IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ポリプロ株式会社の特許一覧

特開2024-155788イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、オレフィン重合用触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法、オレフィン重合体の製造方法、及びイオン交換性層状珪酸塩粒子
<>
  • 特開-イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、オレフィン重合用触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法、オレフィン重合体の製造方法、及びイオン交換性層状珪酸塩粒子 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155788
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、オレフィン重合用触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法、オレフィン重合体の製造方法、及びイオン交換性層状珪酸塩粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/40 20060101AFI20241024BHJP
   C08F 4/02 20060101ALI20241024BHJP
   C08F 4/64 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C01B33/40
C08F4/02
C08F4/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065176
(22)【出願日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2023068426
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新部 森万
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩二
【テーマコード(参考)】
4G073
4J015
4J128
【Fターム(参考)】
4G073BA03
4G073BA10
4G073BA36
4G073BA57
4G073BA62
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA76
4G073BD21
4G073CM15
4G073FB29
4G073FD08
4G073FD26
4G073GA01
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA14
4G073UA03
4J015DA05
4J015DA07
4J015DA37
4J128AA02
4J128AC01
4J128AC09
4J128AC10
4J128AC19
4J128AC20
4J128AC27
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC14A
4J128BC14B
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128CA30A
4J128DA02
4J128DA08
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EB12
4J128EB15
4J128EB16
4J128EB17
4J128EB18
4J128EB21
4J128EC01
4J128EC02
4J128EC04
4J128FA01
4J128FA02
4J128FA04
4J128FA09
4J128GA05
4J128GB01
(57)【要約】
【課題】高活性なオレフィン重合用触媒成分を製造する。
【解決手段】次の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を含む、イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
工程(1):イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
工程(2):前記工程(1)で調製した前記スラリーを造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程。
工程(3):前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部を溶出させる工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を含む、イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
工程(1):イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
工程(2):前記工程(1)で調製した前記スラリーを造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程。
工程(3):前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部を溶出させる工程。
【請求項2】
前記スラリー中の前記溶媒を除く成分の合計を100質量%として、
前記化合物[I]は4質量%~76質量%であり、
前記化合物[II]は4質量%~76質量%であり、
前記化合物[I]と前記化合物[II]の合計は8質量%~80質量%である、請求項1に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において前記化合物[I]は、無機塩、無機酸化物、無機水酸化物、及び、金属単体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)において、前記化合物[I]は、平均粒子径0.3μm~100.0μmの粒子である、請求項1又は請求項2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、前記化合物[I]が、塩類(水酸化物を含む)、及び酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)において、前記化合物[II]が、塩類である、請求項1又は請求項2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)において前記化合物[II]が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを含む塩である、請求項1又は請求項2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項8】
前記工程(3)は、前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子と酸類とを接触させる、請求項1又は請求項2に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いる、オレフィン重合用触媒成分の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子と、
下記成分[B]、及び成分[C]を接触させる工程を有する、オレフィン重合用触媒の製造方法。
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法により得られるオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィン重合を行う、オレフィン重合体の製造方法。
【請求項12】
次の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を含む製造方法によって得られる、イオン交換性層状珪酸塩粒子。
工程(1):イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
工程(2):前記工程(1)で調製した前記スラリーを造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程。
工程(3):前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部を溶出させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、オレフィン重合用触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法、オレフィン重合体の製造方法、及びイオン交換性層状珪酸塩粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換性層状珪酸塩、例えば粘土鉱物は、吸着材や触媒、触媒担体等に広く用いられている。これらの用途における性能に与える因子は様々なものがあるが、細孔容積や細孔分布、比表面積はとりわけ大きな影響を与える。例えば、特許文献1では、吸着材として、特定の細孔分布をもつ粘土鉱物が例示されている。
また、粘土又は粘土鉱物をオレフィン重合用触媒成分として利用した触媒の存在下に、オレフィンを重合してオレフィン重合体を製造することは公知である(例えば、特許文献2)。
【0003】
また、酸処理や塩類処理を行ったイオン交換性層状化合物を成分として含むオレフィン重合用触媒も知られている(例えば、特許文献3)。
特許文献4では、オレフィン重合用触媒及び触媒担体として特定の細孔分布をもつ粘土鉱物が開示されている。
【0004】
一方、イオン交換性層状珪酸塩からなる固体の細孔分布を制御する方法として、例えば特許文献5では、粘土鉱物に含有されるSiO結晶成分を非晶化することにより、細孔構造を制御している。しかし、この方法では、触媒活性を持たないSiO成分を含有させることになり、触媒活性の低下が懸念される。
【0005】
特許文献6では、スラリー中で実質的に不溶性の塩である炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等を含む状態で乾燥造粒を行った後、酸と反応させ炭酸ガスを発生させること等により細孔構造を制御している。特許文献6の技術では、水銀圧入法による細孔容積測定によって、細孔直径2μm~10μmの範囲の細孔容積が増大していることが確認できる。しかし、特許文献6の方法では、10~50nmのメソ孔の容積には影響を与えておらず、また10nm~300nmの細孔の容積はほとんど変化がない。
【0006】
特許文献7では、酸化亜鉛やチタニアの微粒子固体を添加、乾燥造粒させた後、酸により微粒子状固体を溶出させることで細孔構造を制御する方法が開示されている。しかし、特許文献7の技術では、触媒や触媒担体としての性能に重要な比表面積が小さい。
【0007】
特許文献8,9では、特定の組成をもつイオン交換性層状珪酸塩を利用することで、特定の細孔構造を形成する技術が開示されている。
特許文献10では、特定の粒子径に造粒したイオン交換性層状珪酸塩のアルミニウム成分を溶出させ、特定の粒子強度に調整することで性能の改善を図っている。
特許文献で11では、イオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する際に、特定量の溶解性化合物を含ませた複合粒子を形成後、当該複合粒子から前記溶解性化合物を溶出させて、細孔構造を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2010/032568号公報
【特許文献2】特開平5-295022号公報
【特許文献3】特開平7-228621号公報
【特許文献4】特開2002-088114号公報
【特許文献5】特開2013-082607号公報
【特許文献6】特開2000-344513号公報
【特許文献7】特開2003-252923号公報
【特許文献8】特開2015-108138号公報
【特許文献9】特開2018-111841号公報
【特許文献10】特開2019-172958号公報
【特許文献11】特開2022-51552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1-11では、イオン交換性層状珪酸塩からなる固体の細孔分布等を制御して触媒の性能向上を図っている。しかし、これらの文献の技術では、触媒活性が必ずしも十分でなく、更なる触媒活性の向上が望まれていた。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、触媒活性の向上を目的とし、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<1>
次の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を含む、イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
工程(1):イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
工程(2):前記工程(1)で調製した前記スラリーを噴霧乾燥処理により造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程。
工程(3):前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部を溶出させる工程。
<2>
前記スラリー中の前記溶媒を除く成分の合計を100質量%として、
前記化合物[I]は4質量%~76質量%であり、
前記化合物[II]は4質量%~76質量%であり、
前記化合物[I]と前記化合物[II]の合計は8質量%~80質量%である、<1>に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
<3>
前記工程(1)において前記化合物[I]は、無機塩、無機酸化物、無機水酸化物、及び、金属単体からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【0011】
<4>
前記工程(1)において、前記化合物[I]は、平均粒子径0.3μm~100.0μmの粒子である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
<5>
前記工程(1)において、前記化合物[I]が、塩類(水酸化物を含む、及び酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
<6>
前記工程(1)において、前記化合物[II]が、塩類である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
【0012】
<7>
前記工程(1)において前記化合物[II]が、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを含む塩である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
<8>
前記工程(3)は、前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子と酸類とを接触させる、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法。
<9>
前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いる、オレフィン重合用触媒成分の製造方法。
【0013】
<10>
前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子と、
下記成分[B]、及び成分[C]を接触させる工程を有する、オレフィン重合用触媒の製造方法。
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
<11>
<10>に記載の製造方法により得られるオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィン重合を行う、オレフィン重合体の製造方法。
<12>
次の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を含む製造方法によって得られる、イオン交換性層状珪酸塩粒子。
工程(1):イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
工程(2):前記工程(1)で調製した前記スラリーを造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高活性なオレフィン重合用触媒成分となるイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造が可能となる。
また、本開示によれば、高活性なオレフィン重合用触媒の製造が可能となる。
また、本開示によれば、高活性なオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例及び比較例に記載のオレフィン重合用触媒によるプロピレン単独重合の結果について、活性(重合活性)を、得られた重合体のMFRに対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を詳しく説明する。尚、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本開示において数値範囲を示す上限値と下限値は任意の組合せを採用できる。
また、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。
【0017】
1.開発経緯
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、以下の方法によって得られた特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子が触媒活性を向上させることを見出した。すなわち、この方法では、イオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する際に、イオン交換性層状珪酸塩と、溶媒、前記溶媒への溶解性が異なる少なくとも2種類の化合物(化合物[I]、化合物[II])を混合したスラリーを調製する。このスラリーを用いて噴霧乾燥処理によって造粒粒子を形成後、当該複合粒子から、複合粒子に含まれる金属成分、例えば前記化合物[I]及び化合物[II]に由来する金属成分の少なくとも一部を溶出させることで特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を得る。この特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子が触媒活性を向上させるイオン交換性層状珪酸塩粒子であることを見出した。
【0018】
イオン交換性層状珪酸塩のスラリーに、化合物[I]及び化合物[II]を含ませて造粒すると、得られる複合粒子における珪酸塩の1次粒子は、化合物[I]及び化合物[II]によって結合が疎になると考えられる。その後、当該複合粒子を化学処理することで、当該複合粒子から、複合粒子に含まれる金属成分、例えば化合物[I]及び化合物[II]に由来する金属成分の少なくとも一部が溶媒中に溶出し、粒子内に適度な空隙が生じ、珪酸塩粒子の細孔径を制御できると推測される。
驚くべくことに、化合物[I]のみを使用した場合と比較して、本開示のように化合物[I]及び化合物[II]の両方を組み合わせて使用することにより、顕著に触媒活性が向上することを見出した。これは、化合物[I]と化合物[II]では、それぞれが溶出した際に形成される空隙のサイズが異なっているため、化合物[I]のみを使用した場合よりも、空隙サイズの分布が広がり、結果的に触媒にとってより好ましい細孔構造が形成されているものと考えられる。
