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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155722
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】測定装置、および、投光器
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011476
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2023068251
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 喜
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA06
5J084BA07
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA40
5J084BB04
5J084BB20
5J084BB21
5J084BB23
5J084CA31
5J084DA01
5J084EA40
(57)【要約】
【課題】出射光の照射範囲を変位させることができる。
【解決手段】測定装置は、発光部と、発光部が発した光が透過する投光光学系と、投光光学系を透過し、測定対象にて反射した光を受光する受光部と、を備える。投光光学系は、方向変更レンズを含んでいる。方向変更レンズの出射面は、方向変更レンズに入射する光の光軸に垂直な仮想平面に対して第1の角度θだけ傾斜している。方向変更レンズの入射面は、仮想平面に対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜していてもよいし、仮想平面に対して平行であってもよい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
前記発光部が発した光が透過する投光光学系と、
前記投光光学系を透過し、測定対象にて反射した光を受光する受光部と、を備える測定装置であって、
前記投光光学系は、方向変更レンズを含んでおり、
前記方向変更レンズの出射面は、前記方向変更レンズに入射する光の光軸に垂直な仮想平面に対して第1の角度θだけ傾斜している、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜している、測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測定装置であって、
前記第1の角度θと前記第2の角度αと前記方向変更レンズの屈折率nとは、次の関係式が成り立つ、測定装置。
sinα=n×sin(α-θ)
【請求項4】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して平行である、測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定装置であって、
前記第1の角度θと偏向角Φと前記方向変更レンズの屈折率nとは、次の関係式が成り立つ、測定装置。
n×sinθ=sin(θ+Φ)
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記発光部は、第1の発光部と第2の発光部とを含み、
前記投光光学系は、前記第1の発光部が発した光が透過する第1の投光光学系と、前記第2の発光部が発した光が透過する第2の投光光学系とを含み、
前記第1の投光光学系と前記第2の投光光学系との少なくとも一方が前記方向変更レンズを含むことにより、前記第1の投光光学系からの出射光の第1の照射範囲と前記第2の投光光学系からの出射光の第2の照射範囲とが互いに重なっている、測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記発光部は、第1の発光部と第2の発光部とを含み、
前記投光光学系は、前記第1の発光部が発した光が透過する第1の投光光学系と、前記第2の発光部が発した光が透過する第2の投光光学系とを含み、
前記第1の投光光学系と前記第2の投光光学系との少なくとも一方が前記方向変更レンズを含むことにより、前記第1の投光光学系からの出射光の第1の照射範囲と前記第2の投光光学系からの出射光の第2の照射範囲とが互いに異なっている、測定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の測定装置であって、
前記方向変更レンズの入射面と前記出射面との一方が凸状曲面であり、他方が凹状曲面である、測定装置。
【請求項9】
発光部と、
前記発光部が発した光が透過する投光光学系と、を備える投光器であって、
前記投光光学系は、方向変更レンズを含んでおり、
前記方向変更レンズの出射面は、前記方向変更レンズに入射する光の光軸に垂直な仮想平面に対して第1の角度θだけ傾斜している、投光器。
【請求項10】
請求項9に記載の投光器であって、
前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜している、投光器。
【請求項11】
請求項9に記載の投光器であって、
前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して平行である、投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、測定装置、および、投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
