(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155822
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ゲートドライバ用ディップ注入
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20241024BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H03K17/16 M
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067129
(22)【出願日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】63/460,476
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/504,701
(32)【優先日】2023-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大祐
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB09
5H740BB10
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5H740KK01
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5J055GX01
5J055GX02
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】 電流を注入するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】
スイッチコンバータは、ハイサイドスイッチと、ローサイドスイッチと、を含むことができる。ドライバ回路は、スイッチコンバータ内のハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを駆動するように構成され得る。コントローラは、ドライバ回路を制御する制御信号を供給するように構成され得る。さらに、ドライバ回路は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために、ドライバ回路によって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成された回路を含むことができる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
スイッチコンバータのハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを駆動するように構成されたドライバ回路と、
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために、前記ドライバ回路によって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成された回路と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記回路は、
前記ハイサイドスイッチを駆動するために、前記ドライバ回路によって出力された第1のゲート電流に第1の電流ディップを注入し、
前記ローサイドスイッチを駆動するために、前記ドライバ回路によって出力された第2のゲート電流に第2の電流ディップを注入するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ドライバ回路は、タイミングコントローラをさらに備え、
前記タイミングコントローラは、
前記電流ディップの少なくとも1つのパラメータを示すディップ設定を受信し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するように前記回路を制御するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのパラメータは、少なくとも1つのディップ遅延を含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ドライバ回路は、ルックアップテーブル(LUT)をさらに備え、
前記ドライバ回路は、
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流を受信し、
前記ルックアップテーブルを使用して、前記電流ディップのディップ設定を決定し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するように前記回路を制御するように構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ドライバ回路は、前記感知した電流をデジタルコードに変換するように構成されたアナログ・デジタルコンバータ(ADC)をさらに備え、
前記ドライバ回路は、前記デジタルコードを前記ルックアップテーブルに入力して、前記ディップ設定を決定するように構成される、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ドライバ回路は、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流で発生したリンギングのスイングを検出するように構成されたスイング検出回路をさらに備え、
前記ドライバ回路は、
検出された前記スイングを使用して前記電流ディップのディップ設定を決定し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するように前記回路を制御するようにさらに構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ドライバ回路は、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流で発生したリンギングを検出するように構成されたリンギング検出回路をさらに備え、
前記ドライバ回路は、
検出された前記リンギングを使用して前記電流ディップのディップ設定を決定し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するように前記回路を制御するようにさらに構成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを含むスイッチコンバータと、
ドライバ回路と、
前記ドライバ回路を制御する制御信号を提供するように構成されたコントローラと、
を備えるシステムであって、
前記ドライバ回路は、
前記スイッチコンバータ内の前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチを駆動し、
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために、前記ドライバ回路によって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成される、
システム。
【請求項10】
前記ドライバ回路は、
前記ハイサイドスイッチを駆動するために、前記ドライバ回路によって出力された第1のゲート電流に第1の電流ディップを注入し、
前記ローサイドスイッチを駆動するために、前記ドライバ回路によって出力された第2のゲート電流に第2の電流ディップを注入するように構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ドライバ回路は、タイミングコントローラをさらに備え、