【0019】
本開示の製造方法から得られたイオン交換性層状珪酸塩粒子は、高い重合活性を示すオレフィン重合用触媒成分とすることができる。本開示では、このような効果を奏する新規なイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、及びこのイオン交換性層状珪酸塩粒子を含むオレフィン重合用触媒成分の製法方法、オレフィン重合用触媒の製造方法を提供できる。
【0020】
従来のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法としては、例えば特許第6136852号公報に示されるように、イオン交換性層状珪酸塩に分類されるモンモリロナイトの八面体層の同形置換量に相当するMg/Alの大きいスメクタイトを用い、特定の化学処理を行う方法がある。この製造方法からは大きな比表面積を有する高活性なオレフィン重合用触媒成分が得られるとされている。しかし、この製造方法から得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いても重合活性は十分なものではなかった(表5の比較例P1)。これは、以下のように考えられる。まず、Mg/Alの大きいスメクタイトは、スメクタイトの結晶が小さくなる傾向にある。したがって、噴霧乾燥処理によって得られた造粒粒子は、スメクタイト結晶が密に粒子内でパッキングするため、粒子が固くかつ内部空隙が少ないものとなってしまう。その結果、錯体やモノマーの拡散が阻害されると同時に、重合時の触媒粒子の成長も阻害され、重合活性が低下するものと考えられる。一方、本開示のイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法では、錯体やモノマーの拡散に好適な空隙を有し、かつ重合時の触媒粒子の成長に好適な強度を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子を製造することが可能である。
【0021】
2.イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、及びイオン交換性層状珪酸塩粒子の特徴
(1)イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法
本開示のイオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する方法は、次の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を含む、イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法である。
工程(1):イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
工程(2):前記工程(1)で調製した前記スラリーを噴霧乾燥処理により造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程。
工程(3):前記工程(2)で得られた前記イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部を溶出させる工程。
【0022】
(1.1)工程(1)
工程(1)は、イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、下記特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び下記特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリーを調製する工程である。
特性(a):20℃で固体であり、前記化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が、30mL以上である。
特性(b):20℃で固体であり、前記化合物[II]を1g溶解させる際に必要とする前記溶媒の量が、30mL未満である。
【0023】
(1.1.1)イオン交換性層状珪酸塩
本開示の製造方法は、イオン交換性層状珪酸塩を原料としている。イオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる層状の珪酸塩化合物の一種であり、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水晴雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)等に記載されているように、下記の鉱物が例示される。
i)1:1層が主要な構成層であるデッカイト、ナクライト、カオリナイト、ナクライト等のカオリン族、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、アメサイト、Alリザーダイト等の蛇紋石類縁鉱物等。
ii)2:1層が主要な構成層であるモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。多くのスメクタイトは、天然には、粘土鉱物の混合物として産出されるため、不純物(石英やクリストバライト、オパール、炭酸塩等が挙げられる)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよく、このような例としてはモンモリロナイトを主成分として含む粘土であるベントナイトや酸性白土が挙げられる。本開示のイオン交換性層状珪酸塩は、2:1型構造を有する層状珪酸塩が好ましい。より好ましくは、スメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、モンモリロナイトである。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本開示の製造方法において、イオン交換性層状珪酸塩、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子、及び、イオン交換性層状珪酸塩粒子の組成分析は後述の測定方法にて行う。
【0025】
尚、これらの天然物を水簸や風簸により精製してもよい。水簸や風簸を行うことで、比重の大きな石英や長石などの不純物が取り除かれる他、膨潤しない珪酸塩も取り除くことができ、好ましいイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。水簸や風簸方法としては、通常用いられる方法を用いることができる。精製の前に乾燥や粉砕を行ってもよい。粉砕様式としては、乾式粉砕、湿式粉砕等が挙げられる。粉砕機としては、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、ロールクラッシャー、エッジランナー、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等が上げられる。
【0026】
また、例えば予めごく少量の炭酸ソーダ等を用いてのイオン交換処理を行ってもよい。このような例として、例えばCa型ベントナイトをNa型の活性化ベントナイトに転換させたものなどが挙げられる(関税中央分析所報 第56号 P85、粘土科学第21巻第1号1~13(1981))総説)。これにより、水簸に際し、スメクタイトが分散し易くなり粗大な石英等を粒子径差によって速やかに沈降分離することができる。また分散剤として公知の物質を加えてもよい、例えばケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
本開示の製造方法において好適に用いられるイオン交換性層状珪酸塩は、触媒活性の観点より、イオン交換性層状珪酸塩に含まれるアルミニウム原子の量を[Ala]とし、マグネシウム原子の量(mol/g)を[Mga]としたとき,[Ala]/[Mga](モル比)が、0.3以上、3.9未満であってもよい。下限値としては、1.0以上であってよく、1.5以上であってよく、2.0以上であってよく、上限値としては、3.7以下であってよく、3.5であってよく、3.2以下であってよい。イオン交換性層状珪酸塩がスメクタイト族珪酸塩の場合、八面体を構成する3価のアルミニウムが2価のマグネシウムに置換され、負の層電荷を有している。この負の層電荷が、メタロセン触媒において、活性点前駆体であるメタロセン遷移金属化合物(錯体)のカチオン種を安定化するためのカウンターアニオンとして作用し、オレフィン重合触媒としての安定性を高めることができると考えられ、[Ala]/[Mga]が上記の範囲内であると高活性なオレフィン重合触媒を得ることができると考えられる。
【0028】
本開示の製造方法において好適に用いられるイオン交換性層状珪酸塩は後述の造粒及び化学処理が行われることが好ましい。また、本開示においては、化学処理を施す前段階でイオン交換性及び層構造を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造ではなくなった珪酸塩もイオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
【0029】
本開示の製造方法において好適に用いられるイオン交換性層状珪酸塩の層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類は、特に限定されない。層間カチオンは、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期律表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期律表第2族のアルカリ土類金属、アルミニウム、ケイ素あるいは鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属等のカチオンが、工業原料として比較的容易に入手可能である点で好ましい。尚、主成分とは、含有率(質量%)が51質量%以上の物質をいう。
【0030】
(1.1.2)原料スラリー
本開示の製造方法は、イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、特性(a)を有する少なくとも1種の化合物[I]、及び特性(b)を有する少なくとも1種の化合物[II]を含むスラリー(以下、「原料スラリー」と称することがある)を原料とする。
【0031】
本開示の製造方法において好適に用いられるイオン交換性層状珪酸塩は、スラリー化前の形状について、特に限定されない。スラリー化前の形状は、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、粉砕、造粒、分級等の操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよく、水簸等の精製操作によって得られたスラリーをそのまま用いてもよい。また、不純物(石英やクリストバライト、オパール、炭酸塩等が挙げられる)を含んでいてもよい。
スラリー中のイオン交換性層状珪酸塩の濃度は、特に限定されない。濃度は、好ましくは0.5質量%~60質量%、より好ましくは0.7質量%~40質量%、さらに好ましくは0.8質量%~20質量%、特に好ましくは1質量%~10質量%である。
【0032】
上記イオン交換性層状珪酸塩は、溶媒中に分散させて測定した原料イオン交換性層状珪酸塩の粒子径が2μm以下であってもよく、1μm以下であってもよく、0.7μm以下であってもよく、0.5μm以下であってもよい。下限値は特に限定されないが、0.01μm以上であってもよい。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
ここでの粒子径とは、堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用い、分散溶媒を蒸留水、屈折率実数項1.490、虚数項0.100、分散溶媒屈折率実数項1.333、透過率(R)85%~99%、透過率(B)85%~90%の条件で、かつ装置内超音波強度「7」で2分間超音波処理後に測定される、球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径のことをいう。
【0033】
スラリーを構成する溶媒の種類は、特に限定されない。溶媒は、水や、メタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が好ましく、水がより好ましい。また、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
溶媒の種類によって、前記化合物[I]、前記化合物[II]に該当する化合物は変わる。溶媒/化合物[I]/化合物[II]の組み合わせとして、例えば溶媒が水であれば、水/水酸化アルミニウム/硫酸リチウムを選択することが可能である。また、溶媒がエタノールであれば、エタノール/硫酸リチウム/ステアリン酸ナトリウムを選択することが可能である。このように、例示した硫酸リチウムは、溶媒の種類によって化合物[I]または化合物[II]として使用することができる。
【0035】
本開示の製造方法において、スラリー中の溶媒を除く成分の合計100質量%としたとき、前記化合物[I]は4質量%~76質量%であり、前記化合物[II]は4質量%~76質量%であり、前記化合物[I]と前記化合物[II]の合計は8質量%~80質量%であることが好ましい。化合物[I]と化合物[II]の合計は8質量%以上であってもよく、好ましくは12質量%以上、より好ましくは16質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、化合物[I]と化合物[II]の合計は80質量%以下であってもよく、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
各上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。化合物[I]の量と化合物[II]の量、及びその合計量が、上記範囲内であると、イオン交換性層状珪酸塩粒子に好ましい空隙を付与することができると考えられる。
【0036】
(1.1.3)化合物[I]
本開示の製造方法に用いられる化合物[I]は、20℃で固体であり、且つ、化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が30mL以上となる特性(a)を有することを特徴とする。この特性はJIS K 8001:2007の表1の「溶解の程度を表す用語」において、「やや溶けにくい」~「ほとんど溶けない」に相当する溶解性である。溶解性を調査する場合にも、JIS K 8001:2007の3.2に記載の方法に準拠するものとする。化合物[I]については、化合物[I]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が30mL以上であり、好ましくは100mL以上であり(溶けにくい)、より好ましくは1000mL以上である(きわめて溶けにくい)。さらに、化合物[I]は、後述の工程(3)において、化学処理により、溶出する特性を有していることが好ましい。化合物[I]は、上記特性(a)を有する限り、特に制限されないが、細孔を制御しやすく、スラリーを構成する好ましい溶媒として水が用いられるという観点から、以下に例示する無機塩、無機酸化物、無機水酸化物、無機酸化物、及び、金属単体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0037】
無機塩としては例えば、BaSO、BaCO、BaWO、Ba[SiF]、Co(NO、FeCO、FeS、AgBr、AgCl、AgI、CaMg(CO、KPO、LiPO、MgPであり、無機酸化物、無機水酸化物としては、BaCrO、AgO、ZnO、SiO、TiO、Al、CaMoO、BiO(OH)、Fe(OH)、Fe(OH)、Cd(OH)、Cu(OH)、Hf(OH)、Mg(OH)、Mn(OH)、Sn(OH)、Zn(OH)、Al(OH)、金属単体としては、Al、Mg、Fe、Zn等である。化合物[I]は、好ましくは、無機塩、無機酸化物、無機水酸化物であり、より好ましくは無機酸化物、無機水酸化物であり、さらに好ましくは無機水酸化物であり、工業的な観点や、廃液の観点から特に好ましくは、Al(OH)、ZnOである。
【0038】
本開示の製造方法において好適に用いられる化合物[I]は、前記溶媒に分散させて測定した平均粒子径が、0.3μm~100.0μmであることが好ましい。下限値は、より好ましくは0.4μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、上限値は、より好ましくは50.0μm以下、さらに好ましくは20.0μm以下、特に好ましくは10.0μm以下である。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。化合物[I]の平均粒子径が上記範囲内の場合、後述の特性を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子が得られやすくなると考えられる。また、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子が適度な粒子強度を維持し及び粒子の破砕等が抑制されることから、微粉等の発生を抑制する観点からも、上記範囲内にあることが好ましい。
上記化合物[I]の粒子径は、例えば堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960などを用い、前記溶媒を用い、必要であれば適当な分散処理を施し、測定することができる。
【0039】
これらの化合物[I]は、単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。化合物[I]は、スラリー中の溶媒を除く成分の合計100質量%に対して4質量%~76質量%含まれるように添加することが好ましい。この割合とすると、後述のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られやすい点から好ましい。
すなわち、化合物[I]の添加量は、スラリー中の溶媒を除く成分の合計100質量%に対し、4質量%~76質量%であってもよい。化合物[I]の添加量は4質量%以上であってもよく、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また化合物[I]の添加量は76質量%以下であってもよく、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。各上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。化合物[I]は、上記範囲にあることで、後述のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られやすい。
上限値が76質量%を超えると、造粒固体の強度が下がり、微粉等が発生しやすいおそれがあり、8質量%を下回ると、後述のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られないおそれがある。
尚、本開示において、スラリー中の溶媒を除く成分の合計は、イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、任意成分であるその他の成分(イオン交換性層状珪酸塩、化合物[I]、及び化合物[II]のいずれとも異なる成分)と、の合計である。
より具体的には、溶媒を除く成分の合計は、次の2通りがある。
・イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、の合計
・イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、その他の成分と、の合計
本開示では、上述のように、スラリーから溶媒を除いた成分の質量の合計を100質量%とする。スラリー中の溶媒を除く成分についての「質量%」は、この100質量%を基準にした質量割合である。
【0040】
(1.1.4)化合物[II]
