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特開2024-155845真空プロセス用のポンプ及び換気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155845
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】真空プロセス用のポンプ及び換気システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067192
(22)【出願日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】10 2023 001 573.3
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ワイス
【テーマコード(参考)】
5H307
【Fターム(参考)】
5H307AA20
5H307BB01
5H307DD15
5H307EE02
5H307ES01
5H307FF12
5H307JJ03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二つの真空バルブ、プロセスチャンバ及び真空条件下での加工プロセスの制御され、調節された動作のための制御・調節ユニットからなるシステムに関する。
【解決手段】排気可能な真空容積(10)と、第一の真空バルブ(20)と、第二の真空バルブ(30)と、真空容積(10)内の実圧を測定することができるようなやり方で真空容積(10)に接続された圧力センサ(40)と、第一の真空バルブ(20)、第二の真空バルブ(30)及び圧力センサ(40)に接続されている調節・制御ユニット(50)とを含む、物品(5)を加工するための真空システム(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
・少なくとも第一の開口部及び第二の開口部を有する排気可能な真空容積(10)であって、その中に物品をその加工のために導入することができる、排気可能な真空容積(10)、
・第一のバルブシート及び第一のバルブクロージャを有する第一の真空バルブ(20、70)であって、前記第一の開口部に接続され、前記真空容積(10)中に第一の圧力変化を提供するために提供されている第一の真空バルブ(20、70)、
・第二のバルブシート及び第二のバルブクロージャを有する第二の真空バルブ(30、70)であって、前記第二の開口部に接続され、前記真空容積(10)中に、前記第一の圧力変化を打ち消す第二の圧力変化を提供するために提供されている第二の真空バルブ、
・前記真空容積(10)内の実圧を測定することができるようなやり方で前記真空容積(10)に接続された圧力センサ(40)、及び
・前記第一の真空バルブ(20、70)、前記第二の真空バルブ(30、70)及び前記圧力センサ(40)に接続されている調節・制御ユニット(50、51)
を含む、物品(5)を加工するための真空システム(1)であって、
前記調節・制御ユニット(50、51)が、前記真空容積(10)に関して予め決められた目標圧であって、負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する目標圧に基づいて、
・前記圧力センサ(40)による前記実圧の連続的検知、
・前記検知された実圧及び前記予め決められた目標圧に基づく、第一の圧力偏差としての負圧又は正圧の測定、
・前記第一の圧力偏差が減少するような前記真空容積(10)内の圧力変化のための、前記第一又は第二の真空バルブ(20、30、70)の開放、
・前記第一の圧力偏差、特にその減少のモニタリング、
・前記第一の圧力偏差とは異なる、特に前記第一の圧力偏差とは正反対である第二の圧力偏差の測定、及び
・前記第二の圧力偏差が減少するような前記真空容積(10)内の圧力変化のための、他方の、特に前記第二又は第一の真空バルブ(20、30、70)のさらなる開放
によって、
前記実圧を調節するように設計されている、真空システム(10)。
【請求項2】
・前記第一の真空バルブ(20、70)が、前記真空容積(10)中に圧力増大を提供するために提供され、特に、前記第一の真空バルブが流体ソース、特にプロセスガスソースに接続され、
・前記第二の真空バルブ(30、70)が、前記真空容積(10)中に圧力減少を提供するために提供され、特に、前記第二の真空バルブが真空ポンプに接続されている、請求項1記載の真空システム(1)。
【請求項3】
調節・制御ユニット(50、51)が、前記真空容積を換気するための、又は前記真空容積内の圧力を増大させるための換気機能を有し、前記換気機能を実行するとき
