(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155736
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】油圧昇降支柱及び医療装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/16 20060101AFI20241024BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20241024BHJP
A61G 13/06 20060101ALI20241024BHJP
A61G 13/10 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F15B15/16
F16F7/00 F
A61G13/06
A61G13/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024030337
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】10 2023 203 647.9
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518097316
【氏名又は名称】ハーヴェー ハイドローリック エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アウリッヒ, ダニー
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー, スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ, マーティン
【テーマコード(参考)】
3H081
3J066
4C341
【Fターム(参考)】
3H081AA12
3H081BB02
3H081CC15
3H081CC27
3H081DD13
3H081HH10
3J066AA22
3J066BA01
3J066BB01
3J066BD05
4C341JJ03
4C341MP02
4C341MQ07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】昇降支柱が動かされるときのステージ移行衝撃が単純且つ高い費用効果で減衰され得る改善された油圧昇降支柱を提供する。
【解決手段】特に医療装置のために油圧昇降支柱1は、油圧シリンダユニットと、ベース要素2と、キャリア要素3と、少なくとも1つの中間要素4、5とを含み、油圧シリンダユニットが、収縮位置と伸長位置との間で移動軸線FAに沿って昇降支柱1を動かすように構成される。油圧昇降支柱1は、キャリア要素3に配置されキャリア要素3とは別個に形成された少なくとも1つの第1の係合部材6をさらに備え、第1の係合部材6が、昇降支柱1が収縮位置と伸長位置との間で動かされるとき、中間要素4、5に当接し、少なくとも1つの中間要素4、5を駆動する。第1の係合部材6が、減衰要素を有し、減衰要素が、特にプラスチックから作られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダユニットと、ベース要素(2)と、キャリア要素(3)と、少なくとも1つの中間要素(4、5)とを備える、好ましくは医療装置のための、油圧昇降支柱(1)であって、
前記油圧シリンダユニットが、収縮位置と伸長位置との間で移動軸線(FA)に沿って前記昇降支柱(1)を動かすように構成され、
前記少なくとも1つの中間要素(4、5)が、少なくとも前記収縮位置において、前記ベース要素(2)と前記キャリア要素(3)との間に配置され、
前記キャリア要素(3)及び前記少なくとも1つの中間要素(4、5)が、前記油圧シリンダユニットが前記キャリア要素(3)に作用することで、前記移動軸線(FA)に沿って前記ベース要素(2)に対して移動可能であり、
少なくとも1つの第1の係合部材(6)が、前記キャリア要素(3)に配置され、前記キャリア要素(3)とは別個に形成されており、
前記第1の係合部材(6)が、前記昇降支柱(1)が前記収縮位置と前記伸長位置との間で動かされるとき、前記中間要素(4、5)に当接し、前記少なくとも1つの中間要素(4、5)を駆動し、
前記第1の係合部材(6)が、減衰要素(9)を有し、前記減衰要素(9)が、好ましくはプラスチックから作られている、
油圧昇降支柱(1)。
【請求項2】
前記中間要素(4、5)に配置されると共に前記中間要素(4、5)とは別個に形成された少なくとも1つの第2の係合部材(6)を備え、前記第1の係合部材(6)が、前記第2の係合部材(6)に当接するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項3】