本開示の製造方法において用いられる化合物[II]は、20℃で固体であって、且つ、化合物[II]を1g溶解させる際に要する前記溶媒の量が30mL未満となるような特性(b)を有することを特徴とする。この特性はJIS K 8001:2007の表1の「溶解の程度を表す用語」において、「やや溶けやすい」~「極めて溶けやすい」に相当する溶解性である。溶解性を調査する場合にも、JIS K 8001:2007の3.2に記載の方法に準拠するものとする。化合物[II]は、化合物[II]を1g溶かすのに要する前記溶媒の量が30mL未満であり(やや溶けやすい)、好ましくは20mL未満であり、より好ましくは10mL未満である(溶けやすい)。さらに、化合物[II]は、後述の工程(3)の化学処理により、溶出されることが好ましい。化合物[II]は、細孔構造を制御しやすく、スラリーを構成する好ましい溶媒として水が用いられる点から、塩類が好ましい。
塩類としては、有機陽イオン、及び、金属イオンを含む無機陽イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、及び、ハロゲン化物イオンを含む無機陰イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。塩類としては、例えば、周期律表第1~14族から選択される少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸の陰イオン、及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。塩類としては、さらに好ましくは、無機ブレンステッド酸の陰イオン及びハロゲンの陰イオンから選ばれる少なくとも1種の陰イオンから構成される化合物である無機塩であり、より好ましくは水に溶解する無機塩である。
【0041】
このような無機塩を構成する陽イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、ストロンチウムイオン、コバルトイオン、銅イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、イリジウムイオン、白金イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。陰イオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、臭化水素酸イオン、ヨウ化水素酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、過塩素酸塩イオン、モリブデン酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、炭酸イオンなどの無機酸イオン、及び、酢酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、ギ酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、タウリンイオン等の有機酸イオン、並びに酸素イオン(酸化物イオン)、水酸化物イオン等が挙げられる。
【0042】
化合物[II]としては、適切に溶出しやすく、且つ、工業的に廃液処理が容易な点から、より好ましくは、陽イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンからなる群から選択される少なくとも1種の塩が挙げられる。さらに好ましくは、陽イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンからなる群から選択される少なくとも1種で、陰イオンが硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、及びリン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種である塩が挙げられる。よりさらに好ましくは、陽イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、及びマグネシウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種で、陰イオンが硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、及びリン酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種である塩が挙げられる。特に好ましくは硫酸リチウム、硫酸ナトリウムである。
【0043】
これらの化合物[II]は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。化合物[II]は、20℃スラリー中の固体成分(スラリーに含まれる固体成分を100質量%とする)に対して4質量%~76質量%含まれるように添加することが好ましい。この割合とすると、本開示のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られやすい点から好ましい。
すなわち、化合物[II]の添加量は、スラリー中の溶媒を除く成分の合計100質量%に対して、4質量%~76質量%であってもよい。化合物[II]の添加量は4質量%以上であってもよく、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また化合物[II]の添加量は76質量%以下であってもよく、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。各上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。化合物[II]は、上記範囲にあることで、本開示のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られやすい。上限値が76質量%を超えると、造粒固体の強度が下がり、微粉等が発生しやすくなるおそれがあり、8質量%を下回ると、本開示のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性が得られないおそれがある。
このような特定量の化合物[II]を含ませた複合粒子を形成後、当該複合粒子から前記化合物[II]の金属成分の少なくとも一部を溶出させることにより、細孔構造を制御することができ、大きな比表面積を有し、且つ、10nmを超え50nm以下の大きなメソ孔の割合を増加させることができると考えられる。
【0044】
上記化合物[I]及び/又は化合物[II]が炭酸塩である場合、炭酸塩と酸とを反応させたときに発生するガスが細孔構造に影響を与えることから、化合物[I]及び/又は化合物[II]、として炭酸塩単独では使用しないことが好ましい。化合物[I]として炭酸塩及び炭酸塩以外の化合物を併用する場合、炭酸塩の添加量は、炭酸塩及び炭酸塩以外の化合物[I]の合計100質量%に対して、75質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよい。化合物[II]として炭酸塩及び炭酸塩以外の化合物を併用する場合、炭酸塩の添加量は、炭酸塩及び炭酸塩以外の化合物[II]の合計100質量%に対して、75質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよい。
尚、上記炭酸塩の添加量は、本開示のイオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する方法において好適に用いられるイオン交換性層状珪酸塩中にもともと不純物として含まれる炭酸塩、及び、当該イオン交換性層状珪酸塩をナトリウム型(層間イオンにナトリウムイオンを有するイオン交換性層状珪酸塩)にイオン交換するために用いられる炭酸ナトリウムが含まれる場合、それらも含むものとする。
【0045】
尚、これらの添加量を算出するにあたり、水和水などの単独で液体となる付加物を含む塩の場合は無水物等として計算する。すなわち、水和水の付加物がないものとして計算する。
【0046】
(1.1.5)その他
本開示の製造方法においては、造粒時の形状を改善する目的等でバインダーを添加してもよい。バインダーとしては、例えば、砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
また、スラリーのpH、粘度等を調整する目的で、粘度調整剤を加えてもよい。イオン交換性層状珪酸塩スラリーのpHがスラリーの粘度に影響することは公知であり、これらを調整する目的で上記バインダーの他、硫酸、硝酸、塩酸等の酸や、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを加えてもよい。
また、分散剤や凝集剤として公知の物質を加えてもよく、例えばケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらのバインダー、粘度調整剤、分散剤、凝集剤等は、本開示の製造方法において好適に用いられる化合物[I]及び化合物[II]を含まない。
【0047】
工程(1)において、イオン交換性層状珪酸塩、溶媒、化合物[I]、及び化合物[II]を混合する順序は特に限定されない。例えば、混合順序としては、溶媒に、イオン交換性層状珪酸塩及び化合物[I]と化合物[II]を、逐次又は同時に添加してもよい。また、イオン交換性層状珪酸塩、化合物[I]、及び化合物[II]をそれぞれ溶媒に分散させた後に混合してもよい。バインダーや分散剤、凝集剤、粘度調整剤を加える場合も混合順序に限定はない。
【0048】
また、混合時の温度は、特に限定されない。混合時の温度は、溶媒の沸点未満の温度が好ましく、水を用いる場合は好ましくは0℃~80℃であり、より好ましくは10℃~70℃、さらに好ましくは20℃~60℃である。
混合の方法も特に限定はない。混合方法として、公知の方法を用いることができる。混合方法として、撹拌機、スタティックミキサー等による混合方法が挙げられる。特に分散性を向上させるため、高速撹拌機、メディアミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、薄膜旋回式高速撹拌機等を用いることができる。これら機器を複数組み合わせてもよい。撹拌機、高速撹拌機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーは特に好ましい。
【0049】
工程(1)において調製されたスラリーの粘度は、特に限定されない。スラリーの粘度は、5Pa・s~5000Pa・sでもよく、8Pa・s~3000Pa・sでもよい。ここでの粘度は、B型粘度計(BROOKFIELD製DV-I Viscometer)にて、粘度に応じてLV-1、LV-2、又はLV-3型スピンドルを用い、12rpm、20℃にて測定できる値をいう。
【0050】
(1.2)工程(2)
工程(2)は、上記工程(1)で調製したスラリーを造粒し、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る工程である。
工程(2)では、必要に応じて、乾燥、濃縮、濾過、デカンテーション等の固液分離を行ってもよい。
工程(2)では、造粒と、溶媒との分離と、はそれぞれ別に行ってもよく、又は同時に行ってもよい。造粒や溶媒との分離の方法や順序は特に限定されない。
工程(2)では、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子内に化合物[I]及び[II]を含有させる必要がある。好ましいイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得る方法としては、例えば撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、液中造粒法、乳化造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。好ましくは、噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒、流動層造粒、噴流層造粒、液中造粒、乳化造粒等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒が挙げられる。
【0051】
本開示の製造方法において、噴霧造粒を行う場合、噴霧方式は特に限定されない。噴霧には、例えば、ロータリーアトマイザーや1流体ノズル、2流体ノズル、超音波ノズル等を用いることができる。乾燥媒体も特に限定されない。乾燥媒体は、例えば、窒素、アルゴン、空気が挙げられる。
噴霧乾燥造粒の乾燥媒体を装置に供給する時の温度は、特に限定されない。乾燥媒体の供給時の温度は、分散媒により異なるが、水の例では、70℃~260℃、好ましくは80℃~240℃とすることができる。
【0052】
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の粒子径分布は、特に限定されない。粒子径分布は、アトマイザー、乾燥媒体温度、流量等の製造条件によって調整できる。粒子径分布は、篩や風力分級等の公知の分級技術を用いて調整してもよい。
【0053】
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の平均粒子径は、特に限定されない。平均粒子径は、好ましくは2μm~500μmであり、より好ましくは3μm~200μmであり、さらに好ましくは8μm~100μmであり、最も好ましくは10μm~70μmである。尚、粒子径の定義、測定方法には様々なものがあるが、ここでの平均粒子径は、既述のイオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒子径と同様に、レーザー回折法で測定される、球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径を指す。
【0054】
イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれるアルミニウム原子の量(mol/g)を[Al]とし、マグネシウム原子の量(mol/g)を[Mg]としたとき、[Al/Mg](モル比)が、4.0以上、45.0以下であってよい。下限値としては、4.2以上であってよく、4.5以上であってよく、5.0以上であってよい。上限値としては、40.0以下であってよく、30.0以下であってよく、15.0以下であってよい。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0055】
(1.3)工程(3)
工程(3)は、工程(2)で得られたイオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部を溶出させる工程である。
本開示の製造方法は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に対して適宜化学処理を行うことによって、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子から、金属成分の少なくとも一部をイオン交換性層状珪酸塩複合粒子外に取り除く。この際、イオン交換性層状珪酸塩や化合物[I]、及び化合物[II]の一部又は全部が溶出することによって、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分の少なくとも一部がイオン交換性層状珪酸塩複合粒子外に取り除かれる。
化学処理としては、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に含まれる金属成分を溶出させることができる処理方法を適宜選択して用いることができる。化学処理として、例えば、酸類と接触させる酸処理、塩基類と接触させる塩基処理、塩類と接触させる塩処理、上述の化合物[I]または[II]が溶解する適切な溶媒による溶出処理(洗浄)、その他の化学処理等が挙げられる。これらの化学処理は、それぞれを複数回行ってもよく、複数種の処理を組み合わせてもよい。
中でも、粒子の強度や触媒活性、吸着性能等に影響する比表面積を向上させる点から、酸処理を行うことが好ましく、触媒活性の観点から、酸処理を行った後に、塩基処理、又は塩処理を行うことがより好ましい。また、一般的には、モンモリロナイトを含むスメクタイト族珪酸塩は、酸処理するとアルミニウムやマグネシウムが優先して溶出するが、ケイ素は溶解しにくいことがわかっている。したがって、溶出しうる元素の含量/ケイ素含量の比率について、酸処理前後の値を比較することにより、金属成分の少なくとも一部が溶解したかどうかを確認することができる。
以下、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子と、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化合物[I]及び化合物[II]を溶出させる工程を経たイオン交換性層状珪酸塩粒子を合わせて、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子ということがある。イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子またはイオン交換性層状珪酸塩粒子を意味する。
【0056】
(1.3.1)工程(3)の好適な態様(酸処理)
工程(3)では、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子について酸処理を行うことが好ましい。
酸処理は、化合物[I]及び[II]を溶出させることができる。また酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子中の、化合物[I]及び[II]に由来しない金属成分や不純物を溶出させることができる。さらに酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の層間に存在する陽イオンの交換を行う。酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の結晶構造を構成するAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることで、細孔構造の特性を変化させることができ、比表面積を増大させることができる。酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の酸強度を増大させ、また単位質量当たりの酸点量を増大させることに寄与する。なお、化合物[I]及び[II]は、酸の影響を受けやすく、また、そもそも酸に溶けやすい性質により、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子から溶出する。
【0057】
酸処理で用いられる酸類としては、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等の無機酸、及び有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸がより好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
【0058】
本開示の製造方法におけるイオン交換性層状珪酸塩複合粒子の酸処理は、効率よく均一に反応させる観点から、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を酸類の溶液と接触させる方法が好ましい。
酸類が固体の場合、溶液化するための溶媒としては、特に限定されない。また、酸類がそもそも液体の場合、そのまま用いてもよいし、溶媒を用いて希釈して使用してもよく,この時の溶媒も特に限定されない。溶媒としては、酸処理中に反応を起こさない溶媒が好ましく、水又はメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が好ましく、さらに好ましくは水である。また、これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
酸処理時の酸濃度(酸処理時のスラリー全体の質量に対する酸類の質量百分率)は、特に限定されない。酸濃度は、好ましくは3質量%~50質量%であり、より好ましくは4質量%~40質量%、さらに好ましくは5質量%~30質量%である。