前記タイミングコントローラは、前記電流ディップの少なくとも1つのパラメータを示すディップ設定を受信するように構成され、前記少なくとも1つのパラメータは、少なくとも1つのディップ遅延を含み、
前記タイミングコントローラは、前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するように構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記ドライバ回路は、ルックアップテーブル(LUT)をさらに備え、
前記ドライバ回路は、
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流を受信し、
前記ルックアップテーブルを使用して、前記電流ディップのディップ設定を決定し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するように構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記ドライバ回路は、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流で発生したリンギングのスイングを検出するように構成されたスイング検出回路をさらに備え、
前記ドライバ回路は、
検出された前記スイングを使用して前記電流ディップのディップ設定を決定し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するようにさらに構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記ドライバ回路は、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流で発生したリンギングを検出するように構成されたリンギング検出回路をさらに備え、
前記ドライバ回路は、
検出された前記リンギングを使用して前記電流ディップのディップ設定を決定し、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するようにさらに構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
スイッチコンバータを動作させるための方法であって、
スイッチコンバータのハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの切り替えを行うステップと、
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために使用される少なくとも1つのゲート電流に電流ディップを注入して、前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの間のスイッチノードでのリンギングを低減するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの間のスイッチノードでのリンギングの発生を検出するステップと、
前記リンギングの発生を検出したことに応答して、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために使用される前記少なくとも1つのゲート電流に前記電流ディップを注入するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スイッチノードでのリンギングの発生を検出する前記ステップは、
前記スイッチノードでの電圧の周波数が所定の閾値を上回るかを判定するステップと、
前記スイッチノードでの前記電圧の周波数が前記所定の閾値を上回ることに応答して、前記スイッチノードでリンギングが発生したことを判定するステップと、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのゲート電流に前記電流ディップを注入する前記ステップは、前記少なくとも1つのゲート電流を低減するために特定の時間に前記電流ディップを注入するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流を受信するステップと、
ルックアップテーブル(LUT)を使用して、前記電流ディップのディップ設定を決定するステップと、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流に発生するリンギング、ならびに
前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流に発生するリンギングのスイング
のうちの少なくとも一方を検出するステップと、
検出された前記スイングおよび検出された前記リンギングの少なくとも一方を使用して、前記電流ディップのディップ設定を決定するステップと、
前記ディップ設定に従って前記電流ディップを注入するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2023年4月19日に出願された「DIP INJECTION FOR LOW EMI GATE DRIVE」と題する米国特許出願第63/460,476号の優先権を主張する。その全文は、参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、半導体装置に関する。より詳細には、本開示は、リンギングおよびEMI(電磁干渉)を低減するためのゲートドライバ用ディップ注入に関する。
【背景技術】
【0003】
電圧レギュレータやスイッチングコンバータは、入力電圧を所望の電圧レベルをもつ出力電圧に変換することができる。スイッチングコンバータは、コントローラと、1対のゲートドライバと、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを含む1対のスイッチと、を含むことができる。コントローラは、制御信号(例えば、PWM(パルス幅変調)信号またはPFM(パルス周波数変調)信号)を1対のゲートドライバに提供することができる。ゲートドライバは、制御信号に従って、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを交互に駆動することができる。この交互の切り替えにより、入力電圧を出力電圧に変換することができる。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、一般に、スイッチコンバータを動作させるための半導体装置が提供される。半導体装置は、スイッチコンバータのハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを駆動するように構成されたドライバ回路を含むことができる。さらに、半導体装置は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために、ドライバ回路によって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成された回路を含むことができる。
【0005】
一実施形態において、一般に、スイッチコンバータを動作させるためのシステムが提供される。該システムは、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを含むスイッチコンバータを含むことができる。さらに、該システムは、ドライバ回路を含むことができる。さらに、該システムは、ドライバ回路を制御するための制御信号を提供するように構成されたコントローラを含むことができる。ドライバ回路は、スイッチコンバータ内のハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを駆動するように構成され得る。ドライバ回路は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために、ドライバ回路によって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成され得る。