前記減衰要素(9)が、第1のプラスチック材料及び第2のプラスチック材料から形成されており、前記第1のプラスチック材料が、前記第2のプラスチック材料よりも高い弾性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項4】
前記減衰要素(9)が、一体部材として形成され、射出成形によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項5】
前記減衰要素(9)が、一体部材として形成され、射出成形によって製造されることを特徴とする、請求項3に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項6】
前記減衰要素(9)が、前記移動軸線(FA)の方向に弾性を有するように構成され、前記移動軸線(FA)に対して横方向に剛性を有するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項7】
前記減衰要素(9)が、前記移動軸線(FA)の方向に弾性を有するように構成され、前記移動軸線(FA)に対して横方向に剛性を有するように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項8】
前記第1の係合部材(6)が、前記移動軸線(FA)に対して横方向に第1の端部及び第2の端部(12、13)を有し、前記第1と第2の端部(12、13)を連結する棒(14)をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項9】
前記減衰要素(9)が、前記第1のプラスチック材料から形成された弾性部(10、11)を有し、前記棒(14)が、前記第2のプラスチック材料から形成されており、前記棒(14)が、前記弾性部(10、11)を前記移動軸線(FA)の方向に上側弾性部及び下側弾性部(10、11)に隔てていることを特徴とする、請求項8に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項10】
上側可撓性アーム部(15)が、前記移動軸線(FA)の方向に前記第1の端部及び第2の端部(12、13)のそれぞれに形成され、前記上側弾性部(10)が前記棒(14)と前記上側アーム部(15)との間に配置されるように前記上側弾性部(10)を取り囲んでいることを特徴とする、請求項9に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項11】
下側可撓性アーム部(17)が、前記移動軸線(FA)の方向に前記第1の端部及び第2の端部(12、13)のそれぞれに形成され、前記下側弾性部(11)が前記棒(14)と前記下側アーム部(17)との間に配置されるように前記下側弾性部(11)を取り囲んでいることを特徴とする、請求項7又は8に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項12】
前記第1の係合部材(6)が、前記移動軸線(FA)の方向に対して平行な第1の対称面(SE1)を有し、好ましくは、前記移動軸線(FA)の方向に対して垂直な第2の対称面(SE2)を有することを特徴とする、請求項1に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項13】
滑りライニング(8)が、前記キャリア要素(3)及び前記少なくとも1つの中間要素(4、5)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧昇降支柱(1)。
【請求項14】
請求項1,2,4,5,6,7,8,9,10,12又は13に記載の油圧昇降支柱(1)を備える医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧昇降支柱に関する。より詳細には、本発明は、そのような昇降支柱を備える医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような昇降支柱は、特に医療分野において、例えば手術台、外科手術用ロボット又は他の医療装置に使用される。その目的は、例えば手術台の横たわるための面である、昇降支柱に固定された医療要素の高さを床に対して可能な限り穏やかに調整することである。
【0003】
これらの油圧昇降支柱に対する要求は、特に多種多様な外科手術法のさらなる開発及び改良においてみられる急速な進歩により、並びに油圧システムのスペース要件及び快適さに関する仕様により、近年増し続けている。そのような昇降支柱は、特に、いくつかのステージを含む伸縮設計で構成される。ステージ間に設けられる係合部材は、昇降支柱が動かされるとき一緒にそれぞれのステージが動かされることを確実にする。
【0004】