酸処理時の温度は、特に限定されない。温度は、好ましくは30℃~102℃、より好ましくは40℃~100℃、さらに好ましくは50℃~97℃である。
酸処理におけるイオン交換性層状珪酸塩複合粒子の溶媒中の濃度(スラリー中のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子の濃度であって、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を含むスラリー全体を100質量%とする)は、特に限定されない。この濃度は、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%、さらに好ましくは8質量%~20質量%である。
酸処理の時間は、特に限定されない。時間は、好ましくは5分~3000分、より好ましくは10分~1500分、さらに好ましくは30分~750分である。
溶解性化合物、不純物、陽イオン等が溶出する程度は、酸類の種類、酸類の濃度、処理温度、処理時間等を適宜選択して調整できる。
また、酸処理は、1回の処理であっても、複数回に分けた処理であってもよい。
【0060】
(1.3.2)工程(3)の好適な態様(塩基処理)
本開示の製造方法において、工程(3)では、上記「(1.3.1)工程(3)の好適な態様」で記載した酸処理の代わりに、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に塩基処理を行ってもよい。
または、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に、上記「(1.3.1)工程(3)の好適な態様」で記載した酸処理を行った後、さらに、塩基類と接触させる塩基処理を行ってもよい。
塩基処理は、化合物[I]及び[II]や不純物を溶出させることができ、またイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の層間に存在する陽イオンの交換を行う。塩基処理は、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の結晶構造を構成するAl、Fe、Mg、さらにはSi等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることで、細孔構造の特性を変化させることができ、比表面積を増大させることができる。なお、化合物[I]及び[II]は、塩基の影響を受けやすく、また、そもそも塩基に溶けやすい性質により、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子から溶出する。
【0061】
塩基処理で用いられる塩基類とは、ブレンステッド塩基として働く物質であれば、特に限定されない。塩基類は、プロトンと反応して水を発生する(中和反応)性質を持つ物質である。塩基類は、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期表第3~14族の金属からなる群から選ばれる金属の水酸化物が挙げられる。塩基類は、より好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Pbの水酸化物であり、さらに好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Zn、Alの水酸化物である。
塩基類の好ましい具体例として、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、RbOH、Be(OH)、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Mn(OH)、Cu(OH)、Cu(OH)、Zn(OH)、Al(OH)、Sn(OH)、Pb(OH)、Ni(OH)、LiCO、NaCO、KCO、CsCO、RbCO、BeCO、MgCO、CaCO、MnCO、CuCO、Al(CO)、ZnCO、PbCO、LiHCO、NaHCO、RpHCO、CsHCO、Ca(HCO、Mg(HCO等が挙げられる。塩基類は、これらの具体例に限定されない。
塩基類は、単独で用いても複数で用いてもよい。使用方法は、特に制限されない。
イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子と接触させる際の塩基類の状態は、溶媒に溶解させた状態であっても、固体のままでもよい。溶媒に溶解させて接触させる場合は、その濃度に制限はなく、上限としては、飽和する濃度以下であることが好ましい。
【0062】
塩基処理は、効率よく均一に反応させる観点から、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子と塩基類の溶液とを接触させる方法であってもよい。塩基処理が、酸処理を経た後に行われる場合は、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子のスラリーと塩基とを接触させる方法であってもよい。
塩基類が固体の場合、溶液化するための溶媒としては、特に限定されない。また、塩基類がそもそも液体の場合、溶媒を用いて希釈して使用してもよく,この時の溶媒も特に限定されない。さらに、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子のスラリー化のための溶媒としても、特に限定されない。溶媒としては、水、又はアルコール等の有機溶媒などが挙げられ、好ましくはエタノール、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、水であり、より好ましくは水である。また、これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
塩基類の使用量は、塩基処理前のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子のスラリーが含有している酸の量や、その処理目的によっても異なる。酸処理を経た後に行う塩基処理の場合、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子のスラリーのpHは、塩基類の添加後から塩基処理終了時点まで8以下であり、かつ塩基処理終了時点において4.5~8となる量を使用することが好ましい。このときの塩基処理は水を溶媒として用いる。
【0064】
塩基処理時の温度は、特に限定されない。温度は、好ましくは-20℃~120℃、より好ましくは0℃~105℃、さらに好ましくは10℃~80℃である。
塩基処理時の溶液中の塩基類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは2質量%~30質量%、さらに好ましくは3質量%~20質量%である。このときの濃度とは、塩基処理の溶液全体の質量に対する塩基類の質量百分率をいう。
塩基処理の時間は、特に限定されない。時間は、好ましくは1分~600分、より好ましくは5分~300分、さらに好ましくは10分~120分である。
溶解性化合物、不純物、陽イオン等が溶出する程度は、塩基類の種類、塩基類の濃度、処理温度、処理時間等を適宜選択して調整することができる。
また、塩基処理は、1回の処理であっても、複数回に分けた処理であってもよい。
【0065】
(1.4)その他の化学処理
本開示の製造方法おいては、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子に、酸処理、塩基処理の他に、その他の化学処理を行ってもよい。
あるいは、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子に酸処理及び塩基処理の少なくとも一つの処理を行った後、さらにその他の化学処理を行ってもよい。
【0066】
その他の化学処理としては、塩類、酸化剤、還元剤、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の層間にインターカレーションし得る化合物などを含有する処理剤との接触処理や溶媒による洗浄等が挙げられる。
インターカレーションとは、層状物質の層間に別の物質を導入することをいい、導入される物質をゲスト化合物という。
また、インターカレーションや塩類による化学処理(塩処理)では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることもできる。すなわち、嵩高いイオンが層状構造を支える支柱的な役割を担っており、ピラーと呼ばれる。以下に、処理剤の具体例を示す。
【0067】
塩処理に使用する塩類としては、有機陽イオン、及び、金属イオンを含む無機陽イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、及び、ハロゲン化物イオンを含む無機陰イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。例えば、周期表第1~14族から選択される少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アニオンが無機ブレンステッド酸やハロゲンからなる化合物である。
【0068】
有機陽イオンの例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,5-ペンタメチルアニリニウム、N,N-ジメチルオクタデシルアンモニウム、オクタドデシルアンモニウム、N,N-2,4,5-ペンタメチルアニリニウム、N,N-ジメチル-p-n-ブチルアニリニウム、N,N-ジメチル-p-トリメチルシリルアニリニウム、N,N-ジメチル-1-ナフチルアニリニウム、N,N,2-トリメチルアニリニウム、2,6-ジメチルアニリニウム等のアンモニウム化合物に由来する陽イオン、ピリジニウム、キノリニウム、N-メチルピペリジニウム、2,6-ジメチルピリジニウム、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニウム等の含窒素芳香族化合物に由来する陽イオン、ジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム、ジフェニルオキソニウム、フラニウム、オキソラニウム等のオキソニウム化合物に由来する陽イオン、トリフェニルホスホニウム、トリ-o-トリルホスホニウム、トリ-p-トリルホスホニウム、トリメシチルホスホニウム等のホスホニウム化合物に由来する陽イオン、ホスファベンゾニウム、ホスファナフタレニウム等の含リン芳香族化合物に由来する陽イオン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
陰イオンの例としては、上に例示した陰イオン以外にも、ホウ素化合物、リン化合物からなる陰イオン、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
塩類の具体例としては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、LiNO、Li(OOCCH)、NaCl、NaBr、NaSO、Na(PO)、NaNO、Na(OOCCH)、KCl、KBr、KSO、K(PO)、KNO、K(OOCCH)、CaCl、CaSO、Ca(NO、Ca(C、Ti(OOCCH、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、TiBr、TiI、Zr(OOCCH、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、ZrBr、ZrI、ZrOCl、ZrO(NO、ZrO(ClO、ZrO(SO)、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI、CuCl、CuBr、Cu(NO、CuC、Cu(ClO、CuSO、Cu(OOCCH、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、nBr、ZnI、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、Sn(OOCCH、Sn(SO、SnF、SnCl等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの塩類は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本開示の製造方法おいて、その他の化学処理としてはリチウムイオンを含む塩類による塩処理であることが好ましい。
【0070】
さらに酸類、塩基類、酸化剤、還元剤、イオン交換性層状珪酸塩の層間にインターカレーションする化合物等と組み合わせて用いてもよい。
これらの組み合わせは処理開始時に添加する処理剤に組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤に組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上述の塩処理は、適当な溶剤を使用し、そこに処理剤を溶解させて処理剤溶液としてもよいし、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。
使用できる溶媒としては、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。この中でも、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類であってよく、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、エーテル類であってよく、特に好ましくは水、アルコール類であってもよい。
また、処理剤溶液中の処理剤濃度は、溶液質量に対して0.1質量%~100質量%が好ましく、より好ましくは5質量%~50質量%である。処理剤濃度がこの範囲内であれば処理に要する時間が短くなり効率的に生産が可能になるという利点がある。
【0072】
塩類の使用量は、塩処理前のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子のスラリーが含有している酸の量や、その処理目的によっても異なるが、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子1gに対して、0.01mmol~100mmolであってよく、0.05mmol~70mmolであってよく、0.1mmol~50mmolであってもよい。
【0073】
塩処理時の温度は、特に限定されない。温度は、-20℃~120℃であってよく、0℃~105℃であってよく、10℃~80℃であってもよい。
塩処理時の溶液中のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の溶媒中の濃度(スラリー中のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の濃度であって、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子を含むスラリー全体を100質量%とする)は、特に限定されない。この濃度は、3質量%~50質量%であってよく、5質量%~30質量%であってよく、8質量%~20質量%であってよい。
塩処理の時間は、特に限定されない。時間は、1分~600分であってよく、5分~300分であってよく、10分~120分であってもよい。
また、塩処理は、1回の処理であっても、複数回に分けた処理であってもよい。
【0074】
また、化学処理として、溶媒による洗浄を行うことが好ましい。洗浄は、溶解性が高い化合物や不純物を溶出させることができる。洗浄は、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行うほか、上述の酸類、塩基類、塩類での処理時に残存する酸類、塩基類、塩類や溶媒を取り除くことができる。
【0075】
洗浄に使用する溶媒は、例えば、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。溶媒は、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類であってよく、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、エーテル類であってよく、水、アルコール類及びこれらの混合溶媒であってよく、水であってもよい。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
また、洗浄時の温度は、特に限定されない。洗浄時の温度は、0℃~100℃であってよく、50℃~95℃であってよく、10℃~60℃であってよい。
洗浄時のイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の濃度に特に制限はないが、溶液質量に対して3質量%~50質量%であってよく、5質量%~40質量%であってよく、8質量%~30質量%であってよい。
洗浄の時間は、特に限定されない。洗浄の時間は、1分~3000分であってよく、3分~1500分であってよく、5分~750分であってよい。
【0076】
「(1.4)その他の化学処理」の欄に記載の化学処理及び洗浄において、溶媒とイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子を分離する固液分離の方法は、特に限定されない。固液分離の方法は、例えば、沈降分離、濾過分離、遠心力を利用した遠心沈降分離、遠心濾過等が挙げられる。これらは複数回行ってもよく、また複数の方法を組み合わせてもよい。
洗浄率としては、1/5~1/10000であってよく、1/10~1/1000であってもよい。ここで洗浄率とは洗浄開始時における溶媒の残存比率を表す。例えば、100Lの溶媒と固体分とを接触させ、その後90Lの溶媒を取り除くことにより洗浄を行った場合、洗浄率は(100-90)/100=1/10となる。
また、残存するイオン量を示す上澄み液の電気伝導度が1000mS/cm以下であってよく、100mS/cm以下であってよく、10mS/cm以下であってよく、1mS/cm以下になるまで洗浄してもよい。
【0077】
(1.5)その他の工程
本開示の製造方法において、工程(3)の後に、他の工程を行ってもよい。例えば、工程(3)の後に、得られたイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子を乾燥することが好ましい。
乾燥方法は、特に限定されない。乾燥方法は、各種方法を採用できる。乾燥は、イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の構造破壊を起こさないように行うことが好ましい。
乾燥温度は、一般的には、100℃~800℃であってよく、150℃~600℃で実施可能であり、180℃~300℃であってもよい。
乾燥時間は、通常1分~24時間、5分~4時間であってもよい。
乾燥時の雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であってもよい。
【0078】
イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子は、構造破壊されなくても、乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えてもよい。
イオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子をオレフィン重合触媒の成分として用いる場合は、除去した後の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0質量%とした時、3質量%以下であってよく、1質量%以下であってもよい。
【0079】
(2)イオン交換性層状珪酸塩粒子の特徴
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、下記特性(i)~(viii)を有していてもよい。
【0080】
