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特開2024-155755廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システム
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  • 特開-廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システム 図1
  • 特開-廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155755
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
C10G1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053658
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0051631
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0126307
(32)【優先日】2023-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョ サン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン ス キル
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク ミン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】シン ミン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジン ソン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC12
4H129NA21
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多量の不純物を含む廃プラスチックから軽質炭化水素の割合が高い高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムを提供する。
【解決手段】本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、前記前処理ステップで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、を含み、前記高温フィルターで凝縮された液体は、前記熱分解反応器に再投入される、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、
前記前処理ステップで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入し、熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、
前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、
前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、
を含み、
前記高温フィルターで凝縮された液体は、前記熱分解反応器に再投入される、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記高温フィルターはビーズ(Bead(s))で充填される、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記ビーズは、ケイ砂(SiO)および酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記高温フィルターに温度勾配が形成される、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項5】
前記温度勾配は、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えることによって形成される、請求項4に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項6】
前記熱分解反応器は、少なくとも2つのバッチ反応器を含む、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項7】
前記熱分解ステップは、前記少なくとも2つのバッチ反応器をスイッチ運転することにより行われる、請求項6に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項8】
前記熱分解油は、石油系炭化水素と混合されて混合油として蒸留される、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項9】
前記熱分解油は、前記混合油の総重量に対して50重量%以下含まれる、請求項8に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項10】
前記廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法。
【請求項11】
廃プラスチックを前処理する前処理装置と、
前記前処理装置で前処理された廃プラスチックを投入して熱分解ガスを製造する熱分解反応器と、
前記熱分解ガスを投入して熱分解油を製造する高温フィルター(Hot filter)と、
前記高温フィルターで凝縮された液体が、前記熱分解反応器に再投入されるように、前記高温フィルターと前記熱分解反応器を接続する接続配管と、
前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留装置と、
を含む、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【請求項12】
前記高温フィルターはビーズ(Bead(s))で充填される、請求項11に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【請求項13】
前記ビーズは、ケイ砂(SiO)および酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【請求項14】
前記製造システムは、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターをさらに含む、請求項11に記載の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチック熱分解油など廃棄物の分解(Cracking)または熱分解反応を通じて生成された熱分解油内には、廃棄物に起因する多量の不純物を含むため、これを燃料として活用する場合、SOx、NOxなどの大気汚染物質の排出が懸念される。特に塩素(Cl)成分は、高温処理過程で装置の腐食を引き起こす恐れがあるHClに変換されて排出される問題がある。