【0006】
一実施形態において、一般に、スイッチコンバータを動作させるための方法が提供される。該方法は、スイッチコンバータのハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを切り替えるステップを含むことができる。さらに、該方法は、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの間のスイッチノードでのリンギングを低減するために、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために使用されている少なくとも1つのゲート電流に電流ディップを注入するステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現することができるシステムを示す図である。
【
図1B】一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現することができる別のシステムを示す図である。
【
図1C】一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現することができる別のシステムを示す図である。
【
図1D】一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現することができる別のシステムを示す図である。
【
図1E】一実施形態におけるディップ注入回路の応用例を示す図である。
【
図2A】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の実装例を示す図である。
【
図2B】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図2C】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図2D】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図2E】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図2F】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図3A】一実施形態におけるディップ注入回路の動作に影響を与える場合がある様々なゲート電流経路を示す図である。
【
図3B-1】一実施形態における、第1のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3B-2】一実施形態における、第1のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3C-1】一実施形態における、第2のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3C-2】一実施形態における、第2のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3D-1】一実施形態における、第3のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3D-2】一実施形態における、第3のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3E-1】一実施形態における、第4のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図3E-2】一実施形態における、第4のシナリオでのゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図4】一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現するプロセスのフロー図である。
【
図5A】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図5B】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図5C】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図5D】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図5E】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図5F】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図5G】一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
【
図6A】ドライバICの実装例における、ゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【
図6B】ドライバICの別の実装例における、ゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本願の様々な実施形態の理解を促すために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップ、および技術などを含む多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本願の様々な実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実現され得ることを理解するであろう。場合によっては、本願を不明瞭にしないために、既知の構造または処理ステップの詳細に関する説明を省略する。
【0009】
リンギングは、スイッチングコンバータのハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの一方がオンおよびオフされた後に、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの間のスイッチノードで発生する場合がある。リンギングは、スイッチングコンバータがEMI(電磁干渉)として知られる不要な無線周波数ノイズを放出させる場合があり、これにより、電子機器の動作不良、誤動作、あるいは完全な動作停止が引き起こされる場合がある。ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチが比較的速い速度で駆動される場合、スイッチングコンバータの効率が向上し、損失が減少するが、EMIは増加する可能性がある。ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチが比較的遅い速度で駆動される場合、スイッチングコンバータの効率が低下し、損失が増加するが、EMIは減少する可能性がある。
【0010】
図1Aは、一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現することができるシステムを示す図である。