(2.1)比表面積(特性(i))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、比表面積が250m/g~700m/gであってもよい。比表面積の下限値は280m/g以上であってよく、300m/g以上であってよく、330m/g以上であってよく、400m/g以上であってもよい。上限値は600m/g以下であってよく、550m/g以下であってよく、500m/g以下であってもよい。上限値と下限値は任意の組合せを採用できる。
一般的に比表面積が増大すると、触媒の活性成分量が増加する、または活性成分を担持できる量が増大するため、活性が高くなる。一方で、比表面積が大きすぎると細孔径が小さくなることがあり、これによってモノマーやメタロセン錯体等の反応基質の拡散速度の低下等が引き起こされて、触媒としての活性の低下や吸着材としての吸着性能の低下を招くことがある。よって、これらの観点から、比表面積の上述の好ましい範囲が選択される。
本開示における比表面積とは、ガス吸着法において窒素ガスを用いて測定した吸着等温線データより、BET多点法解析(Rouquerol変換)によって算出された値を指す。ガス吸着法による比表面積の測定方法については、例えばJIS Z8830に解説されている。
【0081】
(2.2)細孔容積I(特性(ii))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、水銀圧入法で測定した細孔直径10nm~300nmにおける細孔容積が0.128mL/gを超え、0.600mL/g以下であってもよい。
上記細孔容積は下限値が、0.135mL/g以上であってよく、0.150mL/g以上であってよく、0.180mL/g以上であってよく、0.190mL/g以上であってよく、0.230mL/g以上であってもよい。上限値は0.550mL/g以下であってよく、0.500mL/g以下であってよく、0.329mL/g以下であってもよい。上限値と下限値は任意の組合せを採用できる。
上記細孔容積は、主に化合物[I]の溶出跡に由来する細孔の影響を反映すると考えられる。イオン交換性層状珪酸塩粒子は、上記細孔容積が上記の範囲内であると、モノマーやメタロセン錯体等が反応基質のイオン交換性層状珪酸塩粒子内部へ拡散する速度が大きくなると推測される。さらに、粒子強度が適度に低下するため、重合中に生成するポリマー内にて担体の分散崩壊が必要と考えらえるオレフィン重合触媒において重合活性が向上すると考えられる。また、これらの作用から、ポリマー製品中のフィッシュアイを低減できると考えられる。さらに、適度な粒子強度を有することから重合中に触媒の破砕等が生じにくいため、微粉や塊の発生が抑制され、プラント運転性能も安定する。よって、以上の観点から、上記細孔容積は、上述の範囲が選択される。
尚、本明細書における水銀圧入法で測定した細孔容積とは、JIS R 1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔分布試験方法」に準拠して水銀圧入法に基づき測定される値であり、かつ昇圧(水銀侵入)側の細孔分布より算出した値である。具体的な測定手法については実施例に示した。
【0082】
尚、イオン交換性層状珪酸塩粒子の細孔の形状は、細孔の開口部(入り口)よりも奥側の部分の径が大きくなった形状、言い換えればインクボトル型の形状となっていることが想定される。これは、以下の事実から推測される。
本開示の製造方法において観察される現象を用いて説明する。例えば、イオン交換性層状珪酸塩と、平均粒子径0.3μm~100μmの化合物[I]を混合した複合粒子を形成後、複合粒子から化合物[I]を溶出させ、細孔構造を制御することでイオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する。この場合には、水銀圧入法による細孔分布測定では、化合物[I]の溶出跡に相当する直径0.3μm~100μm前後の細孔が検出されると考えられる。しかし、実際には添加した化合物[I]の直径よりも小さい細孔、すなわち10nm~300nmの範囲の細孔の増加が検出される。この事実から、細孔はインクボトル型の形状となっており、水銀圧入法による細孔分布測定では、インクボトル型の形状の細孔の開口部の径が観察されているものと推測される。すなわち、化合物[I]溶出跡に相当する細孔がインクボトル型の細孔となっており、実際の細孔径よりも小さい細孔が見かけ上、測定されていると考えられる。このように、本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、粒子内部に比較的大きい細孔を有しながらも、この細孔の入口径が小さいことで、粒子表面は適度な強度を保持し、重合中でも粒子表面からの崩壊が抑制されるため、プラントの運転安定性に貢献できると考えられる。また、インクボトル型の細孔であるため、一度細孔内に入ったモノマーやメタロセン錯体は、粒子内部から外部へ流出しにくくなり、効率よくモノマーを吸収し、かつメタロセン錯体を効率的に担持して、触媒の高活性化に寄与すると推定される。特開平2-261837号公報には、細孔内に入ったモノマーやメタロセン錯体を外部に流出しにくくする参考技術が開示されている。
【0083】
(2.3)含有原子比率([Al]/[Si])(特性(iii))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子としては、助触媒兼担体としての用途を鑑みると、ケイ素原子の含有量(mol/g)を[Si]とし、アルミニウム原子の含有量(mol/g)を[Al]としたとき、以下の式(1)を満たしていてもよい。

式(1): 0.10≦([Al]/[Si])≦0.30

式(1)の左辺は、0.11であってよく、0.13であってよく、0.15であってよく、0.16であってよく、0.18であってもよい。式(1)の右辺は、0.28であってもよく、0.27であってもよく、0.26であってもよい。左辺と右辺は任意の組合せを採用できる。[Al]/[Si]がこの範囲にあると,適度な細孔容積及び比表面積を有し,その結果、活性点が多くなり,高活性で、良好な品質の製品が得られると考えられる。
【0084】
(2.4)細孔容積II(特性(iv))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径2nm~10nmの細孔容積(PV(2-10))の総和が、全メソ孔容積(PV(2-50))に対して40%~96%であってもよい。
上記全メソ孔容積(PV(2-50))に対する直径2nm~10nmの細孔容積(PV(2-10))の総和の割合(PV(2-10)/PV(2-50))は、下限値が45%以上であってよく、50%以上であってよく、60%以上であってよく、80%以上であってもよい。上限値が95%以下であってもよく、94%以下であってもよく、93%以下であってもよく、92%以下であってもよい。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
直径の小さい細孔の割合が増えると、比表面積が大きくなり、触媒の活性点数を増加させることができる。しかしながら、直径の小さい細孔の割合が増えすぎると、モノマー等の反応基質の拡散速度の低下や粒子強度の過度の上昇を招いてしまう。その結果,重合中に担体の崩壊過程が必要なオレフィン重合触媒では重合活性が低下する。この特性(iv)は、主に化合物[II]の溶出跡に由来する細孔の影響を反映すると考えられる。
【0085】
ここで、メソ孔とはIUPACでの定義と同様に、直径が2nm~50nmの細孔を表す。細孔径及び細孔容積の測定方法には様々な方法が知られている。しかしながら、本開示における細孔径及び細孔容積は、窒素を用いたガス吸脱着法により測定された脱着等温線のデータより、BJH法によって算出されたものを指す。
ガス吸脱着法による細孔容積測定については例えばJIS Z8831-2、ISO15901-2に解説されており、市販の装置による測定が可能である。本開示ではガスとして窒素を用い、試料を200℃、真空下(1.3Pa以下)で2時間減圧加熱した後、77Kで測定することによって得られた脱着等温線のデータを用いる。細孔容積は吸着等温線からも算出することができる。しかしながら、多孔性物質では、脱着等温線のデータから算出された細孔分布と吸着等温線のデータから算出された細孔分布が一致しないことが多い。これは実際の測定時間内では熱力学的平衡状態に達しないこと、キャビテーションやポアブロッキング等の影響と考えられている。インクボトル型の細孔を仮定した場合、脱着等温線から得られる細孔分布はボトルのネック部分の細孔径に影響されているとされる。
【0086】
多孔性物質を触媒または触媒成分として用いる場合を考えると、反応基質もこの"ネック部分"による影響を受けると推定される。したがって脱着等温線から得られる細孔分布は触媒の性能を間接的に表すものと考えられることから、本開示では脱着等温線から得られる細孔分布を基準とした。
脱着等温線データから細孔分布を算出する方法については、具体的には後述の実施例に記載の方法を採用することができる。
【0087】
(2.5)細孔容積III(特性(v))
また、本開示の製造方法より得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、窒素吸脱着法により測定された脱着等温線からBJH法によって算出された細孔分布曲線において、直径が10nmを超えて50nm以下の細孔の細孔容積の総和{(PV(2-50)-PV(2-10)}が、0.020mL/g~0.230mL/gであってもよい。下限値は0.022mL/g以上であってよく、0.025mL/g以上であってよく、0.030mL/g以上であってよく、は0.035mL/g以上であってよく、よりさらに好ましくは0.040mL/g以上であってもよい。上限値は0.150mL/g以下であってよく、0.100mL/g以下であってよく、0.080mL/g以下であってもよい。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。直径が10nmを超えて50nm以下の細孔は主に化合物[II]の溶出によって形成される細孔に相当すると考えられる。この大きさ細孔の細孔容積の総和{(PV(2-50)-PV(2-10)}が、上記範囲内である場合、より高い効果が得られると考えらえる。脱着等温線データから細孔分布を算出する方法については、特性(iv)の方法と同様で、後述の実施例に記載の方法を採用することができる。
【0088】
(2.6)金属原子比率([Al]/[Mg]等)(特性(vi))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、助触媒兼担体としての用途を鑑みると、さらに、マグネシウム原子の含有量(mol/g)を[Mg]としたとき、前記[Si]、前記[Al]及び前記[Mg]が、以下の式(2)を満たしていてもよい。

式(2):-3.0×([Al]/[Si])+3.9≦([Al]/[Mg])
≦-3.0×([Al]/[Si])+5.8

式(2)の左辺は、-3.0×([Al]/[Si])+4.0であってよく、-3.0×([Al]/[Si])+4.1であってよく、-3.0×([Al]/[Si])+4.2であってよく、-3.0×([Al]/[Si])+4.3であってよく、-3.0×([Al]/[Si])+4.4であってもよい。式(2)の右辺は、-3.0×([Al]/[Si])+5.4であってよく、-3.0×([Al]/[Si])+5.2であってよく、-3.0×([Al]/[Si])+5.0であってもよい。左辺と右辺は任意の組合せを採用できる。
【0089】
[Al]/[Mg]が式(2)の左辺よりも小さい場合には、以下の理由から触媒活性の低下が懸念される。例えば、上記酸処理において溶出したマグネシウムイオン(Mg2+)の濃度が反応系中で高くなると、イオン交換性層状珪酸塩の端面に形成された酸点へのMg2+の再吸着が起こることが想定される。その結果、アルミニウム原子を中心に構成される酸点が、マグネシウム原子を中心に構成される酸強度が小さい酸点になってしまうことで、結果としてメタロセン錯体を活性化できない活性点となり、触媒活性が低下するおそれがある。
従って、本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子では、Mg2+の再吸着が抑制されるように、上記式(2)を満たしていてもよい。
【0090】
また、カルシウムイオンについても酸点への吸着や、上述の塩処理においてカルシウム以外の陽イオンへの交換を阻害するおそれがある。カルシウム含有量は、下限値が0.000mmol/g以上であってよく、0.100mmol/g以下であってよく、0.001mmol/g以上であってもよい。上限値が0.070mmol/g以下であってもよく、0.050mmol/g以下であってもよく、0.030mmol/g以下であってもよい。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0091】
また、鉄原子の含有量(mol/g)を[Fe]としたとき、ケイ素原子に対する鉄原子のモル比([Fe]/[Si])は、イオン交換性の点から、0.000~0.045であってよく、0.001~0.035であってよく、0.010~0.030であってよく、0.012~0.025であってもよい。
また、ケイ素原子に対するマグネシウム原子のモル比([Mg]/[Si])は、イオン交換性の点から、0.018~0.091であってよく、0.028~0.085であってよく、0.041~0.075であってよく、0.044~0.065であってもよい。
【0092】
(2.7)粒子径(特性(vii))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子の粒子径は、特に限定されない。上記平均粒子径は、2μm~500μmであってもよい。上記平均粒子径の下限値は3μm以上であってよく、8μm以上であってよく、10μm以上であってもよい。上限値は200μm以下であってよく、100μm以下であってよく、70μm以下であってよく、60μm以下であってよく、55μm以下であってもよい。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
一般的に、粒子径が小さすぎると吸着材や脱色剤として使用した場合には、濾過等の固液分離時の効率低下、触媒担体として用いた場合には反応器内への付着や配管、フィルター閉塞の原因となる可能性がある。一方で、粒子径が大きすぎると吸着材や脱色剤、触媒担体として用いた場合に液中(スラリー状態)や気相反応時の分散不良等を引き起こす可能性がある。
ここで、上記平均粒子径は、堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率実数項1.490、虚数項0.000、分散溶媒屈折率実数項1.360の条件で測定される、球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径のことをいう。
【0093】
(2.8)平均圧壊強度(特性(viii))
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子の平均圧壊強度は、特に限定されない。この平均圧壊強度は、触媒担体としての用途を鑑みると、平均圧壊強度は適切な範囲に保つことが好ましい。
単一粒子の圧壊強度の測定方法としては、JIS R 1639-5:2007 単一か粒圧壊強さ等に記載の方法で測定することができる。具体的には後述の実施例に記載の測定方法で測定することができる。
上記平均圧壊強度は、1.0MPa~25.0MPaであってよい。下限値が3.0MPa以上であってよく、5.0MPa以上であってもよい。上限値が20.0MPa以下であってもよく、15.0MPa以下であってもよく、13.5MPa以下であってもよい。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
平均圧壊強度が上記範囲であれば、触媒調製時等における粒子の破壊の抑制、微粉発生の抑制が可能であり、オレフィン重合触媒用担体として適した性能を示すと考えられる。
【0094】
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、上記「(1.4)その他の化学処理」も経る場合、さらに下記特性(ix)を有していてもよい。
(2.9)リチウム原子含有量(特性(ix))
本開示の製造方法から得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、工程(3)以降に上記「(1.4)その他の化学処理」工程においてリチウムイオンを含む化合物を使用した塩処理を行うことで、リチウム原子を含んでいてもよい。リチウム原子の含有量について特に制限はない。リチウム原子の含有量は、触媒活性の観点から、0.10mmol/g~5.00mmol/gであってもよい。リチウム原子の含有量は、下限値が0.30mmol/g以上であってよく、0.40mmol/g以上であってよく、0.43mmol/g以上であってもよく、0.45mmol/g以上であってもよく、0.50mmol/g以上であってもよい。また、上限値が3.00mmol/g以下であってよく、2.00mmol/g以下であってよく、1.00mmol/g以下であってもよい。上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。リチウム原子含有量が上記範囲にある場合、効果が高くなると考えられる。
なお、上記の各成分は、後述の方法にて求めることができる。
【0095】
(3)イオン交換性層状珪酸塩粒子の用途
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、特定の細孔分布及び比表面積を有することから、オレフィン重合触媒の担体、有機化学反応の触媒、石油や油脂類の脱水、脱色、精製や、乾燥材、吸着材、漂白剤等に広く用いられる。
【0096】
3.オレフィン重合用触媒成分の製造方法
オレフィン重合用触媒成分の製造方法は、上述の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いる。
オレフィン重合用触媒成分は、上述の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子を含む。
オレフィン重合用触媒成分は、オレフィン重合又は共重合の触媒成分として使用できる。イオン交換性層状珪酸塩粒子は、触媒担体、助触媒等として機能する。
本開示の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子をオレフィン重合用触媒成分として用いると、高い重合活性でオレフィン重合体を製造できる。
【0097】
本開示の製造方法により得られるオレフィン重合用触媒成分を使用する方法は、特に限定されるものではない。使用方法としては、例えば、特開2002-053611号公報、特開2009-280443号公報等に記載の方法が挙げられる。
中でも、後述のオレフィン重合用触媒のように用いると、触媒性能が向上しやすい。
【0098】
4.オレフィン重合用触媒の製造方法
本開示のオレフィン重合用触媒の製造方法は、下記成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を混合(接触)させることを特徴とする。
成分[A]:上述の製造方法により得られるイオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0099】
(1)各成分
(1.1)成分[A]
成分[A]は、上述のイオン交換性層状珪酸塩粒子である。イオン交換性層状珪酸塩粒子の詳細な説明は、「2.イオン交換性層状珪酸塩粒子製造方法、及びイオン交換性層状珪酸塩粒子の特徴」の欄の説明と同様であり、この欄の記載をそのまま適用する。
【0100】
(1.2)成分[B]
成分[B]は、遷移金属化合物である。遷移金属化合物の内でも周期表第4族の遷移金属化合物が好ましい。周期表第4族の遷移金属化合物の一例として、共役五員環配位子を少なくとも一個有するメタロセン化合物が挙げられる。この遷移金属化合物として、下記一般式(1)~(4)で表される化合物が好適に例示される。
【0101】
【化1】

