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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155732
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光検知装置及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 50/20 20230101AFI20241024BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20241024BHJP
【FI】
H10N50/20
H10N50/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019192
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023068930
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】山根 健量
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野尻 武司
(72)【発明者】
【氏名】張 維昊
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AA01
5F092AA03
5F092AC08
5F092AC12
5F092AD23
5F092AD24
5F092AD25
5F092AD30
5F092BB10
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB31
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB37
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB53
5F092BB55
5F092BC07
5F092BC13
5F092CA02
5F092CA07
5F092CA08
(57)【要約】
【課題】パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い、光検知装置及び信号処理方法を提供する。
【解決手段】この光検知装置は、光パルスが照射されると第1出力を出力する第1光電変換素子と、前記光パルスが照射されると第2出力を出力する第2光電変換素子と、を備える。光検知装置は、前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とに同一の前記光パルスが照射された際の前記第1出力に起因する第1信号と前記第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成するように構成されている。前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルスが照射されると第1出力を出力する第1光電変換素子と、
前記光パルスが照射されると第2出力を出力する第2光電変換素子と、を備え、
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とに同一の前記光パルスが照射された際の前記第1出力に起因する第1信号と前記第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成するように構成され、
前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件であり、
前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である、光検知装置。
【請求項2】
前記第1光電変換素子は、第1磁性素子であり、
前記第2光電変換素子は、第2磁性素子であり、
前記第1磁性素子と前記第2磁性素子とはそれぞれ、前記光パルスが照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれるスペーサ層と、を備える、請求項1に記載の光検知装置。
【請求項3】
遅延回路をさらに備え、
前記遅延回路は、前記第2出力に起因する信号を遅延させる、請求項1に記載の光検知装置。
【請求項4】
前記第1磁性素子及び前記第2磁性素子に前記光パルスが照射されていない状態において、前記第1磁性素子の前記第1強磁性層と前記第2強磁性層の磁化方向の関係は、前記第2磁性素子の前記第1強磁性層と前記第2強磁性層の磁化方向の関係と異なる、請求項2に記載の光検知装置。
【請求項5】
前記第1磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性が、前記第2磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性と異なるように構成された、請求項2に記載の光検知装置。
【請求項6】
前記第1磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性は、前記第2磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性と同じであるように構成された、請求項4に記載の光検知装置。
【請求項7】
反転回路をさらに備え、
前記反転回路は、前記第2出力に起因する信号の極性を反転させる、請求項1に記載の光検知装置。
【請求項8】
前記光パルスが前記第1光電変換素子に照射されるまでの第1光学距離と、前記光パルスが前記第2光電変換素子に照射されるまでの第2光学距離と、が異なる、請求項1に記載の光検知装置。
【請求項9】
前記光パルスが照射される光照射面を有し、
前記光照射面と前記第1光電変換素子との間に、第1中間層を有し、
前記光照射面と前記第2光電変換素子との間に、第2中間層を有し、
前記第1中間層と前記第2中間層とは、屈折率が異なる、請求項8に記載の光検知装置。
【請求項10】
第1光導波路と第2光導波路とをさらに備え、
前記第1光導波路は、前記光パルスを前記第1光電変換素子に伝搬するように構成され、
前記第2光導波路は、前記光パルスを前記第2光電変換素子に伝搬するように構成され、
前記第1光導波路は、前記第2光導波路と長さが異なる、請求項8に記載の光検知装置。
【請求項11】
第1光導波路と第2光導波路とをさらに備え、
前記第1光導波路は、前記光パルスを前記第1光電変換素子に伝搬するように構成され、
前記第2光導波路は、前記光パルスを前記第2光電変換素子に伝搬するように構成され、
前記第1光導波路の屈折率は、前記第2光導波路の屈折率と異なる、請求項8に記載の光検知装置。
【請求項12】
光パルスが照射されると第1出力を出力する第1光電変換素子を備え、
前記第1光電変換素子に前記光パルスが照射された際の前記第1出力に起因する第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成するように構成され、
前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件であり、
前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である、光検知装置。
【請求項13】
前記第1光電変換素子は、第1磁性素子であり、
前記第1磁性素子は、前記光パルスが照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれるスペーサ層と、を備える、請求項11に記載の光検知装置。
【請求項14】
遅延回路をさらに備え、
前記遅延回路は、前記第1出力に起因する信号のうちの一つの信号を遅延させる、請求項11に記載の光検知装置。
【請求項15】
反転回路をさらに備え、
前記反転回路は、前記第1出力に起因する信号のうちの一つの信号の極性を反転させる、請求項11に記載の光検知装置。
【請求項16】
第1光電変換素子と第2光電変換素子とに同一の光パルスが照射された際の前記第1光電変換素子から出力された第1出力に起因する第1信号と、前記第2光電変換素子から出力された第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成し、
前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件であり、
前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である、信号処理方法。
【請求項17】
第1光電変換素子に光パルスが照射された際の前記第1光電変換素子から出力された第1出力に起因する第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成し、
前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件であり、
前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である、信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検知装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、様々な用途で用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フォトダイオードを用いて、光信号を受信する受信装置が記載されている。フォトダイオードは、例えば、半導体のpn接合を用いたpn接合ダイオード等であり、光を電気信号に変換する。
【0004】
また例えば、特許文献2には、磁性素子を用いた新規な受信装置、受信システム、送受信装置、通信システム及び光検知素子が開示されている。この受信装置、受信システム、送受信装置、通信システム及び光検知素子は、高速通信を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-292107号公報
【特許文献2】特開2022-069387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高速通信を実現するためには、光電変換装置の高速応答性の更なる向上が求められている。光電変換装置の高速応答性を向上させるためには、パルス光が光電変換素子に照射された際に、光電変換素子からの出力が高速で立ち上がると共に、高速で立ち下がる必要がある。光電変換素子からの出力の立下り時間は、立ち上がり時間より長い場合が多く、光電変換素子からの出力の立下り特性の改善が求められている。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い、光検知装置及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)第1の態様にかかる光検知装置は、光パルスが照射されると第1出力を出力する第1光電変換素子と、前記光パルスが照射されると第2出力を出力する第2光電変換素子と、を備える。光検知装置は、前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とに同一の前記光パルスが照射された際の前記第1出力に起因する第1信号と前記第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成するように構成されている。前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【0010】
(2)上記態様にかかる光検知装置において、前記第1光電変換素子は、第1磁性素子であり、前記第2光電変換素子は、第2磁性素子でもよい。前記第1磁性素子と前記第2磁性素子とはそれぞれ、前記光パルスが照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれるスペーサ層と、を備える。
【0011】
(3)上記態様にかかる光検知装置は、遅延回路をさらに備えてもよい。前記遅延回路は、前記第2出力に起因する信号を遅延させる。
【0012】
(4)上記態様にかかる光検知装置は、前記第1磁性素子及び前記第2磁性素子に前記光パルスが照射されていない状態において、前記第1磁性素子の前記第1強磁性層と前記第2強磁性層の磁化方向の関係が、前記第2磁性素子の前記第1強磁性層と前記第2強磁性層の磁化方向の関係と異なってもよい。
【0013】
(5)上記態様にかかる光検知装置において、前記第1磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性が、前記第2磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性と異なるように構成されていてもよい。
【0014】
