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特開2024-15584高光沢熱融着バリアフィルム、高光沢熱融着バリアフィルムを用いた積層材料および積層材料を用いた袋状容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015584
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】高光沢熱融着バリアフィルム、高光沢熱融着バリアフィルムを用いた積層材料および積層材料を用いた袋状容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240130BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240130BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B9/00 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117731
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】草間 震哉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB01
3E086BB21
3E086BB51
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA29
3E086CA31
4F100AA19B
4F100AB10B
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK25C
4F100AK52C
4F100AK53C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CC03C
4F100EH662
4F100EH66B
4F100GB15
4F100JD01
4F100JD03
4F100JD09
4F100JN02
4F100JN06
(57)【要約】
【課題】
優れた遮光性、金属光沢、ガスバリア性能、密着強度を有する高光沢熱融着バリアフィルムを提供する。
【解決手段】
熱融着フィルムの少なくとも一方の側に、少なくともC、O、Al元素を含有する金属層と、該金属層上にバリア性皮膜とを有する熱融着バリアフィルムであり、該金属層と熱融着フィルムとからなる金属層フィルム部分の酸素透過率が、15cc/(m・atm・24h)以下、金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度が、1.0N/15mm以上、O原子最大濃度とバリア性皮膜の厚さの比が15atomic%/μm以上、500atomic%/μm以下、酸素透過率が1.0cc/(m・atm・24h)以下、水蒸気透過率が、1.0g/(m・24h)以下、長手方向、幅方向の光沢度が、300%以上、900%以下、ラミネート密着強度が、1.0N/15mm以上である高光沢熱融着バリアフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着フィルムの少なくとも一方の側に、少なくともC、O、Al元素を含有する金属層と、該金属層上にバリア性皮膜とを有する熱融着バリアフィルムであって、該金属層と熱融着フィルムとからなる金属層フィルム部分の酸素透過率が、15cc/(m・atm・24h)以下、下記の方法で測定される金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度が、1.0N/15mm以上であり、X線光電子分光法のデプス分析で検出される熱融着フィルム側から最初のO原子濃度のピークであるO原子最大濃度とバリア性皮膜の厚さの比(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)が15atomic%/μm以上、500atomic%/μm以下、酸素透過率が1.0cc/(m・atm・24h)以下、水蒸気透過率が、1.0g/(m・24h)以下、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度が、300%以上、900%以下、ラミネート密着強度が、1.0N/15mm以上である高光沢熱融着バリアフィルム。
<金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度の測定方法>
金属層フィルムの金属層面に接着剤を用いて厚さ20μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートした後、熱融着フィルム面同士を重ね合わせ、加熱温度140℃、圧力1kgf/cm2、加熱時間1.0秒で加熱後に剥離角度90°、引張速度300mm/分で熱融着フィルムと金属層間の密着強度を測定する。
【請求項2】
熱融着フィルムが、ポリエチレン系フィルムまたはポリプロピレン系フィルムである請求項1記載の高光沢熱融着バリアフィルム。
【請求項3】