[上記一般式(1)~(4)中、A及びA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてA及びA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、
Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期表第4族から選ばれる金属原子を示し、X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びYは、同一でも異なっていてもよい。)を示す。]
【0102】
A及びA’の共役五員環配位子としては、例えば、シクロペンタジエンやインデン、テトラヒドロインデン、フルオレン、アズレン、テトラヒドロアズレンから誘導される置換基が挙げられ、これらは非置換でもよく、置換されていてもよい。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基、又はアズレニル基である。
【0103】
共役五員環配位子上の置換基としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~30の炭化水素基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンが置換した炭素数1~30の炭化水素基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1~12のアルコキシ基、例えば、-Si(R)(R)(R)で示される珪素含有炭化水素基、-P(R)(R)で示されるリン含有炭化水素基、または-B(R)(R)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。
上述のR、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1~24、好ましくは炭素数1~18のアルキル基を示す。
また、共役五員環配位子上の置換基としては、少なくとも1つの第15~16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有してもよく、このような置換基として好ましくは、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択されるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式置換基が挙げられ、さらに好ましくは置換していてもよいヘテロ芳香族化合物から誘導される置換基であり、特に好ましくは置換していてもよいフリル基、置換していてもよいチエニル基が挙げられる。一般式(2)又は(4)で表される架橋基をもつ化合物の場合、これらの置換基は、特に制限はないが、共役五員環配位子上のα位(架橋基との結合部位を基準とする)にあることが好ましい。
【0104】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
Q及びQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
<1>メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
<2>ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル-t-ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基、シラシクロブチレン基等のシリレン基類
<3>炭化水素基で置換されたゲルマニウム原子、リン原子、窒素原子、ホウ素原子あるいはアルミニウム原子
【0105】
さらに具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)B、(C)Al、(CO)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類、又は、シリレン基類である。
【0106】
また、Mは、遷移金属原子を表し、特に周期表第4族から選ばれる遷移金属原子を示し、例を挙げるならば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子又はイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子又はイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Z及びZ’の好ましい具体例としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の酸素含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のイオウ含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の窒素含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のリン含有炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基が挙げられ、Zの好ましい具体例としては、水素原子、塩素原子、臭素原子が更に追加される。
【0107】
X及びYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のケイ素含有炭化水素基である。
XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、及び炭素数1~12のアミノ基が特に好ましい。
【0108】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1-n-ブチル-3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1-メチル-3-トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1-メチル-3-トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1-メチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2-メチル-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0109】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-イソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4H-アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1-{2-メチル-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1-[2-エチル-4-(2-フルオロ-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1-[2-メチル-4-(2’,6’-ジメチル-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-7-フルオロ-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-インドリル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1-{2-エチル-4-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0110】
(21)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン-1,2-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3-(2-フリル)-2,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-3,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-メチル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-トリメチルシリル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2-(2-チエニル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2-(2-(5-メチル)フリル)-4-フェニルインデニル][2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3-ジメチル-5-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5-ジメチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(40)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0111】
(41)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(42)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウジクロリドム、
(43)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(44)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(45)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(46)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(47)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(48)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(49)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(50)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(51)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(52)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(53)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(54)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(55)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(56)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(57)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(58)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(59)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(60)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0112】
(61)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(62)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(63)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(64)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(65)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(66)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(67)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(68)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(69)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(70)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(71)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(72)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(73)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(74)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(75)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(76)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(77)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(78)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(79)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(80)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
【0113】
(81)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(82)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(83)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(84)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(85)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(86)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(87)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(88)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(89)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(90)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2,5-ジメチル-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(91)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(92)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(93)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(94)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(95)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(96)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(97)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(98)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(99)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(100)ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、
(101)ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0114】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2-メチルインデニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3、6-ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2、6-ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0115】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2-メチルインデニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0116】
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウムは、ハフニウム又はチタニウムに、チタニウムは、ハフニウム又はジルコニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0117】
本開示における遷移金属化合物としては、一般式(2)で示される化合物が好ましい。
尚、メタロセン化合物は、1種類を用いることも、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0118】
2種類以上を併用して用いる場合は、上記一般式(1)~(4)のうちいずれか1つの一般式に含まれる化合物群の中から2種類以上を選ぶことができる。また、1つの一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる1種又は2種以上と他の一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる1種又は2種以上とを選ぶこともできる。
【0119】
(1.3)成分[C]
成分[C]は、有機アルミニウム化合物である。
成分[C]としては、一般式(AlR3-nで表される有機アルミニウム化合物が好適に使用される。式中、Rは炭素数1~20のアルキル基を表し、Xはハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1~3の、mは1~2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0120】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。
さらに好ましくは、Rが炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0121】
(2)混合方法等
混合(接触)方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。
