(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015582
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】半導体用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240130BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20240130BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/22
C11D7/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117729
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】張替 尊子
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB14
4H003EB19
4H003EB30
4H003EB32
4H003FA04
4H003FA28
5F157AA70
5F157AA96
5F157BC04
5F157BC07
5F157BE52
5F157BF38
5F157BF39
5F157BF52
5F157BF53
5F157BF54
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF72
5F157DB03
5F157DB18
(57)【要約】
【課題】ウェハ上に残存する金属残渣、特にセリアに対して高い除去性を発現することできる半導体用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】重合体とpH調整剤を含む半導体用洗浄剤組成物であって、該重合体は、1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含み、pHが7以上である、半導体用洗浄剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体とpH調整剤を含む半導体用洗浄剤組成物であって、
該重合体は、1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含み、pHが7以上である、半導体用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記重合体の重量平均分子量が4100以上である請求項1に記載の半導体用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記重合体の総量に対し、前記1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を38質量%以上含む請求項1又は2に記載の半導体用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記pH調整剤が、下記一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1又は2に記載の半導体用洗浄剤組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2およびR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立に、水素または炭素数1~18のアルキル基を表す。)
【化2】
(式(2)中、R
4、R
5、R
6およびR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立に、水素又は炭素数1~18のアルキル基を表す。)
【請求項5】
下記一般式(3)及び/又は(4)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の半導体用洗浄剤組成物。
【化3】
(式(3)中、R
8、R
9およびR
10は、同一又は異なって、水素原子、又は、アルキル基を表す。R
11及びR
12は、同一又は異なって、アルキレン基を表す。x及びyは、同一又は異なって、0~50の整数を表す。(x+y)は1以上の整数である。)
【化4】
(式(4)中、R
13、R
14、R
15及びR
16は、同一又は異なって、水素原子、又は、アルキル基を表す。R
17、R
18、R
19、R
20及びR
21は、同一又は異なって、アルキレン基、又は、アルキニレン基を表す。x及びyは、同一又は異なって、0~50の整数を表す。(x+y)は1以上の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスにおいて、半導体素子の微細化や高集積化を技術に伴い、CMP(化学機械研磨)工程におけるウェハの平坦化などによって、ウェハ上に残存する砥粒や研磨屑などの金属残渣を除去するために、洗浄がおこなわれる。洗浄に用いる洗浄用組成物としては、例えば、特定のポリカルボン酸(特許文献1)や、特定の水溶性ポリマーと塩を形成するアンモニウムが含まれる(特許文献2)ことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-181494号公報
【特許文献2】特開2006-41494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、半導体用の洗浄剤について、ウェハに残存する金属残渣の除去に関して、改善の余地があった。特に、CMP(化学機械研磨)工程において、セリア(酸化セリウム:CeO2)粒子を含む研磨剤を用いた場合、セリア砥粒がウエハ上に残存しやすい傾向にあることから、セリア粒子を除去する必要があった。
よって、本発明は、ウェハ上に残存する金属残渣、特にセリアに対して高い除去性を発現することできる半導体用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討をおこない、本発明に想到した。すなわち本発明は、重合体とpH調整剤を含む半導体用洗浄剤組成物であって、該重合体は、1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含み、pHが7以上である、半導体用洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の半導体用洗浄剤組成物は、ウェハ上に残存する金属残渣、特にセリアに対して高い除去性を発現することできる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
[半導体用洗浄剤組成物]
<重合体>
本開示の半導体用洗浄剤組成物には、1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)(以下、「構造単位(A)」という場合もある)を有する重合体を含む。
