(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155757
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】クロノグラフ機構、時計ムーブメント及び時計
(51)【国際特許分類】
G04F 7/08 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G04F7/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024058776
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】23168658.5
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ジョリ、 リリアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クロノグラフカウンターディスプレイを一定位置に保持する保持デバイスを備える、クロノグラフ機構を提供する。
【解決手段】クロノグラフ機構10であって、第1のクロノグラフカウンターを形成し、秒カウンターディスプレイ214を備える秒カウンター210と、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224を備える第2のクロノグラフカウンター220とを含み、クロノグラフ機構10が、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224を一定位置に保持する位置保持デバイス240を含み、位置保持デバイス240が、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224が角度基準位置にある場合、かつ、クロノグラフ機構10が停止している場合にのみ、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224が一定位置に保持されることを保証するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロノグラフトレイン(20)を有する時計ムーブメント(1)のためのクロノグラフ機構(10)であって、
- 第1のクロノグラフカウンターを形成する秒カウンター(210)であって、秒カウンターディスプレイ(214)と、秒カウンターホイール(212)と、前記秒カウンターホイール(212)の一回転ごとにステップ状にカウンター間ホイール(23)を駆動するように構成される駆動フィンガー(215)とを担持する秒カウンター心棒(211)を含む、秒カウンター(210)と、
- 第2のクロノグラフカウンター心棒(221)を有する第2のクロノグラフカウンター(220)であって、前記第2のクロノグラフカウンター心棒(221)は第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)と、前記カウンター間ホイール(23)によって始動する第2のクロノグラフカウンターホイール(222)とを担持する、第2のクロノグラフカウンター(220)と
を含み、
前記クロノグラフ機構(10)が、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)を一定位置に保持する位置保持デバイス(240)を含み、前記位置保持デバイスは、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)が角度基準位置にある場合、かつ、前記クロノグラフ機構(10)が停止している場合にのみ、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)が一定位置に保持されることを保証するように構成されることを特徴とする、クロノグラフ機構(10)。
【請求項2】
前記位置保持デバイス(240)が、
- 前記第2のクロノグラフカウンター(221)の心棒と一体に回転する位置決めカム(226,446)と、
- 前記位置決めカム(226,426)と協働するように構成されるジャンパー(242,442)であって、前記第2のクロノグラフカウンター(224)が前記角度基準位置にある場合、かつ、前記クロノグラフ機構(10)が停止している場合に、前記位置決めカム(226,446)が一定位置に保持されることを保証するように構成されるジャンパー(242,442)と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項3】
前記位置決めカム(226,446)が前記第2のクロノグラフカウンターホイール(222)に重ねられることを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項4】
前記位置決めカム(226)が凸状レリーフ(229)を有し、前記凸状レリーフ(229)が、前記位置決めカム(226)の前記凸状レリーフ(229)を受容及び収容するように構成される前記凹状ジャンパー(242)の相補レリーフ(242.3)と協働するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項5】
前記位置決めカム(446)が凹状レリーフ(444)を有し、前記凹状レリーフ(444)が、前記位置決めカム(446)の前記凹状レリーフ(444)に収容されるように構成される前記ジャンパー(442)の凸状レリーフである相補レリーフ(447)と協働するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項6】
