(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155766
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062632
(22)【出願日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】10-2023-0052148
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ イェオン
(72)【発明者】
【氏名】パク、シ テク
(72)【発明者】
【氏名】リー、サン キュ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082PP06
(57)【要約】
【課題】内部電極と誘電体層の焼成温度の差による積層型電子部品の信頼性低下を緩和し、また、誘電体層の焼成温度を下げるための低温焼結助剤を誘電体組成物に添加する場合、低温焼結助剤が積層型電子部品の焼成過程で過量に揮発することを防止する積層型電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、Ba及びTiを含む誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層はLi及びFをさらに含み、上記誘電体層に含まれるLiの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba及びTiを含む誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層はLi及びFをさらに含み、
前記誘電体層に含まれるLiの含有量は、前記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層に含まれるFの含有量は、前記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.49モル以上0.88モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均結晶粒サイズは150nm以上250nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層のうち、気孔を除いた領域の面積比率を緻密度とするとき、
前記誘電体層の平均緻密度は95%以上99%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記内部電極はNiを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層の平均厚さは0.35μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記内部電極の平均厚さは0.35μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
Ba及びTiを含む誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階と、
前記本体上に配置される外部電極を形成する段階と、を含み、
前記誘電体層はLi及びFをさらに含み、
前記誘電体層に含まれるLiの含有量は、前記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である、積層型電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記誘電体層に含まれるFの含有量は、前記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.49モル以上0.88モル以下である、請求項8に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記誘電体層はLiFを添加して形成される、請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記LiFはゾルの形態で添加される、請求項10に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記本体を形成する段階と前記外部電極を形成する段階との間では、前記本体を焼成する段階が行われ、
前記本体を焼成する温度は1080℃以下である、請求項8に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
積層型電子部品の小型化及び高容量化のために薄い厚さを有する誘電体層を形成する場合、安定した静電容量の実現と高い信頼性の確保が求められる傾向にある。特に、誘電体層を薄い層に形成する場合、内部電極との収縮挙動の差を減らすために誘電体層と内部電極の焼成温度の差を減らすことが効果的である。
【0004】
一般的に、内部電極に含まれる導電性金属の焼成温度が誘電体層に含まれるセラミックの焼成温度よりも低いため、積層型電子部品の焼成過程で内部電極に凝集が発生することがあり、これにより積層型電子部品に短絡が生じる可能性がある。また、内部電極と誘電体層の収縮挙動の差は積層型電子部品の内部に応力を生じさせることがあり、これにより積層型電子部品の信頼性低下が発生する可能性がある。
【0005】
従って、比較的低温で内部電極と誘電体層を同時に焼成し、内部電極と誘電体層の収縮挙動の差を減らすための方案が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の様々な目的の一つは、内部電極と誘電体層の焼成温度の差による積層型電子部品の信頼性低下を緩和することである。
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、誘電体層の焼成温度を下げるための低温焼結助剤を誘電体組成物に添加する場合、低温焼結助剤が積層型電子部品の焼成過程で過量に揮発することを防止することである。
【0008】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、Ba及びTiを含む誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層はLi及びFをさらに含み、上記誘電体層に含まれるLiの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果の一つとして、誘電体層にLiFを添加し、誘電体層に含まれるLi又はFの含有量を調節することにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、誘電体層を形成する誘電体組成物に低温焼結助剤としてLiFを添加し、LiFの添加形態又は組成を調節して内部電極と誘電体層の焼成温度の差を減少させ、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0012】
但し、本発明の多様且つ有益な利点と効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】LiFとH
