(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155735
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20241024BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20241024BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C10G1/10 ZAB
C10G45/02
C08J11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029054
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0051637
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0126339
(32)【優先日】2023-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョ サン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン ス キル
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク ミン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】シン ミン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジン ソン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401BA06
4F401BB09
4F401CA25
4F401CA70
4F401EA46
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA60
4F401EA62
4F401EA63
4F401EA69
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC02
4H129CA22
4H129DA15
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃プラスチックから精製炭化水素を製造する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、前記前処理ステップで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水ステップと、前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理ステップと、前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、を含み、前記高温フィルターで凝縮された液体は前記熱分解反応器に再投入される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、
前記前処理ステップで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入し、熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、
前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、
前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水ステップと、
前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理ステップと、
前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、
を含み、
前記高温フィルターで凝縮された液体は前記熱分解反応器に再投入されるものである、
廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記高温フィルターはビード(Bead)で充填されたものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記ビードは、ケイ砂(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項2に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記高温フィルターに温度勾配が形成されたものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項5】
前記温度勾配は、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えることによって形成されるものである、請求項4に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項6】
前記熱分解反応器は、少なくとも2つのバッチ反応器を含むものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項7】
前記熱分解ステップは、前記少なくとも2つのバッチ反応器をスイッチ運転することにより行われるものである、請求項6に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項8】
前記精製熱分解油は、石油系炭化水素と混合されて混合油として蒸留されるものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項9】
前記精製熱分解油は、前記混合油の総重量に対して50重量%以下含まれるものである、請求項8に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項10】
前記廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項11】
前記脱水ステップで、
前記熱分解油は、前記洗浄水よりも多くの量で混合される、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項12】
前記脱水ステップとで、
前記第1混合液は、前記熱分解油と前記洗浄水が1:0.001~0.5の体積比で混合されるものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項13】
前記脱水ステップで、
前記第1混合液は、前記熱分解油と前記解乳化剤が1:0.000001~0.001の体積比で混合されるものである、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項14】
前記解乳化剤が、ポリエチレングリコール、tert-ブタノール、アセトン、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、ポリアルキレンオキシドおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項15】
廃プラスチックを前処理する前処理装置と、
前記前処理装置で前処理された廃プラスチックを投入して熱分解ガスを製造する熱分解反応器と、
前記熱分解ガスを投入して熱分解油を製造する高温フィルター(Hot filter)と、
前記高温フィルターから凝縮した液体が前記熱分解反応器に再投入されるように、前記高温フィルターと前記熱分解反応器を接続する接続配管と、
前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水装置と、
前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理装置と、
前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留装置と、
を含む、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【請求項16】
前記高温フィルターはビード(Bead)を充填したもので、請求項15に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【請求項17】
前記ビードは、ケイ砂(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項16に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【請求項18】
前記製造システムは、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備える、請求項15に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチック熱分解油など廃物質のクラッキング(Cracking)、熱分解反応を通じて生成された熱分解油内には廃物質に起因する多量の不純物が含まれているため、これを燃料として活用する場合、SOx、NOxなどの大気汚染物質を排出する恐れがある。特に、塩素成分は高温処理過程で装置の腐食を引き起こす恐れがある塩化水素に転換されて排出される問題がある。また、廃プラスチック熱分解油は一般的な方法で原油から製造される油分と比較して塩素、窒素、金属などの不純物含有量が高いため、ガソリン、軽油などの高付加価値燃料に限られた量しかブレンドすることができず、大量に利用するためには精製工程を経なければならない。
【0003】
従来、精油技術を活用した水添脱硫工程(Hydrotreating)、塩化水素処理工程などの後処理工程を通じて塩素、窒素、金属などの不純物を除去していたが、廃プラスチック熱分解油などの熱分解油は高含有量の塩素などを含むため、水添脱硫工程で形成される過剰な塩化水素の発生により、装置の腐食や反応異常、製品の性状悪化の問題が報告されており、前処理していない熱分解油を水添脱硫工程に導入することは難しい。
【0004】
また、従来技術のように、水素化処理触媒の下で油と水素を反応させる場合、精製された油と共に生成される塩化水素などの塩素化合物と窒素化合物が反応してアンモニウム塩(NH4Cl)を生成し、このアンモニウム塩は様々な工程的問題を引き起こす。具体的には、オイルと水素が反応して反応器内部に生成されるアンモニウム塩は、反応器の腐食を引き起こし、耐久性を低下させるだけでなく、差圧の発生、これによる工程効率の低下など多くの工程上の問題を引き起こす。また、工程を長期間運営する場合、廃プラスチック熱分解油内の不純物粒子(particle)が反応器内に固着し、同様に様々な工程上の問題を引き起こす。
【0005】
したがって、塩素や窒素などを含む不純物を含む廃プラスチック熱分解油の精製工程において、アンモニウム塩(NH4Cl)が生成されないようにしたり、これを最小限生成するようにし、反応器内に不純物粒子が固着する現象を防止できる技術が要求される。
【0006】
また、不純物除去に加えて、経済性確保のために廃プラスチック熱分解油の収率向上および軽質化による廃プラスチック熱分解油の高付加価値化が求められている。
【0007】
それだけでなく、前記廃プラスチック熱分解油から軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる技術開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の一態様によれば、多量の不純物を含む廃プラスチックから軽質炭化水素の割合が高い高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0009】
本開示の他の態様によれば、廃プラスチックから得られる熱分解油の収率が向上することができる。
【0010】
本開示の別の態様によれば、多量の不純物を含む廃プラスチックから不純物が低減された高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから不純物が低減された精製炭化水素を得ることができる。
