログラムを提供することができた。
【0139】
(図面の簡単な説明)
図16) 第六の発明に係る包装用シートを構成するシートの構造を示す平面図である。
図17) 第六の発明に係る包装用シートを構成するシートの組み立て前後の構造を示す図である。
図18) 第六の発明に係る包装用シートに用いるRFIDチップと、導電線A,Bとの関係を示す斜視図である。
図19) 第六の発明に係る包装用シートを袋状に加工する場合の構造を示す図である。
図20) 第六の発明に係る包装用シートを袋状または箱状に加工する場合の構造を示す図である。
図21) 第六の発明に係る包装用シートを6枚用いて箱を形成する場合を示す展開図である。
図22) 第六の発明に係る包装用シート1枚で箱を形成する場合を示す展開図である。
図23) 免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(A)を示す概念図である。
図24) 免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(A)を示すブロック図である。
図25) 免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(B)を示す概念図である。
図26) 免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(B)を示すブロック図である。
図27) 免税データ記録および梱包品の荷姿データによって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(C)を示す概念図である。
図28) 免税データ記録および梱包品の荷姿データによって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(C)を示すブロック図である。
図29) 第九の発明に係る梱包シールの構造(製造手順)の第一例を示す図である。
図30) 第九の発明に係る梱包シールに用いる粘着層のパターン例を示す斜視図である。
図31) 第九の発明に係る梱包シールに用いる粘着層のバターン例を示す平面図である。
図32) 第九の発明に係る梱包シールの使用前後を示す断面図である。
図33) 第九の発明に係る梱包シールが剥がされた場合に閉塞回路Cが断線する様子を示す断面図である。
図34) 第九の発明に係る梱包シールに用いる粘着層のパターン例を示す図である。
図35) 第九の発明に係る梱包シールの構造(製造手順)の第二例を示す図である。
図36) 第九の発明に係る梱包シールの構造(製造手順)の第三例を示す図である。
図37) 第九の発明に係る梱包シールに用いる閉塞回路のバリエーションを示す平面図である。
図38) 外国人旅行者に係る情報端末において、出国後に税金の還付を受ける方法を選択する画面の一例を示す。
図39) 外国人旅行者に係る情報端末において、出国後に税金の還付を受ける具体的な画面を例示したものである。
【0140】
(発明を実施するための形態)
以下、第六から第八の発明について、図16から図28を用いて説明する。図29から図37は、第九の発明を説明するものであるので、第六から第八の発明についての説明後に説明する。図38および図39は、出国後の税金還付の手続を実行するための手順を示す。
【0141】
図16
図16は、第六の発明に係る包装用シートを構成するシートαおよびシートβの構造を示す平面図である。
【0142】
図16(a)に示すシートαは、導電線による閉塞回路Aが埋設された紙素材のシートである。紙素材は絶縁体である。
閉塞回路Aは、シートαの長手方向に平行な長手線と、その長手線の端部にてクランク状に折り返す短辺線とを繰り返し、重ならずに全面に張り巡らされている。
【0143】
図16(b)に示すシートβもまた、導電線による閉塞回路Bが埋設された絶縁体である紙素材のシートである。
閉塞回路Bは、シートβの短辺方向に平行な短辺線と、その短辺線の端部にてクランク状に折り返す横線とを繰り返し、重ならずに全面に張り巡らされている。
【0144】
図17
図17(a)は、図16に示したシートαおよびシートβを挟んでRFIDチップを位置させ、貼り合わせる前の状態を示している。
【0145】
図17(b)は、シートαに埋設された閉塞回路Aと、シートβに埋設された閉塞回路Bとが平面視した場合に格子状をなすよう配置されている状態を示している。
【0146】
図18