例えば、手術中に例えば手術台の高さを変えることによって患者を再配置する必要がある場合、昇降支柱を動かすことが必要となることがある。個々のステージ移行間で昇降支柱又は手術台を動かすとき、それぞれのステージが動かされると、顕著な痙動(jerking)及び可聴衝撃が生じることがある。そのようなステージ移行衝撃(stage transition impact)は、特に、1つのステージの係合部材が他のステージの係合部材と当接し係合部材が他のステージを駆動し始めるときに生じる。衝撃は、搬送されるべきステージを動かすことで打ち勝たなければならない、滑り摩擦に比べて急に大きな静摩擦によって引き起こされる。そのようなステージ移行衝撃を減衰させるために、減衰係合部材が使用されることが好ましい。
【0005】
対応する係合部材を含む油圧昇降支柱が先行技術から知られている。これらは、衝撃を低減させるために、ステージ間に複雑な金属滑り要素を使用する。これらはグリースが塗られなければならず、滑り要素間の間隙は精確に調整されなければならない。しかし、例えばねじりばねシステムである、やはりまた保守が集中する非常に複雑で高価なばねダンパ(spring damper)システムも減衰のために係合部材として使用される。
【0006】
したがって、本発明の目的は、昇降支柱が動かされるときのステージ移行衝撃が単純且つ高い費用効果で減衰され得る改善された油圧昇降支柱を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
この課題は、請求項1による油圧昇降支柱により解決される。好ましいさらなる実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明による油圧昇降支柱は、油圧シリンダユニットと、ベース要素と、キャリア要素と、少なくとも1つの中間要素とを備える。油圧シリンダユニットは、収縮位置と伸長位置との間で移動軸線に沿って昇降支柱を動かすように構成される。少なくとも収縮位置において、少なくとも1つの中間要素が、ベース要素とキャリア要素との間に配置されている。キャリア要素及び少なくとも1つの中間要素は、油圧シリンダユニットがキャリア要素に作用することで、移動軸線に沿ってベース要素に対して移動され得る。昇降支柱は、キャリア要素に配置されキャリア要素とは別個に形成される少なくとも1つの第1の係合部材をさらに備え、ここで、第1の係合部材が、昇降支柱が収縮位置と伸長位置との間で動かされるとき、中間要素に当接し、少なくとも1つの中間要素を駆動する。第1の係合部材が、減衰要素を有し、減衰要素が、プラスチックから作られることが好ましい。係合部材は、一体形係合部材、すなわち単一部品だけからなる係合部材であることが好ましい。換言すると、係合部材及び減衰要素は、一体の単体部材として提供され得る。
【0009】
このように、係合部材は、キャリア要素が動かされるとき、中間要素を駆動することができ、したがって、伸展中にキャリア要素の係合部材が中間要素に当接すると、中間要素が伸長される。係合部材の減衰要素は、当接するときの衝撃を吸収する。衝撃は、以下において「ステージ移行衝撃」とも称される。プラスチックから作られる減衰要素によって結果的に1つのみの構成要素の単純で費用効果の高い係合部材になる。
【0010】
ベース要素は、床に固定されることが好ましく、例えば定位置に螺着される。当然のことながら、ベース要素がシャシ上に取り付けられることも考えられる。そのようなシャシは、床に対するシャシのさらなる動きが阻止され得るように、床に対して固定され得ることが好ましい。
【0011】
加えて、油圧昇降支柱は、中間要素に配置され中間要素とは別個に形成された少なくとも1つの第2の係合部材を備えることができ、ここで、第1の係合部材が、中間要素に配置されるときに中間要素の一部と考えられる、第2の係合部材に当接するように構成される。これは、移動軸線に沿ってキャリア要素を動かすことによる中間要素の駆動を可能にする。さらなる係合部材は、例えばベース要素又は他の中間要素に設けられてもよい。第2の係合部材は、例えば減衰要素を有することができ、減衰要素は、プラスチックから作られてもよい。第2の係合部材は、第1の係合部材と同じ特徴を有してもよい。
【0012】
減衰要素は、第1のプラスチック材料及び第2のプラスチック材料から作られており、第1のプラスチック材料は、第2のプラスチック材料よりも高い弾性を有することが好ましい。減衰要素は、移動軸線に対して平行よりも移動軸線に対して横方向の方が高い弾性を有することが好ましい。その一方で、剛直性は、移動軸線に対して平行よりも移動軸線に対して横方向の方がより高い。これは、1つの構成要素に特性が異なる2つの異なるプラスチックを用いることによって実現される。その結果、移動軸線に対して横方向とは異なる剛直性、弾性及び減衰が移動軸線の方向に実現される。
【0013】
減衰要素は、一体部材として形成されることが好ましい。減衰要素は、射出成形された減衰要素であることが好ましい。一体形構造の減衰要素とは、費用効果が高く追加の構成要素なしに生産され得ることを意味する。それによってさらに、組み立てステップの数及び組み立ての継続時間の減少が可能になる。減衰要素は、上述したような2つの異なるプラスチック材料から作られ得るように、二成分射出成形プロセスを用いて生産されてもよい。
