(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155759
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】組成物、物品並びにその形成方法
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20241024BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20241024BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C22C19/05 C
F02C7/00 C
F01D25/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060592
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】18/303,184
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツイ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シェイファー、ジョン コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】アーネット、マイケル ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】レイロック、マシュー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トリソン、ブライアン リー
(57)【要約】
【解決手段】組成物、物品及びそれらの形成方法
【解決方法】組成物、並びに該組成物を含む物品(200)を形成するための物品(200)及び方法(10)が開示される。本組成物は、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.8重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、
9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、
4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、
0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、
3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、
1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、
1.80重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、
0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、
0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、
0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、
残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物
を含む組成物。
【請求項2】
当該組成物が、実質的にη相を欠くミクロ組織を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
γ′相の体積分率が60%を超える、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物が、4.25重量%~5.3重量%のアルミニウム(Al)を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
当該組成物が、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
当該組成物が、3.75重量%~4.9重量%のタングステン(W)を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
当該組成物が、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
当該組成物が、0.01重量%~0.03重量%のジルコニウム(Zr)を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
当該組成物が、13.9重量%~14.1重量%のクロム(Cr)を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
当該組成物が、
13.9重量%~14.1重量%のクロム(Cr)、
9.25重量%~9.75重量%のコバルト(Co)、
4.25重量%~5.30重量%のアルミニウム(Al)、
1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)、
3.75重量%~4.9重量%のタングステン(W)、
1.5重量%~3.0重量%のモリブデン(Mo)、
2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)、
0.09重量%~0.11重量%の炭素(C)、
0.01重量%~0.03重量%のジルコニウム(Zr)、及び
0.011重量%~0.013重量%のホウ素(B)
を含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
チタン(Ti)の重量%に対するアルミニウム(Al)の重量%が、Al=-0.5×Ti+5.5±0.05である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の組成物を用いて物品(200)を形成するための方法(10)。
【請求項13】
前記物品(200)がガスタービン部品(200)を含む、請求項13に記載の方法(10)。
【請求項14】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の組成物を含む、ガスタービン部品(200)。
【請求項15】
