(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155729
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241024BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20241024BHJP
C04B 35/49 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/12 450
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
C04B35/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017937
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】10-2023-0051569
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0118903
(32)【優先日】2023-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム、ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、バエ ソーン
(72)【発明者】
【氏名】カン、スン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】バエ、セ ナ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ヒエ ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン エオン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE04
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】CSZTを誘電体層の主成分として含む積層型電子部品への誘電特性を向上させ、CSZTを誘電体層の主成分として含む積層型電子部品の耐電圧特性、温度-容量特性などの信頼性を向上させる。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分及びマンガン(Mn)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)を含む副成分を含み、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒及び隣接した誘電体結晶粒の間に配置された結晶粒界を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも一部はコア-シェル構造を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層を挟んで交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分及びマンガン(Mn)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)を含む副成分を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒及び隣接した誘電体結晶粒の間に配置された結晶粒界を含み、前記複数の誘電体結晶粒の少なくとも一部はコア-シェル構造を有し、
前記コア-シェル構造において、前記コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して前記コアに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYc、前記コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して前記シェルに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYsとするとき、
Ys/Yc>9を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記結晶粒界の少なくとも一部には二次相が配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層のうち前記二次相が占める面積分率は、2.27%以上2.57%以下である、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層は前記二次相を複数個含み、前記複数個の二次相の平均面積は0.104μm2以上0.170μm2以下である、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記二次相は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)を含む、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記二次相が形成された領域を除いた領域に含まれるケイ素(Si)の含有量は、酸素(O)を除いた全体元素の総含有量に対して0.05at%以下である、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体結晶粒に含まれるマンガン(Mn)の含有量は、前記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.68モル以上2.83モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体結晶粒に含まれるイットリウム(Y)の含有量は、前記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.26モル以上3.33モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記コアの平均大きさに対する前記コア及びシェルの平均大きさの割合は、2以上2.57以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体結晶粒の平均粒径は444nm以上506nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)のうち1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層は、ハフニウム(Hf)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)及びバナジウム(V)のうち1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話、インフォテインメントシステム、自動車システムなどの様々な電子及び自動車製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、要求される特性に応じて、CaZrO3基盤の常誘電性(Ca1-xSrx)(Zr1-yTiy)O3(CSZT)を誘電体層の主成分として用いる温度補償型Class I及び(ABO3)結晶構造を有する強誘電性BaTiO3(BT)を誘電体層の主成分として用いて高誘電率特性を有するClass IIに分類されることができる。
【0004】
電子製品の小型化、スリム化、多機能化により、チップ部品も小型化が求められており、電子部品の実装も高集積化されている。また、電子製品を自動車システムに適用する場合、高熱及び振動に晒されるため、さらに高い信頼性が要求されることがある。
【0005】
このように、様々な目的に適した積層セラミックキャパシタの電気的特性及び信頼性を向上させることができる方案が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の様々な目的の一つは、CSZTを誘電体層の主成分として含む積層型電子部品への誘電特性を向上させることである。