図18は、閉塞回路Aをなす導電線Aと、閉塞回路Bをなす導電線Bとが互いに接することなく、双方ともRFIDチップに組み込まれている。RFIDチップは、閉塞回路A,Bのいずれか一方、または双方が断線した場合には、その旨を記録する。
【0147】
導電線A,Bによって形成される格子の縦方向間隔をLとし、横方向間隔をMとする。このL,Mは同一寸法であるとして図示しているが、発明の必須構成ではない。L,Mは、包装される免税品における縦横高さのいずれかの最小寸法よりも小さくなければならない。
【0148】
図19
図19は、シートαおよびシートβを貼り合わせて形成した包装用シートの外周に糊代(のりしろ)部を設けた状態を図示したものである。
糊代部は、破断させにくい強度があり、破断させた場合には破断箇所が容易に目視できる素材であることが望ましい。
【0149】
袋や箱へ加工された後の糊代部の最外殻から導電回路の最外殻までは、免税品のおける縦横高さの最小寸法よりも、K、Mとも小さくなければならない。
【0150】
二つ折りにして、底面の糊代を合わせ、左右の糊代を合わせることで上辺が開放された状態の袋体となる。この状態を想定した包装用シートの場合、RFIDチップの位置は、左右方向においてどちらかにずらして配置することが望ましい。折り目にRFIDチップが位置しないようにするためである。
【0151】
開放された上辺からは、外国人旅行者が購入した免税品を投入し、その後に上辺の糊代も閉じることで密閉状態となる。
【0152】
外国人旅行者は、この密閉状態を維持したまま税関に持ち込む必要がある。糊代部を破損、破断させて開封したり、他の部位を破断させたりした場合には、免税品を取り出した可能性があることの証拠となる。閉塞回路A,Bを断線させると、RFIDチップにその記録が残るからである。
【0153】
図20
図20は、シートαおよびシートβを貼り合わせて形成した包装用シートの外周に糊代(のりしろ)部を設けた状態から、袋への加工および箱への加工をする様子を、概念的に示している。
【0154】
袋へ加工した場合、たとえば免税品Pとして腕時計が購入されたとすると、RFIDチップには、購入者から提示されたパスポートに基づいた購入者データ、購入品や購入日時や販売店を特定するために輸入物品販売場のレジスタからの購入品データを入力する。
【0155】
シートαおよびシートβを貼り合わせて形成した包装用シートを箱体へ加工する場合、包装用シートの両面に段ボール紙を貼り合わせる。袋体では入らないような大きさの免税品Q(この図では、顕微鏡を例示している)を入れるので、強度を上げるためである。なお、段ボール紙を片面のみに貼り合わせる場合もあるが、その場合には、段ボール紙が外側に位置するように箱体を形成する。
【0156】
図21
図21は、図17(b)に示した包装用シートを6枚用いて箱を形成(段ボール紙を貼り合わせた構造についての説明は省略)する場合を示す展開図である。図19に示した包装用シートの糊代部分の一部を使って6枚を展開してもよい。
【0157】
図21の場合、一つの箱にRFIDチップが6つ存在することとなる。そのため、購入者データおよび購入品データを、6つの中のいずれかに書き込む。その上で、税関においては、断線したか否か(開封されたか否か)のデータは、6つのRFIDチップ全てから取得する必要がある。
【0158】
図22
図22は、図17(b)に示した構造の包装用シートを1枚の「t字形」に作成(段ボール紙を貼り合わせた構造についての説明は省略)し、それで箱を形成する場合を示す展開図である。
【0159】
図22の場合、一つの箱にRFIDチップが1つだけ存在することとなる。そのため、購入者データおよび購入品データを、その1つに書き込む。税関においては、断線したか否か(開封されたか否か)のデータは、1つのRFIDチップから取得すればよい。
【0160】
図23
図23は、免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(A)を概念的に示している。
【0161】
輸出物品販売場において、販売場の店員が外国人旅行者のパスポートを確認し、外国人旅行者が免税品を購入したとする(1)。購入時において、外国人旅行者は、消費税込みの価格を支払う。
【0162】
販売場の店員は、レジスタの入力機能を使い、パスポートを用いて購入者データを入力し、免税品に付属しているバーコードなどから免税品データ、購入日時および購入場所を入力する(2)。
【0163】