【0011】
本開示の他の態様によれば、廃プラスチックから精製炭化水素を製造する際の工程が簡素化された方法および装置を提供することができる。
【0012】
本開示の一態様によれば、品質に優れ、既存の石油製品とのブレンドまたは石油精製プロセスに原料として使用可能な高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから精製炭化水素を得ることができる。
【0013】
本開示の他の一態様によれば、塩素および窒素などを含む不純物を含む廃プラスチック熱分解油からアンモニウム塩(NH4Cl)の生成を最小限に抑える廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムを提供することができる。
【0014】
本開示の一態様によれば、触媒の活性が長く維持され、精製効率に優れ、長期間の運転が可能な廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムを提供することができる。
【0015】
本開示の他の一態様によれば、不純物粒子の固着現象を防止することができる廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムを提供することができる。
【0016】
本開示の別の一態様によれば、塩素、窒素、酸素、金属などの不純物含有量およびオレフィン含有量が非常に低く、品質が優れており、既存の石油製品とのブレンドまたは石油精製および石油化学工程に原料として使用可能な廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、前記前処理ステップとで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水ステップと、前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理ステップと、前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、を含み、前記高温フィルターで凝縮された液体は前記熱分解反応器に再投入されるものである、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法を提供することができる。
【0018】
本開示による一態様において、前記高温フィルターは、ビード(Bead)で充填することができる。
【0019】
本開示による一態様において、前記ビードは、ケイ砂(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含めてもよい。
【0020】
本開示による一態様において、前記廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記高温フィルターに温度勾配が形成されたものであってもよい。
【0021】
本開示による一態様において、前記温度勾配は、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えることによって形成されたものであってもよい。
【0022】
本開示に係る一態様において、前記熱分解反応器は、少なくとも2つのバッチ反応器を含めてもよい。
【0023】
本開示による一態様では、前記熱分解ステップは、前記少なくとも2つのバッチ反応器をスイッチ運転することによって行われてもよい。
【0024】
本開示による一態様において、前記精製熱分解油は、石油系炭化水素と混合して混合油に蒸留してもよい。
【0025】
本開示による一態様では、前記精製熱分解油は、前記混合油の総重量に対して50重量%以下で含まれるものであってもよい。
【0026】
本開示による一態様において、前記廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種を含めてもよい。
【0027】
本開示による一態様において、前記廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記脱水ステップにおいて、前記熱分解油を前記洗浄水よりも多量に混合してもよい。
【0028】
本開示による一態様において、前記廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記脱水ステップにおいて、前記第1混合液が、前記熱分解油と前記洗浄水とを1:0.001~0.5の体積比で混合することであってもよい。
【0029】
本開示による一態様において、前記廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記脱水ステップにおいて、前記第1混合液が、前記熱分解油と前記解乳化剤とを1:0.000001~0.001の体積比で混合することであってもよい。
【0030】
本開示による一態様において、前記解乳化剤は、ポリエチレングリコール、tert-ブタノール、アセトン、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、ポリアルキレンオキシドおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0031】
また、本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理装置と、前記前処理装置で前処理された廃プラスチックを投入して熱分解ガスを製造する熱分解反応器と、前記熱分解ガスを投入して熱分解油を製造する高温フィルター(Hot filter)と、前記高温フィルターで凝縮された液体が前記熱分解反応器に再投入されるように前記高温フィルターと前記熱分解反応器を接続する接続配管と、前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水装置と、前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理装置と、前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留装置と、を含む、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムを提供することができる。
【0032】
本開示による一態様において、前記高温フィルターは、ビード(Bead)で充填されたものであってもよい。
【0033】
本開示による一態様において、前記ビードは、ケイ砂(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含めてもよい。
【0034】
本開示による一態様において、前記製造システムは、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えてもよい。
【発明の効果】
【0035】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、多量の不純物を含む廃プラスチックから軽質炭化水素の割合が高い高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0036】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、廃プラスチックから得られる熱分解油の収率を向上させることができる。
【0037】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、多量の不純物を含む廃プラスチックから不純物が低減された高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから不純物が低減された精製炭化水素を得ることができる。
【0038】
本開示の他の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、廃プラスチックから精製炭化水素を製造する際の工程を簡素化することができる。
【0039】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、品質が優れており、既存の石油製品とのブレンドまたは石油精製プロセスに原料として使用可能な軽質炭化水素の割合が高い高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0040】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、塩素および窒素などを含む不純物が含有された廃プラスチック熱分解油の精製時にアンモニウム塩(NH4Cl)が生成されないようにしたり、これを最小限に生成するようにし、不純物粒子の固着化現象を防止することができる。
【0041】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、水分による触媒の不活性化が防止されるため、精製効率が優れ、工程の長期運転が可能な効果がある。
【0042】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、塩素、窒素、酸素、金属などの不純物含有量およびオレフィン含有量が非常に低く、品質が優れており、既存の石油製品とのブレンドまたは石油精製および石油化学ステップとの原料として使用可能な廃プラスチック熱分解油を提供することができる。
【0043】
本開示の態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、廃プラスチックを利用した環境にやさしい(Eco-friendly)石油化学製品の生産に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の一態様による廃プラスチック熱分解油の製造に関する工程図である。
【
図2】本開示の一態様による高温フィルターに関する図面である。
【
図3】本開示の一態様による脱水ステップと水素化処理ステップの工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示の利点および特徴、ならびにそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本開示は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態で実施されるものであり、単に本実施例は、本開示を完全なものとし、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に本発明のカテゴリーを完全に知らせるために提供されるものであり、本開示は請求項のカテゴリーによって定義されるだけである。
【0046】
他に定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本開示が属する技術分野において、当業者に共通に理解される意味で使用することができる。
【0047】
本明細書で使用される用語の単数形は、特に指示がない限り、複数形も含むと解釈することができる。
【0048】
本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内のすべての値、定義される範囲の形と幅から論理的に導かれる増分、二重に限定されたすべての値、および異なる形で限定された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む。本開示の明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の丸めにより発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0049】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と同等の意味を持つ開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料または工程を排除するものではない。
【0050】
本明細書で特に記載がない限り、%という単位は、特に定義がない限り重量%を意味する。
【0051】
本明細書において「A~B」とは、特に他の定義がない限り「A以上B以下」を意味する。