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、CSZTを誘電体層の主成分として含む積層型電子部品の耐電圧特性、温度-容量特性などの信頼性を向上させることである。
【0008】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分及びマンガン(Mn)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)を含む副成分を含み、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒及び隣接した誘電体結晶粒の間に配置された結晶粒界を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも一部はコア-シェル構造を有し、上記コア-シェル構造において上記コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して上記コアに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYc、上記コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して上記シェルに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYsとするとき、Ys/Yc>9を満たすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果の一つは、CSZTを誘電体層の主成分として含む積層型電子部品において、誘電体層の微細構造または組成を制御することにより、積層型電子部品の誘電特性を向上させることである。
【0011】
本発明の様々な効果の一つは、CSZTを誘電体層の主成分として含む積層型電子部品において、誘電体層の微細構造または組成を制御することにより、積層型電子部品の耐電圧特性、温度-容量特性などの信頼性を向上させることである。
【0012】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】一実施形態による内部電極、誘電体層及びカバー部が配置された構造を表す分解斜視図である。
【
図6a】一実施形態による添加剤の含有量によるコア-シェル平均大きさの変化を示したグラフである。
【
図6b】一実施形態による添加剤の含有量によるコア-シェル平均大きさの変化を示したグラフである。
【
図6c】一実施形態による添加剤の含有量によるコア-シェル平均大きさの変化を示したグラフである。
【
図7a】一実施形態による添加剤の含有量による誘電定数、静電容量及び品質係数の変化を示したグラフである。
【
図7b】一実施形態による添加剤の含有量による誘電定数、静電容量及び品質係数の変化を示したグラフである。
【
図7c】一実施形態による添加剤の含有量による誘電定数、静電容量及び品質係数の変化を示したグラフである。
【
図8】一実施形態による添加剤の含有量による温度-容量特性の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0015】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は、誘電体層を挟んで第1及び第2内部電極が交互に配置される方向または厚さ(T)方向、上記第1方向と垂直な方向である第2方向及び第3方向のうち、上記第2方向は長さ(L)方向、上記第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図であり、
図4は、一実施形態による内部電極、誘電体層及びカバー部が配置された構造を表す分解斜視図であり、
図5は、
図3のP領域拡大図であり、
図6の(a)、(b)及び(c)は、一実施形態による添加剤の含有量によるコア-シェル平均大きさの変化を示したグラフであり、
図7の(a)、(b)及び(c)は、一実施形態による添加剤の含有量による誘電定数、静電容量及び品質係数の変化を示したグラフであり、
図8は、一実施形態による添加剤の含有量による温度-容量特性の変化を示したグラフである。
【0018】
以下では、
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品及びこの多様な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分及びマンガン(Mn)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)を含む副成分を含み、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒20及び隣接した誘電体結晶粒との間に配置された結晶粒界30を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも一部はコア-シェル構造を有し、上記コア-シェル構造において、上記コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して上記コアに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYc、上記コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して上記シェルに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYsとするとき、Ys/Yc>9を満たすことができる。
【0020】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置される外部電極131、132と、を含む。
【0021】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、
図1~
図3に示したように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程において本体110に含まれたセラミック材料の収縮により、本体110は完全な直線のエッジを有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0022】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5及び第6面5、6を含むことができる。
【0023】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0024】
誘電体層111を形成する原料は、その目的に応じて多様であることができる。具体的には、高い単位体積当たりの静電容量の達成を主目的として強誘電性BaTiO3を材料とすることができ、高温環境での信頼性向上を主目的として常誘電性CaZrO3を材料として用いることができる。BaTiO3基盤の材料の例示としては、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられ、CaZrO3基板の材料の例示としては、(Ca1-xSrx)(Zr1-yTiy)O3(0<x<1、0<y<1)が挙げられる。
【0025】
一方、本発明の一実施形態及びこの様々な実施形態では、CaZrO3基盤の材料を用いて誘電体層111を形成する場合、最適な品質係数(Q、Quality factor)、静電容量、BDV特性及び容量-温度特性を確保するための様々な例示について説明する。すなわち、本発明の一実施形態による誘電体層111は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分を含む。
【0026】
誘電体層111の平均厚さtdは特に制限されない。
【0027】