図1Aに示すシステム100は、コントローラ102と、ドライバIC(集積回路)104と、ハイサイドスイッチHSと、ローサイドスイッチLSと、を少なくとも含むことができる。ドライバIC104は、HSを駆動するように構成されたドライバと、LSを駆動するように構成された別のドライバと、を含むことができる。コントローラ102は、制御信号(例えば、PWMまたはPFM)をドライバIC104に提供することができ、ドライバIC104内のドライバは、HSおよびLSを交互に駆動して、入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換することができる。システム100は、半導体装置のような装置によって実現され得る。一実施形態において、HSスイッチおよびLSスイッチは、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)などのFET(電界効果トランジスタ)であり得る。他の実施形態において、HSスイッチおよびLSスイッチは、ダイオードまたはIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり得る。
【0011】
HSがオンされるとLSはオフにされ、LSがオンにされるとHSはオフになる。HSがオンにされてLSがオフにされると、HSとLSとの間のスイッチノードSWでの電圧VSWは、Vinに引き上げられて、VSWはVinと等価になる。HSがオフにされてLSがオンにされると、スイッチノードSWでの電圧VSWは、接地に引き下げられて、VSWはゼロと等価になる。HSおよびLSの一方がオンおよびオフされる各瞬間に、スイッチノードSWでリンギングが発生する場合がある。HSスイッチおよびLSスイッチの両方の遷移は、リンギングに寄与する可能性がある。例えば、
図1Aに示すVSWの波形は、スイッチノードSWの電流の流れ方向がSWから離れているケースを示している。LSのオンからオフへの遷移、HSのオフからオンへの遷移、HSのオンからオフへの遷移、およびLSのオフからオンへの遷移の各々は、
図1Aの波形が示すリンギングに寄与する可能性がある。
【0012】
スイッチノードSWでのリンギングによって、システム100がEMI(電磁干渉)などの不要な無線周波数ノイズを放出する可能性がある。スイッチノードSWでのリンギングが増加するにつれてEMIも増加する可能性があるため、HSおよびLSがオンおよびオフされたときにスイッチノードSWでのリンギングが低減されることが望ましい。しかしながら、ここではEMIとエネルギー損失がトレードオフの関係にある。ドライバIC104が比較的速い速度でHSおよびLSを駆動する場合、システム100の効率が向上し、損失が減少するが、EMIは増加する。ドライバIC104が比較的遅い速度でHSおよびLSを駆動する場合、システム100の効率が低下し、損失が増加するが、EMIを減少させることができる。
【0013】
リンギングを低減し(この場合EMIも低減する)、エネルギー損失を低減するために、システム100は、ディップ注入106を実行して、HSおよびLSの一方の駆動に使用されるゲート電流Igateに電流ディップを注入することができる。ディップ注入106は、システム100のハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。例えば、ディップ注入106は、ドライバIC104内のディップ注入回路によって実現され得る。別の実施例において、ディップ注入106は、コントローラ102によって実現され得る。ディップ注入106の様々な実装例については後述する。電流ディップは、比較的短時間の間Igateを増加させる正のディップ(POS)、あるいは比較的短時間の間Igateを減少させる負のディップ(NEG)であり得る。ディップ注入106は、Igateによって駆動されるスイッチ(HSまたはLS)がオフにされるかオンにされるかに応じて、正のディップまたは負のディップを提供することができる。ディップ注入106から提供される電流ディップは、スイッチノードSWでのリンギングを低減することができ、Igateによって駆動されるスイッチ(HSまたはLS)がオフからオン、またはオンからオフにされるまでの遷移時間を短縮することができる。この遷移時間の短縮により、スイッチング損失を低減することができる。
図1Aに示す実施形態において、ディップ注入106を実行して、LSを駆動するIgateに電流ディップを注入することができる。
【0014】
コントローラ102は、スイッチノードSWでのリンギングの発生を検出するように構成され得る。一実施形態において、コントローラ102は、スイッチノード電圧VSWの周波数および/または振幅と、所定の閾値とを比較することができる。VSWの周波数および/または振幅が所定の閾値を上回る場合、コントローラ102は、ディップ注入106を実行して、あるいはディップ注入106のために実装されている他のハードウェアを制御して、ゲート電流Igateに電流ディップを注入することができる。別の実施形態において、コントローラ102は、特定の時間に、ディップ注入106を実行して、あるいはディップ注入106のために実装されている他のハードウェアを制御して、Igateに電流ディップを注入することができる。例えば、コントローラ102によって出力された制御信号に従って、コントローラ102は、HSスイッチおよびLSスイッチのスイッチオン時間およびスイッチオフ時間を決定することができる。コントローラ102は、HSスイッチおよびLSスイッチのスイッチオン時間およびスイッチオフ時間に従ってディップ注入106を実行するかどうかを決定し、遷移中にSWで発生し得る潜在的なリンギングを低減することができる。
【0015】
図1Bに示す別の実施形態において、ディップ注入106を実行して、HSを駆動するゲート電流に電流ディップを注入することができる。
図1Cに示す別の実施形態において、ディップ注入106を実行して、HSおよびLSの両方のためのゲート電流に電流ディップを注入することができる。さらに、
図1Dに示すように、本明細書に記載のディップ注入106は、HSとLSが異なるタイプのスイッチである場合の非同期スイッチコンバータについて実行され得る。
図1Eに示す実施形態において、ディップ注入106は、HSがダイオードでLSがFETである場合の非同期スイッチを有するブーストコンバータに対して実行され得る。
【0016】
図1Eは、一実施形態におけるディップ注入回路の応用例を示す図である。
図1Eに示す実施例において、システム140は、電気自動車(EV)の一部であり得る。システム140は、複数のチップ110、120、130と、コントローラ142と、マスター制御ユニット(MCU)144と、コンポーネント146と、を含むことができる。コントローラ142は、
図1Aに示すコントローラ102と同じであり得る。チップ110、120、130の各々は、
図1Aに示すように、ドライバIC104などのドライバICと、HSおよびLSなどの1対のスイッチと、を含むことができる。チップ110は、HSを駆動するように構成されたドライバ112と、LSを駆動するように構成されたドライバ114と、を含むことができる。ここで、ドライバ112およびドライバ114は、
図1Aに示すドライバIC104の一部であり得る。
【0017】