(6)上記態様にかかる光検知装置において、前記第1磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性は、前記第2磁性素子の出力端子側の面に接続される直流電源の極性と同じであるように構成されていてもよい。
【0015】
(7)上記態様にかかる光検知装置は、反転回路をさらに備えてもよい。前記反転回路は、前記第2出力に起因する信号の極性を反転させる。
【0016】
(8)上記態様にかかる光検知装置において、前記光パルスが前記第1光電変換素子に照射されるまでの第1光学距離と、前記光パルスが前記第2光電変換素子に照射されるまでの第2光学距離と、が異なってもよい。
【0017】
(9)上記態様にかかる光検知装置は、前記光パルスが照射される光照射面を有し、前記光照射面と前記第1光電変換素子との間に、第1中間層を有し、前記光照射面と前記第2光電変換素子との間に、第2中間層を有してもよい。前記第1中間層と前記第2中間層とは、屈折率が異なる。
【0018】
(10)上記態様にかかる光検知装置は、第1光導波路と第2光導波路とをさらに備えてもよい。前記第1光導波路は、前記光パルスを前記第1光電変換素子に伝搬するように構成されている。前記第2光導波路は、前記光パルスを前記第2光電変換素子に伝搬するように構成されている。前記第1光導波路は、前記第2光導波路と長さが異なる。
【0019】
(11)上記態様にかかる光検知装置は、第1光導波路と第2光導波路とをさらに備えてもよい。前記第1光導波路は、前記光パルスを前記第1光電変換素子に伝搬するように構成されている。前記第2光導波路は、前記光パルスを前記第2光電変換素子に伝搬するように構成されている。前記第1光導波路の屈折率は、前記第2光導波路の屈折率と異なる。
【0020】
(12)第2の態様にかかる光検知装置は、光パルスが照射されると第1出力を出力する第1光電変換素子を備える。前記光電変換装置は、前記第1光電変換素子に前記光パルスが照射された際の前記第1出力に起因する第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成するように構成されている。前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【0021】
(13)上記態様にかかる光検知装置において、前記第1光電変換素子は、第1磁性素子である。前記第1磁性素子は、前記光パルスが照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれるスペーサ層と、を備える。
【0022】
(14)上記態様にかかる光検知装置は、遅延回路をさらに備えてもよい。前記遅延回路は、前記第1出力に起因する信号のうちの一つの信号を遅延させる。
【0023】
(15)上記態様にかかる光検知装置は、反転回路をさらに備えてもよい。前記反転回路は、前記第1出力に起因する信号のうちの少なくとも一つの信号の極性を反転させる。
【0024】
(16)第3の態様にかかる信号処理方法は、同一の光パルスが照射された際の第1光電変換素子から出力された第1出力に起因する第1信号と、第2光電変換素子から出力された第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成する。前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【0025】
(17)第4の態様にかかる信号処理方法は、第1光電変換素子に光パルスが照射された際の前記第1光電変換素子から出力された第1出力に起因する第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成する。前記第1条件は、前記第1信号のピークの時間位置と前記第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。前記第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【発明の効果】
【0026】
上記態様にかかる光検知装置及び信号処理方法は、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る光検知装置の回路図である。
図2】第1実施形態に係る光検知装置の第1磁性素子及び第2磁性素子の近傍の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る第1磁性素子及び第2磁性素子の近傍の断面図である。
図4】第1実施形態に係る第1磁性素子の動作例を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る第1磁性素子の動作例を説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る光検知装置の光パルスに対する出力特性を示す模式図である。
図7】第1実施例に係る光検知装置における、第1磁性素子からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子からの第2出力に起因する第2信号と、光検知装置からの合計出力と、のそれぞれの測定値を示すグラフである。
図8】第1実施例に係る光検知装置における、第1磁性素子からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子からの第2出力に起因する第2信号と、光検知装置からの合計出力と、のそれぞれを、それぞれのピーク値で規格化したグラフである。
図9】第2実施形態に係る光検知装置の回路図である。
図10】第2実施形態に係る第1磁性素子及び第2磁性素子の近傍の断面図である。
図11】第2実施例に係る光検知装置における、第1磁性素子からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子からの第2出力に起因する第2信号と、光検知装置からの合計出力と、のそれぞれの測定値を示すグラフである。
図12】第2実施例に係る光検知装置における、第1磁性素子からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子からの第2出力に起因する第2信号と、光検知装置からの合計出力と、のそれぞれを、それぞれのピーク値で規格化したグラフである。
図13】第2実施形態の第1変形例に係る第1磁性素子及び第2磁性素子の近傍の断面図である。
図14】第2実施形態の第2変形例に係る第1磁性素子及び第2磁性素子の近傍の断面図である。
図15】第3実施形態に係る光検知装置の回路図である。
図16】第3実施例に係る光検知装置における、第1磁性素子からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子からの第2出力に起因する第2信号と、光検知装置からの合計出力と、のそれぞれの測定値を示すグラフである。
図17】第3実施例に係る光検知装置における、第1磁性素子からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子からの第2出力に起因する第2信号と、光検知装置からの合計出力と、のそれぞれを、それぞれのピーク値で規格化したグラフである。
図18】第4実施形態に係る光検知装置の回路図である。
図19】第4実施形態に係る光検知装置の第1磁性素子及び第2磁性素子の近傍の断面図である。
図20】第5実施形態に係る光検知装置の平面図である。
図21】第5実施形態に係る光検知装置の断面図である。
図22】第5実施形態に係る光検知装置の別の断面図である。
図23】第5実施形態の第1変形例に係る光検知装置の平面図である。
図24】第6実施形態に係る光検知装置の回路図である。
図25】第1適用例にかかる送受信装置のブロック図である。
図26】通信システムの一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0029】
方向について定義する。基板Subが広がる面の面内の一方向をx方向、面内でx方向と直交する方向をy方向とする。また基板Subと直交する方向をz方向とする。z方向は、第1磁性素子10及び第2磁性素子20の積層方向の一例である。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。+z方向は、第2強磁性層から第1強磁性層へ向かう方向である。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0030】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る光検知装置100の回路図である。図1では、光検知装置100に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0031】
光検知装置100は、例えば、第1磁性素子10と第2磁性素子20と遅延回路40とコンデンサ91とインダクタ92と出力端子tと基準電位端子tとを備える。光検知装置100は、電源31及び電源32を備えてもよく、電源31及び電源32は光検知装置100の外部にあってもよい。第1磁性素子10は、第1光電変換素子の一例であり、第2磁性素子20は、第2光電変換素子の一例である。第1光電変換素子(第1磁性素子10)は光パルスが照射されると第1出力を出力し、第2光電変換素子(第2磁性素子20)は光パルスが照射されると第2出力を出力する。第1磁性素子10及び第2磁性素子20は、pn接合型のフォトダイオード等の公知の光電変換素子と置き換えてもよい。この場合、第1光電変換素子としての半導体フォトダイオードのカソードが電源31の正端子に接続され、アノードが電源31の負端子に接続され、第2光電変換素子としての半導体フォトダイオードのカソードが電源32の正端子に接続され、アノードが電源32の負端子に接続される。第1磁性素子10と第2磁性素子20と電源31と電源32と遅延回路40とコンデンサ91とインダクタ92と出力端子tと基準電位端子tとの間はそれぞれ、線路で接続されている。
【0032】
出力端子tは、光検知装置100からの信号が出力される端子である。光検知装置100は、例えば、第1磁性素子10と第2磁性素子20との合成抵抗、合成電位等を出力端子tから出力する。
【0033】
基準電位端子tは、基準電位に接続され、光検知装置100の基準電位を決める。基準電位端子tは、例えば、第1磁性素子10及び第2磁性素子20のそれぞれに接続されている。図1に示す基準電位は、グラウンドである。グラウンドは光検知装置100の外部に設けられてもよい。基準電位は、グラウンド以外でもよい。
【0034】
電源31は、直流電源であり、第1磁性素子10に接続されている。電源31は、公知の物を用いることができる。電源31は、例えば、一定の直流電流を発生可能な直流電流源でもよい。電源31は、発生する直流電流値の大きさが変化可能な直流電流源でもよい。第1光電変換素子および第2光電変換素子がpn接合型のフォトダイオードの場合は、電源31および後述する電源32は、一定の直流電圧を印加可能な直流電圧源でもよい。電源31は、第1磁性素子10に直流電流又は直流電圧を印加する。光検知装置100は、例えば、第1磁性素子10の出力端子t側の第1面10Aが、電源31の負の端子に接続され、第1磁性素子10の第1面10Aと対向する第2面10Bが、電源31の正の端子に接続されるように構成されている。
【0035】
電源32は、直流電源であり、第2磁性素子20に接続されている。電源32は、電源31と同様のものを用いることができる。電源32は、第2磁性素子20に直流電流又は直流電圧を印加する。光検知装置100は、例えば、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aが、電源32の正の端子に接続され、第2磁性素子20の第1面20Aと対向する第2面20Bが、電源32の負の端子に接続されるように構成されている。
【0036】
光検知装置100は、第1磁性素子10の出力端子t側の第1面10Aに接続される電源31の極性(正負)が、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aに接続される電源32の極性(正負)と異なるように構成されている。ここでは、第1面10Aが電源31の負の端子に接続され、第2面10Bが電源31の正の端子に接続され、第1面20Aが電源32の正の端子に接続され、第2面20Bが電源32の負の端子に接続される例を示したが、第1面10Aが電源31の正の端子に接続され、第2面10Bが電源31の負の端子に接続され、第1面20Aが電源32の負の端子に接続され、第2面20Bが電源32の正の端子に接続されてもよい。
【0037】
インダクタ92は、例えば、電源31と第1磁性素子10との間、及び、電源32と第2磁性素子20との間のそれぞれにある。インダクタ92には、例えば、チップインダクタ、パターン線路によるインダクタ、インダクタ成分を有する抵抗素子等を用いることができる。
【0038】