積層型電子部品100の小型化及び高容量化を目的とする場合、焼成後の誘電体層111の平均厚さtdは2.5μm以下であることができ、積層型電子部品100の高温高圧下での信頼性を向上させるために焼成後の誘電体層111の平均厚さtdは3.0μm以上であり得る。
【0028】
誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0029】
内部電極の厚さteと同様に、誘電体層111の平均厚さtdも本体110の第3及び第1方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0030】
例えば、誘電体層111の平均厚さtdは、上記本体110の幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された誘電体層のうち、本体の長さ方向の中央線と厚さ方向の中央線が会う地点の誘電体層の1層を基準として上部に2層と下部に2層の合計5層の誘電体層について、上記本体の長さ方向の中央線と厚さ方向の中央線が会う地点を基準として、上記基準点1つを中心に左側に2つ及び右側に2つの5つの地点を等間隔に定めた後、各地点の厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0031】
内部電極121、122は、誘電体層111を挟んで交互に配置される。
【0032】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4でそれぞれ露出することができる。
【0033】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0034】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0035】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0036】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。
【0037】
上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0038】
内部電極121、122の平均厚さteは特に制限されず、目的に応じて異なることができる。積層型電子部品100の小型化のために、内部電極121、122の平均厚さteは0.1μm以上2.5μm以下であることができ、積層型電子部品100の高温高圧下での信頼性を向上させるために内部電極121、122の平均厚さteは、0.1μm以上2.5μm以下または0.1以上5.0μm以下であることができる。
【0039】
内部電極121、122の平均厚さteは、上記本体110の幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された内部電極層のうち、本体の長さ方向の中央線と厚さ方向の中央線が会う地点の内部電極層の1層を基準として上部に2層と下部に2層の合計5層の内部電極層について、上記本体の長さ方向の中央線と厚さ方向の中央線が会う地点を基準として、上記基準点1つを中心に左側に2つ及び右側に2つの5つの地点を等間隔で定めた後、各地点の厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0040】
一方、
図2を参照すると、本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0041】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0042】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0043】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0044】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に制限されない。積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下の値を有することができる。
【0045】
カバー部112、113の平均厚さtcは第1方向の大きさを意味することができ、容量形成部Acの上部または下部で等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0046】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0047】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と第5面5に配置されたマージン部115を含む。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0048】
マージン部114、115は、
図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0049】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0050】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであることができる。
【0051】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0052】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であることができる。
【0053】
マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均大きさを意味することができ、容量形成部Acの側面で等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0054】
本体110上には外部電極131、132が配置される。
【0055】
外部電極131、132は本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0056】
図2に示された形態のように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0057】
本実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0058】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0059】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に形成されためっき層を含むことができる。
【0060】
電極層に対するより具体的な例を挙げると、電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0061】
また、電極層は、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層は、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0062】
電極層に含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0063】
めっき層は、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0064】
めっき層に対するより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0065】
