(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155812
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】血管ツインを用いた血管挙動の予測
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20241024BHJP
G16B 40/20 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
G16H50/00
G16B40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024066705
(22)【出願日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】23305610
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メリエム ベンマディ
(72)【発明者】
【氏名】エバートン ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゴ リベス
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者の血管挙動、特に血行動態を予測するためのコンピュータ実装方法を提供する。
【解決手段】方法は、循環器系の血管モデル、患者の血管挙動の1つ以上の測定値及び人工ニューラルネットワークからなる代理モデルを提供する。血管モデルは一般的な血管挙動を表し、複数の生理学的パラメータから構成される。サロゲートモデルは、生理学的パラメータから血管挙動のシミュレーションを予測するように構成されている。方法はさらに、サロゲートモデルを使用し、1つ以上の測定値に基づいて血管モデルを較正することと、較正された血管モデルを用いて患者の血管挙動を予測することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管挙動、特に血行動態を予測するためのコンピュータ実装方法であって、
以下(a)~(c)を提供するステップ(S10)と
(a)循環器系の血管モデルであって、当該循環器系は、血管グラフを形成する複数の血管を含み、当該血管モデルは、複数の生理学的パラメータを含み、当該血管モデルは、一般的な血管挙動を表し、当該血管モデルは、当該複数の生理学的パラメータのサブセットをそれぞれ含む複数のサブモデルを含み、当該複数のサブモデルの各サブモデルは、当該複数の血管の血管にそれぞれ対応する血管モデル、
(b)患者の血管挙動の1つ以上の測定、及び
(c)人工ニューラルネットワークからなるサロゲートモデルであって、当該サロゲートモデルは、前記生理学的パラメータから血管挙動のシミュレーションを予測するように構成されるサロゲートモデル、
前記サロゲートモデルを使用し、1つ又は複数の測定値に基づいて血管モデルを較正するステップ(S20)と、
前記較正された血管モデルを用いて前記患者の血管挙動を予測するステップ(S30)と
を有するコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記サロゲートモデルが、複数(N個)の人工ニューラルネットワークからなり、当該複数の人工ニューラルネットワークの各々は、複数の血管の各血管にそれぞれ対応しており、当該複数の人工ニューラルネットワークは、前記血管グラフに従って互いに接続されている
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記血管モデルの較正が、
前記患者の血管挙動に関する1つ又は複数の測定値が与えられた場合に、当該患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークを提供するステップと、
提供された前記逆人工ニューラルネットワークを使用して、複数の生理学的パラメータの値を決定するステップと
を含む
請求項1又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記逆人工ニューラルネットワークを提供する前に、当該逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップを含み、
前記訓練するステップは、
患者のデータセットを提供するステップであって、複数の生理学的パラメータを含む前記データベースの各エントリーが、患者の血管挙動のシミュレーション結果に対応し、当該シミュレーション結果は前記生理学的パラメータで計算され、当該生理学的パラメータは生理学的特徴を反映したものであり、提供するステップと、
前記データセットに基づいて、前記逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップと
を含む
請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記逆人工ニューラルネットワークが
前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値のサブセットを入力として受け付け、当該患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値の再構成を出力するように構成された第1の部分、及び
前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値の再構成を入力として受け付け、前記生理学的パラメータを出力するように構成された第2の部分
を有し、前記第2の部分は、任意選択で、
1つの人工ニューラルネットワーク、及び
前記血管グラフに従って互いに接続された複数の人工ニューラルネットワーク
を含む、請求項3又は4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記データセットに基づく前記逆人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の(ア)(イ)間の第1の不一致を最小化するステップを含む、
(ア)前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値(d)、及び
(イ)サロゲートモデルを使用し、提供された逆人工ニューラルネットワークによって予測された生理学的パラメータに基づいた、血管挙動シミュレーション(f(NNinv(d))の予測
請求項3から5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記データセットに基づく前記逆人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の(ウ)(エ)間の第2の不一致(
【数1】
)を最小化するステップを含む
(ウ)前記生理学的特徴を反映する生理学的パラメータ(p)、及び
(エ)前記提供された逆人工ニューラルネットワーク(NN
inv)によって前記決定された生理学的パラメータ(NN
inv(d))、
請求項3から6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記生理学的パラメータが以下の(カ)(キ)の少なくとも1つ以上を含む
(カ)複数の血管の機械的特性、及び/又は
(キ)複数の血管の幾何学的特性、
ここで、任意選択で、前記1つ又は複数の測定値は、前記複数の血管の1つ又は複数の圧力値及び/又は1つ又は複数の流量値及び/又は1つ又は複数の断面積値を含む
請求項1から7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記較正された血管モデルを用いて血管挙動を予測するステップが、
複数のモデルを用いて、較正された血管モデルによるシミュレーションを実行するステップ、又は
前記較正された血管モデルによるシミュレーションを、前記サロゲートモデルを使って予測するステップ
を含む
請求項1から8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記サロゲートモデルを提供する前に、当該サロゲートモデルを訓練するステップをさらに含み、
訓練データセットを提供するステップであって、当該訓練データセットの各エントリーは、前記生理学的パラメータの値と、前記複数のモデルを使用した血管モデルによるシミュレーションの値を含む、提供するステップと、
前記訓練データセットを用いて前記サロゲートモデルを訓練するステップと
を含む請求項1から9のいずれかに記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記提供された訓練セットを形成するステップをさらに含み、
前記提供された訓練セットを形成するステップは、
前記生理学的パラメータに関する複数の値のセットを生成するステップであって、各セットは基準値の近傍で生成される、生成するステップと、
前記生成された複数の生理学的パラメータの値に対応する複数のモデルを使用して、前記血管モデルによるシミュレーションを実行するステップと
を含む
請求項10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のコンピュータ実装方法を使用する使用方法であって、
前記血管モデル及び前記サロゲートモデルを得るステップと、
ユーザから、前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値を取得するステップと、
前記サロゲートモデルを使用し、1つ又は複数の測定値に基づいて前記血管モデルを較正するステップと、
前記較正された血管モデルを用いて前記患者の血管挙動を予測するステップと、
前記予測された血管行動のサマリーを含む患者のアバターを前記ユーザに表示するステップと
を含み、
当該方法は、任意選択で
ユーザが、前記複数の生理学的パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータの更新値を提供するステップであって、それにより前記血管モデルをさらに較正する、提供するステップ
を含む
使用方法。
【請求項13】
患者の血管挙動に関する1つ以上の測定値が与えられた場合に、患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークであって、
任意で、逆人工ニューラルネットワークは、請求項3から11のいずれかに従って訓練される
逆人工ニューラルネットワーク。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法及び/又は請求項12に記載の使用方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラム及び/又は請求項13に記載の学習済み逆人工ニューラルネットワークを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項16】
メモリとグラフィカルユーザインターフェースに結合されたプロセッサを含むシステムであって、前記メモリには、請求項14に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータプログラム及びシステムの分野に関し、より具体的には、患者の血管挙動、特に血行動態を予測するための方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療業界では、医療従事者の診断、介入計画、患者のフォローアップをサポートするシステムやプログラムが数多く提供されている。このようなシステムやプログラムは、シミュレーションや医療トレーニング、研究、診断、データベース保存、設備計画などのために開発されたもので、ヘルスケアソフトウェアソリューションとも呼ばれる。バーチャルツイン、あるいはそれに準ずるデジタルツインは、そのような目的で提供されるシステム及びプログラムの例である。バーチャルツインは、患者(「物理ツイン」)の仮想的な表現(すなわち「デジタルツイン」)を提供する。このようなバーチャルツインは、患者データ、並びに物理学に基づくシミュレーションに基づく患者及び環境変数のリアルタイム更新から生成される。バーチャルツインは、患者の解剖学的・生理学的特徴の臨床的測定値と一致させることで、患者ごとにパーソナライズされた信頼性の高いモデルを提供することを目指している。
【0003】
バーチャルツインをベースとしたいくつかのソリューションは、以下の文献に従って市場に提供されている。
[1] Boileau, Etienne, Perumal Nithiarasu, Pablo J. Blanco, Lucas O. Muller, Fredrik Eikeland Fossan, Leif Rune Hellevik, Wouter P. Donders, Wouter Huberts, Marie Willemet, and Jordi Alastruey. “A Benchmark Study of Numerical Schemes for One-Dimensional Arterial Blood Flow Modelling.” International Journal for Numerical Methods in biomedical engineering 31, no. 10 (2015): e02732
[2] Shi, Yubing, Patricia Lawford, and Rodney Hose. “Review of Zero-D and 1-D Models of Blood Flow in the Cardiovascular System.” BioMedical Engineering OnLine 10, no. 1 (April 26, 2011): 33
[3] Lal, Rajnesh. “Data Assimilation and Uncertainty Quantification in Cardiovascular Biomechanics.” PhD thesis, Universite Montpellier, 2017.
[4] Lombardi, D. “Reduced order modelling for direct and inverse problems in hemodynamics.” ROMs for the Biomechanics of Living Organs, hal-03783921.
