(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155751
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電流制限回路
(51)【国際特許分類】
H02H 3/093 20060101AFI20241024BHJP
G01R 19/165 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02H3/093
G01R19/165 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047573
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023068302
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】北村 桂祐
(72)【発明者】
【氏名】西島 智香子
【テーマコード(参考)】
2G035
5G004
【Fターム(参考)】
2G035AA16
2G035AB02
2G035AC02
2G035AC16
2G035AD02
2G035AD03
2G035AD10
2G035AD16
2G035AD18
2G035AD23
5G004AA04
5G004BA04
5G004CA03
5G004DA02
5G004DC01
5G004EA01
(57)【要約】
【課題】パルス電流が入力された際に電流遮断用のMOSFETを迅速にオフ状態にする。
【解決手段】入力端子T1と出力端子T2との間に接続されて電流I1の通過を許容および遮断するMOSFETM1と、MOSFETM1のソースと出力端子T2との間に接続された直列回路SC1と、直列回路SC1の一端とMOSFETM1のソースとの接続点に抵抗R3を介してベースが接続されると共にコレクタが抵抗R1を介してMOSFETM1のゲートに接続され、かつエミッタが直列回路SC1の他端に接続されるトランジスタQ1とを備え、トランジスタQ1は、予め規定された電流値を超える電流I1が供給されたときに、直列回路SC1の一端に生じた電圧で駆動されて、MOSFETM1を通過する電流I1の電流値を制限する電流制限回路1であって、MOSFETM1のゲートから出力端子T2に向けての電流I3の導通を許容する直列回路SC2を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流入力端子が電流供給路の入力端側に接続されると共に電流出力端子が前記電流供給路の出力端側に接続され、かつ制御端子が第1の抵抗の一端に接続されて、当該第1の抵抗の他端からのバイアス電圧の当該制御端子への付与状態に応じて、前記電流供給路に供給される電流の通過を許容および遮断するMOSFETと、
前記MOSFETの前記電流出力端子と前記出力端との間に接続された第2の抵抗およびインダクタの直列回路と、
前記直列回路の一端と前記MOSFETの前記電流出力端子との接続点に第3の抵抗を介して制御端子が接続されると共に電流入力端子が前記第1の抵抗の前記他端に接続され、かつ電流出力端子が前記直列回路の他端に接続される制御素子とを備えて構成され、
前記制御素子は、予め規定された電流値を超える電流が前記電流供給路の前記入力端に供給されたときに、前記直列回路の前記一端に生じた電圧で駆動されて、前記第1の抵抗を介して前記MOSFETの前記制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態を変えることにより当該MOSFETを通過する前記電流の電流値を制限する電流制限回路であって、
コンデンサを含んで構成されると共に前記MOSFETの前記制御端子から前記出力端に向けてのパルス電流の導通を許容するパルス電流導通回路を備えている電流制限回路。
【請求項2】
前記パルス電流導通回路は、前記コンデンサと第4の抵抗とを有する直列回路で構成されている請求項1記載の電流制限回路。
【請求項3】
前記MOSFETの前記制御端子に対するバイアス電圧の付与状態を変えることによって当該MOSFETの動作状態を制御するFET制御回路と、