前記位置決めカム(226)がさらに、前記第2のクロノグラフカウンター(220)のためのリセットカムを形成することを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項7】
前記位置決めカム(226)がハートの形状であり、前記ジャンパー(242)が、前記クロノグラフが停止しているときに前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)を前記角度基準位置に保持するように前記ハートの先端と協働することを特徴とする、請求項6に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項8】
前記ジャンパー(242)が、凸状レリーフ(229)を形成する前記位置決めカム(226)のハートの先端と協働するように構成される凹状レリーフ(242.3)を有することを特徴とする、請求項7に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項9】
前記ジャンパー(242)は、前記位置決めカム(226)のハートの先端に形成される凹状レリーフと協働するように構成される凸状レリーフを有することを特徴とする、請求項7に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項10】
前記ジャンパーが一体部品であり、その一部分が、前記位置決めカム(226,446)を弾性的に動かすことが可能であって前記位置決めカム(226,446)と協働することを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項11】
前記ジャンパー(242,442)が、回転軸(243,443)まわりに回転可能なレバー(242.1,442.1)を含み、前記レバー(242.1,442.1)が、前記レバー(242.1,442.1)を位置決めするように動作する弾性部材(242.2,442.2)と協働することによって前記位置決めカム(226,446)に当接することを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項12】
前記レバー(242.1,442.1)の回転軸(243,443)の位置が、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)の角度基準位置を微調整するように偏心(241)によって調整され得る、請求項11に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項13】
前記秒カウンター(210)と前記第2のクロノグラフカウンター(220)との間に配列される歯車トレイン(23,24,25)を含み、前記歯車トレインが前記カウンター間ホイール(23)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項14】
前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)の前記角度基準位置がリセット位置であることを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項15】
前記第2のクロノグラフカウンター(220)がクロノグラフ時カウンターであることを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項16】
請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)を含む時計ムーブメント(1)。
【請求項17】
請求項16に記載の時計ムーブメント(1)を含む時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントのためのクロノグラフカウンターのディスプレイを一定位置に、特に基準位置に、保持するデバイスを含むクロノグラフ機構に関する。
【0002】
本発明はさらに、かかるクロノグラフ機構を含む時計ムーブメントに関する。
【0003】
本発明はさらに、かかる時計ムーブメントを含む時計に関する。
【背景技術】
【0004】
クロノグラフ機構は、複数のクロノグラフカウンター、例えば分カウンター及び秒カウンターによって時間をオンデマンドで測定することを可能にする。
【0005】
クロノグラフカウンターディスプレイの遊びは、時計製造における周知の問題である。この遊びは、カウンターがゼロにリセットされた後に目立ってきて問題となる。
【0006】
この遊びは、ディスプレイをぐらつかせ、特に軽微な衝撃の事象においてユーザにとって可視となる。この遊びはまた、ディスプレイを、特に基準位置に対して文字盤目盛りの前に動かし得る。
【0007】
ディスプレイにおけるこの遊びは、特に、稼働トレインに係合する秒カウンターと、秒カウンターからの動いているクロノグラフセットの様々なカウンターとの間の歯車トレインに蓄積される様々な歯車に起因する。
【0008】
クロノグラフディスプレイにおけるこの望ましくない遊びを回避するべく、分カウンターホイールセットの一ホイールに作用するジャンパーを使用することが知られており、これによって、分カウンターホイールセットの当該一ホイールによって想定される各角度位置の安定性が維持される。かかるジャンパーの作用は永続的であるから、クロノグラフ機構が停止しているとき及び始動しているときの双方の各位置において分カウンターディスプレイの安定性が維持される。