【0052】
本明細書で「熱分解油収率」とは、熱分解ステップの生成物のうち、油分、水系副産物、熱分解残渣(Char)および副産物ガスの重量合計に対する油分の重量比を意味する。
【0053】
本明細書で使用される用語、「垂直電極」は、地面に対して垂直方向に立てられた電極を意味することができ、「水平電極」は、地面に対して水平方向に置かれた電極を意味することができる。
【0054】
以下、本開示の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムについて詳細に説明する。ただし、これは例示的なものに過ぎず、本開示が例示的に説明した具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0055】
本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、前記前処理ステップとで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水ステップと、前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理ステップと、前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、を含み、前記高温フィルターで凝縮された液体は前記熱分解反応器に再投入されることである、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法を提供する。
【0056】
そこで、本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、多量の不純物を含む廃プラスチックから、軽質炭化水素の割合が高い高付加価値化熱分解油を製造することができ、これにより、軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。また、前記得られた熱分解油の収率を著しく向上させることができる。
【0057】
また、本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、多量の不純物を含む廃プラスチックから不純物が低減された高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから不純物が低減された精製炭化水素を得ることができる。
【0058】
本開示の一態様に係る廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記高温フィルターで凝縮した液体を前記熱分解反応器に再投入することにより、熱分解油中の重質炭化水素に対するクラッキングを向上させることができる。したがって、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0059】
本開示の他の一態様によると、前記高温フィルターは、ビード(Bead)で充填されたものであることができる。前記高温フィルターがビードで充填される場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱伝達効果が最大化され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。また、前記熱分解油の収率が向上することができる。
【0060】
本開示の一態様によれば、前記ビードは、前記高温フィルターに、前記高温フィルター内部容積に対して50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、80vol%以上、85vol%以上、90vol%以上、95vol%以下、93vol%以下、91vol%以下、90vol%以下、89vol%以下、87vol%以下、85vol%以下、80vol%以下、または前記数値の間の値で充填してもよい。具体的には、前記ビードは、前記高温フィルターに前記高温フィルター内部容積に対して70~95vol%、80~90vol%または85~90vol%で充填することができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターに温度勾配が形成されてもよい。前記高温フィルターに温度勾配が形成される場合、高温フィルター内の上段に移動する熱分解ガスと下段に凝縮する液体が効率的に循環され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。また、これにより、軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を製造することができる。それだけでなく、前記熱分解油の収率が向上することができる。
【0062】
本開示の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの下段の温度が前記高温フィルターの上段の温度よりも高いものであってもよい。本開示の他の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの下段の温度が前記高温フィルターの中段の温度よりも高く、前記高温フィルターの中段の温度が前記高温フィルターの上段の温度よりも高いものであってもよい。これにより、前記高温フィルター内の循環効率および熱伝達効率が向上することができる。
【0063】
本開示の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えることによって形成されることができる。本開示の他の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの外部に少なくとも3つのヒーターを備えることによって形成されるものであることができる。前記高温フィルターの外部に少なくとも2つのヒーターを備える場合、高温フィルターの温度勾配の形成が容易であり、高温フィルターの運転状況に応じて上段、中段、下段の温度を弾性的に調節することができ、柔軟なプロセス運転が可能である。
【0064】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターの下段の温度は、400℃以上、420℃以上、440℃以上、460℃以上、480℃以上、500℃以上、550℃以上または600℃以上であってもよい。
【0065】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターの上段の温度は、600℃以下、550℃以下、500℃以下、480℃以下、460℃以下、440℃以下、420℃以下または400℃以下であってもよい。
【0066】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターの中段の温度は、300℃以上600℃以下、400℃以上600℃以下、400℃以上500℃以下、420℃以上480℃以下または440℃以上460℃以下であってもよい。
【0067】
本開示の一態様によれば、前記前処理ステップで、a)廃プラスチックと中和剤を反応させるステップと、b)前記a)ステップの生成物と銅化合物を反応させるステップと、を行われてもよい。これにより、前記前処理ステップとは、廃プラスチック原料物質を処理して、精製ステップに導入可能なレベルまでClの含有量を低減することができる。
【0068】
本開示の一態様によれば、前記b)ステップで、銅化合物以外に金属酸化物およびゼオライト等の添加剤または中和剤を使用してもよい。前記金属酸化物は、2価金属の酸化物の形態であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることができる。前記廃プラスチックは、有機塩素(organic Cl)、無機塩素(Inorganic Cl)および芳香族塩素(Aromatic Cl)を含むことができ、前記廃プラスチックの塩素含有量は10ppm以上、50ppm以上、100ppm以上または100~1、000ppmであってもよく、本開示がこれに限定されるものではない。廃プラスチック熱分解油など、廃プラスチックのクラッキング、熱分解反応を通じて生成された熱分解油内には、廃プラスチックに起因する多量の不純物が含まれる。特に、熱分解油を前処理して有機/無機塩素などの塩素成分を除去する必要がある。前記廃プラスチックは、生活系廃プラスチックと産業系廃プラスチックに区分することができる。生活系廃プラスチックはPE、PP以外のPVC、PS、PET、PBTなどが混合されたプラスチックで、本開示ではPE、PPと共にPVCが3重量%以上含む混合廃プラスチックを意味することができる。PVCから由来した塩素は有機Clおよび無機Clの割合が高く、安価な中和剤(Ca系、Zn系、Al系)等でも生活系廃プラスチック内のClを高い効率で除去することができる。産業系廃プラスチックはPE/PPが大部分を占めているが、接着剤または染料成分に起因する有機Cl含有量が高く、特にアロマティックリング(aromatic ring)に含まれるCl(芳香族塩素)の割合が高いため、前記の一般的な安価な中和剤で除去することが難しいという問題がある。
【0070】
本開示は、廃プラスチックに由来する廃プラスチックに含まれる塩素の総重量に対して、95重量%以上、97重量%以上98重量%以上または99重量%以上の塩素を除去することを特徴とする。このためには、アロマティックリングに含まれる塩素を除去することが好ましい。
【0071】
前記a)ステップは、廃プラスチックと中和剤を反応させるステップであり、PVCなどの溶融、熱分解過程で発生する大量の塩化水素を中和塩の形で除去することができる。
【0072】
前記中和剤は、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩またはこれらの組み合わせを含むことができ、前記金属は、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄またはこれらの組み合わせであることができる。具体的には、前記中和剤は、銅酸化物、アルミニウム酸化物、カルシウム酸化物、マグネシウム酸化物、亜鉛酸化物または鉄酸化物であってもよい。前記中和剤は、ゼオライト成分を含むことができる。具体的には、前記中和剤は、ゼオライト成分を含む廃FCC触媒(E-cat)を含めてもよく、前記金属酸化物に廃FCC触媒をさらに含めてもよい。前記中和剤は、具体的には、カルシウム酸化物、廃FCC触媒、銅金属または銅酸化物であってもよく、またはカルシウム酸化物であってもよい。
【0073】
本開示による一態様において、前記中和剤は、前記熱分解ステップの際に添加してもよい。
【0074】
前記中和剤は、廃プラスチック総重量に対して0.5~20重量%、1~10重量%または1~5重量%で混合してもよい。また、前記中和剤は、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)に対する前記中和剤の金属元素(M)のモル比(NM/NCl)1~25、具体的には0.7~15、より具体的には0.5~5で混合されるものであってもよい。
【0075】
一方、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)のモル数は、前処理および熱分解前の廃プラスチック固体原料物質の塩素元素の総モル数を意味することができる。
【0076】
前記a)塩素除去ステップで、前記廃プラスチックの塩素含有量100重量%(A)に対する前記a)ステップ生成物の塩素重量比(A1/A)は、50%以下、40%以下または20~30%であってもよい。a)ステップと後に廃プラスチックに残留する塩素は、b)ステップとで効果的に除去することができる。
【0077】
b)ステップは、前記a)ステップの生成物と銅化合物を反応させるステップであり、前記a)ステップで除去されなかった少量の有機塩素および芳香族塩素を銅化合物(触媒)で除去することができる。銅化合物をa)ステップの中和剤と一緒に使用したり、または中和剤を置き換えて使用する場合には、銅化合物が有機塩素のうち炭化水素鎖末端に位置する塩素および無機塩素(塩化水素)と先に反応し、中和剤で除去されにくい芳香族塩素などとの接触が難しい場合がある。また、前処理または熱分解のために反応器内部を昇温する初期熱分解の時点は比較的低温(250~300℃)で塩化水素が発生し始めるので、優先的に中和剤で塩素を除去することが望ましい。その後、本格的な熱分解ステップが進行すると、比較的高温であり、芳香族塩素の除去反応が活性化される。これに、中和剤を使用して有機Clおよび無機Clなどを塩化水素で先に除去した後、続いて銅化合物で芳香族塩素などを除去するのが効果的である。