前記電流供給路の前記入力端と基準電位との間の電圧差を監視して、当該電圧差が予め決められた上限電圧値を超えたときに、前記MOSFETの前記制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態を前記FET制御回路に変えさせることにより、当該MOSFETに対して前記電流の通過を遮断させる電圧監視回路とを備えている請求項1または2記載の電流制限回路。
【請求項4】
前記電圧監視回路は、前記電圧差が前記上限電圧値を超えた後に予め決められた規定電圧範囲内になったときに、前記MOSFETの前記制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態を前記FET制御回路に変えさせることにより、当該MOSFETに対して前記電流の通過を許容させる請求項3記載の電流制限回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め規定された電流値を超える電流が供給されたときに、制御素子を駆動することにより、電流供給路に配設されているMOSFETを通過する電流の電流値を制限する電流制限回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、この種の電流制限回路として下記の特許文献1に開示された電流制限回路が知られている。
図2に示すように、この電流制限回路1Xは、エンハンスメント型のMOSFETM1X、バイポーラ型のトランジスタQ1X、フローティング電源PWX、インダクタL1Xおよび抵抗R1X~R3X,R5X,R6Xを備えて構成されている。
【0003】
具体的には、この電流制限回路1Xでは、電流の通過を許容および遮断する素子としてのMOSFETM1Xが、電流供給路の入力端側にドレインが接続されると共に電流供給路の出力端側にソースが接続され、かつゲートが抵抗R1Xの一端に接続されて、抵抗R1Xの他端からのバイアス電圧のゲートへの付与状態に応じて、電流供給路に供給される電流の通過を許容および遮断する。また、インダクタL1Xおよび抵抗R6Xの並列回路と抵抗R2Xとからなる直列回路が、MOSFETM1Xのソースと電流供給路の出力端との間に接続されている。また、トランジスタQ1Xのベースが抵抗R3Xを介してMOSFETM1Xのソースに接続され、コレクタが抵抗R1Xを介してMOSFETM1Xのゲートに接続されると共に抵抗R5Xを介してフローティング電源PWXの正極に接続され、かつエミッタがフローティング電源PWXの負極に接続されている。また、フローティング電源PWXの負極は、電流供給路の出力端に接続されている。
【0004】
この電流制限回路1Xでは、通常状態では、MOSFETM1Xが、フローティング電源PWXから出力されるバイアス電圧によってバイアスされてオン状態に保持されている。この状態では、電流制限回路1Xは、電流供給路の入力端に入力した直流電流の出力端に向けての通過を許容する。
【0005】
一方、供給される直流電流の電流値が予め規定された電流値を超えて上昇したときには、直流電流が流れることに起因して、抵抗R2Xにおける抵抗R3X側の端部の電圧が上昇する。この際には、トランジスタQ1Xのベースの電圧が上昇するため、トランジスタQ1Xがオン状態となる。この状態では、フローティング電源PWXからの直流電流が抵抗R5Xを介してトランジスタQ1Xに流入してMOSFETM1Xのゲート電圧(バイアス電圧)が低下させられる。したがって、MOSFETM1がオフ状態に制御されるため、MOSFETM1Xを通過する電流の電流値が制御される。この結果、この電流制限回路1Xでは、電流供給路の入力端から出力端に向けて流れる直流電流の電流値を予め規定した電流値以下に制限することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-84395号公報(第7-10頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、この従来の電流制限回路1Xには、電流供給路の入力端側に過大な電流値の電流が供給されたときに、その過大な電流値の電流の供給を制限することができないことがあるという問題点がある。