AD(Autonomous Driving:自動運転)やADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)の進展に伴い、車両の走行時における周囲環境の把握や自己位置推定に用いる測定装置の一つとして、LiDAR(Light Detection And Ranging)の開発研究が進められている。LiDARは、測定対象にレーザ光を投光(照射)する投光器と、レーザ光が測定対象に反射して戻ってくる反射光を受光する受光器とを備える。LiDARは、投光器がレーザ光を出射したタイミングと受光器が反射光を受光したタイミングとの差に基づき測定対象までの距離を測定することにより測定対象に関する情報を出力する。投光器は、発光部と、発光部が発した光が透過する投光レンズとを備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-105613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば投光器からの照射範囲と受光器の受光範囲とのずれにより、測定装置の測定範囲内における出射光の光度分布が偏り、その結果、測定装置の測定精度が低下するおそれがある。この対応策として、例えば、照射範囲と受光範囲とのずれを是正するように投光器自体の向きを変えることが考えられる。しかし、投光器の向きを変えると測定装置全体が大型化するという問題が生じる。また、そもそも、スペースの関係上、投光器の向きを変えることができない場合がある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される測定装置は、発光部と、前記発光部が発した光が透過する投光光学系と、前記投光光学系を透過し、測定対象にて反射した光を受光する受光部と、を備える測定装置であって、前記投光光学系は、方向変更レンズを含んでおり、前記方向変更レンズの出射面は、前記方向変更レンズに入射する光の光軸に垂直な仮想平面に対して第1の角度θだけ傾斜している。
【0008】
本測定装置によれば、発光部の出射光の照射範囲を変位させることができる。すなわち、本測定装置では、方向変更レンズの出射面が仮想平面に対して第1の角度θだけ傾斜している。このため、方向変更レンズの出射面が仮想平面に平行な構成に対して、発光部から投光光学系を介して出射される出射光の照射範囲を変位させることができる。
【0009】
(2)上記測定装置において、前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜していてもよい。
【0010】
本測定装置によれば、方向変更レンズの入射面は、仮想平面に対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜している。このため、方向変更レンズの入射面が仮想平面に平行な構成に対して、出射面の傾斜に起因して投光光学系(発光部)からの出射光の光度分布が変動することを抑制することができる。
【0011】
(3)上記測定装置において、前記第1の角度θと前記第2の角度αと前記方向変更レンズの屈折率nとは、次の関係式が成り立つ構成としてもよい。
sinα=n×sin(α-θ)
本測定装置によれば、発光部からの出射光の光度分布の変動を、より効果的に抑制しつつ、その出射光の照射範囲を変位させることができる。
【0012】
(4)上記測定装置において、前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して平行であってもよい。本測定装置によれば、方向変更レンズの入射面と仮想平面との平行を維持しつつ、発光部の出射光の照射範囲を変位させることができる。
【0013】
(5)上記測定装置において、
前記第1の角度θと偏向角Φと前記方向変更レンズの屈折率nとは、次の関係式が成り立つ構成としてもよい。
n×sinθ=sin(θ+Φ)
本測定装置によれば、発光部からの出射光の光度分布の変動を、より効果的に抑制しつつ、その出射光の照射範囲を変位させることができる。
【0014】
(6)上記測定装置において、前記発光部は、第1の発光部と第2の発光部とを含み、前記投光光学系は、前記第1の発光部が発した光が透過する第1の投光光学系と、前記第2の発光部が発した光が透過する第2の投光光学系とを含み、前記第1の投光光学系と前記第2の投光光学系との少なくとも一方が前記方向変更レンズを含むことにより、前記第1の投光光学系からの出射光の第1の照射範囲と前記第2の投光光学系からの出射光の第2の照射範囲とが互いに重なっている構成としてもよい。本測定装置によれば、2つの発光部の配置関係に制約されることなく、第1の投光光学系からの出射光の第1の照射範囲と第2の投光光学系からの出射光の第2の照射範囲とを互いに重ねることができる。
【0015】
(7)上記測定装置において、前記発光部は、第1の発光部と第2の発光部とを含み、前記投光光学系は、前記第1の発光部が発した光が透過する第1の投光光学系と、前記第2の発光部が発した光が透過する第2の投光光学系とを含み、前記第1の投光光学系と前記第2の投光光学系との少なくとも一方が前記方向変更レンズを含むことにより、前記第1の投光光学系からの出射光の第1の照射範囲と前記第2の投光光学系からの出射光の第2の照射範囲とが互いに異なっている構成としてもよい。本測定装置によれば、2つの発光部の配置関係に制約されることなく、第1の投光光学系からの出射光の第1の照射範囲と第2の投光光学系からの出射光の第2の照射範囲とを互いに異ならせることができる。
【0016】
(8)上記測定装置において、前記方向変更レンズの前記入射面と前記出射面との一方が凸状曲面であり、他方が凹状曲面である構成としてもよい。本測定装置によれば、発光部からの出射光の光度分布の変動を抑制しつつ、その出射光の照射範囲を変位させ、かつ、方向変更レンズの凸状曲面と凹状曲面とのそれぞれによる機能を発揮させることができる。