【0008】
本開示の構造単位(A)とは、単量体が重合して形成される構造と同じ構造を有する構造単位を言い、通常は単量体に含まれる、炭素炭素不飽和二重結合の少なくとも1つが、炭素炭素単結合に置き換わった構造である。なお、単量体に由来する構造単位とは、実際に単量体が重合することにより形成された構造単位である必要は無く、単量体が重合して形成される構造と同じ構造であれば、単量体が重合する以外の方法で形成された構造単位であっても、単量体に由来する構造単位に含まれる。例えば、マレイン酸、CH(―COOH)=CH(―COOH)であれば、マレイン酸に由来する構造単位は、―CH(―COOH)―CH(―COOH)―、で表すことができる。
【0009】
本開示の、1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和多価カルボン酸」いう場合もある)に含まれる、カルボキシ基やカルボキシ基の塩は、2以上であることが好ましく、より好ましくは2である。
【0010】
本開示の、不飽和多価カルボン酸に含まれる、カルボキシ基の無水物である、―C(=O)―O―C(=O)―は、1以上含まれることが好ましく、より好ましくは1である。
本開示の2つ以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体には、その他官能基を有していてもよい。その他官能基としては、アミド基、ニトリル基、エーテル基、スルホン基、スルホン基の塩、リン酸基、リン酸基の塩、チオール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0011】
本開示の2つ以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、3-ビニルフタル酸、4-ビニルフタル酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸、1,3-シクロヘキセンジカルボン酸、1,4-シクロヘキセンジカルボン酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物等が挙げられる。
【0012】
本開示のカルボキシ基は酸型もしくは塩型どちらであってもよい。塩型として、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩であり、より好ましくは、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩である。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、より好ましくは、ナトリウム塩である。本開示のカルボキシ基の塩は、一塩のであっても二塩であってもよい。
【0013】
本開示のカルボキシ基の無水物として、例えば、上記の不飽和カルボン酸の無水物である、―C(=O)―O―C(=O)―構造を有したエチレン性不飽和単量体であればよく、より好ましくは、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などのジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0014】
本開示の重合体には、不飽和多価カルボン酸は、重合体総量に対して、38質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは、40質量%以上であり、さらに好ましくは45質量%である。一方、100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0015】
(その他単量体)
本開示の重合体は、上記1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体以外の単量体に由来する構造(以下、「その他単量体に由来する構造単位」という場合もある)を含んでいてもよい。本開示の重合体に含まれるその他単量体は、1種であってもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0016】
その他単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸エステル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;、1,3-ブタジエン、イソプレン等のジエン類;ヘキセン、ヘプテン、デセン、イソブチレン等のオレフィン類;スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等の窒素原子含有単量体;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1~300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体およびその塩等が挙げられる。
【0017】
上記重合体における、その他の単量体に由来する構造単位の割合は、全構造単位100モル%に対して、0~90モル%であることが好ましく、より好ましくは0~50モル%であり、更に好ましくは0~40モル%である。種類や量を変更することで、半導体用洗浄剤組成物における重合体の分散性を適宜調整することが出来る。
【0018】
本開示の重合体の重量平均分子量は、4100以上であることが好ましく、より好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは5500以上である。一方、40万以下であることが好ましく、より好ましくは30万以下であり、さらに好ましくは20万以下である。
【0019】
本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれる重合体の含有量は、半導体用洗浄剤組成物の総量に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0020】
<pH調整剤>
本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれるpH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸などの酸性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン、アンモニウム系化合物などの塩基性化合物が挙げられる。
【0021】
本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれる塩基性化合物として、好ましくは、下記一般式(1)、下記一般式(2)である化合物が挙げられる。