【0078】
前記銅化合物は、銅金属(Cu)、銅酸化物(CuO)、銅水酸化物(Cu(OH)2)および銅炭酸化物(CuCO3)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができ、具体的には、銅金属(Cu)および/または銅の酸化物(CuO)を含むことができる。
【0079】
前記銅化合物は、前記a)ステップの生成物の総重量に対して0.1~20重量%、0.5~10重量%または1~5重量%で混合してもよい。また、前記銅化合物は、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)に対する前記銅化合物の銅元素(Cu)のモル比(NCu/NCl)1~10、具体的には0.7~5、より具体的には0.5~3で混合されるものであってもよい。
【0080】
一方、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)のモル数は、前処理および熱分解前の廃プラスチック固体原料物質の塩素元素の総モル数を意味することができる。
【0081】
前記b)塩素除去ステップにおいて、前記廃プラスチックの塩素含有量100重量%(A)に対する前記b)ステップ生成物の塩素含有量比(A2/A)は、10%以下、5%以下または0.5~3%であることができる。
【0082】
本開示の一態様によれば、前記a)ステップは200~320℃の温度で進行することができ、前記b)ステップは400~550℃の温度で進行することができる。それぞれの前記温度範囲でa)およびb)ステップを進行する場合、廃プラスチック内の塩素を効果的に除去することができる。
【0083】
本開示の一態様によれば、前記熱分解ステップにおいて、a)廃プラスチックと中和剤を反応させるステップと、b)前記a)ステップとの生成物と銅化合物を反応させるステップ、が進行してもよい。
【0084】
本開示において、前記前処理ステップは、廃プラスチックをスクリュー反応器に投入して粉砕する粉砕ステップをさらに含めてもよい。前記廃プラスチックの粉砕は、当該技術分野で公知の粉砕ステップを適用することができ、例えば、廃プラスチックを前処理反応器に投入し、約300℃まで加熱してペレット状の炭化水素フロー前駆体を製造することができるが、本開示がこれに限定されるものではない。
【0085】
本開示の一態様によれば、前記粉砕ステップは、常温で行われるものであってもよい。
【0086】
一例として、前記粉砕ステップは、前記廃プラスチックと中和剤を混合して前処理反応器に投入してもよい。廃プラスチックと前記中和剤としてカルシウム酸化物などを混合して常温で粉砕すると、機械化学反応が起こり、炭化水素とCaOHClを生成することができ、これにより、廃プラスチック原料中の塩素をCaOHClで安定的に固定する効果がある。
【0087】
続いて、前記前処理ステップは、前記粉砕された廃プラスチックを前処理反応器に投入して加熱し、固体廃プラスチック原料物質を物理化学的に処理して塩素を除去し、炭化水素フロー前駆体(熱分解原料物質)を製造してもよい。前記炭化水素フロー前駆体は、廃プラスチック溶融物を意味するものであり、前記廃プラスチック溶融物は、粉砕されたまたは未粉砕された固体廃プラスチックの全部または一部が液体廃プラスチックに転換されたものを意味することができる。
【0088】
一例として、前記前処理ステップは、前記粉砕または未粉砕された廃プラスチックと中和剤をそれぞれ前処理反応器に投入して加熱してもよい。また、前記前処理ステップとは、前記粉砕または未粉砕された廃プラスチックと中和剤を前処理反応器に投入して第1前処理(加熱)を進行し、続いて銅化合物を前処理反応器に投入して第2前処理(加熱)を進行することができる。
【0089】
前記加熱は、200~320℃の温度および常圧条件で行われるものであってもよい。具体的には、前記加熱は250~320℃または280~300℃の温度で行われてもよい。一般的に廃プラスチックの前処理温度は少なくとも250℃であるが、前記の脱塩素後の炭化水素では、より低い温度である200℃でも容易に前処理を行い、水素やメタンガスを発生させることができる。
【0090】
前記前処理反応器は、押出機(Extruder)、高温高圧反応器(Autoclave reactor)、灰分式反応器(batch reactor)等であることができ、一例としてオーガー反応器(auger reactor)であってもよいが、本開示がこれに限定されるものではない。
【0091】
前記熱分解ステップは、気相、液相(オイル+ワックス+水)、そして固相物質の3つの物質相に分類される熱分解原料物質を熱分解反応器に投入することであり、具体的には前記前処理されていないまたは前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して加熱するステップである。
【0092】
一例として、前記熱分解ステップは、前処理された廃プラスチックと銅化合物を混合して熱分解反応器に投入し、加熱することである。また、前記熱分解ステップとは、廃プラスチックと中和剤を混合して熱分解反応器に投入して加熱する第1熱分解を進行し、その後、熱分解反応器に銅化合物を投入して加熱する第2熱分解を進行することで、少なくとも2回の熱分解を連続的にまたは不連続的に進行してもよい。
【0093】
前記加熱は、非酸化性雰囲気下で320~900℃、具体的には350~700℃より具体的には400~550℃の温度で行われてもよい。また、前記加熱は常圧で行われてもよい。前記非酸化雰囲気は、廃プラスチックが酸化(燃焼)しない雰囲気であり、例えば、酸素濃度が1体積%以下に調整された雰囲気、窒素、水蒸気、二酸化炭素およびアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気であってもよい。
【0094】
加熱温度が400℃以上であれば、塩素含有プラスチックの融着を防ぐことができ、逆に加熱温度が550℃以下であれば、廃プラスチック内の塩素がCaCl2、CuCl2などの形で熱分解残渣(Char)に残留することができる。
【0095】
前記熱分解反応器は、高温高圧反応器(Autoclave reactor)、灰分式反応器(batch stirred reactor)、流動層反応器(Fluidised-bed reactor)および固定層反応器(Packed-bed reactor)などで進行することができ、具体的には攪拌と昇温制御が可能な全ての反応器に適用することができ、本開示による一態様によれば、灰分式反応器(Batch reactor)で進行してもよい。
【0096】
本開示の一態様によれば、前記熱分解反応器は、少なくとも2つのバッチ反応器を含めてもよい。
【0097】
本開示の一態様によれば、前記熱分解ステップは、前記少なくとも2つのバッチ反応器をスイッチ運転することによって行われるものであってもよい。これにより、前記熱分解ステップは、高温でもステップの連続性を確保することができる。
【0098】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法において、前記熱分解ステップまたは前記軽質化ステップは、熱分解気相と熱分解液相をガスとして回収する熱分解ガス回収ステップと、熱分解固相(固形分)を微粒物と造粒物に分離する分離ステップとからなる群から選択される少なくとも1つのステップと、をさらに含めてもよい。
【0099】
前記ガス回収ステップでは、前記熱分解ステップまたは前記軽質化ステップで生成された気相のうち、メタン、エタン、プロパンなどの低沸点炭化水素化合物を含む熱分解ガスを回収する。前記熱分解ガスは、一般的には水素、一酸化炭素、低分子量の炭化水素化合物などの可燃性物質を含むことができる。炭化水素化合物の例としては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテンなどを挙げることができる。これらの熱分解ガスは可燃性物質を含むため、燃料として使用することができる。
【0100】
前記分離ステップでは、前記熱分解ステップまたは前記軽質化ステップで生成された固相中の固形分、例えば、炭化物と中和剤および/または銅化合物を微粒物と造粒物に分離することができる。具体的には、塩素含有プラスチックの平均粒子径より小さく、また中和剤および銅化合物の平均粒子径より大きいふるいを用いて分級することにより、熱分解反応で生成された固形分を微粒物と造粒物に分離することができる。前記分離ステップでは、固形分を塩素含有中和剤および銅化合物を比較的多く含む微粒物と、炭化物を比較的多く含む造粒物に分離する場合が望ましい。前記微粒物と炭化物は、必要に応じて再処理することができ、熱分解ステップで再使用、燃料として使用または廃棄することができ、本開示がこれに限定されるものではない。
【0101】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターは、ビード(Bead)および中和剤からなる群から選択される少なくとも1種が充填されたものであってもよい。
【0102】
本開示の他の一態様によると、前記高温フィルターは、ビード(Bead)で充填されたものであってもよい。前記高温フィルターがビードで充填される場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱交換効果が最大化され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。
【0103】
本開示の一態様によれば、前記ビードは、ケイ砂(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。具体的には、前記ビードがケイ砂(SiO2)を含む場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱交換効果が最大化され、長時間の高温運転にも摩耗することなく安定したプロセス運転が可能である。
【0104】
本開示の一態様によれば、前記ビードはガラスビードであってもよいが、これに限定されない。
【0105】
本開示の一態様によれば、前記ビードの直径は、0.1mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、2.5mm以上、3mm以上、10mm以下、8mm以下、6mm以下、4mm以下、3.5mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下または前記数値の間の値とすることができ、具体的には、1mm~5mm、2mm~4mm、2.5mm~3.5mmとしてもよいが、これに限定されるものではない。本開示の軽質化ステップで前記高温フィルターに前記粒子径を有するビードを充填することにより、熱分解ガスの滞留時間(GHSV)を調節して油分の軽質化を達成することができるだけでなく、高温フィルターの差圧発生を抑制してプロセス運転効率を改善することができる。
【0106】
本開示の一態様によれば、前記軽質化ステップでは、前記熱分解ガスを前記中和剤が充填された高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造してもよい。
【0107】
前記軽質化ステップは、無酸素雰囲気下で400~550℃の温度および常圧~0.5barの圧力で進行するものであり、前記無酸素雰囲気は、不活性ガス雰囲気または酸素のない閉鎖系雰囲気であることができる。前記軽質化ステップの温度範囲で、熱分解ガスの軽質化がよく進み、ワックスによる閉塞現象および差圧発生を改善することができる。
【0108】