[5] Tezzele, Marco, Francesco Ballarin, and Gianluigi Rozza. “Combined Parameter and Model Reduction of Cardiovascular Problems by Means of Active Subspaces and POD-Galerkin Methods,” 16:185-207, 2018.
[6] Koppl, Tobias, Gabriele Santin, Bernard Haasdonk, and Rainer Helmig. “Numerical Modelling of a Peripheral Arterial Stenosis Using Dimensionally Reduced Models and Kernel Methods.” International Journal for Numerical Methods in biomedical engineering 34, no. 8 (August 2018).
[7] Fresca, Stefania, and Andrea Manzoni. “Real-Time Simulation of Parameter-Dependent Fluid Flows through Deep Learning-Based Reduced Order Models.” Fluid 6, no. 7 (July 18, 2021): 259.
[8] Saito, M., Ikenaga, Y., Matsukawa, M., Watanabe, Y., Asada, T., & Lagree, P.Y. (2011). One-dimensional model for propagation of a pressure wave in a model of the human arterial network: comparison of theoretical and experimental results. Journal of Biomechanical Engineering.
[9] Lombardi, D. “Inverse Problems in 1D Hemodynamics on Systemic Networks: A Sequential Approach: Unscented Kalman Filter Estimation of Network Parameters.” International Journal for Numerical Methods in biomedical engineering 30, no. 2 (February 2014): 160-79.
[10] Alessandro Melis. “Gaussian process emulators for 1D vascular models”. PhD thesis. University of Sheffield, 2017.
【0004】
これらのソリューションは、コンピュータリソース(CPUサイクル、メモリなど)の面で非常に高価なシミュレーションを必要とするか、又は患者の解剖学的及び生理学的特徴に効率的に較正することができないため、対応するバーチャルツインの出力が患者の臨床測定値と確実に一致しないかのいずれかである。
【0005】
このような状況の中で、患者の血管挙動、特に血行動態を予測するための改良が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、患者の血管挙動、特に血行動態を予測するためのコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、循環器系の血管モデルであって、当該循環器系は、血管グラフを形成する複数の血管を含み、当該血管モデルは、複数の生理学的パラメータを含み、当該血管モデルは、一般的な血管挙動を表し、当該血管モデルは、当該複数の生理学的パラメータのサブセットをそれぞれ含む複数のサブモデルを含み、当該複数のサブモデルの各サブモデルは、当該複数の血管の血管にそれぞれ対応する血管モデルを提供するステップを含む。この方法はさらに、患者の血管挙動の1つ以上の測定を提供するステップを含む。この方法はさらに、人工ニューラルネットワークからなるサロゲートモデルであって、当該サロゲートモデルは、前記生理学的パラメータから血管挙動のシミュレーションを予測するように構成されるサロゲートモデルを提供するステップを含む。本方法はさらに、前記サロゲートモデルを使用し、1つ又は複数の測定値に基づいて血管モデルを較正するステップと、前記較正された血管モデルを用いて前記患者の血管挙動を予測するステップとを有する。
【0007】
この方法は、以下のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
・前記サロゲートモデルが、複数の人工ニューラルネットワークからなり、当該複数の人工ニューラルネットワークの各々は、複数の血管の各血管にそれぞれ対応しており、当該複数の人工ニューラルネットワークは、前記血管グラフに従って互いに接続されている。
・前記血管モデルの較正が、前記患者の血管挙動に関する1つ又は複数の測定値が与えられた場合に、当該患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークを提供するステップと、提供された前記逆人工ニューラルネットワークを使用して、複数の生理学的パラメータの値を決定するステップとを含む。
・前記逆人工ニューラルネットワークを提供する前に、当該逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップを含み、前記訓練するステップは、患者のデータセットを提供するステップであって、複数の生理学的パラメータを含む前記データベースの各エントリーが、患者の血管挙動のシミュレーション結果に対応し、当該シミュレーション結果は前記生理学的パラメータで計算され、当該生理学的パラメータは生理学的特徴を反映したものであり、提供するステップと、前記データセットに基づいて、前記逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップとを含む。
・前記逆人工ニューラルネットワークが前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値のサブセットを入力として受け付け、当該患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値の再構成を出力するように構成された第1の部分、及び前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値の再構成を入力として受け付け、前記生理学的パラメータを出力するように構成された第2の部分を有し、前記第二の部分は、任意選択で、1つの人工ニューラルネットワーク、及び前記血管グラフに従って互いに接続された複数の人工ニューラルネットワークを含む。
・前記データセットに基づく前記逆人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の(ア)(イ)間の第1の不一致を最小化するステップを含む、(ア)前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値、及び(イ)サロゲートモデルを使用し、提供された逆人工ニューラルネットワークによって予測された生理学的パラメータに基づいた、血管挙動シミュレーションの予測。
・前記データセットに基づく前記逆人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の(ウ)(エ)間の第2の不一致を最小化するステップを含む、(ウ)前記生理学的特徴を反映する生理学的パラメータ(p)、及び(エ)前記提供された逆人工ニューラルネットワークによって前記決定された生理学的パラメータ。
・前記生理的パラメータが以下の(カ)(キ)の少なくとも1つ以上を含む、(カ)複数の血管の機械的特性、及び/又は(キ)複数の血管の幾何学的特性、ここで、任意選択で、前記1つ又は複数の測定値は、前記複数の血管の1つ又は複数の圧力値及び/又は1つ又は複数の流量値及び/又は1つ又は複数の断面積値を含む。
・前記較正された血管モデルを用いて血管挙動を予測するステップが、複数のモデルを用いて、較正された血管モデルによるシミュレーションを実行するステップ、又は前記較正された血管モデルによるシミュレーションを、前記サロゲートモデルを使って予測するステップを含む。
・前記サロゲートモデルを提供する前に、当該サロゲートモデルを訓練するステップをさらに含み、訓練データセットを提供するステップであって、当該訓練データセットの各エントリーは、前記生理学的パラメータの値と、前記複数のモデルを使用した血管モデルによるシミュレーションの値を含む、提供するステップと、前記訓練データセットを用いて前記サロゲートモデルを訓練するステップとを含む。
・前記提供された訓練セットを形成するステップをさらに含み、前記提供された訓練セットを形成するステップは、前記生理学的パラメータに関する複数の値のセットを生成するステップであって、各セットは基準値の近傍で生成される、生成するステップと、前記生成された複数の生理学的パラメータの値に対応する複数のモデルを使用して、前記血管モデルによるシミュレーションを実行するステップとを含む。
【0008】
さらに、上述の方法を使用するコンピュータ実装方法が提供される。この使用方法は、前記血管モデル及び前記サロゲートモデルを得るステップと、ユーザから、前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値を取得するステップと、前記サロゲートモデルを使用し、1つ又は複数の測定値に基づいて前記血管モデルを較正するステップと、前記較正された血管モデルを用いて前記患者の血管挙動を予測するステップと、前記予測された血管行動のサマリーを含む患者のアバターを前記ユーザに表示するステップとを有し、当該方法は、任意選択でユーザが、前記複数の生理学的パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータの更新値を提供するステップであって、それにより前記血管モデルをさらに較正する、提供するステップを含む。
【0009】
さらに、患者の血管挙動に関する1つ以上の測定値が与えられた場合に、患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークであって、任意で、逆人工ニューラルネットワークは、請求項3から11のいずれかに従って訓練される逆人工ニューラルネットワークが提供される。。