【0022】
【0023】
(式(1)中、R1、R2およびR3は、同一又は異なって、それぞれ独立に、水素または炭素数1~18のアルキル基を表す。)
【0024】
【0025】
(式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、同一又は異なって、それぞれ独立に、水素または炭素数1~18のアルキル基を表す。)
本開示のアミン化合物について、上記一般式(1)で表わされる、R1、R2およびR3の炭素数は、1~18であることが好ましく、より好ましくは1~12であり、さらに好ましくは1~8であり、よりさらに好ましくは1~4である。上記一般式(1)において表されるR1、R2およびR3について、アルキル基としては、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0026】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基等が挙げられる。
【0027】
分岐状のアルキル基としては、例えば、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、イソアミル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、tert-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-メチルペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソオクチル基、1-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基等が挙げられる。
【0028】
環状のアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
【0029】
アルキル基には、置換基を有していてもよい。置換基としては特に限定されないが、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、エーテル基、シアノ基、チオール基などが挙げられる。好ましくは、水酸基、アルコキシ基であり、より好ましくは、水酸基である。
【0030】
本開示のアミン化合物について、上記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキルアミン;アニリン、トルイジン等の芳香族アミンや、ピロール、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジアザビシクロウンデセン等の含窒素複素環式化合物等の有機アミン; モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0031】
本開示のアミン化合物について、上記一般式(2)で表わされる、R4、R5、R6およびR7の炭素数は、1~18であることが好ましく、より好ましくは1~12であり、さらに好ましくは1~8であり、よりさらに好ましくは1~4である。
【0032】
上記一般式(2)において表されるR4、R5、R6およびR7について、アルキル基としては、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。アルキル基としては、特に制限されないが、上述したR2で表されるアルキル基と同様のものが挙げられる。アルキル基には、置換基を有していてもよい。置換基としては特に限定されないが、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、エーテル基、シアノ基、チオール基などが挙げられる。好ましくは、水酸基、アルコキシ基であり、より好ましくは、水酸基である。
【0033】
上記一般式(2)において表されるR4、R5、R6およびR7について、アルキル基に有する置換基は、1以上であればよく、2以上有していてもよい。
【0034】
本開示のアミン化合物について、上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化トリメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)、ジメチルビス(2―ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、メチルトリス(2―ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0035】
本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれるpH調整剤は、半導体用洗浄剤組成物の総量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。一方、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0036】
<その他成分>
本開示の半導体用洗浄剤組成物には、その他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、特に限定されないが、例えば、色移り防止剤、柔軟剤、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、分散剤、溶媒等が挙げられる。
【0037】
本開示の半導体用洗浄剤組成物には、任意であるが、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては特に限定されないが、ノニオン性分散剤を含むことが好ましい。
【0038】
ノニオン性分散剤(以下、ノニオン性重合体という場合もある)としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。特に下記一般式(3)、(4)で示されるような化合物及びN-ビニルピロリドンに代表されるN―ビニルラクタム系重合体を含むことが好ましい。
【0039】
【0040】
(式(3)中、R8、R9およびR10は、同一又は異なって、水素原子、又は、アルキル基を表す。R11及びR12は、同一又は異なって、アルキレン基を表す。x及びyは、同一又は異なって、0~50の整数を表す。(x+y)は1以上の整数である。)
【0041】
【0042】
(式(4)中、R13、R14、R15及びR16は、同一又は異なって、水素原子、又は、アルキル基を表す。R17、R18、R19、R20及びR21は、同一又は異なって、アルキレン基、又は、アルキニレン基を表す。x及びyは、同一又は異なって、0~50の整数を表す。(x+y)は1以上の整数である。)