バリア性皮膜が、アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びエポキシ基含有シランカップリング剤を含むガスバリア性組成物からなる請求項1又は2に記載の高光沢熱融着バリアフィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の高光沢熱融着バリアフィルムのバリア性皮膜上にプラスチックフィルムを設けた積層材料。
【請求項5】
プラスチックフィルムが、熱融着フィルムと同じ素材である請求項4に記載の積層材料。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の積層材料を用いた袋状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高光沢熱融着バリアフィルム、高光沢熱融着バリアフィルムを用いた積層材料および積層材料を用いた袋状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属蒸着フィルムを酸素バリア層および紫外線遮蔽層として用いながら、追加的な補強層を用いることなく、安価に薬液用の外装袋を製造できる積層体として、基材フィルム、金属蒸着フィルム、シーラントフィルムを少なくともこの順に押出樹脂層を介して積層してなる積層体であって、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面側には、アンカーコート剤層が設けられ、前記アンカーコート剤層と前記シーラントフィルムとが、酸素バリア性を有する積層体が開示されている(特許文献1)。
【0003】
酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性を有し、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、電子部品、その他種々の物品を充填包装するのに有用なガスバリア性フィルムとして、無延伸ポリプロピレンフィルムの表面に、酸素ガスによるプラズマ処理面、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスによるプラズマ処理面を設け、更に、該プラズマ処理面に、アルミニウムの蒸着膜を設けるガスバリア性フィルムおよびその製造法が開示されている(特許文献2)。
【0004】
ガスバリア性の無延伸ポリプロピレンフイルムとして、無延伸ポリプロピレンフイルムの表面に、50nm以下の厚さのAl蒸着層と、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂又は酢ビ変性ポリエチレン樹脂からなる樹脂層とが直接に接して一体となったガスバリア層を、Al蒸着層を内側として形成したガスバリア性無延伸ポリプロピレンフイルムが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】特開2020-11390号公報
【特許文献2】特開平11-279306号公報
【特許文献3】特開平7-266490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今、包装業界全体では、コスト削減や環境対応が望まれている。特許文献1では、基材フィルム、金属蒸着フィルム、シーラントフィルム、押出樹脂層、アンカーコート剤層が設けられており、多数の工程が必要なこと、また、積層体を回収し、リサイクルを行おうとした場合、多種類の素材が含まれており、リサイクルが難しいという問題がある。
【0007】
ガスバリア性能を高めることにより、食材包装製品のシェルフライフをより長くし、食品ロスを減らすことが求められているが、特許文献2および特許文献3ではガスバリア性能が、不十分という問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、優れた遮光性、金属光沢、ガスバリア性能、密着強度を有する高光沢熱融着バリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。
【0010】
熱融着フィルムの少なくとも一方の側に、少なくともC、O、Al元素を含有する金属層と、該金属層上にバリア性皮膜とを有する熱融着バリアフィルムであって、該金属層と熱融着フィルムとからなる金属層フィルム部分の酸素透過率が、15cc/(m・atm・24h)以下、下記の方法で測定される金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度が、1.0N/15mm以上であり、X線光電子分光法のデプス分析で検出される熱融着フィルム側から最初のO原子濃度のピークであるO原子最大濃度とバリア性皮膜の厚さの比(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)が15atomic%/μm以上、500atomic%/μm以下、酸素透過率が1.0cc/(m・atm・24h)以下、水蒸気透過率が、1.0g/(m・24h)以下、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度が、300%以上、900%以下、ラミネート密着強度が、1.0N/15mm以上である高光沢熱融着バリアフィルムである。
