(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155761
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】薄層クロマトグラフィー抽出装置、併用システム及び抽出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/72 20060101AFI20241024BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20241024BHJP
G01N 30/95 20060101ALI20241024BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N30/72 E
G01N1/10 C
G01N1/10 F
G01N30/95 Z
G01N27/62 X
G01N27/62 F
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060956
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】202310427854.7
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン イーミン
(72)【発明者】
【氏名】スン ウェンジャン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041GA16
2G041GA19
2G041HA01
2G052AB11
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052ED03
2G052ED11
2G052GA27
2G052JA06
2G052JA07
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】より簡単な装置構造を用いて、サンプルを速やかに採取、調製及び分析することができ、抽出効率を向上させるとともにコストを低減させた薄層クロマトグラフィー抽出装置を提供する。
【解決手段】溶媒入口と溶媒出口を有するサンプラーと、溶媒入口に連通する溶媒注入手段と、溶媒出口に対して着脱可能なフィルタとを含み、溶媒出口には薄層クロマトグラフィープレートの吸着層から所定体積の吸着剤を切り取るためのシャープエッジを有し、切り取った吸着剤が溶媒入口と溶媒出口との間に保持される薄層クロマトグラフィー抽出装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄層クロマトグラフィー抽出装置であって、
溶媒入口と、溶媒出口とを有するサンプラーと、
前記溶媒入口に連通している溶媒注入手段と、
前記溶媒出口に着脱可能に設けられたフィルタとを含み、
前記溶媒出口は、薄層クロマトグラフィープレートの吸着層から所定体積の吸着剤を切り取るためのシャープエッジを有し、切り取った前記吸着剤は、前記溶媒入口と前記溶媒出口との間に保持される、ことを特徴とする薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項2】
前記フィルタは、チップ型フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項3】
前記フィルタは前記溶媒出口に接続され、内径0.05-0.5mmのシリンジチップであることを特徴とする請求項1に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項4】
前記薄層クロマトグラフィー抽出装置は質量分析装置のサンプリング装置として用いられ、前記溶媒出口は、前記質量分析装置のサンプリングポートに連通することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項5】
前記溶媒注入手段はシリンジであり、前記シリンジの出口は前記サンプラーの前記溶媒入口に取り外し可能に接続されることを特徴とする請求項1又は3に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項6】
前記溶媒注入手段が液体ポンプであることを特徴とする請求項1又は3に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項7】
前記シャープエッジは環状であるとともに内径は0.1-10mmであることを特徴とする請求項1に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項8】
前記サンプラーは、前記溶媒出口と前記溶媒入口との間に設けられた絞り口をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置。
【請求項9】
