(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155716
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 3/00 20060101AFI20241024BHJP
B60B 3/04 20060101ALI20241024BHJP
B60B 3/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60B3/00 A
B60B3/04 B
B60B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006330
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023069057
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 直人
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳道
(57)【要約】
【課題】車両用ホイールの意匠面の視認性を確保する。
【解決手段】実施形態のホイール1は、筒状のリム10と、リム10の内側に設けられるディスク20と、を備える。リム10の外側面及びディスク20の外側面から構成される意匠面30の一部は、互いに隣り合う複数の溝部40を有する。複数の溝部40と交差する断面視で、複数の溝部40の少なくとも1つの幅wは、3mm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のリムと、
前記リムの内側に設けられるディスクと、を備え、
前記リムの外側面及び前記ディスクの外側面から構成される意匠面の一部は、互いに隣り合う複数の溝部を有し、
前記複数の溝部と交差する断面視で、前記複数の溝部の少なくとも1つの幅は、3mm以上である、
車両用ホイール。
【請求項2】
前記断面視で、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の先端を通り且つ前記車両用ホイールの軸方向に沿う軸方向線分と、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの一方の中心と前記エッジ形状の先端とを結ぶ第1線分と、がなす角度を第1角度とし、
前記断面視で、前記軸方向線分と、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの他方の中心と前記エッジ形状の先端とを結ぶ第2線分と、がなす角度を第2角度とし、
前記第1角度と前記第2角度との差が3°以上大きい、
請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項3】
前記意匠面の一部は、前記複数の溝部を有する凹凸面を含み、
前記凹凸面の一部は、前記車両用ホイールの周方向に離間している、
請求項1又は2に記載の車両用ホイール。
【請求項4】
前記複数の溝部の一部は、他の一部とは異なる幅を有する、
請求項1又は2に記載の車両用ホイール。
【請求項5】
前記断面視で、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の2つの側面がなす角度をエッジ角度とし、
前記エッジ角度が175°以下である、
請求項1又は2に記載の車両用ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、意匠面における光輝感を高めるようにした光輝面を有する車両用ホイールが開示されている。光輝面は、複数の細凹溝が同一方向に延びて平行且つ等間隔に配列されることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両全体を見る場合等、車両用ホイールを遠くから離れて見る場合(例えば、車両用ホイールから5m程度離れて見る場合)がある。このような場合でも、車両用ホイールの意匠面の視認性を確保することが要求されている。
【0005】
そこで本発明は、車両用ホイールの意匠面の視認性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る車両用ホイールは、筒状のリムと、前記リムの内側に設けられるディスクと、を備え、前記リムの外側面及び前記ディスクの外側面から構成される意匠面の一部は、互いに隣り合う複数の溝部を有し、前記複数の溝部と交差する断面視で、前記複数の溝部の少なくとも1つの幅は、3mm以上である。
【0007】