一実施形態において、CaZrO3基盤の材料を含む主成分の以外に、添加剤を添加して誘電体層111を形成することができる。具体的には、上記添加剤は、焼成前の基準CaZrO3 100モル、Mn3O2:0.98モル(CaZrO3 100モルに対して)、Y2O3:1.225モル(CaZrO3 100モルに対して)、SiO2:1.47モル(CaZrO3 100モルに対して)の組成比からなることができるが、これに制限されるものではない。上記添加剤は、本体110及び外部電極131、132の焼成後にはその組成比が変わることができ、焼成後の誘電体層111はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分及びマンガン(Mn)、イットリウム(Y)、及びケイ素(Si)を含む副成分を含むことができる。
【0066】
マンガン(Mn)は誘電体層111において、酸素空孔の移動を抑制する役割を果たすことができ、イットリウム(Y)はABO3構造のA-siteにドナーとして作用して酸素空孔の集中を減少させる役割を果たすことができ、シリコン(Si)は、誘電体層111の焼結温度を低下させ、誘電体層111に含まれる他の元素のうち1つ以上と反応して焼結性を促進させる役割を果たすことができる。
【0067】
本発明の一実施形態では、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分を含む誘電体層111が、マンガン(Mn)、イットリウム(Y)、及びケイ素(Si)を含む副成分をさらに含むようにすることで、誘電体層111の酸素空孔の移動及び集中を抑制して絶縁抵抗を向上させることができ、これにより積層型電子部品100の信頼性を向上させることができる。
【0068】
このとき、一実施形態では、誘電体結晶粒20に含まれるマンガン(Mn)の含有量は上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.68モル以上2.83モル以下であることができる。
【0069】
また、一実施形態では、誘電体結晶粒20に含まれるマンガン(Mn)の含有量は上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.68モル以上2.83モル以下であることができる。
【0070】
また、一実施形態では、誘電体結晶粒20に含まれるイットリウム(Y)の含有量は上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.26モル以上3.33モル以下であることができる。
【0071】
このように、誘電体結晶粒に含まれる副成分の含有量を適宜調節することにより誘電体層111の酸素空孔の移動及び集中を抑制して絶縁抵抗を向上させ、低い焼成温度でも高い焼結密度を実現することで積層型電子部品100の品質係数(Q、Quality factor)及び容量の温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)の低下を最小化すると同時に、絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)を向上させることができる。
【0072】
但し、誘電体層111に含まれる成分が上記主成分及び副成分に限定されるものではない。誘電体層111は、焼結特性を向上させるためにアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びこれらの酸化物のうち1つ以上をさらに含むことができ、信頼性をさらに向上させるためにハフニウム(Hf)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)、バナジウム(V)及びこれらの酸化物のうち1つ以上をさらに含むことができる。
【0073】
一方、本発明の誘電体層111の微細構造によって静電容量特性、信頼性及び温度-容量特性が変わることができ、このような誘電体層111の微細構造は上述した添加剤の濃度によって変わることができる。但し、添加剤の濃度を変化させることが後述する誘電体層111の微細構造を制御する唯一の手段ではないことができ、焼成温度、雰囲気などの様々な手段を介して誘電体層111の微細構造を制御することができる。以下では、一実施形態による誘電体層111の様々な微細構造について詳細に説明する。
【0074】
図5を参照すると、本発明の一実施形態において、誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒20及び隣接した誘電体結晶粒20の間に配置された結晶粒界30を含み、複数の誘電体結晶粒20の少なくとも一部は、コア21-シェル22構造を有することができる。
【0075】
マンガン(Mn)、イットリウム(Y)、及びケイ素(Si)を含む副成分の平均含有量は、コア21よりもシェル22でさらに高いことができる。
【0076】
コア21とシェル22を区分する基準は以下のとおりであり得る。誘電体結晶粒20の中心点を通る直線に沿ってLine-profileしたとき、特定元素の含有量が誘電体結晶粒20の内部の任意の地点で急激な変化が発生する可能性があるが、急激な変化が発生する領域の中心を基準として、上記特定元素の含有量が少ない領域をコア21と定義し、上記特定元素の含有量が多い領域をシェル22と定義することができる。
【0077】
本発明の一実施形態では、コア21及びシェル22をイットリウム(Y)の含有量を基準として定義することができる。具体的には、コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して上記コアに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYc、コア及びシェルに含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して上記シェルに含まれるイットリウム(Y)の含有量をYsとするとき、Ys/Yc>9を満たすことができる。一方、イットリウム(Y)が実質的にシェルにのみ含まれることができるため、Ys/Ycの上限値は特に制限されない。
【0078】
一方、コア21及びシェル22が誘電体結晶粒20で占める比重によって、積層型電子部品100の静電容量及び品質係数(Q、Quality factor)が変わることができる。後述する実験例による結果、適切な誘電定数、静電容量及び品質係数(Q、Quality factor)を確保することができるコア21の平均大きさに対するコア21及びシェル22の平均大きさの割合が2以上2.57以下の区間に該当することができる。すなわち、一実施形態では、コア21の平均大きさに対するコア21及びシェル22の平均大きさの割合を2以上2.57に調節することにより、積層型電子部品100の容量特性及び品質係数(Q、Quality factor)を向上させることができる。
【0079】
一方、コア21の平均大きさは、コア21の短軸と長軸を加えた値を2で割った値を意味することができ、コア21及びシェル22の平均大きさはコア21及びシェル22の短軸と長軸を加えた値を2で割った値を意味することができる。なお、コア21及びシェル22の平均大きさは誘電体結晶粒20の平均大きさを意味することができ、誘電体結晶粒20の短軸と長軸を加えた値を2で割った値を意味することができる。
【0080】
コア21の平均大きさに対するコア21及びシェル22の平均大きさの割合を測定する一例示として、積層型電子部品100の第2方向の中心まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、容量形成部の中央部に位置した誘電体層111の2.68μm×2.68μm領域をTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive Spectroscopy)分析により組成を分析して、Yの含有量が急激に変化する地点をコア21とシェル22の境界とし、コア21の短軸と長軸、コア21及びシェル22の短軸と長軸を測定する方法が挙げられる。
【0081】
一実施形態において、結晶粒界30の少なくとも一部には、二次相40が配置されることができる。結晶粒界30の少なくとも一部に二次相40が配置される場合、誘電体層111の絶縁抵抗を向上させることができ、これにより、積層型電子部品100の絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)が向上することができる。
