(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155802
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241024BHJP
B60K 35/235 20240101ALI20241024BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20241024BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/235
B60K35/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066371
(22)【出願日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2023069064
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】仁井 皓大
(72)【発明者】
【氏名】山木 善規
(72)【発明者】
【氏名】江田 明浩
(72)【発明者】
【氏名】石井 美樹夫
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA02
2H199DA03
2H199DA17
2H199DA32
2H199DA36
2H199DA43
2H199DA44
2H199DA46
3D344AA21
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD05
(57)【要約】
【課題】反射板のサイズの拡大を低減しつつ、運転者のアイポイントの位置に応じて光を反射させ、画像の視認性を確保する。
【解決手段】表示装置1は、液晶ディスプレイ2と、反射板3と、制御装置5と、を備える。液晶ディスプレイ2は、画像を構成する光を出射する。反射板3は、液晶ディスプレイ2から出射された光である出射光OLを運転者のアイポイントEPに向かって反射させる。制御装置5の位置調整部52は、反射板3の一定の位置P1に入射した出射光OLが、アイレンジER内で変化するアイポイントEPの位置に向かって反射されるように、アイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2における光の出射位置を可変とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を構成する光を出射する表示部と、
前記表示部から出射された光を、車両の乗員のアイポイントに向かって反射させる反射部と、
前記反射部の一定の位置に入射した前記光が、アイレンジ内で変化する前記アイポイントの位置に向かって反射されるように、前記アイポイントの位置に応じて、前記表示部の前記光の出射位置を可変とする位置可変部と、を備える、表示装置。
【請求項2】
画像を構成する光を出射する表示部と、
前記表示部から出射された光を、車両の乗員のアイポイントに向かって反射させる反射部と、
前記表示部の前記光の出射位置を可変とする位置可変部と、を備え、
前記表示部から出射された光は、前記表示部と前記反射部との間に位置するインストルメントパネルに設けられた開口部を通過して反射部に入射し、
前記位置可変部は、前記開口部の開口面の一定の位置を通過して前記反射部に入射した前記光が、アイレンジ内で変化する前記アイポイントの位置に向かって反射されるように、前記アイポイントの位置に応じて、前記表示部の前記光の出射位置を可変とする、表示装置。
【請求項3】
前記位置可変部は、前記表示部を制御して、前記表示部における前記光を出射可能な領域内で、前記光の出射位置を変化させる制御装置である、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
前記位置可変部は、前記表示部をスライドさせることで、前記光の出射位置を変化させるスライド機構を含む、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項5】
前記乗員のアイポイントを検出するアイポイント検出部を備え、
前記位置可変部は、前記アイポイント検出部で検出された前記アイポイントの位置に応じて、前記表示部の光の出射位置を調整する、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項6】
前記反射部は、鉛直線方向から見た場合に、前記乗員との正対位置に対して傾けて配置され、
前記アイレンジ内の前記アイポイントの位置に応じて、前記表示部での出射位置を変化させて前記光を出射させた場合に、前記反射部に入射する前記光の中で、特定のアイポイントに対応する前記光が最大の光路幅を有し、
前記位置可変部は、前記特定のアイポイントに対応する前記光を、前記反射部の前記一定の位置に入射させた場合における前記最大の光路幅の範囲内で、前記特定のアイポイント以外のアイポイントに対応する前記光の前記反射部への入射位置を、前記一定の位置から可変とする、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項7】
前記反射部は、少なくとも前記光が入射する位置に曲面を有し、
前記表示部の前記光の出射位置に応じて設定される歪み補正パターンに基づいて、前記画像を補正する画像補正部を備え、
前記表示部は、前記画像補正部で補正された前記画像を構成する光を出射する、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項8】
前記歪み補正パターンは、前記位置可変部によって前記アイポイントの位置に応じて可変とされる複数の前記光の出射位置に対応して設定され、
前記画像補正部は、前記歪み補正パターンがそれぞれ設定された第1の出射位置と第2の出射位置の間に、前記歪み補正パターンが設定されていない第3の出射位置がある場合、前記第1の出射位置と前記第2の出射位置の前記歪み補正パターンを用いてスプライン補間または直線補間を行うことにより、前記第3の出射位置の歪み補正パターンを取得する、請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記反射部は、車両のウインドシールドと前記乗員との間に設けられた反射板である、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項10】
前記反射部は、車両のウインドシールドを構成するガラスの表面である、請求項1または2記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室内に、表示装置が配置される。表示装置は、画像を構成する光を出射する表示部と、表示部からの光を、車両の乗員のアイポイントに向けて反射する反射部と、を有する。これによって、車両の乗員は画像の虚像を視認することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の乗員のアイポイントの位置は、乗員の体格や姿勢等によって変化する。反射部が反射した光がアイポイントから外れると、画像の視認性に影響を与える可能性がある。
ここで、乗員のアイポイントの位置の変化に対応するために、反射部のサイズを大きくして、画像を反射する領域を拡大することが考えられる。
しかしながら、反射部を大きくすると、乗員が車両を運転する際の、車両前方側の視野の確保に影響を与える可能性がある。また、反射部で反射された光が、乗員のアイポイントに到達する前に、車両のインストルメントパネル等に干渉する可能性がある。
【0005】
表示装置において、反射部のサイズの拡大を低減しつつ、乗員のアイポイントの位置に応じて光を反射させることで、画像の視認性を確保することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表示装置は、
画像を構成する光を出射する表示部と、
前記表示部から出射された光を、車両の乗員のアイポイントに向かって反射させる反射部と、
前記反射部の一定の位置に入射した前記光が、アイレンジ内で変化する前記アイポイントの位置に向かって反射されるように、前記アイポイントの位置に応じて、前記表示部の前記光の出射位置を可変とする位置可変部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、反射部のサイズの拡大を低減しつつ、乗員のアイポイントの位置に応じて光を反射させることができ、画像の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】(a)は、アイレンジ内の各アイポイントに対応する、液晶ディスプレイにおける光の出射位置を説明する図であり、(b)は、反射板からの出射光の反射角を説明する図である。
【
図4】液晶ディスプレイの出射面における出射光の断面形状を示す図である。
【
図6】変形例1に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【
図7】変形例2に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【