ディップ注入106を実現することができる他の応用例として、トラクションインバータ、オンボードチャージャー、DC・DCコンバータ、またはスイッチノードにリンギングがあるEVの任意のスイッチングシステムが挙げられる。例えば、コントローラ142およびチップ110、120、130は、EVの高電圧バッテリパックからコンポーネント146へのエネルギーの流れを管理するトラクションインバータを実装することができる。コンポーネント146がEV内のモータのロータである場合、システム140は、ロータを制御する合計6つのドライバと6つのスイッチを含むことができる。ロータは、3つのコイルを含むことができる。ロータ内の各コイルは、それぞれスイッチノードSW1、SW2、SW3を介して、チップ110、120、130のうちの1つから電力を受け取る。MCU144は、EVのMCUであり得、スイッチノードSW1、SW2、SW3からの電流を感知し、感知した電流をコントローラ142に伝達して、ロータの閉ループ制御を実行するなど、様々な機能を実行することができる。ブラシレスモータを有するEVの場合、コンポーネント146は、ステータであり得る。
【0018】
図1Eに示す実施例において、ディップ注入106を実行して、チップ110内のLSを駆動するために使用されるゲート電流に電流ディップを注入することができる。チップ110内のLSを駆動するために使用されるゲート電流に電流ディップを注入することで、スイッチノードSW1でのリンギングを低減することができる。別の実施形態(図示せず)において、ディップ注入106をチップ110内で実行し、チップ110内のHSを駆動するために使用されるゲート電流に電流ディップを注入して、スイッチノードSW1でのリンギングを低減することができる。また、チップ120、130は、スイッチノードSW2、SW3でのリンギングを低減するために、ディップ注入106のそれぞれのコピーを含むことができる。
【0019】
図2Aは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の実装例を示す図である。
図2Aに示す実施例において、LSは、ドライバ114によって電圧モードで駆動され、
図1Aおよび
図1Bに示すディップ注入106は、ディップ注入回路202によって実現され得る。ドライバ114によって出力された電圧をゲート抵抗Rgに印加し、ゲート電流Igateを生成することができる。ディップ注入回路202は、増幅器204と、キャパシタCと、を含むことができる。
図2Aに示す波形206を参照すると、増幅器204によって注入信号INJが出力され、INJがHIGHからLOWに遷移すると、LSを駆動するために使用されるゲート電流Igateに負のディップ208が注入され得る。さらに、キャパシタCの容量は、ディップ208の持続時間や振幅を含むディップ208のサイズを定義することができる。
【0020】
図2Bは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
図2Bに示す実施例において、LSは、電流源210によって電流モードで駆動され、
図1Aおよび
図1Bに示すディップ注入106は、ディップ注入回路202によって実現され得る。電流源210によって出力された電流は、ゲート電流Igateであり得る。
図2Bに示す波形212を参照すると、増幅器204によって注入信号INJが出力され、INJがHIGHからLOWに遷移すると、LSを駆動するために使用されるゲート電流Igateに負のディップ214が注入され得る。
【0021】
図2Cは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
図2Cに示す実施例において、LSは、デジタル・アナログコンバータ(DAC)コード222を使用して選択された電流源220によって電流モードで駆動され得る。DACコード222は、バイナリデジタル入力コードから変換された量子化アナログ出力であり得る。DACコード222は、コントローラ102によって生成され得るか、または一部の実施形態において、様々なシナリオ下で様々なDACコードを生成するように構成されたコントローラ102内の特定の回路(例えば、論理回路または集積回路)によって生成され得る。様々なDACコードによって、LSを駆動するIgateを出力するために様々な電流源を選択することができる。様々な電流源は、Igateの様々な値を提供することができる。
図2Cに示す波形224を参照すると、第1のDACコードは第1のゲート電流値Igate-1をもたらし、第2のDACコードは別のゲート電流値Igate-2をもたらし、第3のDACコードはディップ226を生成するゲート電流値Igate-3をもたらすことができる。様々なDACコードを使用してゲート電流にディップを注入することで、任意のサイズまたは形状のディップを生成することができる。
【0022】
図2Dは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
図2Dに示す実施例において、LSは、2つ以上の電流源230、232によって電流モードで駆動され得る。電流源230、232の各々は、Igateが異なるように修正されるように、異なる量の電流を出力することができる。
図2Dに示す波形234を参照すると、Igateは、電流源230によって最初に出力され得る。ディップ236を生成するために、電流源232は、ディップ236を生成するIgateを引き下げてIgateを修正するようにアクティブ化され得る。したがって、2つ以上の電流源によって生成された電流の重なりを使用して、LSを駆動するために使用されるIgateに電流ディップを注入することができる。一実施形態において、コントローラ102は、電流源230、232をアクティブ化または非アクティブ化する様々なタイミングを制御する制御信号を出力することができる。一部の実施形態において、コントローラ102内の特定の回路(例えば、論理回路または集積回路)は、様々なタイミングで電流源230、232をアクティブ化または非アクティブ化するための制御信号を生成するように構成され得る。
【0023】
図2Eは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。
図2Eに示す実施例において、コントローラ102は、特定の時間でIgateを低減することで電流ディップを注入することができる。コントローラ102は、特定の時間でHIGHからLOWに遷移するタイミング信号OUTを出力することができる。この遷移により、ディップ236がIgateに注入される。なお、OUTがHIGHにある場合、Igateは通常の速度のままであることに留意されたい。
図2Fは、特定の時間でIgateを低減させるタイミング信号OUTをコントローラ102が出力する同様の実装例を示している。
【0024】
図3Aは、一実施形態におけるディップ注入回路の動作に影響を与える場合がある異なるゲート電流経路を示す図である。一部の応用例において、様々なオン速度および様々なオフ速度を実現するために、非対称ゲートドライバが望ましい。
図3Aには、非対称ゲートドライバの実装例が示されている。ここで、ドライバ114および第1のゲート抵抗RgOnが充電経路を形成し、ドライバ114およびRgOffが放電経路を形成する。LSをオンにするには、ゲート電流Igateを、ドライバ114からRgOnを介してLSのゲートに流す。LSをオフにするには、LSをソース端子LSから放電し、放電した電流をドライバ114およびコントローラ102(
図1A、
図1B参照)、さらには接地へと逆流させる。
【0025】
本明細書に記載のディップ注入106は、発生している遷移でLSがオンからオフにされているか、オフからオンにされているかに応じて、正のディップまたは負のディップを注入することができる。さらに、ディップ注入106は、様々なスイッチングシナリオ(例えば、オフからオンへ、またはオンからオフへのシナリオ)および様々な固定パラメータの下で、リンギングおよびエネルギー損失に影響を与えることができる。
図3B-1および
図3B-2を参照すると、LSがオフからオンにされ、この切り替えに起因するEMIが固定量に抑制されたシナリオ310が示されている。
図3B-1および