【0014】
減衰要素は、移動軸線の方向に弾性を有するように構成され、移動軸線に対して横方向に剛性を有するように構成されることが好ましい。換言すると、減衰要素は、移動軸線に対して横方向よりも移動軸線の方向における方がより弾性が高いことが好ましい。昇降支柱の係合部材が他の係合部材に当接するとき、減衰要素は、移動軸線の方向における弾性変形を可能にし、その一方で、移動軸線に対して横方向の変形及び押し潰しは大幅に低減又は阻止される。これは、例えば、係合部材が非意図的に緩む又は抜けることを防止すると同時に、ステージ移行衝撃を減衰させることができる。
【0015】
加えて、第1の係合部材は、移動軸線に対して横方向の第1の端部及び第2の端部、並びに第1の端部と第2の端部を連結する棒を有することができる。これは、1つだけの構成要素における幾何学的な方向依存性の実現を可能にする。これは、係合部材の、移動軸線に対して横方向におけるより高い剛性及び移動軸線の方向におけるより高い弾性につながり、したがってさらには昇降支柱のそれぞれの要素におけるそのしっかりとした保持につながる。
【0016】
減衰要素は、第1のプラスチック材料から形成される弾性部を有することが好ましい。棒は、第2のプラスチック材料から形成され、棒は、弾性部を移動軸線の方向に上側弾性部及び下側弾性部に隔てる。これは、移動軸線に対して横方向の減衰要素の安定性を確実にする。上側及び下側弾性部は、より良好な衝撃吸収を確実にする。
【0017】
上側可撓性アーム部は、移動軸線の方向に第1の端部及び第2の端部のそれぞれに形成され、上側弾性部が棒と上側アーム部との間に配置されるように上側弾性部を取り囲んでいることが好ましい。アーム部は、弾性要素が横に屈曲することを防ぐ。
【0018】
下側可撓性アーム部は、移動軸線の方向に第1の端部及び第2の端部のそれぞれに形成され、下側弾性部が棒と下側アーム部との間に配置されるように下側弾性部を取り囲んでいることが好ましい。アーム部の数は、限定されない。例えば、第1の端部を第2の端部に連結する1つだけの可撓性アーム部が形成されてもよい。
【0019】
第1の係合部材は、移動軸線方向に対して平行な第1の対称面、及び好ましくは移動軸線の方向に対して垂直な第2の対称面を有することが好ましい。係合部材の対称形状は、係合部材の単純且つ迅速な取り付け、及び昇降支柱の伸縮の間における適当な減衰を可能にする。これは、例えば、取り付けの間、特定の向きに対する限定的な注意のみ必要であることを意味する。
【0020】
滑りライニング(sliding lining)は、キャリア要素及び少なくとも1つの中間要素に取り付けられることが好ましい。滑りライニングはさらに、ベース要素に取り付けられ得ることが好ましい。滑りライニングは、ステージ移行の間に必要な力が減少されるように、キャリア要素と、少なくとも1つの中間要素とベース要素との間の静摩擦及び滑り摩擦を減少させることに使用することができる。これは、昇降支柱の伸展の間の衝撃及び可聴ノイズを減少させることができる。例えば費用削減のため、要素の個々の領域に滑り面を設けることが可能である。しかし、摩擦を最小まで減少させるために、要素の大部分が滑りライニング付きにされることも可能である。
【0021】
本発明はさらに、上述したような昇降支柱を有する医療装置に関する。
【0022】
本発明は、図面に示される実施形態を参照して以下により詳細に述べられる。図面において概略的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】線B-Bに沿った、
図1の完全に伸長された昇降支柱の断面図である。
【
図3】
図2の伸長された昇降支柱における係合部材の領域Yの詳細図である。
【
図5】線A-Aに沿った
図4の完全に収縮された昇降支柱の断面図である。
【
図6】
図5の収縮された昇降支柱における係合部材の領域Zの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して述べることにする。様々な図面において、同一の参照符号は、対応する又は同一の要素を示す。
【0025】
図1は、完全に伸長された状態の昇降支柱1を示す。昇降支柱1は、伸縮設計のものであり、ベース要素2と、キャリア要素3と、第1の中間要素4と、第2の中間要素5とを備える。第1及び第2の中間要素4及び5は、ベース要素2とキャリア要素3との間に少なくとも部分的に配置される。第2の中間要素5は、キャリア要素3内に少なくとも部分的に配置される。第1の中間要素4は、第2の中間要素5内に少なくとも部分的に配置され、ベース要素2は、第1の中間要素4内に少なくとも部分的に配置される。ベース要素2は、例えば、昇降支柱1をベースプレート(図示せず)を介して床又は可動シャシ(図示せず)に固定することができる。特に、手術台、外科手術用ロボットなどの医療装置(図示せず)は、キャリア要素3に取り付けられ得る。当然のことながら、昇降支柱1は、第1の中間要素4だけを有してもよく、又は、2つを上回る中間要素を有してもよい。