図8】変形例3に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【
図9】車両の上方から見た運転者、反射板およびフロントウインドシールドの配置関係を模式的に示す図であり、(a)は、反射板が運転者の正対位置にある配置例を示し、(b)は、反射板が運転者の正対位置に対して傾いている配置例を示している。
【
図10】変形例4を、
図9の(b)の配置例に適用した図である。
【
図11】変形例4を、
図9の(b)の配置例に適用した図である。
【
図12】変形例5に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【
図13】画像補正部で行われる補正処理の概念を説明する図である。
【
図14】歪み補正パターンの設定例を示す図である。
【
図15】歪み補正パターンの補間処理の概念を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る表示装置1を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る表示装置1の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、表示装置1は、自動車等の車両の車室VR内に設置される。
図面では、表示装置1の車室VRへの設置状態を基準とした方向を示している。以降の説明において、「上」および「下」とは、鉛直線方向(
図1の上下方向)における「上」および「下」を意味する。「前」および「後」とは、車両前後方向(
図1の左右方向)における「車両前方側」と「車両後方側」を意味する。また、車両前後方向および鉛直線方向に直交する方向(紙面手前側から奥側に向かう方向)を、車幅方向という。
なお、以下の説明において、「車両前後方向に沿って」または「鉛直線方向に沿って」と言う場合は、厳密に車両前後方向または鉛直線方向に平行である場合のみに限定されず、車両前後方向または鉛直線方向に対して若干傾いている状態も含むものとする。
【0010】
図1に示すように、車室VRにはインストルメントパネル7とダッシュパネル8が設けられている。ダッシュパネル8は、車両前方側に設けられた、車室VRと不図示のエンジンルーム(またはモータルーム)とを隔てる隔壁である。インストルメントパネル7は、車室VRの前方側を覆うカバー部材であり、ダッシュパネル8とステアリングホイールSWの間に位置する。またインストルメントパネル7には、計器類、操作スイッチ、メインディスプレイ、オーディオ機器等が設置されている。
【0011】
ダッシュパネル8の上側には、フロントウインドシールド9が設けられている。フロントウインドシールド9は、車両前方側から後方側に向かって斜め上方に張り出すように傾斜して設けられる。すなわち、フロントウインドシールド9は、ダッシュパネル8の上側から、インストルメントパネル7の上側を、車両前後方向に横断するように張り出している。フロントウインドシールド9の下端部には、黒色のセラミック塗料が帯状に塗布された帯状部91が形成されている。
なお、
図1では、帯状部91を、模式的にフロントウインドシールド9の表面上に図示しているが、帯状部91は特定の態様に限定されない。帯状部91は、例えば、フロントウインドシールド9を構成するガラス層の間に中間膜として形成しても良く、フロントウインドシールド9の車室VR側の表面上に塗装等により形成しても良い。
【0012】
本実施形態の表示装置1は、いわゆるヘッドアップディスプレイ装置とすることができる。表示装置1は、運転者(乗員)が運転中に視線を大きく移動させることなく車両の走行情報を視認するための運転支援装置である。
表示装置1は、走行情報として、例えば、走行速度、ガソリン残量等の車両の状態に関する情報や、歩行者飛出し、車両割込み、車線逸脱等に対するアラーム等を含む画像を表示することができる。
【0013】
図1に示すように、表示装置1は、液晶ディスプレイ2(表示部)と、反射板34(反射部)と、液晶ディスプレイ2を制御する制御装置5を備える。
液晶ディスプレイ2は、運転者に表示する画像を構成する光を出射する。
反射板3は、液晶ディスプレイ2が出射する光(出射光OL)を、運転者のアイポイントEPに向けて反射させる。出射光OLが運転者のアイポイントEPに到達することで、運転者が、液晶ディスプレイ2の画像の虚像Viを視認する。
【0014】
図示は省略するが、液晶ディスプレイ2は、2枚の偏光板に挟み込まれた液晶セルと、液晶セルに光を照射するバックライトと、を備えたものとすることができる。液晶ディスプレイ2は、2枚の偏光板の偏光角を制御することで、液晶セルにおける光の通過および遮断を切り替えることができる。液晶ディスプレイ2は、画像を構成する画素ごとに光の通過および遮断を切り替えることで、画像を構成する光を出射する。
【0015】
図1では、液晶ディスプレイ2が車両前後方向に延在し、光の出射面21を上方に向けて配置される例を示している。液晶ディスプレイ2は、インストルメントパネル7の内部に配置されている。液晶ディスプレイ2の上側には、インストルメントパネル7の上面71が位置している。上面71には開口部73が設けられている。
【0016】
開口部73は、液晶ディスプレイ2の出射光OLの光路上に形成されている。開口部73の開口面73aは車両前後方向に延在方向している。すなわち、液晶ディスプレイ2から上方に出射された出射光OLは、開口部73の開口面73aを横切って上方に向かう。
【0017】
反射板3は、開口部73の上方において開口面73aに面して配置され、液晶ディスプレイ2の出射光OLの光路上に位置している。
反射板3は、下方から入射した出射光OLを車両後方側の運転者のアイポイントEPに向かって反射させるために、鉛直線方向に対して傾けて配置されている。
図1の例では、反射板3は、鉛直線方向の下側から上側に向かうにつれて、車両前方側から車両後方側に位置するように傾斜している。反射板3の傾斜角度は、液晶ディスプレイ2と運転者との位置関係に応じて適宜設定することができる。
【0018】
反射板3は、特定の構成に限定されないが、例えば、不透光性の薄板部材から構成することができる。反射板3の形状も限定されず、矩形、多角形、円形、楕円形等の様々な形状を採用可能である。また、
図1では、反射板3が平面状の反射面を有する例を示しているが、反射板3は、湾曲した反射面を有するように構成しても良い。液晶ディスプレイ2は、反射板3の形状や、反射面の形状に応じて、表示する画像を適宜変形することができる。
【0019】
図1に示した液晶ディスプレイ2と反射板3の配置はあくまで一例に過ぎず、車室VR内のレイアウトに応じて、適宜変更可能である。例えば、
図1では、反射板3を、液晶ディスプレイ2の上方に配置させる例を図示しているが、反射板3を液晶ディスプレイ2の斜め上方に配置しても良い。さらに、液晶ディスプレイ2と反射板3との間に、別の反射部を設けても良い。あるいは、反射板3で出射光OLを反射させた後に、さらに別の反射部に出射光OLを反射させても良い。
また、車室VR内に反射板3を設ける代わりに、フロントウインドシールド9を、液晶ディスプレイ2の出射光OLを反射させる反射部として用いても良い。この場合、液晶ディスプレイ2の出射光OLは、フロントウインドシールド9を構成するガラスの表面で反射され、運転者のアイポイントEPに向かう。
フロントウインドシールド9において反射部を構成する箇所は限定されないが、一例として、帯状部91が形成された箇所を反射部としても良い。前記したように、帯状部91は、フロントウインドシールド9の中間膜として形成される場合や、表面に塗装で形成される場合がある。いずれの場合も、出射光OLは、帯状部91が形成された箇所のフロントウインドシールド9の車室VR内側の表面で反射される。フロントウインドシールド9の黒色の中間膜が背景となる箇所、または黒色に塗装された箇所で出射光OLが反射されるため、運転者が画像を視認しやすくなる。
【0020】
図2の(a)は、アイレンジER内の各アイポイントEP_U、EP_C、EP_Lに対応する、液晶ディスプレイ2における光の出射位置OP_U、OP_C、OP_Lを説明する図である。
図2の(b)は、反射板3からの出射光OLの反射角α、β、γを説明する図である。
図1に示すように、液晶ディスプレイ2からの出射光OLは、液晶ディスプレイ2が表示する画像のサイズに応じた光路幅(車両前後方向の幅)を有するが、
図2では、出射光OLを簡略化して単一の直線で図示している。
図2に示す直線は、出射光OLが有する光路幅の中心を示している。
【0021】
図1では、運転者のアイポイントEPを一点のみ示しているが、アイポイントEPは、運転者の体格や姿勢によって位置が変化することがある。
図2の(a)では、鉛直線方向において変化するアイポイントEPの位置の範囲を、アイレンジERとして示している。なお、アイポイントEPの位置は車両前後方向にも変化するが、ここでは、鉛直線方向における位置の変化に着目する。アイレンジERは、例えば、車室VRのレイアウトや、車両が使用される地域の乗員の体格の傾向等で変化することがある。