【0009】
従来、ジャンパーは、分カウンターホイールセットの当該一ホイールの2つの連続する歯の先端間にもたれるように構成された2つの傾斜面で終わるくちばし部を有する。分カウンターホイールセットの当該一ホイールが歯車トレインを介して秒カウンターホイールセットにより駆動されると、分カウンターホイールセットの当該一ホイールの歯がジャンパーを持ち上げ、そのジャンパーはその後、他の2つの歯の間に落ちる。
【0010】
容易に理解できることだが、分カウンターを一定位置に保持するこのような保持デバイスによれば、分カウンターが駆動される各ステップにより相対的に高い消費電力が生じる。
【0011】
この消費電力は、時計ムーブメントの速度を変化させたり、規制部材の振幅を変化させたりする。ムーブメントの速度のばらつき、又は規制部材の等時性のばらつきは、少なくとも部分的に、クロノグラフ機構の始動中の消費電力が同じままではないという事実に起因する。分カウンターが駆動されるときに秒カウンターの完全回転ごとに電力が消費されるからである。
【0012】
その結果、クロノグラフ機構、特にクロノグラフカウンターディスプレイを一定位置に保持する保持デバイス、を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0013】
この文脈において、本発明は、この必要性を満たす時計ムーブメントのためのクロノグラフ機構を与える。
【0014】
この文脈において、本発明は、クロノグラフトレインを有する時計ムーブメントのためのクロノグラフ機構に関する。このクロノグラフトレインは、第1のクロノグラフカウンターを形成する秒カウンターと、第2のクロノグラフカウンターとを含み、この秒カウンターは、秒カウンターディスプレイと、秒カウンターホイールと、当該秒カウンターホイールの一回転ごとの間にステップ状にカウンター間ホイールを駆動する駆動フィンガーとを担持する秒カウンター心棒を含み、第2のクロノグラフカウンターは、第2のクロノグラフカウンターディスプレイと、前記カウンター間ホイールによって始動される第2のクロノグラフカウンターホイールとを担持する第2のクロノグラフカウンター心棒を含む。
【0015】
クロノグラフ機構はさらに、第2のクロノグラフカウンターディスプレイを一定位置に保持する位置保持デバイスを含み、この位置保持デバイスは、第2のクロノグラフカウンターディスプレイが事前に決定された角度基準位置にある場合、かつ、クロノグラフ機構が停止している場合にのみ、第2のクロノグラフカウンターディスプレイが一定位置に確実に保持されるように構成される。
【0016】
本発明に係るこのような位置保持デバイスは、クロノグラフトレインがもはや稼働トレインと係合していないとき、かつ、クロノグラフトレインの様々なホイールセットがもはや互いに係合し合っていないとき、リセット後のクロノグラフカウンターのディスプレイ上でユーザに可視となり得るぐらつき及び角度遊びを回避することを可能にする。
【0017】
前段で述べた特徴に加え、本発明に係る時計ムーブメントは、以下の中からの、個別基準で考慮され又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って考慮される一以上の補完的な特徴を有し得る。
- 位置保持デバイスは、
・第2のクロノグラフカウンター心棒と一体に回転する位置決めカムと、
・位置決めカムと協働するように構成されるジャンパーであって、クロノグラフ機構が停止している場合に位置決めカムが第2のクロノグラフカウンターディスプレイの前記角度基準位置に保持されることを保証するように構成されるジャンパーと、
を含み、
- 前記位置決めカムは、前記第2のクロノグラフカウンターホイールに重ねられ、
- 位置決めカムは凸状レリーフを有し、凸状レリーフは、位置決めカムの凸状レリーフを受容及び収容するように構成される凹状ジャンパーの相補レリーフと協働するように構成され、
- 位置決めカムは凹状レリーフを有し、凹状レリーフは、位置決めカムの凹状レリーフに収容されるように構成されるジャンパーの、凸状レリーフである相補レリーフと協働するように構成され、
- 位置決めカムはさらに、第2のクロノグラフカウンターのためのリセットカムを形成し、
- 位置決めカムはハートの形状であり、ジャンパーは、クロノグラフが停止しているときに第2のクロノグラフカウンターディスプレイを前記角度基準位置に保持するようにハートの先端と協働し、
- ジャンパーは、凸状レリーフを形成する位置決めカムのハートの先端と協働するように構成される凹状レリーフを有し、
- ジャンパーは、位置決めカムのハートの先端に形成される凹状レリーフと協働するように構成される凸状レリーフを有し、
- ジャンパーは、弾性的に可動に位置決めカムと協働する一部分を含む一体部品であり、
- ジャンパーは、回転軸まわりに回転することができるレバーを含み、レバーは、レバーが位置決めカムにもたれるようにレバーを位置決めするべく動作する弾性部材と協働し、
- 第2のクロノグラフカウンターディスプレイの角度基準位置を微調整するようにレバーの回転軸の位置を偏心によって調整することができ、
- クロノグラフ機構は、秒カウンターと第2のクロノグラフカウンターとの間に配置される歯車トレインを含み、前記歯車トレインは前記カウンター間ホイールを含み、
- 第2のクロノグラフカウンターディスプレイの前記角度基準位置は、基準位置又はリセット位置であり、