2Oをそれぞれ1mol投入した混合系での温度による挙動を熱力学的に計算したグラフである。
【
図5】LiFサンプルのLiF含有量による収縮開始温度を示したグラフである。
【
図6】LiFサンプルのLiF含有量及び温度による収縮挙動を示したグラフである。
【
図7】(a)は、実施例によるTG-DTA test結果を示したグラフであり、(b)は、比較例によるTG-DTA test結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一符号で示される要素は同一要素である。
【0015】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されるものではない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は、誘電体層を挟んで第1及び第2内部電極が交互に配置される方向又は厚さ(T)方向、上記第1方向と垂直な方向である第2方向及び第3方向のうち、上記第2方向は長さ(L)方向、上記第3方向は幅(W)方向と定義されることができる。
【0017】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【0018】
以下では、
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品及び積層型電子部品の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、Ba及びTiを含む誘電体層111、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置される外部電極130、140と、を含み、上記誘電体層はLi及びFをさらに含み、上記誘電体層に含まれるLiの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である。
【0020】
本体110は、Ba及びTiを含む誘電体層111、及び誘電体層111と交互に配置される内部電極121、122を含む。
【0021】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、
図1~
図3に示すように、本体110は、六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれるセラミック材料の収縮により、本体110は完全な直線の角を有した六面体形状ではないが実質的に六面体形状を有することができる。
【0022】
本体110は、第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を含むことができる。
【0023】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認することが困難である程度に一体化されることができる。
【0024】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料を使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料はBaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)、又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。これにより、本発明の一実施形態による誘電体層111はBa及びTiを含むことができる。
【0025】
また、誘電体層111には、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0026】
一般的に、積層型電子部品100の本体110に含まれる誘電体層111は、1100度以上の高温で焼成過程を経て形成されるため、薄層の誘電体層111を形成し難いことがある。また、誘電体層111は、後述する内部電極121、122と交互に配置されるため、内部電極121、122と収縮挙動の差が発生するようになる。このような誘電体層111と内部電極121、122の収縮挙動の差は、積層型電子部品100の内部に応力を生じさせることがあり、積層型電子部品100の内部にクラックを発生させる原因となり得る。
【0027】
従来には、低温での焼成を可能とし、誘電体層の特性を向上させるために、誘電体層111の焼結助剤としてLi2CO3を使用する場合があったものの、誘電体層の焼成過程で容易に揮発して変色不良及び信頼性不良を引き起こすなどの問題点がある。そこで、本発明では、Li2CO3の代わりにLiFを低温焼結助剤として使用し、焼成後の積層型電子部品の誘電体層に含まれるLiの含有量又はFの含有量を調節することにより、積層型電子部品の薄層化を容易にし、電気的特性及び機械的特性を向上させることを目的とする。
【0028】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は、Ba及びTiの他にもLi及びFをさらに含むことができる。Li及びFは、誘電体層111に添加され、誘電体層の誘電体の平均結晶粒サイズ、気孔率などといった微細組織や焼結温度及び焼結圧力などの焼結工程での変数を調節する役割を果たすことができる。
【0029】
誘電体層111に含まれるLiの含有量が、誘電体層111に含まれるBa100モルに対して0.02モル未満である場合、誘電体層111の焼結開始温度を下げる効果が足りない可能性がある。誘電体層111に含まれるLiの含有量が、誘電体層111に含まれるBa100モルに対して0.36モルを超える場合、誘電体層111の絶縁抵抗を十分に高く形成することが困難である可能性がある。本発明の一実施形態によると、誘電体層111はLi及びFを含み、上記誘電体層に含まれるLiの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である。これにより、誘電体層111の緻密度を向上させることができ、誘電体層111と内部電極121、122の収縮挙動の差を減少させることで内部電極の連結性を向上させ、静電容量の低下を防止し、絶縁抵抗の劣化を抑制することができる。このような効果は、誘電体層111に含まれるFの含有量が、誘電体層111に含まれるBa100モルに対して0.49モル以上0.88モル以下である場合にさらに顕著になる。
【0030】
Li及びFの含有量を測定する一例としては、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS、Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)等が挙げられる。
【0031】