購入者に対して、購入した免税品の梱包を出国後まで開封しないように注意を促した上で、免税品を梱包する(3)。この梱包には、図16~22に示した梱包材料や手順を用いて実行する。
【0164】
梱包が済んだら、その梱包に用いられたRFIDチップに対して、前述した購入者データ、免税品データ、購入日時および購入場所を書き込む(4)。
【0165】
免税品を購入した外国人旅行者が出国する際、税関にて税関職員にパスポートと密封された免税品とを提示する(5)。また、どのような免税品を購入したのか、というデータを購入時のレシート(電子レシートを含む)を提示する(6)。
【0166】
税関職員は、提示されたパスポートから購入者データを取得し、購入時のレシートを取得する(6)。一方、密封された免税品の梱包内に埋め込まれたRFIDチップから購入者データ、購入品データ(免税品データ)を読み取る(7)。そして、データの一致を確認する(8)。
【0167】
閉塞回路A,Bのいずれかが断線した旨がRFIDチップに記録されている場合には、免税品がすり替えられている可能性など、不正行為が疑われる。その場合、消費税還付の手続きは行わない。
【0168】
閉塞回路A,Bのいずれかが断線した旨がRFIDチップに記録されていない場合であって、RFIDチップから購入者データ、購入品データ(免税品データ)と、提示されたパスポートやレシートのデータが一致した場合にのみ、消費税還付の手続きを実行する。
【0169】
図24
図24は、免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(A)とハードウェア構成とを示すブロック図である。
【0170】
輸出物品販売場へやってきた外国人旅行者は、パスポートを提示する。販売場の店員は、そのパスポートを用いて購入者データ入力手段から購入者データを入力する。
【0171】
販売場においてデータの入出力を実行するのが、販売場端末であり、POSレジと連動している。免税品の購入時に購入品データの入力をPOSレジに直結したバーコードリーダである購入品データ入力手段にて実行すると、販売場端末へ入力される。
【0172】
購入者データおよび購入品データの入力が終了したら、免税手続データ作成手段が免税手続データを作成し、免税手続データ送信手段に送る。免税手続送信手段は、免税手続データをRFIDチップへ書き込む。また、税関端末へも送信する。
【0173】
税関端末は、免税手続データ受信手段が、販売場端末から送信されてきた免税手続データを受信し、免税手続データベースへ蓄積する。便宜上、「税関端末」として説明しているが、外国人旅行者がどの税関から出国しても対応できるように、免税手続データベースは税関サーバにあり、各税関に設置された税関端末は、税関サーバの免税手続データベースへアクセスして必要なデータを取り出している。
【0174】
外国人旅行者が出国のために税関へやってきた場合、税関職員はパスポートの提示と密封された免税品の提示を求める。そして、パスポートデータ入力手段にて、そのパスポートからパスポートデータを入力する。密封された免税品に対しては、RFIDデータ受信手段によってRFIDチップからRFIDデータを受信する。RFIDデータとは、購入者データ、購入品データ、および未開封か否かのデータである。
【0175】
免税手続検証手段は、パスポートデータおよびRFIDデータと、免税手続きデータベースに蓄積されたデータとを照合する。照合でき、未開封である場合には、税金還付開始手段へ税金を還付して良い旨の出力をする。
【0176】
図25
図25は、図16~22に示した梱包材料や手順を用いずに、免税品の未開封を、より簡易に推測できる手順(B)を説明するための概念図である。
【0177】
購入者データおよび購入品データの入力までは、手順(A)と同じである(a)。それらデータを用いて免税品データを出力する形式を二次元バーコードとし、それを印刷して梱包用テープに貼付するのである(b)。そして、免税品を所定の梱包箱へ入れたら、その梱包用テープにて梱包箱を封印する(c)。その梱包用テープは、一度貼り付けた後に剥がしたら、剥がした痕跡が物理的に目し可能であるように形成してある。
【0178】
手順(B)は、梱包箱の梱包用テープを剥がした痕跡がある場合には開封したと見做し、消費税の還付手続きには移行しない、とする簡易な手段である。RFIDチップを備えた梱包では無いため、梱包箱から巧妙に免税品を抜き取って入れ替えられたら、不正行為を検知できない、という欠点がある。
【0179】