図3B-2において、シナリオ310における波形312は、ディップ注入が実行されなかった場合の様々な結果パラメータを示し、波形314は、ディップ注入が実行された場合の様々な結果パラメータを示している。所定の閾値を上回る周波数および/または振幅を有する可能性のあるスイッチノード電圧VSWの変化に応答して、ディップ注入106を実行して、LSを駆動するゲート電流Igateに電流ディップを注入した。波形312と波形314とを比較すると、負のディップを注入した結果、リンギングを低減することができ、LSがオフからオンに遷移するまでの遷移時間Tを短縮することができた。また、遷移時間Tの短縮は、エネルギー損失Lの低減につながった。
【0026】
図3C-1および
図3C-2を参照すると、LSがオンからオフにされ、この切り替えに起因するEMIが固定量に抑制されたシナリオ320が示されている。
図3C-1および
図3C-2において、シナリオ320における波形322は、ディップ注入が実行されなかった場合の様々な結果パラメータを示し、波形324は、ディップ注入が実行された場合の様々な結果パラメータを示している。所定の閾値を上回る周波数および/または振幅を有する可能性のあるスイッチノード電圧VSWの変化に応答して、ディップ注入106を実行して、LSを駆動するゲート電流Igateに電流ディップを注入した。波形322と波形324とを比較すると、正のディップを注入した結果、リンギングを低減することができ、LSがオンからオフに遷移するまでの遷移時間Tを短縮することができた。また、遷移時間Tの短縮は、エネルギー損失Lの低減につながった。
【0027】
図3D-1および
図3D-2を参照すると、LSがオフからオンにされ、この切り替えに起因するエネルギー損失が固定量に抑制されたシナリオ330が示されている。
図3D-1および
図3D-2において、シナリオ330における波形332は、ディップ注入が実行されなかった場合の様々な結果パラメータを示し、波形334は、ディップ注入が実行された場合の様々な結果パラメータを示している。所定の閾値を上回る周波数および/または振幅を有する可能性のあるスイッチノード電圧VSWの変化に応答して、ディップ注入106を実行して、LSを駆動するゲート電流Igateに電流ディップを注入した。波形332と波形334とを比較すると、負のディップを注入した結果、リンギングを低減することができ、LSがオフからオンに遷移するまでの遷移時間Tを短縮することができた。また、リンギングの低減は、EMIの低減につながった。
【0028】
図3E-1および
図3E-2を参照すると、LSがオンからオフにされ、この切り替えに起因するエネルギー損失が固定量に抑制されたシナリオ340が示されている。
図3E-1および
図3E-2において、シナリオ340における波形342は、ディップ注入が実行されなかった場合の様々な結果パラメータを示し、波形344は、ディップ注入が実行された場合の様々な結果パラメータを示している。所定の閾値を上回る周波数および/または振幅を有する可能性のあるスイッチノード電圧VSWの変化に応答して、ディップ注入106を実行して、LSを駆動するゲート電流Igateに電流ディップを注入した。波形334と波形344とを比較すると、正のディップを注入した結果、リンギングを低減することができ、LSがオンからオフに遷移するまでの遷移時間Tを短縮することができた。また、リンギングの低減は、EMIの低減につながった。
【0029】
図4は、一実施形態における、ゲートドライバ用ディップ注入を実現するプロセスを示すフロー図である。プロセス400は、1つまたは複数のブロック402および/または406によって示される1つまたは複数の操作、動作、または機能を含むことができる。個別のブロックとして図に示されているが、所望の用途に応じて、様々なブロックを追加のブロックに分割したり、より少ない数のブロックに組み合わせたり、省略したり、異なる順序で実行されたり、並行して実行されたりすることができる。
【0030】
プロセス400は、例えば、
図1Aに示すシステム100、
図1Bに示すシステム140、またはスイッチノードでリンギングが発生し得るスイッチコンバータを含む他のシステムによって実行され得る。プロセス400は、ブロック402で開始することができる。ブロック402では、スイッチコンバータのハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチのうちの1つのスイッチがオンまたはオフされ得る。プロセス400は、ブロック402からブロック404に進むことができる。ブロック404では、リンギングの発生を検出したことに応答して、切り替えられているスイッチを駆動するために使用されるゲート電流に電流ディップが注入され得る。
【0031】
一実施形態において、リンギングの発生は、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの間のスイッチノードで検出され得る。リンギングの発生を検出したことに応答して、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方を駆動するために使用される少なくとも1つのゲート電流に電流ディップが注入され得る。
【0032】
一実施形態において、スイッチノードでのリンギングの発生を検出するステップは、スイッチノードでの電圧の周波数が所定の閾値を上回るかを判定するステップと、スイッチノードでの電圧の周波数が所定の閾値を上回ることに応答して、スイッチノードでリンギングが発生したことを判定するステップと、を含むことができる。
【0033】
一実施形態において、少なくとも1つのゲート電流に電流ディップを注入するステップは、少なくとも1つのゲート電流を低減するために特定の時間に電流ディップを注入するステップと、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流を受信するステップと、ルックアップテーブル(LUT)を使用して電流ディップのディップ設定を決定するステップと、ディップ設定に従って電流ディップを注入するステップと、を含むことができる。
【0034】
一実施形態において、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流に発生するリンギング、ならびにハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの少なくとも一方に関連する感知した電流に発生するリンギングのスイングの少なくとも一方を検出することができる。検出されたスイングおよび検出されたリンギングの少なくとも一方を使用して、電流ディップのディップ設定を決定し、ディップ設定に従って電流ディップを注入することができる。
【0035】
図におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、指定された論理機能を実現するための1つまたは複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、またはその一部を表すことができる。いくつかの代替的な実装例において、ブロックに示された機能は、図に示す順序からはずれて発生してもよい。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実現されてもよく、関係する機能に応じて、場合によっては逆の順序で実現されてもよい。また、ブロック図および/またはフローチャートの各ブロック、ならびにそれらのブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムよって実現され得ることに留意されたい。
【0036】