コンデンサ91は、例えば、第1磁性素子10と出力端子tとの間、及び、第2磁性素子20と出力端子tとの間のそれぞれにある。コンデンサ91には、公知のものを用いることができる。コンデンサ91は、第1磁性素子10及び第2磁性素子20の出力電圧の変化の高周波成分のみを出力端子tに向かって通過させる。
【0039】
図2は、第1実施形態に係る光検知装置100の第1磁性素子10及び第2磁性素子20の近傍の斜視図である。
【0040】
光検知装置100は、照射される光Lを電気信号に置き換える。第1磁性素子10及び第2磁性素子20には、光Lが照射される。
【0041】
光Lは、可視光線に限らず、可視光線よりも波長の長い赤外線や、可視光線よりも波長の短い紫外線も含む。可視光線の波長は例えば、380nm以上800nm未満である。赤外線の波長は例えば、800nm以上1mm以下である。紫外線の波長は例えば、200nm以上380nm未満である。光Lは、例えば、光パルスとして第1磁性素子10および第2磁性素子に照射される。光Lは、例えば、高周波で繰り返される複数の光パルスにより構成される高周波の光信号を含む。高周波の光信号は、例えば、100MHz以上の周波数を有する信号である。光Lはレーザー光であってもよい。
【0042】
第1磁性素子10及び第2磁性素子20は、それぞれ柱状体である。第1磁性素子10及び第2磁性素子20は、円柱でも四角柱でも三角柱でもよい。z方向から見た際の第1磁性素子10の第1強磁性層11の面積は、z方向から見た際の第2磁性素子20の第1強磁性層21の面積と、同じでも異なってもよい。
【0043】
第1磁性素子10は、第1電極14と第2電極15と接続されている。第1電極14は、第1磁性素子10の光Lの照射面に接する。第2電極15は、第1磁性素子10の光照射面と対向する面に接する。第1電極14と第2電極15とは、第1磁性素子10をz方向に挟む。
【0044】
第1電極14は、導電性を有する材料からなる。第1電極14は、例えば、使用波長帯域の光に対して透過性を有する透明電極である。第1電極14は、例えば、使用波長帯域の光の80%以上を透過することが好ましい。第1電極14は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物である。第1電極14は、これらの酸化物の透明電極材料の中に複数の柱状金属を有する構成としてもよい。第1電極14として上記のような透明電極材料を用いることは必須ではなく、Au、CuまたはAlなどの金属材料を薄い膜厚で用いることで、照射される光Lを第1磁性素子10の第1強磁性層11に到達させるようにしてもよい。第1電極14の材料として金属を用いる場合、第1電極14の膜厚は、例えば、3~10nmである。また第1電極14は、光が照射される照射面に反射防止膜を有してもよい。
【0045】
第2電極15は、第1磁性素子10を挟んで第1電極14と反対側にある。第2電極15は、導電性を有する材料からなる。第2電極15は、例えば、Cu、AlまたはAuなどの金属により構成される。これらの金属の上下にTaやTiを積層してもよい。また、CuとTaの積層膜、TaとCuとTiの積層膜、TaとCuとTaNの積層膜を用いてもよい。また、第2電極15として、TiNやTaNを用いてもよい。第2電極15の膜厚は、例えば200nm~800nmである。
【0046】
第2電極15は、第1磁性素子10に照射される光Lに対して透過性を有するようにしてもよい。第2電極15の材料として、第1電極14と同様に、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物の透明電極材料を用いてもよい。第1電極14のほうから光が照射される場合においても、光の強度によっては光が第2電極15まで到達する場合もありうるが、この場合、第2電極15が酸化物の透明電極材料を含んで構成されていることで、第2電極15が金属で構成されている場合に比べて、第2電極15とそれに接する層との界面における光の反射を抑制できる。
【0047】
第2磁性素子20は、第1電極24と第2電極25と接続されている。第1電極24は、第2磁性素子20の光Lの照射面に接する。第2電極25は、第2磁性素子20の光照射面と対向する面に接する。第2電極25は、第2電極15と一体化されていてもよい。第1電極24と第2電極25とは、第2磁性素子20をz方向に挟む。第1電極24は第1電極14と同様の材料を用いることができ、第2電極25は、第2電極15と同様の材料を用いることができる。
【0048】
図3は、第1実施形態に係る第1磁性素子10及び第2磁性素子20の近傍の断面図である。図3では、光検知装置100に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0049】
第1磁性素子10及び第2磁性素子20の周囲は、例えば、絶縁層93で被覆されている。絶縁層93は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。絶縁層93は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム(CrN)、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)等である。
【0050】
第1磁性素子10は、例えば、第1強磁性層11と第2強磁性層12とスペーサ層13とを有する。スペーサ層13は、第1強磁性層11と第2強磁性層12との間に位置する。第1磁性素子10は、これらの他に、他の層を有してもよい。第1磁性素子10には、第1強磁性層11側から光Lが照射される。第1強磁性層11は、第2強磁性層12より第1電極14の近くにある。第2強磁性層12は、第1強磁性層11より第2電極15の近くにある。
【0051】
第2磁性素子20は、例えば、第1強磁性層21と第2強磁性層22とスペーサ層23とを有する。スペーサ層23は、第1強磁性層21と第2強磁性層22との間に位置する。第2磁性素子20は、これらの他に、他の層を有してもよい。第2磁性素子20には、第1強磁性層21側から光Lが照射される。第1強磁性層21は、第2強磁性層22より第1電極24の近くにある。第2強磁性層22は、第1強磁性層21より第2電極25の近くにある。
【0052】
図3に示す第1磁性素子10は、第1磁性素子10に光が照射されていない状態において、第1強磁性層11の磁化M11と第2強磁性層12の磁化M12とが反平行の関係にある。図3に示す第2磁性素子20は、第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1強磁性層21の磁化M21と第2強磁性層22の磁化M22とが反平行の関係にある。第1実施形態では、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係は、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係と同じである。ここでは、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係、及び、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係がいずれも反平行である例を示したが、これらの磁化方向の関係は平行でもよく、また例えば、第1強磁性層11の磁化M11または第1強磁性層21の磁化M21の方向が積層方向および面内方向に対して傾いている状態のように、これらの磁化方向の関係が平行及び反平行とは異なる関係でもよい。
【0053】
第1磁性素子10及び第2磁性素子20は、例えば、スペーサ層13、23が絶縁材料で構成されたMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。第1磁性素子10は、例えば、第1強磁性層11の磁化の状態と第2強磁性層12の磁化の状態との相対的な変化に応じて、z方向の抵抗値(z方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する素子である。このような素子は磁気抵抗効果素子ともいう。第2磁性素子20も同様に、例えば、第1強磁性層21の磁化の状態と第2強磁性層22の磁化の状態との相対的な変化に応じて、z方向の抵抗値(z方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する素子である。
【0054】
第1磁性素子10は、第1磁性素子10に照射される光Lの強度が変化すると、光Lの強度の変化に応じて、第1磁性素子10から出力される電圧(第1電極14と第2電極15との間の電位差)が変化する。第1磁性素子10は光パルスが照射されると第1出力を出力する。第1出力の電圧の変化量(光パルスが照射されていない状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした変化量)は、出力端子tから出力される。例えば、第1出力の電圧の変化は、第1出力に起因した第1信号として出力端子tから出力される。
【0055】
第2磁性素子20は、第2磁性素子20に照射される光Lの強度が変化すると、光Lの強度の変化に応じて、第2磁性素子20から出力される電圧(第1電極24と第2電極25との間の電位差)が変化する。第2磁性素子20は光パルスが照射されると第2出力を出力する。第2出力の電圧の変化量(光パルスが照射されていない状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした変化量)は、第1出力に起因した第1信号より遅延して、出力端子tから出力される。例えば、第2出力の電圧の変化を抽出し遅延させた信号は、第2出力に起因した第2信号として出力端子tから出力される。
【0056】
第1強磁性層11は、外部から光が照射されると磁化の状態が変化する光検知層である。第1強磁性層11は、磁化自由層とも呼ばれる。磁化自由層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が変化する磁性体を含む層である。所定の外部からのエネルギーは、例えば、外部から照射される光L、第1強磁性層11のz方向に流れる電流、外部磁場である。第1強磁性層11の磁化は、第1強磁性層11に照射される光Lの強度に応じて、状態が変化する。
【0057】
第1強磁性層11は、強磁性体を含む。第1強磁性層11は、例えば、Co、FeまたはNi等の磁性元素のいずれかを少なくとも含む。第1強磁性層11は、上述のような磁性元素と共に、B、Mg、Hf、Gd等の非磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層11は、例えば、磁性元素と非磁性元素とを含む合金でもよい。第1強磁性層11は、複数の層から構成されていてもよい。第1強磁性層11は、例えば、CoFeB合金、CoFeB合金層をFe層で挟んだ積層体、CoFeB合金層をCoFe層で挟んだ積層体である。一般的に、「強磁性」は「フェリ磁性」を含む。第1強磁性層11は、フェリ磁性を示してもよい。一方、第1強磁性層11は、フェリ磁性ではない強磁性を示してもよい。例えば、CoFeB合金は、フェリ磁性ではない強磁性を示す。
【0058】
第1強磁性層11は、膜面内方向(xy面内のいずれかの方向)に磁化容易軸を有する面内磁化膜でも、膜面直方向(z方向)に磁化容易軸を有する垂直磁化膜でもよい。
【0059】
第1強磁性層11の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。第1強磁性層11の膜厚は、例えば、1nm以上2nm以下であることが好ましい。第1強磁性層11が垂直磁化膜の場合、第1強磁性層11の膜厚が薄いと、第1強磁性層11の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が強まり、第1強磁性層11の垂直磁気異方性が高まる。つまり、第1強磁性層11の垂直磁気異方性が高いと、磁化がz方向に戻ろうとする力が強まる。一方、第1強磁性層11の膜厚が厚いと、第1強磁性層11の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が相対的に弱まり、第1強磁性層11の垂直磁気異方性が弱まる。
【0060】
第1強磁性層11の膜厚が薄くなると強磁性体としての体積は小さくなり、厚くなると強磁性体としての体積は大きくなる。外部からのエネルギーが加わったときの第1強磁性層11の磁化の反応しやすさは、第1強磁性層11の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)に反比例する。つまり、第1強磁性層11の磁気異方性と体積との積が小さくなると、光に対する反応性が高まる。このような観点から、光に対する反応を高めるためには、第1強磁性層11の磁気異方性を適切に設計したうえで第1強磁性層11の体積を小さくすることが好ましい。
【0061】
第1強磁性層11の膜厚が2nmより厚い場合は、例えばMo,Wからなる挿入層を第1強磁性層11内に設けてもよい。すなわち、z方向に強磁性層、挿入層、強磁性層が順に積層された積層体を第1強磁性層11としてもよい。挿入層と強磁性層との界面における界面磁気異方性により第1強磁性層11全体の垂直磁気異方性が高まる。挿入層の膜厚は、例えば、0.1nm~0.6nmである。