一方、前記軽質化ステップとはGHSV(gas volumetric flow rate)0.3~1.2/hrまたは0.5~0.8/hrであってもよい。これにより、別途後処理ステップを進行することなく、廃プラスチック熱分解物の軽質化および不純物(Clなど)を低減することができ、熱分解ガスの滞留時間(GHSV)を調節して、本開示で意図する軽質炭化水素の割合が高い熱分解油と軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を製造することができる。
【0109】
前記高温フィルターに充填された中和剤は、400~900μmの粒子径を有するものであってもよく、または500~800μmの粒子径を有するものであってもよい。本開示の軽質化ステップの運転条件では、高温フィルターに前記粒子径を有する中和剤を充填することにより、熱分解ガスの滞留時間(GHSV)を調節して油分の軽質化を達成することができるだけでなく、高温フィルターの差圧発生を抑制してプロセス運転効率を改善することができる。
【0110】
一方、前記粒子の大きさはD50を意味するものであり、前記D50はレーザー散乱法による粒度分布測定で、小さな粒径から累積体積が50%になるときの粒径を意味する。ここでD50は、製造された炭素質材料についてKS A ISO13320-1規格に従って試料を採取し、Malvern社のMastersizer3000を利用して粒度分布を測定することができる。具体的には、エタノールを溶媒として、必要に応じて超音波分散機を使用して分散させた後、体積密度を測定してもよい。
【0111】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターは、前記ビードおよび前記中和剤が充填されたものであってもよい。
【0112】
当該技術分野では、高温フィルターは熱分解ステップとの生成物のうちガスと残渣(Char)を分離する役割をするのが一般的であるが、本開示では、軽質化と同時に塩素などの不純物を除去するために、ビードおよび中和剤からなる群から選択される少なくとも1種が充填された高温フィルターを適用し、これに上述したように高温フィルターの温度などの運転条件と中和剤の粒子サイズを特定の範囲に調整した。
【0113】
前記軽質化ステップとは、下記関係式1および関係式2を満足するものであることができる。
【0114】
[関係式1]
50<(A2-A1)/A1(%)<100
【0115】
[関係式2]
80<(B2-B1/B1)(%)<-50
【0116】
前記関係式1において、A1は、前記熱分解ガスのナフサ(沸点~150℃)および灯油(沸点150~265℃)の総量(重量%)であり、前記A2は、前記熱分解油のナフサ(bp~150℃)および灯油(bp150~265℃)の総量(重量%)である、前記関係式2において、B1は前記熱分解ガスの塩素の含有量(ppm)であり、前記B2は前記熱分解油の塩素の含有量(ppm)である。
【0117】
前記関係式1および2は、具体的には、60<(A2-A1)/A1(%)<90、65<(A2-A1)/A1(%)<85または70<(A2-A1)/A1(%)<80であり、-75<(B2-B1/B1)(%)<-55、-70<(B2-B1/B1)(%)<-55または-65<(B2-B1/B1)(%)<-55であってもよい。
【0118】
前記関係式1および2は、本開示のビードおよび中和剤からなる群から選択される少なくとも1つが充填された高温フィルターを使用したことによる廃プラスチック熱分解物の軽質化および重質化の程度を数値で示したものである。本開示では、高温フィルターに投入される熱分解ガスの油分組成と塩素の含有量および前記塩素を含む油/無機物質を調節することにより、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することに技術的特徴がある。
【0119】
前記軽質化ステップで製造された熱分解油は、総重量に対してナフサ(bp~150℃)30~50重量%、灯油(bp150~265℃)30~50重量%、LGO(Light gas oil、bp265~380℃)10~30重量%およびUCO-2/AR(bp380℃~)0~10重量%を含むことができ、具体的にはナフサ(bp~150℃)35~50重量%、灯油(bp150~265℃)35~50重量%、LGO(Light gas oil、bp265~380℃)10~30重量%およびUCO-2/AR(bp380℃~)0~8重量%またはナフサ(bp~150℃)35~45重量%、灯油(bp150~265℃)35~45重量%、LGO(Light gas oil、bp265~380℃)10~20重量%およびUCO-2/AR(bp380℃~)0~6重量%を含むことができる。また、前記熱分解ガスは、重質油分(LGOおよびUCO-2/ARの合計)に対する軽質油分(ナフサおよび灯油の合計)の重量比が2.5~5、2.5~4または3~3.8であってもよい。
【0120】
前記軽質化ステップで製造された熱分解油は、総重量に対して、総塩素100ppm未満、80ppm以下、60ppm以下、5~50ppm、または10~50ppmであってもよく、有機塩素90ppm未満、70ppm以下、50ppm以下、5~50ppm、または5~40ppmであってもよい。
【0121】
本開示の一態様によれば、前記熱分解ステップと前記軽質化ステップは、下記関係式3を満たすことができる。
【0122】
[関係式3]
0.7<T2/T1<1.3
【0123】
前記関係式3でT1およびT2は、それぞれ熱分解ステップと軽質化ステップが進行する温度である。
【0124】
前記T2/T1値が0.7以下を満足するように熱分解ステップおよび軽質化ステップを進行する場合、相対的に熱分解ステップとの温度が高くなったり、または軽質化ステップの温度が低くなることがある。この場合、高温フィルターで凝縮されて熱分解反応器に循環される割合が高くなり、熱分解油の最終沸点(Final boiling point)が過度に低くなる可能性がある。一方、前記T2/T1値が1.3以上を満足するように前記ステップを進める場合、ガス相での損失率が過度に高くなり、熱分解油の収率が低くなる可能性がある。
【0125】
具体的には、前記T2/T1は、0.7~1.2、0.8~1.2、0.8~1.1、0.9~1.1または一例として1であってもよい。これにより、前記の効果をさらに向上させることができる。
【0126】
本開示の一態様による前記脱水ステップは、熱分解油、洗浄水および解乳化剤を混合した第1混合液に電圧を印加して脱水するステップであってもよい。
【0127】
前記熱分解油は水分を含むが、熱分解油内の水分により水素化処理触媒の不活性化、反応器の腐食などの問題が発生する可能性があり、水溶性の不純物が水分内に含まれているため、水分を除去することが必要である。前記脱水ステップを経ることで、廃プラスチック熱分解油内にエマルジョン(emulsion)の形で存在する水分を容易に除去することができる。
【0128】
本開示の一態様による前記熱分解油は、廃プラスチックを熱分解して生成された炭化水素油分混合物であってもよく、このとき、廃プラスチックは、廃合成樹脂、廃合成繊維、廃合成ゴム、廃ビニルなどの合成高分子化合物に関する固相または液相のゴミを含めてもよい。
【0129】
本開示の一態様による前記炭化水素油分混合物は、炭化水素油分の他に、塩素化合物、窒素化合物、酸素化合物、金属化合物、チャール(char)由来粒子などの不純物を含むことができ、炭化水素内に塩素、窒素、酸素または金属が結合された化合物形態の不純物を含めてもよく、パラフィン、オレフィン、鉛センまたは芳香族形態の炭化水素を含めてもよい。
【0130】
本開示の一態様による前記洗浄水は、前記熱分解油に存在するエマルジョン形態の水分間の接触確率を増加させる役割を果たすことができる。また、水分内に含まれる水溶性の酸性物質を除去できるように洗浄水に塩基性化合物を添加することができ、前記塩基性化合物は水酸化ナトリウム(NaOH)であってもよいが、特に限定されるものではない。
【0131】
本開示の一態様による前記熱分解油は、前記洗浄水よりも多くの体積で混合することができ、具体的に前記第1混合液は、廃プラスチック熱分解油と洗浄水が1:0.001~0.5の体積比、より具体的には1:0.005~0.4の体積比、最も具体的には1:0.01~0.3の体積比で混合されてもよい。前記範囲を満足する場合、水洗が十分に行われ、熱分解油内の不純物が著しく減少することができ、混合される洗浄水を除去するのにかかる費用を最小限に抑えることができる。
【0132】
本開示の一態様による前記解乳化剤は、ポリエチレングリコール、tert-ブタノール、アセトン、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、ポリアルキレンオキシドおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、これに限定されない。
【0133】
本開示の一態様による前記第1混合液は、前記熱分解油と解乳化剤が1:0.000001~0.001の体積比、具体的には1:0.000002~0.0005の体積比、さらに具体的には1:0.000003~0.0001の体積比で混合されたものであってもよい。前記範囲を満たす場合、熱分解油の品質への影響を最小限に抑えながらエマルジョンを分解することができる。
【0134】
本開示の一態様による前記解乳化剤は、重量平均分子量が200~2、000の範囲、具体的には重量平均分子量が300~1、000の範囲、さらに具体的には重量平均分子量が400~800の範囲であってもよい。前記範囲を満たす場合、脱水ステップが行われる条件下で前記熱分解油および洗浄水との混合が容易であり、水分エマルジョンの分解効率が上昇する。
【0135】
前記熱分解油、洗浄水および解乳化剤が混合された第1混合液に含まれるエマルジョン状の水分は安定であるため、依然として除去が困難である。したがって、第1混合液に電圧を印加して水分の除去を容易にすることができる。
【0136】
本開示の一態様による前記電圧は、交流または交流と直流の組み合わせで印加されるものであってもよい。前記熱分解油に含まれる一部の不純物粒子は極性を示し、直流電圧が印加される場合、特定の電極に極性を帯びた不純物粒子が蓄積され、長期間工程が進行する場合、電極上に不純物が固着する現象が発生する可能性がある。しかし、交流電圧が印加される場合、電極の極性が周期的に変化するため、不純物粒子の固着化現象を防止することができる。また、本開示の一実施例による前記交流の周波数は、単一周波数または二つ以上の周波数の組み合わせであることができ、具体的な一例として、単一周波数である場合、周波数が60Hzである交流が印加されてもよく、二つ以上の周波数の組み合わせである場合、周波数がそれぞれ50Hzおよび60Hzである交流が交互に印加されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0137】
本開示の一態様による前記電圧は、垂直電極を介して印加されるものであることができる。混合液の製造過程または電圧印加過程で不純物粒子が電極に蓄積された場合、人為的にこれを洗浄しなければ、長期間経過した後、不純物粒子が電極に固着する現象が発生する可能性がある。しかし、垂直電極を利用すれば、別途洗浄作業を行わなくても、重力によって不純物粒子が電極に蓄積されず、反応器下段に落下するため、不純物粒子の固着化現象を事前に防止することができる。
【0138】
本開示の一態様による前記電圧の大きさは、0.1~50kV、具体的には1~30kV、さらに具体的には5~20kVであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0139】
本開示の一態様による前記脱水は、当該技術分野で公知の任意の方法で行われてもよい。非限定的な例として、電圧印加後に油水分離された水層を汲み上げることによって水を除去してもよい。水は、気液分離器で除去してもよい。
【0140】
前記熱分解油内の金属不純物はエマルジョンを安定化させて油水分離を妨害し、よくラグ層(rag layer)と呼ばれる安定したエマルジョン層の形成を助ける。このようなラグ層は、第1混合液上段の脱塩油層と下段の水層の間に形成され、連続的な脱水工程で徐々に厚くなることがある。過度に厚くなったラグ層は、脱塩油と共に水素化処理ステップの設備に排出されることがある。これは脱塩油の脱塩効果を低下させ、工程の効率を低下させる。また、ラグ層は水と共に排出され、廃水処理工程に問題を引き起こす可能性がある。したがって、脱塩油層と水層の間に形成されたラグ層を除去することが良い。