図5Aは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。ドライバIC104は、HSを駆動するように構成されたHSドライバIC503aと、LSを駆動するように構成されたLSドライバIC503bと、を含むことができる。HSドライバIC503aは、少なくとも1つのドライバ114aと、絶縁トランシーバ504aと、タイミングコントローラ502aと、ディップ注入回路202aと、を含むことができる。少なくとも1つのドライバ114aは、HSを駆動するように構成され得る。タイミングコントローラ502aは、ディップ注入回路204aおよびドライバ114aにタイミング機能および設定を提供するように構成され得る。絶縁トランシーバ504aは、コントローラ102からの通信情報をタイミングコントローラ502aに転送するように構成され得る。ディップ注入回路204aは、少なくとも1つのドライバ114aによって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成され得る。LSドライバIC503bは、少なくとも1つのドライバ114bと、絶縁トランシーバ504bと、タイミングコントローラ502bと、ディップ注入回路204bと、を含むことができる。少なくとも1つのドライバ114bは、LSを駆動するように構成され得る。タイミングコントローラ502bは、ディップ注入回路204bおよびドライバ114bにタイミング機能および設定を提供するように構成され得る。絶縁トランシーバ504bは、コントローラ102からの通信情報をタイミングコントローラ502bに転送するように構成され得る。ディップ注入回路204bは、少なくとも1つのドライバ114bによって出力されたゲート電流に電流ディップを注入するように構成され得る。ディップ注入回路202a、202bによって注入された電流ディップは、HSとLSとの間のスイッチノードSWでのリンギングを低減することができ、HSおよびLSがオン状態とオフ状態との間で切り替わるまでの遷移時間を短縮することができる。遷移時間の短縮により、スイッチング損失を低減することができる。
【0037】
図5Bは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。本実施形態において、コントローラ102は、HS PWM制御機能508およびHSディップ制御機能512、ならびにLS PWM制御機能510およびLSディップ制御機能514などの機能を実行するように構成され得る。コントローラ102は、HS PWM制御機能508およびLS PWM制御機能510を実行して、HSドライバIC503aおよびLSドライバIC503bにそれぞれPWM信号を提供して、HSおよびLSをそれぞれ駆動することができる。HS PWM制御機能508およびLS PWM制御機能510によるPWM情報は、HSディップ制御機能512およびLSディップ制御機能514にそれぞれ提供され得る。HSからスイッチノードSWへのHS電流516は、感知されてからコントローラ102にフィードバックされ得る。LSから接地(GND)へのLS電流518は、感知されてからコントローラ102にフィードバックされ得る。コントローラ102は、HS PWM制御機能508から提供されたHS電流516およびPWM情報をHSディップ制御機能512に入力することができ、HSディップ制御機能512は、ディップ設定526を出力することができる。コントローラ102は、LS PWM制御機能510から提供されたLS電流518およびPWM情報をLSディップ制御機能514に入力することができ、LSディップ制御機能514は、ディップ設定528を出力することができる。
【0038】
一実施形態において、ディップ設定526、528は、ディップ注入回路204a、204bをそれぞれ制御するように、ドライバIC104内のタイミングコントローラ502aおよび502bを構成することができる。例えば、コントローラ102は、それぞれのディップ遅延を決定し、決定されたディップ遅延をディップ設定526、528としてタイミングコントローラ502a、502bにそれぞれ送信することができる。ドライバIC104の各々は、それぞれのHSスイッチまたはLSスイッチをオンにするための遅延パラメータと、それぞれのHSスイッチまたはLSスイッチをオフにするための遅延パラメータとを含む2つの遅延パラメータを有することができる。ディップ遅延は、PWM信号の上昇または下降の開始から、電流ディップのディップ注入開始までの時間であり得る。タイミングコントローラ502a、502bは、ディップ遅延に従ってディップ注入回路202a、202bを制御することができる。例えば、タイミングコントローラ502aは、ディップ設定526に示されているディップ遅延によって定義された時間にHSを駆動する電流に電流ディップを注入するように、ディップ注入回路202aを制御することができる。タイミングコントローラ502bは、ディップ設定528に示されているディップ遅延によって定義された時間インスタンスにLSを駆動する電流に電流ディップを注入するように、ディップ注入回路202bを制御することができる。
【0039】
ルックアップテーブル(LUT)506aおよびタイミングコントローラ502bは、LUT506bを含むことができる。LUT506a、506bの各々は、異なる電流値(例えば、アンペアのデジタル表現)と異なるディップ遅延との間のマッピングまたは関連付けを含むことができる。HS電流516の受信に応答して、コントローラ102は、タイミングコントローラ502a内のLUT506aにHS電流516のデジタル表現を提供することができる。また、LUT506aは、HS電流516にマッピングされる、あるいはHS電流516に関連するディップ遅延を出力することができる。同様に、LS電流518の受信に応答して、コントローラ102は、タイミングコントローラ502b内のLUT506bにLS電流518のデジタル表現を提供することができる。また、LUT506bは、LS電流518にマッピングされる、あるいはLS電流518に関連するディップ遅延を出力することができる。
図5Dに示す別の実施形態において、HS電流516およびLS電流518は、ドライバIC104に直接送信され得る。ここで、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)522は、HS電流516およびLS電流518を、LUT506a、506bによって解釈可能または読み取り可能なデジタルコードなどのデジタル表現に変換することができる。
【0040】
図5Eは、一実施形態におけるゲートドライバ用ディップ注入の別の実装例を示す図である。本実施形態において、最適化されたディップ設定を決定するために、スイング情報および電流感知情報(例えば、HS電流516およびLS電流518)がコントローラ102に送信され得る。
図5Eに示す実施例において、タイミングコントローラ502aは、回路520aを含むことができ、タイミングコントローラ502bは、回路520bを含むことができる。回路520a、520bは、電流スイングなどの信号スイング(例えば、信号の範囲)を検出するように構成されたスイング検出回路であり得る。一実施形態において、HS電流516は、回路520aにフィードバックされ得、回路520aは、HS電流516で発生したリンギングの電流スイングを検出することができる。回路520aは、HS電流516でのリンギングの振幅の範囲などの検出された電流スイングをスイング情報としてコントローラ102に送信することができる。コントローラ102は、HS電流516および回路520aによって提供されたスイング情報に基づいて、ディップ設定526を決定することができる。HS電流516および回路520aによって提供されたスイング情報に基づいて決定されたディップ設定526は、HS電流516でのリンギングの電流スイングを最小限に抑えることができるディップ遅延などの最適化されたディップ設定を示すことができる。