当該ガスタービン部品が、高温ガス経路タービン部品(200)を含む、請求項14に記載のガスタービン部品(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニッケル基超合金組成物、物品並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンのようなターボ機械は、発電及び航空機エンジンなどの分野で利用することができる。ガスタービンシステム自体は、圧縮機セクション、燃焼器セクション及び1以上のタービンセクションを含む。
【0003】
タービンセクションは、燃焼器セクションの下流に位置していて、ロータシャフト及び1以上のタービン段を含んでおり、各タービン段はシャフトに装着又は支承されるタービンディスク(ロータ)と、ディスクに装着されディスクから半径方向に延在するタービン動翼を有している。燃焼器セクション及びタービンセクション内の部品は、高温燃焼ガスに起因する高温で妥当な機械的特性を達成するため超合金材料で形成し得る。所与の部品に適した合金組成及びミクロ組織は、ガスタービンの運転中に部品が付される特定の温度、応力その他の条件によって左右されることがある。
【0004】
ニッケル基超合金は、高い作動温度に耐える能力があるので、他の高温用途に加えて、ガスタービン用途で用いられている。しかし、具体的組成にもある程度依存するが、ニッケル基超合金は、依然として、鋳造性、耐酸化性、強度、ひずみ及び/又は溶接性に関して制約を有していることがある。そこで、代替ニッケル基超合金が当技術分野で求められている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様では、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.80重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む組成物を提供する。
【0006】
本明細書では、添付の図面を参照して、当業者に対して、最良の形態を含めて、本発明を実施できるように十分に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の1以上の実施形態に係る例示的な方法である。
【
図2】本開示の1以上の実施形態に係るガスタービンエンジンの断面図である。
【
図3】本開示の1以上の実施形態に係るガスタービンエンジン用物品としての例示的な物品である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、その1以上の実施例を添付の図面に示す。発明の詳細な説明では、図面に記載された特徴を参照するために数字又は文字符号を用いる。図面及び発明の詳細な説明において、同様又は類似の符号は本開示の同様又は類似の部材を示す。
【0009】
「例示的」という用語は、本明細書では、「例、事例又は説明として役立つ」という意味で用いられる。本明細書で「例示的」と記載された実施態様は、必ずしも他の実施態様よりも好ましい又は有利であると解すべきではない。さらに、別途特定されていない限り、本明細書に記載されたすべての実施形態は例示的なものであると解される。
【0010】
例えば「A、B及びCの少なくとも1」という文脈での「少なくとも1」という用語は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、或いはAとBとCの任意の組合せをいう。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。少なくとも幾つかの事例では、近似表現は、その値を測定する機器の精度或いは部品及び/又はシステムの構築又は製造のための方法又は機械の精度に対応する。例えば、近似表現は、1%、2%、4%、5%、10%、15%又は20%の許容誤差内にあることをいう場合がある。これらの近似許容誤差は、1つの数値、数値範囲を規定する上下限の一方又は両方、及び/又は上下限間の範囲の許容誤差に対して適用されることがある。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係等から別途明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。例えば、本明細書に開示された範囲はすべて上下限を含んでおり、上下限は互いに独立して組合せることができる。
【0013】
本開示では、元素の周期表でよくみられる元素記号を用いて、化学元素について説明する。例えば、水素はその慣用元素記号Hで表され、ヘリウムはその慣用元素記号Heで表される。
【0014】
本明細書で用いる「実質的に欠く」という用語は、その成分を全く含んでいないか或いはその成分を痕跡量しか含んでいないことを意味する。「痕跡量」とは、かろうじて検出できるレベルの化学成分の量であって、その組成物の機能的又は美的特性に対して何の利益ももたらさないものをいう。「実質的に欠く」という用語は、完全に欠いていることも包含する。
【0015】
本明細書で用いる「実質的に等しい」という用語は、かろうじて検出できるレベルの微量な量的変動であって、その組成物の機能的又は美的特性に対して何の利益ももたらさないものをいう。「実質的に等しい」という用語は、完全に等しいことも包含する。
【0016】
本明細書で用いる「実質的に」という用語は、記載された群の約99%以上をいう。例えば、本明細書において、「実質的にすべて」とは、それぞれの群の約99%以上が該当する特性を有していることを示し、「実質的に全く~ない」又は「実質的にゼロ」とは、それぞれの群の約99%以上が該当する特性を有していないことを示す。
【0017】
「ターボマシン」又は「ターボ機械」という用語は、1以上の圧縮機と、発熱セクション(例えば燃焼セクション)と、全体としてトルク出力を生じる1以上のタービンとを含む機械をいう。
【0018】
「ガスタービンエンジン」という用語は、その動力源の全部又は一部としてターボ機械を有するエンジンをいう。ガスタービンエンジンの例としては、ターボファンエンジン、ターボプロップエンジン、ターボジェットエンジン、ターボシャフトエンジンなど、並びにこれらのエンジンの1以上のハイブリッド電気バージョンが挙げられる。
【0019】