【0082】
二次相40に含まれる元素の種類は、誘電体層111の成分、焼成温度などの条件によって変わることができる。一実施形態において、上記二次相40は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、及びシリコン(Si)を含むことができ、これによって積層型電子部品100の絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)はさらに向上することができる。
【0083】
一方、ケイ素(Si)は実質的に二次相40にのみ含まれることができ、二次相40が形成された領域を除いた結晶粒界30及び結晶粒20には実質的にケイ素(Si)が含まれないことができる。但し、測定方法によって二次相40が形成された領域を除いた結晶粒界30及び結晶粒20にSi元素の含有量がノイズレベルで測定されることができる。例えば、上記二次相が形成された領域を除いた領域に含まれるケイ素(Si)の含有量は、酸素(O)を除いた全体元素の総含有量に対して0.05at%以下であることができる。
【0084】
一方、誘電体層111の中から二次相40が占める比重が向上するほど、品質係数(Q、Quality factor)及び容量の温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)が低下することがある。具体的には、誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率が増加するほど、絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)が向上することができるが、3%を超過する場合、品質係数(Q、Quality factor)及び容量の温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)が低下する可能性がある。したがって、一実施形態において、誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率は3%以下であることができ、より好ましくは2.57%以下であることが好ましい。
【0085】
誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率の下限は、特に制限されないが、十分な絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)の向上効果を得るために誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率は2.27%以上であることが好ましい。
【0086】
すなわち、一実施形態において、誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率は2.27%以上2.57%以下であることができ、これにより積層型電子部品100の品質係数(Q、Quality factor)及び容量の温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)の低下を最小化すると同時に、絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)を向上させることができる。
【0087】
誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率の他にも、二次相40の平均面積も積層型電子部品100の品質係数(Q、Quality factor)、容量の温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)及び絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)の特性を変化させる原因となる可能性がある。すなわち、一実施形態において、誘電体層111は二次相40を複数個含むことができ、複数個の二次相40の平均面積は0.104μm2以上0.170μm2であり得る。これにより、積層型電子部品100の品質係数(Q、Quality factor)及び容量の温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)の低下を最小化すると同時に、絶縁破壊電圧(BDV、Break Down Voltage)を向上させることができる。
【0088】
上述した誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率及び複数個の二次相40の平均面積を測定する一例示として、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、容量形成部の中心部に位置した誘電体層の10.82μm×10.82μm領域をTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive Spectroscopy)を介してケイ素(Si)元素をmappingした後、イメージ分析プログラム(ImageJ)で各領域の面積を算出する方法が挙げられる。このとき、誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率は、測定されたイメージ全体面積に対する二次相40が形成された領域の割合で計算されることができ、複数個の二次相40の平均面積は、任意の5つ以上の二次相40の面積を計算した平均値を意味することができる。
【0089】
本発明の一実施形態のように、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を含む主成分を含む誘電体層111を含む積層型電子部品100の場合、誘電体層111の誘電率は、誘電体結晶粒の平均粒径よりは焼結密度にさらに大きな影響を受ける。すなわち、誘電体結晶粒20の平均粒径を過度に調節することなく、低い焼成温度で高い焼結密度の実現が可能であり、これにより誘電率を向上させることができる。具体的には、一実施形態において、誘電体結晶粒20の平均粒径は、444nm以上506nm以下であることができる。
【0090】
以下では、CaZrO3 100モルを基準として、Mn3O2:0.980モル、Y2O3:1.225モル、SiO2:1.470モル添加した場合を「添加剤100%」と定義し、添加剤の量を異ならせて進行した様々な実験例について詳細に説明する。
【0091】
後述する全ての実験例は、上記添加剤の含有量を異ならせた状態の誘電体層形成用粉末をエタノールとトルエンを溶媒として分散剤と共に混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを製作した。成形されたセラミックシートにNi電極を印刷して積層し、圧着、切断したチップを400℃以下のエア雰囲気で仮焼した後、約1,300℃以下水素(H2)濃度7.0%以下の条件で1時間程度焼成した。この後、銅(Cu)ペーストでターミネーション工程及び電極焼成を行い、積層型電子部品100を完成することができる。
【0092】
(実験例1)
表1は、添加剤の含有量を異ならせて形成した積層型電子部品100において誘電体層111に含まれる元素の含有量を測定した結果を示したものである。
【0093】
各元素の含有量は、コア及びシェルに含まれたジルコニウム(Zr)の含有量100モル基準相対値に該当する。
【0094】
表1の元素含有量は、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、容量形成部の中心部に位置した誘電体層の2.68μm×2.68μm領域を200kV透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)で4万倍の倍率でTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive Spectroscopy)分析により測定した。