(2)上記(1)の態様において、前記断面視で、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の先端を通り且つ前記車両用ホイールの軸方向に沿う軸方向線分と、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの一方の中心と前記エッジ形状の先端とを結ぶ第1線分と、がなす角度を第1角度とし、前記断面視で、前記軸方向線分と、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの他方の中心と前記エッジ形状の先端とを結ぶ第2線分と、がなす角度を第2角度とし、前記第1角度と前記第2角度との差が3°以上大きくてもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記意匠面の一部は、前記複数の溝部を有する凹凸面を含み、前記凹凸面の一部は、前記車両用ホイールの周方向に離間していてもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様において、前記複数の溝部の一部は、他の一部とは異なる幅を有してもよい。
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様において、前記断面視で、前記複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の2つの側面がなす角度をエッジ角度とし、前記エッジ角度が175°以下であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)の態様の車両用ホイールは、筒状のリムと、リムの内側に設けられるディスクと、を備え、リムの外側面及びディスクの外側面から構成される意匠面の一部は、互いに隣り合う複数の溝部を有し、複数の溝部と交差する断面視で、複数の溝部の少なくとも1つの幅は、3mm以上であることで、以下の効果を奏する。
断面視で複数の溝部のそれぞれの幅が3mm未満である場合と比較して、車両用ホイールを遠くから離れて見る場合(例えば、車両用ホイールから5m程度離れて見る場合)でも、溝部(意匠面の一部)を視認しやすい。したがって、車両用ホイールの意匠面の視認性を確保することができる。
【0011】
上記(2)の態様によれば、断面視で、複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の先端を通り且つ車両用ホイールの軸方向に沿う軸方向線分と、複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの一方の中心とエッジ形状の先端とを結ぶ第1線分と、がなす角度を第1角度とし、断面視で、軸方向線分と、複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの他方の中心とエッジ形状の先端とを結ぶ第2線分と、がなす角度を第2角度とし、第1角度と第2角度との差が3°以上大きいことで、以下の効果を奏する。
第1角度と第2角度との差が3°未満である場合と比較して、エッジ形状側面部分の影を大きくしやすい。したがって、車両用ホイールの意匠面の視認性を確保する上で好適である。
【0012】
上記(3)の態様によれば、意匠面の一部は、複数の溝部を有する凹凸面を含み、凹凸面の一部は、車両用ホイールの周方向に離間していることで、以下の効果を奏する。
凹凸面の一部が車両用ホイールの周方向に互いに隣接している場合と比較して、溝部の形成範囲を小さくすることができる。したがって、生産性が向上し、コスト低減に寄与する。加えて、凹凸面の一部を互いに所定以上離間させることで、一方向のツールパスで各凹凸面の溝部を形成することもできる。
【0013】
上記(4)の態様によれば、複数の溝部の一部は、他の一部とは異なる幅を有することで、以下の効果を奏する。
複数の溝部の一部が他の一部と同じ幅を有する場合と比較して、複数の溝部の一部と他の一部とで光又は影の見え方を変えやすい。したがって、車両用ホイールの意匠面の視認性を確保する上で好適である。
上記(5)の態様によれば、断面視で、複数の溝部のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の2つの側面がなす角度をエッジ角度とし、エッジ角度が175°以下であることで、以下の効果を奏する。
断面視で複数の溝部の少なくとも1つの幅が3mm以上である条件と相まって、車両用ホイールの意匠面の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図1のIII-III断面視の一例を示す図。
【
図4】実施形態のホイールの断面視の他の例を示す図。
【
図5】実施形態のホイールの二値化によるコントラスト例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、自動車等の車両に装着される車両用ホイール(以下、単に「ホイール」ともいう。)について説明する。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を意味するのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も含むものとする。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
<ホイール>
図1は、実施形態のホイール1の正面図である。
図2は、実施形態のホイール1の斜視図である。
図2の矢印V方向は、ホイール1を車両に装着した状態において車幅方向の内側から外側に向かう方向(車幅方向外方)に相当する。以下の説明では、車幅方向の内側を「車両内側」、車幅方向の外側を「車両外側」ともいう。