「燃焼セクション」という用語は、ターボ機械の熱添加システムをいう。例えば、燃焼セクションという用語は、デフラグレーション燃焼アセンブリ、回転デトネーション燃焼アセンブリ、パルスデトネーション燃焼アセンブリその他の適切な熱添加アセンブリの1以上を含むセクションをいう。特定の実施形態では、燃焼セクションは、アニュラー型燃焼器、カン型燃焼器、カニュラー型燃焼器、停留渦型燃焼器(TVC:trapped vortex combustor)その他の適切な燃焼システム、或いはこれらの組合せを含む。
【0020】
「上流」及び「下流」という用語は、流体経路における流体の流れに関する相対的な方向をいう。例えば、「上流」は流体が流れてくる方向をいい、「下流」は流体が流れていく方向をいう。
【0021】
本明細書で用いる「軸方向」とは、ガスタービンエンジンの中心線と実質的に平行に延びる方向及び配向をいう。また、「半径方向」という用語は、ガスタービンエンジンの中心線に対して実質的に垂直に延びる方向及び配向をいう。さらに、本明細書で用いる「周方向」という用語は、ガスタービンエンジンの中心線の周りで円弧状に延びる方向及び配向をいう。
【0022】
本開示は、一般に、ニッケル基超合金を含む物品及びニッケル基超合金の製造方法を含めて、ニッケル基超合金に関する。GTD-111、GTD-141、GTD-141+のようなある種のニッケル基超合金は、運転中のガスタービンに存在するような高温に耐えることができる合金を含む。しかし、具体的組成にもある程度依存するが、ニッケル基超合金は、依然として、鋳造性、耐酸化性、強度、ひずみ及び/又は溶接性に関して制約を有していることがある。
【0023】
本明細書に開示する通り、組成物(例えば物品用の組成物)は、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.80重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む。
【0024】
本明細書には範囲が開示されているが、得られる材料であつらえた機械的特性を達成するため、従前のニッケル基超合金のものとは異なる範囲を有する構成成分(例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)及びニオブ(Nb))を含めて、1種以上の構成成分の重量%を様々な範囲にさらに調整してもよい。
【0025】
例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、4.25重量%~5.30重量%のアルミニウム(Al)、4.4重量%~5重量%のアルミニウム(Al)又は4.6重量%~4.8重量%のアルミニウム(Al)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)、1.2重量%~1.8重量%のチタン(Ti)又は1.4重量%~2.6重量%のチタン(Ti)を含有し得る。
【0026】
幾つかの実施形態では、アルミニウム(Al)の重量%とチタン(Ti)の重量%は、他方の成分の量によって制約されることがある。例えば、チタン(Ti)の重量%に対するアルミニウム(Al)の重量%は、以下の式で定義することができる。
Al=-0.5×Ti+5.5±0.05
なお、この式の範囲内であっても、アルミニウム(Al)は依然として4.0重量%~5.5重量%の範囲内に保つべきであり、チタンは依然として0.5重量%~3.0重量%の範囲内に保つべきである。
【0027】
さらに、幾つかの実施形態では、組成物は、3.75重量%~4.9重量%のタングステン(W)、4.0重量%~4.8重量%のタングステン(W)又は4.72重量%~4.78重量%のタングステン(W)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)又は2.5重量%~3.8重量%のニオブ(Nb)を含有し得る。
【0028】
組成物中の他の成分も、1以上のもっと狭い範囲内で変更してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、13.9重量%~14.1重量%のクロム(Cr)又は13.95重量%~14.05重量%のクロム(Cr)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、9.25重量%~9.75重量%のコバルト(Co)又は9.4重量%~9.6重量%のコバルト(Co)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、1.5重量%~3.0重量%のモリブデン(Mo)又は1.52重量%~2.0重量%のモリブデン(Mo)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、0.09重量%~0.11重量%の炭素(C)又は0.095重量%~0.10重量%の炭素(C)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、0.001重量%~0.03重量%のジルコニウム(Zr)又は0.005重量%~0.020重量%のジルコニウム(Zr)を含有し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、0.011重量%~0.013重量%のホウ素(B)又は0.0115重量%~0.0125重量%のホウ素(B)を含有し得る。さらに、組成物全体で、タンタル(Ta)のような他の成分を含んでいなくてもよい。
【0029】
例えば、組成物全体は、各種元素成分について1以上の狭い範囲内で変更し得る。例えば、幾つかの実施形態では、組成物全体は、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.8重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む。
【0030】
得られた組成物は、η相を実質的に欠くミクロ組織を含むことができる。幾つかの実施形態では、組成物は、η相を欠くミクロ組織を含むことができる。幾つかの実施形態では、組成物は、低減した量のTCP相を有することができる。幾つかの実施形態では、組成物は、η相を欠く又は実質的に欠くとともに低減した量のTCP相を有することができる。
【0031】
得られた組成物は、(例えば他のニッケル基超合金と比較して)体積分率で比較的高いγ′相を有することができる。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、60%を超えるγ′相の体積分率を有することができる。幾つかの実施形態では、組成物は、62%を超えるγ′相の体積分率を有することができる。幾つかの実施形態では、組成物は、64%以下のγ′相の体積分率を有することができる。