【0026】
昇降支柱1は、収縮位置と伸長位置との間で移動軸線FAに沿って昇降支柱1を動かすように構成される油圧シリンダユニット(図示せず)も有する。収縮位置は、
図4に示されるように、完全に収縮された状態にある昇降支柱1の位置を表現する。伸展位置は、
図1に示されるように、完全に伸長された状態にある昇降支柱1の位置を表現する。
【0027】
図2は、線B-Bに沿った、
図1の完全に伸長された昇降支柱1の断面図を示す。昇降支柱1は、以下に詳細に述べるいくつかの係合部材6を備える。係合部材6のうちの2つがベース要素2に配置され、ここで、2つの係合部材6は、移動軸線FAの方向にベース要素2の上半分に配置される。2つのさらなる係合部材6は、キャリア要素3において、移動軸線FAの方向にキャリア要素3の下半分に配置される。キャリア要素3に配置される係合部材6は、本発明の意味の範囲内で第1の係合部材とも称され得る。第1の中間要素4には、係合部材6のうちの2つが移動軸線FAの方向に第1の中間要素4の下半分に配置され、係合部材6のうちの2つが移動軸線FAの方向に第1の中間要素4の上半分に配置される。第2の中間要素5は、第1の中間要素4と同じ数及び配置の係合部材6を有する。中間要素4、5に配置される係合部材6は、本発明の意味の範囲内で第2の係合部材とも称され得る。係合部材6は、ベース要素2、第1及び第2の中間要素4、5並びにキャリア要素6とは別個に形成される。要素の上半分に配置される係合部材6は、本明細書において以降、「上側係合部材」と称される。要素の下半分に配置される係合部材6は、本明細書において以降、「下側係合部材」と称される。
【0028】
通路開口部7は、ベース要素2、第1及び第2の中間要素4、5並びにキャリア要素3に設けられ、その内部には、係合部材6がそれぞれの要素の内方及び外方に向けて突出するように係合部材6が配置される。通路開口部7は、各係合部材6について設けられる。
【0029】
油圧シリンダユニットは、ベース要素2に動作可能に連結され、キャリア要素3に係合する。従来の方法で圧力が油圧シリンダユニットに加えられると、昇降支柱1は伸長する。昇降支柱1は、重力によって、又は(追加的に)適切な圧力を加えることによって、収縮され得る。
【0030】
油圧シリンダユニットは、
図4に示されるように完全に収縮された昇降支柱1から始まって、油圧シリンダユニットがキャリア要素3と係合すると、まず、キャリア要素3を移動軸線FAに沿って軸方向に上方へと動かす。キャリア要素3の係合部材6が第2の中間要素5の上側係合部材6に達するまでキャリア要素3が伸長されると、キャリア要素3の係合部材6が第2の中間要素5の上側係合部材6に当接する。その結果、第2の中間要素5が駆動され、キャリア要素3と同様に、移動軸線FAの方向に動かされる。昇降支柱1がさらに伸長されると、第2の中間要素5の下側係合部材6が、
図3の詳細図に示されるように、第1の中間要素4の上側係合部材6に当接する。その結果、第1の中間要素4が駆動され、キャリア要素3及び第2の中間要素5のように、移動軸線FAの方向に動かされる。昇降支柱1は、第1の中間要素4の下側係合部材6がベース要素2の係合部材6に当接するまで、依然として伸長され得る。昇降支柱1のこの位置は、
図2に示されるように、伸長位置とも称される。
【0031】
それぞれの外側要素のすべての係合部材6が、それぞれの内側要素の対応する係合部材6に取り付けられると、昇降支柱1は、もはやさらに伸長することが不可能になる。動かされる要素の順序は任意であってよく、例えば、第1の中間要素4がまず動かされ、次いで、第2の中間要素5、最後にキャリア要素3が動かされてもよい。
【0032】
昇降支柱1の収縮は、上述したような昇降支柱1の伸展と逆の方法で作業する。
図5は、線A-Aに沿った
図4からの完全に収縮された昇降支柱の断面図を示す。昇降支柱1は、反対方向に、外側要素の係合部材6が内側要素の係合部材6に当接するまで収縮される。
【0033】
図6は、
図5からの収縮された昇降支柱1における係合部材6の領域Zの詳細図を示す。収縮位置において、それぞれの外側要素の係合部材6がそれぞれの内側要素の係合部材6に上から当接することが見られる。その一方で、伸長位置では、それぞれの外側要素の係合部材6は、
図3に示されるように、それぞれの内側要素6の係合部材6に下から当接する。
【0034】
さらに、滑りライニング8は、第1及び第2の中間要素4、5並びにキャリア要素6に取り付けられる。滑りライニングは、第1及び第2の中間要素4、5の内面及び/又は外面、並びにキャリア要素6の内面に取り付けられてもよい。さらに、滑りライニング8は、ベース要素2の外面に取り付けられてもよい。滑りライニング8は、昇降支柱1が動かされるときに個々の要素間における摩擦を低減させる。医療装置には滑剤及びグリースのない滑りライニング8が使用されることが好ましい。
【0035】
次に、
図7~