一方、本発明のような積層型電子部品100に含まれる誘電体層111に含まれるBa100モルに対するLiの含有量及びBa100モルに対するFの含有量を測定するより具体的な例としては、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面又は第3方向の中心部まで研磨した第1及び第3方向の断面の表面にレーザビームを照射し、LA-ICP-MS(Laser Ablation-Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)を通じて分析する方法が挙げられる。このとき、レーザ照射は、容量形成部Acを第1方向に3等分して3つの領域に区分した後、各領域の中心部に配置された誘電体層111の中央領域に行うことができる。各領域にレーザを照射して算出されたBa、Li、Fの含有量を、Ba100モルに対するLi含有量及びBa100モルに対するFの含有量に変換した後、平均値をとると、誘電体層111に含まれるBa100モルに対するLiの含有量及びBa100モルに対するFの含有量をさらに一般化することができる。
【0032】
一方、Li及びFが誘電体層111に添加される形態が重要である。具体的に、誘電体層に一般的に焼結助剤として添加されるLi2CO3のような物質は、焼結過程で容易に揮発するため、積層型電子部品の焼成温度付近である約1100℃近傍の領域では誘電体層の主成分であるBaTiO3の物質移動を十分に助けることができない。具体的に、既存の焼結助剤であるLi2CO3のような物質は、1100℃近傍の領域で約-55%の質量減少が起こるため、焼結助剤としての役割をまともに果たすことが困難であるという問題がある。
【0033】
誘電体層111に添加する焼結助剤であるLiFは、melting pointが1000℃以下と低く、積層型電子部品の焼成温度(1100~1200℃)よりも低い温度領域から液相を形成することができ、1600℃以上の相対的に高いboiling pointを有することにより、焼成中に揮発する量が少ない。そこで、一実施例においては、誘電体層111にLiFを焼結助剤として添加することにより、積層型電子部品の変色不良及び信頼性低下を抑制することができる。
【0034】
一方、誘電体層111の焼結助剤としてLiFを使用する場合、積層型電子部品100の焼成過程の進行前後のLiFの相変化を最小化することができる。すなわち、一実施例において、誘電体層111に含まれるLi及びFの少なくとも一部はLiFの形態で存在することができる。
【0035】
一実施例において、誘電体層111は複数の誘電体結晶粒を含み、複数の誘電体結晶粒の平均結晶粒サイズは150nm以上250nm以下であることができる。これにより、積層型電子部品100の絶縁抵抗及び信頼性を同時に確保することができる。
【0036】
複数の誘電体結晶粒の平均結晶粒サイズを測定する方法の一例として、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1及び第3方向の断面又は第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面において、容量形成部Acを第1方向に3等分して3つの領域に区分した後、各領域の中心部に配置された誘電体層111の中央の10μm×10μmの領域を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察した結晶粒サイズの平均値をとる方法を用いることができる。このとき、結晶粒サイズの平均値は、各結晶粒において短軸と長軸の長さを測定して平均をとる方法、又は結晶粒の面積をピクセルで測定して円相当直径に換算する方法を用いることができる。
【0037】
一実施例において、誘電体層111の平均緻密度は95%以上99%以下であることができる。本発明の一実施形態によると、誘電体層111がLi及びFを含み、誘電体層111に含まれるLiの含有量が、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下に調節されるため、相対的に低温である1080℃以下でも焼結が可能であり、このような低温焼結過程を経ても誘電体層111の緻密度を向上させることができる。このとき、誘電体層111の平均緻密度は95%以上99%以下であることができる。
【0038】
一実施例において、誘電体層の緻密度は、誘電体層中で気孔を除いた領域の面積比率を意味することができる。誘電体層111の平均緻密度を測定する方法の一例として、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1及び第3方向の断面又は第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面において、容量形成部Acを第1方向に3等分して3つの領域に区分した後、各領域の中心部に配置された誘電体層111の中央の10μm×10μmの領域を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で観察して気孔面積の比率を測定した値の平均値をとった後、「100-気孔面積の比率」値を本発明における誘電体層の平均緻密度と定義する方法を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
一方、誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はない。但し、一般的に誘電体層を0.6μm未満の平均厚さに薄く形成する場合、特に誘電体層の平均厚さtdが0.35μm以下である場合のように積層型電子部品を小型化する場合、誘電体層111の焼結収縮を制御することが困難である可能性がある。
【0040】
本発明の一実施形態によると、誘電体層111に含まれるLiの含有量が、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下に調節されるため、誘電体層の平均厚さtdが0.35μm以下の場合でも、誘電体層111の焼結収縮を調節して積層型電子部品100の静電容量特性及び信頼性を向上させることができる。
【0041】
従って、誘電体層111の平均厚さtdが0.35μm以下である場合に、本発明による静電容量特性及び信頼性向上の効果がより顕著になる。
【0042】
誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0043】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つの誘電体層を長さ方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10つの誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0044】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acを含むことができる。
【0045】
また、容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0046】
図2を参照すると、容量形成部Acの第1方向の一面及び他面には、カバー部112、113が配置されることができる。カバー部112、113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0047】