- 第2のクロノグラフカウンターは、クロノグラフ時カウンター又はクロノグラフ分カウンターである。
【0018】
本発明の他側面は、本発明に係るクロノグラフ機構を含む時計ムーブメントに関する。
【0019】
本発明はさらに、本発明に係る時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0020】
時計は、例えば、本発明に係る時計ムーブメントを受容及び収容するように構成される腕時計ケースを含む腕時計である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の図面を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことで、本発明の目的、利点及び特徴が良好に理解される。
【0022】
【
図1】クロノグラフカウンターを一定位置に、特に基準位置に、保持する位置保持デバイスを含む本発明に係るクロノグラフ機構の第1実施例の概略斜視図である。
【
図4】
図1に示される本発明に係る時計ムーブメントのクロノグラフ機構の機能ブロック図であり、時計ムーブメントの様々な要素とクロノグラフ機構の様々な要素との相互作用を示す。
【
図5】クロノグラフカウンターを一定位置に、特に基準位置に、保持する位置保持デバイスを含む本発明に係るクロノグラフ機構の第2実施例の斜視図である。
【0023】
すべての図において、共通の要素には、特に特定されない限り、同じ参照番号が付与される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、クロノグラフカウンターを一定位置に、特に基準位置に、保持する位置保持デバイス240を含む本発明に係るクロノグラフ機構10の第1実施例の概略斜視図である。
【0025】
図2は、
図1のクロノグラフ機構10の上面図である。
【0026】
図3は、
図1のクロノグラフ機構10の下面図である。
【0027】
図4は、本発明に係る時計ムーブメント1のクロノグラフ機構10の機能ブロック図であり、以下に説明する時計ムーブメント1の様々な要素とクロノグラフ機構10の様々な要素との相互作用を示す。
【0028】
従来、クロノグラフ機構10は、結合デバイス115を介して、時計ムーブメント1の、時刻目盛り専用の稼働トレイン110に結合されてオンデマンドで駆動されるように構成される。従来、稼働トレイン110は、規制部材120によって規制される。
【0029】
従来、稼働トレイン110は、時刻表示の針、特に、時目盛りと協働する時針、分目盛りと協働する分針、及び秒目盛りと協働する秒針、を駆動する。
【0030】
クロノグラフ機構10はクロノグラフトレイン20を含む。クロノグラフトレイン20は第1のクロノグラフカウンター210を含む。第1のクロノグラフカウンター210は、稼働トレインによって駆動されるように構成されるとともに、結合デバイス115を介して時計ムーブメント1の規制部材120に時間的に合うように規制されるように構成される。従来、この第1のクロノグラカウンター210は、クロノグラフ秒カウンターである。
【0031】
クロノグラフ秒カウンター210は、クロノグラフホイールとも称される秒ホイール212を含む。秒ホイール212は秒心棒211に取り付けられる。秒心棒211は、クロノグラフ秒ディスプレイ214、例えばクロノグラフ秒針、を担持してこれに剛性接続される。
【0032】
クロノグラフ秒カウンター210は、秒心棒211と一体に回転する駆動フィンガー215を含む。駆動フィンガー215は、クロノグラフ秒カウンター210が完全に一回転するたびにステップ状にカウンター間ホイール23を駆動するように構成される。
【0033】
図示される実施例において、駆動フィンガー215は可撓性の駆動フィンガーであるが、依然として本発明の範囲内に留まりながらの他の構成も可能である。
【0034】
クロノグラフトレイン20は、少なくとも一つの第2のクロノグラフカウンター220を含む。第2のクロノグラフカウンター220は、第2のクロノグラフカウンター心棒221に取り付けられた第2のクロノグラフカウンターホイール222を含む。第2のクロノグラフカウンター心棒221は、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224、例えば針、を担持してこれに剛性接続される。
【0035】
第2のクロノグラフカウンター220は、クロノグラフ分カウンター又はクロノグラフ時カウンターとしてよい。
【0036】
本発明に係るクロノグラフ機構10を一定位置に保持する位置保持デバイス240は、それが関連付けられるクロノグラフカウンターを一定位置に保持することを可能にし、この実施例においては、クロノグラフ機構10が停止しているときに、第2のクロノグラフカウンター220を、カウンターディスプレイの事前に決定された角度位置にのみ、好ましくはディスプレイの基準位置にのみ、例えばディスプレイのリセット位置にのみ保持することを可能にする。
【0037】
好ましくは、第2のクロノグラフカウンター220は時カウンターであり、本発明に係るクロノグラフ機構10は、時カウンターを一定位置に、特に基準位置に、保持する位置保持デバイス240を含む。
【0038】
詳しくは、本発明に係る位置保持デバイス240は、時カウンターに関連付けられる場合に特に有用である。というのは、顕著には、クロノグラフ秒カウンター210とクロノグラフ時カウンター(この場合は第2のクロノグラフ時カウンター220)との間に設けられた歯車トレイン250に存在する様々な歯車クリアランスゆえに、時ディスプレイのぐらつきがリセット後にユーザにとって可視となるからである。