【0141】
したがって、本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記脱水ステップで電圧印加後、第1混合液からラグ層を除去するステップをさらに含めてもよい。前記ラグ層の除去は、脱水機内の密度計器を通じて混合液の密度変化を測定してラグ層の形成位置および厚さを把握した後、脱水機壁面を貫通して外部に接続されるパイプを通じて行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0142】
本開示の一態様による前記脱水ステップは、前記第1混合液を脱水した後、脱水した第1混合液を水分凝集させてさらに脱水することであってもよい。
【0143】
本開示の一態様による前記追加脱水は、前記脱水した第1混合液が凝集器(coalescer)に供給されて行われてもよい。具体的には、前記脱水した第1混合液に含まれる残量の水分が凝集器内の捕集フィルターによって凝集されて除去されることができるが、これは具体的な一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。前記追加脱水を通じて廃プラスチック熱分解油内の水分含有量がさらに減少することにより、水分による触媒の不活性化が防止され、工程の安定性および精製熱分解油の品質が向上することができる。
【0144】
本開示の一態様による前記熱分解油の水分含有量と脱水した第1混合液の水分含有量の比は、1:0.0001~0.9、具体的には1:0.0005~0.5、さらに具体的には1:0.001~0.1としてもよい。前記範囲を満足する場合、水素化処理をはじめとする以後の工程でトラブル発生のリスクが大幅に減少し、ブレンドまたは製油および石油化学工程の原料として規格を満足するレベルの高品質精製熱分解油を生産することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0145】
本開示の一態様による前記脱水ステップは、50bar以下の圧力で実施してもよい。50bar以下の圧力で行う場合、熱分解油中の水分除去が容易であり、工程安定性が確保できる。具体的には、30bar以下の圧力で行われてもよく、より具体的には、20bar以下の圧力で行われてもよく、非限定的に5bar以上の圧力で行われてもよい。
【0146】
本開示の一態様による前記脱水ステップは、20℃~300℃の温度で行われてもよい。前記範囲を満足する場合、エマルジョン分解および水分凝集がよく起こり、脱水効率が向上することができる。具体的には、50℃~250℃、さらに具体的には80℃~200℃の温度で行われてもよい。
【0147】
本開示の一態様による脱水ステップで脱水効率を向上させるために、脱水前および/または脱水後に、遠心分離および蒸留からなる群から選択されるいずれか1つ以上の追加工程を行われてもよい。前記の追加工程は、当業界で公知の方法で行われてもよく、特に限定されない。
【0148】
本開示の一態様による前記水素化処理ステップは、前記脱水ステップで脱水した第1混合液および硫黄供給源(sulfur source)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を生成するステップであってもよい。
【0149】
本開示の一態様による前記第2混合液は、塩素(Cl)の濃度が10ppm以上、具体的には100ppm以上、さらに具体的には200ppm以上であってもよく、上限としては非限定的に3000ppm以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0150】
本開示の一態様による前記第2混合液は、塩素に対する窒素の重量比が1:0.1~10、具体的には1:0.5~5、さらに具体的には1:1~2であってもよいが、前記重量比は、前記熱分解油に含まれ得る具体的な例示であり、熱分解油の組成はこれに限定されない。
【0151】
本開示の一態様による水素化処理は、第2混合液に対する水素の割合が100Nm3/Sm3~5000Nm3/Sm3、具体的には500Nm3/Sm3~3000Nm/Sm33、さらに具体的には1000Nm3/Sm3~1500Nm3/Sm3の条件で行われてもよい。これを満たす場合、不純物を効果的に除去することができ、水素化触媒の活性を高活性で長期間維持することができ、工程効率が向上することができる。
【0152】
前記硫黄供給源(sulfur source)は、精製工程中に硫黄成分を持続的に供給できるsulfur sourceを意味する。
【0153】
前記水素化処理ステップは、前記硫黄供給源(sulfur source)を含む第2混合液を製造することにより、精製工程中の硫黄供給源不足および高温運転によるモリブデン系水素化触媒の不活性化を抑制し、触媒活性を維持することができる。
【0154】
本開示の一態様による前記硫黄供給源は、硫黄含有油分を含めてもよい。前記硫黄含有油分は、原油を原料として得られた硫黄を含有する炭化水素で構成された油分を意味する。硫黄を含有する油分であれば特に制限はなく、例えば、軽質ガス油、直流ナフサ、減圧ナフサ、熱分解ナフサ、直流灯油、減圧灯油、熱分解灯油、直流軽油、減圧軽油、熱分解軽油、硫黄含有廃タイヤ油分などまたはこれらの任意の混合物であってもよい。
【0155】
本開示の一態様による前記硫黄含有油分として廃タイヤ油分を含むことにより、廃タイヤに含まれる高含有量の硫黄が炭化水素と共に油分に転換され、廃プラスチック熱分解油の硫黄供給源として好ましく作用することができる。また、廃タイヤ油分を廃プラスチック熱分解油の硫黄供給源として専用することにより、廃タイヤの再循環による環境負荷の減少および触媒活性の長期維持の面で有利である。
【0156】
具体的には、前記硫黄含有油分は、比重(gravity)0.7~1の軽質ガス油(LGO)であってもよい。これを使用する場合、前記脱水された第1混合液と均一に混合することができ、水素化処理効率が高いという利点がある。具体的には、比重(gravity)は0.75~0.95であってもよく、より具体的には0.8~0.9であってもよい。前記硫黄含有油分は、硫黄を100ppm以上含めてもよい。硫黄成分が100ppm以下で含まれると、供給される硫黄成分の含有量が少なく、モリブデン系水素化触媒の不活性化を防止する効果が微々たる場合がある。具体的には、硫黄成分を800ppm以上含有してもよく、より具体的には8、000ppm以上含有してもよく、非限定的に200、000ppm以下含有してもよい。
【0157】
本開示の一態様による前記第2混合液は、硫黄を100ppm以上含めてもよい。前記硫黄含有油分の場合と同様に、第2混合液中の硫黄成分が100ppm以下で含まれると、供給される硫黄成分の含有量が少なく、モリブデン系水素化触媒の不活性化を防止する効果が微々たる場合がある。具体的には、硫黄成分を800ppm以上含めてもよく、より具体的には8、000ppm以上含めてもよく、非限定的に200、000ppm以下含めてもよい。
【0158】
本開示の一態様による前記硫黄含有油分は、前記脱水ステップで脱水した第1混合液100重量部基準で0.5重量部未満含まれ得る。具体的には、硫黄含有油分は、0.1重量部未満で含まれてもよく、より具体的には、0.05重量部未満で含まれてもよく、非限定的に0.01重量部を超えて含まれてもよい。前記硫黄含有油分が0.5重量部未満含まれることにより、廃プラスチック熱分解油に含まれる塩素(Cl)または窒素(N)濃度が希釈され、アンモニウム塩(NH4Cl)生成速度を制御することができ、ステップと安定性を向上させることができる。
【0159】
本開示の一態様による前記硫黄供給源(sulfur source)は、ジスルフィド系化合物、スルフィド系化合物、スルホネート(スルホン酸塩)系化合物およびスルフェート(硫酸塩)系化合物から選択される1つまたは2つ以上の硫黄含有有機化合物を含めてもよい。具体的には、ジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide)、ジメチルサルファイド(dimethyl sulfide)、ポリスルフィド(polysulfide)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタンスルホン酸メチル(methyl methanesulfonate)、メタンスルホン酸エチル(ethyl methanesulfonate)、メタンスルホン酸プロピル(propyl sulfonate)、プロペンスルホン酸プロペニル(propenyl propenesulfonate)、シアノエタンスルホン酸プロペニル(Propenyl cyanoethansulfonate)、エチレン硫酸塩(ethylene sulfate)、バイシクログリオキサール硫酸塩(bicycloglyoxalsulfate)およびメチル硫酸塩(methyl sulfate)から選択される1つまたは2つ以上の混合物を含めてもよく、これは一例として提示されたものであり、本開示がこれに限定されるものではない。
【0160】
本開示の一態様による前記硫黄含有有機化合物は、前記脱水ステップで脱水した第1混合物100重量部基準で0.01~0.1重量部含まれてもよい。具体的には、0.02~0.08重量部含まれてもよく、より具体的には、0.03~0.06重量部含まれてもよい。0.01重量部未満で含まれると、供給される硫黄成分の含有量が少なく、モリブデン系水素化触媒の不活性化を防止する効果が微々たる場合がある。
【0161】
前記水素化処理とは、モリブデン系水素化触媒の下で前記脱水ステップで脱水した第1混合液および硫黄供給源(sulfur source)が混合された第2混合液に水素ガス(H2)を含む反応ガスが添加されて起こる水添反応を意味する。具体的には、水素化処理は、水素化脱硫反応、水素化分解反応、水素化脱塩素反応、水素化脱窒素反応、水素化脱酸素反応および水素化脱金属反応を含む従来公知の水素化処理を意味してもよい。前記水素化処理を通じて、塩素(Cl)、窒素(N)および酸素(O)を含む不純物とオレフィンの一部が除去され、その他の金属不純物も除去することができ、前記不純物を含む副産物(by-product)が生成される。
【0162】
前記副産物(by-product)は、廃プラスチック熱分解油内に含まれる不純物である塩素(Cl)、窒素(N)、硫黄(S)または酸素(O)と水素ガス(H2)が反応して生成され、具体的には硫化水素ガス(H2S)、塩化水素(HCl)、アンモニア(NH3)または水蒸気(H2O)などを含むことができ、他にも未反応の水素ガス(H2)、極少量のメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)またはブタン(C4H10)などを含むことができる。
【0163】
本開示の一態様による前記モリブデン系水素化触媒は、モリブデン系金属またはニッケル、コバルトおよびタングステンの中から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む金属とモリブデン系金属が担体に担持された触媒であってもよい。前記モリブデン系水素化触媒は、水素化処理時に高い触媒活性を有し、単独で利用したり、必要に応じてニッケル、コバルト、タングステンなどの金属と結合された2元系触媒の形でも利用してもよい。
【0164】
本開示の一態様による前記支持体として、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、酸化チタン、モレキュラーシーブ(分子篩)、ジルコニア、リン酸アルミニウム、カーボン、ニオブまたはこれらの混合物を利用してもよいが、これらに限定されない。
【0165】
本開示の一態様による前記モリブデン系水素化触媒は、モリブデン系硫化物水素化触媒を含むことができる。例えば、硫化モリブデン(MoS)または二硫化モリブデン(MoS2)を含めてもよく、これに限定されず、公知のモリブデン系硫化物水素化触媒を含めてもよい。
【0166】
本開示の一態様による前記反応ガスは、硫化水素ガス(H2S)をさらに含めてもよい。前記反応ガスに含まれる硫化水素ガス(H2S)は、硫黄供給源(sulfur source)として作用し、廃プラスチック熱分解油と混合される硫黄供給源(sulfur source)のように、精製ステップと中に不活性化されたモリブデン系水素化触媒の活性を再生させることができる。