一方、手順(B)と手順(A)とを組み合わせることは可能である。組み合わせた場合、梱包された免税品の抜き取りや差し替えは極めて困難となり、不正行為の検知には手順(A)のみよりも有効となる。
【0180】
図26
図26は、免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(B)とハードウェア構成とを示すブロック図である。
【0181】
図24との相違点は、輸出物品販売場における販売場端末において、図24では「免税手続データ作成(送信)手段」としていた構成要素を、「バーコードデータ作成(印刷)手段」としている点である。
【0182】
図27
図27もまた、図16~22に示した梱包材料や手順を用いずに、免税品の未開封を、より簡易に推測できる手順(C)を説明するための概念図である。図示例では、手順(B)の二次元バーコードを印刷した梱包テープとの組み合わせとして示しているが、手順(C)の本質は、梱包終了後の似姿の撮影データにて未開封を推定する点にある。
【0183】
輸出物品販売場において、免税品データおよび購入者データを入力する(a)、梱包の終了後、輸出物品販売場の店員である梱包者は、手持ちの梱包者端末にて似姿を撮影し、販売場端末へ送信し、免税品データおよび購入者データと組み合わせ、税関サーバへ送信する(b)。
【0184】
外国人旅行者が出国のために訪れた税関では、そこに設置された税関端末(図示を省略)から税関サーバへアクセスし、免税品データ、購入者データ、荷姿データを受信する(c)。そして、外国人旅行者が持参した免税品の梱包を確認する税関職員の端末へ、その外国人旅行者のパスポートに紐付けられた購入者データ、免税品データおよび荷姿データを送信する。そして、その税関職員は、荷姿データを端末に出力させ、目の前にある梱包品との比較を目視する(d)。一致していれば、未開封であると推定し、税金還付の手続き開始を指示することとなる。
【0185】
図28
図28は、免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(C)とハードウェア構成とを示すブロック図である。手順(B)との組み合わせであるので、輸出物品販売場におけるバーコード作成手段、バーコード印刷手段までは、図26と共通である。
【0186】
梱包した販売場の職員が操作する端末における荷姿撮影手段が梱包した免税品の荷姿を撮影し、販売場端末へその荷姿撮影データを送る。そして、その荷姿撮影データは、購入者データおよび購入品データに紐付けて、税関サーバへ送信する。
【0187】
図示の都合上、荷姿撮影手段から税関端末の免税手続データ受信手段が受信しているように記載しているが、税関端末にて取得したデータは図示を省略した税関サーバへ送信している。そして、税関端末が必要となるデータをサーバの免税手続データベースから取得することとしている。
【0188】
税関における税関職員は、出国しようとする外国人旅行者のパスポートからパスポートデータ入力手段にてパスポートデータを取得し、免税品を梱包した梱包テープの二次元バーコードからバーコードデータを受信する。一方、免税手続データベースから、前記のパスポートデータに紐付けられた荷姿撮影データを取得して出力させる。そして、目の前にある梱包された免税品と目視で比較する。一致している場合には、免税手続データ確認手段にその旨を入力し、税還付開始手段へ税還付の手続き開始を出力する。
【0189】
図27および図28において、手順(C)を手順(B)との組み合わせることでの、梱包した免税品の差し替え不正防止をしている旨を説明した。しかし、手順(C)は、手順(A)と組み合わせることも可能であるし、手順(A)および手順(B)と組み合わせることも可能である。手順(C)を単独で用いることも可能である。
【0190】
(第九の発明)
以下、第九の発明について、図29から図37を用いて説明する。第九の発明は、免税品を梱包する袋体や箱体を密閉する際に使用する梱包シールに係る発明である。梱包シールを剥がして免税品を取り出し,梱包シールを元に戻す行為を簡易に発見する目的の発明である。図25に示した「封印用粘着テープ」の代わりに用いると有効である。
【0191】
図29
図29は、梱包シールの構造および構成手順を示す平面図である。梱包シールとして所定の場所に貼られた場合に最外殻へ位置する台紙と、その台紙の長手方向を往復するように張り巡らせる閉塞回路Cと、その閉塞回路Cが断線した場合にその旨を検知するRFIDチップと、前記の閉塞回路Cおよび前記のRFIDチップを覆う接着層と、を備える。梱包シールの長手方向の寸法は、梱包用の袋体または箱体における密閉させる寸法に合わせて決定する。