図2の(a)では、アイレンジER内のアイポイントEPの3つの位置として、上部アイポイントEP_U、中央アイポイントEP_C、下部アイポイントEP_Lを示している。なお、これらのアイポイントEPの位置はあくまで例に過ぎず、上部アイポイントEP_Uと中央アイポイントEP_Cの間と、中央アイポイントEP_Cと下部アイポイントEP_Lの間にも、アイポイントEPの位置は分布する。
【0022】
本実施形態の表示装置1は、液晶ディスプレイ2の出射光OLが、反射板3の一定の位置P1に入射し、かつアイレンジER内で変化するアイポイントEPの位置に向かって反射されるように構成されている。位置P1は、例えば、反射板3の鉛直線方向における中央付近に設定することができる。
反射板3の一定の位置P1に入射した出射光OLが、異なるアイポイントEPの位置に反射されるには、
図2の(b)に示すように、出射光OLの位置P1からの反射角を、各アイポイントEPに対応して変化させる必要がある。
具体的には、反射板3の位置P1と、アイポイントEPの位置との鉛直線方向における距離が長くなるほど、出射光OLの反射角を大きくする必要がある。各アイポイントEP_U、EP_C、EP_Uと位置P1との距離(D_U、D_C、D_L)は、下部アイポイントEP_Lから上部アイポイントEP_Uに向かうにつれて長くなる(D_U>D_C>D_L)。そのため、上部アイポイントEP_Uへの出射光OLの反射角をα、中央アイポイントEP_Cへの出射光OLの反射角をβ、下部アイポイントEP_Lへの出射光OLの反射角をγとすると、α>β>γの関係が成り立つ。
【0023】
出射光OLの反射板3での反射角は、反射板3への入射角に応じたものとなる。そのため、出射光OLの位置P1への入射角を調整することで、位置P1からの反射角をアイポイントEPの位置に合わせて調整することができる。
本実施形態の表示装置1は、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変とすることで、反射板3の位置P1への出射光OLの入射角および反射角を調整可能としている。これによって、反射板3の一定の位置P1に入射した出射光OLが、アイレンジER内の異なるアイポイントEPの位置のそれぞれに向かって反射される。
【0024】
本実施形態では、液晶ディスプレイ2の制御装置5(
図3参照)が、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変とする位置可変部として機能する。本実施形態では、制御装置5が、液晶ディスプレイ2自体は移動させずに、液晶ディスプレイ2における光の出射位置を変化させる例を説明する。
図2の(a)において、液晶ディスプレイ2の出射面21における、画像を表示可能な領域、すなわち光を出射可能な領域Aを、ハッチングを付して示している。制御装置5は、領域Aの範囲内で、アイレンジER内のアイポイントEPの位置に応じて、光の出射位置を変化させる。
図2の(a)に示すように、中央アイポイントEP_Cに対応する出射位置OP_Cは、領域Aの車両前後方向における中央付近に位置する。出射位置OP_Cから出射された出射光OLは、反射板3の位置P1に入射すると、
図2の(b)に示すように、反射角βで反射されて中央アイポイントEP_Cに向かう。
アイポイントが、中央アイポイントEP_Cよりも上側、例えば上部アイポイントEP_Uに位置する場合は、出射位置を、車両前方側の出射位置OP_Uまで移動させる。出射位置OP_Uから出射された出射光OLは、反射板3の位置P1に入射すると、反射角βよりも大きい反射角αで反射され、上部アイポイントEP_Uに向かう。
アイポイントが、中央アイポイントEP_Cよりも下側、例えば下部アイポイントEP_Lに位置する場合は、出射位置を、車両前方側の出射位置OP_Lまで移動させる。出射位置OP_Lから出射された出射光OLは、反射板3の位置P1に入射すると、反射角βよりも小さい反射角γで反射され、下部アイポイントEP_Lに向かう。
【0025】
このように、アイレンジER内の各アイポイントに対応した液晶ディスプレイ2の光の出射位置と反射板3の位置P1における反射角とは、予めシミュレーションや試験等を行って設定することができる。そして、設定に基づいて、表示装置1における液晶ディスプレイ2および反射板3の配置を決定することができる。
【0026】
制御装置5は、例えば、運転者(乗員)の操作入力に応じて、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を変化させることができる。
図3は、制御装置5の構成を示すブロック図である。
制御装置5は、図示は省略するが、CPU等のプロセッサと、ROMおよびRAM等のメモリと、から構成される。メモリには、制御装置5で実行される各種プログラムが格納されている。プロセッサがプログラムを実行することで、
図3に示す機能構成が実現される。
制御装置5は、例えば、車両の各種の制御を行うECU(Electronic Control Unit)の一つの機能として実現しても良い。
【0027】
図3に示すように、制御装置5は、液晶ディスプレイ2と、操作部6とに接続されている。操作部6は、運転者の操作入力を受け付ける入力装置である。また、図示は省略するが、制御装置5は、画像に表示する走行情報を取得するために、車載LAN等を介して他の車載装置に接続されている。また、制御装置5は、インターネット等を介して外部サーバ等から走行情報を取得することも可能である。
【0028】
操作部6は特定の態様に限定されないが、例えば、
図2に示すように、インストルメントパネル7等に設置された物理的な操作パネルとしても良い。操作部6は、あるいは、車両のメインディスプレイ等に表示され、タッチパネルによって操作可能なGUI(Graphical User Interface)の操作パネルとしても良い。操作部6は、あるいは、ステアリングホイールSWに設置されたステアリングスイッチとしても良い。
【0029】
制御装置5は、画像生成部51と、位置調整部52と、表示制御部53と、記憶部54と、を備える。
画像生成部51は、他の車載装置や外部サーバ等から取得した走行情報を用いて画像を生成する。
位置調整部52は、操作部6を介した運転者の操作入力に応じて、液晶ディスプレイ2における画像の表示位置、すなわち光の出射位置を変位させる。
表示制御部53は、位置調整部52で決定された光の出射位置において、画像生成部51が生成した画像が表示されるように、液晶ディスプレイ2を制御する。
記憶部54には、制御装置5の各部の処理に必要なデータが格納され、各部の処理結果が一時的に記憶される。
【0030】
位置調整部52は、
図2の(a)に示すように、出射位置の初期位置を、例えば中央の出射位置OP_Cに設定することができる。すなわち、出射位置OP_Cから出射された出射光OLが、反射板3の位置P1において反射角βで反射され、中央アイポイントEP_Cに到達する。
【0031】
ここで、運転者のアイポイントが中央アイポイントEP_C付近に位置している場合は、運転者は、反射板3の中央付近の適切な位置で虚像Vi全体を視認することができる。
一方、運転者のアイポイントが中央アイポイントEP_Cから離れている場合、虚像Viが反射板3の中央からずれて視認されたり、虚像Viの一部が欠けて視認されたりする可能性がある。
このような場合に、運転者が操作部6を介して、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を調整する。
【0032】
図3では、操作部6の構成例を示している。
図3に示すように、操作部6は、例えば、位置調整用のボタン61、62を備えることができる。
運転者は、反射板3に映る虚像Vi(
図2参照)を見ながら、虚像Viを鉛直線方向に移動させる形で調整を行う。そのため、位置調整用のボタン61、62は、虚像Viの上側への移動操作を入力するボタン61と、下側への移動操作を入力するボタン62を含むことができる。そのため、例えば、ボタン61は上側への矢印を表示し、ボタン62は下側への矢印を表示するものとすることができる。ボタン61が押下されると、位置調整部52は液晶ディスプレイ2の光の出射位置を車両後方側に移動させ、ボタン62が押下されると、位置調整部52は液晶ディスプレイ2の光の出射位置を車両前方側に移動させる。
【0033】
例えば、運転者のアイポイントが上部アイポイントEP_Uにある場合、初期位置である出射位置OP_Cからの出射光OLによる虚像Viは、反射板3の中央より上側にずれて表示される。この場合、運転者は、操作部6のボタン62を押下する。位置調整部52は、ボタン62が押下されると、液晶ディスプレイ2における光の出射位置を車両前方側に変位させる。これによって、運転者が視認する虚像Viが下側へ移動する。出射位置がOP_CからOP_Uへ変位するまでボタン62を押下することで、運転者は、反射板3の中央より上側にずれていた虚像Viを、中央において適切に視認することができる。
【0034】
例えば、運転者のアイポイントが下部アイポイントEP_Lにある場合、初期位置である出射位置OP_Cからの出射光OLによる虚像Viは、反射板3の中央より下側にずれて表示される。この場合、運転者は、操作部6のボタン61を押下する。位置調整部52は、ボタン61が押下されると、液晶ディスプレイ2における光の出射位置を車両後方側に変位させる。これによって、運転者が視認する虚像Viが上側へ移動する。出射位置がOP_CからOP_Lへ変位するまでボタン61を押下することで、運転者は、反射板3の中央より下側にずれていた虚像Viを、中央において適切に視認することができる。