【0062】
第2強磁性層12は、磁化固定層である。磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が磁化自由層よりも変化しにくい磁性体からなる層である。例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の向きが磁化自由層よりも変化しにくい。また、例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の大きさが磁化自由層よりも変化しにくい。第2強磁性層12の保磁力は、例えば、第1強磁性層11の保磁力よりも大きい。第2強磁性層12は、例えば第1強磁性層11と同じ方向に磁化容易軸を有する。第2強磁性層12は、面内磁化膜でも、垂直磁化膜でもよい。
【0063】
第2強磁性層12を構成する材料は、例えば、第1強磁性層11と同様である。第2強磁性層12は、例えば、0.4nm~1.0nmの厚みのCo、0.1nm~0.5nmの厚みのMo、0.3nm~1.0nmの厚みのCoFeB合金、0.3nm~1.0nmの厚みのFeが順に積層された積層体でもよい。
【0064】
第2強磁性層12の磁化は、例えば、磁気結合層を介した第3強磁性層との磁気結合によって固定してもよい。この場合、第2強磁性層12、磁気結合層及び第3強磁性層を合わせたものを磁化固定層と称する場合もある。
【0065】
第3強磁性層は、例えば、第2強磁性層12と磁気結合する。磁気結合は、例えば、反強磁性的な結合であり、RKKY相互作用により生じる。第3強磁性層を構成する材料は、例えば、第1強磁性層11と同様である。磁気結合層は、例えば、Ru、Ir等である。
【0066】
スペーサ層13は、第1強磁性層11と第2強磁性層12との間に配置される非磁性層である。スペーサ層13は、導電体、絶縁体もしくは半導体によって構成される層、又は、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。スペーサ層13の膜厚は、後述する初期状態における第1強磁性層11の磁化と第2強磁性層12の磁化の配向方向に応じて調整できる。
【0067】
例えば、スペーサ層13が絶縁体からなる場合は、第1磁性素子10は、第1強磁性層11とスペーサ層13と第2強磁性層12とからなる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を有する。このような素子はMTJ素子と呼ばれる。この場合、第1磁性素子10はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magnetoresistance)効果を発現することができる。例えば、スペーサ層13が金属からなる場合は、第1磁性素子10は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果を発現することができる。このような素子はGMR素子と呼ばれる。
【0068】
スペーサ層13が絶縁材料で構成される場合、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン又は酸化ケイ素等を含む材料を用いることができる。また、これら絶縁材料に、Al、B、Si、Mgなどの元素や、Co、Fe、Niなどの磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層11と第2強磁性層12との間に高いTMR効果が発現するようにスペーサ層13の膜厚を調整することで、高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層13の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、1.0~2.5nm程度としてもよい。
【0069】
スペーサ層13を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層13の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、2.0~3.0nm程度としてもよい。
【0070】
スペーサ層13を非磁性半導体材料で構成する場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム又はITO等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層13の膜厚は1.0~4.0nm程度としてもよい。
【0071】
スペーサ層13として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムによって構成される非磁性絶縁体中に、Cu、Au、Alなどの非磁性の導体によって構成される通電点を含む構造としてもよい。また、Co、Fe、Niなどの磁性元素によって導体を構成してもよい。この場合、スペーサ層13の膜厚は、1.0~2.5nm程度としてもよい。通電点は、例えば、膜面に垂直な方向からみたときの直径が1nm以上5nm以下の柱状体である。上述のように、第1磁性素子10は、スペーサ層13の構成材料によって、MTJ素子、GMR素子などと呼び名が異なることがあるが、総称して磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
【0072】
第1磁性素子10は、この他、下地層、キャップ層、垂直磁化誘起層等を有してもよい。下地層は、第2強磁性層12の下側にある。下地層は、シード層又はバッファ層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、Pt、Ru、Hf、Zr、NiFeCrである。シード層の膜厚は、例えば1nm以上5nm以下である。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。バッファ層は、例えば、Ta、Ti、W、Zr、Hf又はこれらの元素の窒化物である。バッファ層の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。
【0073】
キャップ層は、第1強磁性層11の上側にある。キャップ層は、プロセス過程で下層へのダメージを防ぐと共に、アニール時に下層の結晶性を高める。キャップ層の膜厚は、第1強磁性層11に十分な光が照射されるように、例えば3nm以下である。キャップ層は、例えば、MgO、W、Mo、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などである。
【0074】
垂直磁化誘起層は、第1強磁性層11が垂直磁化膜の場合に形成される。垂直磁化誘起層は、第1強磁性層11上に積層される。垂直磁化誘起層は、第1強磁性層11の垂直磁気異方性を誘起する。垂直磁化誘起層は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。垂直磁化誘起層が酸化マグネシウムの場合は、導電性を高めるために、酸化マグネシウムが酸素欠損していることが好ましい。垂直磁化誘起層の膜厚は、例えば、0.5nm以上2.0nm以下である。
【0075】
第2磁性素子20における第1強磁性層21は、第1磁性素子10における第1強磁性層11に対応する。第1強磁性層21の構成材料、膜厚、層構成等は、第1強磁性層11と同様にすることができる。第2磁性素子20における第2強磁性層22は、第1磁性素子10における第2強磁性層12に対応する。第2強磁性層22の構成材料、膜厚、層構成等は、第2強磁性層12と同様にすることができる。第2磁性素子20におけるスペーサ層23は、第1磁性素子10におけるスペーサ層13に対応する。スペーサ層23の構成材料、膜厚、層構成等は、スペーサ層13と同様にすることができる。また第2磁性素子20は、第1磁性素子10と同様に、下地層、キャップ層、垂直磁化誘起層等を有してもよい。
【0076】
第1磁性素子10及び第2磁性素子20は、例えば、各層の積層工程、アニール工程、加工工程によって作製される。各層は、例えば、スパッタリングにより成膜される。アニールは、例えば、250℃以上450℃以下で行う。積層膜の加工は、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて行う。第1磁性素子10及び第2磁性素子20をz方向から見た際の最短幅は、例えば、10nm以上2000nm以下としてもよく、30nm以上500nm以下としてもよい。
【0077】
図3では第1磁性素子10及び第2磁性素子20の一例を示したが、磁性素子は光の照射により磁化の状態が変化する強磁性体を有し、磁化の状態の変化に伴い抵抗値が変化するものであればよい。磁性素子には、例えば、上述のMTJ素子及びGMR素子のほか、異方性磁気抵抗(AMR:Anisotronipic Magnetoresistance)効果素子、超巨大磁気抵抗(CMR:Colossal Magnetoresistance)効果素子等を用いることができる。
【0078】
遅延回路40は、例えば、第2磁性素子20と出力端子tとの間にある。遅延回路40は、第2磁性素子20からの第2出力に起因する信号(この例では、第2出力の電圧の変化が抽出された信号)を遅延させる。遅延回路40は、公知のものを用いることができる。
【0079】
次いで、光検知装置100の動作について説明する。第1磁性素子10に光パルスが照射されると第1磁性素子10は、第1出力を出力する。第1出力の電圧の変化(光パルスが照射されていない状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした電圧変化)が、出力端子tから出力される。第1出力の電圧の変化は、上述のように、第1信号の一例である。同様に、第2磁性素子20に光パルスが照射されると第2磁性素子20は、第2出力を出力する。第2出力の電圧の変化(光パルスが照射されていない状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした電圧変化)は、第1出力に起因した第1信号より遅延して、出力端子tから出力される。第2出力の電圧の変化を抽出し遅延させた信号が、上述のように、第2信号の一例である。つまり、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際の、第1出力の電圧の変化(第1信号)と第2出力の電圧の変化を抽出し遅延させた信号(第2信号)とが合成された電圧が、出力端子tから出力される。
【0080】
光検知装置100は、所定の信号処理方法に従って、第1出力と第2出力とを合成して、出力端子tから出力する。光検知装置100は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際の第1出力に起因する第1信号と第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で、合成する。図1に示す例では、第1磁性素子10と出力端子tとの間の線路と、第2磁性素子20と出力端子tとの間の線路とを単純に接続しているが、これらの線路の長さが長い場合は、適切なパワーコンバイナーを用いてこれらの線路を接続することで、信号の反射等の問題の発生を抑制するようにしてもよい。第1信号は、第1出力に起因するものであり、例えば、第1出力の電圧の変化を抽出したものであってもよいし、第1出力そのものであってもよいし、第1出力の電圧の変化を抽出し極性を反転させたものであってもよいし、第1出力の強度を変更したものであってもよい。第2信号は、第2出力に起因するものであり、例えば、第2出力の電圧の変化を抽出したものであってもよいし、第2出力そのものであってもよいし、第2出力の電圧の変化を抽出し極性を反転させたものであってもよいし、第2出力の強度を変更したものであってもよいし、これらを遅延させたものでもよい。
【0081】
図1に示す例では、光検知装置100は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際の、第1出力の電圧の変化(第1信号)と第2出力の電圧の変化を抽出し遅延させた信号(第2信号)とを合成した電圧を、出力端子tから出力する。第1条件は、第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。第2条件は、第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【0082】
まず、第1磁性素子10に光パルスが照射されると、第1磁性素子10から第1出力が出力される原理、及び、第2磁性素子20に光パルスが照射されると、第2磁性素子20から第2出力が出力される原理について説明する。第1磁性素子10と第2磁性素子20の動作の原理は同等なので、以下、第1磁性素子10の動作を例に説明する。
【0083】