【0192】
閉塞回路Cは、印刷技術によって台紙へ固定される。
粘着層は、粘着力が弱い層と粘着力が強い層とが長手方向へ交互に現れるようにしている。「粘着力が強い」とは、台紙に印刷した閉塞回路Cを台紙から引き剥がすことができる程度の強さであり、「粘着力が弱い」とは、台紙に印刷した閉塞回路Cを台紙から引き剥がすことができない程度の弱さである。
前記の「長手方向へ交互に」とは、様々なパターンがあるので、図を用いて後述する。
【0193】
図30
図30は、梱包シールにおける粘着層がどのような構造をなすのか、を示すための概念的な斜視図である。
閉塞回路CおよびRFIDチップを含む台紙の一面に、粘着力の弱い層と、その粘着層の台紙とは反対側の面に少なくとも一カ所、粘着力の強い接着剤を塗布することとしている。
【0194】
図30(a)は、長手方向に弱強弱、と配置されるように、長手方向の両端にのみ弱い接着力の粘着層を固定し、中間部分に粘着力の強い粘着層を固定している。粘着層の強い部位と弱い部位のいずれも台紙に直接固定されている。粘着層の厚みがほぼ均一となる。
【0195】
図30(b)もまた、長手方向に弱強弱、と配置されるように、粘着力の強い層を全面へ塗布した後に、両端部分へ粘着力の弱い接着剤を塗布している。粘着層の厚みが均一とならないが、製造工程は効率化される。
なお、後述する図31(b)のように長手方向に強弱強、と配置されるようにする場合には、粘着力の強いい層を全面へ塗布した後に、中央部分へ粘着力の弱い接着剤を塗布する。
【0196】
粘着力の強い接着剤を塗布する場所についての「少なくとも一カ所」とは、梱包シールとして免税品を袋体や箱体へ密封する際に用いた後に、袋体や箱体から中の免税品を取り出すために剥がした場合に閉塞回路Cを断線させること(RFIDチップにて断線した旨が記録されること)が目的である。よって、粘着力の弱い層の連続した面積が免税品を取り出すことができる面積よりも大きくならないように、粘着力の強い箇所を設ける必要がある。換言すれば、粘着力の弱い層の連続した面積が免税品を取り出すことができる面積よりも大きくならなれば、どのように配置しても良く、図30に示す2種類に限られない(図34に例示)。
【0197】
図31
図31は、図30に示した梱包シールの平面図である。
図31(a)は、長手方向に弱強弱、と配置されるように、中央付近へ粘着力の強い接着剤を塗布した場合の平面図である。図31(b)は、長手方向に強弱強、と配置されるように、両端部分へ粘着力の強い接着剤を塗布した場合の平面図である。
【0198】
図31(a)に図示した梱包シールの長手方向の寸法=Lについて説明する。このLは、梱包される対象となる袋体や箱体のサイズによって決まる。換言すれば、梱包される対象となる袋体や箱体のサイズから割り出される閉塞回路Cの長手方向寸法によって定まる。
【0199】
図32
図32は、梱包シールを使用する前および使用時を示す図である。
図32(a)は、梱包シールの長手方向に直角な方向で切った場合の断面図である。使用する前の梱包シールは、図32(a)に示すように、粘着層を保護する剥離紙が貼付されている。
閉塞回路Cは、台紙に印刷されるものなので、サイズとしては誇張して表現している。また、RFIDチップは、閉塞回路Cをまたいで配置されているが、ここでは表していない。粘着層については、強弱の区別なく表現している。
【0200】
図32(a)に示した梱包箱は、4つの側面を連続させるとともに、上面および底面を向かい合う一組の側面から連続させた形状をなしているものとして例示している(上面は二分割している様子を図示しているが、底面が二分割されている様子は省略している)。段ボール箱にて一般的に採用されている。
【0201】
本発明に係る梱包シールは、図21図22に示した箱体に使用することは、当然可能である。段ボール箱にて一般的に採用されている梱包箱にて図示した趣旨は、図21図22に示した箱体に示した箱体を使用せずとも、免税品の取り出しによる不正行為を防止するのに一定の効果があるからである。
【0202】
図32(a)では、剥離紙を剥がした梱包シールにて梱包箱の底面を固定し、免税品Qを入れた後、剥離紙を剥がした梱包シールにて梱包箱の上面を固定した様子を示している。実際には、免税品Qを保護するための緩衝材などを隙間に敷き詰めるが、ここでは省略している。
【0203】