・前記第一の圧力偏差として負圧が測定され、
・前記実圧を増大させるように、前記第一の真空バルブ(20、70)が開放され、
・その後、前記第二の圧力偏差として正圧が検知され(特に、前記正圧は前記実圧の増大と相関する)、
・前記第一の真空バルブ(20、70)が開いているとき、前記実圧を減少させるように前記第二の真空バルブ(30、70)が開放される、請求項2記載の真空システム(1)。
【請求項4】
前記換気機能を実行するとき
・第三の圧力偏差としてさらなる負圧が測定され(特に、前記さらなる負圧は、前記第二の真空バルブ(30、70)の前記開放の結果である)、
・前記第一の真空バルブ(20、70)が開いているとき、前記実圧を増大させるように前記第二の真空バルブ(30、70)の前記開放が減少され、又は前記第二の真空バルブ(30、70)が閉じられる、請求項3記載の真空システム(1)。
【請求項5】
前記調節・制御ユニット(50、51)が、前記真空容積を排気するための、又は前記真空容積内の圧力を減少させるための排気機能を有し、前記排気機能を実行するとき
・前記第一の圧力偏差として正圧が検知され、
・前記実圧を減少させるように前記第二の真空バルブ(30、70)が開放され、
・その後、前記第二の圧力偏差として負圧が検知され(特に、前記負圧は前記実圧の前記減少と相関する)、
・前記第二の真空バルブ(30、70)が開いているとき、前記実圧を増大させるように前記第一の真空バルブ(20、70)が開放される、請求項2記載の真空システム(1)。
【請求項6】
前記排気機能を実行するとき
・第三の圧力偏差としてさらなる正圧が測定され(特に、前記さらなる正圧は、前記第一の真空バルブの開放の結果である)、
・前記第二の真空バルブ(30、70)が開いているとき、前記実圧を減少させる、又は前記第一の真空バルブ(20、70)を閉じるように、前記第一の真空バルブ(20、70)の前記開放が減少される、請求項5記載の真空システム(1)。
【請求項7】
前記調節・制御ユニット(50、51)が、特定の容積状態を提供するための容積清浄機能を有し、その実行において
・前記実圧を減少させるように前記第二の真空バルブ(30、70)が開放され、
・前記第一の圧力偏差として前記真空容積(10)内の圧力低下が検知され、
・前記第二の真空バルブ(30、70)が開いているとき、前記真空容積(10)を断続的に換気するように前記第一の真空バルブ(20、70)が速やかに開放され、
・前記第二の圧力偏差として相対的な圧力増大が検知される、請求項1~6のいずれか1項記載の真空システム(1)。
【請求項8】
前記第一の真空バルブ(20、70)の前記開放が、許容可能な換気圧範囲内の前記実圧の存在の関数として起こり、特に、前記許容可能な換気圧範囲が、前記目標圧に関連した圧力許容範囲によって画定される、請求項7記載の真空システム(1)。
【請求項9】
前記第一及び/又は第二の真空バルブ(20、30、70)が真空調節バルブ(70)として設計され、
・前記第一又は第二の真空バルブの前記開放が、前記真空バルブを通過する体積又は質量流量の増大を含み、及び/又は
・前記第一又は第二の真空バルブの前記閉鎖が、前記真空バルブを通過する体積又は質量流量の減少を含む、請求項1~8のいずれか1項記載の真空システム(1)。
【請求項10】
・前記目標圧が、前記目標圧の時間曲線を目標圧曲線として示し、
・前記圧力偏差が、前記実圧と、特定の時点に関して前記目標圧曲線によって提供される前記目標圧との差を示す、請求項1~9のいずれか1項記載の真空システム(1)。
【請求項11】
前記目標圧が目標圧曲線によって提供され、前記目標圧曲線が負の圧力範囲を正の圧力範囲から切り離す、請求項1~10のいずれか1項記載の真空システム(1)。
【請求項12】
・実圧曲線(63、64)の少なくとも一部分の勾配が前記第一及び/又は第二の圧力偏差を提供し、及び/又は
・前記第一及び/又は第二の圧力偏差が第一及び/又は第二の実圧曲線として提供される、請求項1~11のいずれか1項記載の真空システム(1)。
【請求項13】
少なくとも
・少なくとも第一の開口部及び第二の開口部を有する排気可能な真空容積(10)であって、その中に物品をその加工のために導入することができる、排気可能な真空容積(10)、
・第一のバルブシート(76)及び第一のバルブクロージャ(77)を有する第一の真空バルブ(20、70)であって、前記第一の開口部に接続され、前記真空容積中に第一の圧力変化を提供するために提供されている第一の真空バルブ(20、70)、
・第二のバルブシート(76)及び第二のバルブクロージャ(77)を有する第二の真空バルブ(30、70)であって、前記第二の開口部に接続され、前記真空容積中に、前記第一の圧力変化を打ち消す第二の圧力変化を提供するために提供されている第二の真空バルブ(30、70)、及び