【0017】
図1及び
図2を併せて参照し、ホイール1は、筒状のリム10と、リム10の内側に設けられるディスク20と、を備える。例えば、ホイール1は、自動車の車体の側部に設けられる車両側ハブ(不図示)に対して、締結部としてのボルト及びナット(何れも不図示)により固定される。
【0018】
例えば、ホイール1は、アルミニウム及びマグネシウム等の金属で形成される。例えば、ホイール1は、鋳造及び鍛造等の加工方法により略円筒形に成型される。なお、ホイール1は、上記に限らず、スチール、チタン、チタン合金等で形成されてもよい。例えば、ホイール1の形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0019】
なお、ホイール1は、リム10とディスク20とが一体に構成される1ピース構造でもよいし、リム10とディスク20との2つのパーツで構成される2ピース構造でもよい。例えば、ホイール1は、3つ以上のパーツで構成されてもよい。例えば、ホイール1の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0020】
以下の説明では、ホイール1の軸方向(ホイール1の回転軸線に沿う方向に相当)を単に「軸方向」、軸方向と直交する方向を「径方向」、ホイール1の周方向(ホイール1の回転軸線回りの方向に相当)を単に「周方向」ともいう。
図1の正面図は、ホイール1を軸方向の外側(車両外側に相当)から見た図に相当する。
【0021】
リム10は、ホイール1においてタイヤが装着される部分である。リム10は、略円筒状に形成されている。リム10は、車両内側から車両外側に向かって順に形成された内フランジ11、ウェル12及び外フランジ13を備える。内フランジ11及び外フランジ13は、ウェル12の外周面よりも径方向外側に向かって突出している。内フランジ11及び外フランジ13は、装着されたタイヤがリム10から脱離することを抑制する機能を持つ。
【0022】
ディスク20は、車両側ハブ(不図示)に取り付けられるハブ取付部21と、ハブ取付部21からリム10へ向かって放射状に延びる複数のスポーク22と、を備える。
【0023】
ハブ取付部21は、周方向に等間隔に配置された6つ(複数の一例)の取付孔23を有する。なお、取付孔23の数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0024】
スポーク22は、ハブ取付部21とリム10とを連結している。スポーク22は、周方向に隣り合う2つの取付孔23の間の部分から径方向外側に向かって二股状に分岐しつつ延びる12本(複数の一例)設けられる。ホイール1は、2本のスポーク22を一組とした場合、全部で6組、12本のスポーク22を備える。なお、スポーク22の数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0025】
<意匠面>
意匠面30は、ホイール1の車両外側の面である。具体的に、意匠面30は、ホイール1において車両外側から見える部分であって、ホイール1の見栄え(デザイン)を決める部分である。意匠面30は、リム10の外側面(リム10の車両外側の面)及びディスク20の外側面(ディスク20の車両外側の面)から構成される。
【0026】
意匠面30の一部は、切削により母材金属を露出させることで金属光沢が外観される切削面(以下「光輝面」ともいう。)を有する。例えば、光輝面は、ホイール1を塗装した後、意匠面30の一部を塗膜ごと切削することで得られる面である。図の例では、光輝面(各凹凸面31,32を含む部分)は、リム10の外側面及びスポーク22の外側面(具体的には、スポーク22の径方向外側部分における車両外側の面)に設けられている。
【0027】
例えば、意匠面30の一部は、鋳肌面、塗装面及び研磨面等を有してもよい。鋳肌面は、鋳肌の表面(又は鍛造上がりの表面)である。塗装面は、鋳肌に塗装して得られる面である。例えば、鋳肌面及び塗装面は、意匠面30において光輝面(各凹凸面31,32を含む部分)以外の部分に設けられてもよい。例えば、鋳肌面及び塗装面の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0028】
図示はしないが、ホイール1の全体には、無色のクリア塗装が施されている。光輝面(各凹凸面31,32を含む部分)は、ホイール1の表面には現れていないが、クリア塗膜を通して視認可能とされている。
【0029】
リム10の外側面及びディスク20の外側面から構成される意匠面30の一部は、互いに隣り合う複数の溝部40を有する。例えば、溝部40は、ホイール1の母材と刃工具(不図示)とを相対移動させて切削加工を行うことで形成することができる。
【0030】
意匠面30の一部は、複数の溝部40を有する凹凸面31,32を含む。以下の説明では、凹凸面31,32の一部を「第1凹凸面31」と称し、他の一部を「第2凹凸面32」と称する場合がある。なお、意匠面30の一部は、第3凹凸面を含んでもよい。例えば、複数の溝部を有する面の数は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0031】