【0010】
さらに、コンピュータプログラム及び/又は訓練された逆人工ニューラルネットワークが記録されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【0011】
さらに、メモリに結合されたプロセッサを含むシステムであって、メモリにはコンピュータプログラムが記録されているシステムが提供される。
【0012】
さらに、コンピュータプログラム及び/又は逆ニューラルネットワーク及び/又は血管モデル及び/又は順行サロゲートモデルが記録されたデータ記憶媒体を含む装置が提供される。
この装置は持ち運びが可能である。本装置は、例えばSaaS(Software as a Service)等のサーバやクラウドベースのプラットフォーム等において、非一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体を形成する、又はそのような媒体として機能することができる。本装置は、代替的に、データ記憶媒体に結合されたプロセッサを含んでいてもよい。このように、デバイスは全体又は部分的にコンピュータシステムを形成することができる(例えば、デバイスは全体システムのサブシステムである)。本システムは、プロセッサに結合されたグラフィカルユーザインターフェースをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本システムの実施例による仮想動脈ツイン3DビューアのGUIの一例を示す。
【
図4】本方法の実施例によるパイプラインの例を示す。
【
図5A】順行性生理学にインスパイアされた、又は順行動脈ニューラルネットワークの例を示す。
【
図5B】順行性生理学にヒントを得たニューラルネットワークの例を示す。
【
図6A】測定再構成ニューラルネットワークの例を示す。
【
図6B】逆行性生理学にヒントを得たニューラルネットワークの一例を示している。
【
図7】測定再構成ニューラルネットワークを含む、逆行性生理学にヒントを得たニューラルネットワークの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1のフローチャートを参照して、患者の血管挙動を予測するためのコンピュータ実装方法を提案する。血管の挙動は血行動態の挙動であってもよい。
【0015】
「血管挙動」とは、複数の血管からなる系における生理学的動態の時間的及び/又は空間的記述/表現を意味する。そのシステムは、例えば、ヒト又は動物の血管系であってもよい。「患者」とは、診察の対象となる人間や動物を意味する。血管モデルは患者のアバターで構成されてもよい。それ自体知られているように、アバターは、対象、例えば患者の身体のグラフィック表現(例えば、3D表現)であってもよい。アバターは、その複数の血管の3D表示で補強されたその患者のワイヤフレームを提示してもよい。「患者の血管挙動」とは、医学的検査を受けている(例えば、ヒトや動物の)身体の血管挙動を意味する。それ自体知られているように、「血行動態」とは血液の動き/流れを指す。このような動きは、一連の変数によって記述され、体内の血液の流れを支配する一般的な原則に従ってもよい。変数のセットは、それぞれ、物理的基準(例えば、血管モデルがアバターを含む場合にはアバターに対する基準)及び血管モデルの時間基準に対する空間及び/又は時間の関数であってもよい。これにより、変数の集合の各変数の値は、空間的及び/又は時間的な依存性を持ってもよい。変数のセットは(少なくとも)、流量パラメータ(例えば、圧力又は流量)に関連する1つ又は複数の変数、身体器官の電気信号(例えば、心臓の電気活動)に関連する1つ又は複数の変数、及び/又は血液循環器系の形状(例えば、動脈の断面積)に関連する1つ又は複数の変数から構成されてもよい。血行動態とは、変数の集合の各変数の値の集合による血行動態の記述をいう。例では、変数のセットは、非侵入型測定装置及び/又は方法、例えば、圧力カフ、MRI、超音波測定、CTスキャン、及び/又はECGによって測定され得る変数を含んでもよい。このような装置や方法は、要求される用途に応じて、高忠実度、中忠実度、又は低忠実度の測定値を提供してもよい。
【0016】
本方法は、ステップS10において、循環器系の血管モデルを提供するステップ(S100)を含む。「循環器系の血管モデル」とは、その循環器系を記述するように構成されたモデル、すなわち、いくつかの入力が既知であるその循環器系の挙動を予測するように構成されたモデルを意味する。循環器系は、血管グラフを形成する複数の血管からなる。「循環器系」とは、臓器系(https://en.wikipedia.org/wiki/Organ_system参照)、すなわち、ヒトや動物の体内で液体を循環させたり、信号を伝達したりするために協働する複数の血管が存在する臓器群からなる生物学的系を意味する。「血管」とは、流体又は信号の移送路を意味する。血管は、本明細書では静脈又は動脈と等価的に呼ばれてもよい。循環器系は、開放回路(呼吸器系など)を形成することもあれば、閉鎖回路(血液系など)を形成することもある。血管挙動が血行動態である例では、循環器系は心臓と血管を含む血液循環器系であってもよい。循環器系の血管グラフは、循環器系の複数の血管がどのように相互接続されているかを定義する。
【0017】
要素を「提供する」とは、例えば、ユーザから、又は(当該ユーザによるアクションに応じて自動的に、又は半自動的に)データベースから、方法によってその要素を取得することを意味する。血管モデルは複数の生理学的パラメータから構成され、一般的な血管挙動を表す。「一般的な血管挙動」とは、血管系における空間的及び/又は時間的変化のパターンや傾向を意味する。これにより、モデルは、1つ又は複数の変数の空間的及び/又は時間的挙動を表すことによって、例えば、複数の血管のうちの1つ又は複数の血管における圧力及び/又は流量の時間的振動を表すことによって、一般的な血管挙動を表すことができる。
【0018】
血管モデルは複数のサブモデルを含む。各サブモデルは、複数の生理学的パラメータのサブセットから構成され、そのような複数の生理学的パラメータに基づいて定義される。複数のサブモデルにおいて各サブモデルは、複数の血管における各血管に対応する。すなわち、複数のサブモデルは、第1のサブモデルの出力と第2のサブモデルの入力との間の関係を定義する血管グラフに従って相互接続される。各サブモデルはそれぞれの血管の挙動をシミュレートするように構成することができ、それによって血管モデルが循環器系の挙動をシミュレートすることを可能にする。
【0019】
図8Aは、異なるタイプのサブモデルを示す。上述したように、血管モデルは、複数の血管における各血管に対応する複数のサブモデルから構成される。例では、各サブモデルは、各血管の0D、1D、又は3Dモデルである。
【0020】
3Dモデルは血管の3D形状に基づき、3DNavier-Stokes方程式、流体-構造相互作用、及び/又は動脈系と静脈系の連成を考慮した高忠実度モデルを提供することができる。3Dモデルは、時間及び3D空間におけるベクトル偏微分方程式(PDE)を、構成方程式のセットと組み合わせて解いてもよい。例として、このような3Dモデルは、各時間瞬間に、3D速度場及び/又は3D圧力場を出力することができる。
【0021】
1Dモデルは、血管の1D形状に基づくことができる。そのようなモデルでは、血管内の各変数の変動は、その血管に沿ってのみ変化する可能性があり、それによって1Dモデルは断面積にわたる変動を考慮しない可能性がある。このような1Dモデルは、シリンダー軸が固定された血管の軸対称性、すなわち軸方向速度が支配的で直交成分が無視できると仮定することができ、したがって単に半径方向の変位を考慮するだけでよい。1次元モデルは、1DNavier-Stokes方程式、材料(例えば、固体又は流体)の線形化された挙動、及び/又は毛細管内の流れの定常性を有する非結合系に基づく低忠実度モデルを提供することができる。このような1Dモデルは、線形化された方程式を使用することで、方法を単純化し、高速化することができる。
【0022】
1Dモデルは、構成方程式と組み合わせて、時間及び1D空間のスカラーPDEを解いてもよい。例として、このような1Dモデルは、各時間瞬間に、流量、前記血管の断面の面積、及び/又は圧力を出力してもよい。このような1Dモデルの一例が
図8Bに示されており、モデルは以下のタイプである。
【数1】
ここで、Aは断面積810、Qは流量、t及びxは軸820に沿った時間及び空間座標、及びP圧力である。ここで、P
extは外圧であり、A
0は断面積の基準値であり、α, β, γ
v, 及びρは血管及び/又は流体の物理的パラメータに関連する。このモデルでは、変数のセットは、断面積、圧力、及び流量で構成される。あるいは、圧力と流量の2つの変数のみを考慮し、最後の式を用いて圧力から断面積を求める方法もある。
【0023】
0Dモデルは、(空間的に分布する)循環器系の記述を、ある仮定のもとで循環器系の挙動を近似する離散的な実体からなるトポロジーに単純化する一括パラメータモデリングに基づいてもよい(https://en.wikipedia.org/wiki/Windkessel_effect参照)。0次元モデルは、スカラー常微分方程式(ODE)を構成方程式と組み合わせて時間的に解いてもよい。例として、このような0Dモデルは、各時点で、血管の流量、血管の体積、及び血管の圧力を出力してもよい。この方法は、
図8Cに示されるように、0Dモデルを用いて1つ以上の血管をモデル化してもよい。この方法は特に、研究対象の血管に接続された小血管群を表現する境界条件として0Dモデルを使用してもよい。このようなモデルでは、血管又は血管のグループは、例えば以下のようなタイプの電気回路830によってモデル化される。
【数2】
ここで、C, R
1, 及びR
2は血管及び/又は流体の物理的パラメータに関連し、Q(t)及びP(t)は流量と圧力の値であり、P
outは出力圧力の値である。
【0024】
本方法はさらにステップS10において、患者の血管挙動の1つ以上の測定値を提供するステップ(S102)を含む。本方法は、上述したような任意の非侵入的な既知の方法に従って、任意にユーザによる介入を介して1つ以上の測定値を得ることができる。
【0025】