【0039】
歯車トレイン250は、秒カウンター210が完全に回転するたびにステップ状に駆動されるカウンター間ホイール23を含む。
【0040】
図示された実施例において、歯車トレイン250はさらに、カウンター間ホイール23と第2のクロノグラフカウンター220との間に配置される2つの中間ホイール24、25を含む。これは詳しくは、第2のクロノグラフカウンターホイール222において所望の歯車比を得ることを目的とする。
【0041】
例えば、第2のクロノグラフカウンター220が12時間で一回の完全回転をする時カウンターである場合、歯車トレイン250は、30個の歯を含んで毎分一ステップで駆動されるカウンター間ホイール23によって1/24の減速比を得るように成形される。
【0042】
カウンター間ホイール23は、2つの傾斜面で終端するくちばし部を有するジャンパー30と協働する。これは2つの傾斜面は、各ステップにおいてカウンター間ホイール23の角度位置を保持するべく、カウンター間ホイール23の2つの連続する歯の先端と協働するように構成される。
【0043】
好ましくは、ジャンパー30は、カウンター間ホイール23に対するジャンパー30の相対位置を調整する調整手段を含む。これにより、ジャンパー30は、秒カウンター210の駆動フィンガー215に対してカウンター間ホイール23を正確に位置決めするべく、カウンター間ホイール23の角度位置を修正することができる。
【0044】
有利には、位置保持デバイス240は、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224が安定して基準位置に保持されることを、詳しくは、第2のクロノグラフカウンターホイール222と、歯車トレイン250の様々なホイールセットとがもはや稼働トレイン210と駆動接触することがない場合のクロノグラフカウンターのリセット後に、保証するように構成された基準位置保持デバイスである。
【0045】
すなわち、位置保持デバイス240は、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224が基準位置に存在する場合であって、クロノグラフトレイン20が時計ムーブメント1の稼働トレイン110によって駆動されない場合に、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224が安定して当該基準位置に保持されることを保証する。
【0046】
位置保持デバイス240は、
- 第2のクロノグラフカウンター221の心棒と一体に回転する位置決めカム226と、
- 位置決めカム226と協働するように構成されるジャンパー242と
を含む。
【0047】
位置決めカム226は、第2のクロノグラフカウンターホイール222とは異なる部品である。
【0048】
位置決めカム226が第2のクロノグラフカウンターホイール222に重ねられることにより、ジャンパー242は、位置決めカム226のみと相互作用し、第2のクロノグラフカウンターホイール222とは相互作用しない。
【0049】
その結果、本発明に係る位置保持デバイス240が、第2のクロノグラフカウンターホイール222の歯と相互作用することによって第2のクロノグラフカウンターの各ステップ又は角度位置を割り出すように構成されるインデクスデバイスとは異なることが、完全に明らかとなる。
【0050】
位置決めカム226はレリーフ229を有し、このレリーフ229は、ジャンパー242の相補レリーフ242.2と協働するように構成される。すなわち、位置決めカム226は、一つのみの可能なインデクス位置を有する。
【0051】
図1から
図3に示される第1実施例において、位置決めカム226はさらに、第2のクロノグラフカウンター220をリセットするリセットカムを形成する。このような実施形態により、ハート形の2つの異なる領域を使用して、同じ部品の中において2つの機能を組み合わせることができる。これにより、クロノグラフ機構10の全体的な寸法が最小化される。
【0052】
例えば、位置決めカム226はハートの形状である。この実施例において、2つの葉部227、228を接合するハートの先端が、位置決めカム226のレリーフ229を形成する。
【0053】
すなわち、ハートの先端が、ジャンパー242と協働するように構成される凸状レリーフ229を形成し、詳しくは、ジャンパー242における凹部の形態の相補レリーフ242.3と協働するように構成される凸状レリーフ229を形成する。相補レリーフ242.3は、位置決めカム226のハートの先端を受容及び収容するように構成されるので、クロノグラフトレイン20又は第2のクロノグラフカウンター220に駆動力が及ぼされない場合に位置決めカム226をこの特定の角度位置に保持する。
【0054】
一代替実施形態において、凹部は、ジャンパー242に形成される相補凸状レリーフと協働するようにハート形の先端の端に形成してよい。
【0055】
ジャンパー242は一体部品としてよく、その一部分が弾性的に動くことが可能であり、位置決めカム226と協働するように構成される。
【0056】
図1から
図3に示される実施例によれば、ジャンパー242は、回転軸243まわりに回転可能なレバー242.1を含む。レバー242.1は弾性部材242.2と協働する。弾性部材242.2は、レバー242.1を位置決めするように動作し、レバー242.1が位置決めカム226に当接するようになる。
【0057】