具体的には、例えば、電流供給路の出力端側に接続されている被保護装置に異常が生じた際や、電流供給路の入力端側に過大な電圧値のパルス状の直流電圧が瞬間的に入力された際などには、予め規定された電流値を大きく超えるパルス状の過大な電流値の電流(以下、「パルス電流」ともいう)が電流供給路の入力端側に供給されることがある。この場合、この電流制限回路1Xでは、パルス電流が抵抗R2Xを流れて抵抗R2Xの両端の電圧差が大きくなり、トランジスタQ1Xがオン状態になろうとする際に、パルス電流の周波数が高いときには、トランジスタQ1Xは、その周波数特性によっては、速やかな応答速度でオン状態になるのが困難である。したがって、この電流制限回路1Xには、パルス電流の周波数が高いときに、電流供給路に設けられている電流遮断用のMOSFETを迅速にオフ状態に制御することができないこととなる。このため、電流供給路の入力端側から出力端側に向けてパルス電流の通過を許容してしまう結果、この電流制限回路1Xには、電流供給路の出力端側に接続されている被保護装置を故障させる可能性があるという課題が存在する。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、パルス電流が入力された際にも、MOSFETを迅速にオフ状態に制御して、過大な電流値の電流の供給を制限し得る電流制限回路を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電流制限回路は、電流入力端子が電流供給路の入力端側に接続されると共に電流出力端子が前記電流供給路の出力端側に接続され、かつ制御端子が第1の抵抗の一端に接続されて、当該第1の抵抗の他端からのバイアス電圧の当該制御端子への付与状態に応じて、前記電流供給路に供給される電流の通過を許容および遮断するMOSFETと、前記MOSFETの前記電流出力端子と前記出力端との間に接続された第2の抵抗およびインダクタの直列回路と、前記直列回路の一端と前記MOSFETの前記電流出力端子との接続点に第3の抵抗を介して制御端子が接続されると共に電流入力端子が前記第1の抵抗の前記他端に接続され、かつ電流出力端子が前記直列回路の他端に接続される制御素子とを備えて構成され、前記制御素子は、予め規定された電流値を超える電流が前記電流供給路の前記入力端に供給されたときに、前記直列回路の前記一端に生じた電圧で駆動されて、前記第1の抵抗を介して前記MOSFETの前記制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態を変えることにより当該MOSFETを通過する前記電流の電流値を制限する電流制限回路であって、コンデンサを含んで構成されると共に前記MOSFETの前記制御端子から前記出力端に向けてのパルス電流の導通を許容するパルス電流導通回路を備えている。
【0010】
この電流制限回路では、MOSFETのゲートと電流供給路の出力端との間において直列接続されたコンデンサを含んで構成されてパルス電流の通過を許容するパルス電流導通回路を備えたことにより、MOSFETに過大な電流値で高い周波数のパルス電流が流れようとする際に、パルス電流導通回路がMOSFETのゲートから出力端に向けてのパルス電流の導通を許容するため、MOSFETのドレインおよびゲート間の静電容量、並びにMOSFETのソースおよびゲート間の静電容量に蓄積されていた電荷を直列回路内のコンデンサに瞬間的に移動させることができる。したがって、この電流制限回路によれば、MOSFETのゲートおよびソース間の電圧を瞬間的に低下させてしきい値電圧よりも瞬間的に下回らせる(低下させる)ことができる結果、MOSFETを瞬間的に(迅速に)オフ状態に制御して、電流供給路の入力端から出力端に向けてのパルス電流の通過を瞬間的に遮断することができる。これにより、この電流制限回路では、電流供給路の出力端に接続されている被保護装置を過電流から保護することができる。
【0011】
また、本発明に係る電流制限回路は、前記パルス電流導通回路は、前記コンデンサと第4の抵抗とを有する直列回路で構成されている。
【0012】
この電流制限回路によれば、パルス電流導通回路を簡易かつ安価に構成することができ、ひいては、電流制限回路を簡易かつ安価に構成することができる。
【0013】