請求項1から3および7から8のいずれか一項に記載の薄層クロマトグラフィー抽出装置を含むことを特徴とする薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システム。
【請求項10】
薄層クロマトグラフィー抽出方法であって、
サンプラーのシャープエッジを薄層クロマトグラフィープレートの吸着層に押し付けてから持ち上げ、所定体積の吸着剤を切り取るサンプリングステップと、
サンプラーに溶媒を注入して吸着剤中の分析物を抽出する抽出ステップと、
抽出ステップで得られた、分析物が抽出された溶媒を濾過する濾過ステップと、を含むことを特徴とする薄層クロマトグラフィー抽出方法。
【請求項11】
前記濾過ステップにより濾過された溶媒を質量分析装置に移送して検出する検出ステップをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の薄層クロマトグラフィー抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液分析技術分野に関し、より具体的には、薄層クロマトグラフィー抽出装置、薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システム及び薄層クロマトグラフィー抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄層クロマトグラフィー(Thin layer chromatography、TLC)は、混合物を分離するためのクロマトグラフィー技術である。一般的には、薄層クロマトグラフィーを用いて混合物を分離してから、分離された薄層クロマトグラフィープレートに対してプレートスクレーパーで薄層部分を手動でかき取って、溶媒抽出、濾過精製操作を行い、分離された分析物を取得し、最後に分離された分析物を質量分析装置などの検出装置に移送してさらに検出することで、有機化合物の分離・検出を実現するが、操作が複雑である。
【0003】
特許文献1には、リアルタイムで物体表面の物質組成を抽出してオンラインで測定することができる表面抽出インタフェースシステムが開示されており、具体的には、該表面抽出インタフェースシステムは、シールアセンブリを介して吸着剤の表面に当接又は切り込まれることで、抽出対象領域と他の領域とを密封し、さらに溶媒入口から該領域に抽出溶媒を継続的に移送し、抽出された溶媒が再び近傍の同じ側にある溶媒出口から流出し、質量分析装置に入って検出を行うことにより、該領域の表面の分析物をリアルタイムで抽出、検出する。しかしながら、当該表面抽出インタフェースシステムの装置構造及び管路接続が複雑であり、且つ一つの領域に対する抽出時間が長い一方、溶媒が同じ側の吸着層の表層のみを通過して継続的に抽出される方式を採用すると、薄層クロマトグラフィープレートの基板物質(例えば、シリカゲル吸着剤)が崩壊しやすく、管路の目詰まり、又は内部濾過材料の頻繁な交換を引き起こす虞がある。
【0004】
したがって、従来の薄層クロマトグラフィー抽出の上記問題を解決するために、改良された技術案が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
従来技術の上記問題に鑑み、本発明の技術案は、より簡単な装置構造を用いて、サンプルを速やかに収集、調製及び分析することができる薄層クロマトグラフィー抽出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、溶媒入口と溶媒出口を有するサンプラーと、溶媒入口に連通する溶媒注入手段と、溶媒出口に対して着脱可能なフィルタとを含み、溶媒出口には薄層クロマトグラフィープレートの吸着層から所定体積の吸着剤を切り取るためのシャープエッジを有し、切り取った吸着剤が溶媒入口と溶媒出口との間に保持される薄層クロマトグラフィー抽出装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
当該技術案によれば、薄層クロマトグラフィー分離後に得られた吸着層に対して、使用者は、本発明により提供される薄層クロマトグラフィー抽出装置のサンプラーにより、さらに組成を検出する必要がある領域を押圧し、シャープエッジが圧力で薄層クロマトグラフィープレートの吸着層に切り込まれた後にサンプラーを持ち上げると、切断された所定体積の吸着剤を得ることができ、その後、溶媒注入手段によりサンプラーの溶媒入口に溶媒を注入し、溶媒がサンプラーの貫通キャビティにおいて吸着剤を通過するように吸着剤中の分析物を抽出し、抽出後の分析物付きの溶媒がサンプラーの溶媒出口から流出してフィルタを通過し、大顆粒の不純物(一般に薄層クロマトグラフィープレートの基板物質)が除去されれば、そのまま後続の検出装置に注入し検出に供することができる。該薄層クロマトグラフィー抽出装置の抽出効率が高く、構造が簡単で、操作が便利で、日常検出における薄層クロマトグラフィー分離後の吸着層の特定領域に対するサンプリング検査により適している。