また、この混合は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。これらの混合において混合を充分に行うため溶媒を用いてもよい。

1)成分[B]と成分[A]を混合した後に成分[C]を混合する
2)成分[B]と成分[C]を混合した後に成分[A]を混合する
3)成分[A]と成分[C]を混合した後に成分[B]を混合する
その他、三成分を同時に混合してもよい。
【0122】
好ましい混合方法は、上記4)の成分[A]と成分[C]を混合した後、未反応の成分[C]を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分[C]を混合し、その後、成分[B]を混合する方法である。
【0123】
成分[C]のAlと成分[B]の遷移金属(M)のモル比(Al/M)は0.1~1,000であってよく、1~100であってよく、4~50であってよい。
【0124】
混合温度に特に制限はないが、0℃~100℃であってよく、10℃~80℃であってよく、20℃~60℃であってもよい。
【0125】
溶媒としては有機溶媒が好ましく、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素、後述のオレフィンがより好ましい。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
溶媒中の成分[B]の濃度についても制限はないが、3mM~50mMであってよく、4mM~40mMであってよく、6mM~30mMであってもよい。
成分[B]の使用量は、成分[A]1gにつき0.001mmol~10mmolであってよく、0.001mmol~1mmolであってもよい。
【0126】
本開示のオレフィン重合用触媒は、エチレン又はα-オレフィンを接触させて少量重合する予備重合処理を行っていてもよい。
使用するα-オレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にエチレン、プロピレンを使用することが好ましい。
エチレンまたはα-オレフィンの供給方法は、エチレンまたはα-オレフィンを反応槽に定速的に又は定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が採用される。
【0127】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分~24時間の範囲であってもよい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分[A]1質量部に対し、0.01質量部~100質量部であってよく、0.1質量部~50質量部であってもよい。
予備重合温度は特に制限はないが、0℃~100℃であってよく、10℃~70℃であってよく、20℃~60℃であってよく、30℃~50℃であってもよい。
予備重合は有機溶媒等の液体中で行うことが好ましい。予備重合において使用する溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素、後述のオレフィンがより好ましい。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。また、各成分を混合させたときの溶媒をそのまま用いてもよい。
予備重合時の固体触媒の濃度は、特に限定されないが、10g/L~300g/Lであてよく、20g/L~200g/Lであってよく、25g/L~150g/Lであってよい。
【0128】
各成分の混合後及び予備重合後に、オレフィン重合用触媒は乾燥してもよい。
乾燥方法は特に限定されないが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥等が例示され、これらの方法を単独で用いてもよいし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
乾燥工程において触媒を撹拌、振動、流動させてもよいし、静置させてもよい。
【0129】
さらに、上記各成分の混合の際、又は混合の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の重合体やシリカ、チタニア等の無機酸化物固体を共存させることも可能である。また、各種の界面活性剤、帯電防止剤やオレフィン重合触媒においてドナーとして知られるアルコキシシラン、アミノシラン、エーテル、フタル酸エステル、カルボン酸エステル等を加えることもできる。
【0130】
5.オレフィン重合体の製造方法
本開示のオレフィン重合体の製造方法は、上述の製造方法により得られるオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィン重合を行うことを特徴とする。
本開示においては、「オレフィン重合体」という文言には、「オレフィン共重合体」も含まれる。オレフィン共重合体も含まれることを示すために、「オレフィン(共)重合体」と記載する場合もある。すなわち、オレフィン(共)重合体は、単独重合体及び共重合体の少なくとも一方を意味する。
オレフィン(共)重合体の製造方法は、好ましくは、本開示の製造方法から得られるオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを単独重合又は共重合する。すなわち、この製造方法では、少なくとも1種のオレフィンを重合、又は2種類以上オレフィンを共重合させる。
【0131】
共重合の場合、反応系中の各オレフィンモノマーの量比は、経時的に一定である必要はない。各モノマーを一定の混合比で供給してもよい。また、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させてもよい。また、共重合反応比を考慮して、モノマーのいずれかを分割して添加してもよい。
【0132】
重合し得るオレフィンとしては、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7-メチル-1、7-オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくはエチレンまたは炭素数3~8のα-オレフィンであり、さらに好ましくはエチレン、プロピレンである。
【0133】
共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、上述のオレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のオレフィンを1種、又は2種以上選択して用いることができる。好ましいコモノマーの主成分はプロピレンである。
【0134】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に使用せずにプロピレンなどのモノマーを溶媒として用いる方法、溶液重合法、又は実質的に液体溶媒を使用せず各モノマーをガス状に保つ気相法等が採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
【0135】
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
重合温度は、特に限定されないが、通常、0℃~150℃である。
【0136】
また、分子量調節剤として水素を用いてもよい。また、反応量を調節するために、酸素やアルコール等の触媒を失活させる作用のある化合物を供給してもよいし、運転性を改善する等の目的で、酸素、アルコール、アルコキシシラン、界面活性剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
重合圧力は、特に限定されないが、0kg/cm~2000kg/cmG(≒0MPaG~196.14MPaG)、好ましくは0kg/cm~60kg/cmG(≒0MPaG~5.88MPaG)が適当である。
【0137】
本開示のオレフィン(共)重合体の製造方法によって得られるオレフィン(共)重合体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体とエチレン-α-オレフィン系ランダム共重合体とのブロック共重合体などが好適に挙げられる。
【実施例0138】
次に本開示を実施例によって具体的に説明するが、本開示はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。尚、本実施例における測定法は次の通りである。
【0139】
1.各種物性測定法
(1)イオン交換性層状珪酸塩及びイオン交換性層状珪酸塩(複合)粒子の組成分析
JIS R2212に準拠して検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量した。
装置は、リガク社製ZSX Primus IVを使用した。
試料は、1050℃で1時間焼成後、0.4gを分け取り、融剤(Li)4g、50%LiBr水溶液(離型剤)15μLと混合し、ガラスビードを作製することで調製した。
【0140】
(2)イオン交換性層状珪酸塩粒子のリチウム原子含有量測定
原子吸光光度計(AAS)にて定量した。
装置は、日立製作所製Z-5310を使用した。
試料は、700℃で焼成し、白金るつぼに採取し、硫酸及びフッ化水素酸を添加して加熱分解した。溶液を定容した後、原子吸光光度計(AAS)にて測定した。
【0141】
(3)窒素吸着法による細孔分布測定及び比表面積測定
窒素吸着法によって、吸着等温線及び脱着等温線を測定した。
得られた吸着等温線を用いてBET多点法解析(Rouquerol変換)を実施し、比表面積を求めた。
具体的な測定条件は下記の通りとした。
装置:Anton-Paar社製ガス吸着量測定装置Autosorb-iQ3
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3Pa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0142】
(4)水銀圧入法による細孔分布測定
JIS R 1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔分布試験方法」に準拠して測定した。
具体的には、測定装置はマイクロメリテックス社製オートポアIV9520型を用いた。試料は予め200℃で2時間の減圧乾燥を実施した。減圧乾燥させた粉体試料を秤量し(約0.4g)専用セルに入れ、前処理として真空下(50μmHg以下で10分)で脱気処理を行った。続いて、圧力を4.0psiaとしこれを初期圧としてセルに水銀を導入し、圧力を4.0psiaから40000psiaまでステップ状に昇圧させた後、26psiaまで降圧させた。昇圧時のステップ数は79点以上、降圧時のステップ数は39点以上とし、各ステップでは10秒の平衡時間の後、水銀圧入量を測定した。また、水銀の接触角は140度、水銀の表面張力は485dynes/cmとした。昇圧(水銀侵入)側の測定データについて、細孔直径を横軸に、細孔容積を縦軸にプロットすることにより累積細孔容積曲線を求め、細孔直径10nm及び300nmのそれぞれの累積細孔容積の差分から、細孔直径10nm~300nmにおける細孔容積を算出した。
【0143】
(5)平均粒子径の測定
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率実数項1.490、虚数項0.000、分散溶媒屈折率実数項1.360の条件で、かつ装置内超音波強度「5」で90秒間超音波分散を行った後に測定した。平均粒子径は、体積基準のメジアン径のことをいう。
【0144】
(6)圧壊強度
島津製作所(株)製の圧壊試験器「MCT-210」を用いて、JIS R 1639-5を参考に、温度23℃、湿度35%で、負荷速度1.9mN/secにて、大きさに偏りが生じないように選んだ20個の粒子を測定し、以下の式に従い粒子の圧壊強度を計算した。
S=2.48・P/(π・d
(S:圧壊強度(MPa)、P:破壊時の試験圧力(N)、d:直径=粒子の長軸径と短軸径の平均値(μm))
尚、dは、光学顕微鏡を用いて測定した。
得られた20個の粒子の圧壊強度の平均値を平均圧壊強度とした。
【0145】
(7)イオン交換性層状珪酸塩(原料)の粒子径
次の方法で測定する球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径をイオン交換性層状珪酸塩(原料)の粒子径とした。
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用い、分散溶媒を蒸留水、屈折率実数項1.490、虚数項0.100、分散溶媒屈折率実数項1.333、透過率(R)85%~99%、透過率(B)85%~90%の条件で、かつ装置内超音波強度「7」で2分間超音波処理後に測定した。
【0146】
(8)MFR(メルトマスフローレート)
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して測定した。
【0147】
2.イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造
以下の実験例において、化合物[I]、化合物[II]の評価及び使用条件を表1に、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の各種分析を行った結果を表2に、イオン交換性層状珪酸塩粒子の各種分析を行った結果を表3及び4に、重合の結果を表5に示した。
(1)実施例a1
(1.1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造(工程(1)、工程(2))
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の新潟県中条産の粘土鉱物に、2.4質量%の炭酸ナトリウムを混錬後、水簸、遠心分離を用いて行い精製して得られた水スラリー(固体分6.7質量%、主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を使用した。このイオン交換性層状珪酸塩の粒子径は0.29μm、ケイ素含量11.09、アルミニウム含量3.44、マグネシウム含量1.35、鉄含量0.45(いずれも単位はmmol/g)、アルミニウム含量/ケイ素含量(モル比)は0.31、アルミニウム含量/マグネシウム含量(モル比)は2.55であった。別途、この水スラリーを乾固し、粉末X線回折(XRD)分析を行った結果、精製工程で使用した炭酸ナトリウムは検出されなかった。
5Lビーカーに、化合物[II]として硫酸リチウム一水和物20.9g(硫酸リチウムの蒸留水への溶解性は、極めて溶けやすく、硫酸リチウム1gを溶解させるために蒸留水2.9g(2.9mL)を要する)と蒸留水594gを加え、撹拌し、硫酸リチウムの水溶液を調製した。この水溶液に、上記のイオン交換性層状珪酸塩の水スラリー(6.7質量%)1746gを加えて撹拌した。このスラリーに化合物[I]として日本軽金属製の平均粒子径1μmの水酸化アルミニウム45g(水酸化アルミニウムの蒸留水への溶解性は、極めて低く、蒸留水1000mLを用いても水酸化アルミニウム1gは、ほとんど溶解せず、目視でも固体物が観察された。)を撹拌しながら加えた。硫酸リチウム及び水酸化アルミニウムの使用量は、スラリー中の溶媒を除く成分100質量%に対して、それぞれ10質量%、25質量%であった。2分間撹拌した後、さらに高速撹拌機を用いて、5分間撹拌し、スラリーを調製した。得られたスラリーを用いて、噴霧乾燥造粒装置(大川原化工機社「L-8」)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥造粒を行った。
尚、実施例a1において、「スラリー中の溶媒を除く成分の合計」は、イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、の合計である。
・アトマイザー形式:M type ロータリーディスク
・アトマイザー回転数:30000rpm
・サイクロン差圧:1.08kPa
・乾燥空気入口温度:150℃
スラリーの供給時間は76分であった。造粒物は、造粒装置本体下部及びサイクロン下部に捕集された。本体下部及びサイクロンに捕集された造粒物合計167.0gを目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、149.9gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0148】
(1.2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)(工程(3))
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lフラスコに、蒸留水358.9gを投入し、96%硫酸101.8gを滴下した。この水溶液の内温が90℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、上記(1.1)で製造したイオン交換性層状珪酸塩複合粒子75gを添加後、反応液の内容が95℃となるように調製し、その後95℃を保ちながら240分反応させた。
この反応溶液を375mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、濾過ケーキを200gの10%希硫酸で3回リンスした。さらにこの濾過ケーキを蒸留水750gでスラリー化し、再び濾過を行い洗浄した。この蒸留水での洗浄は合計3回行った。濾過ケーキとして116.4gの固形分を得た。
【0149】
(1.3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
1Lフラスコに蒸留水148.1gと硫酸リチウム一水和物49.8gを入れ、撹拌し、硫酸リチウム水溶液を調製した。この水溶液を40℃に昇温した後、上記(1.2)で化学処理した固体分110.6gを水溶液へ投入し、このスラリーを2時間撹拌した。このときの反応終了時のスラリーのpHは、2.14だった。反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、926gの蒸留水で4回洗浄した。回収したケーキを110℃で1晩乾燥した。さらに、触媒成分として使用する前に、乾燥ケーキをスパチュラで軽く押しつぶしながら解砕し、目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子28.8gを得た。
【0150】
(2)実施例a2
(2.1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造(工程(1)、工程(2))
イオン交換性層状珪酸塩の水スラリーを1746g、蒸留水を590g、硫酸リチウム一水和物52.3g、水酸化アルミニウムを18gに変更した以外は,実施例a1(1.1)と同様に行ってスラリーを調製した。硫酸リチウム及び水酸化アルミニウムの使用量は、スラリー中の溶媒を除く成分100質量%に対して、それぞれ25質量%、10質量%であった。得られたスラリーを用いて,実施例a1(1.1)と同じ装置及び条件で噴霧乾燥造粒を行った。
スラリーの供給時間は79分であった。造粒物は造粒装置本体下部及びサイクロン下部に捕集された。本体下部及びサイクロンに得られた造粒物159.0gを目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、138.7gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
尚、実施例a2において、「スラリー中の溶媒を除く成分の合計」は、イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、の合計である。
【0151】
(2.2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)(工程(3))
蒸留水を670.3g、96%硫酸を177.5g、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を上記(2.1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子138.2gに変更した以外は、実施例a1(1.2)と同様に行った。