第1凹凸面31及び第2凹凸面32は、ホイール1の周方向に互いに隣接している。軸方向から見て、第1凹凸面31における複数の溝部40は、それぞれ同一方向に沿って、互いに平行に且つ直線状に延びている。軸方向から見て、第2凹凸面32における複数の溝部40は、それぞれ第1凹凸面31における複数の溝部40とは異なる同一方向に沿って、互いに平行に且つ直線状に延びている。
【0032】
軸方向から見て、第1凹凸面31における複数の溝部40と第2凹凸面32における複数の溝部40とは、取付孔23の中心を通り且つ径方向に沿って延びる仮想線Kを対称軸として、線対称形状となるように設けられている。軸方向から見て、第1凹凸面31と第2凹凸面32との境界部分35の溝部40は、第1凹凸面31における溝部40と第2凹凸面32における溝部40とが組み合わされてV字状をなしている。
【0033】
なお、軸方向から見て、第2凹凸面32における複数の溝部40は、上記に限らず、それぞれ第1凹凸面31における複数の溝部40と同じ方向に沿って延びていてもよい。例えば、各溝部40が延びる方向は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0034】
図3は、
図1のIII-III断面視の一例を示す図である。
図1のIII-III断面視(以下、単に「断面視」ともいう。)は、第1凹凸面31における複数の溝部40と直交する断面視(複数の溝部40と交差する断面視の一例)に相当する。
図3を併せて参照し、断面視で、複数の溝部40の少なくとも1つの溝部40の幅wは、3mm以上である。例えば、断面視で、複数の溝部40の各々の幅wは、3mm以上15mm以下である。例えば、断面視で、複数の溝部40は、互いに同じ幅wを有してもよい。なお、各溝部40の幅wは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0035】
断面視で、複数の溝部40の各々は、円弧形状を有する。例えば、刃工具の側面が所定半径以上(例えば、半径15mm以上)の円弧形状を有する場合は、溝部40の表面に対して非常に高い光沢面(例えば、鏡面、超光輝)を付与することができる。
【0036】
なお、各溝部40の断面視形状は、上記に限らず、直線を含む形状でもよい。例えば、各溝部40の断面視形状は、直線及び曲線を組み合わせた形状でもよいし、複数の直線又は曲線を組み合わせた形状でもよい。例えば、各溝部40の断面視形状は、V字状又はU字状でもよい。例えば、各溝部40の断面視形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0037】
以下の説明において、断面視で複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の2つの側面がなす角度を「エッジ角度a」とする。なお、各溝部40が円弧形状を有する場合、エッジ角度aは、断面視で、エッジ形状の先端を通り且つ一方の側面(曲面)の接線成分と、エッジ形状の先端を通り且つ他方の側面(曲面)の接線成分と、がなす角度に相当する。例えば、エッジ角度aは、175°以下である。例えば、エッジ角度aは、170°以下であってもよい。なお、エッジ角度aは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0038】
図3において、各溝部40の中心(円弧中心に相当)とエッジ形状の先端とを結ぶ線分を「凹半径b」とする。例えば、凹半径bは、15mm以上である。なお、凹半径bは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0039】
図3において、符号cは、各溝部40の中心(円弧中心に相当)とエッジ形状の先端を通り且つ軸方向に沿う軸方向線分との間隔を示す。
図3の例では、各間隔cは、互いに同じである。溝部40の幅wは、間隔cを2倍にした大きさである。
【0040】
図4は、実施形態のホイール1の断面視の他の例を示す図である。
図4において、複数の溝部40の一部は、他の一部とは異なる幅を有する。言い換えると、複数の溝部40は、互いに異なる幅w1,w2を有する第1溝部41及び第2溝部42を含む。
図4の例では、第1溝部41の幅w1は、第2溝部42の幅w2よりも大きい。例えば、複数の溝部40は、第1溝部41及び第2溝部42が交互に配置されることで構成されてもよい。なお、複数の溝部40は、第3溝部を含んでもよい。例えば、複数の溝部40の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0041】
図4において、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの溝部41,42の間のエッジ形状の先端を通り且つ軸方向に沿う軸方向線分と、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの溝部41,42の一方(第1溝部41に相当)の中心(円弧中心に相当)とエッジ形状の先端とを結ぶ第1線分と、がなす角度を「第1角度a1」とする。第1線分は、断面視でエッジ形状の先端を通る凹半径b1に相当する。