【0009】
好ましい技術案として、フィルタはチップ型フィルタである。
【0010】
この技術案によれば、チップ型フィルタ(Syringe Filter)とは、シリンジの先端に類似し、広口径の濾過チャンバーと狭口径のシリンジ出口とを有する管状構造をいう。濾過構造(例えば、濾過膜、スクリーン、細孔など)が広口径のところに設置されることで、流体が広口径内に流入して濾過された後、狭口径を介して合流、流出する。特に、使い捨て可能なチップ型フィルタを採用することができ、その場合、濾材を交換する必要がなく、管路の目詰まりの可能性が低く、また、サンプル間の交差汚染リスクを低減することができる。
【0011】
好ましい技術案として、フィルタは溶媒出口に接続され、内径0.05-0.5mmのシリンジチップである。
【0012】
当該技術案によれば、シリンジチップとは、シリンジの先端に装着される細長い針管構造であり、大顆粒の基板物質が該0.05-0.5mmの内径のシリンジチップを通過することができず、抽出された溶媒が直接シリンジチップによって濾過されて同時に小流束になるように合流することができる。また、濾過チャンバーや濾過材、特に広口径のチャンバーを設置する必要がないため、溶媒が広口径のチャンバー内に大量に存在しサンプル希釈を引き起こすことを回避することができる。
【0013】
好ましい技術案として、薄層クロマトグラフィー抽出装置は質量分析装置のサンプリング装置として用いられ、溶媒出口は質量分析装置のサンプリングポートとの連通に用いられる。
【0014】
該技術案によれば、薄層クロマトグラフィーと質量分析を併用することで、複雑な混合物の物質組成をより分析・検出しやすくなり、薄層クロマトグラフィーは混合物の成分を分離することができ、分離後の異なる物質は薄層クロマトグラフィー抽出層であるクロマトグラフィープレートの吸着層の異なる領域に位置し、本発明の薄層クロマトグラフィー抽出装置のサンプラーにより押圧、切断し、所定領域の分析物付き吸着剤を得て、溶媒が該吸着剤を透過して抽出を完了した後、溶媒出口から流出し、濾過後、直接的に質量分析装置まで流入し物質成分の検出を行うことで、複雑な混合物の分離及び検出を容易に実現することができる。特に、薄層クロマトグラフィー抽出装置は直接分析イオン源を備える質量分析装置と併用してもよく、これにより、物質分析の効率をさらに向上させることができる。
【0015】
好ましい技術案として、溶媒注入手段はシリンジであり、シリンジの出口はサンプラーの溶媒入口に取り外し可能に接続される。
【0016】
当該技術案によれば、シリンジとは、シリンジチップが装着されていない、ピストンとシリンジ出口を有するシリンジ構造をいう。シリンジの先端の小口径出口の装着が容易で、シリンジの構造が簡単であり、大量生産に適している。また、溶媒注入手段、サンプラーおよびフィルタは、いずれも着脱可能な構造であるため、より多くの検出状況に適用可能である。
【0017】
好ましい技術案として、溶媒注入手段は液体ポンプである。
【0018】
この技術案によれば、液体ポンプが溶媒注入手段として、設定に応じて溶媒を自動的に押し込むことができ、人手による操作が不要であるとともに抽出溶媒の押し込み量を精度よく制御することができる。
【0019】
好ましい技術案として、シャープエッジは環状で、内径は0.1-10mmである。
【0020】
当該技術案によれば、内径が0.1-10mmである環状エッジでは、吸着層に対して押圧、切断後、切断された環状吸着剤の切断縁を環状エッジの内壁に締められ、そのままサンプラーの両側にそれぞれ溶媒注入手段とフィルタを取り付け、サンプラーに抽出溶媒を注入すれば抽出することができる。
【0021】
好ましい技術案として、サンプラーは、溶媒出口と溶媒入口との間に設けられた絞り口をさらに含む。
【0022】
この技術案によれば、絞り口によって、溶媒出口から溶媒入口への逆流が阻止され、溶媒入口から溶媒出口への流体の一方向の流れのみが許容される。さらに、シャープエッジを溶媒入口から離して設置することで、サンプラー中の不純物顆粒が溶媒入口から溶媒注入手段に逆流することを回避する。
【0023】
本発明の第2の態様は、前記技術案における薄層クロマトグラフィー抽出装置を含む薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システムを提供する。
【0024】
本発明の第3の態様は、
サンプラーのシャープエッジを薄層クロマトグラフィープレートの吸着層に押し付けられてから持ち上げ、所定体積の吸着剤を切り取るサンプリングステップと、
サンプラーに溶媒を注入して吸着剤中の分析物を抽出する抽出ステップと、
抽出ステップで得られた、分析物が抽出された溶媒を濾過する濾過ステップとを含む薄層クロマトグラフィー抽出方法を提供する。
【0025】
好ましい技術案として、薄層クロマトグラフィー抽出方法は、