上記一般式(3)において、R8、R9およびR10で表されるアルキル基は、直鎖状であっても良く、分岐状であっても良い。上記一般式(3)のアルキル基の炭素数は、1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上である。一方、20以下であることが好ましく、より好ましくは18以下であり、さらに好ましくは12以下である。
【0043】
上記一般式(3)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、トリメチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(3)において、R11及びR12で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても良く、分岐状であってもよい。
【0045】
上記一般式(3)において、R11およびR12で表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、2-プロピレン基、n-ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1-メチルペンチレン基、1,4-ジメチルブチレン基等が挙げられる。好ましくは、炭素数2~4のアルキレン基であり、さらに好ましくは、炭素数2~3のアルキレン基である。ウェハ表面への金属残渣の付着を低減する傾向にある。
【0046】
上記一般式(3)において、x及びyは、同一又は異なってもよく、0~50の数であり、好ましくは0~40であり、より好ましくは0~30であり、さらに好ましくは0~25であり、よりさらに好ましくは0~20である。
【0047】
xは、アルキレンオキシド(R11O)の平均付加モル数を表し、yは、アルキレンオキシド(R12O)の平均付加モル数を表す。x及びyは、いずれのアルキレンオキシドにおいて同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
xは、0~30の数であることが好ましく、より好ましくは0~25であり、さらに好ましくは0~20である。yは、0~20の数あることが好ましく、より好ましくは0~15であり、さらに好ましくは、0~10である。ここで、x及びyは、1以上の整数であることが好ましい。親水性および疎水性を制御し易い傾向にある。
【0049】
上記一般式(3)において、分子構造がコンパクトになり高い浸透性が発現しうる点で、R8、R9及びR10のうち2つ以上がアルキル基であることが好ましい。
【0050】
上記一般式(4)において、R13、R14、R15およびR16で表されるアルキル基は、上述したR8、R9およびR10で表されるアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0051】
上記一般式(4)のアルキル基の炭素数は、1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上である。一方、20以下であることが好ましく、より好ましくは18以下であり、さらに好ましくは12以下である。
【0052】
上記一般式(4)において、R17、R18、R19、R20及びR21で表されるアルキレン基は、上述したR11およびR12で表されるアルキレン基と同様のものが挙げられる。アルキレン基として好ましくは、炭素数が2~4であり、さらに好ましくは、炭素数2~3のアルキレン基である。
【0053】
上記一般式(4)において、x及びyは、同一又は異なってもよく、0~50の数であり、好ましくは0~40であり、より好ましくは0~30であり、さらに好ましくは0~25であり、よりさらに好ましくは0~20である。
【0054】
xは、アルキレンオキシド(R17O)および(R19O)の平均付加モル数を表し、yは、アルキレンオキシド(R18O)および(R20O)の平均付加モル数を表す。x及びyは、いずれのアルキレンオキシドにおいて同一であってもよいし、異なっていてもよい。
xは、1~30の数であることが好ましく、より好ましくは1~20であり、さらに好ましくは1~18である。yは、0~30の数あることが好ましく、より好ましくは0~20であり、さらに好ましくは、0~10である。ここで、x及びyは、1以上の整数であることが好ましい。
【0055】
本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれるその他成分は、1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれるその他成分は、0.001質量%以上であることが好ましくは、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上である。一方、20%質量以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0056】
本開示の半導体用洗浄剤組成物に含まれる重合体、pH調整剤、その他成分などの各成分の含有量とは、一又は複数の実施形態において、洗浄工程に使用される、すなわち、洗浄への使用を開始する時点(使用時又は洗浄時という場合もある)での半導体用洗浄剤用組成物の各成分の含有量をいう。
【0057】
本開示の半導体用洗浄剤組成物は、分離や析出等を起こして保管安定性を損なわない範囲での量を減らした濃縮物として調製してもよい。半導体用洗浄剤組成物の濃縮タイプは、輸送コストの観点から5倍以上であることが好ましく、保存安定性の観点から100倍以下が好ましい。
【0058】
半導体用洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分が上述した含有量(すなわち、洗浄時の含有量)になるよう水で希釈して使用することができる。さらに半導体用洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分を別々に添加して使用することもできる。本開示において半導体用洗浄剤組成物の濃縮物の「使用時」又は「洗浄時」とは、半導体用洗浄剤組成物の濃縮物が希釈された状態をいう。
【0059】
本開示の半導体用洗浄剤組成物のpHは、7以上であることが好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは9以上である。一方、14以下であることが好ましく、より好ましくは、13.8以下であり、さらに好ましくは13.6以下である。
[半導体用洗浄剤組成物の製造方法]
1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体や、その他単量体を、水系溶媒で重合させることで、重合体を製造することができる。
【0060】
<重合方法>
上記重合体を製造する方法は、特に制限されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれの重合反応を用いるものであってもよい。また重合反応は光重合、熱重合のいずれであってもよい。