【0167】
本開示の一態様による前記水素化処理は、150bar以下の圧力で行われてもよい。具体的には、120bar以下、より具体的には100bar以下の圧力で行われてもよく、非限定的に50bar以上の圧力で行われてもよい。150barを超える圧力条件で水素化処理を行う場合、水素化処理時にアンモニアおよび塩化水素が過剰に生成されるため、アンモニウム塩形成温度が上昇し、反応器などプロセス内の差圧が容易に誘発され、工程の安定性が著しく低下する可能性がある。廃プラスチック熱分解油内の窒素および塩素の含有量調節を通じて150barを超える圧力条件でもアンモニウム塩形成温度の上昇を一部抑制することができるが、この場合、本開示による精製工程の対象となる廃プラスチック熱分解油が極端に制限される可能性があり、適切ではない。
【0168】
本開示の一態様による前記水素化処理は、150℃~500℃の温度で行われてもよい。前記範囲を満たす場合、水素化処理効率が向上することができる。具体的には、200℃~400℃の温度で行われてもよい。
【0169】
本開示の一態様による前記水素化処理は、多ステップとで実施することができ、具体的な一例として、2ステップで行われてもよい。水素化処理が2ステップで行われる場合、第1ステップが第2ステップより低い温度で行われてもよい。このとき、第1ステップとは150℃~300℃、具体的には200℃~250℃の温度で行われてもよく、第2ステップとは300℃~500℃、具体的には350℃~400℃で行われてもよいが、これに限定されるものではない。
【0170】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記水素化処理ステップの後、前記不純物が除去された精製熱分解油を含むストリームを気液分離した後、水洗するステップ、をさらに含めてもよい。
【0171】
本開示の一態様による前記不純物が除去された精製熱分解油を含むストリームは、前記水素化処理ステップが行われる反応器後端から排出される前記不純物が除去された精製熱分解油を含む、塩化水素、アンモニアおよび未反応水素ガス等を含むものであってもよい。
【0172】
本開示の一態様による前記気液分離により、不純物が除去された精製熱分解油を含むストリームから水素化処理により発生したアンモニアと塩化水素を除去し、未反応の水素ガスを回収してもよい。
【0173】
本開示の一態様による前記気液分離は、セパレータ(separator)を介して当業界で公知の方法で行われてもよく、特に限定されない。
【0174】
本開示の一態様による前記気液分離は2回~4回行われてもよく、具体的には3回~4回、より具体的には4回行われてもよい。前記範囲を満たす場合、精製熱分解油は極微量のNH3および塩化水素を含有するため、油水分離のための低温条件でもアンモニウム塩の生成が最小限に抑えることができる。また、今後前記精製熱分解油に別途の塩除去剤を投入しなくても、これを原料とする石油精製および石油化学工程などを安定的に行うことができる。
【0175】
本開示の一態様による前記気液分離の結果生成された気体ストリームは、軽質炭化水素、硫化水素、アンモニアまたは塩化水素などを含む廃ガス(off-gas)および未反応水素ガスを含むことができる。当業界に公知の方法により、廃ガスと未反応水素ガスが分離され、未反応水素ガスはプロセス内で再循環され、廃ガスは後述するステップを通じて処理され、燃料として使用されるか、または大気中に排出されることができる。
【0176】
本開示の一態様による前記水洗により、前記ガスストリーム内に含まれる塩を溶解させて除去したり、塩を形成する可能性のあるガスを溶解させて塩の形成を抑制してもよい。前記水洗は、当業界で公知の方法で行われてもよく、特に限定されない。
【0177】
本開示の一態様による前記水洗は、2回~4回、具体的には2回~3回行われてもよい。前記範囲を満たす場合、塩除去および塩形成抑制効果が十分に発揮され、高品質の精製熱分解油を得ることができ、ステップとの安定性を確保することができる。
【0178】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記不純物が除去された精製熱分解油を含むストリームを気液分離した後、水洗するステップの後に、前記分離された廃ガス(off-gas)を燃焼するステップと、未燃焼の廃ガスを処理するステップと、をさらに含めてもよい。
【0179】
本開示の一態様による前記廃ガスは、C1-C4の軽質炭化水素、硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)などを含めてもよい。したがって、前記廃ガスを燃料(fuel)として使用するために、廃ガスを燃焼して硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)などを除去することが必要である。廃ガスの燃焼によって生成される二酸化硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)などを含む排出ガスは、苛性スクラビング(caustic scrubbing)を行い、排出規格に合わせた後、大気中に排出してもよい。
【0180】
また、前記廃ガスを燃焼するステップと後に未燃焼の廃ガスは、酸性水ストリッピング(sour water stripping)、吸着(adsorption)、生物学的処理、酸化、アミンスクラビング(amine scrubbing)または苛性スクラビング(caustic scrubbing)処理して廃水に排出してもよい。
【0181】
本開示の一態様によれば、本開示の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、蒸留ステップを含めてもよいが、これに限定されず、石油精製工程または石油化学工程で適用可能なステップを非限定的に含めてもよい。
【0182】
本開示の一態様において、前記精製熱分解油は、石油系炭化水素と混合されて混合油として蒸留されるものであってもよい。
【0183】
前記石油系炭化水素は、自然発生的に存在する炭化水素の混合物または前記混合物から分離された化合物を総称するもので、具体的には、原油および原油に由来する炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0184】
本開示の一態様によれば、前記蒸留は、常圧蒸留工程(Crude Distillation Unit、CDU)および減圧蒸留工程(Vacuum Distillation Unit、VDU)からなる群から選択される少なくとも一つの工程で行われてもよい。
【0185】
本開示の一態様によれば、前記蒸留ステップで、前記沸点150℃以下の範囲の場合、ナフサ、沸点150~265℃の範囲の場合、灯油、沸点265~340℃の範囲の場合、LGO(Light gas oil)および沸点340℃以上の範囲の場合、VGO(Vacuum gas oil)で精製炭化水素を得ることができる。
【0186】
本開示による一態様において、前記精製熱分解油は、前記混合油の総重量に対して60重量%以下、50重量%以下または40重量%以下含まれるものであってもよい。
【0187】
また、本開示は、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムを提供する。
【0188】
廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法について説明した内容は、重複する範囲内で、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムの説明にも同様に適用してもよい。
【0189】
本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理装置と、前記前処理装置で前処理された廃プラスチックを投入して熱分解ガスを製造する熱分解反応器と、前記熱分解ガスを投入して熱分解油を製造する高温フィルター(Hot filter)と、前記高温フィルターで凝縮された液体が前記熱分解反応器に再投入されるように前記高温フィルターと前記熱分解反応器を接続する接続配管と、前記製造された熱分解油を洗浄水および解乳化剤(demulsifier)と混合した第1混合液に電圧を印加して脱水する脱水装置と、前記脱水された第1混合液と硫黄供給源(sulfursource)を混合した第2混合液を水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を製造する水素化処理装置と、前記精製熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留装置と、を含む、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムを提供する。
【0190】
本開示の製造システムは、多量の不純物を含む廃プラスチックから、軽質炭化水素の割合が高い高付加価値化熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を製造することができる。また、本開示の製造システムは、廃プラスチックから得られる熱分解油の収率を向上させることができる。
【0191】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターは、ビード(Bead)で充填されたものであってもよい。前記高温フィルターがビードで充填される場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱伝達効果が最大化され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。また、前記熱分解油の収率が向上することができる。
【0192】
本開示の一態様によれば、前記ビードは、ケイ砂(SiO2)および酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0193】
本開示の一態様によれば、前記製造システムは、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えるものであってもよい。また、前記製造システムは、前記高温フィルターの外部に少なくとも3つのヒーターを備えるものであってもよい。前記高温フィルターの外部に少なくとも2つのヒーターを備える場合、高温フィルターの温度勾配の形成が容易であり、高温フィルターの運転状況に応じて上段、中段、下段の温度を弾性的に調節することができ、柔軟なプロセス運転が可能である。
【0194】
本開示の一態様による前記脱水装置は、垂直電極が備えられたものであってもよい。本開示の一実施例による前記脱水装置に備えられた垂直電極の数は、少なくとも2個以上、具体的には4個以上、さらに具体的には6個以上であってもよく、上限としては20個以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0195】
本開示の一態様による前記脱水装置は、内部に凝集器(coalescer)が含まれるものであってもよい。前記凝集器は、微細な液滴を捕捉して大きな液滴を形成させる装置であり、産業で通常使用する装置を使用してもよく、特に限定されない。
【0196】
本開示の一態様による前記凝集器に、前記脱水装置から脱水した第1混合液が流入して、さらに脱水した第1混合液を生成することができる。前記凝集器を含む脱水装置を使用する場合、前記追加脱水した第1混合液が水素ガスと共に水素化処理反応器に流入することはもちろんである。
【0197】
本開示の一態様による前記廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムは、前記水素化処理装置から生成された不純物が除去された精製熱分解油を気液分離するセパレータ(separator)をさらに含めてもよい。
【0198】
本開示の一態様による前記セパレータは、2個~4個であることができ、具体的には3個~4個、より具体的には4個であってもよい。前記範囲を満足する場合、精製熱分解油は極微量のNH3および塩化水素を含有するため、油水分離のための低温条件でもアンモニウム塩の生成を最小限に抑えることができる。また、今後前記精製熱分解油に別途の塩除去剤を投入しなくても、これを原料とする製石油精製および石油化学工程などを安定的に行うことができる。