また、本発明に係る電流制限回路は、前記MOSFETの前記制御端子に対するバイアス電圧の付与状態を変えることによって当該MOSFETの動作状態を制御するFET制御回路と、前記電流供給路の前記入力端と基準電位との間の電圧差を監視して、当該電圧差が予め決められた上限電圧値を超えたときに、前記MOSFETの前記制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態を前記FET制御回路に変えさせることにより、当該MOSFETに対して前記電流の通過を遮断させる電圧監視回路とを備えている。
【0014】
この電流制限回路によれば、電圧監視回路が、電流経路の入力端と基準電位との間の電圧差を監視して、電圧差が予め決められた上限電圧値を超えたときに、MOSFETの制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態をFET制御回路に変えさせてMOSFETに対して電流の通過を遮断させることにより、過大電圧値の電圧の入力に起因する被保護装置の故障を未然に回避することができる。
【0015】
また、本発明に係る電流制限回路では、前記電圧監視回路は、前記電圧差が前記上限電圧値を超えた後に予め決められた規定電圧範囲内になったときに、前記MOSFETの前記制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態を前記FET制御回路に変えさせることにより、当該MOSFETに対して前記電流の通過を許容させる。
【0016】
この電流制限回路によれば、電圧監視回路が、電圧差が上限電圧値を超えた後に予め決められた規定電圧範囲内になったときに、MOSFETの制御端子に付与されているバイアス電圧の付与状態をFET制御回路に変えさせてMOSFETに対して電流の通過を許容させることにより、異常状態から通常状態に復帰したときには、電流経路に電流を自動的に供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電流制限回路によれば、MOSFETを瞬間的にオフ状態に制御して、電流供給路の入力端から出力端に向けてのパルス電流の通過を瞬間的に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電流制限回路の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示す電流制限回路1は、例えば、直流電流を生成する電源装置2と、直流電流で駆動される被保護装置3との間に設けられて、電源装置2から被保護装置3に供給される直流電流を予め規定された電流値以下に制限すると共にパルス電流が電源装置2から被保護装置3に供給されようとするときに、そのパルス電流の被保護装置3への供給(通過)を制限可能に構成されている。
【0021】
具体的には、
図1に示すように、電流制限回路1は、電流供給路の入力端としての入力端子T1と電流供給路の出力端としての出力端子T2とを備えており、この入力端子T1に接続される電源装置2と、出力端子T2に接続される負荷装置としての例えば定電流回路などの被保護装置3との間に接続(配置)される。
【0022】
また、電流制限回路1は、MOSFETM1、直列回路SC1、トランジスタQ1、FET制御回路11および電圧監視回路12を備えている。この場合、MOSFETM1は、エンハンスメント型でNチャンネル型のFETであって、電流供給路に供給される電流の通過を許容および遮断するための素子として機能して、電流入力端子としてのドレインが入力端子T1側に接続されると共に電流出力端子としてのソースが出力端子T2側に接続され、かつ制御端子としてのゲートが第1の抵抗としての抵抗R1の一端に接続されて、抵抗R1の他端からのバイアス電圧Vbのゲートへの付与状態に応じて、電流供給路に供給される電流の予め規定した電流値以下での通過を許容したり、過大な電流値の電流の通過を遮断したりする。具体的には、MOSFETM1は、しきい値以上の電圧値のバイアス電圧Vbが抵抗R1を介してゲートに付与されたときには、ドレイン-ソース間の抵抗値が十分に小さい抵抗値のオン状態に制御され、付与されるバイアス電圧Vbの電圧値がしきい値未満のときには、ドレイン-ソース間の抵抗値がやや大きい不完全なオン状態か、またはドレイン-ソース間の抵抗値が極めて高いオフ状態に制御される。