弾性部材242.2は、レバー242.1が、位置決めカム226の滑らかな部品に低い摩擦力を生成するが、位置決めカム226のレリーフとジャンパー242のレリーフとが協働して第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224を基準位置に保持する場合には高い摩擦力を生成するように形成される。すなわち、位置決めカム226のレリーフ229が、ジャンパー242のレリーフ242.3から係合解除するには、第2のクロノグラフカウンター220に所定トルクを加える必要がある。例えば、クロノグラフトレイン10を駆動するクロノグラフ機構10を始動させることにより、第2のクロノグラフカウンター220に、位置決めカム226及びジャンパー242それぞれのレリーフ229、242.3を係合解除するのに十分なトルクが発生する。
【0058】
一般には、ジャンパー242が、例えば時計ムーブメント10への小さな衝撃の間に、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224に存在し得る不均衡を克服するのに十分な、位置決めカム226のための位置決めトルクを生じさせるように構成される。
【0059】
クロノグラフトレイン20への特定のアクション(リセット又は始動)なしに、位置決めカム226のレリーフ229とジャンパー242の相補レリーフ242.3との係合により、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224のぐらつきが防止され、クロノグラフ機構10が始動されない限り、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224が一定位置に、好ましくは基準位置に保持されることが保証される。
【0060】
すなわち、本発明に係る位置保持デバイス240は、第2のクロノグラフカウンター220が一完全回転を完了するときの消費電力のピークが位置決めカム226のレリーフ229の通路においてのみとなって消費電力の低減を許容するソリューションを与える。位置決めカム226の滑らかな部品とジャンパー242との間に生じる摩擦力が、レリーフ229の通路の外側では無視できるほど小さい。
【0061】
レバー242の、より正確にはレバー242.1の、回転軸243の位置は、偏心241によって調整され得る。偏心241により、レバー242.1の位置と相補レリーフ242.3の位置とが、文字盤の目盛りに対する第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224の角度保持位置が究極的に修正されるように精密に調整され得る。すなわち、偏心241によって、時計ムーブメント1の様々なコンポーネントの異なる製造公差に適合することと、第2のクロノグラフカウンターディスプレイ224の角度保持位置を微調整することとが可能となる。
【0062】
図5は、本発明に係るクロノグラフ機構10の第2実施例を示す。この第2実施例は、以下に記載される特徴を除いて第1実施例と同じである。
【0063】
この第2実施例において、位置決めカム446は、第2のクロノグラフカウンター220のリセットカムから解離される。
【0064】
位置決めカム446は、凹状レリーフ447を有する円形カムトラックを有する滑らかなホイールの形状を有する。凹状レリーフ447は、ジャンパー442の凸状レリーフ444と協働するように構成される。言うまでもないことだが、逆の構成も可能である。
【0065】
第1実施例と同様に、ジャンパー442は、回転軸443まわりに回転可能なレバー442.1によって形成されてよく、弾性部材442.2と協働する。弾性部材442.2は、レバー442.1が位置決めカム426に当接するようにレバー442.1を位置決めするべく動作する。
【0066】
本発明はさらに、かかる時計ムーブメントを含む時計、例えば腕時計、に関する。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロノグラフトレイン(20)を有する時計ムーブメント(1)のためのクロノグラフ機構(10)であって、
第1のクロノグラフカウンターを形成する秒カウンター(210)であって、秒カウンターディスプレイ(214)と、秒カウンターホイール(212)と、前記秒カウンターホイール(212)の一回転ごとにステップ状にカウンター間ホイール(23)を駆動するように構成される駆動フィンガー(215)とを担持する秒カウンター心棒(211)を含む、秒カウンター(210)と、
第2のクロノグラフカウンター心棒(221)を有する第2のクロノグラフカウンター(220)であって、前記第2のクロノグラフカウンター心棒(221)は第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)と、前記カウンター間ホイール(23)によって始動する第2のクロノグラフカウンターホイール(222)とを担持する、第2のクロノグラフカウンター(220)と
を含み、
前記クロノグラフ機構(10)が、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)を一定位置に保持する位置保持デバイス(240)を含み、前記位置保持デバイスは、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)が角度基準位置にある場合、かつ、前記クロノグラフ機構(10)が停止している場合にのみ、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)が一定位置に保持されることを保証するように構成されることを特徴とする、クロノグラフ機構(10)。