本方法は、ステップS10において、順行モデルとしても知られるサロゲートモデルを提供するステップ(S104)をさらに含む。周知のように(https://en.wikipedia.org/wiki/Surrogate_modelを参照)、サロゲートモデルとは、より複雑なモデルやシミュレーションの出力を近似するように構成された代用モデルのことである。サロゲートモデルは、生理学的パラメータから血管挙動のシミュレーションを予測するように構成されている。これにより、提供されるサロゲートモデルは、(より複雑な)複数のサブモデルの代用モデルとなり、血管モデルによって表現される一般的な血管挙動を近似することができる。「シミュレーションを予測する」とは、そのシミュレーションの推定値を得ることを意味する。サロゲートモデルは、複数の人工ニューラルネットワークを含む。各人工ニューラルネットワークは、複数の血管の血管を表し、複数のサブモデルのサブモデルに対応してもよい。以下、人工ニューラルネットワークは、等価的にニューラルネットワークと呼ばれる場合がある。人工ニューラルネットワークは、血管グラフに従って互いに接続されている。「血管グラフに従う」とは、複数の人工神経ネットワーク間の接続性、ひいては各人工ネットワークの入出力が、複数の血管の血管グラフに従うことを意味する。
【0026】
本方法はさらに、ステップS20において、サロゲートモデルを使用し、1つ以上の測定値に基づいて血管モデルを較正するステップを含む。「血管モデルを較正する」とは、複数の生理学的パラメータの値を(それぞれについて)求めることを意味する。較正時に得られた各値は、1つ以上の生理学的パラメータの1つに関連付けられる。このような取得は、複数の生理学的パラメータの1つ以上の既存の値の更新であるか、又はそのような更新で構成される。例では、本方法は、複数の生理学的パラメータのデフォルト値を持つ任意の血管を作成し、サロゲートモデルを使用し、患者に適合するように1つ以上の測定値に基づいてそれらを更新することができる。代替的又は付加的に、本方法は患者に血管モデルを割り当て、例えば加齢による患者の生理学的変化に伴って1つ又は複数の生理学的パラメータの値を更新してもよい。
【0027】
図8Dは、解剖学的詳細動脈ネットワーク(ADAN)の一例である1D ADAN56ネットワークによる複数の血管を示す。このようなADANは、例えば、論文Blanco et al., Blood flow distribution in an anatomically detailed arterial network model: criteria and algorithms. Biomech. Model. Mechanobiol. 13 (2014) 1303-1330、及びBlanco et al., An anatomically detailed arterial network model for one dimensional computational hemodynamics. IEEE Trans. Biomed. Eng. 62 (2015) 736-53により導入されている。これらは参照により本明細書に組み込まれる。
図8Dに示したADAN56は77本の動脈からなるネットワークである。
【0028】
本方法はさらに、ステップS30において、較正された血管モデルを用いて患者の血管挙動を予測するステップを含む。「血管挙動の予測」とは、ある期間にわたる前記挙動の近似値、例えば数値的近似値を意味する。言い換えれば、サロゲート代理モデルは、血管モデルによって表現される(一般的な)血管挙動の近似値を出力するように構成されている。このような近似は、その期間におけるその挙動の変動プロファイルを定義する。
【0029】
その期間はユーザが設定してもよい。代替的又は付加的に、その期間は、循環器系における多数の周期的挙動、例えば、血流の少なくとも1つの完全な周期(すなわち、1心周期)を記録するのに十分な長さに自動的に設定してもよい。
【0030】
これにより、この方法は、血管モデルが、与えられた1つ以上の測定値に従ってパラメータを設定することにより、患者の特定の挙動に適合されるので、改善されたソリューションを構成する。このような患者固有の適応は、行動予測における手法の精度を向上させる。さらに、このような適応は、所定の1つ以上の測定値のサブセットからのみ利用可能であり、複数の血管における血管挙動の測定値が提供されるとは限らない。これは、より少ない測定回数で校正を可能にすることで、改善されたソリューションとなる。例としては、この方法は、非侵入的な測定方法を用いて得られる1つ以上の測定値を持つだけでよい。これにより、高価で時間のかかる、及び/又は複雑な測定が不要になり、この方法の適用が容易になる。
【0031】
さらに、この方法は、血管モデルによって表される挙動を予測するように構成されている。言い換えれば、この方法は、関心のある期間の全期間にわたる循環器系の挙動を近似することができる。このような近似は、単にその挙動の関数である関心量(例えば、その期間にわたる平均値)を出力するのに比べて、患者の病的状態について著しく多くの情報を提供する。これにより、この方法が提供する予測に基づく医療判断が改善される。
【0032】
例では、サロゲートモデルは複数(例えば、2つ以上)の人工ニューラルネットワークから構成される。このような例では、上述した人工ニューラルネットワークは、複数の人工ニューラルネットワークから構成されてもよい。複数の人工ニューラルネットワークはそれぞれ、複数の血管に対応する。複数の人工ニューラルネットワークは、血管グラフに従って互いに接続されていてもよい。このような例では、(複数の人工ニューラルネットワークのうちの)人工ニューラルネットワークは、(複数のサブモデルのうちの)サブモデルと、(複数の血管のうちの)同じ血管に対応する。このような例のサロゲートモデルは、その構造が血管グラフに従うことから、生理学情報付き、あるいは等価的に動脈人工ニューラルネットワークと呼ぶことができる。
【0033】
例では、較正された血管モデルを用いた血管挙動の予測は、複数のサブモデルを用いて較正された血管モデルによるシミュレーションを実行するステップを含んでもよい。言い換えれば、このような例では、血管グラフとして配置された血管モデル内の複数のサブモデルを使用して血管挙動のシミュレーションを形成するように、各サブモデルはそれぞれの血管のシミュレーションを得ることができる。他の例では、較正された血管モデルを用いた血管挙動の予測は、サロゲートモデルを用いて較正された血管モデルによるシミュレーションを予測するステップを含んでもよい。この方法は、較正ステップで得られた、又は更新された生理学的パラメータにサロゲートモデルを適用することにより、そのような予測を得ることができる。
【0034】
例では、1つ又は複数の測定値は、複数の血管の1つ又は複数の圧力値及び/又は1つ又は複数の流量値及び/又は1つ又は複数の断面積値を含んでもよい。特に効率的な例では、1つ以上の測定値は、1つ以上の圧力値と1つ以上の流量値から構成されてもよい。このような例では、この方法は、それぞれの圧力の値を用いてそれぞれの断面積の値を求めることができる。
【0035】
例では、その生理学的パラメータは、複数の血管の機械的特性、及び/又は複数の血管の幾何学的特性の少なくとも1つ以上を含んでもよい。複数の血管の機械的特性は、それぞれの血管のヤング率を含んでもよい。血管挙動が血行動態である例では、力学的特性は血液の密度及び/又は粘度をさらに含んでもよい。幾何学的特性は、血管の長さ、内側/外側の半径、及び/又は壁の厚さを含んでもよい。代替的又は追加的に、生理学的パラメータは、幾何学的パラメータと機械的パラメータの関数又は組み合わせを含んでもよい。このような関数は、複数の機械的及び/又は幾何学的パラメータの明示的又は暗示的な関数であってもよい。このような関数の例を以下に示す。
【数3】
これは、上述したように0Dモデルにおける抵抗パラメータR
1を表している。パラメータR
1は、他の幾何学的パラメータ(例えば半径r)や機械的パラメータ(例えばヤング率E)に依存するが、この方法では、生理学的パラメータの数を減らすために、パラメータR
1を独立したパラメータとして使用してもよい。
【0036】
例では、血管モデルの較正は、患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値が与えられた患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークを提供するステップを含んでもよい。「逆人工ニューラルネットワーク」とは、逆問題を(少なくとも部分的に)解くように構成された人工ニューラルネットワークを意味する。応用数学と工学の分野でそれ自体知られているように、逆問題とは、一組の観察から、それを生み出した因果因子を計算するプロセスである。特に、患者の血管挙動を予測する分野における逆問題は、患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値が与えられた場合に、血管モデルの複数の生理学的パラメータの値を決定することを含んでもよい。与えられた1つ以上の測定値は、ステップS10のサブステップS102において提供された1つ以上の測定値のサブセットであってもよい。患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値が与えられた場合に、「患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワーク」とは、患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値が入力された場合に、患者の生理学的パラメータを出力するように構成された人工ニューラルネットワークを意味する。このようなニューラルネットワークは、患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値のそれぞれに対応する患者の複数の生理学的パラメータからなる訓練データセットで訓練される(すなわち、学習される)。このようなデータセットの詳細については後述する。
【0037】
血管モデルの較正は、次に、提供された逆人工ニューラルネットワークを使用して複数の生理学的パラメータの値を決定するステップを含んでもよい。上述した逆人工ネットワークが提供されることにより、複数の生理学的パラメータの値を決定するステップは、患者の血管挙動の提供された1つ以上の測定値に対して提供された逆人工ネットワークを適用するステップを含んでもよい。このようなアプリケーションは、患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値に対応する、患者に指定された複数の生理学的パラメータの値を出力し、それによって患者の血管モデルを較正することができる。
【0038】
例では、提供される逆人工ニューラルネットワークは、複数(すなわち、1つ以上)の人工ニューラルネットワークで構成されてもよい。前記複数の各人工ニューラルネットワークは、その複数の血管における1つの血管を表してもよい。人工ニューラルネットワークは、血管グラフに従って互いに接続されることがある。このような例では、本方法は、提供された複数の逆人工ニューラルネットワークを用いて複数の生理学的パラメータの値を決定することができる。