【0035】
図4は、液晶ディスプレイ2の出射面21における出射光OLの断面形状を示す図である。
前記したように、液晶ディスプレイ2の出射面21は、光を出射可能な領域Aを有する。
図4では、領域Aをわかりやすくするために、領域A以外の部分に、クロスハッチングを付している。
図4では、
図2で示した各出射位置(OP_C、OP_U、OP_L)から出射される出射光OLの断面形状SP_C、SP_U、SP_Lのアウトラインを、実線、破線、二点鎖線でそれぞれ示している。
図4では、出射光OLの断面形状が矩形である例を示しており、各断面形状が示す光路幅(車両前後方向の幅)の中心が、
図2で示す出射位置OP_C、出射位置OP_U、出射位置OP_Lに対応している。
【0036】
液晶ディスプレイ2は、アイレンジER内のアイポイントEPの変化に応じた出射位置の変動範囲Rを包含できる領域Aを有するものを用いる。
図4の例では、出射位置の変動範囲Rは、上部アイポイントEP_Uに対応する出射光OLの断面形状SP_Cの光路幅の車両前方側の端部から、下部アイポイントEP_Lに対応する出射光OLの断面形状SP_Lの光路幅の車両後方側の端部までの範囲となる。
アイレンジER、出射位置の変動範囲R、出射位置の初期位置(例えば位置OP_C)については、シミュレーションや試験等を行って適宜設定することができる。
【0037】
図5は、比較例を示す図であり、液晶ディスプレイ2における光の出射位置を位置OP_Mに固定した場合を示している。
比較例のように出射位置が固定される場合、反射板3の一定の位置P1(
図2参照)に入射する出射光OLの反射角を変動させることはできない。
比較例において、出射光OLをアイレンジER内の異なるアイポイントEPの位置に向かって反射させるためには、反射板3を鉛直線方向に拡大させて、出射光OLを反射する領域を拡大することが考えられる。これによって、位置OP_Mからの出射光OLが、反射板3の様々な位置において反射し、各アイポイントの位置に到達しやすくなる。
この場合、
図5に示すように、出射光OLの反射板3への入射位置は、アイレンジER内のアイポイントEP_U~EP_Cに応じて変動する。反射板3の鉛直線方向のサイズは、この入射位置の変動範囲IRcよりも大きく設定する必要がある。
【0038】
しかしながら、反射板3を鉛直線方向の上側に拡大させた場合、運転者の車両前方側の視界に影響を与える可能性がある。
また、比較例では、下部アイポイントEP_Lへの出射光OLは、反射板3において位置P1より下側から反射されるため、光路の見下し角が大きくなる。これによって、出射光OLの光路と、インストルメントパネル7の上面71やステアリングホイールSWとの間のクリアランスCLが狭くなる。光路がインストルメントパネル7の上面71やステアリングホイールSWに干渉すると、虚像Viの視認性に影響を与える可能性がある。この場合、例えば、インストルメントパネル7の上面71を下げてクリアランスCLを確保することも考えられる。しかしながら、インストルメントパネル7の内部には様々な車載部品が収容されている。インストルメントパネル7の上面71を下げることは、インストルメントパネル7の内部の車載部品のレイアウトに制約を与える可能性がある。
【0039】
一方、本実施形態では、
図2に示すように、反射板3の一定の位置P1に入射した出射光OLがアイレンジER内の異なるアイポイントEPの位置に向かって反射されるように、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変としている。
すなわち、本実施形態では、反射板3は、入射位置P1を中心とした出射光OLの光路幅を確保できる鉛直線方向のサイズを有するものであれば良く、比較例のように、反射板3を鉛直線方向に拡大させる必要がない。反射板3の鉛直線方向の上側への拡大を抑制することで、運転者の車両前方側の視界を良好に保つことができる。
また、本実施形態において、下部アイポイントEP_Lに対しても、反射板3の一定の位置P1から出射光OLが反射されるため、光路の見下し角が比較例よりも小さくなる。これによって、出射光OLの光路と、インストルメントパネル7の上面71やステアリングホイールSWとの間のクリアランスCLを広くすることができる。光路がインストルメントパネル7の上面71やステアリングホイールSWと干渉しにくくなるため、虚像Viの視認性を確保することができる。さらに、光路への干渉を避けるためにインストルメントパネル7の上面71を下げる必要が無いため、インストルメントパネル7の内部の車載部品のレイアウトの自由度を向上することができる。
なお、本実施形態において、反射板3の鉛直線方向におけるサイズを拡大した場合は、画像の表示画角を拡大、またはアイレンジERの範囲を拡大することができる。
【0040】
以上の通り、本実施形態に係る表示装置1は、例えば、以下の構成を有する。
(1)表示装置1は、液晶ディスプレイ2(表示部)と、反射板3(反射部)と、制御装置5(位置可変部)と、を備える。
液晶ディスプレイ2は、画像を構成する光を出射する。
反射板3は、液晶ディスプレイ2から出射された光である出射光OLを運転者(乗員)のアイポイントEPに向かって反射させる。
制御装置5の位置調整部52は、反射板3の一定の位置P1に入射した出射光OLが、アイレンジER内で変化するアイポイントEPの位置に向かって反射されるように、アイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2における光の出射位置を可変とする。
【0041】
本実施形態の表示装置1は、反射板3のサイズの拡大を低減しつつ、運転者のアイポイントEPの位置に応じて光を反射させることで、画像の視認性を確保することができる。
具体的には、位置調整部52が、反射板3の一定の位置P1に入射した出射光OLが、アイレンジER内の異なるアイポイントEPの位置に向かって反射されるように、アイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変とする。
出射光OLが反射板3の一定の位置P1に入射されるため、反射板3は、入射位置P1を中心とした出射光OLの光路幅を確保できるサイズとすれば良い。すなわち、反射板3のサイズの拡大を低減することができる。
反射板3の鉛直線方向の上側への拡大を低減することで、運転者の車両前方側の視界を良好に保つことができる。
また、本実施形態では、出射光OLは、アイレンジER内の下側のアイポイント(例えば、下部アイポイントEP_L)に対しても、反射板3の一定の位置P1から出射される。これによって、下部アイポイントEP_Lへの光路の見下し角が小さくなり、光路がインストルメントパネル7の上面71やステアリングホイールSWと干渉しにくくなる。光路とのクリアランスの確保のためにインストルメントパネル7の上面71の高さを抑制されないため、インストルメントパネル7の内部の車載部品のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0042】
なお、前記した実施形態では、表示部として液晶ディスプレイ2を用いる例を説明したが、これに限定されない。表示部は、例えば、有機ELディスプレイなどの自発光型のデバイスとしても良い。
【0043】
(3)制御装置5の位置調整部52は、液晶ディスプレイ2の出射面21における画像を表示可能な領域、すなわち光を出射可能な領域A内で、光の出射位置を変化させる。
【0044】
本実施形態の例では、液晶ディスプレイ2自体を移動させないため、液晶ディスプレイ2の移動機構が不要となる。また、液晶ディスプレイ2を移動させる時間が不要となるため、出射位置の調整を速やかに行うことができる。
【0045】
(i)制御装置5の位置調整部52は、液晶ディスプレイ2の光の出射位置の初期位置を、例えばアイレンジER内の中央アイポイントEP_Cに対応する中央の出射位置OP_Cに設定することができる。
初期位置を中央の出射位置OP_Cに設定することで、出射位置を車両前方側(出射位置OP_U側)または車両後方側(出射位置OP_L側)に移動させる場合の移動量が少なくなるため、速やかに位置調整を行うことができる。
なお、初期位置は中央の出射位置OP_Cに限定されない。例えば、アイレンジER内におけるアイポイントEPの統計分布のデータが得られている場合は、データ内で最も分布が多いアイポイントの位置を、初期位置として設定しても良い。
【0046】
(9)反射部は、例えば、車両のフロントウインドシールド9(ウインドシールド)と運転者との間に設けられた反射板3とすることができる。
【0047】
反射部を、フロントウインドシールド9とは別体の反射板3とすることで、反射板3を、例えば、運転者の車両前方側の視界に干渉しにくい場所に配置することができる。
また、反射板3を、例えば不透過性の黒色とすることで、運転者が虚像Viを視認しやすくなる。
【0048】
(10)反射部は、例えば、車両のフロントウインドシールド9を構成するガラスの表面とすることができる。