【0023】
直列回路SC1は、第2の抵抗としての抵抗R2およびインダクタL1を有して、MOSFETM1のソースと出力端子T2との間に接続されている。また、トランジスタQ1は、Nチャンネル型のトランジスタであって、制御素子の一例を構成する。この場合、トランジスタQ1の制御端子としてのベースは、直列回路SC1の一端(抵抗R2におけるMOSFETM1側の端部)とMOSFETM1のソースとの接続点に第3の抵抗としての抵抗R3を介して接続され、電流入力端子としてのコレクタは、抵抗R1の他端に接続されることにより抵抗R1を介してMOSFETM1のゲートに接続され、かつ電流出力端子としてのエミッタは、直列回路SC1の他端(インダクタL1における出力端子T2側の端部)に接続されている。
【0024】
FET制御回路11は、MOSFETM1のゲートに対するバイアス電圧の付与状態を変えることによってMOSFETM1のオン/オフの動作状態を制御する。具体的には、FET制御回路11は、電源装置2から予め決められた規定電圧範囲内の電圧が出力されている通常状態では、抵抗R5および抵抗R1を介してMOSFETM1のゲートにしきい値を超える電圧値のバイアス電圧Vbを供給することにより、MOSFETM1をオン状態に制御する。一方、FET制御回路11は、電圧監視回路12から制御信号S1を入力したときには、バイアス電圧Vbの出力を停止することにより、MOSFETM1をオフ状態に制御して電流供給路に供給される電流の通過を遮断させる。
【0025】
電圧監視回路12は、電流供給路の入力端としての入力端子T1と基準電位(本例では、グランド電位)との間に接続されて、入力端子T1と基準電位との間の電圧差である電圧V1を監視する。また、電圧監視回路12は、MOSFET1のゲートに付与されているバイアス電圧の付与状態をFET制御回路11に変えさせることにより、MOSFET1に対して電流の通過を許容させたり遮断させたりする。具体的には、電圧監視回路12は、電圧V1が上限電圧値(上記の規定電圧範囲の上限電圧値)を超えたときには、MOSFETM1のゲートに付与されているバイアス電圧の付与状態を変えさせることにより、MOSFETM1に対して電流供給路に供給される電流の通過を遮断させる。より具体的には、電圧監視回路12は、制御信号S1をFET制御回路11に出力してバイアス電圧Vbの供給を停止させることにより、MOSFETM1をオフ状態に制御させて電流供給路に供給される電流の通過を遮断させる。また、電圧監視回路12は、電圧V1が上限電圧値を超えた後に上記の規定電圧範囲内になったときに、MOSFETM1のゲートに付与されているバイアス電圧の付与状態をFET制御回路11に変えさせることにより、MOSFETM1に対して電流供給路に供給される電流の通過を許容させる。具体的には、電圧監視回路12は、制御信号S1の出力を停止してFET制御回路11に対してバイアス電圧Vbの供給を再開させることにより、MOSFETM1をオン状態に制御させて電流供給路に供給される電流の通過を許容させる。
【0026】
また、この電流制限回路1では、MOSFETM1のゲートと出力端子T2との間、具体的には、MOSFETM1のゲートに一端が接続されている抵抗R3の他端と出力端子T2との間において直列接続されたコンデンサC1と第4の抵抗としての抵抗R4とで構成される直列回路SC2を備えている。この直列回路SC2は、パルス電流導通回路として機能して、MOSFETM1に高い周波数のパルス電流が流れようとする際に、MOSFETM1のゲートから出力端子T2に向けてのパルス電流の導通(通過)を許容する。
【0027】
次に、
図1を参照して、電流制限回路1の動作について説明する。
【0028】
最初に、入力端子T1(電流供給路の入力端)における直流電圧の電圧値(電圧V1)が規定電圧範囲内であって、かつ予め規定された電流値以下の直流電流が電流供給路に供給されている通常状態での電流制限回路1の動作について説明する。この通常状態では、入力端子T1および基準電位間の電圧V1の電圧値が規定電圧範囲内のため、電圧監視回路12は、制御信号S1の出力を停止している。この状態では、FET制御回路11は、抵抗R5,抵抗R1を介してMOSFETM1のゲートにバイアス電圧Vbを出力している。したがって、MOSFETM1は、オン状態に制御されている。この状態では、電源装置2から出力される直流の電流I1は、入力端子T1、MOSFETM1のドレイン、MOSFETM1のソース、直列回路SC1および出力端子T2からなる電流経路CP1(電流供給路)を流れて被保護装置3に供給される。