【0039】
例では、本方法は、逆人工ニューラルネットワークを提供する前に、逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップを含んでもよい。逆人工ニューラルネットワークの訓練は、複数の項目からなる患者のデータセットを提供するステップを含んでもよい。そのデータベースの各エントリーは、患者の血管挙動のシミュレーション結果に対応する複数の生理学的パラメータを含んでもよい。そのシミュレーション結果は、生理学的パラメータを用いて計算されてもよい。次に、この方法は、データセットに基づいて逆人工ニューラルネットワークを訓練してもよい。訓練は、機械学習の分野で知られている方法に従って行ってもよい。訓練は、損失関数を最小化するステップを含んでもよい。このような損失関数の例については後述する。
【0040】
提供されるデータセットは、さらに、各エントリーのそれぞれの物理的特徴を含んでもよい。生理学的特徴とは、例えば年齢、体重、身長、性別など、個々の患者を特徴付ける特徴を意味する。生理学的パラメータは生理学的特徴を反映してもよい。それ自体知られているように、このような生理学的特徴は、動脈の機械的挙動、及び/又は幾何学的特性のような患者の生理学的パラメータに影響を及ぼし、例えば、背の高い人は低い人より動脈が長い。
【0041】
例では、逆人工ニューラルネットワークは第1の部分と第2の部分とから構成される。第1の部分は、患者の血管挙動に関する1つ以上の測定値のサブセットを入力として受け入れるように構成されてもよい。このような1つ以上の測定値のサブセットは、等価的に部分測定値と呼ばれてもよい。その第1の部分は、患者の血管挙動の1つ以上の測定値の再構成を出力する(すなわち、計算する)ように構成されてもよい。すなわち、逆人工ニューラルネットワークの第1の部分は、部分的な測定値から血管モデルの較正に必要な1つ又は複数の測定値の全体を再構成するように構成される。逆人工ニューラルネットワークの第2の部分は、このような1つ以上の測定値の再構成を入力として受け入れ、生理学的パラメータを出力するように構成されてもよい。
【0042】
例では、第2の部分は、血管グラフに従って互いに接続された1つの人工ニューラルネットワーク、又は複数の人工ニューラルネットワークから構成される。第2の部分が1つの人工ニューラルネットワークで構成される例では、この方法は、求める必要のある重みの数が減少するため、そのような逆ニューラルネットワークの訓練を最適化することができる。一方、第2の部分が血管グラフに従って互いに接続された複数のニューラルネットワークから構成されている例では、血管グラフに従って、そのアーキテクチャにおいて代理モデルと同じ一般的な接続性を有する逆ネットワークを訓練することにより、較正を精緻化する方法が可能になる。
【0043】
データセットに基づく逆人工ニューラルネットワークの訓練は、患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値間の第1の不一致を最小化するステップを含んでもよい。サロゲートモデルを使用し、提供された逆人工ニューラルネットワークによって予測された生理学的パラメータに基づいて、血管挙動シミュレーションを予測する。このような第1の不一致を最小化することは、複数の生理学的パラメータの決定された値に基づいて順行サロゲートモデルの予測誤差を最小化するように、逆ニューラルネットワークを訓練する、すなわち逆ニューラルネットワークの重みを決定することができる。言い換えれば、第1の不一致を最小化するステップは、それぞれの最適化された複数の生理学的パラメータを決定することにより、順行サロゲートモデルの予測誤差を減少させる傾向がある。具体的には、第一の不一致は次のような形式である。
【数4】
ここで、dは(部分的な測定値の再構成に伴う)1つ又は複数の測定値を示し、NN
inv(d)は1つ又は複数の測定値に対する逆ニューラルネットワークNN
invの適用を示し、fは順行サロゲートモデルを示し、f(NN
inv(d))は順行サロゲートモデルを用いた血管挙動シミュレーションの予測を示す。ここで、
【数5】
は距離を表し、例えば、1つ以上の測定値d
iとそれぞれの予測値f
i(NN
inv(d))との差の絶対値の和の時間積分値を示す。
【0044】
代替的又は追加的に、データセットに基づく逆人工ニューラルネットワークの訓練は、生理学的特徴を反映する生理学的パラメータと、提供された逆人工ニューラルネットワークによる予測生理学的パラメータとの間の第2の不一致を最小化するステップを含む。そのような第2の不一致を最小化することは、複数の生理学的パラメータの値を決定する際の逆人工ニューラルネットワークの誤差を最小化するように、逆ニューラルネットワークを訓練する、すなわち逆ニューラルネットワークの重みを決定することができる。言い換えれば、第2の不一致を最小化するステップは、それぞれの最適化された複数の生理学的パラメータを決定することによる逆人工ニューラルネットワークの決定誤差を減少させる傾向がある。具体的には、第二の不一致は、次のような形式である。
【数6】
ここで、pは複数の生理学的パラメータを示し、dは1つ以上の測定値を示し、NN
invは逆人工ニューラルネットワークを示し、NN
inv(d)は逆人工ニューラルネットワークを使用して1つ以上の測定値から決定される生理学的パラメータを示す。
【0045】
例では、データセットに基づく人工ニューラルネットワークの訓練は、第1の不一致の第1の重み付けと第2の不一致の第2の重み付けを最小化するステップを含む。訓練は、例えば、第1の不一致の前記第1の重み付けと第2の不一致の前記第2の重み付けとの和を最小化することができる。具体的には、データセットに基づく人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の形式の損失関数Lを最小化するステップを含む。
【数7】
ここで、第一の不一致と第二の不一致の各々は、上述の特定の形式に従っており、第一の重み付けは1に等しく、第二の重み付けは、等価的に正則化パラメータと呼ぶことができるものに等しい。正則化パラメータは、厳密に正の値であり、損失関数の2つの項の間のバランスを確保するように設定されてもよい。これにより、損失関数の最小化が改善される。すなわち、反復最小化に必要な反復回数や計算時間の点で改善される。例えば、正則化パラメータは1から10の間の値、好ましくは5、又は10とすることができる。
【0046】
例では、本方法は、サロゲートモデルを提供する前に、サロゲートモデルを訓練するステップをさらに含んでもよい。それにより、そのモデルは、訓練データセットを提供するステップを含み、訓練データセットの各エントリーは、生理学的パラメータの値と、複数のモデルを使用した血管モデルによるシミュレーションの値を含む。次に、この方法は、訓練データセットを使用してサロゲートモデルを訓練してもよい。訓練データセットの提供は、ローカルデータベース又はリモートデータベース(例えば、クラウド上)に保存されたデータセットを取得するステップを含んでもよい。訓練データベースは、例えば1000人、10000人、100000人など、多数の患者の臨床研究からなるデータベースとすることができる。特に、本方法は、患者の生理学的特徴、すなわち、性別、年齢、身長、体重、体格、又は糖尿病、及び/又は高血圧のような基礎疾患の様々な統計的に満足できる多様性からなる、そのような目的のために設計された訓練データセットを得てもよい。例えば、訓練データセットは、子供、ティーンエイジャー、又は老人の年齢範囲の臨床データのみを含んでもよい。
【0047】
あるいは、訓練データセットの少なくとも一部を合成データセットとしてもよい。合成データセットは、データセット形成方法によって形成してもよい。例では、血管挙動を予測する方法は、データセット形成法を含んでもよい。
【0048】
例では、データセット形成方法は、生理学的パラメータについて複数の値のセットを生成するステップを含んでもよい。各セットは、生理学的パラメータの基準値の近傍で生成されてもよい。このような基準値は、血管挙動の詳細な実験的又は計算的ベンチマークが利用可能なベンチマークの値とすることができる。基準値近傍とは、基準値近傍における複数の生理的パラメータの各値の変動幅のことである。ばらつきの間隔は、20%以下、あるいは10%以下のばらつきを許容することができる。データセット形成法は、区間内の各パラメータをランダムに変化させてもよいし、ラテン超立方体など、この分野で既知の方法に従って変化させてもよい。次に、データセット形成方法は、生成された生理学的パラメータの複数の設定値に対応する複数のモデルを用いて血管モデルによるシミュレーションを実行するステップを含んでもよい。
【0049】
データセットを提供する際、又はデータセットを形成する段階として、本方法は、データセットを使用する前に、データセットの後処理のさらなるステップを適用することができる。このようなステップは、データの正規化ステップ、及び/又はデータの無次元化ステップを含むことができる。データ、例えば圧力又は流量データの無次元化及び/又は正規化は、各動脈のデータセットにわたるそれぞれの最大値(例えば、収縮期の最大値)でデータを分割するステップを含んでもよい。例として、この方法は入力パラメータをユニタリー超立方体になるように正規化することができる。これは、問題の物理学的性質と、入出力のスケールを保持するのに役立つ。このような後処理ステップは、ニューラルネットワークの訓練と、そのような訓練されたネットワークによる予測の精度を向上させる。
【0050】