第1強磁性層11には、光パルスが照射される。第1磁性素子10のz方向の抵抗値は、光が第1強磁性層11に照射されることにより変化する。第1磁性素子10からの出力電圧は、光が第1強磁性層11に照射されることにより変化する。
【0084】
図4及び図5は、第1実施形態に係る第1磁性素子10の動作例を説明するための図である。図4は、動作例の第1メカニズムを説明するための図であり、図5は、動作例の第2メカニズムを説明するための図である。図4及び図5の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層11に照射される光の強度であり、横軸が時間である。図4及び図5の下のグラフは、縦軸が第1磁性素子10のz方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
【0085】
まず第1強磁性層11に第1強度Wの光が照射された状態(以下、初期状態と称する)において、第1強磁性層11の磁化M11と第2強磁性層12の磁化M12とは反平行の関係にあり、第1磁性素子10のz方向の抵抗値は第2抵抗値Rを示す。ここで、第1強磁性層11に照射される光の強度がゼロの場合を、第1強度Wの光が照射された状態としてもよい。
【0086】
第1磁性素子10のz方向にセンス電流Isを流すことで、第1磁性素子10のz方向の両端に電圧が発生する。第1磁性素子10からの出力電圧は、第1電極14と第2電極15との間に発生する。
【0087】
図4に示す例において、センス電流Isは第2強磁性層12から第1強磁性層11に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層11の磁化M11に対して、第2強磁性層12の磁化M12と反対方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M11と磁化M12とが反平行の状態になりやすくなる。
【0088】
次いで、第1強磁性層11に照射される光の強度が第1強度Wから第2強度Wに変化する。例えば、光パルスが第1磁性素子10に照射されると、第1強磁性層11に照射される光の強度は、第1強度Wから第2強度Wに変化する。第2強度Wの光は、第1強度Wの光より強度が大きい。
【0089】
第2強度Wは、第1強度Wより大きく、第1強磁性層11の磁化M11は初期状態から変化する。第1強磁性層11に光が照射されていない状態における第1強磁性層11の磁化M11の状態と、第2強度Wの光が照射された第1強磁性層11の磁化M11の状態とは異なる。磁化M11の状態とは、例えば、z方向に対する傾き角、大きさ等である。
【0090】
例えば、図4に示すように、第1強磁性層11に照射される光の強度が第1強度Wから第2強度Wに変化すると、磁化M11はz方向に対して傾く。また例えば、図5に示すように、第1強磁性層11に照射される光の強度が第1強度Wから第2強度Wに変化すると、磁化M11の大きさが小さくなる。例えば、第1強磁性層11の磁化M11が光の照射強度によってz方向に対して傾く場合、その傾き角度は、例えば0°より大きく90°より小さい。
【0091】
光パルスの第1磁性素子10に対する照射により第1強磁性層11の磁化M11が初期状態から変化すると、第1磁性素子10のz方向の抵抗値は第1抵抗値Rを示し、第1磁性素子10からの出力電圧の大きさが第1の値から第2の値へ変化する(第1磁性素子10が第1出力を出力する)。第1抵抗値Rは、第2抵抗値Rより小さい。第2の値は第1の値より小さい。第1抵抗値Rは、磁化M11と磁化M12とが反平行である場合の抵抗値(第2抵抗値R)と、磁化M11と磁化M12とが平行である場合の抵抗値との間である。
【0092】
図4に示す場合は、第1強磁性層11の磁化M11には第2強磁性層12の磁化M12と反対方向のスピントランスファートルクが作用している。したがって、磁化M11は磁化M12に対して反平行状態になるように戻ろうとし、第1強磁性層11に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化すると、磁化M11は磁化M12に対して反平行状態に戻る。図5に示す場合は、第1強磁性層11に照射される光の強度が第1強度Wに戻ると、第1強磁性層11の磁化M11の大きさは元に戻り、第1磁性素子10は初期状態に戻る。いずれの場合も第1磁性素子10のz方向の抵抗値は、第2抵抗値Rに戻る。つまり、第1強磁性層11に照射される光の強度が第2強度Wから第1強度Wに変化した際に、第1磁性素子10のz方向の抵抗値は、第1抵抗値Rから第2抵抗値Rへ変化する。
【0093】
図4及び図5に示すように、第1強磁性層11に照射される光の強度が第2強度Wから第1強度Wに変化した際に、第1磁性素子10のz方向の抵抗値は第1抵抗値Rから第2抵抗値Rへ変化する。第1磁性素子10のz方向の抵抗値が第1抵抗値Rから第2抵抗値Rへ変化し、第1磁性素子10からの出力電圧の大きさが第2の値から第1の値へ変化するのに要する時間(立下り時間)は、第1強磁性層11に照射される光の強度が第2強度Wから第1強度Wに変化するのに要する時間よりも長く、第1磁性素子10からの出力電圧の大きさが第1の値から第2の値へ変化するのに要する時間(立上り時間)よりも長い。
【0094】
ここでは初期状態において磁化M11と磁化M12とが反平行な場合を例に説明したが、初期状態において磁化M11と磁化M12とは平行でもよい。この場合、第1磁性素子10のz方向の抵抗値は、磁化M11の状態が変化するほど(例えば、磁化M11の初期状態からの角度変化が大きくなるほど)大きくなる。磁化M11と磁化M12とが平行な場合を初期状態とする場合は、センス電流Isは第1強磁性層11から第2強磁性層12に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層11の磁化M11に対して、第2強磁性層12の磁化M12と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M11と磁化M12とが平行になる。なお、初期状態において磁化M11と磁化M12とが反平行の関係な方が、初期状態において磁化M11と磁化M12とが平行の関係にある場合より、光パルスの照射後に磁性素子からの出力電圧が元の状態に戻るまでの立下り時間は短い。
【0095】
第1磁性素子10からの出力電圧は、第1強磁性層11に照射される光の強度に対応して変化する。第1磁性素子10は、照射される光の強度を第1磁性素子10からの出力電圧に変換することができ、また、照射される光の強度の変化を第1磁性素子10からの出力電圧の変化に変換することができる。コンデンサ91は、出力電圧のうち高周波成分のみを通過させるため、初期状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした第1出力の電圧の変化量が、出力端子tから第1信号として出力される。
【0096】
同様に、第2磁性素子20からの出力電圧は、第1強磁性層21に照射される光の強度に対応して変化する。第2磁性素子20は、照射される光の強度を第2磁性素子20からの出力電圧の変化に変換することができ、また、照射される光の強度の変化を第2磁性素子20からの出力電圧の変化に変換することができる。コンデンサ91は、出力電圧のうち高周波成分のみを通過させるため、初期状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした第2出力の電圧の変化量が、出力端子tから出力される。
【0097】
光検知装置100は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際に生じる第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件とを満たす状態で合成する。
【0098】
第1条件は、例えば、遅延回路40によって満たされる。遅延回路40は、第2出力に起因する信号(この例では、第2出力の電圧の変化が抽出された信号)を遅延させる。第2出力に起因する信号は、遅延回路40によって遅延し、第2信号となる。出力端子tにおいて、第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なる。ここで、ピークの時間位置とは、信号の値がピークとなる時刻である。遅延回路40は、例えば、出力端子tにおいて、第1信号のピークの時間位置が第2信号のピークの時間位置より前になるようにする。第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置との差の時間は、第1信号の立下り部分において、第1信号のピークから、第1信号の値が第1信号のピーク値の30%の値になるまでの時間より短いことが好ましい。第2信号のピークの時間位置は、第1信号の立下りの傾きの絶対値が大きい時間位置にあることが好ましいためである。
【0099】
また第2条件は、第1実施形態に係る光検知装置100においては、第1磁性素子10の出力端子t側の第1面10Aに接続される電源31の極性(正負)と、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aに接続される電源32の極性(正負)とが異なることで、満たされる。
【0100】
第1磁性素子10と第2磁性素子20とは、センス電流Isの流れる方向が異なる。光パルスの第1磁性素子10に対する照射による第1磁性素子10からの第1出力の変化量ΔV10は、ΔV10=ΔR10×Iで求められる。式中Iは、センス電流Isの電流量の絶対値である。光パルスの第2磁性素子20に対する照射による第2磁性素子20からの第2出力の変化量ΔV20は、ΔV20=ΔR20×-Iで求められる。ΔR10は、光パルスの第1磁性素子10に対する照射による第1磁性素子10のz方向の抵抗値の変化量である。ΔR20は、光パルスの第2磁性素子20に対する照射による第2磁性素子20のz方向の抵抗値の変化量である。
【0101】
第1磁性素子10のz方向の抵抗値は、第1強磁性層11に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化した際に第2抵抗値Rから第1抵抗値Rに減少し、第1強磁性層11に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に第1抵抗値Rから第2抵抗値Rに増加する。同様に、第2磁性素子20のz方向の抵抗値は、第1強磁性層21に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化した際に減少し、第1強磁性層21に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に増加する。すなわち、第1磁性素子10と第2磁性素子20とは、光パルスの照射による抵抗値の変化量の正負が同じである。
【0102】
第1磁性素子10と第2磁性素子20とは、センス電流Isの流れる方向が異なり、光パルスの照射による抵抗値の変化量の正負が同じであるため、光パルスの照射による第1磁性素子10からの第1出力の変化量の正負と、光パルスの照射による第2磁性素子20からの第2出力の変化量の正負とは、反対となる。
【0103】
第1磁性素子10からの第1出力の強度と、第2磁性素子20からの第2出力の強度とは、同じでも異なっていてもよい。第1出力の強度は、電源31が供給する電流の値を変えることで変化する。電源31が第1磁性素子10に供給する電流の値が大きいほど、第1出力は大きくなり、第1信号の強度も大きくなる。同様に、第2出力及び第2信号の強度は、電源32が供給する電流値を変えることで変化する。そのため、電源31と電源32が供給する電流の値を調整することで、第1信号のピークに達するまでの変化量の絶対値と、第2信号のピークに達するまでの変化量の絶対値とを調整できる。
【0104】
図6は、第1実施形態に係る光検知装置100の光パルスに対する出力特性を示す。第1信号S1は、第1磁性素子10からの第1出力に起因した信号であり、第1出力の電圧の変化が抽出されたものである。第2信号S2は、第2磁性素子20からの第2出力に起因した信号であり、第2出力の電圧の変化を抽出し遅延させた信号である。図6に示すように、光Lが第1磁性素子10及び第2磁性素子20にパルス状に照射されると、第1信号S1と第2信号S2が出力される。光パルスの照射による第1信号S1のピークに達するまでの変化量ΔV10mは正であり、光パルスの照射による第2信号のピークに達するまでの変化量ΔV20mは負である。このように、光検知装置100は第2条件を満たす。また遅延回路40は、第2信号S2のピークの時間位置tbを第1信号S1のピークの時間位置taより遅らせる。第1信号S1のピークの時間位置taと第2信号S2のピークの時間位置tbとは異なる。このように、光検知装置100は第1条件を満たす。
【0105】