【0011】
<金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度の測定方法>
金属層フィルムの金属層面に接着剤を用いて厚さ20μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートした後、熱融着フィルム面同士を重ね合わせ、テスター産業(株)製TP-701を用いて、加熱温度140℃、圧力1kgf/cm2、加熱時間1.0秒後に剥離角度90°、引張速度300mm/分で熱融着フィルムと金属層間の密着強度を測定する。
【0012】
また、上述の高光沢熱融着バリアフィルムのバリア性皮膜上にプラスチックフィルムを設けた積層材料である。
【0013】
また、上述の積層材料を用いた袋状容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた遮光性、金属光沢、ガスバリア性能、密着強度を有する高光沢熱融着バリアフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の高光沢熱融着バリアフィルムは、熱融着フィルムの少なくとも一方の側に、少なくともC、O、Al元素を含有する金属層と、該金属層上にバリア性皮膜とを有する熱融着バリアフィルムであって、該金属層と熱融着フィルムとからなる金属層フィルム部分の酸素透過率が、15cc/(m・atm・24h)以下、下記の方法で測定される金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度が、1.0N/15mm以上であり、X線光電子分光法のデプス分析で検出される熱融着フィルム側から最初のO原子濃度のピークであるO原子最大濃度とバリア性皮膜の厚さの比(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)が15atomic%/μm以上、500atomic%/μm以下、酸素透過率が1.0cc/(m・atm・24h)以下、水蒸気透過率が、1.0g/(m・24h)以下、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度が、300%以上、900%以下、ラミネート密着強度が、1.0N/15mm以上である高光沢熱融着バリアフィルムである。
【0016】
<金属層と熱融着フィルム間の密着強度の測定方法>
金属層フィルムの金属層面に接着剤を用いて厚さ20μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートした後、熱融着フィルム面同士を重ね合わせ、加熱温度140℃、圧力1kgf/cm2、加熱時間1.0秒後に剥離角度90°、引張速度300mm/分で熱融着フィルムと金属層間の密着強度を測定する。
【0017】
本発明における熱融着フィルムは、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルムが好ましい。ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルムは、単層でもよいし、複層でもよい。ポリプロピレン系フィルムは、透明性、防湿性に優れており、ヒートシール性も有することから、優れた包装用ラミネート用材料として用いることができる、無延伸ポリプロピレン系フィルムが特に好ましい。本発明において、無延伸ポリプロピレン系フィルムに植物由来の低密度ポリエチレンが含有されていてもよい。前記植物由来の低密度ポリエチレンとは、バイオマス由来のポリエチレンの原料から製造されたフィルムである。エチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。例えば、バイオマス由来のポリエチレンの製造方法として、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用い、植物原料は特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。植物由来のバイオマスポリエチレン系樹脂を用いることによりバイオマス度の高い積層フィルムを提供することができる。また、本発明の無延伸ポリプロピレン系フィルムには、本発明の目的とする光沢度、酸素透過率、密着強度を阻害しない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、帯電防止剤、塩酸吸収剤、耐ブロッキング剤、滑剤等を含むことができる。これらの添加剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明において、金属層と熱融着フィルムとからなる金属層フィルム部分の酸素透過率は、15cc/(m・atm・24h)以下が好ましく、12cc/(m・atm・24h)以下がより好ましい。金属層フィルム部分の酸素透過率を、15cc/(m・atm・24h)以下とすることで後述するバリア性皮膜を金属層フィルム部分の金属層上に、形成した後に、高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率、水蒸気透過率を目的の範囲とすることができる。金属層フィルム部分の酸素透過率が、15cc/(m・atm・24h)を超えると、バリア性皮膜を金属層フィルム部分の金属層上に形成した後に、高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率を、目的の範囲とすることができないという問題が起こる。