【0003】
従来、精油技術を活用した水添脱硫工程(Hydrotreating)、Cl処理工程などの後処理工程を通じてClを除去していたが、廃プラスチック熱分解油などの熱分解油は、Cl含有量が高いので、水添脱硫工程で形成される過剰なHClの発生で装置の腐食や反応異常、製品性状悪化の問題が報告されており、前処理していない熱分解油を水添脱硫工程に導入することは難しい。既存の石油精製プロセスを活用してCl油分を除去するためには、熱分解油中のCl含有量を、石油精製プロセスに導入可能なレベルまで低減するためのCl低減処理技術が必要である。
【0004】
また、不純物除去に加えて、経済性確保のため、廃プラスチック熱分解油の収率向上および軽質化による廃プラスチック熱分解油の高付加価値化が求められている。さらに、前記廃プラスチック熱分解油から軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる技術開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様によれば、多量の不純物を含む廃プラスチックから軽質炭化水素の割合が高い高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0006】
本開示の他の態様によれば、廃プラスチックから得られる熱分解油の収率を向上させることができる。
【0007】
本開示の別の態様によれば、多量の不純物を含む廃プラスチックから不純物が低減された高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから不純物が低減された精製炭化水素を得ることができる。
【0008】
本開示の他の態様によれば、廃プラスチックから精製炭化水素を製造する際の工程が簡素化された方法および装置を提供することができる。
【0009】
本開示の一態様によれば、品質に優れ、既存の石油製品とのブレンドまたは石油精製プロセスに原料として使用可能な高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから精製炭化水素を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、前記前処理ステップで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、を含み、前記高温フィルターで凝縮された液体は、前記熱分解反応器に再投入されることである、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法を提供する。
【0011】
本開示による一態様において、前記高温フィルターは、ビーズ(Bead(s))で充填されたものであってもよい。
【0012】
本開示による一態様において、前記ビーズは、ケイ砂(SiO)および酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0013】
本開示による一態様において、前記高温フィルターに温度勾配が形成されたものであってもよい。
【0014】
本開示による一態様において、前記温度勾配は、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えることによって形成されたものであってもよい。
【0015】
本開示に係る一態様において、前記熱分解反応器は、少なくとも2つのバッチ反応器を含んでもよい。
【0016】
本開示による一態様において、前記熱分解ステップは、前記少なくとも2つのバッチ反応器をスイッチ運転することによって行われてもよい。
【0017】
本開示による一態様において、前記熱分解油は、石油系炭化水素と混合され、混合油として蒸留されてもよい。
【0018】
本開示による一態様において、前記熱分解油は、前記混合油の総重量に対して50重量%以下含まれてもよい。
【0019】
本開示による一態様において、前記廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0020】
また、本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理装置、前記前処理装置で前処理された廃プラスチックを投入して熱分解ガスを製造する熱分解反応器と、前記熱分解ガスを投入して熱分解油を製造する高温フィルター(Hot filter)と、前記高温フィルターで凝縮された液体が、前記熱分解反応器に再投入されるように前記高温フィルターと前記熱分解反応器を接続する接続配管と、前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留装置と、を含む、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造システムを提供する。
【0021】
本開示による一態様において、前記高温フィルターに、ビーズ(Bead(s))が充填されていてもよい。
【0022】
本開示による一態様において、前記ビーズは、ケイ砂(SiO)および酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0023】
本開示による一態様において、前記製造システムは、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターをさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様によれば、多量の不純物を含む廃プラスチックから軽質炭化水素の割合が高い高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0025】
本開示の一態様によれば、廃プラスチックから得られる熱分解油の収率を向上させることができる。
【0026】
本開示の一態様によれば、多量の不純物を含む廃プラスチックから不純物が低減された高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから不純物が低減された精製炭化水素を得ることができる。
【0027】
本開示の別の態様によれば、廃プラスチックから精製炭化水素を製造する際の工程を簡素化することができる。
【0028】
本開示の一態様によれば、品質が優れており、既存の石油製品とのブレンドまたは石油精製プロセスに原料として使用可能な軽質炭化水素の割合が高い高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0029】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムは、廃プラスチックを利用した環境にやさしい(Eco-friendly)石油化学製品の生産に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の一態様による廃プラスチック熱分解油の製造方法の工程図である。