また、軸方向線分と、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの溝部41,42の他方(第2溝部42に相当)の中心(円弧中心に相当)とエッジ形状の先端とを結ぶ第2線分と、がなす角度を「第2角度a2」とする。第2線分は、断面視でエッジ形状の先端を通る凹半径b1に相当する。
【0042】
図4の例では、エッジ形状の2つの側面がなすエッジ角度aは、第1角度a1及び第2角度a2のそれぞれよりも大きい。第1角度a1と第2角度a2との差は、3°以上大きい。なお、エッジ角度aと第1角度a1及び第2角度a2との大小関係は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0043】
図4において、符号b1は第1溝部41の凹半径、符号b2は第2溝部42の凹半径、符号c1は第1溝部41の間隔、符号c2は第2溝部42の間隔をそれぞれ示す。第1溝部41の幅w1は、第1溝部41の間隔c1を2倍にした大きさである。第2溝部42の幅w2は、第2溝部42の間隔c2を2倍にした大きさである。
【0044】
図4において、符号dは、第1溝部41及び第2溝部42の各々の深さの差を示す。深さの差dは、第1溝部41の凹半径b1と第2溝部42の凹半径b2との差に相当する。例えば、深さの差dは、0.1mm程度に設定してもよい。なお、深さの差dは、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0045】
なお、
図4において、符号S1は互いに隣り合う2つの溝部41,42に対して光を矢印L1方向から照射した場合に見える影の一例、符号S2は互いに隣り合う2つの溝部41,42に対して光を矢印L2方向から照射した場合に見える影の一例をそれぞれ示す。
【0046】
図5は、実施形態のホイール1の二値化によるコントラスト例を示す図である。
図5において、ホイール1に光を照射した場合に、相対的に明るく見える部分(ハイライト部に相当)を白色で示し、相対的に暗く見える部分(ローライト部に相当)を黒色で示す。
図5に示すように、本実施形態のホイール1の意匠面30の一部は上述した複数の溝部40を備えることで、ハイライト部とローライト部とを明確化して視認できることが確認された。
【0047】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態のホイール1は、筒状のリム10と、リム10の内側に設けられるディスク20と、を備える。リム10の外側面及びディスク20の外側面から構成される意匠面30の一部は、互いに隣り合う複数の溝部40を有する。複数の溝部40と交差する断面視で、複数の溝部40の少なくとも1つの幅wは、3mm以上である。
この構成によれば、断面視で複数の溝部40のそれぞれの幅wが3mm未満である場合と比較して、ホイール1を遠くから離れて見る場合(例えば、ホイール1から5m程度離れて見る場合)でも、溝部40(意匠面30の一部)を視認しやすい。したがって、ホイール1の意匠面30の視認性を確保することができる。
【0048】
上記実施形態では、断面視で、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の先端を通り且つホイール1の軸方向に沿う軸方向線分と、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの一方の中心とエッジ形状の先端とを結ぶ第1線分と、がなす角度を第1角度a1とする。断面視で、軸方向線分と、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの他方の中心とエッジ形状の先端とを結ぶ第2線分と、がなす角度を第2角度a2とする。第1角度a1と第2角度a2との差が3°以上大きい。
この構成によれば、第1角度a1と第2角度a2との差が角度差3°未満である場合と比較して、エッジ形状側面部分の影を大きくしやすい。したがって、ホイール1の意匠面30の視認性を確保する上で好適である。
【0049】
上記実施形態では、意匠面30の一部は、複数の溝部40を有する凹凸面31,32を含む。凹凸面31,凹凸面32の一部は、ホイール1の周方向に互いに隣接している。
この構成によれば、凹凸面31,32の一部がホイール1の周方向に互いに離間している場合と比較して、溝部40(意匠面30の一部)の形成範囲を大きくすることができる。したがって、ホイール1の意匠面30の視認性を確保する上で好適である。
【0050】
上記実施形態では、複数の溝部40の一部は、他の一部とは異なる幅を有する。
この構成によれば、複数の溝部40の一部が他の一部と同じ幅を有する場合と比較して、複数の溝部40の一部と他の一部とで光又は影の見え方を変えやすい。したがって、ホイール1の意匠面30の視認性を確保する上で好適である。
上記実施形態では、断面視で、複数の溝部40のうち互いに隣り合う2つの間のエッジ形状の2つの側面がなす角度をエッジ角度aとする。エッジ角度aが175°以下である。