この場合、車室VR内に反射板3を別途設ける必要が無いため、他の車載部品のレイアウトの自由度を向上させることができる。また、例えば、フロントウインドシールド9の帯状部91が形成された部分を反射部とすることで、黒色の帯状部91が背景となるため、運転者が虚像Viを視認しやすくなる。
【0049】
[変形例1]
図6は、変形例1に係る表示装置1Aの構成を示す模式図である。
なお、以降の変形例において、実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示すように、鉛直線方向において、液晶ディスプレイ2と反射板3の間には、インストルメントパネル7の上面71が位置している。インストルメントパネル7の上面71には、液晶ディスプレイ2の出射光OLを通過させるための開口部73が設けられている。開口部73の開口面73aは、液晶ディスプレイ2から上方に向かう出射光OLを横切る形で、車両前後方向に延在している。
【0050】
変形例1の表示装置1Aは、開口部73の開口面73aの一定の位置P2を通過して反射板3に入射した出射光OLが、アイレンジER内で変化するアイポイントEPの位置に向かって反射されるように構成されている。
変形例1の場合でも、実施形態と同様に、制御装置5の位置調整部52(
図3参照)が、アイレンジER内のアイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2の出射位置を可変とする。すなわち、各出射位置から出射された出射光OLは、開口面73aの一定の位置P2を通過し、反射板3において各アイポイントEPに対応した反射角で反射され、アイレンジER内の各アイポイントEPに向かう。
【0051】
変形例1においても、アイレンジER内の各アイポイントEPに対応した液晶ディスプレイ2の光の出射位置と反射板3における反射角とは、予めシミュレーションや試験等を行って設定することができる。そして、設定に基づいて、表示装置1Aにおける液晶ディスプレイ2と反射板3の配置、開口部73との位置関係を決定することができる。
【0052】
変形例1の場合、各出射位置からの出射光OLが、開口面73aの一定の位置P2を通過するように出射位置が調整される。そのため、
図6に示すように、出射光OLの反射板3への入射位置は一定とならず、アイレンジER内のアイポイントEP_U~EP_Cに応じて変動する。反射板3の鉛直線方向のサイズは、この入射位置の変動範囲IRよりも大きく設定する必要がある。
ただし、変形例1では、各出射位置からの出射光OLは、液晶ディスプレイ2と反射板3の間に位置する開口面73aの位置P2で光軸が一致した状態で、反射板3に入射する。そのため、変形例1における入射位置の変動範囲IRは、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を固定した比較例(
図5参照)の変動範囲IRcよりも狭くなる。したがって、変形例1における反射板3は、比較例よりも要求される鉛直線方向のサイズが小さくなるため、変形例1においても、反射板3のサイズを低減することができる。
【0053】
ここで、インストルメントパネル7の開口部73は、液晶ディスプレイ2から反射板3までの出射光OLの光路の確保のために設けられている。変形例1のように、出射光OLを開口部73の開口面73aの一定の位置P2を通過させる場合、光路のために開口面73aの面積を広く確保する必要が無い。そのため、変形例1では、開口部73の開口面積を縮小することができる。
【0054】
図6に示すように、車室VR内には、車外から太陽光SLが入射する。太陽光SLは、インストルメントパネル7の内部に配置された液晶ディスプレイ2に対しても、開口部73を介して入射することがある。液晶ディスプレイ2に太陽光SLが入射すると、液晶ディスプレイ2の温度が上昇して、動作に影響を与える可能性がある。変形例1のように、開口部73の開口面積を縮小することで、開口部73を介した太陽光SLの入射量を低減し、液晶ディスプレイ2の温度上昇を低減することができる。
【0055】
さらに、開口部73の開口面積が広い場合、液晶ディスプレイ2の出射光OLが、開口部73を通過した後、車室VR内の、反射板3以外の箇所に向かう可能性が高くなる。この迷光となった出射光OLが、例えば、反射板3の上方のフロントウインドシールド9(
図1参照)に反射されると、フロントウインドシールド9に虚像Viが映り込むゴースト現象が発生する可能性がある。開口部73の開口面積を縮小させることで、反射板3以外に向かう迷光を低減することができ、結果としてゴースト現象を抑制することができる。さらにインストルメントパネル7において開口部73の開口面積を縮小することで、インストルメントパネル7のデザイン性を向上したり、インストルメントパネル7上に配置される他の車載部品のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0056】
以上の通り、変形例1に係る表示装置1Aは、例えば、以下の構成を有する。
(2)表示装置1Aは、
画像を構成する光を出射する液晶ディスプレイ2(表示部)と、
液晶ディスプレイ2から出射された光を、車両の運転者のアイポイントEPに向かって反射させる反射板3(反射部)と、
液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変とする制御装置5(位置可変部)と、を備える。
液晶ディスプレイ2から出射された光は、液晶ディスプレイ2と反射板3との間に位置するインストルメントパネル7に設けられた開口部73を通過して反射部に入射する。
制御装置5は、開口部73の開口面73aの一定の位置P2を通過して反射部に入射した光が、アイレンジER内で変化するアイポイントEPの位置に向かって反射されるように、アイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変とする。
【0057】
アイレンジER内の各アイポイントEPに対応する出射光OLを、開口部73の一定の位置で通過させた場合、反射板3への入射位置の変動範囲IRは、液晶ディスプレイ2で出射位置を固定した比較例(
図5参照)の変動範囲IRcよりも狭くなる。したがって、変形例1の表示装置1Aは、実施形態と同様に、反射板3のサイズを低減することができる。
さらに、開口部73の開口面73aの面積を縮小することができるため、開口部73を介した太陽光SLの入射量を低減することができる。さらに、開口部73を通過した出射光OLが反射板3以外に向かう迷光が低減されるため、虚像Viがフロントウインドシールド9等に映り込んで発生するゴースト現象を抑制することができる。さらに開口部73の縮小によって、インストルメントパネル7のデザイン性を向上したり、他の車載部品の配置の自由度を向上させることができる。
【0058】
[変形例2]
図7は、変形例2に係る表示装置1Bの構成を示す模式図である。
図7に示すように、変形例2に係る表示装置1Bは、液晶ディスプレイ2をスライドさせるスライド機構25を備える。
変形例2では、液晶ディスプレイ2自体を移動させることで、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を可変とする例を説明する。変形例2では、液晶ディスプレイ2の出射面21における、光を出射可能な領域A内における光の出射位置は固定となる。
【0059】
スライド機構25は、液晶ディスプレイ2を車両前後方向に沿ってスライドさせる。
スライド機構25は特定の構成に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ2の車両前後方向の移動をガイドするためのレールや、液晶ディスプレイ2をレールに沿って駆動させるモータ等の駆動部から構成することができる。
【0060】
変形例2では、制御装置5は、スライド機構25の駆動部に接続され、スライド機構25による液晶ディスプレイ2の移動を制御する。すなわち、変形例2において、位置可変部はスライド機構25と、スライド機構25を制御する制御装置5を含んでいる。
変形例2の制御装置5は、実施形態と同様の機能構成を備えるが、
図7では簡略化のため位置調整部52のみを図示している。
変形例2の位置調整部52は、操作部6を介した運転者の操作入力に応じて、スライド機構25を駆動し、液晶ディスプレイ2を車両前後方向にスライドさせることで、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を、アイレンジER内の各アイポイント(EP_U、EP_C、EP_L)に応じた位置(OP_U、OP_C、OP_L)に変位させる。
【0061】
スライド機構25が液晶ディスプレイ2をスライドさせる距離は、アイレンジER内のアイポイントEPに応じた出射位置の変動範囲R(
図4参照)に基づいて設定することができる。
実施形態では、
図4に示すように、液晶ディスプレイ2の光を出射可能な領域Aが、アイレンジERに対応する変動範囲Rを包含するように設定したが、変形例2では、液晶ディスプレイ2自体を移動させることができるため、領域Aは、各出射位置における出射光OLの断面形状(SP_U、SP_C、SP_L)の光路幅を包含できるものであれば良い。すなわち、変形例2では、液晶ディスプレイ2における光を出射可能な領域Aを縮小することができるため、液晶ディスプレイ2の小型化を図ることが可能である。