【0017】
(9)本明細書に開示される投光器は、発光部と、前記発光部が発した光が透過する投光光学系と、を備える投光器であって、前記投光光学系は、方向変更レンズを含んでおり、前記方向変更レンズの出射面は、前記方向変更レンズに入射する光の光軸に垂直な仮想平面に対して第1の角度θだけ傾斜している。本投光器によれば、発光部の出射光の照射範囲を変位させることができる。
【0018】
(10)上記投光器によれば、前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜していてもよい。本投光器によれば、出射面の傾斜に起因して投光光学系(発光部)からの出射光の光度分布が変動することを抑制することができる。
【0019】
(11)上記投光器によれば、前記方向変更レンズの入射面は、前記仮想平面に対して平行であってもよい。本投光器によれば、発光部の出射光の照射範囲を変位させることができる。
【0020】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、投光器、方向変更レンズ、その方向変更レンズを備える測定装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態における測定装置10の構成を概略的に示すブロック図
図2】測定装置10における構成部品の配置関係を示す斜視図
図3】投光器20の照射範囲EL,ERと受光器30の受光範囲Vとの配置関係を概略的に示す説明図
図4】拡散レンズ80Lの出射面82と入射面84との傾斜度合いを示す説明図
図5】本実施形態の拡散レンズ80Rと比較例の拡散レンズ90との作用の違いを示す説明図
図6】第2実施形態における測定装置10aの投光器の一部の構成を概略的に示す説明図
図7】変形例における投光光学系24bの構成を概略的に示す説明図
図8】変形例における投光光学系24cの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施形態:
A-1.測定装置10の構成:
図1は、本第1実施形態における測定装置10の構成を概略的に示すブロック図である。なお、以下の説明において、同種の構成を区別する必要がある場合、構成を総称する符号の後に識別子(アルファベット等)を付すことがある。
【0023】
図1に示すように、測定装置10は、出射光L1(例えば光ビーム(レーザ光))を測定対象Wに照射する投光器20と、出射光L1が測定対象Wに反射して戻ってくる反射光L2(戻り光)を受光する受光器30とを備え、フラッシュLiDARとして機能する。測定装置10は、投光器20が出射光L1を発したタイミングと受光器30が反射光L2を受光したタイミングとの差(レーザ光の飛行時間 以下、「TOF」(Time of Flight)という)を測定して測定対象Wに関する情報を取得する。
【0024】
測定装置10は、例えば、ADやADASが実装される車両(図示しない)に搭載される。測定装置10は、例えば、車両の走行中において、人や他の車両等の物体の検出を補助するとともに、車両の運転者や車両の周囲に存在する者の安全確保、車両の運転中に周囲に存在する物体に与える損傷を低減するために有用な各種の情報を他の装置やユーザに提供する。
【0025】
投光器20は、発光部22と投光光学系24と投光制御装置26と電流源28とを有している。
【0026】
発光部22は、一つまたは複数の発光素子(図示しない)、もしくは一つまたは複数の発光素子アレイ(例えば、発光素子が線状(一次元的)や面状(二次元的)に配置されたもの)を有する発光源を含む。発光素子は、例えば、レーザダイオード、面発光タイプのレーザ発光素子(例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser 以下、「面発光素子」という)、複数の面発光素子が一次元的又は二次元的に基板(半導体基板、セラミック基板等)に配置された面発光素子アレイ(例えば、VCSELアレイ)等である。
【0027】
電流源28は、投光制御装置26から入力される制御信号に応じた電流を、発光部22を構成する発光素子に供給する。電流源28は、例えば、発光素子に流す電流をオンオフするための周期的な方形波の電流を発光素子に供給する。
【0028】
投光制御装置26は、電流源28の制御信号を生成して電流源28に入力することにより、電流源28から発光素子に供給される電流(駆動電流)を制御する。投光制御装置26は、発光素子が発光したタイミング(発光素子が光を発したタイミング。以下、「投光タイミング」という)を示す信号をTOF測定装置40に入力する。投光制御装置26は、例えば、発光素子に流す電流のオンオフを周期的に繰り返す制御を行うことにより、発光素子を周期的に繰り返し発光させる。
【0029】
投光光学系24は、例えば、発光部22が発した光に光学的な作用(屈折、散乱、回折等)を与えることにより出射光L1の配光を調節する。投光光学系24は、例えば、コリメートレンズ等の各種レンズ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。投光光学系24の詳細構成について後述する。
【0030】
受光器30は、受光部32と受光光学系34とを有している。
【0031】
受光光学系34は、投光器20からの出射光L1が測定対象W等で反射して戻ってくる反射光L2を受光部32に集光する。受光光学系34は、例えば、集光レンズ等の各種レンズ、波長フィルタ等の各種フィルタ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0032】