【請求項2】
前記位置保持デバイス(240)が、
前記第2のクロノグラフカウンター(221)の心棒と一体に回転する位置決めカム(226,446)と、
前記位置決めカム(226,426)と協働するように構成されるジャンパー(242,442)であって、前記第2のクロノグラフカウンター(224)が前記角度基準位置にある場合、かつ、前記クロノグラフ機構(10)が停止している場合に、前記位置決めカム(226,446)が一定位置に保持されることを保証するように構成されるジャンパー(242,442)と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項3】
前記位置決めカム(226,446)が前記第2のクロノグラフカウンターホイール(222)に重ねられることを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項4】
前記位置決めカム(226)が凸状レリーフ(229)を有し、前記凸状レリーフ(229)が、前記位置決めカム(226)の前記凸状レリーフ(229)を受容及び収容するように構成される前記ジャンパー(242)の相補レリーフ(242.3)と協働するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項5】
前記位置決めカム(446)が凹状レリーフ(444)を有し、前記凹状レリーフ(444)が、前記位置決めカム(446)の前記凹状レリーフ(444)に収容されるように構成される前記ジャンパー(442)の凸状レリーフである相補レリーフ(447)と協働するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項6】
前記位置決めカム(226)がさらに、前記第2のクロノグラフカウンター(220)のためのリセットカムを形成することを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項7】
前記位置決めカム(226)がハートの形状であり、前記ジャンパー(242)が、前記クロノグラフ機構(10)が停止しているときに前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)を前記角度基準位置に保持するように前記ハートの先端と協働することを特徴とする、請求項6に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項8】
前記ジャンパー(242)が、凸状レリーフ(229)を形成する前記位置決めカム(226)のハートの先端と協働するように構成される凹状レリーフ(242.3)を有することを特徴とする、請求項7に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項9】
前記ジャンパー(242)は、前記位置決めカム(226)のハートの先端に形成される凹状レリーフと協働するように構成される凸状レリーフを有することを特徴とする、請求項7に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項10】
前記ジャンパーが一体部品であり、その一部分が、前記位置決めカム(226,446)を弾性的に動かすことが可能であって前記位置決めカム(226,446)と協働することを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項11】
前記ジャンパー(242,442)が、回転軸(243,443)まわりに回転可能なレバー(242.1,442.1)を含み、前記レバー(242.1,442.1)が、前記レバー(242.1,442.1)を位置決めするように動作する弾性部材(242.2,442.2)と協働することによって前記位置決めカム(226,446)に当接することを特徴とする、請求項2に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項12】
前記レバー(242.1,442.1)の回転軸(243,443)の位置が、前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)の角度基準位置を微調整するように偏心(241)によって調整され得る、請求項11に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項13】
前記秒カウンター(210)と前記第2のクロノグラフカウンター(220)との間に配列される歯車トレイン(23,24,25)を含み、前記歯車トレインが前記カウンター間ホイール(23)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項14】
前記第2のクロノグラフカウンターディスプレイ(224)の前記角度基準位置がリセット位置であることを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項15】
前記第2のクロノグラフカウンター(220)がクロノグラフ時カウンターであることを特徴とする、請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)。
【請求項16】
請求項1に記載のクロノグラフ機構(10)を含む時計ムーブメント(1)。
【請求項17】
請求項16に記載の時計ムーブメント(1)を含む時計。
【外国語明細書】