光検知装置100は、第1信号S1と第2信号S2とを合成する。第1信号S1と第2信号S2とは正負が反対であるため、この処理は第1信号S1の大きさ(絶対値)と第2信号S2の大きさ(絶対値)との差分を求める処理に対応する。第1信号S1と第2信号S2のそれぞれは、ピークに達してから元の値に戻るまでの立下り時間が長いが、第1信号S1と第2信号S2とを合成した光検知装置100からの合計出力信号Sは立下り時間が短い。第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際に生じる第1信号S1と第2信号S2とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成することで、合計出力信号Sの立下り部分は、第1信号S1の立下り部分と第2信号S2のピーク部分を含む部分とが相殺されることで絶対値が小さくなる一方、合計出力信号Sのピーク部分は、第1信号S1のピーク部分から第2信号の立ち上がり部分が差し引かれるだけであるので、絶対値はあまり小さくならないからである。つまり、第1実施形態に係る光検知装置100は、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い。
【0106】
パルス光が照射された後の出力の立下り時間が長いと、連続するパルス光が照射された際に、前のパルス光に由来する出力が立下り切る前に、次のパルス光が照射される場合がある。この場合、連続パルスに対して光検知装置100の出力変化が追い付かなくなり、光検知装置100の出力変化が時間の経過とともに小さくなる。これに対し、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い光検知装置100は、連続してパルス光が入射した場合でも、出力の変化が時間の経過とともに小さくなることを抑制できる。
【0107】
図7及び図8は、第1実施例に係る光検知装置の光パルスに対する出力特性を示す。図7及び図8は、図1に示す回路図の構成で、光検知装置100の出力特性を求めた結果である。
【0108】
図7は、光検知装置100の出力端子tからの出力(合計出力信号S)と、出力端子tからの出力のうちの、第1磁性素子10からの第1出力に起因する出力(第1信号S1)と、第2磁性素子20からの第2出力に起因する出力(第2信号S2)と、の測定値を示すグラフである。図8は、第1信号S1と、第2信号S2と、光検知装置100からの合計出力信号Sと、のそれぞれを、それぞれのピーク値で規格化したグラフである。
【0109】
図7及び図8のグラフに示される例では、第1磁性素子10を直径200nmの円柱とし、電源31から第1磁性素子10に印加する直流電流の大きさを0.76mAとし、第2磁性素子20を直径200nmの円柱とし、電源32から第2磁性素子20に印加する直流電流の大きさを0.76mAとした。第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10は、第1強磁性層11の磁化M11と第2強磁性層12の磁化M12とが反平行の関係であり、第2磁性素子20は、第1強磁性層21の磁化M21と第2強磁性層22の磁化M22とが反平行の関係である。第2信号S2の第1信号S1に対する遅延時間は、4.4nsecとした。第1信号S1のピークに達するまでの変化量の絶対値と、第2信号S2のピークに達するまでの変化量の絶対値とは同一とした。
【0110】
図7及び図8に示すように、第1実施形態に係る光検知装置100は、第1磁性素子10又は第2磁性素子20が単独の場合と比較して、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い。
【0111】
「第2実施形態」
図9は、第2実施形態に係る光検知装置101の回路図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。図9では、光検知装置101に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0112】
光検知装置101は、例えば、第1磁性素子10と第2磁性素子20とコンデンサ91とインダクタ92と出力端子tと基準電位端子tと磁場印加部51と磁場印加部52とを備える。光検知装置101は、電源31及び電源33を備えてもよく、電源31及び電源33は光検知装置101の外部にあってもよい。
【0113】
図10は、第2実施形態に係る第1磁性素子10及び第2磁性素子20の近傍の断面図である。図10では、光検知装置101に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0114】
第2実施形態に係る第2磁性素子20は、第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1強磁性層21の磁化M21と第2強磁性層22の磁化M22とが平行である点が、第1実施形態に係る第2磁性素子20と異なる。
【0115】
第2実施形態では、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係は、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係と異なる。例えば、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係は反平行であり、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係は平行である。第2実施形態はこの例に限られず、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係が平行で、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係が反平行でもよい。
【0116】
電源33は、直流電源であり、第2磁性素子20に接続されている。電源33は、電源31と同様のものを用いることができる。電源33は、第2磁性素子20に直流電流又は直流電圧を印加する。光検知装置101は、例えば、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aが、電源33の負の端子に接続され、第2磁性素子20の第1面20Aと対向する第2面20Bが、電源33の正の端子に接続されるように構成されている。
【0117】
光検知装置101は、第1磁性素子10の出力端子t側の第1面10Aに接続される電源31の極性(正負)が、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aに接続される電源33の極性(正負)と同じであるように構成されている。ここでは、第1面10Aが電源31の負の端子に接続され、第2面10Bが電源31の正の端子に接続され、第1面20Aが電源33の負の端子に接続され、第2面20Bが電源33の正の端子に接続される例を示したが、第1面10Aが電源31の正の端子に接続され、第2面10Bが電源31の負の端子に接続され、第1面20Aが電源33の正の端子に接続され、第2面20Bが電源33の負の端子に接続されてもよい。
【0118】
磁場印加部51は、第1磁性素子10を例えば膜面内方向(図10の例ではx方向)に挟む位置にある。第1強磁性層11の磁化M11は、磁場印加部51からの漏れ磁場がバイアス磁場として印加されることで、第1磁性素子10に光が照射されていない状態において、第2強磁性層12の磁化M12に対して反平行な向きに配向する。磁場印加部51は、第1磁性素子10に照射される光を遮らない位置にある。磁場印加部51は、例えば、硬磁性体を含む。
【0119】
磁場印加部52は、第2磁性素子20を例えば膜面内方向(図10の例ではx方向)に挟む位置にある。第1強磁性層21の磁化M21は、磁場印加部52からの漏れ磁場がバイアス磁場として印加されることで、第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第2強磁性層22の磁化M22と平行な向きに配向する。磁場印加部52は、第2磁性素子20に照射される光を遮らない位置にある。磁場印加部52は、例えば、硬磁性体を含む。
【0120】
次いで、光検知装置101の動作について説明する。第1磁性素子10に光パルスが照射されると第1磁性素子10は、第1出力を出力し、初期状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした第1出力の電圧の変化が、出力端子tから第1信号として出力される。第1信号は第1出力に起因する信号である。同様に、第2磁性素子20に光パルスが照射されると第2磁性素子20は、第2出力を出力し、初期状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした第2出力の電圧の変化が、出力端子tから出力される。第2出力の電圧の変化は出力端子tに至るまでに遅延し、第2信号となる。第2信号は第2出力に起因する信号である。
【0121】
光検知装置101は、所定の信号処理方法に従って、第1信号と第2信号とを合成して、出力端子tから出力する。光検知装置101は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際の第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成する。
【0122】
第1条件は、例えば、遅延回路40によって満たされる。遅延回路40によって第2出力に起因する信号(この例では、第2出力の電圧の変化が抽出された信号)を遅延させることで、出力端子tにおいて第1信号のピークの時間位置と第2信号のピーク値の時間位置とが異なるようにすることができる。
【0123】
また第2条件は、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係が、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係と異なることで、満たすことができる。
【0124】
第1磁性素子10のz方向の抵抗値は、第1強磁性層11に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化した際に第2抵抗値Rから第1抵抗値Rに減少し、第1強磁性層11に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に第1抵抗値Rから第2抵抗値Rに増加する。これに対し、第2磁性素子20のz方向の抵抗値は、第1強磁性層21に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化した際に増加し、第1強磁性層21に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に減少する。すなわち、第1磁性素子10と第2磁性素子20とは、光パルスの照射による抵抗値の変化量の正負が異なる。
【0125】
第1磁性素子10と第2磁性素子20とは、センス電流Isの流れる方向が同じであり、光パルスの照射による抵抗値の変化量の正負が異なるため、光パルスの照射による第1磁性素子10からの第1出力に起因する第1信号の変化量の正負と、光パルスの照射による第2磁性素子20からの第2出力に起因する第2信号の変化量の正負とが、反対となる。そのため、第2実施形態に係る光検知装置101では、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際に生じる第1信号と第2信号について、第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なり、第1信号のピークに達するまでの変化量と第2信号のピークに達するまでの変化量とは正負が反対であり、これらを合成することで、パルス光が照射された後の光検知装置101の出力の立下り時間が短い。
【0126】
図11及び図12は、第2実施例に係る光検知装置の光パルスに対する出力特性を示す。図11及び図12は、図9に示す回路図の構成で、光検知装置101の出力特性を求めた結果である。
【0127】
図11は、光検知装置101の出力端子tからの出力(合計出力信号S’)と、出力端子tからの出力のうちの、第1磁性素子10からの第1出力に起因する出力(第1信号S1’)と、第2磁性素子20からの第2出力に起因する出力(第2信号S2’)と、の測定値を示す。図12は、第1信号S1’と、第2信号S2’と、光検知装置101からの合計出力信号S’と、のそれぞれを、それぞれのピーク値で規格化したグラフである。
【0128】
図11及び図12のグラフに示される例では、第1磁性素子10を直径200nmの円柱とし、電源31から第1磁性素子10に印加する直流電流の大きさを0.76mAとし、第2磁性素子20を直径200nmの円柱とし、電源33から第2磁性素子20に印加する直流電流の大きさを0.34mAとした。第1磁性素子10に印加する直流電流の大きさと第2磁性素子20に印加する直流電流の大きさとが異なるため、第1信号のピークに達するまでの変化量の絶対値と、第2信号のピークに達するまでの変化量の絶対値とは異なる。第2信号の第1信号に対する遅延時間は、12nsecとした。