受光部32は、一つまたは複数の受光素子(図示しない)、もしくは一つまたは複数の受光素子アレイ(例えば、受光素子が線状(一次元的)や面状(二次元的)に配置されたもの)を有する受光源である。受光素子は、例えば、フォトダイオード、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)、バランス型光検出器等である。受光部32は、受光光学系34から入射する反射光L2を光電変換することにより、反射光L2の強度に応じた電流(以下、「受光電流」という)を生成する。受光部32は、受光部32を構成する受光素子が反射光L2を受光したタイミング(以下、「受光タイミング」という)を示す信号や、受光素子が生成した受光電流をTOF測定装置40に入力する。
【0033】
測定装置10は、さらに、TOF測定装置40とコントローラ42と通信I/F(Inter face)50とを備えている。
【0034】
TOF測定装置40は、投光制御装置26から入力される投光タイミングを示す信号と受光部32から入力される受光タイミングを示す信号とに基づきTOFを求める。TOF測定装置40は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)回路を搭載した時間測定IC(集積回路:Integrated Circuit)を有している。TOF測定装置40は、求めたTOFと受光部32から入力された受光電流とをコントローラ42に入力する。
【0035】
コントローラ42は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等)を有している。コントローラ42は、TOF測定装置40から入力される受光電流やTOFに基づき、測定対象Wの検出や測距等の各種測定に用いる情報を生成する。当該情報は、例えば、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Signal Photon Counting)で用いるヒストグラム(histogram)、測定対象Wの各点(ポイント)までの距離、ポイントクラウド(点群情報:point cloud)等である。また、コントローラ42は、投光制御装置26や受光部32を制御する。コントローラ42は、例えば、投光制御装置26や受光部32を制御することにより、ヒストグラムの生成にかかる処理が高速化もしくは最適化されるように、前述した投光タイミングや受光タイミングを制御する。コントローラ42によって生成された情報は、通信I/F50を介して当該情報を利用する装置(以下、「各種利用装置60」という)に提供(送信)される。
【0036】
各種利用装置60は、例えば、ポイントクラウドによる環境地図の作成、スキャンマッチングアルゴリズム(NDT(Normal Distributions Transform)、ICP(Iterative Closest Point)等)を用いた自己位置推定(SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))等を行う。
【0037】
A-2.測定装置10における構成部品の配置関係:
図2は、測定装置10における構成部品の配置関係を示す斜視図である。図2には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向といい、X軸正方向を右方向といい、X軸負方向を左方向といい、Y軸正方向を前方向といい、Y軸負方向を後方向というものとする。なお、後述の図3以降についても同様である。
【0038】
図2に示すように、発光部22は、左側発光部22Lと右側発光部22Rとを含んでいる。左側発光部22Lと右側発光部22Rとは、共通の回路基板44上において左右方向(X軸方向)に並べて配置されている。受光部32は、回路基板44上において、左側発光部22Lと右側発光部22Rとの間に配置されている。左側発光部22Lおよび右側発光部22Rは、特許請求の範囲における第1の発光部および第2の発光部の一例である。
【0039】
投光光学系24は、左側投光光学系24Lと右側投光光学系24Rとを含んでいる。左側投光光学系24Lは、左側発光部22Lの前方に配置されており、左側発光部22Lが発した光を透過させる。右側投光光学系24Rは、右側発光部22Rの前方に配置されており、右側発光部22Rが発した光を透過させる。なお、各投光光学系24L,24Rは、筒状のケース25に収容されている。左側投光光学系24Lおよび右側投光光学系24Rは、特許請求の範囲における第1の投光光学系および第2の投光光学系の一例である。
【0040】
受光光学系34は、受光部32の前方であり、かつ、左右方向において左側投光光学系24Lと右側投光光学系24Rとの間に配置されている。受光光学系34は、集光した光が受光部32に入射するように構成されている。なお、受光光学系34は、筒状のケース35に収容されている。測定装置10では、左側発光部22Lから左側投光光学系24Lを介して出射され、測定対象Wで反射した反射光L2と、右側発光部22Rから右側投光光学系24Rを介して出射され、測定対象Wで反射した反射光L2との両方が、受光光学系34を介して共通の受光部32に入光する。
【0041】
A-3.投光器20の照射範囲EL,ERと受光器30の受光範囲Vとの配置関係:
図3は、投光器20の照射範囲EL,ERと受光器30の受光範囲Vとの配置関係を概略的に示す説明図である。図3には、投光器20(発光部22)の照射範囲EL,ERが示されている。照射範囲EL,ERは、投光器20からの出射光L1が照射される測定対象W側の領域の範囲である。具体的には、左側照射範囲ELは、左側発光部22Lから左側投光光学系24Lを介して出射される出射光L1Lが照射される測定対象W側の領域の範囲であり、右側照射範囲ERは、右側発光部22Rから右側投光光学系24Rを介して出射される出射光L1Rが照射される測定対象W側の領域の範囲である。なお、照射範囲EL,ERは、例えば発光部22のサイズ(形状、大きさ、拡散度合い)や投光光学系24の焦点距離によって決まる。