濾過ステップで濾過された溶媒を質量分析装置に移送して検出する検出ステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出装置の構造模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における好ましいフィルタの薄層クロマトグラフィー抽出装置における構造模式図である、
【
図3】本発明の第1の実施形態におけるさらに別の好ましいフィルタの薄層クロマトグラフィー抽出装置における構造模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出装置の部分拡大図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システムの構造模式図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。当業者であれば、これらの実施形態は本発明の技術原理を説明するためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出装置の構造模式図であり、該薄層クロマトグラフィー抽出装置100は、サンプラー2、溶媒注入手段3及びフィルタ1を含む。
【0029】
ここで、サンプラー2は、貫通したキャビティ構造として形成され、該キャビティ構造の対面する側には、2つの貫通した開口を有し、一方が溶媒入口21であり、もう一方が溶媒出口22である。特に、サンプラー2の溶媒出口端のキャビティ内壁が、薄層クロマトグラフィープレートの吸着層から所定体積の吸着剤を切断して取り外すためのシャープエッジ221として形成され、ここでのシャープエッジ221とは、溶媒出口22の内壁自体が徐々に薄くなるように外向きに延在して形成された鋭利なエッジを指し、両内壁が内側へ包まれるように尖端構造に形成されている訳ではない。
【0030】
本実施形態において、溶媒出口22のシャープエッジ221の形状は限定されないが、使用者は、吸着剤サンプリングによる大きさ及び形状に応じて、該シャープエッジ221を任意の体積及び形状の切断構造としてもよい。好ましくは、シャープエッジ221は環状で、内径は0.1-10mmである。なお、シャープエッジ221を内径0.1-10mmの環状エッジとした場合、吸着層を押圧、切断した後、切断された環状吸着剤が切断を行うエッジにより環状エッジの内壁に締められ、後でそのままサンプラー2の両端にそれぞれ溶媒注入手段3及びフィルタ1を取り付けてサンプラー2に抽出溶媒を注入すれば抽出可能になる。
【0031】
溶媒注入手段3は、サンプラー2の溶媒入口端に設けられ、サンプラー2内に一定量の抽出溶媒を注入するために用いられるものであり、該溶媒注入手段3は、任意の液体取出/注入手段、例えば、ピストン往復ポンプ、液体ポンプ、ペリスタポンプ、シリンジなどであってもよい。一部の好ましい実施形態において、溶媒注入手段3はシリンジ(
図1に示されていない)であり、本実施形態において言及されたシリンジは、シリンジチップが装着されていない、ピストンとシリンジ出口を有するシリンジ構造であり、通常、シリンジの出口は、サンプラー2の溶媒入口21に取り外し可能に接続されやすくするために小口径の管路とする。その故、シリンジの構造が簡単で、大量生産に適している。また、溶媒注入手段3、サンプラー2及びフィルタ1は、いずれも着脱可能な構造であるため、携帯性がよくなり、より多くの検出状況に適用可能になる。他の好ましい実施形態において、溶媒注入手段3は液体ポンプであり、液体ポンプは溶媒注入手段3として、設定に応じて溶媒を自動的に押し込むことができ、手動操作が不要であるとともに抽出溶媒の押し込み量を精確に制御することができる。
【0032】
また、溶媒注入手段3は、溶媒貯蔵装置に直接連通してもよい。溶媒貯蔵装置から溶媒を抽出して直接サンプラー2に注入することにより、溶媒の使い切れ後の装填の手間を省き、決まった場所(例えば、実験室)での溶媒の利用がより便利になる。或いは、溶媒注入手段3は、1回又は複数回分の溶媒量を装填済みの携帯性のあるものであってもよく、それにより、より多くの移動検出状況にも適応することができる。
【0033】
フィルタ1は、サンプラー2の溶媒出口端に着脱可能に設置されてもよく、フィルタ1は、大顆粒の基板物質を濾過する濾過膜、細孔、メッシュ構造を有する任意な濾過装置であってもよく、例えば、一部の実施形態において、フィルタ1は、サンプラー2の溶媒出口22に直接取り付けられ、サンプラー2から流出した溶媒を濾過する、サンプラー2の溶媒出口22の形状に合わせた濾材であってもよい。他の実施形態において、フィルタ1は、別個に設置された濾過チャンバー構造であってもよく、サンプラー2の溶媒出口22から流出した溶媒は、フィルタ1の濾過チャンバーに入り、チャンバー内の濾過装置によって濾過された後、チャンバーの出口から流出する。好ましくは、フィルタ1の入口端はサンプラー2の溶媒出口22の口径と一致しており、他端は口径の小さいバスバーとして形成され、これにより、抽出後の溶媒を濾過したら合流させ、小流束として後続の検出装置に注入されやすくなる。