・前記真空容積(10)内の実圧を測定することができるようなやり方で前記真空容積(10)に接続された圧力センサ(40)
を含む、請求項1~12のいずれか1項記載の真空システム(1)のための調節・制御ユニット(50、51)であって、
前記真空容積(10)に関して予め決められた目標圧であって、負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する目標圧に基づいて前記実圧を調節するように設計され、特に、
・前記圧力センサ(40)による前記実圧の連続的検知、
・前記検知された実圧及び前記予め決められた目標圧に基づく、第一の圧力偏差としての負圧又は正圧の測定、
・前記第一の圧力偏差が減少するような前記真空容積(70)内の圧力変化のための、前記第一又は第二の真空バルブ(20、30)の開放、
・前記第一の圧力偏差、特にその減少のモニタリング、
・前記第一の圧力偏差とは異なる、特に、特に負圧又は正圧に関して前記第一の圧力偏差とは正反対である第二の圧力偏差の測定、及び
・前記第二の圧力偏差が減少するような前記真空容積内の圧力変化のための、他方の、特に前記第二又は第一の真空バルブ(20、30)のさらなる開放
による、相応に構成された調節機能を有する調節・制御ユニット(50、51)。
【請求項14】
少なくとも第一の閉鎖可能な開口部及び第二の閉鎖可能な開口部を有する真空容積(10)内の圧力を調節する方法であって、
・予め決められた目標圧、特に目標圧曲線であって、負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する目標圧を提供する工程、
・前記真空容積内の実圧を連続的に検知する工程、
・前記検知された実圧及び前記予め決められた目標圧に基づいて、第一の圧力偏差として負圧又は正圧を測定する工程、
・前記第一又は第二の閉鎖可能な開口部を開放することにより、前記第一の圧力偏差が減少するような圧力変化を前記真空容積(10)中に発生させる工程、
・前記第一の圧力偏差、特にその減少をモニタリングする工程、
・前記第一の圧力偏差とは異なる、特に、特に負圧又は正圧に関して前記第一の圧力偏差とは正反対である第二の圧力偏差を測定する工程、及び
・他方の閉鎖可能な開口部、特に前記第二又は第一の開口部のさらなる開放により、特に前記第一及び第二の閉鎖可能な開口部が開いている状態で、前記第二の圧力偏差が減少するような圧力変化を前記真空容積(10)中にさらに発生させる工程
を含む方法。
【請求項15】
・前記それぞれの圧力変化が各場合ともそれぞれの真空バルブ(20、30)によって生成され、
〇第一の真空バルブ(20)が、前記真空容積(10)中に圧力増大を提供するために提供され、特に、前記第一の真空バルブ(20)が流体ソース、特にプロセスガスソースに接続され、
〇第二の真空バルブ(30)が、前記真空容積(10)中に圧力減少を提供するために提供され、特に、前記第二の真空バルブが真空ポンプに接続され、
・前記真空容積(10)の換気が、
〇前記第一の圧力偏差として負圧を測定し、
〇前記第一の真空バルブ(20)を開放して前記実圧を増大させ、
〇その後、前記第二の圧力偏差として正圧を測定し(特に、前記正圧は前記実圧の前記増大と相関する)、
〇前記第一の真空バルブが開いているとき前記第二の真空バルブ(30)を開放して前記実圧を減少させる
ことによって実行される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
・前記それぞれの圧力変化が各場合ともそれぞれの真空バルブ(20、30)によって生成され、
〇第一の真空バルブ(20)が、前記真空容積中に圧力増大を提供するために提供され、特に、前記第一の真空バルブが流体ソース、特にプロセスガスソースに接続され、
〇第二の真空バルブ(30)が、前記真空容積中に圧力減少を提供するために提供され、特に、前記第二の真空バルブが真空ポンプに接続され、
・前記真空容積(10)の排気が、
〇前記第一の圧力偏差として負圧を測定し、
〇前記第一の真空バルブ(20)を開放して前記実圧を増大させ、
〇その後、前記第二の圧力偏差として負圧を測定し(特に、前記負圧は前記実圧の前記増大と相関する)、
〇前記第二の真空バルブが開いているとき前記第一の真空バルブ(30)を開放して前記実圧を増大させる
ことによって実行される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか1項記載の方法の少なくとも以下の工程:
・前記真空容積(10)内の実圧を連続的に検知する工程、