【0019】
本発明において、金属層と熱融着フィルム間の下記の方法で測定される密着強度は、1.0N/15mm以上であることが好ましく、1.5N/15mm以上であることがより好ましい。
【0020】
<金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度の測定方法>
金属層フィルム部分の金属層面に接着剤を用いて厚さ20μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートした後、熱融着フィルム面同士を重ね合わせ、テスター産業(株)製TP-701を用いて、加熱温度140℃、圧力1kgf/cm2、加熱時間1.0秒後に剥離角度90°、引張速度300mm/分で熱融着フィルムと金属層間の密着強度を測定した。
【0021】
熱圧着後の密着強度が、1.0N/15mm未満となると、本発明の高光沢熱融着バリアフィルムを用いて後述する積層材料を作製し、それを袋状容器とした場合、熱圧着シール部分において、剥がれが発生する場合があり、実用上問題となる場合がある。
【0022】
本発明において、金属層は、少なくともC、O、Al元素を含有し、厚さは30nm以上、70nm以下である。
【0023】
後述する、バリア性皮膜の厚さに対する、X線光電子分光法のデプス分析により検出される熱融着フィルム側から最初のO原子濃度のピークである最大濃度、すなわち、(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)が15atomic%/μm以上、500atomic%/μm以下であり、20atomic%/μm以上、450atomic%/μm以下が好ましい。X線光電子分光法のデプス分析により検出される熱融着フィルム側から最初のO原子濃度ピークである最大濃度は、後述のX線光電子分光法のデプス分析の方法で本発明の高光沢熱融着バリアフィルムを測定した際、C、O、Al元素の原子濃度の合計を100atomic%とした場合、熱融着フィルム側から最初に確認できるO原子濃度ピークの最大濃度をいう。また、バリア性皮膜の厚さは、後述する方法で測定されるバリア性皮膜の厚さのことをいい、0.10μm以上、3.00μm以下が好ましい。(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)は、上述のO原子濃度ピークの最大濃度をバリア性皮膜の厚さで割り返したものである。例えば、O原子濃度ピークの最大濃度が、40atomic%、バリア性皮膜の厚さが、0.2μmの場合、200atomic%/μmとなる。熱融着フィルム側から最初のO原子濃度ピークの最大濃度は、金属層フィルムの金属層が熱融着フィルム表面に付着する付近のO原子濃度となる。金属層を形成する金属粒子が熱融着フィルム表面に付着する際に、熱融着フィルム表面に吸着した金属粒子は、運動エネルギーを失いながら、熱融着フィルム表面を拡散、マイグレーションした後に熱融着フィルム表面に沈着する。その後、沈着した金属粒子上に金属粒子が蓄積し、金属層となる。すなわち、金属粒子が熱融着フィルム表面に沈着する箇所は、その後、蓄積される金属層の結晶性や、組成を決定づける重要な個所となり、熱融着フィルム側から最初のO原子濃度ピークの最大濃度が金属層全体に影響を及ぼす。O原子最大濃度が低くなり、また、バリア性皮膜の厚さが厚くなり、(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)が15atomic%/μm未満となると、O原子最大濃度が低くなることで目的とする金属層全体の組成とならず、バリア性皮膜との境界の相互作用が少なくなり、剥がれなどの不良が発生する場合がある。また、O原子最大濃度が高くなり、バリア性皮膜の厚さが薄くなり、(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)が、500atomic%/μmを超えると、O原子最大濃度が高くなり、酸化が進みすぎ、金属層の熱融着フィルム表面付近が脆くなり、熱融着フィルムと金属層との剥がれなどの不良が発生する場合がある。
【0024】