上述した方法は、一般に患者の血管モデルを操作する。このような血管モデルは、その患者のデジタルツインを形成するか、又はその一部である。患者のデジタルツインは、患者(すなわち「物理的ツイン」)の仮想的な表現(すなわち「デジタルツイン」)と定義される。このような仮想表現は、患者に関連する複数のパラメータ(例えば、身体的、生理学的、病理学的など)と組み合わせたグラフィック表現をさらに含んでいてもよい。さらに、デジタルツインは、上述したようなサロゲートモデルで構成されてもよい。このようなサロゲートモデルは、より複雑だが精密な血管モデルの、それほど複雑でない代用品となりうる。例えば、Venkatesh et al., Health digital twins as tools for precision medicine: Considerations for computation, implementation, and regulation. npj Digit. Med. 5, 150 (2022)に見られるように、適切に使用すれば、このようなデジタル双生児は、デジタルツイン上のランダムな摂動をモデル化し、精密医療、臨床試験、公衆衛生に応用できる物理的ツインの予想される挙動を洞察することができる。また、上述したような患者の血管挙動を予測するための方法を使用するコンピュータ実装方法も提供される。このような方法は、その患者の血管ツインを提供するために使用されてもよい。このような方法は、本明細書では等価的に「ツイン患者法」と呼ばれてもよい。上述したように、血管ツインを提供することは、例えば患者の診断のためのツールを医療従事者に提供する上で有益である。ツイン患者の方法は、上述のように血管モデルとサロゲートモデルを得るステップを含む。次に、この方法は、ユーザ(例えば、医療従事者/医師/看護師)によって、患者の血管挙動の1つ以上の測定値を取得する。例では、そのユーザは、患者の血管挙動の1つ以上の測定値を直接入力してもよい。代替的又は付加的に、本方法は、そのユーザによる患者識別子(ID)の入力に応じて、患者データベースから患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値をインポートしてもよい。例では、患者IDは、姓、名、診療所/病院の登録ID、保険番号及び/又は生年月日のうちの1つ又は複数を含んでもよい。その患者データベースは、ローカルハードドライブに保存されたローカルデータベースであってもよいし、クラウド上に保存されたデータベースであってもよい。
【0051】
ツイン患者法は次に、サロゲートモデルを用いて、1つ以上の測定値に基づいて血管モデルを較正する。ツイン患者法は、上述したようにこのような較正を行う。次に、この方法は、較正された血管モデルを用いて患者の血管挙動を予測し、予測された血管挙動の概要を含む患者のアバターをユーザに表示する。サマリーは、経時的な圧力プロファイルや経時的な流量プロファイルのように、複数の血管における生理学的パラメータのプロファイルを含んでいてもよい。サマリーはまた、名前や年齢のような患者の生理的特徴を含んでもよい。
【0052】
例では、血管ツイン法はさらに、複数の生理学的パラメータのうちの1つ以上のパラメータの更新値をユーザによって提供するステップを含んでもよい。このような複数の生理学的パラメータの1つ以上の更新値が提供されると、本方法は上述したように血管モデルの較正を再実行する。
【0053】
この方法はコンピュータで実行される。これは、本方法のステップ(又は実質的にすべてのステップ)が、少なくとも1台のコンピュータ、又は任意のシステムによって実行されることを意味する。したがって、この方法のステップは、コンピュータによって、場合によっては完全に自動で、あるいは半自動で実行される。例では、本方法の少なくともいくつかのステップのトリガーは、ユーザとコンピュータの対話を通じて実行される。必要とされるユーザとコンピュータの相互作用のレベルは、予見される自動化のレベルと、ユーザの希望を実現する必要性とのバランスに依存してもよい。例では、このレベルはユーザ定義及び/又は事前定義としてもよい。
【0054】
方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的に適合したシステムで方法を実行することである。本システムは、メモリ及びグラフィカルユーザインターフェース(GUI)に結合されたプロセッサを備えてもよく、メモリには、本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記録される。メモリはデータベースを保存してもよい。メモリは、このようなストレージに適合したハードウェアであれば何でもよく、場合によっては複数の物理的に異なる部分(例えば、1つはプログラム用、もう1つはデータベース用)から構成される。
【0055】
図2は、システムのGUI200の例を示しており、250は患者のアバターであってもよい。GUI200は、動脈バーチャルツイン体験のプロトタイプアプリケーションを示す。GUI200は典型的なインターフェースで、標準メニューバー211のほか、下部と側部のツールバー214、215を備えてもよい。このようなメニューバー及びツールバーには、ユーザが選択可能なアイコンのセットが含まれ、各アイコンは、当技術分野で知られているように、1つ又は複数の操作又は機能に関連付けられる。これらのアイコンのいくつかは、GUI200に表示された250の編集及び/又は作業のために適合されたソフトウェアツールに関連付けられる。
【0056】
GUI200はさらに、250の3Dオリエンテーションを容易にするために、例えば213にグループ化されたもののような様々なタイプのグラフィックツールを示してもよい。GUIを介したあらゆるアクションは、触覚デバイスによって制御され、ユーザがグラフィックツールと対話できるように制御されてもよい。特に、ユーザは、タッチパッドのような触覚入力デバイス、又は当技術分野で知られているように、任意でキーボードと組み合わせたマウスを使用して、250を移動、回転、又は拡大縮小してもよい。
【0057】
例えば、バーチャルツインのアプリケーションは、例えばマウス選択によって、又は姓、名、及び/又は他の識別情報による検索機能を使用して、GUI200内のメニュー230内の患者を選択することによって、上述したステップS10を実行することによって開始してもよい。本方法は、任意に、ユーザのさらなる介入を介して、各患者の身体的及び生理学的特性(例えば、年齢、性別、体重、身長など)に応じて、利用可能な測定データを用いてパーソナライズされるアバター250を各患者に割り当ててもよい。アバター250は、前記患者の概略体積を表すワイヤフレーム251と、血液循環器系252とを含む。アバターは、血管挙動の1つ又は複数の測定値が提供された動脈と、血管モデルの較正を介してそのような測定値が再構成された動脈の残りの部分とを別々に(例えば、異なる色で)表示してもよい。選択した動脈の血流測定値は、パーソナライズの前に分析することができる。ユーザに表示されるサマリーには、圧力と流量プロファイル210と患者220に関する情報(例えば、名前、年齢、病理)が含まれる。ユーザは、血液循環器系252に提示された血管の1つを(例えば、マウスクリックで)選択してもよい。このような選択により、患者の血管挙動の提供された1つ以上の測定値がサマリー210に表示される。さらに、このような選択により、本方法は、サマリー220におけるその血管の1つ又は複数の生理学的パラメータ、例えば、ヤング率、血管の長さ、又は血管の遠位半径の値を表示してもよい。ユーザは、例えば、グラフィカルに(例えば、GUI200上のそれぞれのバーを動かすことによって)、又は新しいそれぞれの値を入力することによって、表示された値を更新することができる。その後、ユーザは、例えばGUI200のキャリブレーションボタン232をクリックすることにより、1つ又は複数の測定値のその更新された値に基づいてモデルを(再)較正することができる。このような(再)較正が行われると、本方法は(再)較正された血管モデルを用いて患者の血管挙動を自動的に予測し(すなわち、上述したようなシミュレーションを予測し)、サマリー210に更新された結果を表示してもよい。さらに、本方法は、例えばGUIのシミュレーションボタン233をクリックするなどのユーザ選択により、複数のモデルを用いて較正された血管モデルによるシミュレーションを実行してもよい。シミュレーションの実行が可能になることで、血管の挙動をより正確に予測する必要がある場合に、より正確な予測を得ることができる改善されたソリューションとなる。
【0058】
図3はシステムの一例を示しており、システムはクライアントコンピュータシステム、例えばユーザのワークステーションである。
【0059】
本実施例のクライアントコンピュータは、内部通信バスに接続された中央処理装置(CPU)1010と、同じくバスに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)1070を含む。クライアントコンピュータはさらに、バスに接続されたVRAM1100に関連するグラフィカルプロセッシングユニット(GPU)1110を備える。ビデオRAM1100は、当技術分野ではフレームバッファとしても知られている。大容量記憶装置コントローラ1020は、ハードドライブ1030などの大容量記憶装置へのアクセスを管理する。コンピュータプログラムの命令やデータを具体化するのに適した大容量記憶装置には、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスクなど、あらゆる形態の不揮発性メモリが含まれる。上記のいずれかは、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補完されるか、あるいは組み込まれてもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータは、カーソルコントロールデバイス、キーボードなどの触覚デバイス1090を含むこともできる。ディスプレイ1080上の任意の位置にカーソルを選択的に配置できるように、クライアントコンピュータにはカーソル制御装置が使用される。また、カーソル操作装置により、各種コマンドを選択したり、制御信号を入力したりすることができる。カーソル制御装置は、システムに制御信号を入力するための多数の信号発生装置を含む。一般的に、カーソル制御装置はマウスであり、マウスのボタンは信号を生成するために使用される。代替的又は追加的に、クライアントコンピュータシステムは、感応パッド、及び/又は感応スクリーンを含むことができる。
【0060】
コンピュータプログラムは、コンピュータによって実行可能な命令を含んでいてもよく、該命令は、上記システムに本方法を実行させるための手段を含んでいる。プログラムは、システムのメモリを含む、任意のデータ記憶媒体に記録可能である。プログラムは、例えば、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実装することができる。プログラムは、装置、例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のために機械可読記憶装置に具体化された製品として実装することができる。方法ステップは、入力データを操作して出力を生成することによって方法の機能を実行する命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行され得る。したがって、プロセッサは、データ記憶システム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置からデータと命令を受信し、データと命令を送信するようにプログラム可能に結合されることができる。アプリケーションプログラムは、高水準の手続き型又はオブジェクト指向プログラミング言語、あるいは必要に応じてアセンブリ言語や機械語で実装することができる。いずれにせよ、言語はコンパイル言語でもインタープリタ言語でも構わない。このプログラムは、フルインストールプログラムであってもよいし、アップデートプログラムであってもよい。システム上でプログラムを適用すると、どのような場合でも、その方法を実行するための指示が得られる。コンピュータプログラムは、代替的に、クラウドコンピューティング環境のサーバに格納され実行されることもあり、サーバは、1つ以上のクライアントとネットワークを介して通信する。このような場合、処理装置がプログラムによって構成される命令を実行することにより、クラウドコンピューティング環境上で本方法が実行される。