【0029】
一方、供給される電流I1の電流値が上昇して予め規定された電流値を超えたときには、電流I1が流れることに起因して、抵抗R2におけるMOSFETM1のソース側(抵抗R3側)の端部の電圧が上昇する。この際には、この上昇した電圧が抵抗R3を介してトランジスタQ1のベースに入力されるため、トランジスタQ1のベース電圧が上昇する結果、トランジスタQ1がオン状態となる。この状態では、FET制御回路11の出力部から出力される電流I2が、抵抗R5、トランジスタQ1のコレクタ、トランジスタQ1のエミッタおよびFET制御回路11の入力部からなる電流経路CP2を流れ、この際に、抵抗R5において電圧降下が生じることに起因して、MOSFETM1のゲートに供給されるバイアス電圧Vbの電圧値がしきい値電圧よりも低下させられる。したがって、MOSFETM1が不完全なオン状態かオフ状態に制御され、これにより、電流供給路の入力端(本例では、入力端子T1)から出力端(本例では、出力端子T2)に向けてMOSFETM1を通過する電流I1の電流値が予め規定された電流値以下にまで制限される。
【0030】
また、供給される電流I1の電流値が予め規定された電流値以下にまで低下したときには、抵抗R2における抵抗R3側の端部の電圧が低下する。この際には、トランジスタQ1のベース電圧が低下するため、トランジスタQ1がオフ状態となる。この状態では、電流I2が電流経路CP2を流れないため、抵抗R5において電圧降下が生じない結果、MOSFETM1のゲートには、FET制御回路11からしきい値電圧を超える規定電圧のバイアス電圧Vbが出力される。したがって、MOSFETM1がオン状態に制御され、これにより、電流供給路の入力端(本例では、入力端子T1)から出力端(本例では、出力端子T2)に向かう電流経路CP1に予め規定された電流値以下の電流I1が供給される。この結果、この電流制限回路1では、電流供給路の入力端に入力した電流I1の電流値を規定の電流値以下に制御することが可能となっている。
【0031】
一方、例えば、被保護装置3において異常が生じた際や、電源装置2から瞬間的に過大な電圧値で高い周波数のパルス状の直流電圧が出力された際などには、予め規定された電流値を超えるパルス電流Ip(
図1参照)が入力端子T1に供給されようとすることがある。この場合、この電流制限回路1では、電流経路CP1をパルス電流Ipが瞬間的に流れようとするが、インダクタL1の誘導性リアクタンスに起因して、パルス電流Ipが多少流れにくくなっている。したがって、この際には、抵抗R2におけるMOSFETM1のソース側(抵抗R3側)の端部の電圧(抵抗R2の両端電圧)が直ちには上昇せず、またトランジスタQ1の周波数特性にも起因して、トランジスタQ1はオフ状態を維持している。この場合、電圧監視回路12は、高い周波数のパルス状の直流電圧に対しては、応答しきれずに、制御信号S1の出力を停止している。このため、この状態では、MOSFETM1はオン状態を維持している。
【0032】
一方、入力端子T1に入力したパルス電流Ipの一部の電流I3は、入力端子T1、MOSFETM1のドレインおよびゲート間の静電容量とMOSFETM1のソースおよびゲート間の静電容量、抵抗R1、直列回路SC2並びに出力端子T2からなる電流経路CP3を瞬間的に流れる。その際に、MOSFETM1のドレインおよびゲート間の静電容量、並びにMOSFETM1のソースおよびゲート間の静電容量に蓄積されていた電荷が、直列回路SC2内のコンデンサC1に瞬間的に移動する。したがって、MOSFETM1のゲートおよびソース間の電圧が瞬間的に低下してしきい値電圧を瞬間的に下回る(低下する)ため、MOSFETM1は、瞬間的にオフ状態に制御される。この結果、入力端子T1から出力端子T2に向けてのパルス電流Ipの通過が瞬間的に遮断される。
【0033】