図2】本開示の一態様による高温フィルターに関する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の利点および特徴ならびにそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本開示は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態で実施されるものであり、単に本実施例は、本開示の開示を完全なものとし、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に本発明のカテゴリーを完全に知らせるために提供されるものであり、本開示は請求項のカテゴリーによって定義されるだけである。
【0032】
他に定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本開示が属する技術分野において、当業者に共通に理解される意味で使用することができる。
【0033】
本明細書で使用される用語の単数形は、特に指示がない限り、複数形も含むと解釈することができる。
【0034】
本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内のすべての値、定義される範囲の形と幅から論理的に導かれる増分、二重に限定されたすべての値および異なる形で限定された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む。本開示の明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の丸めにより発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0035】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と同等の意味を持つ開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料または工程を排除するものではない。
【0036】
本明細書で特に記載がない限り、%という単位は、特に定義がない限り重量%を意味する。
【0037】
本明細書において「A~B」とは、特に他の定義がない限り「A以上B以下」を意味する。
【0038】
本明細書で「熱分解油収率」とは、熱分解ステップの生成物のうち、油分、水系副産物、熱分解残渣(Char)および副産物ガスの重量合計に対する油分の重量比を意味する。
【0039】
以下、本開示の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法および製造システムについて詳細に説明する。ただし、これは例示的なものに過ぎず、本開示が例示的に説明した具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0040】
本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理ステップと、前記前処理ステップで前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して熱分解ガスを製造する熱分解ステップと、前記熱分解ガスを高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造する軽質化ステップと、前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留ステップと、を含み、前記高温フィルターで凝縮された液体は、前記熱分解反応器に再投入されることである、廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法を提供する。
【0041】
そこで、本開示の一態様に係る廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、多量の不純物を含む廃プラスチックから、軽質炭化水素の割合が高い、高付加価値の熱分解油を製造することができ、これにより、軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。また、前記得られた熱分解油の収率を著しく向上させることができる。
【0042】
また、本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、多量の不純物を含む廃プラスチックから不純物が低減された高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから不純物が低減された精製炭化水素を得ることができる。
【0043】
本開示の一態様に係る廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、前記高温フィルターで凝縮した液体を前記熱分解反応器に再投入することにより、熱分解油中の重質炭化水素の分解(クラッキング)を向上させることができる。したがって、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を得ることができる。
【0044】
本開示の他の一態様によると、前記高温フィルターに、ビーズ(Bead(s))が充填されていてもよい。前記高温フィルターがビーズで充填される場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱伝達効果が最大化され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。また、前記熱分解油の収率を向上させることができる。
【0045】
本開示の一態様によれば、前記ビーズは、前記高温フィルターに、前記高温フィルター内部容積に対して50vol%以上、60vol%以上、70vol%以上、80vol%以上、85vol%以上、90vol%以上、95vol%以下、93vol%以下、91vol%以下、90vol%以下、89vol%以下、87vol%以下、85vol%以下、80vol%以下または前記数値の間の値で充填してもよい。具体的には、前記ビーズは、前記高温フィルターに前記高温フィルター内部容積に対して70~95vol%、80~90vol%または85~90vol%で充填することができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターに温度勾配が形成されてもよい。前記高温フィルターに温度勾配が形成される場合、高温フィルターの上段に移動する熱分解ガスと、高温フィルターの下段へ凝縮する液体が効率的に循環され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。また、これにより、軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を製造することができる。それだけでなく、前記熱分解油の収率を向上させることができる。