【0061】
上述した方法の実施例を次に示す。
【0062】
この実装は、物理シミュレーションの分野、より具体的には流体力学のシミュレーションに関連している。血行動態のユースケースに関連した特定の実装について以下に説明する。しかし、これらの実装は関連性があり、システム全体のモデルパラメータを測定することが現実的でない他の血管シナリオに適用することができる。
【0063】
3D血行動態システム全体をシミュレーションするには、計算能力の点で時間がかかる。シミュレーションが可能な場合でも、臨床データが不完全であることがほとんどであるため、非侵入的な方法で境界条件を求めるのは難しい作業である。より具体的には、測定データから患者固有の1D-0Dモデルパラメータのセットを同定するための、ニューラルネットワークベースの逆問題解決アプローチに関するものである。
【0064】
この実装により、1D-0D動脈系の代理モデリングを通じて、患者の動脈血圧と流量を心周期にわたってシミュレートするための新しいアプローチが確立される。この実装は、患者の解剖学的及び生理学的特徴の臨床測定値に対して較正することにより、このモデルをパーソナライズする、すなわち患者固有のモデルを提供するソリューションを構成する。
【0065】
実施態様は、
図4に上述したステップS10~S30に沿って描かれている以下のパイプラインによるアプローチに従う。
・ステップ410では、生理学的/幾何学的パラメータを用いて1D-0D動脈系のパラメータ化モデルが構築される。
・ステップ420では、各モデルパラメータについて生理学的変動区間が指定される。N人の患者のシミュレーションデータベースを構築するために、パラメータはパラメータ設計空間でサンプリングされる。
・ステップ430では、サンプリングされたモデルパラメータのセットに従って、血流力学ソルバーでN個のシミュレーションを解くことにより、データベースが生成される。
・ステップ440では、動脈血流シミュレーションの「順行」ニューラルネットワークサロゲートモデルが構築され、生成されたデータベース上で訓練される。ニューラルネットワークは、患者の解剖学的及び生理学的特徴を考慮して、動脈系の血流挙動を決定することができる。変形例では、ニューラルネットワークのアーキテクチャは、上述の動脈神経ネットワークに従って、動脈系の生理学からヒントを得ることができる。
・ステップ450及び460では、患者の血流データがいくつかの動脈で取得され、データはシミュレーションデータに類似するように前処理される。
・新しい患者を想定した場合、その目標は、測定データに近いシミュレーションを生成する最適なモデルパラメータのセットを決定することである。そのために逆問題解決法が適用される。ステップ470では、与えられた測定データのセットに対して、最適なモデルパラメータのセットを決定することができる第2のニューラルネットワークを訓練することによって、逆問題が解決される。これは、以前に訓練された「順行」サロゲートモデルを使って訓練される。
【0066】
ステップ480で、患者の最適なモデルパラメータのセットが決定されると、順行ニューラルネットワークを使用するか、血行動態ソルバーで1D-0Dシミュレーションを解くことによって、患者の血行動態を計算することができる。
【0067】
実装のサロゲートモデルにかかる時間は、フルシミュレーションにかかる時間の数分の1である。この高速化により、患者固有のキャリブレーションなど、より複雑なワークフローで血行動態シミュレーションを使用することが可能になる。さらに、(逆問題の)ニューラルネットワークは、血行動態システム全体を推定するために必要な患者データのサブセットだけで済むように訓練することができる。サロゲートモデルは、シミュレーションと同じ出力を持ち、関心のある巨視的な量(例えば、出力の関数)だけではない。
【0068】
これらの実装は、サロゲートモデリングにより、患者の動脈血圧と流量を心周期にわたってシミュレートする新しいアプローチを構成する。生理学に着想を得たニューラルネットワークサロゲートモデルは、動脈モデルパラメータのセットに対して、システムの各動脈の圧力信号と流量信号の機能的出力を与える。このサロゲートモデルは、ニューラルネットワークに基づく新しい逆問題解決アプローチも提供する。その目的は、限られた測定データから患者固有の1D-0Dモデルパラメータを特定することである。上述したように、開発された技術、すなわちニューラルネットワークベースのサロゲートと逆問題解決法は、非常に多様な分野と応用に適用できるため、実施例の応用範囲は血行動態シミュレーションよりもはるかに広い可能性がある。
【0069】
次に、実装における順行サロゲートモデルの構築について説明する。実装は、シミュレーションの実際の出力に最も近い予測を構築する。言い換えれば、巨視的な出力値(平均値のような)を出力する代わりに、各動脈の中心位置における完全な心周期にわたる圧力、流量、断面積を出力するように実施態様は構成されている。そのためには、機能的な出力を持つサロゲートモデルが必要である。断面積は血圧の関数なので、問題は最初の2つの信号に限定できる。
【0070】
サロゲートモデルによる所与の患者の動脈流に関する予測を改善するために、実施形態では、年齢、性別、身長、及び/又は体重のような動脈系の生理学的パラメータを変化させる可能性のある生理学的因子(すなわち、特徴)のすべてを考慮した訓練シミュレーションデータセットを採用している。したがって、生理学的変動区間が各モデルパラメータに指定され、ラテン・ハイパーキューブサンプリングと血行動態シミュレーションによって圧力/流量信号データセットが構築される。
【0071】
この実装は、順行サロゲートモデルとして機能する人工ニューラルネットワークを構築する。人工ニューラルネットワークは、患者を特徴づけるすべての生理学的パラメータの入力層で構成される。人工ニューラルネットワークは、複数の隠れ層、例えば、1層あたり4ニューロンの5つの(例えば、完全接続された)隠れ層をさらに備える。これらの実装では、活性化関数としてtanh(すなわち双曲正接)を使用する。人工ニューラルネットワークは、血行動態シミュレーションデータベースに従って各動脈の血行動態挙動を表す線形出力層をさらに備える。(データベースの)各動脈は、全心周期にわたる各血行動態場(例えば、圧力、流量)のベクトルによって表され、心周期の各時間ステップの値を持つ。そして、アダム最適化によって人工ニューラルネットワークを学習させる。
【0072】
図5Aは、そのような実装によるニューラルネットワークの例を示す。
図5Aにおいて、
【数8】
は入力パラメータ(例えば、N本の動脈に関連する生理学的パラメータ)であり、
【数9】
N本の動脈における予測血行動態(例えば、圧力及び流量)である。
【0073】
上述したように、いくつかの動脈のバリエーションでは、実装は、各動脈のパラメータを与えられた各動脈の流量信号を予測することを担当するN個の個々のニューラルネットワークへの問題の分解を採用する。ここでNは系内の動脈の数を表す。
【0074】
図5Bは、そのような実装によるニューラルネットワークの例を示す。実施形態では、上流の動脈が相対的に下流のどの動脈よりも小さい指数を有するように、動脈系の生理学に従って複数の個々のニューラルネットワークを列挙することができる。動脈nの予測値は、動脈系の生理学に従って、δが1より大きい整数のとき、動脈n+δのニューラルネットワークへの追加入力として与えられる。
図5Bの矢印の方向は、流れ方向を模式的に表し、それによってグラフを通過する情報の方向を表している。実装は、特定の複雑さの各特定の動脈の挙動を予測するように、各動脈ニューラルネットワークのアーキテクチャとハイパーパラメータを適応させることができる。予測された動作情報は、加法的適合システム予測を提供するために、グラフに渡される。
【0075】
次に、逆問題を解くニューラルネットワークの構築について説明する。この実装では、順行生理学にヒントを得たニューラルネットワークの「反転」に基づいて、全心臓周期にわたって患者の血圧(したがって断面積)及び流量信号に適合するモデルパラメータの最適なセットを決定する。
【0076】
事前に訓練された「順行」サロゲートモデルは、通常計算に数分かかるシミュレーションソルバーをエミュレートすることができる。モデルパラメータの入力に対して、事前に訓練されたモデルの予測は、N(#動脈)×T/dt(#時間ステップ)×QoIs(Quantities of Interests)の数(すなわち、圧力Pと流量Qの信号)で構成される。
【0077】
この実装では、M個の血流信号を取り込み、患者のN本の動脈の血流信号を再構成するのに必要な1D-0Dモデルパラメータを出力する(利用可能なM本の動脈の「適合」と、欠落しているN-M本の動脈の「推測」)ニューラルネットワークを得るという逆問題を定義する。この新しいモデルの訓練には、合成患者に基づく同じシミュレーションデータセットが使用される。
【0078】
測定再構成ニューラルネットワークの一例を
図6Aに示す。計測再構成ニューラルネットワーク610は、既知の信号と欠落した信号の相関関係を学習するように構成されている。言い換えれば、計測再構成ニューラルネットワーク610は、部分測定値620(M<N)を形成するM個の信号を受信し、残りのN-M個の欠落した信号を再構成(すなわち、予測)して、N個の信号からなる再構成測定630を得る。これらのN個の信号は、追加のニューラルネットワーク構造を使ってパラメータを予測するために使われる。
【0079】
図6Bは、再構成測定630を受信し、較正出力パラメータ640を出力する追加のニューラルネットワーク構造650の例を示している。
図5Bの構造500と同様に、提案されたニューラルネットワーク構造650は、各動脈の動脈パラメータを個々に予測することを担当するN個の個々のニューラルネットワークへの問題の分解に依存する。動脈nのパラメータの予測は、動脈系の生理学に従って、δが1より大きい整数のとき、動脈n+δのニューラルネットワークへの追加入力として供給される。それぞれの"動脈ニューラルネットワーク"のアーキテクチャとハイパーパラメータは、それぞれの動脈の複雑性を予測できるように適合させることができる。