【0042】
図3には、受光器30(受光部32)の受光範囲Vが示されている。受光範囲Vは、受光部32が、反射光L2を、受光光学系34を介して受光できる測定対象W側の領域の範囲である。なお、受光範囲Vは、例えば受光部32のサイズ(形状、大きさ、受光面積)や受光光学系34の焦点距離によって決まる。
【0043】
受光範囲Vのうち、照射範囲ELおよび右側照射範囲ERの少なくとも一方と重なる範囲が、測定装置10の測定範囲(視野範囲)である。すなわち、測定装置10の測定範囲は、投光器20からの出射光L1が照射され、測定対象W側で反射して戻ってくる反射光L2を受光部32が受光する測定対象W側の領域の範囲である。図3の例では、照射範囲ELと右側照射範囲ERとは、互いに重ならないように隣接しつつ受光範囲Vにそれぞれ重なるように設定されている。
【0044】
A-4.投光光学系24の詳細構成:
次に、投光光学系24の詳細構成について説明する。投光光学系24は、偏向光学系であり、コリメーションレンズ70と拡散レンズ80とを含んでいる。コリメーションレンズ70は、発光部22の前方に配置され、発光部22が発した光を平行光に変換して出力する。拡散レンズ80は、コリメーションレンズ70の前方に配置され、コリメーションレンズ70からの平行光を拡散光に変換して出力する。
【0045】
具体的には、図3に示すように、左側投光光学系24Lは、コリメーションレンズ70Lと拡散レンズ80Lとを含んでいる。コリメーションレンズ70Lは、左側発光部22Lの前方に配置され、拡散レンズ80Lは、コリメーションレンズ70Lの前方に配置されている。また、右側投光光学系24Rは、コリメーションレンズ70Rと拡散レンズ80Rとを含んでいる。コリメーションレンズ70Rは、右側発光部22Rの前方に配置され、拡散レンズ80Rは、コリメーションレンズ70Rの前方に配置されている。なお、コリメーションレンズ70と拡散レンズ80とは、例えば石英ガラスにより形成されている。
【0046】
拡散レンズ80は、拡散機能に加えて、コリメーションレンズ70からの平行光の入射方向(光軸C1に沿った方向)とは異なる方向(出射面82の中心軸C2に沿った方向)に向かう光であって、光度分布の変動が抑制された光を出力する機能を有する。拡散レンズ80は、特許請求の範囲における方向変更レンズの一例である。
【0047】
図4は、拡散レンズ80Lの出射面82と入射面84との傾斜度合いを示す説明図である。図3および図4に示すように、拡散レンズ80Lは、一般的な凹レンズ(後述の拡散レンズ90参照)とは異なり、入射面84が出射面82に対して傾斜している形状を有する。
【0048】
具体的には、拡散レンズ80Lの出射面82は、凹状曲面であり、測定対象W側に向けられる。図4に示すように、出射面82は、拡散レンズ80Lに入射する光の光軸C1Lに垂直な仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜している。なお、凹状曲面である出射面82の面方向は、凹状曲面の中心軸C2Lに垂直な面N(図4では出射面82の凹状曲面の中心位置での接線)の方向とする。すなわち、図4の例では、第1の角度θは、凹状曲面の中心軸C2Lに垂直な面Nと仮想平面Mとのなす角度である。なお、凹状曲面は、半球面状でもよいし、U字形の溝状でもよい。また、本明細書において、「AとBとが垂直である」ことは、AとBとのなす角度が90度であることだけでなく、AとBとのなす角度が90度±2度以内の角度範囲であることを含む。
【0049】
拡散レンズ80Lの入射面84は、平坦面であり、コリメーションレンズ70L(左側発光部22L)側に向けられる。入射面84は、仮想平面Mに対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜している。そして、第2の角度αは、第1の角度θよりも大きい。要するに、出射面82と入射面84とは、いずれも、仮想平面Mに対して同じ方向(左側 図3および図4で紙面反時計回り方向)に傾いており、かつ、入射面84は、出射面82よりも仮想平面Mに対して大きく傾いている。入射面84は、出射面82に対して第3の角度(=α-θ)だけ傾いている。
【0050】
図3に示すように、拡散レンズ80Rも、拡散レンズ80Lと同様に、入射面84が出射面82に対して傾斜している形状を有する。拡散レンズ80Rでは、出射面82と入射面84とは、いずれも、仮想平面Mに対して同じ方向(右側 図3で紙面時計回り方向)に傾いており、かつ、入射面84は、出射面82よりも仮想平面Mに対して大きく傾いている。
【0051】
さらに、第1の角度θと第2の角度αと拡散レンズ80の屈折率nとは、次の関係式が成り立つ。
sinα=n×sin(α-θ)
【0052】
図5は、本実施形態の拡散レンズ80Lと比較例の拡散レンズ90,90Aとの作用の違いを示す説明図である。図5には、拡散レンズ80Lが実線で示されており、拡散レンズ90,90Aが点線と二点鎖線とで示されている。拡散レンズ90,90Aは、一般的な拡散レンズ(凹レンズ)であり、出射面82と入射面94とが互いに平行である。なお、本明細書において、「AとBとが平行である」ことは、AとBとのなす角度が0度であることだけでなく、AとBとのなす角度が0度±2度以内の角度範囲であることを含む。
【0053】