カバー部112、113は内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。すなわち、カバー部112、113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0048】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であることができる。
【0049】
カバー部112、113の平均厚さtcは、第1方向の大きさを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において、等間隔の5の地点で測定したカバー部112、113の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0050】
図3を参照すると、容量形成部Acの第3方向の一面及び他面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0051】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と、第6面6に配置されたマージン部115を含む。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0052】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0053】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0054】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0055】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後、内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出されるように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0056】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であることができる。
【0057】
マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均大きさを意味することができ、容量形成部Acの側面において、等間隔の5の地点で測定したマージン部114、115の第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0058】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置される。
【0059】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出されることができる。
【0060】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔され、第3面3を介して露出され、第2内部電極122は、第3面3と離隔され、第4面4を介して露出されることができる。
【0061】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0062】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0063】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。但し、一般的に内部電極を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.35μm以下である場合のように積層型電子部品を小型化する場合、内部電極121、122と誘電体層111の収縮挙動の差を調節することが困難であることから、積層型電子部品100の信頼性を向上させることが困難である可能性がある。
【0064】
本発明の一実施形態によると、誘電体層111がLi及びFを含み、誘電体層111に含まれるLiの含有量が、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下に調節されるため、内部電極121、122の平均厚さが0.35μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0065】
従って、内部電極121、122の厚さが平均0.35μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0066】
内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0067】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つの内部電極を長さ方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10つの内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0068】
一実施例において、内部電極121、122はNiを含むことができる。内部電極121、122に含まれるNiの焼成温度(約950℃)は、誘電体層111の主成分となり得るチタン酸バリウム系材料の焼成温度(約1100~1200℃)よりも極めて低いため、本体110が焼成される過程で、内部電極121、122は電極の凝集、電極連結性の減少、電極カバレッジの減少、及び電極の酸化が発生する可能性がある。この結果、積層型電子部品100は静電容量が低下するか、絶縁抵抗が低減する可能性がある。しかし、本発明の一実施形態によると、誘電体層111に含まれるLiの含有量が、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下に調節されることから、本体110の焼成温度を既存よりも20度以上小さく設定することができるため、内部電極121、122の電極凝集、電極連結性の減少、電極カバレッジの減少及び電極の酸化を緩和することができる。このような効果は、誘電体層111に含まれるFの含有量が、誘電体層111に含まれるBa100モルに対して0.49モル以上0.88モル以下である場合にさらに顕著になる。
【0069】
一実施例において、内部電極121、122に含まれるNiの含有量は、内部電極121、122に含まれるNiを除いた他の元素の総含有量に対して95at%以上であることができる。本発明の一実施形態によると、誘電体層111に含まれるLiの含有量が、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下に調節されるため、内部電極に含まれるNiの含有量が、内部電極に含まれるNiを除いた他の元素の総含有量に対して95at%以上である場合、誘電体層111と内部電極121、122の収縮挙動の差を最小化することができる。同様に、このような効果は、一実施例のように、誘電体層111に含まれるFの含有量が、誘電体層111に含まれるBa100モルに対して0.49モル以上0.88モル以下である場合にさらに顕著になる。