この反応溶液を690mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、濾過ケーキを400gの10%希硫酸で3回リンスした。さらにこの濾過ケーキを蒸留水1380gでスラリー化し、再び濾過を行い洗浄した。この蒸留水での洗浄は合計3回行った。濾過ケーキとして198.1gの固形分を得た。
【0152】
(2.3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
蒸留水を262.0g、硫酸リチウム一水和物を87.4g、上記(2.2)から得られた固体分192.2gに変更した以外は、実施例a1(1.3)と同様に操作した。このときの反応終了時のスラリーのpHは、2.18だった。反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、1811gの蒸留水で4回洗浄した。回収したケーキを110℃で1晩乾燥した。さらに、触媒成分として使用する前に、乾燥ケーキをスパチュラで軽く押しつぶしながら解砕し、目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子46.6gを得た。
【0153】
(3)実施例a3
(3.1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造(工程(1)、工程(2))
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の新潟県中条産の粘土鉱物に、1.1質量%の炭酸ナトリウムを混錬後、水簸、遠心分離を用いて行い精製して得られた水スラリー(固体分6.3質量%、主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を使用した。このイオン交換性層状珪酸塩の粒子径は0.28μm、ケイ素含量11.32、アルミニウム含量3.39、マグネシウム含量1.37、鉄含量0.44(いずれも単位はmmol/g)、アルミニウム含量/ケイ素含量(モル比)は0.30、アルミニウム含量/マグネシウム含量(モル比)は2.48であった。別途、この水スラリーを乾固し、粉末X線回折(XRD)分析を行った結果、精製工程で使用した炭酸ナトリウムは検出されなかった。
このイオン交換性層状珪酸塩の水スラリーを2000g、蒸留水を1073g、化合物[II]として硫酸ナトリウム19.4g(硫酸ナトリウムの蒸留水への溶解性は、極めて溶けやすく、硫酸リチウム1gを溶解させるために蒸留水5.2g(5.2mL)を要する)を用い、化合物[I]として水酸化アルミニウムを48.5gに変更した以外は,実施例a1(1.1)と同様に行ってスラリーを調製した。硫酸ナトリウム及び水酸化アルミニウムの使用量は、スラリー中の溶媒を除く成分100質量%に対して、それぞれ25質量%、10質量%であった。得られたスラリーを用いて,実施例a1(1.1)と同じ装置及び条件で噴霧乾燥造粒を行った。
スラリーの供給時間は98分であった。造粒物は、造粒装置本体下部及びサイクロン下部に捕集された。本体下部及びサイクロンに得られた造粒物186.0gを目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、163.99gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
尚、実施例a3において、「スラリー中の溶媒を除く成分の合計」は、イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、の合計である。
【0154】
(3.2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)(工程(3))
蒸留水を335.0g、96%硫酸を95.0g、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を上記(3.1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70.0gに変更し、反応時間を210分に変更したこと以外は、実施例a1(1.2)と同様に行った。
この反応溶液を350mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、濾過ケーキを250gの蒸留水で5回リンスした。さらにこの濾過ケーキを蒸留水700gでスラリー化し、再び濾過を行った。濾過ケーキとして120.0gの固形分を得た。
【0155】
(3.3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
蒸留水を122.3g、硫酸リチウム一水和物を46.2g、上記(3.2)から得られた固体分117.0gに変更した以外は、実施例a1(1.3)と同様に操作した。このときの反応終了時のスラリーのpHは、2.40だった。反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、858gの蒸留水で3回洗浄した。回収したケーキを110℃で1晩乾燥した。さらに、触媒成分として使用する前に、乾燥ケーキをスパチュラで軽く押しつぶしながら解砕し、目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子27.6gを得た。
【0156】
(4)実施例a4
(4.1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造(工程(1)、工程(2))
イオン交換性層状珪酸塩の水スラリーを2000g、蒸留水を1070g、化合物[II]として硫酸リチウム一水和物52.3g、化合物[I]として酸化亜鉛を48.5g(酸化亜鉛の蒸留水への溶解性は、極めて低く、蒸留水1000mLを用いても酸化亜鉛1gは、ほとんど溶解せず、目視でも固体物が観察された。)に変更した以外は,実施例a3(3.1)と同様に行ってスラリーを調製した。硫酸リチウム及び酸化亜鉛の使用量は、スラリー中の溶媒を除く成分100質量%に対して、それぞれ25質量%、10質量%であった。得られたスラリーを用いて,実施例a1(1.1)と同じ装置及び条件で噴霧乾燥造粒を行った。
スラリーの供給時間は100分であった。造粒物は造粒装置本体下部及びサイクロン下部に捕集された。本体下部及びサイクロンに得られた造粒物185.9gを目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、162.3gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
尚、実施例a4において、「スラリー中の溶媒を除く成分の合計」は、イオン交換性層状珪酸塩と、化合物[I]と、化合物[II]と、の合計である。
【0157】
(4.2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)(工程(3))
蒸留水を335.0g、96%硫酸を95.0g、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を上記(3.1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子70.0gに変更し、反応時間を210分に変更したこと以外は、実施例a1(1.2)と同様に行った。
この反応溶液を350mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、濾過ケーキを250gの蒸留水で5回リンスした。さらにこの濾過ケーキを蒸留水700gでスラリー化し、再び濾過を行った。濾過ケーキとして113.1gの固形分を得た。
【0158】
(4.3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
蒸留水を133.5g、硫酸リチウム一水和物を46.0g、上記(3.2)から得られた固体分106.3gに変更した以外は、実施例a1(1.3)と同様に操作した。このときの反応終了時のスラリーのpHは、2.92だった。反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、858gの蒸留水で3回洗浄した。回収したケーキを110℃で1晩乾燥した。さらに、触媒成分として使用する前に、乾燥ケーキをスパチュラで軽く押しつぶしながら解砕し、目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子25.2gを得た。
【0159】
(5)比較例a1
(5.1)イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造
比較例a1では、以下の様に化合物[I]及び化合物[II]のいずれも使用しなかった。
イオン交換性層状珪酸塩として、水澤化学工業製の新潟県中条産の粘土鉱物を水簸、遠心分離を用いて行い精製して得られた水スラリー(主成分は、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)の噴霧乾燥造粒品(イオン交換性層状珪酸塩粒子、メジアン径15.2μm)を準備した。
【0160】
(5.2)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理(1)
蒸留水を650.0g、96%硫酸を83.3g、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を上記(5.1)のイオン交換性層状珪酸塩粒子100.0gに変更した以外は、実施例a1(1.2)と同様に操作した。反応溶液を500mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、濾過ケーキを1000gの蒸留水で1回リンスした。さらにこの濾過ケーキを蒸留水500gでスラリー化し、再び濾過を行い洗浄した。この蒸留水での洗浄は合計3回行った。濾過ケーキとして286.6gの固形分を得た。
【0161】
(5.3)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理(2)
蒸留水を132.1g、硫酸リチウム一水和物を52.2g、上記(5.2)から得られた固体分139.0gに変更した以外は、実施例a1(1.3)と同様に操作した。このときの反応終了時のスラリーのpHは、2.49だった。反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、970gの蒸留水で4回洗浄した。回収したケーキを110℃で1晩乾燥した。さらに、触媒成分として使用する前に、乾燥ケーキをスパチュラで軽く押しつぶしながら解砕し、目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子31.7gを得た。
【0162】
(6)比較例a2
(6.1)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の製造
比較例a2では、化合物[I]は使用せず、化合物[II]のみ使用した。
イオン交換性層状珪酸塩の水スラリーを2000g、蒸留水を1271g、硫酸リチウム一水和物77.85gに変更し、かつ、化合物[I]として水酸化アルミニウムを使用しなかったこと以外は、実施例a1(1.1)と同様に行ってスラリーを調製した。硫酸リチウムの使用量は、スラリー中の溶媒を除く成分100質量%に対して、33質量%であった。得られたスラリーを用いて,実施例a1(1.1)と同じ装置及び条件で噴霧乾燥造粒を行った。
スラリーの供給時間は116分であった。造粒物は造粒装置本体下部及びサイクロン下部に捕集された。本体下部及びサイクロンに得られた造粒物174.5gを目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、150.5gのイオン交換性層状珪酸塩複合粒子を得た。
【0163】
(6.2)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(1)
蒸留水を674g、96%硫酸を169.3g、イオン交換性層状珪酸塩複合粒子を上記(6.1)のイオン交換性層状珪酸塩複合粒子135.1gに変更した以外は、実施例a1(1.2)と同様に行った。
この反応溶液を675mLの蒸留水に注ぐことで反応を停止し、得られたスラリーを、ヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、濾過ケーキ蒸留水1350gでスラリー化し、再び濾過を行い洗浄した。この蒸留水での洗浄は合計2回行った。濾過ケーキとして227.7gの固形分を得た。
【0164】
(6.3)イオン交換性層状珪酸塩複合粒子の化学処理(2)
蒸留水を268.9g、硫酸リチウム一水和物を94.6g、上記(6.2)から得られた固体分223.1gに変更した以外は、実施例a1(1.3)と同様に操作した。このときの反応終了時のスラリーのpHは、2.51だった。反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、1760gの蒸留水で4回洗浄した。回収したケーキを110℃で1晩乾燥した。さらに、触媒成分として使用する前に、乾燥ケーキをスパチュラで軽く押しつぶしながら解砕し、目開き53μmの篩を通して粗大物を取り除き、200℃、減圧下で2時間乾燥して、イオン交換性層状珪酸塩粒子55.1gを得た。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
3.オレフィン重合用触媒の製造
(1)実施例b1
内容積1000mLのフラスコに実施例a1で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子10.0g、ヘプタン66mLを加え撹拌した。そこにトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液34mL(24.5mmol-Al)を加え、室温で1時間撹拌した。
その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を50mLに調製した。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、rac-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}ハフニウムジクロリド(錯体I、90μmol)(合成方法:特開2012―149160号公報の合成例1)をトルエン(15mL)に溶解した(溶液1)。更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、rac-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}ハフニウムジクロリド(錯体II、126μmol)(合成方法:、特開平11―240909号公報の実施例7参照)をトルエン(21mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどのイオン交換性層状珪酸塩粒子のスラリーが入った1Lフラスコを50℃に加熱したオイルバスにつけ、5分後に、TiBAのヘプタン溶液を0.5mL(0.21mmol-Al)を加えた後、上記溶液1(15mL)を加えて、50℃で60分間撹拌した。
その後、トリノルマルオクチルアルミニウム(TnOA)のヘプタン溶液を4.5mL(1.76mmol-Al)を加えた後、上記溶液2加えて、50℃で20分攪拌した。
上記反応後、ヘプタンを加え全量を250mLに調製し、充分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに移送した。
スラリーの温度を40℃とし、プロピレンを5g/時間の速度で4時間供給し、予備重合を行った。プロピレンの供給を停止した後、さらに1時間撹拌を行った。
その後、残存モノマーをパージして重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。
回収した重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。TiBAのヘプタン溶液8.5mL(6mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥を行い、オレフィン重合用触媒を得た。
ここで、前記オレフィン重合用触媒のうち、イオン交換性層状珪酸塩粒子重量とメタロセン錯体重量を足し合わせた重量を純触媒重量とし、それ以外の本工程を経て付加的に増量した重量(例えば、予備重合ポリプロピレン、TiBA、TnOAや残存溶媒の合計重量)を予備重合重量とする。予備重合倍率は、予備重合重量/純触媒重量で表される。
予備重合倍率は1.92g/g-触媒であった。
【0170】
(2)実施例b2
実施例a2で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様に行った。
予備重合倍率は2.05g/g-触媒であった。
【0171】
(3)実施例b3
実施例a3で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様に行った。
予備重合倍率は2.03g/g-触媒であった。
【0172】
(4)実施例b4
実施例a4で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様に行った。
予備重合倍率は2.09g/g-触媒であった。
【0173】
(5)比較例b1
比較例a1で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様に行った。
予備重合倍率は0.99g/g-触媒であった。
【0174】
(6)比較例b2
比較例a2で得たイオン交換性層状珪酸塩粒子を使用した以外は実施例b1と同様に行った。
予備重合倍率は1.86g/g-触媒であった。
【0175】
4.重合体の製造
(1)実施例P1(プロピレンホモ重合)
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、オートクレーブ内に、TiBAのヘプタン溶液5.6mL(4.04mmol)を加え、さらに水素54mL、液体プロピレン750mLを導入し、70℃に昇温した。
上記実施例b1で得られたオレフィン重合用触媒をヘプタンにてスラリー化し、純触媒として(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)24.4mgをオートクレーブに圧入して、重合を開始した。
70℃で1時間重合した後、オートクレーブ内にエタノール5mLを加え重合反応を停止させた。オートクレーブ内の残存したプロピレンをパージ後、ポリマーを回収し、90℃で1時間乾燥した。
【0176】
(2)実施例P2~P6、比較例P1~P4(プロピレンホモ重合)
オレフィン重合用触媒の種類、純触媒量及び水素量を表5に記載の条件とした以外は、実施例P1と同様の方法で重合を行った。
【0177】
【表5】
【0178】
5.結果及び考察
図1は、実施例b1及びb2、並びに比較例b1及びb2のオレフィン重合用触媒によるプロピレン単独重合の結果について、重合活性を、得られた重合体のMFRに対してプロットした図である。図1から、実施例のイオン交換性層状珪酸塩粒子を用いた触媒は、MFR見合いで、比較例の触媒よりも高い触媒活性を示していることが分かる。すなわち、同程度のMFRで比較すると、実施例の触媒は比較例の触媒よりも高い触媒活性を示していることが分かる。
【0179】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、本開示の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本開示によれば、触媒活性を向上する新規な細孔構造を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法、オレフィン重合用触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒の製造方法、及びオレフィン重合体の製造方法を提供でき、産業上の利用可能性が高い。
図1