まず、二点鎖線で示された比較例1の拡散レンズ90は、その出射面82と入射面94とがいずれも仮想平面Mに平行になるように配置されている。具体的には、比較例1の拡散レンズ90の中心軸は、該比較例1の拡散レンズ90に入射する光の光軸C1L(コリメーションレンズ70Lの中心軸)上に位置している。この場合、図5の左下に示すように、比較例1の拡散レンズ90は、コリメーションレンズ70Lからの平行光の入射方向(光軸C1Lに沿った方向)と同じ方向に向けて出射光L3を出力する。この出射光L3は、比較例1の拡散レンズ90の出射面82の中心軸C3(拡散レンズ90の中心軸)に対して左右の光度分布が互いに均等な拡散光である。但し、例えば図3の構成において、比較例1の拡散レンズ90を、拡散レンズ80Lの代わりに使用すると、左側照射範囲ELが右側に寄るため、左側照射範囲ELと右側照射範囲ERとを図3に示すような所望の位置に配置することができない。すなわち、受光範囲V内において、左側照射範囲ELの左右方向の中心位置OLが右側に寄る。
【0054】
次に、点線で示された比較例2の拡散レンズ90Aは、比較例1の拡散レンズ90と同一形状であり、比較例1の拡散レンズ90を、仮想平面Mに対して左側に傾斜するように配置したものである。すなわち、比較例2の拡散レンズ90Aでは、その出射面82と入射面94とがいずれも仮想平面Mに対して同じ角度(第1の角度θ)だけ傾斜している。具体的には、比較例2の拡散レンズ90Aの中心軸は、該比較例2の拡散レンズ90Aに入射する光の光軸C1Lに対して第1の角度θだけ傾斜している。
【0055】
この場合、図5の中央下に示すように、比較例2の拡散レンズ90Aは、コリメーションレンズ70Lからの平行光の入射方向(光軸C1Lに沿った方向)に対して第1の角度θだけ左側に傾斜した方向に向けて出射光L4を出力する。但し、この出射光L4は、比較例2の拡散レンズ90Aの出射面82の中心軸C3(比較例2の拡散レンズ90Aの中心軸)に対して光度分布が左右方向の一方側に偏った拡散光になる。その要因としては、比較例2の拡散レンズ90Aを、仮想平面Mに対して傾斜するように配置したことにより、入射面94に入射した光が出射面82に入射する角度が、比較例1の拡散レンズ90の場合に比べて大きく異なることが挙げられる。そのため、左側照射範囲ELと右側照射範囲ERとを図3に示すような所望の位置に配置できたとしても、左側照射範囲ELにおける光度分布が左右方向の一方側に偏るため、測定装置10の測定精度が低下するおそれがある。
【0056】
これに対して、本実施形態の拡散レンズ80Lは、比較例2の拡散レンズ90Aの入射面94側に加工を施したものである。すなわち、拡散レンズ80Lでは、上述したように、その出射面82は、仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜し、入射面84は、仮想平面Mに対して、さらに大きい第2の角度αだけ傾斜している。このため、図5の右下に示すように、拡散レンズ80Lでは、入射面94に入射した光が出射面82に入射する角度が、比較例2の拡散レンズ90Aの場合に比べて、比較例1の拡散レンズ90の場合に近い。このため、拡散レンズ80Lからの出射光L1Lは、上記出射光L4に比べて、拡散レンズ80Lの出射面82の中心軸C2に対して光度分布の左右方向の偏りが抑制された拡散光になる。そのため、測定装置10の測定精度の低下を抑制しつつ、左側照射範囲ELと右側照射範囲ERとを図3に示すような所望の位置に配置することができる。
【0057】
また、本実施形態では、投光器20全体ではなく、投光光学系24を構成する拡散レンズ80だけを傾斜して配置する構成であるため、測定装置10全体の大型化を抑制することができる。また、図2に示すように、右側発光部22Rと左側発光部22Lとは、共通の回路基板44に配置されているため、両者の位置関係や両者からの発光方向の変更が不可能である。このような制約下において、拡散レンズ80を利用することにより、測定装置10の測定精度の低下を抑制しつつ、投光器20からの出射光L1の照射範囲Eを変位させることができる。
【0058】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の測定装置10は、発光部22と、発光部22が発した光が透過する投光光学系24と、投光光学系24を透過し、測定対象Wにて反射した光を受光する受光部32と、を備える(図1および図2参照)。投光光学系24は、拡散レンズ80を含んでいる。拡散レンズ80の出射面82は、拡散レンズ80に入射する光の光軸C1に垂直な仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜している(図4参照)。拡散レンズ80の入射面84は、仮想平面Mに対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜している。
【0059】
本実施形態によれば、発光部22の出射光L1の光度分布の変動を抑制しつつ、その出射光L1の照射範囲Eを変位させることができる(図3参照)。すなわち、本実施形態では、拡散レンズ80の出射面82が仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜している。このため、拡散レンズ80の出射面82が仮想平面Mに平行な構成(図5の左下図参照)に対して、発光部22から投光光学系24を介して出射される出射光L1の照射範囲Eを変位させることができる。また、拡散レンズ80の入射面84は、仮想平面Mに対して第2の角度α(>第1の角度θ)だけ傾斜している。このため、拡散レンズ80の入射面84が仮想平面Mに平行な構成(図5の中央下図参照)に対して、出射面82の傾斜に起因して投光光学系24(発光部22)からの出射光L1の光度分布が変動することを抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、第1の角度θと第2の角度αと拡散レンズ80の屈折率nとは、上記関係式(sinα=n×sin(α-θ))が成り立つ。この場合、拡散レンズ80Lでは、入射面94に入射した光が出射面82に入射する角度を、比較例1の拡散レンズ90の場合に一致させることができる(図5参照)。このため、本実施形態によれば、発光部22からの出射光L1の光度分布の変動を、より効果的に抑制しつつ、その出射光L1の照射範囲Eを変位させることができる。