【0034】
図2は本発明の実施形態における好ましいフィルタの薄層クロマトグラフィー抽出装置における構造模式図である。
【0035】
図2に示すように、フィルタ1は、チップ型フィルタ11である。ここで、チップ型フィルタ11とは、シリンジの先端に類似する、広口径の濾過チャンバー111と狭口径のシリンジ出口112とを有する管状構造であり、濾過構造(例えば、濾過膜、スクリーン、細孔など)が濾過チャンバー111内に設置されることにより、広口径の濾過チャンバー111内で抽出後の溶媒の流速を低下させることができ、これにより、溶媒が濾過構造により濾過され、さらに狭口径バスを介して流出することが便利になる。特に、使い捨て可能なチップ型フィルタ11を採用することができ、その場合、濾材を交換する必要がなく、目詰まりの可能性が低く、また、サンプル間の交差汚染リスクを低減することができる。
【0036】
図3は本発明の実施形態における別の好ましいフィルタの薄層クロマトグラフィー抽出装置における構造模式図である。
【0037】
図3に示すように、フィルタ1は、溶媒出口22に接続され、内径0.05-0.5mmのシリンジチップ12である。シリンジチップ12はシリンジの先端に装着された細長い針管121構造であり、シリンジチップ12の一端はサンプラー2の溶媒出口22に嵌設され、他端は細長い針管121として形成され、ここでの内径は該細長い針管121の内径を指し、大顆粒の基板物質は該0.05-0.5mmの内径のシリンジチップ12を通過することができないため、抽出された溶媒は直接シリンジチップ12によって濾過されるとともに小流束になるように合流する。これにより、濾過チャンバー111及び濾過材を設置する必要がなく、濾過チャンバー111内での過剰な溶媒によるサンプルの希釈を回避することができる。
【0038】
本実施形態において、複雑な組成を有する混合物に対して、まず薄層クロマトグラフィーにより混合物中の複数成分を分離し、分離済みの薄層クロマトグラフィープレートの吸着層に対して、さらに該薄層クロマトグラフィー抽出装置100により抽出処理を行い、そして後続の検出装置に移送して物質検出を行うことができる。具体的には、分離済みの吸着層に対して、薄層クロマトグラフィー抽出装置100のサンプラー2により、さらに検出する必要がある領域を押圧、切断し、所定体積の吸着剤を取った後、フィルタ1をサンプラー2の溶媒出口端に取り付け、溶媒注入手段3によりサンプラー2の溶媒入口端に溶媒を注入し、溶媒が吸着剤を透過するように吸着剤を抽出し、抽出後の溶媒は、反対側の溶媒出口22から流出し、そしてフィルタ1に流入して濾過され、濾過された溶媒は、そのまま後続の検出装置に注入されて検出に供する。
【0039】
本実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出装置において、インライン抽出の代わりに、吸着剤は薄層クロマトグラフィープレートから切り取るような手段により、複雑な管路システムなしで抽出された溶媒をそのまま後続の検出装置に移送することができ、装置が簡単で操作の柔軟性が高く、日常の検出における薄層クロマトグラフィー分離後の吸着層の特定の領域に対するサンプリング検査により適している。また、溶媒が薄層クロマトグラフィープレートの吸着層を直接通過することで抽出を行うため、繰り返し抽出する必要がない。さらに、使い捨てのチップ型フィルタを採用することができるため、基板物質が割れることによる管路の目詰まりのリスクを低減することも可能である。
【0040】
図4は本発明の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出装置の部分拡大図である。
【0041】
図4に示すように、薄層クロマトグラフィー抽出装置100において、サンプラー2は、溶媒出口22と溶媒入口21との間に設けられた絞り口31をさらに含む。当該絞り口31は逆止弁等の溶媒が溶媒入口21から溶媒出口22への溶媒の一方向の流れを規制するとともに溶媒出口22から溶媒入口21への逆流を阻止する機構であってもよく、また、シャープエッジ221が溶媒出口22に設けられているため、サンプラー2における不純物顆粒(一般的に吸着剤の基板物質)が溶媒の逆流に伴って溶媒注入手段3に進入することで溶媒を汚染するのを回避することができる。
【0042】
本実施形態において、薄層クロマトグラフィー抽出装置100のサンプラー2は、薄層クロマトグラフィー分離後の吸着層における所定領域を直接サンプリングし、該吸着剤を通過するように溶媒抽出を行うことができるとともに、濾過装置の構造設計によって、抽出後の溶媒中の基板物質の大顆粒を濾過し、最後にフィルタ1の出口で溶媒の合流を実現し、後続の検出装置に注入し分析物をさらに検出しやすくなる。