【0129】
図11及び図12に示すように、第2実施形態に係る光検知装置101は、第1磁性素子10又は第2磁性素子20が単独の場合と比較して、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い。
【0130】
ここまで、第2実施形態の一例を例示したが、第2実施形態に係る光検知装置101はこの例に限られない。
【0131】
例えば、図13は、第2実施形態に係る光検知装置の第1変形例の第1磁性素子10及び第2磁性素子20の近傍の断面図である。図13では、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0132】
光検知装置101Aは、光検知装置101の磁場印加部51に代えて、磁場印加部53が設けられている。
【0133】
磁場印加部53は、第1磁性素子10とz方向に重なる位置にある。磁場印加部53は、例えば、基板Subと絶縁層93の間の中間層95内に配置される。第1強磁性層11の磁化M11は、磁場印加部53からの漏れ磁場がバイアス磁場として印加されることで、第1磁性素子10に光が照射されていない状態において、第2強磁性層12の磁化M12に対して反平行な向きに配向する。磁場印加部53は、第1磁性素子10に照射される光を遮らない位置にある。磁場印加部53は、例えば、硬磁性体を含む。
【0134】
光検知装置101Aは、第1条件及び第2条件を満たして第1信号と第2信号とを合成するため、第2実施形態に係る光検知装置101と同様の効果を奏する。図13では、光検知装置101の磁場印加部51に代えて磁場印加部53を設ける例を示したが、磁場印加部52に変えて第2磁性素子20とz方向に重なる位置に磁場印加部を設けてもよい。
【0135】
また例えば、図14は、第2実施形態に係る光検知装置の第2変形例の第1磁性素子10及び第2磁性素子20の近傍の断面図である。図14では、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0136】
光検知装置101Bは、磁場印加部51と磁場印加部52を有さない点が、光検知装置100と異なる。また光検知装置101Bは、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第2強磁性層12の磁化M12の方向と、第2磁性素子20の第2強磁性層22の磁化M22の方向とが反対である。第2強磁性層12及び第2強磁性層22の磁化の配向方向は、製造時に設計できる。また第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1強磁性層11の磁化M11と第2強磁性層12の磁化M12とは反平行の関係であり、第1強磁性層21の磁化M21と第2強磁性層22の磁化M22とは平行の関係である。
【0137】
光検知装置101Bは、第1条件及び第2条件を満たして第1信号と第2信号とを合成するため、第2実施形態に係る光検知装置101と同様の効果を奏する。
【0138】
「第3実施形態」
図15は、第3実施形態に係る光検知装置102の回路図である。第3実施形態において、第2実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。図15では、光検知装置102に光が照射されていない初期状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0139】
光検知装置102は、例えば、第1磁性素子10と第2磁性素子20と遅延回路40と反転回路41とコンデンサ91とインダクタ92と出力端子tと基準電位端子tとを備える。光検知装置102は、電源31及び電源33を備えてもよく、電源31及び電源33は光検知装置102の外部にあってもよい。
【0140】
第3実施形態に係る第2磁性素子20は、第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1強磁性層21の磁化M21と第2強磁性層22の磁化M22とが反平行の関係にある点が、第2実施形態に係る第2磁性素子20と異なる。第3実施形態では、第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10の第1強磁性層11と第2強磁性層12の磁化方向の関係は、第2磁性素子20の第1強磁性層21と第2強磁性層22の磁化方向の関係と同じである。
【0141】
反転回路41は、例えば、第2磁性素子20と出力端子tとの間にある。反転回路41は、第1磁性素子10と出力端子tとの間にあってもよい。反転回路41は、反転回路41に入力された入力信号の極性を反転させて出力する。反転回路41は、例えば、反転増幅回路(例えば、オペアンプ)である。
【0142】
第1磁性素子10に光パルスが照射されると、第1磁性素子10は第1出力を出力し、初期状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした第1出力の電圧の変化が、出力端子tから第1信号として出力される。第1信号は第1出力に起因する信号である。第2磁性素子20に光パルスが照射されると、第2磁性素子20は第2出力を出力し、初期状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした第2出力の電圧の変化がコンデンサ91によって抽出され、第2出力の電圧の変化を抽出した信号の極性を反転回路41によって反転させた信号を、遅延回路40によって遅延させた信号が、出力端子tから第2信号として出力される。第2信号は第2出力に起因する信号である。光検知装置102は、所定の信号処理方法に従って、第1信号と第2信号とを合成し、出力端子tから出力する。光検知装置102は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際に生じる第1信号と第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で合成する。
【0143】
第1条件は、例えば、遅延回路40によって満たされる。遅延回路40が第2出力に起因する信号(この例では、第2出力の電圧の変化を抽出した信号の極性を反転回路60によって反転させた信号)を遅延させることで、出力端子tにおいて第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異ならせることができる。
【0144】
また第2条件は、第2磁性素子20からの第2出力に起因する信号の極性を反転回路41で反転させることで、満たすことができる。この場合、第2信号は、第2出力の電圧の変化を抽出した信号の極性を反転させ、更に遅延させたものとなる。
【0145】
第1磁性素子10からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子20からの第2出力に起因する第2信号とは、出力端子tにおいて、第1条件と第2条件とを満たす。そのため、光検知装置102は、第1条件及び第2条件を満たした状態で、第1信号と第2信号とを合成するため、第1実施形態に係る光検知装置100と同様の効果を奏する。
【0146】
図16及び図17は、第3実施例に係る光検知装置の光パルスに対する出力特性を示す。図16及び図17は、図15に示す回路図の構成で、光検知装置102の出力特性を求めた結果である。
【0147】
図16は、光検知装置102の出力端子tからの出力(合計出力信号S’’)と、出力端子tからの出力のうちの、第1磁性素子10からの第1出力に起因する出力(第1信号S1’’)と、第2磁性素子20からの第2出力に起因する出力(第2信号S2’’)と、の測定値を示す。図17は、第1信号S1’’と、第2信号S2’’と、光検知装置102からの合計出力信号S’’と、のそれぞれを、それぞれのピーク値で規格化したグラフである。
【0148】
図16及び図17のグラフに示される例では、第1磁性素子10を直径200nmの円柱とし、電源31から第1磁性素子10に印加する直流電流の大きさを0.76mAとし、第2磁性素子20を直径200nmの円柱とし、電源33から第2磁性素子20に印加する直流電流の大きさを0.76mAとした。第1磁性素子10及び第2磁性素子20に光が照射されていない状態において、第1磁性素子10は、第1強磁性層11の磁化M11と第2強磁性層12の磁化M12とが反平行の関係であり、第2磁性素子20は、第1強磁性層21の磁化M21と第2強磁性層22の磁化M22とが反平行の関係である。第2信号の第1信号に対する遅延時間は、11.4nsecとした。また反転回路41の利得は、0.4倍とした。
【0149】
図16及び図17に示すように、第3実施形態に係る光検知装置102は、第1磁性素子10又は第2磁性素子20が単独の場合と比較して、パルス光が照射された後の出力の立下り時間が短い。
【0150】
「第4実施形態」
図18は、第4実施形態に係る光検知装置103の回路図である。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。図18では、光検知装置103に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0151】
光検知装置103は、例えば、第1磁性素子10と第2磁性素子20とコンデンサ91とインダクタ92と出力端子tと基準電位端子tとを備える。光検知装置103は、電源31及び電源32を備えてもよく、電源31及び電源32は光検知装置103の外部にあってもよい。光検知装置103は、光検知装置100における遅延回路40を有さない。
【0152】
図19は、第4実施形態に係る第1磁性素子10及び第2磁性素子20の近傍の断面図である。図19では、光検知装置103に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0153】
光検知装置103には、光パルスが照射される。光検知装置103の光が照射される面を光照射面LSと称する。光検知装置103は、光照射面LSと第1磁性素子10との間に、第1中間層61を有する。また光検知装置103は、光照射面S1と第2磁性素子20との間に、第2中間層62を有する。
【0154】
第1中間層61は、例えば、第1磁性素子10上にある。第2中間層62は、例えば、第2磁性素子20上にある。第1中間層61と第2中間層62とは、屈折率が異なる。第1中間層61と第2中間層62と屈折率が異なると、光パルスが第1磁性素子10に照射されるまでの第1光学距離と、光パルスが第2磁性素子20に照射されるまでの第2光学距離と、が異なる。例えば、第2中間層62の屈折率は、第1中間層61の屈折率より大きい。この場合、光パルスが第2磁性素子20に照射されるまでの第2光学距離は、光パルスが第1磁性素子10に照射されるまでの第1光学距離より長い。
【0155】
第1磁性素子10に光パルスが照射されると、第1磁性素子10は第1出力を出力し、初期状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした第1出力の電圧の変化が、出力端子tから第1信号として出力される。第1信号は第1出力に起因する信号である。第2磁性素子20に光パルスが照射されると、第2磁性素子20は第2出力を出力し、初期状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした第2出力の電圧の変化が、出力端子tから第2信号として出力される。第2信号は第2出力に起因する信号である。光検知装置103は、所定の信号処理方法に従って、第1信号と第2信号とを合成して、出力端子tから出力する。光検知装置103は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際の第1出力に起因する第1信号と第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で、合成する。
【0156】
第1条件は、例えば、第1光学距離と第2光学距離とが異なることで満たされる。第1光学距離と第2光学距離とが異なることで、出力端子tにおいて第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なる。
【0157】
また第2条件は、第4実施形態に係る光検知装置103においては、第1磁性素子10の出力端子t側の第1面10Aに接続される電源31の極性(正負)と、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aに接続される電源32の極性(正負)とが異なることで、満たされる。
【0158】
第1磁性素子10からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子20からの第2出力に起因する第2信号とは、出力端子tにおいて、第1条件と第2条件とを満たす。そのため、光検知装置103は、第1条件及び第2条件を満たして第1信号と第2信号とを合成するため、第1実施形態に係る光検知装置100と同様の効果を奏する。