この後、パルス電流Ipの一部の電流I4が、入力端子T1、MOSFETM1のドレイン、MOSFETM1のソース、抵抗R3、トランジスタQ1のベース、トランジスタQ1のエミッタ、および出力端子T2からなる電流経路CP4に流れて、バイアス電流としてトランジスタQ1に供給される。同時に、パルス電流Ipの一部が流れてインダクタL1に生じた逆起電圧Vlに起因する電流I5が、インダクタL1、抵抗R2、抵抗R3、トランジスタQ1のベース,トランジスタQ1のエミッタ、およびインダクタL1からなる電流経路CP5に流れて、バイアス電流としてトランジスタQ1に供給される。これにより、トランジスタQ1が周波数特性に従って徐々にオン状態に移動(遷移)する。この際には、直列回路SC1内にインダクタL1が存在することにより、電流I4のみがトランジスタQ1のベースに供給されるのと比較して、トランジスタQ1は、より速やかにオン状態に移動(遷移)する。
【0034】
一方、コンデンサC1に電荷が十分に蓄積した時点では、電流I3が電流経路CP3を流れない状態になる。しかしながら、トランジスタQ1がオン状態になったことに起因して、電流I6が、入力端子T1、MOSFETM1のドレイン、MOSFETM1のゲート、抵抗R1、トランジスタQ1のコレクタ、トランジスタQ1のエミッタ、出力端子T2からなる電流経路CP6を流れて、MOSFETM1のゲートおよびソース間の電圧をしきい値電圧以下に下回らせている状態(低下させている状態)を維持する結果、MOSFETM1は、確実にオフ状態に維持される。この際に、電流経路CP3を電流I3が流れたことに起因してコンデンサC1に蓄えられていた電荷に基づく電流I7が、コンデンサC1、抵抗R4、トランジスタQ1のコレクタ、トランジスタQ1のエミッタ、およびコンデンサC1からなる電流経路CP7を流れ、これにより、コンデンサC1に蓄積されていた電荷が消費される(放出される)。この場合、抵抗R4は、電流制限抵抗として機能して、コンデンサC1に大量の電荷が蓄積されていたときには、大きな電流値の電流I7が流れてトランジスタQ1が破損する事態を回避させる。
【0035】
一方、電圧監視回路12は、入力端子T1と基準電位との間の電圧V1が規定電圧範囲の上限電圧値を超えたことを検出したときには、制御信号S1をFET制御回路11に出力する。これにより、FET制御回路11は、バイアス電圧Vbの出力を停止する。この結果、MOSFETM1は、より確実にオフ状態に維持されて、入力端子T1から出力端子T2に向けてのパルス電流Ipの通過をより確実に遮断する。
【0036】
この後、パルス電流Ipの瞬時値の低下に伴って電流I4の電流値が減少すると共にインダクタL1のエネルギーの減少に伴って電流I5の電流値が減少し、これにより、トランジスタQ1がオフ状態に移動する。
【0037】
次いで、パルス電流Ipの入力が停止したときには、電圧監視回路12は、入力端子T1と基準電位との間の電圧V1が規定電圧範囲内になったことを検出し、その際に、制御信号S1のFET制御回路11への出力を停止する。これにより、FET制御回路11は、バイアス電圧Vbの出力を開始(再開)する。この際には、MOSFETM1のゲート電圧が、抵抗R1,R4,R5の各抵抗値と、MOSFETM1のドレインおよびソースとゲートとの間の各静電容量と、コンデンサC1の静電容量とに基づく時定数に従って上昇する。この後、ゲート電圧がしきい値電圧を超えたときに、MOSFETM1がオン状態に制御される。この結果、電流制限回路1は、電源装置2から被保護装置3への電流I1の供給を許容する通常状態に維持される。
【0038】
このように、この電流制限回路1では、MOSFETM1のゲートと電流供給路の出力端(出力端子T2)との間において直列接続されたコンデンサC1を含んで構成されてパルス電流Ipの通過を許容するパルス電流導通回路(直列回路SC2)を備えたことにより、MOSFETM1に過大な電流値で高い周波数のパルス電流Ipが流れようとする際に、パルス電流導通回路がMOSFETM1のゲートから出力端子T2に向けてのパルス電流Ipの導通を許容するため、MOSFETM1のドレインおよびゲート間の静電容量、並びにMOSFETM1のソースおよびゲート間の静電容量に蓄積されていた電荷を直列回路SC2内のコンデンサC1に瞬間的に移動させることができる。したがって、この電流制限回路1によれば、MOSFETM1のゲートおよびソース間の電圧を瞬間的に低下させてしきい値電圧よりも瞬間的に下回らせる(低下させる)ことができる結果、MOSFETM1を瞬間的に(迅速に)オフ状態に制御して、電流供給路の入力端子T1から出力端子T2に向けてのパルス電流Ipの通過を瞬間的に遮断することができる。これにより、この電流制限回路1では、電流供給路の出力端に接続されている被保護装置3を過電流から保護することができる。