【0062】
以上の通り、変形例2に係る表示装置1Bは、以下の構成を有する。
(4)位置可変部は、制御装置5の位置調整部52に加えて、液晶ディスプレイ2をスライドさせるスライド機構25を含む。制御装置5の位置調整部52は、スライド機構25を駆動することで、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を変化させる。
【0063】
変形例2では、実施形態と同様に、液晶ディスプレイ2の出射位置を異ならせることでアイレンジER内で変化するアイポイントEPの位置に対応することができるため、反射板3のサイズの拡大を低減することができる。また、液晶ディスプレイ2自体を移動させるため、液晶ディスプレイ2に対して要求される光を出射可能な領域Aを縮小することができるため、液晶ディスプレイ2を小型化することができる。
【0064】
[変形例3]
図8は、変形例3に係る表示装置1Cの構成を示す模式図である。
変形例3では、制御装置5において、運転者のアイポイントEPの位置を検出することで、運転者の操作入力に依らず、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を自動的に調整する例を説明する。
図8に示すように、変形例3では、車室VR内に、運転者を撮影可能なカメラ4が設置される。カメラ4は、例えば、車室VR内のルームミラーに取り付けることができる。カメラ4は、車両前方側から運転者を撮影する。
変形例3の制御装置5は、カメラ4に車載LAN等を介して接続され、カメラ4が撮影した画像を取得することができる。
【0065】
図8に示すように、変形例3の制御装置5は、
図3に示した機能構成に加えて、アイポイント検出部55を備える。
図8では、制御装置5の位置調整部52とアイポイント検出部55のみを図示している。
また、制御装置5のメモリには、アイレンジER内のアイポイントEPの位置に対応する、液晶ディスプレイ2の出射位置を記録するテーブルTが記憶されている。テーブルTは、事前にシミュレーションや試験等を行って作成することができる。
【0066】
アイポイント検出部55は、カメラ4で撮影された画像から、運転者のアイポイントを検出する。アイポイント検出部55は、公知のアイトラッキングの手法等を用いて、アイポイントを検出することができる。アイポイント検出部55は、検出したアイポイントEPの位置を位置調整部52に入力する。
【0067】
位置調整部52は、テーブルTを参照して、アイポイント検出部55で検出されたアイポイントEPの位置に対応する液晶ディスプレイ2の出射位置を設定する。表示制御部53は、位置調整部52で設定された液晶ディスプレイ2の出射位置において、画像を表示させる。
【0068】
テーブルTには、例えば、3つのアイポイント(EP_U、EP_C、EP_L)に対応する出射位置を記憶しても良い。ここで、アイポイント検出部55で検出されたアイポイントEPの位置が、テーブルTに記録されているアイポイント(EP_U、EP_C、EP_L)と一致しない場合は、検出されたアイポイントEPに最も近いアイポイントに対応する出射位置を設定することができる。もちろん、テーブルTに記録するアイポイントの数は3つに限定されず、2つまたは4つ以上としても良い。
【0069】
アイポイントEPの検出による出射位置の設定のタイミングは限定されるものではないが、例えば、車両の運転開始前の、運転者のシートベルトの着用が検出された際に行うことができる。さらに、運転中に運転者の姿勢が変わってアイポイントEPの位置が変化することもあるため、アイポイントEPの検出は、運転中も定期的に行うことができる。
【0070】
さらに、変形例3のアイポイント検出による出射位置の調整は、運転者の操作入力による出射位置の調整と併用しても良い。例えば、制御装置5において、アイポイントEPの検出によって出射位置が設定された後、運転者が反射板3に映る虚像Viを見ながら、操作部6を介して出射位置をさらに調整することもできる。
【0071】
変形例3に係る表示装置1Cは、例えば、以下の構成を備える。
(5)表示装置1Cは、
制御装置5は、運転者のアイポイントEPを検出するアイポイント検出部55を備える。アイポイント検出部55は、例えば、車室VR内に設置されたカメラ4で撮影された運転者の画像に画像解析処理を行うことで、アイポイントEPを検出することができる。
制御装置5の位置調整部52は、アイポイント検出部55で検出されたアイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2の光の出射位置を調整する。
【0072】
変形例3では、運転者の操作に依らずに、アイポイントEPの位置に応じた液晶ディスプレイ2の光の出射位置の設定を行うことができるため、運転者の利便性を向上させることができる。
【0073】
[変形例4]
図9は、車両の上方から見た運転者、反射板3およびフロントウインドシールド9の配置関係を模式的に示す図である。
図9の(a)は、反射板3が運転者の正対位置にある配置例を示し、
図9の(b)は、反射板3が運転者の正対位置に対して傾いている配置例を示している。
前記したように、反射板3の車室VR内におけるレイアウトは特定の態様に限定されず、様々な態様を取り得る。
例えば、
図9の(a)に示すように、反射板3は、車両の上方から見た場合に、運転者と車幅方向に正対して配置されることがある。
また、例えば、
図9の(b)に示すように、反射板3は、車両の上方から見た場合に、車幅方向における運転者の正対位置に対して傾けて配置されることがある。例えば、反射板3をフロントウインドシールド9の曲面に沿って配置させる場合等に、反射板3がこのように傾けて配置されることがある。
【0074】
図9の(b)の配置例では、反射板3は、車両後方側から見て、車幅方向の左側が車両後方側に位置し、右側が車両前方側に位置するように傾いて配置されている。そのため、反射板3は、車幅方向における右側より左側の方が、運転者のアイポイントEPとの車両前後方向の距離が短くなる。
図10および
図11は、変形例4を、
図9の(b)の配置例に適用した図である。
図10の(a)は、反射板3の一定の位置P1に、出射位置OP_Uからの出射光OLと、出射位置OP_Lからの出射光OLが入射する状態を示す図である。
図10の(b)は、
図10の(a)における、反射板3に入射する出射光OLの断面形状を示す図である。
図10の(b)では、出射位置OP_Uからの出射光OLの断面形状SPb_Uと、出射位置OP_Lからの出射光OLの断面形状SPb_Lのアウトラインを、破線と二点鎖線でそれぞれ示している。
図10の(c)は、反射板3への出射光OLの入射角と断面形状の関係を示す模式図である。
図10の(c)では、出射光OLを光路幅を有する状態で図示している。
図10の(c)では、わかりやすいように、反射板3を水平に示し、入射角α、γの大きさの違いを誇張して描いている。
【0075】
図10の(a)に示すように、液晶ディスプレイ2からの光の出射位置に応じて、反射板3の位置P1への入射角は異なる。出射位置OP_Uからの出射光OLの入射角αは、出射位置OP_Lからの出射光OLの入射角γよりも大きくなる(α>γ)。
図10の(c)に示すように、反射板3への出射光OLの入射角が大きくなるほど、反射板3に入射する出射光OLの断面形状が大きくなる。図示の例では、上部アイポイントEP_Uに対応する出射位置OP_Uからの出射光OLが、入射角が最大となるため、断面形状SPb_Uが最も大きくなる。上部アイポイントEP_Uから下側のアイポイントに向かうほど、対応する出射光OLの断面形状は小さくなる。そして、下部アイポイントEP_Lに対応する出射位置OP_Lからの出射光OLが、入射角が最小となるため、断面形状SPb_Lが最も小さくなる。
図10の(c)に示すように、反射板3での入射位置が一定の位置P1である場合、最も大きい断面形状SPb_Uのアウトライン内に、最も小さい断面形状SPb_Lが包含された状態となる。
【0076】
さらに、反射板3が運転者の正対位置から傾いている場合(
図9の(b)参照)、液晶ディスプレイ2における出射光OLの断面形状が矩形であっても(
図4参照)、反射板3での出射光OLの断面形状は、
図10の(b)に示すように、歪みが生じてアシンメトリな四角形となる。このようなアシンメトリな断面形状の場合、単純な矩形よりも、鉛直線方向の光路幅(紙面上下方向の幅)が拡大される。図示の例では、反射板3において、最大サイズを有する断面形状SPb_Uの左上の頂点が、最上端に位置し、右下の頂点が最下端に位置する。すなわち、図示の例において、反射板3の鉛直線方向のサイズは、少なくとも、最大サイズの断面形状SPb_Uの最上端(左上の頂点)から、最下端(右下の頂点)までの光路幅W(光路幅)以上とする必要がある。
【0077】
一方、前記したように、上部アイポイントEP_Uより下側のアイポイントに対応する出射光OLの断面形状は、断面形状SPb_Uより小さくなる。そのため、例えば、上部アイポイントEP_Uより下側のアイポイントに対応する出射位置からの出射光OLについては、光路幅Wの範囲内であれば、反射板3への入射位置を位置P1からずらすことも可能である。