【0047】
本開示の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの下段の温度が、前記高温フィルターの上段の温度よりも高いものであってもよい。本開示の他の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの下段の温度が、前記高温フィルターの中段の温度より高く、前記高温フィルターの中段の温度が、前記高温フィルターの上段の温度より高いものであってもよい。これにより、前記高温フィルター内の循環効率および熱伝達効率を向上させることができる。
【0048】
本開示の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えることによって形成されることができる。本開示の他の一態様によれば、前記温度勾配は、前記高温フィルターの外部に少なくとも3つのヒーターを備えることによって形成されてもよい。前記高温フィルターの外部に少なくとも2つのヒーターを備える場合、高温フィルターの温度勾配の形成が容易であり、高温フィルターの運転状況に応じて上段、中段、下段の温度を柔軟に調節することができ、柔軟なプロセス運転が可能である。
【0049】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターの下段の温度は、400℃以上、420℃以上、440℃以上、460℃以上、480℃以上、500℃以上、550℃以上または600℃以上であってもよい。
【0050】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターの上段の温度は、600℃以下、550℃以下、500℃以下、480℃以下、460℃以下、440℃以下、420℃以下または400℃以下であってもよい。
【0051】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターの中段の温度は、300℃以上600℃以下、400℃以上600℃以下、400℃以上500℃以下、420℃以上480℃以下または440℃以上460℃以下であってもよい。
【0052】
本開示の一態様によれば、前記前処理ステップで、a)廃プラスチックと中和剤を反応させるステップと、b)前記a)ステップの生成物と銅化合物を反応させるステップと、を行われてもよい。これにより、前記前処理ステップは、廃プラスチック原料物質を処理して、石油精製プロセスに導入可能なレベルまでClの含有量を低減することができる。
【0053】
本開示の一態様によれば、前記b)ステップで、銅化合物以外に金属酸化物およびゼオライト等の添加剤または中和剤を使用してもよい。前記金属酸化物は、2価金属の酸化物の形態であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。前記廃プラスチックは、有機塩素(organic Cl)、無機塩素(Inorganic Cl)および芳香族塩素(Aromatic Cl)を含むことができ、前記廃プラスチックの塩素含有量は10ppm以上、50ppm以上、100ppm以上または100~1000ppmであってもよく、本開示がこれに限定されるものではない。廃プラスチック熱分解油など、廃プラスチックの分解(cracking)または熱分解反応を通じて生成された熱分解油内には、廃プラスチックに起因する多量の不純物が含まれる。特に、熱分解油を前処理して有機/無機塩素などの塩素成分を除去する必要がある。前記廃プラスチックは、家庭用廃プラスチックと産業用廃プラスチックに区分することができる。家庭用廃プラスチックは、PE、PP以外のPVC、PS、PET、PBTなどが混合されたプラスチックで、本開示ではPE、PPと共にPVCが3重量%以上含む混合廃プラスチックを意味することができる。PVC由来の塩素は、有機Clおよび無機Clの割合が高く、安価な中和剤(Ca系、Zn系、Al系)等でも家庭用廃プラスチック内のClを高い効率で除去することができる。産業用廃プラスチックはPE/PPが大部分を占めているが、接着剤または染料成分に起因する有機Cl含有量が高く、特にアロマティックリング(aromatic ring)に含まれるCl(芳香族塩素)の割合が高いため、前記の一般的な安価な中和剤で除去することが難しいという問題がある。
【0055】
本開示は、廃プラスチックに由来する廃プラスチックに含まれる塩素の総重量に対して、95重量%以上、97重量%以上、98重量%以上または99重量%以上の塩素を除去することを特徴とする。このためには、芳香環に含まれる塩素を除去することが好ましい。
【0056】
前記a)ステップは、廃プラスチックと中和剤を反応させるステップであり、PVCなどの溶融、熱分解過程で発生する大量のHClを中和塩の形で除去することができる。
【0057】
前記中和剤は、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩またはこれらの組み合わせを含むことができ、前記金属は、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、前記中和剤は、銅酸化物、アルミニウム酸化物、カルシウム酸化物、マグネシウム酸化物、亜鉛酸化物または鉄酸化物であってもよい。前記中和剤は、ゼオライト成分を含むことができる。具体的には、前記中和剤は、ゼオライト成分を含む廃FCC触媒(E-cat)を含んでもよく、前記金属酸化物に廃FCC触媒をさらに含んでもよい。前記中和剤は、具体的には、カルシウム酸化物、廃FCC触媒、銅金属または銅酸化物であってもよく、またはカルシウム酸化物であってもよい。
【0058】
本開示による一態様において、前記中和剤は、前記熱分解ステップの際に添加してもよい。
【0059】
前記中和剤は、廃プラスチック総重量に対して0.5~20重量%、1~10重量%または1~5重量%で混合してもよい。また、前記中和剤は、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)に対する前記中和剤の金属元素(M)のモル比(N/NCl)1~25、好ましくは、0.7~15、より好ましくは、0.5~5で混合される。
【0060】
一方、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)のモル数は、前処理および熱分解前の廃プラスチック固体原料物質の塩素元素の総モル数を意味することができる。
【0061】
前記a)塩素除去ステップで、前記廃プラスチックの塩素含有量100重量%(A)に対する前記a)ステップ生成物の塩素重量比(A/A)は、50%以下、40%以下または20~30%であってもよい。a)ステップ後に廃プラスチックに残留する塩素は、b)ステップで効果的に除去することができる。
【0062】