【0061】
重合方法としては、特に限定されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光重合開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。上記重合工程では、重合開始剤を用いることが好ましい。
【0062】
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾジイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、より好ましくは過硫酸塩である。
【0063】
これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量100gに対して、0.1g以上、30g以下であることが好ましく、0.2g以上、20g以下であることがより好ましく、0.25g以上、15g以下であることが更に好ましい。
【0064】
上記重合工程では、必要に応じ重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤として具体的には、チオグリコール酸(メルカプト酢酸)、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸(チオ乳酸)、4-メルカプトブタン酸、チオリンゴ酸及びこれらの塩等のメルカプトカルボン酸やメルカプトエタノール、チオグリセロール、2-メルカプトエタンスルホン酸等;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、次亜リン酸塩及びこれらの水和物等;亜硫酸水素(塩)や亜硫酸水素(塩)を発生し得る化合物(重亜硫酸(塩)、ピロ亜硫酸(塩)、亜ジチオン酸(塩)、亜硫酸(塩)等);等が挙げられる。中でも亜硫酸水素(塩),亜リン酸(塩),メルカプトカルボン酸等のメルカプト基を有する化合物が好ましく、より好ましくは亜硫酸水素(塩),亜リン酸(塩)である。
【0065】
本発明の共重合体の製造における連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量100モル%に対して、0モル%以上、30モル%以下が好ましく、より好ましくは0モル%以上、25モル%以下であり、更に好ましくは0モル%以上、20モル%以下であり、最も好ましくは0モル%以上、10モル%以下である。(今回は使用していないので、0を含めております。)
上記重合工程において、重合温度としては、40℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは55℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは110℃以下である。
【0066】
上記重合工程において単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法等が挙げられる。なお、ラジカル重合開始剤を使用する場合、反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0067】
重合時間としては、特に制限されないが、好ましくは30~600分であり、より好ましくは30~500分であり、更に好ましくは30~400分である。
【0068】
<本開示の半導体用洗浄剤組成物の好ましい形態の例示>
[1]重合体とpH調整剤を含む半導体用洗浄剤組成物であって、該重合体は、1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含み、pHが7以上である、半導体用洗浄剤組成物。
[2]前記重合体の重量平均分子量が4100以上である前記[1]に記載の半導体用洗浄剤組成物。
[3]前記重合体の総量に対し、前記1分子中に2つ以上のカルボキシ基(2つ以上のカルボキシ基の塩や、カルボキシ基の無水物を含む)を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を38質量%以上含む前記[1]又は[2]に記載の半導体用洗浄剤組成物。
[4]前記pH調整剤が、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む、前記[1]~[3]に記載の半導体用洗浄剤組成物。
【0069】
【化5】
(式(1)中、R
1、R
2およびR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立に、水素または炭素数1~18のアルキル基を表す。)
【0070】
【化6】
(式(2)中、R
4、R
5、R
6およびR
7は、同一又は異なって、それぞれ独立に、水素または炭素数1~18のアルキル基を表す。)
[5]下記一般式(3)及び/又は(4)で表される化合物を含む、前記[1]~[4]に記載の半導体用洗浄剤組成物。
【0071】
【化7】
(式(3)中、R
8、R
9およびR
10は、同一又は異なって、水素原子、又は、アルキル基を表す。R
11及びR
12は、同一又は異なって、アルキレン基を表す。x及びyは、同一又は異なって、0~50の整数を表す。(x+y)は1以上の整数である。)
【0072】
【化8】
(式(4)中、R
13、R
14、R
15及びR
16は、同一又は異なって、水素原子、又は、アルキル基を表す。R
17、R
18、R
19、R
20及びR
21は、同一又は異なって、アルキレン基、又は、アルキニレン基を表す。x及びyは、同一又は異なって、0~50の整数を表す。(x+y)は1以上の整数である。)
【実施例0073】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<重量平均分子量(Mw)の測定条件>
装置:Waters Alliance e2695(RI:2414 PDA:2998)
カラム:Asahipak GF-7M HQ×2、Asahipak GF-1G 7B
溶離液:0.1M酢酸ナトリウム水溶液(pH 7.4)
流速:0.5mL/min
温度:40℃
検量線:American Polymer Standards Corporation製 Polyacrylic acid standard
[重合体の合成]
<合成例1>