図9を参照して係合部材6について以下に述べる。この例示的な実施形態では、すべての係合部材6は、同一に構成される。しかし、係合部材6は異なるように構成されることも当然可能である。例えば、キャリア要素3の係合部材6は、昇降支柱1が完全に伸長されるとき、最大重量を支えるので、ある状況下でこれらの係合部材6を補強することは理にかなっていることがある。
【0036】
図7は、係合部材6の上面図を示す。係合部材6は、係合部材6が当接したときの衝撃を減衰させる減衰要素9を有する。特に、減衰要素9はプラスチックから作られる。減衰要素9は、第1及び第2のプラスチック材料から作られることが好ましい。第1のプラスチック材料は、第2のプラスチック材料よりも高い弾性を有する。その一方で、第2のプラスチック材料は、第1のプラスチック材料よりも剛性がより大きい。
【0037】
減衰要素9は、一体形減衰要素、すなわち単一部品のみからなる減衰要素であることが好ましい。減衰要素9は、例えば、射出成形プロセスを用いて製造される。減衰要素9は、二成分射出成形プロセスで第1及び第2のプラスチック材料から製造されてもよい。
【0038】
減衰要素9は、移動軸線FAの方向に上側弾性部10を有する。減衰要素9は、移動軸線FAの方向に下側弾性部11をさらに有する。さらに、係合部材6は、移動軸線FAに対して横方向に第1の端部12及び第2の端部13を有する。棒14は、第1の端部12と第2の端部13との間に形成され、第1の端部12を第2の端部13に連結する。上側弾性部10及び下側弾性部11は、棒14によって隔てられる。棒14は、移動軸線FAに対して横方向における係合部材6の変形を防ぐ。
【0039】
上側弾性部10及び下側弾性部11は、より高い弾性を有する第1のプラスチック材料から作られる。棒14、第1の端部12及び第2の端部13は、より高い剛性を有する第2のプラスチック材料から作られる。その結果、減衰要素9は、移動軸線FAの方向に弾性を、移動軸線FAに対して横方向に剛性を有する。
【0040】
減衰要素9は、移動軸線FAの方向に、一方が第1の端部12に取り付けられ、もう一方が第2の端部13に取り付けられる2つの上側可撓性アーム部15をさらに有する。上側アーム部15は、上側弾性部10が棒14と上側アーム部15との間に配置されるように、上側弾性部10を取り囲む。上側アーム部15は、第2のプラスチック材料から成形される。上側アーム部15は、第1の端部12に連結される狭窄部16を有する。狭窄部16により、上側アーム部15は、屈曲可能に構成され、したがって上側弾性部10の弾性変形を可能にする。
【0041】
減衰要素9はさらに、移動軸線FA方向に、一方が第1の端部12に取り付けられもう一方が第2の端部13に取り付けられる2つの下側可撓性アーム部17を有する。下側アーム部17は、下側弾性部11が棒14と下側アーム部17との間に配置されるように、下側弾性部11を取り囲む。下側アーム部17は、第2のプラスチック材料から成形される。上側アーム部15と同様に、下側アーム部17は、第1の端部12に連結される狭窄部16を備える。狭窄部16により、下側アーム部17は、屈曲可能に構成され、下側弾性部10の弾性変形を可能にする。
【0042】
図7に示されるように、係合部材6は、移動軸線FAの方向に対して平行な第1の対称面SE1を有する。第1の対称面SE1は、上側弾性部10が下側弾性部11と対称をなし上側アーム部15が下側アーム部17と対称をなすように、棒14の中線を通って延びる。さらに、係合部材6は、移動軸線FAの方向に対して垂直な第2の対称面SE2を有する。
【0043】
図8は、係合部材6の後面図を示す。係合部材6は、上側アーム部15及び下側アーム部17に形成された凹部18及び凸部19を有する。凹部18は、凸部19を越えて突出している。凹部18の形状は、凸部19の形状に対応する。
【0044】
図3及び
図6に示されるように、係合部材6の凸部19は、それぞれの要素から内方に向けて突出しており、凹部18は外方に向けて突出している。昇降支柱1の運動の間、係合部材6が当接すると、1つの係合部材6の凸部19が他の係合部材6の凹部18に当接する。
【0045】
図9は、係合部材6の側面図を示す。係合部材6は、第1の端部12及び第2の端部13にそれぞれ形成される掛止爪20を有する。掛止爪20は、それぞれの要素の内部に係合し、とげを形成する。これは、係合部材6がそれぞれの通路開口部7内にしっかりと固定されることを確実にする。係合部材6を外すために、それらは、互いの方に向けて、すなわち第1の対称面SE1の方向に掛止爪20を動かすことによって弾性的に変形される。
【符号の説明】
【0046】
1 油圧昇降支柱
2 ベース要素
3 キャリア要素
4 第1の中間要素
5 第2の中間要素
6 係合部材
7 通路開口部
8 滑りライニング
9 減衰要素
10 上側弾性部
11 下側弾性部
12 第1の端部
13 第2の端部
14 棒
15 上側可撓性アーム部
16 狭窄部
17 下側可撓性アーム部
18 凹部
19 凸部
20 掛止爪
【外国語明細書】