本発明において、高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率は、1.0cc/(m・atm・24h)以下、水蒸気透過率は、1.0g/(m・24h)以下、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度は、300%以上、900%以下、ラミネート密着強度は、1.0N/15mm以上である。さらに酸素透過率は、0.8cc/(m・atm・24h)以下、水蒸気透過率は、0.8g/(m・24h)以下、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度は、400%以上、800%以下、ラミネート密着強度は、1.2N/15mm以上であることが好ましい。高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率が、1.0cc/(m・atm・24h)を超えると、後述する袋状容器に内容物を保管する際に大気中の酸素が袋状容器の中に入り、内容物が酸化され、内容物の保管期間が短くなる場合があり、水蒸気透過率が、1.0g/(m・24h)を超えると、内容物の保管時に大気中の水分が袋状容器の中に入り、内容物が湿気ることにより、内容物の保管期間が短くなる場合がある。
【0025】
高光沢熱融着バリアフィルムの長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度とは、後述する方法で測定することができる。長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度が、MD、TDともに300%より少ない場合、後述する積層材料とした場合に、外観が不良となり、実用上問題となり、900%を超えると高光沢熱融着バリアフィルム製造時に、熱融着フィルムへの熱の影響が大きくなり、熱融着フィルムが変形、破れを起こすことにより、本発明の目的とする高光沢熱融着バリアフィルムが得られなくなる場合がある。
【0026】
本発明の高光沢熱融着バリアフィルムのバリア性皮膜上にプラスチックフィルムを設け積層材料とすることができる。
【0027】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン2,6-ナフタレートなどのポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどの単独重合体または共重合体からなるフィルム、シートが挙げられる。積層材料とした後のリサイクルなどを考慮すると熱融着フィルムと同じ素材であることが好ましく、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルムが好ましい。内容物に対する強度保持、耐突き刺し性、印刷性などの観点から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどが好適に用いられる。
【0028】
高光沢熱融着バリアフィルムのラミネート密着強度とは、後述する方法で測定されたラミネート強度のことをいう。
【0029】
ラミネート強度が、1.0N/15mm未満となると袋状容器となった時に、プラスチックと高光沢熱融着バリアフィルム間での剥がれが発生し、袋状容器体としての適性がなくなる場合がある。
【0030】
本発明おいて、高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率、水蒸気透過率、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度、ラミネート密着強度を上述の好ましい範囲にするためには、上述の金属層フィルム部分の酸素透過率、金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度、X線光電子分光法のデプス分析で検出される熱融着フィルム側から最初のO原子濃度のピークであるO原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さを上述の好ましい範囲にすることで実現することができる。
【0031】
本発明においてバリア性皮膜は、アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びエポキシ基含有シランカップリング剤を含むガスバリア性組成物であることが好ましい。アクリル樹脂は、中性モノマーと、水酸基含有アクリルモノマーとからなり、中性モノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニルなどが挙げられる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えばメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなど水酸基含有モノマーが挙げられる。また、他の官能基、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基を含有してもよい。アクリル樹脂の数平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましい。数平均分子量が10,000より小さいと膜が軟らかくなり、ブロッキングしやすくなり、また100,000より大きいと、粘度が高くなり、塗工適性が低下するという問題が発生することがある。
【0032】
前記イソシアネート化合物は、前記アクリル樹脂と反応する化合物である。イソシアネート化合物としては、脂肪族系ジイソシアネートモノマー、及びこれらの重合体、誘導体が用いられ、例えばトリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートモノマー、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のこれらは、単独で又は混合物として用いることができる。