【0095】
【0096】
表1を参照すると、二次相はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)を含むことが確認できる。特に、ケイ素(Si)は実質的に二次相40にのみ含まれることが確認できる。
【0097】
マンガン(Mn)の含有量に関して、添加剤100%で誘電体結晶粒に含まれるマンガン(Mn)の含有量は、上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.68モルであり、添加剤140%で誘電体結晶粒に含まれるマンガン(Mn)の含有量は、上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.83モルであることが確認できる。
【0098】
イットリウム(Y)の含有量に関して、添加剤100%で誘電体結晶粒に含まれるイットリウム(Y)の含有量は、上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.26モルであり、添加剤140%で上記誘電体結晶粒に含まれるイットリウム(Y)の含有量は、上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して3.33モルであることが確認できる。
【0099】
(実験例2)
表2は、添加剤の含有量を異ならせて形成した積層型電子部品100において、誘電体層111の微細構造を測定し、それによる特性を評価した結果である。
【0100】
コアの平均大きさはd1、コア及びシェルの平均大きさ(誘電体結晶粒の平均大きさ)はd2で表し、積層型電子部品100の第2方向の中心まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、容量形成部の中央部に位置した誘電体層111の2.68μm×2.68μm領域をTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive Spectroscopy)分析により組成を分析して、Yの含有量が急激に変わる地点をコア21とシェル22の境界とし、コア21の短軸と長軸を加えた値を2で割った値をd1とし、誘電体結晶粒20の短軸と長軸を加えた値を2で割った値をd2とした。
【0101】
チップの常温静電容量及び品質係数は、LCR meterを用いて1kHz、1.0V条件で容量を合計20個のサンプルで測定した値の平均値をとった。誘電定数は、測定された静電容量と誘電体の厚さによって計算された値である。BDVは、20個のサンプルについて25℃400V/s昇圧条件で測定して、電流値が10mAとなる瞬間のVoltage値をBDV値で測定して平均値をとった。
【0102】
【0103】
表2及び
図6を参照すると、添加剤の含有量が増加するほど誘電体結晶粒でシェルが占める比重は減少する傾向が確認でき、誘電体結晶粒でコアが占める比重は「添加剤140%」までは増加し、その後減少する傾向が確認できる。
【0104】
一方、表2と
図7を参照すると、添加剤の含有量が増加するにつれて品質係数が減少する傾向が確認でき、特に、誘電定数と静電容量は「添加剤140%」を超過する場合、減少する傾向が確認できる。
【0105】
一方、表2を参照すると、絶縁破壊電圧(BDV)は、添加剤の含有量が増加するほど向上する傾向が確認できる。
【0106】
表1と表2の結果を総合すると、積層型電子部品100の静電容量、誘電定数、品質係数及びBDVを同時に向上させることができる添加剤の含有量は「添加剤100%」以上「添加剤140%」以下の範囲を有することができる。
【0107】
このとき、「添加剤100%」以上「添加剤140%」以下の範囲は、表1によって焼成後の誘電体層111における特定元素の含有量で表すことができる。例えば、一実施形態において、誘電体結晶粒に含まれるマンガン(Mn)の含有量は、上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.68モル以上2.83モル以下であるか、誘電体結晶粒に含まれるイットリウム(Y)の含有量は、上記誘電体結晶粒に含まれるジルコニウム(Zr)100モルに対して2.26モル以上3.33モル以下であることができる。
【0108】
(実験例3)
表3は、添加剤の含有量を異ならせた積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、容量形成部の中心部に位置した誘電体層の10.82μm×10.82μm領域をTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive Spectroscopy)を介してケイ素(Si)元素をmappingした後、イメージ分析プログラム(ImageJ)で二次相40が占める面積分率及び複数個の二次相40の平均面積を測定した。ケイ素(Si)元素は実質的に二次相40にのみ配置されるため、誘電体層111においてケイ素(Si)元素が相対的に集中して配置されている領域を二次相40が形成された領域とした。
【0109】
このとき、誘電体層111のうち二次相40が占める面積分率は、測定されたイメージ全体面積に対する二次相40が形成された領域の割合で計算し、複数個の二次相40の平均面積は任意の5個以上の二次相40の面積を計算した平均値をとった。
【0110】
【0111】
表2~表3の結果を総合すると、このとき、「添加剤100%」以上「添加剤140%」以下の範囲は、二次相40の面積に関連するパラメータで表すことができる。具体的には、一実施形態において、誘電体層のうち上記二次相が占める面積分率は、2.27%以上2.57%以下であるか、上記複数個の二次相の平均面積は、0.104μm2以上0.170μm2以下であることができる。
【0112】
(実験例4)
図8を参照すると、添加剤の含有量が増加するにつれて、容量の温度変化(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)が大きくなることが確認できるが、「添加剤100%」~「添加剤180%」領域では全て-55~125℃で30ppm/℃未満のCOG特性は満たすことが確認できる。
【0113】
但し、「添加剤100%」~「添加剤140%」領域において、容量の温度変化(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)特性により優れていることが確認できる。
【0114】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0115】
積層型電子部品100は、小型化及び高容量化を同時に達成するために、0201(長さ×幅、0.2mm×0.1mm)以下のサイズを有することができ、高温高圧環境での信頼性が重要な製品の場合、3225(長さ×幅、3.2mm×2.5mm)以上のサイズを有することができるが、これに制限されるものではない。
【0116】
ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大大きさを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品の第3方向の最大大きさ(W)を意味することができる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0118】
また、本開示で用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0119】
本開示で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために用いられたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0120】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極