b)ステップは、前記a)ステップの生成物と銅化合物を反応させるステップであり、前記a)ステップで除去されなかった少量の有機塩素および芳香族塩素を銅化合物(触媒)で除去することができる。銅化合物をa)ステップの中和剤と一緒に使用したり、または中和剤を置き換えて使用する場合には、銅化合物が有機塩素のうち炭化水素鎖末端に位置する塩素および無機塩素(HCl)と先に反応し、中和剤で除去されにくい芳香族塩素などとの接触が難しい場合がある。また、前処理または熱分解のために反応器内部を昇温する初期熱分解時点は比較的低温(250~300℃)であり、HClが発生し始めるので、優先的に中和剤で塩素を除去することが望ましい。その後、本格的な熱分解ステップが進行すると、比較的高温であり、芳香族塩素の除去反応が活性化される。これに、中和剤を使用して有機Clおよび無機ClなどをHClで先に除去した後、続いて銅化合物で芳香族塩素などを除去するのが効果的である。
【0063】
前記銅化合物は、金属銅(Cu)、酸化銅(CuO)、水酸化銅(Cu(OH))および炭酸銅(CuCO)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができ、具体的には、金属銅(Cu)および/または酸化銅(CuO)を含むことができる。
【0064】
前記銅化合物は、前記a)ステップの生成物の総重量に対して0.1~20重量%、0.5~10重量%または1~5重量%で混合してもよい。また、前記銅化合物は、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)に対する前記銅化合物の銅元素(Cu)のモル比(NCu/NCl)1~10、好ましくは、0.7~5、より好ましくは、0.5~3で混合される。
【0065】
一方、前記廃プラスチック中の総塩素元素(Cl)のモル数は、前処理および熱分解前の廃プラスチック固体原料物質の塩素元素の総モル数を意味することができる。
【0066】
前記b)塩素除去ステップにおいて、前記廃プラスチックの塩素含有量100重量%(A)に対する前記b)ステップ生成物の塩素含有量比(A/A)は、10%以下、5%以下、または0.5~3%であることができる。
【0067】
本開示の一態様によれば、前記a)ステップは200~320℃の温度で進行することができ、前記b)ステップは400~550℃の温度で進行することができる。それぞれの前記温度範囲でa)およびb)ステップを進行する場合、廃プラスチック内の塩素を効果的に除去することができる。
【0068】
本開示の一態様によれば、前記熱分解ステップにおいて、a)廃プラスチックと中和剤を反応させるステップと、b)前記a)ステップの生成物と銅化合物を反応させるステップと、が進行してもよい。
【0069】
本開示において、前記前処理ステップは、廃プラスチックをスクリュー反応器に投入して粉砕する粉砕ステップをさらに含んでもよい。前記廃プラスチックの粉砕は、当該技術分野で公知の粉砕ステップを適用することができ、例えば、廃プラスチックを前処理反応器に投入し、約300℃まで加熱してペレット状の炭化水素フロー前駆体を製造することができるが、本開示がこれに限定されるものではない。
【0070】
本開示の一態様によれば、前記粉砕ステップは、常温で行われてもよい。
【0071】
一例として、前記粉砕ステップは、前記廃プラスチックと中和剤を混合して前処理反応器に投入してもよい。廃プラスチックと前記中和剤としてカルシウム酸化物等を混合して常温で粉砕すると、機械化学反応が起こり、炭化水素とCaOHClを生成することができ、これにより、廃プラスチック原料中の塩素をCaOHClとして安定的に固定する効果がある。
【0072】
続いて、前記前処理ステップは、前記粉砕された廃プラスチックを前処理反応器に投入して加熱し、固体廃プラスチック原料物質を物理化学的に処理して塩素を除去し、炭化水素フロー前駆体(熱分解原料物質)を製造してもよい。前記炭化水素フロー前駆体は、廃プラスチック溶融物を意味するものであり、前記廃プラスチック溶融物は、粉砕されたまたは未粉砕された固体廃プラスチックの全部または一部が液体廃プラスチックに転換されたものを意味することができる。
【0073】
一例として、前記前処理ステップは、前記粉砕または未粉砕された廃プラスチックと中和剤をそれぞれ前処理反応器に投入して加熱してもよい。また、前記前処理ステップは、前記粉砕または未粉砕された廃プラスチックと中和剤を前処理反応器に投入して第1前処理(加熱)を進行し、続いて銅化合物を前処理反応器に投入して第2前処理(加熱)を進行することができる。
【0074】
前記加熱は、200~320℃の温度および常圧条件で行われてもよい。具体的には、前記加熱は250~320℃または280~300℃の温度で行われてもよい。一般的に廃プラスチックの前処理温度は少なくとも250℃であるが、前記の脱塩素後の炭化水素では、より低い温度である200℃でも容易に前処理を行い、水素やメタンガスを発生させることができる。
【0075】
前記前処理反応器は、押出機(Extruder)、高温高圧反応器(Autoclave reactor)、灰分式反応器(batch reactor)等であることができ、一例としてオーガー反応器(auger reactor)であってもよいが、本開示がこれに限定されるものではない。
【0076】
前記熱分解ステップは、気相、液相(オイル+ワックス+水)、そして固相物質の三つの物質相に分類される熱分解原料物質を熱分解反応器に投入することであり、具体的には前記前処理されていないまたは前処理された廃プラスチックを熱分解反応器に投入して加熱するステップである。
【0077】
一例として、前記熱分解ステップは、前処理された廃プラスチックと銅化合物を混合して熱分解反応器に投入し、加熱することである。また、前記熱分解ステップは、廃プラスチックと中和剤を混合して熱分解反応器に投入して加熱する第1熱分解を進行し、その後、熱分解反応器に銅化合物を投入して加熱する第2熱分解を進行することで、少なくとも2回の熱分解を連続的にまたは不連続的に進行してもよい。
【0078】
前記加熱は、非酸化性雰囲気下で320~900℃、好ましくは、350~700℃、より好ましくは、400~550℃の温度で行われる。また、前記加熱は常圧で行われてもよい。前記非酸化雰囲気は、廃プラスチックが酸化(燃焼)しない雰囲気であり、例えば、酸素濃度が1体積%以下に調整された雰囲気、窒素、水蒸気、二酸化炭素およびアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気であってもよい。
【0079】
加熱温度が400℃以上であれば、塩素含有プラスチックの融着を防ぐことができ、逆に加熱温度が550℃以下であれば、廃プラスチック内の塩素がCaCl、CuClなどの形で熱分解残渣(Char)に残留することができる。
【0080】