【0032】
さらに、GTD-141(米国特許第6416596号に開示された組成物など)及びGTD-141+(米国特許第9404388号に開示された組成物など)のような他のニッケル超基合金と比較すると、本開示で得られる組成物は、低い液相線温度、低い固相線温度、増加した体積%のγ相、向上した強度、向上した応力及び/又は低サイクル疲労性能、向上した耐酸化性及び/又は向上した溶接性を有する合金を生成し得る。
【0033】
図1を参照すると、本明細書に開示される組成物を有する物品の形成方法10が示してある。方法10は、一般に、ステップ12で組成物を製造することを含んでいてもよく、組成物は、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.8重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む。
【0034】
上述の通り、組成物は、個々の元素に関して重量%の1以上の変動を含んでいてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、4.25重量%~5.3重量%のアルミニウム(Al)を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、3.75重量%~4.9重量%のタングステン(W)を含む。幾つかの実施形態では、組成物は、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)を含む。さらに幾つかの実施形態では、ステップ12で製造された組成物は、13.9重量%~14.1重量%のクロム(Cr)、9.25重量%~9.75重量%のコバルト(Co)、4.25重量%~5.30重量%のアルミニウム(Al)、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)、4.0重量%~4.9重量%のタングステン(W)、1.5重量%~3.0重量%のモリブデン(Mo)、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)、0.09重量%~0.11重量%の炭素(C)、0.01重量%~0.03重量%のジルコニウム(Zr)、及び0.011重量%~0.013重量%のホウ素(B)を含有し得る。
【0035】
なお、本明細書において、製造とは、ニッケル基超合金のあらゆる適切な製造プロセスをいう。例えば、製造は、鋳造プロセスを含んでいてもよい。鋳造プロセスは、限定されるものではないが、インゴット鋳造、インベストメント鋳造又はニアネットシェイプ鋳造を含むことができる。幾つかの実施形態では、製造は、方向性凝固を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、製造は、積層造形(例えば金属粉末を用いる3次元造形)、溶接、コーティング、機械加工などを含んでいてもよい。さらに、製造は、ニッケル基超合金の鋳造及び/又は熱処理に適した時間、温度及び圧力を伴うことがある。
【0036】
続いて
図1を参照すると、方法10は、ステップ14での組成物の熱処理、及びステップ16での任意の又は追加の後処理ステップをさらに含んでいてもよい。ステップ14における熱処理は、1以上の保持時間での1以上の昇温を伴う補足的又は逐次的な熱処理を含むことができる。さらに、製造すべき物品にある程度依存するが、方法10は、限定されるものではないが、研磨、ピーニング、クラッディング、コーティングなどの任意の補足的な後処理ステップを含んでいてもよい。
【0037】
図2及び
図3を参照すると、例示的な物品として、ターボ機械90で使用するための、ガスタービン部品200、さらに具体的には動翼114が示してあり、ガスタービン部品200は、本明細書に開示した組成物の1種以上を含むことができる。
【0038】
例えば、燃焼タービン又はガスタービンシステム100の形態のターボ機械90が記載されている。ガスタービンシステム100は圧縮機102及び燃焼器104を含む。燃焼器104は燃焼領域105及び燃料ノズルアセンブリ106を含む。ガスタービンシステム100は、タービン108及び圧縮機/タービン共通シャフト110(ロータとも呼ばれる)を含む。一組の静翼又はノズル112は、一組の動翼114と共に、タービン108の各段を形成し、タービン108を通る流路の一部を画成する。
【0039】
ガスタービンシステム100の様々な高温ガス経路セクションは異なる作動条件に付されることがあり、それらのガスタービン部品200(例えば高温ガス経路タービン部品)を形成する材料が異なる特性を有していることが必要とされることがある。実際、同一セクション内の異なる部品で作動条件が異なり、異なる材料を必要とすることがある。
【0040】
例えば、エンジンのタービンセクション内の動翼114又は翼形部は、タービンホイールに取り付けられ、タービン108で放出される高温の排気燃焼ガス中を非常に高速で回転する。これらの動翼又は翼形部は、耐酸化性及び耐食性である必要があり、耐クリープ性/応力破断、強度及び延性のような機械的特性を維持しながら高温でミクロ組織を維持する必要がある。これらの動翼は複雑な形状を有しているので、コストを削減するため、鋳造、積層造形、鍛造のような適切な方法、或いは複雑な形状を達成するための加工時間及び機械加工時間を短縮する他の適切なプロセスなどによって形成されることがある。
【0041】
本開示では、ガスタービン部品200は、本明細書に開示される組成物の1種以上を含んでいてもよい。ガスタービン部品200は、高温ガス経路部品のようなガスタービンシステム100の任意の部品を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、ガスタービン部品200は、1以上の燃焼器部品、タービン動翼、シュラウド、ノズル、熱シールド及び静翼を備える。例えば、
図3に示すような幾つかの実施形態では、ガスタービン部品200は、動翼114を備えていてもよい。様々なガスタービン部品200について例示的な実施形態を紹介したが、これらは例示的なものであり、限定的なものではない。本明細書で開示される組成物は、その他あらゆるガスタービン部品200、例えばその作動環境下で高温に付される他の物品などにも使用し得る。