【0078】
図11の(a)は、出射位置OP_Lからの出射光OLの反射板3における入射位置を、位置P1より上側(紙面上側)の位置P3にずらした状態を示す図である。
図11の(b)は、
図11の(a)における、反射板3での出射光OLの断面形状を示す図である。
図11の(b)に示すように、上部アイポイントEP_Uに対応する断面形状SPb_Lは、位置P1と位置P3の距離分、上側にずれて反射される。
断面形状SPb_Lは最大サイズの断面形状SPb_Uよりも小さいため、光路幅Wの範囲内の移動であれば、反射板3からはみ出すことなく光路幅全体が適切に反射される。
そして、
図11の(a)に示すように、入射位置を上側の位置P3とした場合、出射光OLの下部アイポイントEP_Lまでの光路は、位置P1の場合よりも見下し角が上向きになる。前記したように、下部アイポイントEP_Lへの光路は、インストルメントパネル7の上面71やステアリングとの干渉が問題となりやすい。したがって、光路の見下し角を上向きにすることで、光路のインストルメントパネル7の上面71やステアリングとのクリアランスが広がるため、干渉の問題を解消しやすくなる。
【0079】
このように、変形例4では、反射板3への入射位置を一定の位置P1とすることを基本としつつ、反射板3の配置例によっては、入射位置をP1からずらすことを可能とするものである。その際に、入射位置を一定の位置P1からずらすことが可能な範囲は、反射板3においてサイズが最大となる断面形状の光路幅Wの範囲内とすることができる。
【0080】
なお、ここでは、上部アイポイントEP_Uに対応する断面形状SPb_Uのサイズが最大となる例を示したが、この例に限定されない。反射板3と液晶ディスプレイ2の形状や配置関係によって、上部アイポイントEP_U以外のアイポイントも、断面形状のサイズが最大となる特定のポイントとなり得る。
【0081】
以上の通り、変形例4に係る表示装置は、以下の構成を有する。
(6)反射板3は、例えば、鉛直線方向から見た場合に、運転者との正対位置に対して傾けて配置することができる。
アイレンジER内のアイポイントEPの位置に応じて、液晶ディスプレイ2での出射位置を変化させて光を出射させた場合に、反射板3に入射する各出射位置からの出射光OLの中で、特定のアイポイント(例えば上部アイポイントEP_U)に対応する出射位置から出射された出射光OLが、最大の光路幅Wを有する。
制御装置5の位置調整部52は、特定のアイポイントに対応する出射光OLを、反射板3の一定の位置P1に入射させた場合における最大の光路幅Wの範囲内で、特定のアイポイント以外のアイポイント(例えば中央アイポイントEP_Cや下部アイポイントEP_L)に対応する出射光OLの反射板3への入射位置を、位置P1から可変とすることができる。
【0082】
[変形例5]
図12は、変形例5に係る表示装置1Dの構成を示す模式図である。
変形例5では、表示装置1Dが、液晶ディスプレイ2の出射光OLが反射板3の曲面で反射されることで生じる、虚像Viの歪みを補正する例を説明する。
図12では、一例として、反射板3の全体が曲面形状に構成されたものを示している。反射板3は、例えば、鉛直線方向の中心が、車両前方側に向かって凹む凹曲面を有するものを用いることができる。反射板3を凹曲面とした場合は、液晶ディスプレイ2が出射した画像が反射板3で拡大される。画像が拡大されることで、運転者の視認性の向上や、液晶ディスプレイ2の小型化に寄与することができる。
【0083】
なお、反射板3が有する曲面は、
図12に例示したものに限定されない。例えば、反射板3は、鉛直線方向の中心が、車両後方側に向かって突出する凸曲面を有するものであっても良い。
また、反射板3の全体が曲面形状である必要は無く、少なくとも、液晶ディスプレイ2からの出射光OLの入射位置を含む部分に、曲面を有するものであっても良い。
また、反射板3の曲面は、
図12で例示するような肉眼で視認しやすいものに限定されない。例えば、
図1等で図示する平面状の反射板3でも、肉眼では視認しにくい凹凸によって曲面が生じることがある。
また、前記したように、反射板3の代わりに、フロントウインドシールド9を出射光OLの反射部として用いることもできるが、フロントウインドシールド9は、曲率の異なる曲面が組み合わされた複雑な形状を有する傾向があり、出射光OLの入射位置を含む部分に、曲面を有することがある。
【0084】
変形例5では、反射板3の曲面で出射光OLが反射されることで、運転者が視認する虚像Viに歪みが生じる場合でも、運転者が本来の画像に近い虚像Viを視認できるように、制御装置5が、液晶ディスプレイ2から出射する画像の補正を行う。
図12に示すように、変形例5において、制御装置5は、
図3に示した機能構成に加えて、画像補正部56を備える。なお、
図12では、
図3に示した機能構成のうち、表示制御部53については図示を省略している。
画像補正部56は、歪み補正パターンPTに基づいて、画像生成部51が生成した画像を補正する。歪み補正パターンPTは、例えば、画像を構成する各画素の位置座標を補正するためのパラメータを組み合わせて構成することができる。歪み補正パターンPTは、液晶ディスプレイ2の光の出射位置OP_U~OP_Lに応じて設定され、記憶部54に格納されている。
【0085】
図13は、画像補正部56で行われる補正処理の概念を説明する図である。
図13では、画像生成部51が矩形の画像Imを生成する例を示している。
図13の(a)では、画像Imの補正処理を行わない場合を示している。この場合、画像生成部51が生成した矩形の画像Imが、そのまま液晶ディスプレイ2から出射され、反射板3の曲面で反射され、運転者のアイポイントEPに到達する。運転者に視認される虚像Viは、元の画像Imの矩形に対して歪みが生じたものとなる。
図示した例では、画像Imの直線状の底辺と上辺が、虚像Viにおいて上側に湾曲するように歪んでいる。
なお、図示した虚像Viの歪み方はあくまで一例であり、虚像Viの歪み方は、反射板3の形状、曲率、液晶ディスプレイ2との位置関係に応じて異なったものとなる。
【0086】
図13の(b)では、画像Imの補正処理を行う場合を示している。
図13の(b)に示すように、画像補正部56は、画像生成部51が生成した画像Imに対して、虚像Viで生じる歪みを相殺する方向の補正を行う。
図13の(a)の例では、虚像Viは、矩形の画像Imに対して、底辺と上辺が歪み量λ1で上側に湾曲している。画像補正部56は、例えば、
図13の(b)に示すように、液晶ディスプレイ2に表示される矩形の画像Imの底辺と上辺を、歪み量λ2で、上側に湾曲させる。なお、
図13の(b)で示した補正例はあくまで一例に過ぎない。画像Imを変形させる方向と歪み量λ2は、液晶ディスプレイ2と反射板3との位置関係に応じて適宜設定することができる。このように補正された画像Imが反射板3で反射されると、虚像Viに生じる歪みが相殺され、運転者には、元の矩形の画像に近い虚像Viが視認される。
【0087】
画像補正部56は、具体的には、画像Imを構成する各画素の位置座標を補正することで、画像Imを変形させることができる。画像補正部56は、記憶部54に格納されている歪み補正パターンPTを取得し、歪み補正パターンPTに設定されているパラメータを用いて、各画素の位置座標を補正することができる。歪み補正パターンPTは、例えば、事前の試験やシミュレーション等で、画像Imと虚像Viの歪み方の相関関係を解析することで、設定することができる。
【0088】
ここで、虚像Viの歪み方は、運転者のアイポイントEPの位置によって異なることがある。
特に、
図12では、変形例5を変形例1の構成に適用した例を示している。
すなわち、表示装置1Dにおいて、液晶ディスプレイ2の出射位置OP_U~OP_Lからの出射光OLが、開口面73aの一定の位置P2を通過するように、各出射位置が調整される。また、出射光OLの反射板3の入射位置は一定とならず、変動範囲IRの間で変動する。
反射板3の各入射位置で、曲面の曲率にバラつきが生じているような場合は、運転者のアイポイントEPの位置ごとの、虚像Viの歪み方の違いが大きくなる傾向がある。
また、フロントウインドシールド9を出射光OLの反射部として用いる場合、出射光OLは、フロントウインドシールド9の曲率の異なる部分に入射する可能性がある。このような場合にも、アイポイントEPの位置ごとの虚像Viの歪み方の違いが大きくなる傾向がある。
【0089】
したがって、虚像Viの歪み方を適切に補正するためには、運転者のアイポイントEPの位置に応じて、複数の歪み補正パターンを予め設定し、記憶部54に格納することが望ましい。
実施形態で説明したように、表示装置1Dでは、液晶ディスプレイ2の光の出射位置OP_U~OP_Lは、予めシミュレーションや試験等を行って、運転者のアイポイントEP_U~EP_Lの位置に対応付けて設定されている。そのため、光の出射位置OP_U~OP_Lに対応付けて複数の歪み補正パターンを設定することで、運転者のアイポイントEPの位置に応じた補正を行うことができる。
【0090】
図14は、歪み補正パターンPTの設定例を示す図である。
なお、
図14は、あくまで歪み補正パターンPTの概念を説明する図である。