【0080】
予測された情報は、加法的なコンフォーマルシステム予測を提供するために、グラフを通過する。訓練損失関数Lは次のように構成される。
【数10】
ここで、fは事前に訓練された順行ニューラルネットワーク、NN
invは逆行ニューラルネットワーク、dは血行動態データ、pは予測されるパラメータ、αは緩和パラメータである。
【0081】
図7は、測定再構成ニューラルネットワークと追加ニューラルネットワークの接続方法の一例を示す図である。
【0082】
較正プロセスがアプリケーションにどのように統合されるかの一例として、実施例による動脈バーチャルツイン体験のプロトタイプを次に説明する。このプロトタイプは、各患者の属性に応じて、利用可能な測定データでパーソナライズされたアバターを割り当てることから始まる。プロトタイプは、パーソナライズの前に、選択された動脈の血流測定値を分析することができる。
【0083】
一人の患者の動脈血流をシミュレートするには、通常数分かかる。事前に訓練された順行サロゲートモデルを使用することで、リアルタイムの経験を得ることができる。そのおかげで、バーチャルツインは動脈系全体の挙動を瞬時に予測することができる。モデルパラメータが患者固有の特徴に適合するようにパーソナライズされることを確認するために、逆ニューラルネットワークが、患者の測定データから最適な解剖学的及び生理学的パラメータのセットを決定するために使用される。したがって、それぞれの血管は患者の実際の体の特徴を反映している。リアルタイムの経験から予測された患者の血圧と流量は、臨床データと比較することができる。
【0084】
バーチャルツインは、測定不可能な動脈の血流にアクセスすることで現実を補強し、診断やインターベンションのプランニングの能力を高めることができる。動脈ツインは、将来、心臓血管系の任意の部分(例えば頸動脈)の完全3Dシミュレーションを行う際に、患者固有の境界条件を提供することもできる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管挙動、特に血行動態を予測するためのコンピュータ実装方法であって、
以下(a)~(c)を提供するステップ(S10)と
(a)循環器系の血管モデルであって、当該循環器系は、血管グラフを形成する複数の血管を含み、当該血管モデルは、複数の生理学的パラメータを含み、当該血管モデルは、一般的な血管挙動を表し、当該血管モデルは、当該複数の生理学的パラメータのサブセットをそれぞれ含む複数のサブモデルを含み、当該複数のサブモデルの各サブモデルは、当該複数の血管の血管にそれぞれ対応する血管モデル、
(b)患者の血管挙動の1つ以上の測定、及び
(c)人工ニューラルネットワークからなるサロゲートモデルであって、当該サロゲートモデルは、前記生理学的パラメータから血管挙動のシミュレーションを予測するように構成されるサロゲートモデル、
前記サロゲートモデルを使用し、1つ又は複数の測定値に基づいて血管モデルを較正するステップ(S20)と、
前記較正された血管モデルを用いて前記患者の血管挙動を予測するステップ(S30)と
を有するコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記サロゲートモデルが、複数(N個)の人工ニューラルネットワークからなり、当該複数の人工ニューラルネットワークの各々は、複数の血管の各血管にそれぞれ対応しており、当該複数の人工ニューラルネットワークは、前記血管グラフに従って互いに接続されている
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記血管モデルの較正が、
前記患者の血管挙動に関する1つ又は複数の測定値が与えられた場合に、当該患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークを提供するステップと、
提供された前記逆人工ニューラルネットワークを使用して、複数の生理学的パラメータの値を決定するステップと
を含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記逆人工ニューラルネットワークを提供する前に、当該逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップを含み、
前記訓練するステップは、
患者のデータセットを提供するステップであって、複数の生理学的パラメータを含む前記データベースの各エントリーが、患者の血管挙動のシミュレーション結果に対応し、当該シミュレーション結果は前記生理学的パラメータで計算され、当該生理学的パラメータは生理学的特徴を反映したものであり、提供するステップと、
前記データセットに基づいて、前記逆人工ニューラルネットワークを訓練するステップと
を含む
請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記逆人工ニューラルネットワークが
前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値のサブセットを入力として受け付け、当該患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値の再構成を出力するように構成された第1の部分、及び
前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値の再構成を入力として受け付け、前記生理学的パラメータを出力するように構成された第2の部分
を有し、前記第2の部分は、任意選択で、
1つの人工ニューラルネットワーク、及び
前記血管グラフに従って互いに接続された複数の人工ニューラルネットワーク
を含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記データセットに基づく前記逆人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の(ア)(イ)間の第1の不一致を最小化するステップを含む、
(ア)前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値(d)、及び
(イ)サロゲートモデルを使用し、提供された逆人工ニューラルネットワークによって予測された生理学的パラメータに基づいた、血管挙動シミュレーション(f(NNinv(d)))の予測
請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記データセットに基づく前記逆人工ニューラルネットワークの訓練は、以下の(ウ)(エ)間の第2の不一致(
【数1】
)を最小化するステップを含む
(ウ)前記生理学的特徴を反映する生理学的パラメータ(p)、及び
(エ)前記提供された逆人工ニューラルネットワーク(NN
inv)によって前記決定された生理学的パラメータ(NN
inv(d))、
請求項
4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記生理学的パラメータが以下の(カ)(キ)の少なくとも1つ以上を含む
(カ)複数の血管の機械的特性、及び/又は
(キ)複数の血管の幾何学的特性、
ここで、任意選択で、前記1つ又は複数の測定値は、前記複数の血管の1つ又は複数の圧力値及び/又は1つ又は複数の流量値及び/又は1つ又は複数の断面積値を含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記較正された血管モデルを用いて血管挙動を予測するステップが、
複数のモデルを用いて、較正された血管モデルによるシミュレーションを実行するステップ、又は
前記較正された血管モデルによるシミュレーションを、前記サロゲートモデルを使って予測するステップ
を含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記サロゲートモデルを提供する前に、当該サロゲートモデルを訓練するステップをさらに含み、
訓練データセットを提供するステップであって、当該訓練データセットの各エントリーは、前記生理学的パラメータの値と、前記複数のモデルを使用した血管モデルによるシミュレーションの値を含む、提供するステップと、
前記訓練データセットを用いて前記サロゲートモデルを訓練するステップと
を含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記提供された訓練セットを形成するステップをさらに含み、
前記提供された訓練セットを形成するステップは、
前記生理学的パラメータに関する複数の値のセットを生成するステップであって、各セットは基準値の近傍で生成される、生成するステップと、
前記生成された複数の生理学的パラメータの値に対応する複数のモデルを使用して、前記血管モデルによるシミュレーションを実行するステップと
を含む
請求項10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
請求項1に記載のコンピュータ実装方法を使用する使用方法であって、
前記血管モデル及び前記サロゲートモデルを得るステップと、
ユーザから、前記患者の血管挙動の1つ又は複数の測定値を取得するステップと、
前記サロゲートモデルを使用し、1つ又は複数の測定値に基づいて前記血管モデルを較正するステップと、
前記較正された血管モデルを用いて前記患者の血管挙動を予測するステップと、
前記予測された血管行動のサマリーを含む患者のアバターを前記ユーザに表示するステップと
を含み、
当該方法は、任意選択で
ユーザが、前記複数の生理学的パラメータのうちの1つ又は複数のパラメータの更新値を提供するステップであって、それにより前記血管モデルをさらに較正する、提供するステップ
を含む
使用方法。
【請求項13】
患者の血管挙動に関する1つ以上の測定値が与えられた場合に、患者の生理学的パラメータを予測するように訓練された逆人工ニューラルネットワークであって、
任意で、逆人工ニューラルネットワークは、請求項3に記載のコンピュータ実装方法に従って訓練される
逆人工ニューラルネットワーク。
【請求項14】
請求項1に記載のコンピュータ実装方法及び/又は請求項12に記載の使用方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラム及び/又は請求項13に記載の学習済み逆人工ニューラルネットワークを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項16】
メモリとグラフィカルユーザインターフェースに結合されたプロセッサを含むシステムであって、前記メモリには、請求項14に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とするシステム。
【外国語明細書】