前記熱分解は、高温高圧反応器(Autoclave reactor)、灰分式反応器(batch stirred reactor)、流動層反応器(Fluidised-bed reactor)および固定層反応器(Packed-bed reactor)などで進行することができ、具体的には攪拌と昇温制御が可能な全ての反応器に適用することができ、本開示による一態様によれば、灰分式反応器(Batch reactor)で進行してもよい。
【0081】
本開示の一態様によれば、前記熱分解反応器は、少なくとも2つのバッチ反応器を含んでもよい。
【0082】
本開示の一態様によれば、前記熱分解ステップは、前記少なくとも2つのバッチ反応器をスイッチ運転することによって行われてもよい。これにより、前記熱分解ステップは、高温でもステップの連続性を確保することができる。
【0083】
本開示の一態様による廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法において、前記熱分解ステップまたは前記軽質化ステップは、熱分解ガス相と熱分解液相をガスとして回収する熱分解ガス回収ステップと、熱分解固相(固形分)を微粒物と造粒物に分離する分離ステップとからなる群から選択される少なくとも1つのステップと、をさらに含んでもよい。
【0084】
前記ガス回収ステップでは、前記熱分解ステップまたは前記軽質化ステップで生成された気相のうち、メタン、エタン、プロパンなどの低沸点炭化水素化合物を含む熱分解ガスを回収する。前記熱分解ガスは、一般的には水素、一酸化炭素、低分子量の炭化水素化合物などの可燃性物質を含むことができる。炭化水素化合物の例としては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、ブタン、ブテンなどを挙げることができる。これらの熱分解ガスは可燃性物質を含むため、燃料として使用することができる。
【0085】
前記分離ステップでは、前記熱分解ステップまたは前記軽質化ステップで生成された固相中の固形分、例えば、炭化物と中和剤および/または銅化合物を微粒物と造粒物に分離することができる。具体的には、塩素含有プラスチックの平均粒子径より小さく、また中和剤および銅化合物の平均粒子径より大きいふるいを用いて分級することにより、熱分解反応で生成された固形分を微粒物と集合体に分離することができる。前記分離ステップでは、固形分を塩素含有中和剤および銅化合物を比較的多く含む微粒物と、炭化物を比較的多く含む造粒物に分離する場合が望ましい。前記微粒物と炭化物は、必要に応じて再処理することができ、熱分解ステップで再使用、燃料として使用または廃棄することができ、本開示がこれに限定されるものではない。
【0086】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターは、ビーズ(Bead(s))および中和剤からなる群から選択される少なくとも1種が充填されたものであってもよい。
【0087】
本開示の他の一態様によると、前記高温フィルターは、ビーズ(Bead(s))で充填されたものであってもよい。前記高温フィルターがビーズで充填される場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱交換効果が最大化され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。
【0088】
本開示の一態様によれば、前記ビーズは、ケイ砂(SiO)および酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。具体的には、前記ビーズがケイ砂(SiO)を含む場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱交換効果が最大化され、長時間の高温運転にも摩耗することなく安定したプロセス運転が可能である。
【0089】
本開示の一態様によれば、前記ビーズはガラスビーズであってもよいが、これに限定されない。
【0090】
本開示の一態様によれば、前記ビーズの直径は、0.1mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、2.5mm以上、3mm以上、10mm以下、8mm以下、6mm以下、4mm以下、3.5mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下または前記数値の間の値とすることができ、具体的には、1mm~5mm、2mm~4mm、2.5mm~3.5mmとしてもよいが、これに限定されるものではない。本開示の軽質化ステップで前記高温フィルターに前記粒子径を有するビーズを充填することにより、熱分解ガスの滞留時間(GHSV)を調節して油分の軽質化を達成することができるだけでなく、高温フィルターの差圧発生を抑制してプロセス運転効率を改善することができる。
【0091】
本開示の一態様によれば、前記軽質化ステップでは、前記熱分解ガスを前記中和剤が充填された高温フィルター(Hot filter)に投入して熱分解油を製造してもよい。
【0092】
前記軽質化ステップは、無酸素雰囲気下で400~550℃の温度および常圧~0.5barの圧力で進行するものであり、前記無酸素雰囲気は、不活性ガス雰囲気または酸素のない閉鎖系雰囲気であってもよい。前記軽質化ステップの温度範囲で、熱分解ガスの軽質化がよく進み、ワックスによる閉塞現象および差圧発生を改善することができる。
【0093】
一方、前記軽質化ステップは、GHSV(gas volumetric flow rate)0.3~1.2/hrまたは0.5~0.8/hrであってもよい。これにより、別途後処理ステップを進行することなく、廃プラスチック熱分解物の軽質化および不純物(Clなど)を低減することができ、熱分解ガスの滞留時間(GHSV)を調節して、本開示で意図する軽質炭化水素の割合が高い熱分解油と軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を製造することができる。
【0094】
前記高温フィルターに充填された中和剤は、400~900μmの粒子径を有してもよく、または500~800μmの粒子径を有してもよい。本開示の軽質化ステップの運転条件では、高温フィルターに前記粒子径を有する中和剤を充填することにより、熱分解ガスの滞留時間(GHSV)を調節して油分の軽質化を達成することができるだけでなく、高温フィルターの差圧発生を抑制してプロセス運転効率を改善することができる。
【0095】
一方、前記粒子の大きさはD50を意味するものであり、前記D50はレーザー散乱法による粒度分布測定で、小さな粒径から累積体積が50%になるときの粒径を意味する。ここでD50は、製造された炭素質材料についてKS A ISO13320-1規格に従って試料を採取し、Malvern社のMastersizer3000を利用して粒度分布を測定することができる。具体的には、エタノールを溶媒として、必要に応じて超音波分散機を使用して分散させた後、体積密度を測定してもよい。
【0096】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターは、前記ビーズおよび前記中和剤が充填されたものであってもよい。