この構成によれば、断面視で複数の溝部40の少なくとも1つの幅wが3mm以上である条件と相まって、ホイール1の意匠面の視認性を確保することができる。
【0051】
<他の変形例>
上記実施形態では、第1角度と第2角度との差が3°以上大きい例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1角度と第2角度との差が差3°未満であってもよい。例えば、第1角度と第2角度との差は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0052】
上記実施形態では、凹凸面の一部が車両用ホイールの周方向に互いに隣接している例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、凹凸面の一部は、車両用ホイールの周方向に互いに離間していてもよい。例えば、
図1に示す境界部分35には、溝部40が形成されていなくてもよい。
この構成によれば、凹凸面の一部が車両用ホイールの周方向に互いに隣接している場合と比較して、溝部の形成範囲を小さくすることができる。したがって、生産性が向上し、コスト低減に寄与する。加えて、凹凸面の一部を互いに所定以上離間させることで、一方向のツールパスで各凹凸面の溝部を形成することもできる。
【0053】
上記実施形態では、複数の溝部の一部は、他の一部とは異なる幅を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の溝部の一部は、他の一部と同じ幅を有していてもよい。例えば、各溝部の幅の大きさは、設計仕様に応じて変更することができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【実施例0055】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
本発明に係る車両用ホイールに関し、官能試験を実施し、溝部の幅、エッジ角度、溝部の凹半径の妥当性を検証した。
図6は、実施例の評価サンプルを示す図である。
実施例では、
図6に示す15水準を評価サンプルとした。
【0057】
図7は、実施例の評価方法を示す図である。
実施例では、パネラー5人を評価者とし、サンプルから5m離れた場所で、上記サンプルの模様の視認可否を確認した。サンプルは、加工面を地面に対して垂直にし、かつ、太陽光に対しても垂直に配置した。模様として認識できる場合、視認可能範囲(パネラーが移動しても模様が見える範囲)を確認した。模様として認識できる場合とは、
図5で示した相対的に明るく見える部分(ハイライト部に相当)が模様として認識できることを意味する。なお、評価の実施日は2023年5月24日、13時から14時、場所は掛川、天気は晴れ、である。
【0058】
図8は、実施例の評価結果の定量化を示す図である。
図8に示す内容で官能評価結果(視認可能範囲)を点数化し、定量化を試みた。
【0059】
点数化した視認可能範囲の「最大・最小・平均値」の結果を
図9から
図12に示す。なお、
図9から
図12において、溝部の幅、エッジ角度、溝部の凹半径は、それぞれ幅w、エッジ角α、工具半径rとして示す。
【0060】
図9は、評価結果の第1例を示す図である。
図9では、整列順序を工具半径r、エッジ角α、幅wの順とした。
図9に示すように、工具半径rが同一の場合は、幅wが大きいほど、エッジ角αが小さいほど、視認性は高いことを確認できた。
【0061】
図10は、評価結果の第2例を示す図である。
図10では、整列順序を幅w、エッジ角α、工具半径rの順とした。
図10に示すように、幅wが大きいほど視認性は高いことを確認できた。
図10の実線囲み部に示すように、幅wが同一の場合(3.5mm)では、エッジ角αが小さいほど視認性は高いことを確認できた。
図10の破線囲み部に示すように、幅wが2.6mm以下では、視認不可(0ポイント)の判定があることを確認できた。
【0062】
図11は、評価結果の第3例を示す図である。
図11では、整列順序をエッジ角α、幅w、工具半径rの順とした。
図11に示すように、エッジ角αが同一の場合は、幅wが大きいほど視認性は高いことを確認できた。
エッジ角αが小さいほど視認性が高い傾向があるが、
図11の実線囲み部(実施No3とNo14との比較、実施No4とNo15との比較)を参照すると、幅wが3mm未満の場合は傾向が逆転するものがあることを確認できた。
図11の破線囲み部に示すように、エッジ角αが175°の場合でも幅wが3.5mmでは、視認不可(0ポイント)の判定はないことを確認できた。
【0063】
図12は、評価結果の第4例を示す図である。
図12では、整列順序をエッジ角α、幅w、工具半径rの順とし、幅wが3mm未満を除外した。
図12に示すように、エッジ角αが小さいほど視認性は高いことを確認できた。
但し、エッジ角αが170°以上の場合でも幅wが3.5mmであれば、範囲は狭いが視認は可能となることを確認できた(
図12の実線囲み部参照)。
【0064】
以上、実施例により本発明をより具体的に説明したが、実施例では、幅wが3mm以上であることは妥当と判断できた。