底面を固定する梱包シールと、上面を固定する梱包シールとを連続させても良い。この場合、閉じる必要のない側面のいずれか一方または双方にも、梱包シールが貼付されることとなる。
【0204】
図33
図33は、梱包シールを剥がした場合に粘着層の強弱の位置によって、剥がれ方が異なる様子を示す断面図である。この梱包シールは、図30(a)に示すような接着層がほぼ均一となる税法で製造されたものであるとする。なお、RFIDチップは、閉塞回路Cをまたいで配置されているが、ここでは表していない。
【0205】
図33(a)は、梱包箱の上面に貼付されていた梱包シールを剥がしていく場合に、粘着層の弱い箇所を示した断面図である。剥がす場合、台紙を指でつまんで梱包箱から引き剥がすであろうが、梱包箱との粘着力が弱いため、大部分が台紙へ粘着層が着いて剥がれる。台紙における粘着層側に位置している閉塞回路Cも、台紙に着いたままである。
【0206】
図33(b)は、梱包箱の上面に貼付されていた梱包シールを剥がしていく場合に、粘着層の強い箇所を示した断面図である。梱包箱との粘着力も台紙との粘着力も強いため、台紙における粘着層側に位置している閉塞回路Cも粘着層へ接着してしまい、台紙のみが剥がれる。その結果、台紙に着いたままの閉塞回路Cと、粘着層側に接着してしまう閉塞回路Cとが存在することとなり、閉塞回路Cは断線することとなる。
税関から出国する前の外国人旅行者が、梱包箱の梱包シールを剥がした場合、上述したように閉塞回路Cは断線するので、その旨がRFIDチップに記録される。そのため、見かけ上元通りにしたとしても、税関において梱包箱の密封状態を解いたことが分かることとなる。
【0207】
図34
図34は、梱包シールにおける粘着層のパターンに関するバリエーションを示す平面図である。
梱包した免税品を取り出すことが可能な長さで梱包シールを剥がしたら閉塞回路Cが断線するように、接着力の強弱の層のいずれもを剥がすようなパターンであればよい。換言すれば、梱包した免税品を取り出すことが可能な長さで梱包シールを剥がした場合には、接着力の強弱の層のいずれもを必ず剥がすようなパターンでなければならない。
【0208】
図34(a)は、ランダムな大きさの円形からなる接着力の弱い箇所をランダムに配置し、それ以外の箇所は接着力の強い箇所としたパターンである。
【0209】
図34(b)は、RFIDチップを中央にして菱形をなす接着力の強い箇所とし、それ以外の箇所は接着力の弱い箇所としたパターンである。
【0210】
図35
図35は、梱包シールの構造および製造手順の第二例を示す図である。
閉塞回路Cを印刷技術によって台紙へ固定する点は、図29にて示した構造と同じである。
【0211】
図29に示した構造との相違点は、色である。すなわち、閉塞回路Cの色と台紙の色とを同色とし、閉塞回路Cに接する粘着層の色も閉塞回路Cの色と同色とするのである。
【0212】
閉塞回路Cが印刷された部位を視認できる場合、閉塞回路Cの長手方向の間隔へ、その長手方向に沿ってカッターナイフを入れて梱包シールを切断する、という行為をされると、閉塞回路Cを切断することなく梱包箱または梱包袋の中へ密封した免税品を取り出されてしまう可能性がある。
【0213】
閉塞回路Cの色と台紙の色とを同色とし、閉塞回路Cに接する粘着層の色も閉塞回路Cの色と同色とすることで、閉塞回路Cが印刷された部位を視認しにくくして、上記のような梱包シールの切断行為を未然に防止する。
【0214】
図36
図36は、台紙へ印刷する閉塞回路の形状を異ならせた梱包シールの構造および製造手順の第三例を示す図である。第一例および第二例の閉塞回路Cとは形状が異なるので、ここでの閉塞回路は、「閉塞回路D」とする。
【0215】
閉塞回路Dは、梱包シールの幅方向にジグザグするジグザグ路と、そのジグザグ路の端部から梱包シールの長手方向に平行な長手路と、を組み合わせて閉塞する回路を形成している。
【0216】
図29等に示した閉塞回路Cの場合には、長手方向の回路の間隔へその長手方向に沿ってカッターナイフを入れて梱包シールを切断する、という行為は、閉塞回路Dの形状であれば回路を断線させることとなる。そのため、梱包箱または梱包袋の中へ密封した免税品を取り出そうとしても、閉塞回路Dが断線しており、RFIDチップがその断線を検知できる。
【0217】
図37
図37は、梱包シールに用いる閉塞回路のバリエーションを示している。
図37(a)は、図36に示した閉塞回路Dを、想像線の台紙とともに図示している。この閉塞回路Dは、台紙の幅方向をジグザグに往復して全面を張り巡らせ、両端から長手方向へ延して中央付近で接続している。