【0097】
当該技術分野では、高温フィルターは、一般に、熱分解物中の熱分解ガス(Pyrolysis gas)と残渣(Char)を分離するのに役立つが、本開示では、軽質化と同時に不純物(Cl)を除去するために、ビーズと中和剤からなる群から選択される少なくとも1種が充填された高温フィルターを適用し、これに上述したように高温フィルターの温度などの運転条件と中和剤の粒子サイズを特定の範囲に調整した。
【0098】
前記軽質化ステップは、下記関係式1および関係式2を満足することができる。
【0099】
[関係式1]
50<(A-A)/A×100(%)<100
[関係式2]
-80<(B-B)/B×100(%)<-50
【0100】
前記関係式1において、Aは、前記熱分解ガスのナフサ(沸点~150℃)および灯油(沸点150~265℃)の総量(重量%)であり、前記Aは、前記熱分解油のナフサ(bp~150℃)および灯油(bp150~265℃)の総量(重量%)である、前記関係式2において、Bは前記熱分解ガスの塩素の含有量(ppm)であり、前記Bは前記熱分解油の塩素の含有量(ppm)である。
【0101】
前記関係式1および2において、具体的には、60<(A-A)/A×100(%)<90、65<(A-A)/A×100(%)<85または70<(A-A)/A×100(%)<80であってもよく、-75<(B-B)/B×100(%)<-55、-70<(B-B)/B)×100(%)<-55または-65<(B-B)/B×100(%)<-55であってもよい。
【0102】
前記関係式1および2は、本開示のビーズおよび中和剤からなる群から選択される少なくとも1つが充填された高温フィルターを使用したことによる廃プラスチック熱分解物の軽質化および重質化の程度を数値で示したものである。本開示では、高温フィルターに投入される熱分解ガスの油分組成と塩素の含有量および前記塩素を含む油/無機物質を調節することにより、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することに技術的特徴がある。
【0103】
前記軽質化ステップで製造された熱分解油は、総重量に対してナフサ(bp~150℃)30~50重量%、灯油(bp150~265℃)30~50重量%、LGO(Light gas oil、bp265~380℃)10~30重量%およびUCO-2/AR(bp380℃~)0~10重量%を含んでもよく、具体的にはナフサ(bp~150℃)35~50重量%、灯油(bp150~265℃)35~50重量%、LGO(Light gas oil、bp265~380℃)10~30重量%およびUCO-2/AR(bp380℃~)0~8重量%またはナフサ(bp~150℃)35~45重量%、灯油(bp150~265℃)35~45重量%、LGO(Light gas oil、bp265~380℃)10~20重量%およびUCO-2/AR(bp380℃~)0~6重量%を含むことができる。また、前記熱分解ガスは、重質油分(LGOおよびUCO-2/ARの合計)に対する軽質油分(ナフサおよび灯油の合計)の重量比が2.5~5、2.5~4または3~3.8であってもよい。
【0104】
前記軽質化ステップで製造された熱分解油は、総重量に対して、総塩素100ppm未満、80ppm以下、60ppm以下、5~50ppmまたは10~50ppmであってもよく、有機塩素90ppm未満、70ppm以下、50ppm以下、5~50ppmまたは5~40ppmであってもよい。
【0105】
本開示の一態様によれば、前記熱分解ステップと前記軽質化ステップは、下記関係式3を満たすことができる。
【0106】
[関係式3]
0.7<T/T<1.3
【0107】
前記関係式3でTおよびTは、それぞれ熱分解ステップおよび軽質化ステップが進行する温度である。
【0108】
前記T/T値が0.7以下を満足するように熱分解ステップおよび軽質化ステップを進行する場合、相対的に熱分解ステップの温度が高くなったり、または軽質化ステップの温度が低くなることがある。この場合、高温フィルターで凝縮されて熱分解反応器に循環される割合が高くなり、熱分解油の最終沸点(Final boiling point)が過度に低くなる可能性がある。一方、前記T/T値が1.3以上を満足するように前記ステップを進める場合、ガス相での損失率が過度に高くなり、熱分解油の収率が低くなる可能性がある。
【0109】
具体的には、前記T/Tは、0.7~1.2、0.8~1.2、0.8~1.1、0.9~1.1または一例として1であってもよい。これにより、上述の効果をさらに向上させることができる。
【0110】
本開示の一態様によれば、本開示の廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法は、蒸留ステップを含んでもよい。
【0111】
本開示の一態様において、前記熱分解油は、石油系炭化水素と混合されて混合油として蒸留されてもよい。
【0112】
前記石油系炭化水素は、自然発生的に存在する炭化水素の混合物または前記混合物から分離された化合物を総称するもので、具体的には、原油および原油に由来する炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0113】
本開示の一態様によれば、前記蒸留は、常圧蒸留ユニット(Crude Distillation Unit、CDU)および減圧蒸留ユニット(Vacuum Distillation Unit、VDU)からなる群から選択される少なくとも一つのユニット(工程)で行われてもよい。
【0114】
本開示の一態様によれば、前記蒸留ステップで、前記沸点150℃以下の範囲の場合、ナフサ、沸点150~265℃の範囲の場合、灯油、沸点265~340℃の範囲の場合、LGO(Light gas oil)および沸点340℃以上の範囲の場合、VGO(Vacuum gas oil)で精製炭化水素を得てもよい。
【0115】
本開示による一態様において、前記熱分解油は、前記混合油の総重量に対して60重量%以下、50重量%以下または40重量%以下含まれてもよいが、50重量%以下まれることが好ましい。
【0116】
また、本開示は、廃プラスチックから精製炭化水素の製造システムを提供する。前記廃プラスチックからの精製炭化水素の製造方法において説明した内容と重複する内容は省略する。
【0117】
本開示は、廃プラスチックを前処理する前処理装置と、前記前処理装置で前処理された廃プラスチックを投入して熱分解ガスを製造する熱分解反応器と、前記熱分解ガスを投入して熱分解油を製造する高温フィルター(Hot filter)と、前記高温フィルターで凝縮された液体が前記熱分解反応器に再投入されるように前記高温フィルターと前記熱分解反応器を接続する接続配管と、前記熱分解油を蒸留して精製炭化水素を得る蒸留装置と、を含む、廃プラスチックから精製炭化水素の製造システムを提供する。
【0118】