【0041】
LS電流518は、回路520bにフィードバックされ得、回路520bは、LS電流518で発生したリンギングの電流スイングを検出することができる。回路520bは、LS電流518でのリンギングの振幅の範囲などの検出された電流スイングをスイング情報としてコントローラ102に送信することができる。コントローラ102は、LS電流518および回路520bによって提供されたスイング情報に基づいて、ディップ設定528を決定することができる。LS電流518および回路520bによって提供されたスイング情報に基づいて決定されたディップ設定528は、LS電流518でのリンギングの電流スイングを最小限に抑えることができるディップ遅延などの最適化されたディップ設定を示すことができる。HS電流516およびLS電流518のリンギングの電流スイングまたは振幅を最小限に抑えることで、スイッチノードSWでのリンギングを低減することができる。
【0042】
図5Fに示す別の例示的な実施形態において、タイミングコントローラ502aは、回路522aを含むことができ、タイミングコントローラ502bは、回路522bを含むことができる。回路522a、522bは、電流信号または感知した電流でのリンギングのタイミング(例えば、リンギングが発生する時間)を検出するように構成されたリンギング検出回路であり得る。一実施形態において、HS電流516は、回路522aにフィードバックされ得、回路522aは、HS電流516で発生したリンギングのタイミングを検出することができる。タイミングコントローラ502aは、回路522aおよびディップ設定526(コントローラ102によって提供される)によって検出されたリンギングのタイミングを使用して、ディップ注入回路202aを制御することができる。例えば、タイミングコントローラ502aは、回路522aから検出されたリンギングのタイミングと同じである場合があるタイミングで電流ディップを注入するように、ディップ注入回路202aを制御することができる。
【0043】
LS電流518は、回路522bにフィードバックされ得、回路522bは、LS電流518でのリンギングのタイミングを検出することができる。タイミングコントローラ502bは、回路522bおよびディップ設定528(コントローラ102によって提供される)によって検出されたリンギングのタイミングを使用して、ディップ注入回路202bを制御することができる。例えば、タイミングコントローラ502bは、回路522bから検出されたリンギングのタイミングと同じである場合があるタイミングで電流ディップを注入するように、ディップ注入回路202bを制御することができる。回路522a、522bから検出されたリンギングのタイミングと同じときに電流ディップを注入することで、スイッチノードでのリンギングSWを低減することができる。このリンギングの検出により、ディップ注入ドライバ202のためのディップ設定が生成される。
図5Gに示す別の実施形態において、回路522a、522bは、VinとHSとの間、およびSWとLSとの間で測定された電圧から電圧リンギングをそれぞれ検出するように構成され得る。検出された電圧リンギングは、
図5Fに示す実施形態と同様に、リンギングを低減するために使用され得る。
【0044】
図6Aは、ドライバICの実施例における、ゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
図6Aに示す例示的な実施形態において、LSとGNDとの間のリンギングを検出するために、ドライバIC104内、またはLSドライバIC503b内のコンパレータ602を使用することができる。LSの寄生ソースインダクタンス(「寄生インダクタンスL」)を横切る電圧降下を測定し、その電圧降下をコンパレータ602に供給することができる。コンパレータ602の出力RNGDETは、測定された電圧降下が電流Idsの変化率(例えば、測定された電圧降下=Ld(Ids)/dt))に正比例するので、寄生インダクタンスLを通過する電流Idsの変化率を示すことができる。
図6Aは、Idsの導関数、すなわちd(Ids)/dtが負になると、コンパレータ602がどのように電流リンギングを検出するかを示している。d(Ids)/dtが負になることに応答して、RNGDETは、HIGHからLOWに遷移することができ、ディップ注入回路202は、例えば、ディップ設定528によって定義されたディップ遅延によってRNGDETのHIGHからLOWへの遷移から遅延された時間に電流ディップを注入することができる。ゲート電流信号(「ゲート」)として示すように、電流ディップを注入することに応答して、電圧Vdsは、ディップ注入なしのシナリオと比較して、比較的安定している。
【0045】
図6Bは、ドライバICの別の実施例における、ゲートドライバ用ディップ注入の影響を示す図である。
図6Bに示す例示的な実施形態において、LSとGNDとの間のリンギングを検出するために、ドライバIC104内、またはLSドライバIC503b内のコンパレータ602を使用することができる。スイッチノードSWからの電流は、SWに接続された外部キャパシタC1を通って流れることができ、この電流の電圧を測定してコンパレータ602に供給することができる。コンパレータ602の出力RNGDETは、電圧Vdsの変化率が正の変化率から負の変化率に変化するときを示すことができる(ピークを示す)。
図6Bは、コンパレータ602がどのように電圧リンギングをVdsの導関数、すなわちd(Vds)/dtとして検出するかを示している。ここで、Vdsの導関数とキャパシタC1の容量との積は、SWから測定されキャパシタC1を通って流れる電流である。d(Vds)/dtが0になることに応答して、RNGDETは、HIGHからLOWに遷移することができ、ディップ注入回路202は、例えば、ディップ設定528によって定義されたディップ遅延によってRNGDETのHIGHからLOWへの遷移から遅延された時間に電流ディップを注入することができる。ゲート電流信号(「ゲート」)として示すように、電流ディップの注入に応答して、電圧Vdsは、ディップ注入なしのシナリオと比較して、比較的安定している。
【0046】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数を表す用語は、特に明示されない限り、その複数を含むことも意図している。また、本明細書で使用される「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を画定するが、1つまたは複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことに留意されたい。
【0047】
添付の特許請求の範囲に記載のすべての手段またはステップと機能要素の対応する構造、材料、操作、およびそれらの等価物は、具体的に記載されている他の要素と組み合わせて機能を実現するための任意の構造、材料、または操作を包含することを意図している。本発明の開示されている実施形態の説明は、例示および説明のために提供されているが、網羅的であること、あるいは開示された形態に限定されることを意図していない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形を適用することができることが明らかであろう。上述した実施形態は、本発明の原理および実用化を最適に説明するために、また、検討される特定の用途に適するように種々の修正を伴う様々な実施形態について本発明を当業者が理解できるように、選択および説明されたものである。
【外国語明細書】