【0043】
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システムの構造模式図である。
【0044】
図5に示すように、該薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システムは薄層クロマトグラフィー抽出装置100を含み、ここで、薄層クロマトグラフィー抽出装置100は質量分析装置200のサンプリング装置として使用され、溶媒出口22は質量分析装置200のサンプリングポート201との連通に供する。
【0045】
なお、
図5では、フィルタ1がシリンジチップ12であり、質量分析装置200のサンプリングポートが薄層クロマトグラフィー抽出装置100のフィルタ1の出口に連通している場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、質量分析装置200は、第1の実施形態におけるいずれかの薄層クロマトグラフィー抽出装置100と連通して形成された薄層クロマトグラフィー-質量分析併用システムは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0046】
本実施形態において、薄層クロマトグラフィー抽出装置100と質量分析装置200を併用するため、複雑な混合物の組成をより検出しやすくなる。薄層クロマトグラフィーは混合物質中の異なる成分を分離することができ、分離された分析物は薄層クロマトグラフィープレートの吸着層上の異なる領域に位置し、本発明の薄層クロマトグラフィー抽出装置100のサンプラー2により押圧、切断することで所定領域の吸着剤が得られ、溶媒は該吸着剤を透過して抽出を行った後に溶媒出口22から流出し、濾過後にそのまま質量分析装置200のサンプリングポート201に直接移送して物質成分の検出を行えば、複雑な混合物の分離及び検出を容易にできる。特に、質量分析装置は、直接分析用の質量分析装置であってもよいが、本実施形態における薄層クロマトグラフィー抽出装置を直接分析イオン源を備える質量分析装置と併用することにより、物質分析の効率をさらに向上させることができる。
【0047】
[第3の実施形態]
図6は本発明の第3の実施形態に係る薄層クロマトグラフィー抽出方法のフローチャートである。
図6に示すように、該薄層クロマトグラフィー抽出方法は、
サンプラーのシャープエッジを薄層クロマトグラフィープレートの吸着層に押し付けてから持ち上げ、所定体積の吸着剤を切り取るサンプリングステップS1と、
サンプラーに溶媒を注入して吸着剤中の分析物を抽出する抽出ステップS2と、
抽出ステップで得られた、分析物が抽出された溶媒を濾過する濾過ステップS3とを含む。
【0048】
好ましくは、薄層クロマトグラフィー抽出方法は、濾過ステップS3により濾過された溶媒を質量分析装置200に移送して検出する検出ステップS4をさらに含む。
【0049】
具体的には、
図1及び
図6を参照する。まず、混合物に対して薄層クロマトグラフィーによる検出を行い、混合物の成分分離を完了する。分離された吸着層に対して、薄層クロマトグラフィー抽出装置100のサンプラー2のシャープエッジ221によって薄層クロマトグラフィープレートの吸着層のさらなる検出が必要な領域を押圧することで所定体積の吸着剤を切り取るとともにサンプラー2の溶媒出口22のシャープエッジ221内に保持されるようにサンプリングステップS1を実行した後、フィルタ1をサンプラー2の溶媒出口端に取り付け、溶媒注入手段3によってサンプラー2の溶媒入口端に溶媒を注入し、溶媒が吸着剤を透過するように吸着剤を抽出し、抽出により分析物を携帯する溶媒がサンプラー2の溶媒出口22から流出するように抽出ステップS2を実行し、そして、分析物を携帯する溶媒がサンプラー2の溶媒出口端に設置されたフィルタ1に入って濾過される濾過ステップS3を実行する。具体的な濾過方式は、メッシュ濾過、濾過膜濾過又は小径管路濾過であってもよく、最後に濾過ステップS3を実行することで濾過された溶媒は、フィルタ1の出口から質量分析装置200のサンプリングポートに流入して検出される。
【0050】
以上、図面を参照して本発明の技術案を説明したが、本発明の保護範囲はこれらの具体的な実施形態に限定されないのは当業者にとって自明なことである。本発明の原理を逸脱しない前提で、当業者は関連技術的特徴に対して同等の変更又は置換を行うことができ、これらの変更又は置換後の技術案はいずれも本発明の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0051】
100-薄層クロマトグラフィー抽出装置;200-質量分析装置;201-サンプリングポート;1-フィルタ;11-チップ型フィルタ;111-濾過チャンバー;112-シリンジ出口;12-シリンジチップ;121-細長い針管;2-サンプラー;21-溶媒入口;22-溶媒出口;221-シャープエッジ;3-溶媒注入手段;31-絞り口。