【0033】
前記エポキシ基含有シランカップリング剤は、エポキシ基を含有するシランカップリング剤であり、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらの1種類または2種類以上の混合物であっても良い。エポキシ基含有シランカップリング剤を用いることにより、金属層と強固な結合を形成し、目的とする酸素透過率、水蒸気透過率、ラミネート強度を得ることができる。
【0034】
バリア性皮膜におけるアクリル樹脂とシランカップリング剤の配合比は、アクリル樹脂の固形分100重量部に対し、シランカップリング剤が3~80重量部であることが好ましい。シランカップリング剤が3重量部より少ないと、金属膜とバリア性皮膜間で十分な密着性が得られず、80重量部より多いとブロッキングしやすくなるため好ましくない。
【0035】

バリア性皮膜は、アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤を、混合したバリア性皮膜樹脂を調製し、金属層表面上にコーティングすることで形成することができる。コーティング方法としては、例えばロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等の公知のコーティング法が挙げらえる。
【0036】
本発明の袋状容器とは、後述する方法で本発明の積層材料の熱融着フィルム同士を貼り合わせ、袋状としたものである。本発明の袋状容器は、本発明の高光沢熱融着バリアフィルムを用いることで光沢性、密着性とガスバリア性に優れている。そのため内容物充填後に剥離などの不良が発生せず安全に内容物を保存することができるため、例えば輸送中、保管中に振動などでの剥離が発生しない袋状容器を提供することができる。
【実施例0037】
以下本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0038】
[特性の評価方法]
本発明の高光沢熱融着バリアフィルムの特性は、以下の評価方法を用いて評価した。
【0039】
(1)酸素透過率(cc/m・24hr・atm)
ASTM D-3985に準じて、酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX-TRAN100)を用いて、23℃、90%RHの条件下で、本発明の高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率を測定した。
【0040】
(2)O原子濃度ピークのO原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さの算出
全自動走査型X線光電子分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社社製K-Alpha)を用いて、X線源AlKα、X線出力25.1W、光電子取り出し角45°で分析を行った。バリア性皮膜側から、Arイオンを用いて、Arイオンエネルギー1keVでスパッタを行ない、一定スパッタ時間毎に炭素、酸素、アルミニウムの元素について狭域光電子スペクトル測定を行い、C1s、O1s、Al2pの狭域光電子ピーク面積強度比と相対感度係数から各元素の組成比を算出し、深さ方向のO、C、Al元素の原子濃度分布、すなわち、デプス分析を行った。本デプス分析で得られたO原子濃度について、熱融着フィルム側から最初のO原子濃度ピークのO原子最大濃度を、後述するバリア性皮膜の厚さで割り返し、O原子濃度ピークのO原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さを算出した。
【0041】
バリア性皮膜の厚さは、以下の方法で測定した。観察対象となるフィルムをマイクロサンプリング法でサンプリング後、収束イオンビーム加工装置((株)日立製作所製 FB-2000)を用いて薄膜化を行った。その後、サンプル保護のため、炭素およびタングステン保護膜を形成した。このサンプルを電界放出形透過電子顕微鏡((株)日立製作所製 HF-2200、以下TEMと称する)で観察した。TEMで20万倍で同一視野で観察されたバリア性皮膜の厚さの3箇所の平均値を求め、バリア性皮膜の厚さとした。
【0042】
(3)水蒸気透過率(g/m・24hr)
水蒸気透過率測定装置(モダンコントロール社製、「PERMATRAN」(登録商標)W3/31)を用いて、40℃、90%RHの条件下で、本発明の高光沢熱融着バリアフィルムの酸素透過率を測定した。
【0043】
(4)光沢度
スガ試験機株式会社の変角光沢度計 タイプ:UGV-5Dを用いて、JIS Z8741(1983年)に従って、非基材フィルム側面に対して入射角60゜/反射角60゜で測定し、フィルムの巾方向3点の測定値の平均値を光沢度とした。
【0044】
(5)ラミネート密着強度(N/15mm)