【0070】
本体110上には外部電極130、140が配置される。
【0071】
外部電極130、140は、本体110の第3面3に接する第1外部電極130及び第4面4に接する第2外部電極140を含むことができる。
【0072】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極130、140を有する構造を説明しているが、外部電極130、140の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更されることができる。
【0073】
一方、外部電極130、140は、金属などのように電気伝導性を有するものであればどのような物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0074】
例えば、外部電極130、140は、本体110上に配置される電極層及び電極層上に形成されるめっき層を含むことができる。
【0075】
上記電極層についてより具体的な例を挙げると、上記電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0076】
また、上記電極層は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるものであることができる。
【0077】
上記電極層に含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であることができ、好ましくは本体との接着力を向上させるために銅(Cu)であることができる。
【0078】
上記めっき層は実装特性を向上させる役割を果たす。上記めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0079】
上記めっき層についてより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層又はSnめっき層であることができ、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0080】
積層型電子部品の製造方法
以下では、本発明の一実施形態による積層型電子部品100の製造方法について詳細に説明する。
【0081】
但し、上述した本発明の一実施形態による積層型電子部品100を製造するための製造方法が、後述する製造方法に制限されるものではないことに留意する必要がある。また、上述した内容と重複する内容は、重複する説明を避けるために省略されることができる。
【0082】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100の製造方法は、Ba及びTiを含む誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体上に配置される外部電極を形成する段階と、を含み、上記誘電体層はLi及びFをさらに含み、上記誘電体層に含まれるLiの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下である。
【0083】
本体110を形成する段階
本発明の一実施形態による積層型電子部品の製造方法は、Ba及びTiを含む誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体110を形成する段階を含む。
【0084】
本体110がBa及びTiを含む誘電体層111、及び誘電体層111と交互に配置される内部電極121、122を含むように形成する方法の一例として、チタン酸バリウム系成分を含む誘電体グリーンシートの一面及び他面に内部電極用導電性ペーストを印刷して行うことができる。
【0085】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストを誘電体グリーンシートに印刷して形成することができるが、本発明の誘電体層111との収縮挙動の差を最小化するために、Niを主成分として含む内部電極用導電性ペーストであることが好ましい。このとき、Niを主成分として含むとは、内部電極用導電性ペーストに含まれることができるガラス、分散剤以外の導電性金属の中でNiのat%が最も高いことを意味することができる。
【0086】
上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0087】
外部電極130、140を形成する段階
上記本体110を形成する段階の後には、本体110上に外部電極130、140を形成することができる。
【0088】
外部電極130、140を形成する方法は特に限定されない。例えば、外部電極130、140に含まれることができる電極層は、導電性金属及びガラスを含むペーストにディッピングする方法を用いることができ、導電性金属を含むシートを転写する方式で形成することもできる。また、導電性金属及び樹脂を含むペーストを用いるか、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition、ALD)工法、分子層蒸着(Molecular Layer Deposition、MLD)工法、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition、CVD)工法、スパッタリング(Sputtering)工法などを用いて形成されることができる。
【0089】
また、上記電極層上にめっき層が配置される場合、めっき層は電解めっき法又は無電解めっき法などの方法を用いて形成されることができる。
【0090】
以下では、このような積層型電子部品100の製造方法において、誘電体層111はLi及びFを含み、誘電体層111に含まれるLiの含有量が、誘電体層111に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下となるように調節する方法について述べる。
【0091】
上述したように、誘電体グリーンシートは、BaTiO3-のようなチタン酸バリウム系材料を含むことができ、チタン酸バリウム系材料の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)、又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが使用されることができる。従って、本体110の焼成後、誘電体層111はBa及びTiを含むことができる。
【0092】
一方、前述した一実施例のように、誘電体層111に含まれるLi又はFの含有量は、誘電体セラミックグリーンシートに添加される添加剤の量と形態によって調節されることができる。
【0093】
一実施例において、誘電体層111はLiFを添加して形成されることができ、好ましくはLiFをゾルの形態で添加して形成されることができる。このとき、添加されるLiFの量を調節する場合、誘電体層111に含まれることができるLi又はFの含有量が調節されることができる。