【0061】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態における測定装置10aの投光器の一部の構成を概略的に示す説明図である。図6には、測定装置10aの投光器のうち、発光部22aと投光光学系24aとが示されている。以下では、第2実施形態の測定装置10aの構成のうち、上述した第1実施形態の測定装置10と同一の構成については、その説明を適宜省略する。
【0062】
発光部22aは、左側発光部22aLと右側発光部22aRとを含んでいる。投光光学系24aは、左側投光光学系24aLと右側投光光学系24aRとを含んでいる。右側投光光学系24aRは、右側発光部22aRの前方に配置されている。右側投光光学系24aRは、コリメーションレンズであり、右側発光部22aRが発した光を平行光に変換して出力する。具体的には、右側投光光学系24aRの出射面82aRは、平坦面であり、入射面84は、凸状曲面である。出射面82aRと入射面84aRとは、いずれも、右側投光光学系24aRに入射する光の光軸C1aRに垂直な仮想平面MRに平行である。なお、凸状曲面である入射面84aRの面方向は、凸状曲面の中心軸に垂直な面NR(図6では出射面82aLの凸状曲面の中心位置での接線)の方向とする。従って、右側投光光学系24aRは、光軸C1aRと同じ方向に向けて出射光L1aRを出力する。なお、凸状曲面は、半球面状でもよいし、半円筒状でもよい。
【0063】
左側投光光学系24aLは、左側発光部22aLの斜め左側前方に配置されている。左側投光光学系24aLは、コリメーション機能に加えて、左側発光部22aLからの光の入射方向(光軸C1aLに沿った方向)とは異なる方向に向かう光であって、光度分布の変動が抑制された出射光L1aLを出力する機能を有する。左側投光光学系24aLは、特許請求の範囲における方向変更レンズの一例である。
【0064】
具体的には、左側投光光学系24aLの出射面82aLは、平坦面である。出射面82aLは、光軸C1aLに垂直な仮想平面MLに対して第1の角度θだけ傾斜している。入射面84aLは、凸状曲面である。入射面84aLは、仮想平面MLに対して第2の角度αだけ傾斜している。なお、凸状曲面である入射面84aLの面方向は、凸状曲面の中心軸に垂直な面NL(図6では出射面82aLの凸状曲面の中心位置での接線)の方向とする。そして、第2の角度αは、第1の角度θよりも大きい。要するに、出射面82aLと入射面84aLとは、いずれも、仮想平面MLに対して同じ方向(右側 図6で紙面時計回り方向)に傾いており、かつ、入射面84aLは、出射面82aLよりも仮想平面MLに対して大きく傾いている。
【0065】
このような構成によれば、左側投光光学系24aLを利用することにより、左側発光部22aLと右側発光部22aRとの離間距離を短くしつつ、左側投光光学系24aLからの出射光L1aLの照射範囲と、右側投光光学系24aRからの出射光L1aRの照射範囲とを離間させることができる。しかも、左側投光光学系24aLからの出射光L1aLは、右側投光光学系24aRからの出射光L1aRと同様に、照射範囲における光度分布の左右方向の偏りが抑制された拡散光になる。
【0066】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
上記実施形態における測定装置10,10aの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、投光光学系24は、コリメーションレンズ70と拡散レンズ80とを含んでいるが、コリメーションレンズ70を含まない構成や、他の種類のレンズ(集光レンズ等)を更に含む構成でもよい。上記実施形態では、方向変更レンズとして、拡散レンズ80(凹レンズ)や左側投光光学系24aL(凸レンズ)を例示したが、これらとは異なる種類のレンズ(両側凸レンズ、両側凹レンズなど)に本発明を適用してもよい。
【0068】
図7は、変形例における投光光学系24bの構成を概略的に示す説明図である。図7に示す投光光学系24bは、上記第1実施形態におけるコリメーションレンズ70Lと拡散レンズ80Lとを一体化させた構成である。具体的には、拡散レンズ80Lの入射面84に、コリメーションレンズ70Lの平坦面を結合させた構成である。このような投光光学系24によれば、一体のレンズ体により、コリメーション機能と、拡散機能と、左側発光部22Lからの光の入射方向(光軸C1Lに沿った方向)とは異なる方向(出射面82の中心軸C2Lに沿った方向)に向かう光であって、光度分布の変動が抑制された光を出力する機能とを兼ねることができる。
【0069】
上記実施形態では、第1の角度θと第2の角度αと拡散レンズ80の屈折率nとは、上記関係式(sinα=n×sin(α-θ))が成り立つとしたが、当該関係式が成り立たなくても、出射面と入射面とが、いずれも、仮想平面に対して同じ方向に傾いており、かつ、入射面が、出射面よりも仮想平面に対して大きく傾いている光学系を用いれば、本発明の課題を解決することができる。
【0070】