【0039】
また、この電流制限回路1によれば、電圧監視回路12が、電流経路CP1の入力端(入力端子T1)と基準電位(グランド電位)との間の電圧差(電圧V1)を監視して、電圧V1が予め決められた上限電圧値を超えたときに、MOSFETM1のゲートに付与されているバイアス電圧の付与状態をFET制御回路11に変えさせてMOSFETM1に対して電流I1の通過を遮断させることにより、過大電圧値の電圧の入力に起因する被保護装置3の故障を未然に回避することができる。
【0040】
また、この電流制限回路1によれば、電圧監視回路12が、電圧V1が上限電圧値を超えた後に予め決められた規定電圧範囲内になったときに、MOSFETM1のゲートに付与されているバイアス電圧の付与状態をFET制御回路11に変えさせてMOSFETM1に対して電流I1の通過を許容させることにより、異常状態から、電源装置2から予め決められた規定電圧範囲内の電圧が出力される通常状態に復帰したときには、電流経路CP1に電流I1を自動的に供給することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記電流制限回路1の構成に限定されず、適宜変更することができる。例えば、パルス電流導通回路を構成する直列回路SC2のコンデンサC1として小さな静電容量のコンデンサを用いる構成では、電流経路CP7を流れる電流I7の電流値が小さい。したがって、トランジスタQ1が破損する可能性が低いため、抵抗R4の配設を省くことができる。つまり、直列回路SC2をコンデンサC1のみで構成することができる。この構成の電流制限回路1によれば、パルス電流導通回路を簡易かつ安価に構成することができ、ひいては、電流制限回路1を簡易かつ安価に構成することができる。
【0042】
また、直列回路SC1内の抵抗R2およびインダクタL1の接続を逆接続することもできる、つまり、MOSFETM1のソース側にインダクタL1を配置し、かつ出力端子T2側に抵抗R2を配置して直列回路SC1を構成することができる。また、直列回路SC2内の抵抗R4およびコンデンサC1の接続を逆接続することもできる、つまり、抵抗R1側にコンデンサC1を配置し、かつ出力端子T2側に抵抗R4を配置して直列回路SC2を構成することができる。
【0043】
また、抵抗R4(または上記の逆接続のときには、コンデンサC1)をMOSFETM1のゲートに抵抗R1を介さずに直接接続する構成を採用することもできる。
【0044】
さらに、上記の電流制限回路1においては、電圧監視回路12を入力端子T1と基準電位との間に配設して、入力端子T1と基準電位との間の電圧V1を監視する構成を採用しているが、これに限られない。例えば、電圧監視回路12を出力端子T2と基準電位との間に配設して、出力端子T2と基準電位との間の電圧差を監視する構成を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明によれば、電流供給路にパルス電流Ipが供給されたときに、MOSFETM1のゲートおよびソース間の電圧を瞬間的に低下させてしきい値電圧よりも瞬間的に下回らせる(低下させる)ことができる結果、MOSFETM1を瞬間的にオフ状態に制御して、電流供給路の入力端子T1から出力端子T2に向けてのパルス電流Ipの通過を瞬間的に遮断することができる。これにより、本願発明は、このような電流制限回路に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 電流制限回路
12 電圧監視回路
C1 コンデンサ
CP1~CP7 電流経路
Ip パルス電流
L1 インダクタ
M1 MOSFET
R1~R7 抵抗
Q1 トランジスタ
SC1,SC2 直列回路
T1 入力端子
T2 出力端子
V1 電圧