【0042】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【0043】
本発明のその他の態様は、以下の通りである。
[実施態様項1]
13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.8重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む組成物。
[実施態様項2]
当該組成物が、実質的にη相を欠くミクロ組織を有する、実施態様項1に記載の組成物。
[実施態様項3]
γ′相の体積分率が60%を超える、実施態様項1又は実施態様項2に記載の組成物。
[実施態様項4]
当該組成物が、4.25重量%~5.3重量%のアルミニウム(Al)を含む、実施態様項1乃至実施態様項3のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項5]
当該組成物が、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)を含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項6]
当該組成物が、3.75重量%~4.9重量%のタングステン(W)を含む、実施態様項1乃至実施態様項5のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項7]
当該組成物が、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)を含む、実施態様項1乃至実施態様項6のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項8]
13.9重量%~14.1重量%のクロム(Cr)、9.25重量%~9.75重量%のコバルト(Co)、4.25重量%~5.30重量%のアルミニウム(Al)、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)、4.6重量%~4.9重量%のタングステン(W)、1.5重量%~3.0重量%のモリブデン(Mo)、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)、0.09重量%~0.11重量%の炭素(C)、0.01重量%~0.03重量%のジルコニウム(Zr)、及び0.011重量%~0.013重量%のホウ素(B)を含む、実施態様項1乃至実施態様項7のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項9]
チタン(Ti)の重量%に対するアルミニウム(Al)の重量%が、Al=-0.5×Ti+5.5±0.05である、実施態様項1乃至実施態様項8のいずれか1項に記載の組成物。
[実施態様項10]
組成物を含む物品であって、前記組成物が、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.8重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む、物品。
[実施態様項11]
ガスタービン部品が、実質的にη相を欠くミクロ組織を有する、実施態様項10に記載の物品。
[実施態様項12]
チタン(Ti)の重量%に対するアルミニウム(Al)の重量%がAl=-0.5×Ti+5.5±0.05である、実施態様項10又は実施態様項11に記載の物品。
[実施態様項13]
物品を形成するための方法であって、13.7重量%~14.3重量%のクロム(Cr)、9.0重量%~9.9重量%のコバルト(Co)、4.0重量%~5.5重量%のアルミニウム(Al)、0.5重量%~3.0重量%のチタン(Ti)、3.5重量%~5.0重量%のタングステン(W)、1.4重量%~4.0重量%のモリブデン(Mo)、1.8重量%~4.2重量%のニオブ(Nb)、0.08重量%~0.12重量%の炭素(C)、0.005重量%~0.04重量%のジルコニウム(Zr)、0.010重量%~0.014重量%のホウ素(B)、残部のニッケル(Ni)及び不可避不純物を含む組成物を製造するステップと、前記組成物を熱処理するステップとを含む方法。
[実施態様項14]
前記組成物が、実質的にη相を欠くミクロ組織を有する、実施態様項13に記載の方法であって、。
[実施態様項15]
γ′相の体積分率が60%を超える、実施態様項13又は実施態様項14のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項16]
前記組成物が、4.25重量%~5.0重量%のアルミニウム(Al)を含む、実施態様項13乃至実施態様項15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項17]
前記組成物が、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)を含む、実施態様項13乃至実施態様項16のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項18]
前記組成物が、13.9重量%~14.1重量%のクロム(Cr)、9.25重量%~9.75重量%のコバルト(Co)、4.25重量%~5.30重量%のアルミニウム(Al)、1.0重量%~2.0重量%のチタン(Ti)、3.75重量%~4.9重量%のタングステン(W)、1.5重量%~3.0重量%のモリブデン(Mo)、2.0重量%~4.0重量%のニオブ(Nb)、0.09重量%~0.11重量%の炭素(C)、0.01重量%~0.03重量%のジルコニウム(Zr)、及び0.011重量%~0.013重量%のホウ素(B)を含む、実施態様項13乃至実施態様項17のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項19]
チタン(Ti)の重量%に対するアルミニウム(Al)の重量%が、Al=-0.5×Ti+5.5±0.05である、実施態様項13乃至実施態様項18のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項20]
組成物を製造するステップが鋳造を含む、実施態様項13乃至実施態様項19のいずれか1項に記載の方法。
【符号の説明】
【0044】
99 ターボ機械
102 圧縮機
102 燃焼器
108 タービン
114 動翼
200 タービン部品
【外国語明細書】