【0218】
図37(b)は、閉塞回路Dを応用しつつ、台紙の幅方向の約半分でジグザグに往復する閉塞回路Eを、想像線の台紙とともに図示している。この閉塞回路Eは、台紙の幅方向の約半分でジグザグに往復し、長手方向の端部で中央まで折り返し、再び幅方向の約半分でジグザグに往復することで、台紙の全面に張り巡らせている。
【0219】
閉塞回路Eによれば、梱包シールの長手方向の切断のみならず、梱包シールの幅方向を横切るような切断においても断線することとなる。そのため、閉塞回路Eを切断することなく梱包箱または梱包袋の中へ密封した免税品を取り出されてしまう可能性を著しく低める効果がある。
【0220】
第九の発明によれば、免税品を梱包した場合に梱包シールを剥がして免税品を取り出し,梱包シールを元に戻す行為が実施された場合、RFIDチップの断線の有無を確認することで簡易に発見することが可能な梱包シールを提供することができた。
【0221】
図16から図24までに説明した「RFIDチップを埋め込んだ梱包用シート」については、RFIDチップに断線した場合の記録が残る、ということで、その記録を税関においてチェックする、という手法を説明した。
しかし、RFIDチップを埋め込まずに閉塞回路だけを梱包用シートに埋め込んでおき、断線しないかどうかを、税関における専用装置にて検証する、という手法によっても、RFIDチップに断線した旨(不正行為が行われた可能性が高い旨)を知ることは可能である。
【0222】
図29から図37までに説明した「RFIDチップを埋め込んだ梱包シール」についても、同様である。すなわち、RFIDチップを埋め込まずに閉塞回路だけを梱包シールに埋め込んでおき、断線しないかどうかを、税関における専用装置にて検証する、という手法によっても、RFIDチップに断線した旨(不正行為が行われた可能性が高い旨)を知ることは可能である
【0223】
図38
図38は、外国人旅行者が自らに係る携帯端末(主にスマートフォン)にて、税還付の実行方法を選択できるアプリケーションプログラムの画面を示している。この画面を表示するには、外国人旅行者が自らの携帯端末を使って、所定のアプリケーションプログラムを予めダウンロードしておく必要がある。
【0224】
図39
図39は、図38にて外国人旅行者が選択した税還付の実行方法(4種類)を選択した場合に表示される画面を例示したものである。
【0225】
図39(a)は、電子マネーへの送金を希望した場合に、その電子マネーを特定するためのIDなどを入力する画面を示している。
【0226】
図39(b)は、クレジットカード(に紐付けられた銀行口座または電子マネー)への送金を希望した場合に、そのクレジットカードを特定するためのクレジットカード番号(カメラによる撮影データ)を入力する画面を示している。
【0227】
図39(c)は、銀行口座への送金を希望した場合に、その銀行口座を特定するためのアカウント情報を入力する画面を示している。
【0228】
図39(d)は、現金での返金を希望した場合に、本人や免税取引履歴を特定するためのパスポート情報や取引番号などをエンコードした二次元バーコードを示している。旅行者は、免税カウンターの係員やや免税カウンターに配備された無人機に対して、二次元バーコードを提示して現金での還付を求める。
【0229】
(産業上の利用可能性)
図16から図37を用いて説明した発明は、免税店による小売業、その小売業で用いる梱包材や梱包シールの製造業、その小売業を支える情報通信サービス業、その情報通信サービスのための情報通信機器の製造業、小売業の情報通信サービスにて用いるコンピュータソフトウェアを作成するソフトウェア産業、などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0230】
A ;免税店 Ad1;免税店端末
B1 ;免税品の購買者 B2 ;免税品の購買者(本願のサービス受容者)
B3 ;免税品の購買者(不正購買者)
Bd1;携帯端末 Bd2;購買者端末(正規の購買者に係る端末)
Bd3;購買者端末(不正購買者に係る端末)
D ;チェックサーバ
E ;還付処理サーバ
F ;税関端末
G ;第三者サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
図1】免税店の仕組みを示す概念図である。
図2】免税制度の悪用事例を示す概念図である。