本開示の製造システムは、多量の不純物を含む廃プラスチックから、軽質炭化水素の割合が高い高付加価値の熱分解油を製造することができ、そこから軽質炭化水素の割合が高い精製炭化水素を製造することができる。また、本開示の製造システムは、廃プラスチックから得られる熱分解油の収率を向上させることができる。
【0119】
本開示の一態様によれば、前記高温フィルターは、ビーズ(Bead(s))で充填されたものであってもよい。前記高温フィルターがビーズで充填される場合、高温フィルター内の不活性(Inert)効果および熱伝達効果が最大化され、軽質炭化水素の割合が高い熱分解油を製造することができる。また、前記熱分解油の収率を向上させることができる。
【0120】
本開示の一態様によれば、前記ビーズは、ケイ砂(SiO)および酸化アルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0121】
本開示の一態様によれば、前記製造システムは、前記高温フィルターの外側に少なくとも2つのヒーターを備えてもよい。また、前記製造システムは、前記高温フィルターの外部に少なくとも3つのヒーターを備えてもよい。前記高温フィルターの外部に少なくとも2つのヒーターを備える場合、高温フィルターの温度勾配の形成が容易であり、高温フィルターの運転状況に応じて上段、中段、上段の温度を柔軟に調節することができ、柔軟なプロセス運転が可能である。
【0122】
以下では、具体的な実験例を参照して、本開示の実施例についてさらに説明する。実験例に含まれる実施例および比較例は、本開示を例示するものであって、添付された特許請求の範囲を限定するものではなく、本開示のカテゴリーおよび技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0123】
本明細書で「熱分解油収率」とは、熱分解ステップの生成物のうち、油分、水系副産物、熱分解残渣(Char)および副産物ガスの重量合計に対する油分の重量比を意味する。
【0124】
[実施例1]
供給原料として使用される産業用廃プラスチックは、PEを78.8重量%、PPを11.6重量%、PVCを3.1重量%含む。
【0125】
1020gの産業用廃プラスチックの供給原料を、供給原料注入部に投入し、スクリュー混合した。粉砕された廃プラスチックおよびCaOは、それぞれ200g/hrおよび10g/hrでオーガー反応器に投入した後、スクリュー速度10rpm、窒素流量3cc/min、300℃、滞留時間1hrの条件で前処理を行った。
【0126】
前処理された廃プラスチックをロータリーキルンバッチ熱分解反応器に投入し、ロータリーキルン回転速度4rpm、430℃の条件で熱分解を行い、熱分解ガスを製造した。
【0127】
製造された熱分解ガスを、ガラスビーズが充填されていない1.3Lの高温フィルター(Hot filter)に投入して軽質化した後、回収部から熱分解油を得た。前記高温フィルターで凝縮した液体は前記熱分解反応器に再投入した。
【0128】
前記熱分解油を常圧蒸留ユニット(Crude Distillation Unit、CDU)に投入して蒸留し、沸点150℃以下の範囲の場合はナフサ、沸点150~265℃範囲の場合は灯油、沸点265~340℃範囲の場合はLGO(Light gas oil)および沸点340℃以上の範囲の場合はVGO(Vacuum gas oil)として精製炭化水素を得た。前記熱分解油の収率を表1に、前記精製炭化水素の重量比を表2に示した。
【0129】
[実施例2]
直径3mmのガラスビーズを、高温フィルター内部容積比88vol%で1.3Lの高温フィルターに充填し、前記高温フィルターの上段温度、中段温度および下段温度を430℃に維持した以外は実施例1と同様に実施した。
【0130】
[実施例3]
直径3mmのガラスビーズを、高温フィルター内部容積比88vol%で1.3Lの高温フィルターに充填し、前記高温フィルターの上段温度を430℃、中段温度および下段温度を500℃に維持した以外は実施例1と同様に実施した。
【0131】
[実施例4]
直径3mmのガラスビーズを高温フィルター内部容積比88vol%で1.3Lの高温フィルターに充填し、前記高温フィルターの上段温度を430℃、中段温度を450℃および下段温度を500℃に維持した以外は実施例1と同様に実施した。
【0132】
[実施例5]
前記熱分解油と原油を5:95の重量比で混合した混合油を、常圧蒸留ユニット(Crude Distillation Unit、CDU)に投入した以外は実施例1と同様に実施した。
【0133】
[比較例1]
前記高温フィルターで凝縮した液体を前記熱分解反応器に再投入しない以外は実施例1と同様に実施した。
【0134】
[測定方法]
廃プラスチックフィード組成は、NIR分析器のうちドイツRTT社のFlake analyzerを利用して分析した。
【0135】
熱分解油収率測定に関連する熱分解物組成確認のためにGC-Simdis分析(HT750)を実施した。
【0136】
不純物Cl、S、N、Oの分析のためにICP、TNS、EA-O、XRF分析を行った。総Cl含有量はASTM D5808に従って測定し、N含有量はASTM D4629に従って測定し、S含有量はASTM D5453に従って測定した。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
高温フィルターがビーズで充填されず、高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入されない比較例1は、熱分解油の収率およびナフサおよび灯油を含む軽質油分の割合が最も低いことを確認した。
【0140】
高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入される実施例1は、比較例1と比較して、熱分解油の収率が高く、また、ナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合も高いことを確認した。
【0141】
高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入され、高温フィルターがビーズで充填された実施例2は、実施例1よりも熱分解油収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合が高いことを確認した。
【0142】
高温フィルターで凝縮した液体が熱分解反応器に再投入され、高温フィルターがビーズで充填され、高温フィルターで温度勾配が形成された実施例3および4は、実施例1および2と比較して、熱分解油収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合が高いことを示した。
【0143】
特に、高温フィルターの上段温度を430℃、中段温度を450℃および下段温度を500℃に維持した実施例4は、熱分解油収率およびナフサおよび灯油を含む軽質炭化水素の割合が最も高いことを確認した。
【0144】
前記で説明した内容は、本開示の原理を適用した例示に過ぎず、本開示の範囲を逸脱しない範囲で他の構成をさらに含むことができる。
図1
図2