上記実施形態では、測定装置10は、拡散レンズ80を利用して、照射範囲ELと右側照射範囲ERとが互いに重ならないように設定された構成であったが、照射範囲ELと右側照射範囲ERとが、方向変更レンズを利用して、一部または全部重なるように設定された構成でもよい。このように、本発明によれば、2つの発光部の配置関係に制約されることなく、照射範囲ELと右側照射範囲ERとを所望の位置関係に設定することができる。
【0071】
図8は、変形例における投光光学系24cの構成を概略的に示す説明図である。図8に示す投光光学系24cでは、上記第1実施形態の投光光学系24に対して、拡散レンズ100の形状が異なる。すなわち、本変形例の拡散レンズ100の出射面102は、拡散レンズ100に入射する光L0の光軸C1に垂直な仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜している。一方、拡散レンズ100の入射面104は、仮想平面Mに平行である。拡散レンズ100は、特許請求の範囲における方向変更レンズの一例である。投光光学系24cは、例えば、上記実施形態の図3の構成に対して、右側投光光学系24Rの代わりに使用される。また、投光光学系24cを左右方向(図8のX軸方向)で反転させて投光光学系が、左側投光光学系24Lの代わりに使用される。
【0072】
具体的には、上述したように、拡散レンズ100の出射面102は、仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜している。出射面102は、凹状曲面であり、より具体的には、次の式1を満たす非球面である。
【数1】
ρ:曲率 r:曲率半径 x:レンズ座標 k:円錐係数(コーニック係数)
【0073】
凹状曲面である出射面102の面方向は、凹状曲面の中心軸C2に垂直な面N(図8では出射面102の凹状曲面の中心位置での接線)に沿った方向とする。すなわち、図8の例では、第1の角度θは、凹状曲面の中心軸C2に垂直な面Nと仮想平面Mとのなす角度である。上記式1の第2項中の係数αの値が、第1の角度θに相関する。具体的には、係数αの値が大きいほど、第1の角度θが大きくなり、その第1の角度θに応じて、後述の偏向角Φが変位する。このため、拡散レンズ100の設計段階において、係数αの値を調整することにより、第1の角度θ、さらには、偏向角Φを決定することができる。
【0074】
拡散レンズ100の入射面104は、平坦面であり、かつ、仮想平面Mに対して平行である。
【0075】
さらに、第1の角度θと偏向角Φと拡散レンズ100の屈折率nとは、次の関係式が成り立つ。
n×sinθ=sin(θ+Φ)
偏向角Φは、コリメーションレンズ70からの平行光の入射方向(入射する光L0の光軸C1)に対する、出射面102からの出射光L1の光軸O1の相対角度である。この関係式により、偏向角Φとするための第1の角度θは、次の関係式から得ることができる。
tanθ=sinΦ/(n-cosΦ)
【0076】
拡散レンズ100では、出射面102のうち、接線の傾き(第1の角度θ)が最小(θmin)となる部位について、第1の角度θとΦと配光の拡散角δとの間に次の関係式が成り立つ。
tanθmin=sin(Φ-δ)/(n-cos(Φ-δ))
【0077】
拡散レンズ100では、出射面102のうち、接線の傾き(第1の角度θ)が最大(θmax)となる部位について、第1の角度θと偏向角Φと配光の拡散角δとの間に次の関係式が成り立つ。
tanθmax=sin(Φ+δ)/(n-cos(Φ+δ))
【0078】
以上のように、本変形例の投光光学系24cは、拡散レンズ100に入射する光L0の光軸C1に対して配光の偏向が可能である偏向光学系である。すなわち、拡散レンズ100は、入射面104が光軸C1に垂直な仮想平面Mに平行であり、かつ、出射面102が仮想平面Mに対して第1の角度θだけ傾斜するように配置される。出射面102からの出射光L1の光軸O1は、入射する光L0の光軸C1に対して偏向角Φだけ傾斜する。なお、この偏向角の傾斜方向と、入射面104に対する出射面102の傾斜方向とは互いに逆向きである。拡散レンズ100は、入射面104に垂直に入射する光L0を、光軸が偏向角Φだけ偏向された出射光L1に変換する。
【0079】
図8中の符号Qaは、例えば拡散レンズ100の代わりに非偏向の拡散レンズ(図示しない)を配置したときの照射範囲Eaの配光中心である。非偏向の拡散レンズは、例えば入射面と出射面との両方が仮想平面Mに平行な光学系である。図8中の符号Qは、拡散レンズ100を配置したときの照射範囲Eの配光中心である。拡散レンズ100により、照射範囲(配光)を変位させることができる。出射面102は、非球面に限らず、例えば球面でも平坦面でも凸面でもよい。入射面104は、凸面でも凹面でもよい。
【0080】
上記実施形態では、発光部および投光光学系は、2組であったが、1組でもよいし、3組以上でもよい。また、上記実施形態では、受光部は、1つであったが、複数でもよい。また、受光器は、受光光学系を有しない構成でもよい。
【0081】
上記実施形態において、各部材の形成材料は、あくまで一例であり、他の材料により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10,10a:測定装置 20:投光器 22:発光部 22a:発光部 24,24a,24b:投光光学系 25,35:ケース 26:投光制御装置 28:電流源 30:受光器 32:受光部 34:受光光学系 40:TOF測定装置 42:コントローラ 44:回路基板 50:通信I/F 60:利用装置 70:コリメーションレンズ 80:拡散レンズ 82:出射面 84,94:入射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8