図14において、歪み補正パターンPTとして示しているのは、実質的には、矩形の画像Im(
図13参照)に歪み補正パターンPTを用いて補正を行った後の形状である。
【0091】
記憶部54に予め格納しておく歪み補正パターンPTの数は任意であり、特定の数に限定されない。
図14では、一例として、3点の歪み補正パターンPT_U、PT_C、PT_Lを予め設定する例を示している。
具体的には、上部アイポイントEP_Uに対応する出射位置OP_Uに対して、歪み補正パターンPT_U(破線)が設定される。中央アイポイントEP_Cに対応する出射位置OP_Cに対して、歪み補正パターンPT_C(実線)が設定される。下部アイポイントEP_Lに対応する出射位置OP_Lに対して、歪み補正パターンPT_L(二点鎖線)が設定される。
【0092】
図14の例において、画像補正部56は、位置調整部52で光の出射位置が、OP_U、OP_CまたはOP_Lに決定された場合、記憶部54から対応する歪み補正パターンPT_U、PT_CまたはPT_Lを取得することで、アイポイントEP_U、EP_CまたはEP_Lに応じた画像の補正を行うことができる。
【0093】
ここで、液晶ディスプレイ2からの光の出射位置は、運転者が操作部6(
図3参照)を操作することで、例えば、OP_U~OP_Lの範囲で変動させることができる。すなわち、実際の光の出射位置は、OP_U、OP_C、OP_Lの3点に限定されず、歪み補正パターンが設定されていない位置となることがある。
【0094】
図15は、歪み補正パターンPTの補間処理の概念を説明する図である。
画像補正部56は、歪み補正パターンPTが設定されている2つの出射位置(第1の出射位置と第2の出射位置)の間に、歪み補正パターンPTが予め設定されていない出射位置(第3の出射位置)がある場合、第1の出射位置と第2の出射位置に設定されている歪み補正パターンPTを用いた補間処理により、第3の出射位置の歪み補正パターンPTを取得することができる。
言い換えれば、画像補正部56は、位置調整部52によって、光の出射位置が、歪み補正パターンPTが予め設定されていない位置(第3の出射位置)に決定された場合は、第3の出射位置の車両前後方向における両端側(前側と後側)の出射位置(第1の出射位置と第2の出射位置)で設定された歪み補正パターンPTを取得して、補間処理を行う。
【0095】
図15の(a)では、歪み補正パターンPTが予め設定されていない出射位置(第3の出射位置)として、出射位置OP_M1と、出射位置OP_M2と、を示している。
出射位置OP_M1は、車両前後方向において、出射位置OP_U(第1の出射位置)と出射位置OP_C(第2の出射位置)の間に位置する。言い換えると、出射位置OP_M1の車両前後方向における両端側(前側と後側)に、出射位置OP_Uと出射位置OP_Cが位置している。
出射位置OP_M2は、車両前後方向において、出射位置OP_C(第1の出射位置)と出射位置OP_L(第2の出射位置)の間に位置する。言い換えると、出射位置OP_M2の車両前後方向における両端側(前側と後側)に、出射位置OP_Cと出射位置OP_Lが位置している。
【0096】
図15の(b)は、位置調整部52によって、光の出射位置が、歪み補正パターンPTが予め設定されていないOP_M1に決定された場合の補間処理を説明する図である。画像補正部56は、記憶部54から、出射位置OP_M1の両端側に位置する出射位置OP_Uの歪み補正パターンPT_Uと、出射位置OP_Cの歪み補正パターンPT_Cと、を取得する。画像補正部56は、歪み補正パターンPT_U、PT_Cを用いた補間処理を行うことで、出射位置OP_M1の歪み補正パターンPT_M1を取得することができる。
【0097】
図15の(c)は、位置調整部52によって、光の出射位置が、歪み補正パターンPTが予め設定されていないOP_M2に決定された場合の補間処理を説明する図である。画像補正部56は、記憶部54から、出射位置OP_M2の両端側に位置する出射位置OP_Cの歪み補正パターンPT_Cと、出射位置OP_Lの歪み補正パターンPT_Lと、を取得する。画像補正部56は、歪み補正パターンPT_C、PT_Lを用いた補間処理を行うことで、出射位置OP_M2の歪み補正パターンPT_M2を取得することができる。
【0098】
画像補正部56は、具体的には、歪み補正パターンPTを構成する各パラメータに対して、スプライン補間または直線補間等の、公知の手法による補間処理を行うことができる。
スプライン補間は、補間の精度が比較的高いため、例えば、虚像Viの歪みが大きい場合や、予め設定されている歪み補正パターンPTの数が少ない場合等に、好適に用いることができる。
直線補間は、計算方法がシンプルであるため、虚像Viの歪みが小さい場合や、予め設定されている歪み補正パターンPTの数が多い場合等に、好適に用いることができる。
【0099】
以上の通り、変形例5に係る表示装置1Dは、以下の構成を有する。
(7)反射板3(反射部)は、少なくとも液晶ディスプレイ2からの出射光OLが入射する位置に、曲面を有するものを用いることができる。
表示装置1Dは、液晶ディスプレイ2(表示部)の光の出射位置OP_U~OP_Lに応じて設定される歪み補正パターンPTに基づいて、画像Imを補正する画像補正部56を備える。
画像補正部56は、例えば、歪み補正パターンPTに基づいて、運転者が視認する虚像Viに生じる歪みを相殺する方向で、画像Imを補正することができる。
液晶ディスプレイ2は、画像補正部56で補正された画像Imを構成する光を出射する。
【0100】
反射板3の曲面によって生じる虚像Viの歪みを補正する方法として、例えば、カメラ等で検出した運転者のアイポイントEPに合わせて、反射板3の角度を調整する等の方法も考えられる。しかしながら、この場合は、運転者のアイポイントEPに応じた反射板3の角度調整の精度が要求され、設備コストが増大するおそれがある。
実施形態で説明したように、表示装置1Dでは、液晶ディスプレイ2における光の出射位置OP_U~OP_Lが、運転者のアイポイントEP_U~EP_Lに対応付けて設定されている。そのため、光の出射位置OP_U~OP_Lに応じた歪み補正パターンPTを予め設定し、画像補正部56が、位置調整部52で決定された光の出射位置に応じた歪み補正パターンPTを取得して、画像を補正することができる。これによって、設備コストを低減したシンプルな処理で虚像Viの歪みを補正すること可能となる。
【0101】
なお、
図12では、変形例5を変形例1の構成に適用する例を示したが、もちろんこの例に限定されるものではなく、変形例5は、実施形態や他の変形例に適用しても良い。前記したように、平面状の反射板3(
図1等参照)でも、肉眼では視認しにくい曲面によって虚像Viの歪みが生じることがある。また、
図1の例のように、出射光OLの入射位置が一定の位置P1に設定されている場合でも、実際の入射位置のわずかなずれがあり、虚像Viの歪み方が出射位置によって異なることがある。これらの場合に、画像補正部56による補正処理を有効に用いることができる。
【0102】
(8)歪み補正パターンPTは、位置調整部52によってアイポイントEPの位置に応じて決定される複数の光の出射位置OP_U~OP_Lに対応して設定可能である。
画像補正部56は、歪み補正パターンPTがそれぞれ設定された第1の出射位置と第2の出射位置の間に、歪み補正パターンPTが設定されていない第3の出射位置がある場合、第1の出射位置と第2の出射位置の歪み補正パターンPTを用いてスプライン補間または直線補間を行うことにより、第3の出射位置の歪み補正パターンPTを取得することができる。
【0103】
画像補正部56における補正処理の精度を高めるために、例えば、予め設定する歪み補正パターンPTの数を増やすことが考えられる。ただし、この場合、事前の設定作業に時間がかかると共に、歪み補正パターンPTを格納する記憶部54の記憶容量を増加させることが求められる。
画像補正部56が、歪み補正パターンPTが予め設定されていない第3の出射位置について、車両前後方向の前側および後側の第1の出射位置および第2の出射位置で設定されている歪み補正パターンPTを用いて補間処理を行うことで、歪み補正パターンを取得することができる。これによって、歪み補正パターンPTの記憶に必要な記憶部54の記憶容量を削減しつつ、画像補正部56の補正処理の精度を確保することができる。
【0104】
変形例1~5は、それぞれを単独で実施形態に適用しても良く、あるいは複数の変形例を組み合わせて実施形態に適用しても良い。また、複数の変形例同士を組み合わせても良い。例えば、変形例2で説明したスライド機構25を、変形例1、3、4に適用しても良い。
【符号の説明】
【0105】
1 表示装置
2 液晶ディスプレイ(表示部)
21 出射面
25 スライド機構
3 反射板(反射部)
4 カメラ
5 制御装置(位置可変部)
51 画像生成部
52 位置調整部
53 表示制御部
54 記憶部
55 アイポイント検出部
56 画像補正部
6 操作部
61、62 ボタン
7 インストルメントパネル
73 開口部
73a 開口面
8 ダッシュパネル
9 フロントウインドシールド(反射部)
91 帯状部
EP アイポイント
PT 歪み補正パターン