図3】本発明における実施形態にて、免税品を購入した際のデータ処理について示す概念図である。
図4】本発明における実施形態にて、免税品を購入した際のデータ処理について示す概念図である。
図5】本発明における実施形態に係るチェックサーバを中心として、どのようなデータ処理が実行されるかを示すブロック図である。
図6】不審データを抽出する一例を示すフローチャートである。
図7】不審データが抽出された際にどのようなデータ処理を実行するかを示す概念図である。
図8】購買者が電子レシートを受け取る手順を示す概念図である。
図9】消費税を還付する処理を実行する還付処理サーバについて示すブロック図である。
図10】出国を確認して消費税を還付する処理手順を示すフローチャートである。
図11】免税店の専用端末の画面を示す図であって、購買者に係る携帯端末に電子レシートを出力させるための電子レシートアクセス画面である。
図12】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、電子レシートおよび還付アカウントの登録申請を実行する画面である。
図13】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、電子レシートおよび還付処理の実行をリクエストするボタンをタップする様子を示す。
図14】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、携帯端末の位置データが日本国内であることを検知された場合の画面である。
図15】免税店の購買者に係る携帯端末の画面を示す図であって、還付処理が実行されたことを示す画面である。
図16】第六の発明に係る包装用シートを構成するシートの構造を示す平面図である。
図17】第六の発明に係る包装用シートを構成するシートの組み立て前後の構造を示す図である。
図18】第六の発明に係る包装用シートに用いるRFIDチップと、導電線A,Bとの関係を示す斜視図である。
図19】第六の発明に係る包装用シートを袋状に加工する場合の構造を示す図である。
図20】第六の発明に係る包装用シートを袋状または箱状に加工する場合の構造を示す図である。
図21】第六の発明に係る包装用シートを6枚用いて箱を形成する場合を示す展開図である。
図22】第六の発明に係る包装用シート1枚で箱を形成する場合を示す展開図である。
図23】免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(A)を示す概念図である。
図24】免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(A)を示すブロック図である。
図25】免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(B)を示す概念図である。
図26】免税データ記録および未開封が保証された袋や箱によって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(B)を示すブロック図である。
図27】免税データ記録および梱包品の荷姿データによって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(C)を示す概念図である。
図28】免税データ記録および梱包品の荷姿データによって、税関での税還付手続きの円滑化を実現する手順(C)を示すブロック図である。
図29】第九の発明に係る梱包シールの構造(製造手順)の第一例を示す図である。
図30】第九の発明に係る梱包シールに用いる粘着層のパターン例を示す斜視図である。
図31】第九の発明に係る梱包シールに用いる粘着層のバターン例を示す平面図である。
図32】第九の発明に係る梱包シールの使用前後を示す断面図である。
図33】第九の発明に係る梱包シールが剥がされた場合に閉塞回路Cが断線する様子を示す断面図である。
図34】第九の発明に係る梱包シールに用いる粘着層のパターン例を示す図である。
図35】第九の発明に係る梱包シールの構造(製造手順)の第二例を示す図である。
図36】第九の発明に係る梱包シールの構造(製造手順)の第三例を示す図である。
図37】第九の発明に係る梱包シールに用いる閉塞回路のバリエーションを示す平面図である。
図38】外国人旅行者に係る情報端末において、出国後に税金の還付を受ける方法を選択する画面の一例を示す。
図39】外国人旅行者に係る情報端末において、出国後に税金の還付を受ける具体的な画面を例示したものである。