【0159】
「第5実施形態」
図20は、第5実施形態に係る光検知装置104の特徴部分の平面図である。図21及び図22は、第5実施形態に係る光検知装置104の特徴部分の断面図である。図21は、図20のA-A線に沿った断面であり、図22は、図20のB-B線に沿った断面である。第5実施形態に係る光検知装置104の回路図は、光検知装置103の回路図と同等である。第5実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。図21及び図22では、光検知装置104に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0160】
光検知装置104は、例えば、第1光導波路65と第2光導波路66とクラッド67とを有する。光パルスは、光検知装置104の光照射面LSに照射される。第1光導波路65は、光パルスを第1磁性素子10に伝搬するように構成されている。第2光導波路66は、光パルスを第2磁性素子20に伝搬するように構成されている。第1光導波路65と第2光導波路66とは長さが異なる。
【0161】
第1光導波路65の少なくとも一部は、例えば、第1磁性素子10上にある。第2光導波路66の少なくとも一部は、例えば、第2磁性素子20上にある。第1光導波路65及び第2光導波路66は、クラッド67で被覆されている。第1光導波路65及び第2光導波路66は、例えば、主成分としてニオブ酸リチウムを含む。ニオブ酸リチウムの一部元素は、他の元素に置換されていてもよい。クラッド67は、例えば、SiO、Al、MgF、La、ZnO、HfO、MgO、Y、CaF、In等又はこれらの混合物である。第1光導波路65及び第2光導波路66の材料およびクラッド67の材料はこの例に限られない。例えば、第1光導波路65及び第2光導波路66を構成するコアがシリコン又は酸化シリコンに酸化ゲルマニウムを添加したもので、クラッド67が酸化シリコンでもよい。
【0162】
第1光導波路65と第2光導波路66とは長さが異なるため、光パルスが第2磁性素子20に照射されるまでの第2光学距離は、光パルスが第1磁性素子10に照射されるまでの第1光学距離と異なる。例えば、光パルスが第2磁性素子20に照射されるまでの第2光学距離は、光パルスが第1磁性素子10に照射されるまでの第1光学距離より長い。
【0163】
第1磁性素子10に光パルスが照射されると、第1磁性素子10は第1出力を出力し、初期状態における第1磁性素子10からの出力電圧を基準とした第1出力の電圧の変化が、出力端子tから第1信号として出力される。第1信号は第1出力に起因する信号である。第2磁性素子20に光パルスが照射されると、第2磁性素子20は第2出力を出力し、初期状態における第2磁性素子20からの出力電圧を基準とした第2出力の電圧の変化が、出力端子tから第2信号として出力される。第2信号は第2出力に起因する信号である。光検知装置104は、所定の信号処理方法に従って、第1信号と第2信号とを合成して、出力端子tから出力する。光検知装置104は、第1磁性素子10と第2磁性素子20とに同一の光パルスが照射された際の第1出力に起因する第1信号と第2出力に起因する第2信号とを、第1条件と第2条件を満たす状態で、合成する。
【0164】
第1条件は、例えば、第1光導波路65と第2光導波路66とは長さが異なることで満たされる。第1光導波路65と第2光導波路66とは長さが異なると、第1光学距離と第2光学距離とが異なり、出力端子tにおいて第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なる。
【0165】
また第2条件は、第5実施形態に係る光検知装置104においては、第1磁性素子10の出力端子t側の第1面10Aに接続される電源31の極性(正負)と、第2磁性素子20の出力端子t側の第1面20Aに接続される電源32の極性(正負)とが異なることで、満たされる。
【0166】
第1磁性素子10からの第1出力に起因する第1信号と、第2磁性素子20からの第2出力に起因する第2信号とは、出力端子tにおいて、第1条件と第2条件とを満たす。そのため、光検知装置104は、第1条件及び第2条件を満たして第1信号と第2信号とを合成するため、第1実施形態に係る光検知装置100と同様の効果を奏する。
【0167】
ここでは、第1光導波路65と第2光導波路66との長さを変えることで、第1条件を満たす例を示したが、第1条件を満たすための構成は、この例に限られない。例えば、図23に示す第1変形例に係る光検知装置104Aのように、第1光導波路65と第2光導波路66との長さを同じとして、第1光導波路65と第2光導波路66との屈折率を変えてもよい。第1光導波路65の屈折率と第2光導波路66の屈折率が異なると、第1光学距離と第2光学距離とが異なり、出力端子tにおいて第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なる。
【0168】
「第6実施形態」
図24は、第6実施形態に係る光検知装置105の回路図である。第6実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。図24では、光検知装置105に光が照射されていない状態における強磁性体の磁化の向きを矢印で表している。
【0169】
光検知装置105は、例えば、第1磁性素子10と遅延回路40と反転回路41とコンデンサ91とインダクタ92と出力端子tと基準電位端子tとを備える。反転回路41は、第2実施形態におけるものと同様である。光検知装置105は、電源31を備えてもよく、電源31は光検知装置105の外部にあってもよい。
【0170】
図24に示す光検知装置105は、第1磁性素子10と出力端子tとを結ぶ線路が、第1線路71と第2線路72とに分岐している。第1磁性素子10からの第1出力は、第1線路71と第2線路72のそれぞれに伝搬する。
【0171】
遅延回路40は、第1線路71と第2線路72とのうちいずれか一方にのみ接続されている。反転回路41は、第1線路71と第2線路72とのうちいずれか一方にのみ接続されている。遅延回路40と反転回路41とは、同じ線路に接続されていてもよいし、異なる線路に接続されていてもよい。例えば図24に示す例では、遅延回路40及び反転回路41は、第2線路72に接続されている。
【0172】
光検知装置105は、所定の信号処理方法に従って、第1信号と第2信号とを合成して、出力端子tから出力する。光検知装置105では、第1磁性素子10に光パルスが照射された際に、第1線路71を介して出力端子tに至る第1信号と第2線路72を介して出力端子tに至る第2信号とが生じる。光検知装置105は、第1条件と第2条件を満たす状態で、第1信号と第2信号を合成する。第1条件は、第1信号のピークの時間位置と第2信号のピークの時間位置とが異なるという条件である。第2条件は、前記第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、前記第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるという条件である。
【0173】
まず、第1磁性素子10に光パルスが照射されると、第1磁性素子10は第1出力を出力する。コンデンサ91により第1出力の電圧の変化が抽出された信号が、第1線路71と第2線路72に分配される。第1出力が第1線路71と第2線路72とに分配される分配率は、等分でもよいし、異なってもよい。第1線路71に分配された信号は第1信号となる。第2線路72に分配された信号は、反転回路41で極性が反転し、遅延回路40で遅延することで、第2信号となる。
【0174】
第1条件は、例えば、遅延回路40によって満たされる。遅延回路40が、第1磁性素子10からの第1出力に起因すると共に第2線路72を伝搬する信号を遅延させると、出力端子tにおいて、第1信号のピークの時間位置と、第2信号のピークの時間位置と、が異なるようになる。
【0175】
また第2条件は、第1磁性素子10からの第1出力に起因すると共に第2線路72を伝搬する信号を反転回路41で反転させることで、満たすことができる。反転回路41が第1磁性素子10からの第1出力に起因すると共に第2線路72を伝搬する信号の極性を反転させると、出力端子tにおいて、第1信号のピークに達するまでの変化量の正負と、第2信号のピークに達するまでの変化量の正負と、が異なるようになる。
【0176】
第1信号と、第2信号とは、出力端子tにおいて、第1条件と第2条件とを満たす。光検知装置105は、第1条件及び第2条件を満たして、第1信号と第2信号とを合成するため、第1実施形態に係る光検知装置100と同様の効果を奏する。
【0177】
以上、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記の実施形態及び変形例の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0178】
例えば、第1実施形態及び第3実施形態から第5実施形態において、磁場印加部を設けてもよい。また例えば、第4実施形態から第5実施形態において遅延回路を組み合わせてもよい。また例えば、第4実施形態から第5実施形態において、電源33及び反転回路41を用いてもよい。
【0179】
また例えば、上述の第1実施形態から第5実施形態では、コンデンサ91を用いることで、第1出力及び第2出力の電圧の変化分を抽出している例を示したが、コンデンサ91を設けずに、第1出力そのものと第2出力そのものとを用いてもよい。同様に、第6実施形態では、コンデンサ91を用いることで、第1出力の変化分を抽出している例を示したが、コンデンサ91を設けずに、第1出力そのものを用いてもよい。
【0180】
上記の実施形態及び変形例にかかる光検知装置は、通信システムの送受信装置等に適用できる。
【0181】
図25は、第1適用例にかかる送受信装置1000のブロック図である。送受信装置1000は、受信装置200と送信装置300とを備える。受信装置200は光信号L1を受信し、送信装置300は光信号L2を送信する。
【0182】
受信装置200は、例えば、光検知装置100と信号処理部110とを備える。光検知装置100は、上述の別の実施形態又は変形例と置き換えてもよい。受信装置200において、第1磁性素子10及び第2磁性素子20には、高周波で繰り返される複数の光パルスが照射される。光信号L1は、これらの複数の光パルスにより構成される。光検知装置100は、光信号L1を電気信号に変換する。信号処理部110は、光検知装置100で変換した電気信号を処理する。信号処理部110は、光検知装置100から生じる電気信号を処理することにより、光信号L1に含まれる信号を受信する。受信装置200は、光信号L1に含まれる信号を、光検知装置100からの出力信号に基づいて受信する。
【0183】
送信装置300は、例えば、光源301と電気信号生成素子302と光変調素子303とを備える。光源301は、例えば、レーザー素子である。光源301は、送信装置300の外部にあってもよい。電気信号生成素子302は、送信情報に基づき電気信号を生成する。電気信号生成素子302は、信号処理部110の信号変換素子と一体となっていてもよい。光変調素子303は、電気信号生成素子302で生成された電気信号に基づき、光源301から出力された光を変調し、光信号L2を出力する。
【0184】
図26は、通信システムの一例の概念図である。図26に示す通信システムは、2つの端末装置500を有する。端末装置500は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等である。
【0185】
端末装置500のそれぞれは、受信装置200と送信装置300とを備える。一方の端末装置500の送信装置300から送信された光信号を、他方の端末装置500の受信装置200で受信する。端末装置500間の送受信に使用される光は、例えば可視光である。受信装置200は、光検知装置100を有する。上述の光検知装置100は、信号の立下り時間が短いため、高速通信を行っても、出力が飽和することを抑制できる。
【符号の説明】
【0186】
10…第1磁性素子、10A,20A…第1面、10B,20B…第2面、11,21…第1強磁性層、12,22…第2強磁性層、13,23…スペーサ層、14,24…第1電極、15,25…第2電極、20…第2磁性素子、31,32,33…電源、40…遅延回路、41…反転回路、51,52,53…磁場印加部、61…第1中間層、62…第2中間層、65…第1光導波路、66…第2光導波路、67…クラッド、71…第1線路、72…第2線路、91…コンデンサ、92…インダクタ、93…絶縁層、100,101,102,102A,102B,103,104,105…光検知装置、110…信号処理部、200…受信装置、300…送信装置、301…光源、302…電気信号生成素子、303…光変調素子、500…端末装置、1000…送受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26