【0199】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムは、前記セパレータから分離されたガスストリームから未反応の水素ガスを回収して水素化処理装置に投入する再生ガス圧縮機(recycle gas compressor)をさらに含めてもよい。
【0200】
以下では、具体的な実験例を参照して、本開示の実施例についてさらに説明する。実験例に含まれる実施例および比較例は、本開示を例示するものであって、添付された特許請求の範囲を限定するものではなく、本開示のカテゴリーおよび技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0201】
本明細書で「熱分解油収率」とは、熱分解ステップの生成物のうち、油分、水系副産物、熱分解残渣(Char)および副産物ガスの重量合計に対する油分の重量比を意味する。
【0202】
[実施例1]
フィードとして使用するための生活系廃プラスチックは、PE78.8重量%、PP11.6重量%、PVC3.1重量%、PET2.4重量%、ナイロン2.1重量%およびPU2.0重量%を含む。
【0203】
前記生活系廃プラスチックフィード1020gをフィード注入部に投入し、スクリュー混合した。粉砕された廃プラスチック200g/hrと10g/hrのCaOをオーガー反応器に投入した後、スクリュー速度10rpm、窒素流量3cc/min、300℃、滞留時間1hrの条件で前処理を行った。
【0204】
前処理された廃プラスチックをロータリーキルンバッチ熱分解反応器に投入し、ロータリーキルン回転速度4rpm、430℃の条件で熱分解を行い、熱分解ガスを製造した。
【0205】
製造された熱分解ガスをガラスビードが充填されていない1.3Lの高温フィルター(Hot filter)に投入して軽質化した後、回収部から熱分解油を得た。前記高温フィルターで凝縮した液体は前記熱分解反応器に再投入した。
【0206】
150℃、10barの条件で、前記で得られた熱分解油、洗浄水および重量平均分子量が500のポリエチレングリコールを1:0.25:0.001の体積比で脱水機に投入し、攪拌して第1混合液を製造した。前記第1混合液を垂直電極を通して15kVの交流電圧を印加して油水分離した後、水層を除去して脱水した。
【0207】
この時、前記脱水機は熱分解油は水分含有量が約5、000ppm以上、窒素(N)500ppm以上、塩素(Cl)200ppm以上およびオレフィン(olefin)20体積%以上の高濃度の不純物を処理することができる。
【0208】
前記脱水機で脱水した第1混合液100重量部に対してジメチルジスルフィド0.04重量部を混合して第2混合液を製造した後、300℃、70bar条件で水素化処理して不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0209】
前記精製熱分解油を常圧蒸留工程(Crude Distillation Unit、CDU)に投入して蒸留し、沸点150℃以下の範囲の場合はナフサ、沸点150~265℃の範囲の場合は灯油、沸点265~340℃の範囲の場合はLGO(Light gas oil)および沸点340℃以上の範囲の場合はVGO(Vacuum gas oil)として精製炭化水素を得た。前記熱分解油の収率を表1に、前記精製炭化水素の重量比を表2に、精製熱分解油中の不純物含有量に関する測定結果を表3に示した。
【0210】
[実施例2]
直径3mmのガラスビードを高温フィルター内部容積比88vol%で1.3Lの高温フィルターに充填し、前記高温フィルターの上段温度、中段温度および下段温度を430℃に維持した以外は実施例1と同様に実施した。
【0211】
[実施例3]
直径3mmのガラスビードを高温フィルター内部容積比88vol%で1.3Lの高温フィルターに充填し、前記高温フィルターの上段温度を430℃、中段温度および下段温度を500℃に維持した以外は実施例1と同様に実施した。
【0212】
[実施例4]
直径3mmのガラスビードを高温フィルター内部容積比88vol%で1.3Lの高温フィルターに充填し、前記高温フィルターの上段温度を430℃、中段温度を450℃および下段温度を500℃に維持した以外は実施例1と同様に実施した。
【0213】
[実施例5および6]
実施例1で廃プラスチック熱分解油、洗浄水およびポリエチレングリコールを下記表1に記載された体積比で脱水機に投入する以外は実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0214】
[実施例7]
実施例1で水平電極を通して直流電圧を印加することを除いて、実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0215】
[実施例8]
実施例1で第1混合液の脱水が120℃の温度条件で行われることを除いて、実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0216】
[実施例9]
実施例8で廃プラスチック熱分解油とポリエチレングリコールを1:0.0001の体積比で投入し、圧力が180barの条件で水素化処理することを除いて、実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0217】
[実施例10]
実施例1で前記第1混合液を脱水した後、凝集器でさらに脱水することを除いて、実施例1と同じ条件で実施し、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0218】
[実施例11]
前記精製熱分解油と原油を5:5の重量比で混合した混合油を常圧蒸留工程(Crude Distillation Unit、CDU)に投入した以外は実施例1と同様に実施した。
【0219】
[比較例1]
前記高温フィルターで凝縮した液体を前記熱分解反応器に再投入しない以外は実施例1と同様に実施した。
【0220】
[比較例2]
実施例1で洗浄水を投入しないことを除いて、実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0221】
[比較例3]
実施例1でポリエチレングリコールを投入しない以外は実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0222】
[比較例4]
実施例1で電圧を印加しない以外は実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0223】
[比較例5]
実施例1で前記脱水した第1混合液にジメチルジスルフィドを混合しないことを除いて、実施例1と同じ条件で行い、不純物が除去された精製熱分解油を生成した。
【0224】
評価例
【0225】
[測定方法]
廃プラスチックフィード組成は、NIR分析器のうちドイツRTT社のFlake analyzerを利用して分析した。
【0226】
熱分解油収率測定に関連する熱分解物組成確認のためにGC-Simdis分析(HT750)を実施した。
【0227】
脱水工程が終了した後、得られた混合液中の水分および不純物Cl、S、N、O含有量と最終的に得られた精製熱分解油中の不純物Cl、S、N、O含有量の分析のためにICP、TNS、EA-O、XRF分析を行った。総Cl含有量はASTM D5808に従って測定し、N含有量はASTM D4629に従って測定し、S含有量はASTM D5453に従って測定した。
【0228】
触媒活性維持時間は、精製熱分解油を対象にTotal Nitrogen & Sulfur(TNS元素)分析を行い、精製熱分解油中の窒素の含有量が10ppmを超える時点を基準に時間単位で測定して示した。
【0229】
また、前記実施例および比較例の工程を3ヶ月間運転し、下記式1に従って粒子固着率を測定した。
【0230】
[式1]
粒子固着率(%)=(電極に固着した不純物粒子量/熱分解油中の不純物粒子量)×100
【0231】
前記実施例および比較例による熱分解油の収率を表1に、精製炭化水素の重量比を表2に示した。
【表1】
【表2】
高温フィルターがビードで充填されず、高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入されない比較例1は、熱分解油の収率およびナフサおよび灯油を含む軽質油分の割合が最も低いことを確認した。
【0232】
高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入される実施例1は、比較例1と比較して、優れた熱分解油の収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合を達成できることを確認した。
【0233】
高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入され、高温フィルターがビードで充填された実施例2は、実施例1よりも優れた熱分解油収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合を示すことを確認した。
【0234】
高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入され、高温フィルターがビードで充填され、高温フィルターで温度勾配が形成された実施例3および4は、実施例1および2と比較して、より優れた熱分解油収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合を示した。
【0235】
特に、高温フィルターの上段温度を430℃、中段温度を450℃および下段温度を500℃に維持した実施例4が最も優れた熱分解油収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合を示すことを確認した。
【0236】
また、前記実施例および比較例による精製熱分解油中の不純物含有量に関する測定結果を表3に示した。
【表3】
前記表3から分かるように、比較例2~4は、それぞれ洗浄水の投入有無、解乳化剤の投入有無、電圧印加有無を実施例と変えた結果、低調な水分およびCl除去結果を示した。それにより、水素化処理ステップで触媒に悪影響を及ぼし、最終的に得られた精製熱分解油中のCl含有量が高かった。比較例5では、脱水ステップで熱分解油内の水分および一部の不純物が十分に除去されたが、不足した硫黄含有量のために水素化触媒が短時間で不活性化され、精製工程が長期間維持されにくいことを確認した。
【0237】
しかし、本開示の実施例1および5~10は、脱水ステップを通じて熱分解油内に含有された水分が相当量除去され、硫黄供給源が追加され、水素化処理触媒の活性を著しく長く持続させた。また、脱水ステップで一部の水溶性不純物が先制的に除去され、前記触媒の優れた活性度が長期間持続することにより、不純物含有量が非常に低い高品質の精製熱分解油を得ることができた。
【0238】
一方、垂直電極を使用して交流電圧を印加した場合、工程が3ヶ月以上進行しても、電極表面に熱分解油中のチャー由来不純物粒子の固着率が非常に低いことを確認した。これにより、交流電圧を印加したり、垂直電極を使用すると、反応器内部洗浄のための工程稼働中断が必要なく、より優れた工程効率を発揮できることが分かった。
【0239】
また、実施例9の場合、他の実施例と比較して脱水結果が低調であったが、水素化処理が高圧条件で行われるため、精製熱分解油中の不純物Cl含有量は非常に低かった。しかし、高圧によりアンモニアおよび塩化水素が過剰に発生するため、水素化処理が行われる温度でもアンモニウム塩が比較的多く発生することを確認した。
【0240】
実施例10で凝集器を利用して追加脱水を行うことにより、脱水後の水分および塩素含有量が他の実施例に比べて少なくなったことから、触媒の活性時間、工程安定性および精製熱分解油の品質が他の実施例に比べて比較的優れていることが確認できる。
【0241】
前記で説明した内容は、本開示の原理を適用した例示に過ぎず、本開示の範囲を逸脱しない範囲で他の構成をさらに含むことができる。