プラスチックフィルムとして、東洋紡(株)製二軸延伸ポリプロピレンフィルム“パイレン”(登録商標)P2161タイプ(厚さ20μm)のコロナ処理面を、接着剤層を介して向かい合うように、本発明の光沢熱融着フィルムのバリア性皮膜上に重ね、富士テック(株)製“ラミパッカー”(登録商標)LPA330を用いて、ヒートロールを40℃に加熱して貼り合わせた。この貼り合わせたフィルムを40℃に加熱したオーブン内で2日間エージングして積層材料を得た。次に該積層材料を幅15mm、長さ150mmに切断してカットサンプルを作成し、(株)エー・アンド・デイ製引張り試験機(RTG-1210タイプ)を使用して光沢熱融着フィルムと二軸延伸ポリオレフィンフィルム間を界面として、Tピール法により引張り速度300mm/minで剥離し、剥離時の最大強度を測定し、ラミネート密着強度(N/15mm)とした。
【0045】
(5)袋状容器の作製方法と内容物保管試験方法
上述の方法で得られた積層材料の熱融着フィルム側同士を向かい合うように重ね、テスター産業(株)製TP-701を用いて、加熱温度140℃、圧力1kgf/cm2、加熱時間1.0秒で三方を熱融着貼り合わせし、横300mm、縦300mmの袋状容器を作製した。得られた袋状容器に、内容物として、ほうれん草を長さ50mm、幅30mmにカットして、すぐに包装体の中に入れ、最後の四辺目を上述同じ方法で熱融着し、内容物入りの包装体を作製した。作製した内容物入りの包装体を25℃、相対湿度65%の環境下に、30日間保管し、保管後に内容物を取り出し、内容物の状態を確認した。ほうれん草の変色した面積が、全体面積に対して10%以下の場合、評価を〇、変色面積が全体面積に対して10%を超えていた場合、評価を×とした。
【0046】
(実施例1)
巻取り方式の真空蒸着装置を使用し、厚さ25μmの無延伸ポリプロピレン系フィルム(東レフィルム加工株式会社製、製品名9041)を熱融着フィルムとし、熱融着フィルムを搬送させながら、アルミニウムを蒸発させ、熱融着フィルム上に金属層(40nm)を形成し、金属層フィルムを得た。その際、(O原子最大濃度50.0atomic%/バリア性皮膜の厚さ3.00μm)が16.7atomic%/μmとなるように蒸発したアルミニウム蒸気が熱融着フィルムと付着する箇所に酸素ガスを導入した。得られた金属層フィルムの金属層上に下記のバリア性皮膜樹脂溶液をダイレクトグラビア方式で上記のO原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さとなるようにコートし、本発明の高光沢熱融着バリアフィルムを得た。
【0047】
(バリア性皮膜樹脂溶液)
アクリル樹脂(東京インキ(株)製 LG-OXバリア剤L)を100重量部、イソシアネート化合物(東京インキ(株)製LG-OX硬化剤E)を5重量部、エポキシ基含有シランカップリング剤(信越シリコーン(株)製KBM-402)3重量部を、酢酸エチルを用いて、液中の固形分濃度が10%になるように希釈、調製し、バリア性皮膜樹脂溶液を作製した。
【0048】
(実施例2)
(O原子最大濃度49.0atomic%/バリア性皮膜の厚さ0.10μm)を、490atomic%/μmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で高光沢熱融着バリアフィルムを得た。
【0049】
(実施例3)
(O原子最大濃度60.0atomic%/バリア性皮膜の厚さ0.30μm)を、200atomic%/μmとした以外は、実施例1と同様の方法で高光沢熱融着バリアフィルムを得た。
【0050】
(実施例4)
実施例1の高光沢熱融着バリアフィルムを用いて、上述の積層材料の作製方法で、積層材料を作製した。
【0051】
(実施例5)
実施例4の積層材料を用いて、上述の袋状容器の作製方法で、袋状容器を作製し、上述の内容物保管試験方法で、内容物保管試験を行った。
【0052】
(比較例1)
(O原子最大濃度40.0atomic%/バリア性皮膜の厚さ2.72μm)を14.7atomic%/μmとした以外は、実施例1と同様の方法で高光沢熱融着バリアフィルムを得た。
【0053】
(比較例2)
(O原子最大濃度76.5atomic%/バリア性皮膜の厚さ0.15μm)を510atomic%/μmとした以外は、実施例1と同様の方法で高光沢熱融着バリアフィルムを得た。
【0054】
(比較例3)
(O原子最大濃度10.0atomic%/バリア性皮膜の厚さ1.60μm)を6.3atomic%/μmとした以外は、実施例1と同様の方法で高光沢熱融着バリアフィルムを得た。
【0055】
(比較例4)
比較例3の高光沢熱融着バリアフィルムを用いて、上述の積層材料の作製方法で、積層材料を作製した。
【0056】
(比較例5)
比較例4の積層材料を用いて、上述の袋状容器の作製方法で、袋状容器を作製し、上述の内容物保管試験方法で、内容物保管試験を行った。
【0057】
以上の実施例、比較例の高光沢熱融着バリアフィルムの金属層フィルム部分の酸素透過率、金属層と熱融着フィルム間の熱圧着後の密着強度、(O原子最大濃度/バリア性皮膜の厚さ)、酸素透過率、水蒸気透過率、長手方向(MD)、幅方向(TD)の光沢度、ラミネート密着強度、積層材料、袋状容器の内容物保管試験をそれぞれ測定、評価した。結果を表1、2、3に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】