還流冷却器、攪拌機および温度計を備えた容量5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水606gおよび無水マレイン酸403gを仕込み、攪拌下、さらに48wt%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHaqと称する)684.7gを徐々に添加した。その後、フラスコ内の水溶液を攪拌しながら常圧下で沸点まで昇温した。次に、攪拌下に、80wt%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと称する)369.4g、35wt%過酸化水素水溶液(以下、35%H2O2と称する)103.7g、15wt%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと称する)127.6gおよびイオン交換水211gを、それぞれ別々のノズルより、80%AAは260分間、15%NaPSおよび35%H2O2は80%AAと同時に滴下を開始して260分間に渡って、イオン交換水は80%AAの滴下開始後150分経過してから、140分間に渡って滴下した。全ての滴下終了後、さらに20分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持して重合を完結させた。このようにして、アクリル酸-マレイン酸共重合体(塩)を得た。その後、このアクリル酸-マレイン酸共重合体(塩)のpHをNaOH水溶液で7.5に調整した。得られた重合体の重量平均分子量は5600であった。
【0074】
<合成例2>
還流冷却器、攪拌機および温度計を備えた容量5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水381gおよび無水マレイン酸242.6gを仕込み、攪拌下、さらに48wt%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHaqと称する)408.5gを徐々に添加した。その後、フラスコ内の水溶液を攪拌しながら常圧下で沸点まで昇温した。次に、攪拌下に、80wt%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと称する)498g、35wt%過酸化水素水溶液(以下、35%H2O2と称する)122.4g、15wt%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと称する)157.3gおよびイオン交換水250gを、それぞれ別々のノズルより、80%AAおよび35%H2O2は240分間、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して250分間に渡って、イオン交換水は80%AAの滴下開始後110分経過してから、160分間にわたって滴下した。全ての滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持して重合を完結させた。このようにして、アクリル酸-マレイン酸共重合体(塩)を得た。その後、このアクリル酸-マレイン酸共重合体(塩)のpHをNaOH水溶液で8.5に調整した。得られた重合体の重量平均分子量は10700であった。
【0075】
<合成例3>
還流冷却器、攪拌機および温度計を備えた容量5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水145.7gおよび無水マレイン酸332.3gを仕込み、攪拌下、さらに48wt%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHaqと称する)564.8gを徐々に添加した。その後、フラスコ内の水溶液を攪拌しながら常圧下で沸点まで昇温した。次に、攪拌下に、80wt%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと称する)482g、35wt%過酸化水素水溶液(以下、35%H2O2と称する)12.8g、15wt%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと称する)72.8gおよびイオン交換水511gを、それぞれ別々のノズルより、80%AAは140分間、15%NaPSとイオン交換水は80%AAと同時に滴下を開始して170分間に渡って、35%H2O2は80%AAと同時に滴下を開始して185分間に渡って滴下した。全ての滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持して重合を完結させた。このようにして、アクリル酸-マレイン酸共重合体(塩)を得た。その後、このアクリル酸-マレイン酸共重合体(塩)のpHをNaOH水溶液で8に調整した。得られた重合体の重量平均分子量は49400であった。
【0076】
[実施例1~6、比較例1]
表1に示すように、水、重合体、その他添加剤として分散剤を混合し、所定のpHになるようにpH調整剤を添加し、洗浄剤組成物を調整した。なお、添加した分散剤量は、洗浄剤組成物に対し、固形分として0.25質量%とした。
(汚染クーポン作成方法)
九州セミコンダクター社から購入したTEOS膜付ウエハを1.5cm角にカットした。
昭和電工マテリアルより購入したCeO2スラリー(昭和電工マテリアル社製HS0220)を100倍に希釈し、汚染溶液を作成した。カットしたウエハを汚染溶液に1min浸漬させた。浸漬後、超純水を入れたPFAポットに30秒浸漬し、その後超純水で5分以上すすいだ。
上記ウエハを乾燥させ、汚染クーポンを作成した。
(洗浄処理)
実施例毎に調整した洗浄剤組成物30mlをPFA容器に入れ、上述の汚染基板を洗浄剤組成物中に浸漬して、超音波装置(BRANSON社製S8500)を用いて2分間超音波照射(処理条件:出力40KHz)して洗浄を実施した。超音波処理後、超純水で5minすすぎ洗いを行い、自然乾燥させて洗浄を実施した。
(洗浄率算出方法)
洗浄前後のTEOS膜基板の表面分析を、X線光電分光機で以下の条件にて測定した。
装置:SHIMADZU社製AXIS-NOVA
測定条件/励起源:Al Kα 12mA 12kV、Pass Energy:160eV
分析の結果、洗浄を実施する前後の基板表面に存在するCe元素の差(%)で洗浄性能を判断した。なお、洗浄率は以下の式に従って算出した。
洗浄率(%)=(洗浄前基板のCe比率-洗浄後基板のCe比率)/洗浄前基板のCe比率×100
また、洗浄率は以下の判断基準に従って洗浄度を判定した。
洗浄率判断基準:洗浄率
95%超~100%:◎
90%超~95%以下:○
86%超~90%以下:△
86%以下:×
【0077】
【0078】
表1中の化合物は、以下の通りである。
MEA:モノエタノールアミン
AH212:ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド
ノニオン性分散剤(i):
【0079】
【化9】
(式中、R
8:H、R
9及びR
10はいずれも炭素数1~12の直鎖アルキル基であり、R
9とR
10の炭素数の合計が11~13、R
11:-C
2H
4-、R
12:-CH
2CH(CH
3)-、x=12、y=3、xとyは平均付加モル数を表す。)を満たす複数の化合物の混合物)。
表1の結果から、高いセリア粒子の除去性を持つことが明らかとなった。