【0094】
誘電体層111に添加されるLiFの含有量が増加することにより、誘電体層111の収縮開始温度が低くなることができる。具体的に、誘電体層111の収縮開始温度が低くなり、誘電体層111の緻密度が向上されるように、誘電体層111に添加されるLiFの含有量は、誘電体層111のチタン酸バリウム系成分100モルに対して0.2モル以上であることが好ましい。但し、誘電体層111に添加されるLiFの含有量が、誘電体層111のチタン酸バリウム系成分100モルに対して1.8モルを超える場合、LiFの含有量が過度に高いことから誘電体層111の絶縁抵抗を十分に高く形成することが困難であるという問題が発生する可能性がある。従って、誘電体層111に添加されるLiFの含有量は、誘電体層111のチタン酸バリウム系成分100モルに対して0.2モル以上1.8モル以下であることが好ましい。
【0095】
誘電体層111に添加されるLiFの含有量は、誘電体層111のチタン酸バリウム系成分100モルに対して0.2モル以上1.8モル以下である場合、本体110の焼成を経て誘電体層111に含まれることができるLi又はFの含有量が適切に調節されることができる。具体的に、誘電体層111に添加されるLiFの含有量が、誘電体層111のチタン酸バリウム系成分100モルに対して0.2モル以上1.8モル以下である場合、焼成後の誘電体層111に含まれるLiの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.02モル以上0.36モル以下であることができ、誘電体層111に添加されるLiFの含有量が、誘電体層111のチタン酸バリウム系成分100モルに対して0.2モル以上1.8モル以下である場合、焼成後の誘電体層111に含まれるFの含有量は、上記誘電体層に含まれるBa100モルに対して0.49モル以上0.88モル以下であることができる。
【0096】
上記本体を形成する段階と上記外部電極を形成する段階との間では、上記本体を焼成する段階が行われることができるが、これに制限されるものではなく、外部電極130、140を形成する段階の後に行われることができる。また、上記焼成過程は、1回に限って行われるものではなく、焼成雰囲気を変えて複数回行われることができる。
【0097】
一実施例において、上記本体を形成する段階と上記外部電極を形成する段階との間で上記本体を焼成する段階が行われる場合、上記本体を焼成する温度は1080℃以下であることができる。
【0098】
誘電体層111に添加する焼結助剤であるLiFは、melting pointが1000℃以下と低く、積層型電子部品の焼成温度(1100~1200℃)よりも低い温度領域から液相を形成することができ、1600℃以上の相対的に高いboiling pointを有することにより、焼成中に揮発する量が少ない。そこで、一実施例では、誘電体層111にLiFを焼結助剤として添加し、その含有量を調節することにより、本体110の焼成温度を1080℃以下に下げることができ、積層型電子部品の変色不良及び信頼性低下を抑制することができる。
【0099】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。本発明によると、小型化及び高容量化に有利であることから、サイズの小さいIT用製品のサイズにも適用することができ、様々な環境で高信頼性を確保することができるため、高信頼性が求められる自動車電装用製品のサイズにも適用することができる。
【0100】
(実験例1)
図4は、LiFとH
2Oをそれぞれ1mol投入した混合系での温度による挙動を熱力学的に計算したグラフである。
【0101】
図4を参照すると、LiFとH
2Oを同一の含有量でそれぞれ1モルずつ投入して反応したとき、H
2Oは温度が上昇するにつれて液相から気相に変わり、LiFは融点近く(845℃)で固相から液相に一次相転移が発生し、1050℃以上から揮発し始めた。しかし、積層型電子部品の焼成温度領域である1100℃でLiFの揮発程度は微々たることが確認された。すなわち、誘電体組成物にLiFを添加して誘電体層を形成する場合、焼成過程を経ても低温焼結助剤であるLiFの揮発を最小化できると予想することができる。
【0102】
(実験例2)
図5は、LiFサンプルのLiF含有量による収縮開始温度を示したグラフであり、
図6は、LiFサンプルのLiF含有量及び温度による収縮挙動を示したグラフである。
【0103】
図5及び
図6を参照すると、LiF含有量が増加するにつれて収縮開始及び高温収縮が低温で発生し、少量の添加でも収縮温度が急激に減少することが分かる。すなわち、LiFの添加量が増加するほど、低い温度でも緻密度が向上し、粒成長が行われることを確認することができ、これにより、既存の焼成温度よりも低い温度で焼成が可能であることを予想することができる。
【0104】
(実験例3)
図7の(a)は、実施例によるTG-DTA test結果を示したグラフであり、
図7の(b)は、比較例によるTG-DTA test結果を示したグラフである。
【0105】
LiFを焼結助剤として添加したサンプルに対する実験結果である
図7の(a)を参照すると、積層型電子部品の適正焼成温度領域である1100度の領域において、LiFは-7.5%程度の揮発が発生し、Li
2CO
3を焼結助剤として添加したサンプルに対する実験結果である
図7の(b)を参照すると、Li
2CO
3の融点付近から爆発的な質量減少が発生し、適正焼成温度領域である1100度の領域においては、-55%以上の質量減少があることを確認することができる。すなわち、Li
2CO
3を焼結助剤として使用する場合よりも、LiFを焼結助剤として使用する場合に、揮発程度を減らすことができ、これにより、焼成後の誘電体層に含まれるLi及びFの含有量を高く維持することができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0107】
また、本発明で使用されている「一実施例」という表現は、互いに同一の実施例を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の一実施例の特徴と組み合わされて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施例で説明されている事項が他の一実施例では説明されていなくても、他の一実施例においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施例に関連した説明として理解することができる。
【0108】
本発明で使用されている用語は、単に一実施例を説明するためのものであって、本発明を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含むものである。
【符号の説明】
【0109】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
121、122 内部電極
112、113 カバー部
114、115 マージン部
130、140 外部電極