―前記検知された実圧及び予め決められた目標圧に基づいて、第一の圧力偏差として負圧又は正圧を測定する工程、
―前記第一又は第二の閉鎖可能な開口部を開放して、前記第一の圧力偏差が減少するような圧力変化を前記真空容積(10)中に発生させる工程、
―前記第一の圧力偏差をモニタリングする工程、
―前記第一の圧力偏差とは異なる第二の圧力偏差を測定する工程、及び
―他方の閉鎖可能な開口部をさらに開放して、前記第二の圧力偏差が減少するような圧力変化を前記真空容積(10)中に発生させる工程
を実行又は制御するためのプログラムコードを含む、機械可読担体に記憶されている、特に請求項1~13のいずれか1項記載の調節・制御ユニット(50、51)に記憶されているコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの真空バルブ、プロセスチャンバ及び真空条件下での加工プロセスの制御され、調節された動作のための制御・調節ユニットからなるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体積又は質量流量を調節するための、また、バルブハウジング中に形成された開口部を通って延びる流路の本質的に気密な閉鎖を提供するための真空バルブが従来技術から様々な実施形態で公知であり、特に、保護された雰囲気中、可能ならば汚染粒子の存在なしで実施されなければならないIC、半導体又は基板製造の分野において真空チャンバシステムに使用されている。そのような真空チャンバシステムは、特に、加工又は製造される半導体素子又は基板を保持するために提供された少なくとも一つの排気可能な真空チャンバであって、半導体素子又は他の基板を真空チャンバに対して出し入れするとき通すことができる少なくとも一つの真空チャンバ開口部を有する真空チャンバと、真空チャンバを排気するための少なくとも一つの真空ポンプとを含む。たとえば、半導体ウェーハ又は液晶基板のための製造システムにおいては、非常に傷つきやすい半導体又は液晶素子がいくつかのプロセス真空チャンバを順に通過し、プロセス真空チャンバ内に位置するパーツがそれぞれ加工デバイスによって加工される。プロセス真空チャンバ内の加工プロセス中とチャンバからチャンバへの輸送中の両方で、非常に傷つきやすい半導体素子又は基板は常に、保護された雰囲気、特に無気環境中になければならない。
【0003】
ガス入口又は出口を開閉するために周辺バルブが使用され、パーツを挿入し、取り出すために真空チャンバのトランスファー開口部を開閉するためにトランスファーバルブが使用される。
【0004】
半導体パーツが通過する真空バルブは、前記応用分野及び関連する寸法のせいで、真空トランスファーバルブと呼ばれ、また、概ね矩形の開口部断面のせいで、矩形バルブとも呼ばれ、また、それらの通常の動作モードのせいで、スライドバルブ、矩形スライドバルブ又はトランスファースライドバルブとも呼ばれる。
【0005】
周辺バルブは、特に、真空チャンバと真空ポンプ又は別の真空チャンバとの間のガス流量を制御又は調節するために使用される。周辺バルブは、たとえば、プロセス真空チャンバ又はトランスファーチャンバと真空ポンプ、大気又は別のプロセス真空チャンバとの間のパイプシステム内に位置する。ポンプバルブとも知られるそのようなバルブの開口部断面積は通常、真空トランスファーバルブの開口部断面積よりも小さい。周辺バルブは、用途に依存して、開口部を完全に開閉するために使用されるだけでなく、開口部断面積を全開位置と気密閉鎖位置との間で連続的に調整することによって流量を制御又は調節するためにも使用されるため、調節バルブとも呼ばれる。ガス流量を制御又は調節するための一つの考え得る周辺バルブが振り子式バルブである。
【0006】
たとえばUS6,089,537(Olmsted)から公知であるような一般的な振り子式バルブでは、第一の工程で、略円形のバルブディスクが、同じく略円形の開口の上で、開口部を解放する位置から開口部を覆う中間位置へと回転枢動する。スライドバルブの場合、たとえばUS6,416,037(Geiser)又はUS6,056,266(Blecha)に記載されているように、バルブディスクは、開口部と同じく、通常は矩形であり、この第一の工程で、開口部を解放する位置から開口部を覆う中間位置へと直線的に押される。この中間位置で、振り子式又はスライドバルブのバルブディスクは、開口部を包囲するバルブシートとは反対側の離間した位置にある。第二の工程で、バルブディスクとバルブシートとの間の距離を減少させて、バルブディスクとバルブシートとが互いに均等に押し当てられ、開口部が本質的に気密に閉鎖されるようにする。この第二の動きは、好ましくは、本質的にバルブシートに対して垂直方向に起こる。封止は、たとえば、開口部を包囲するバルブシートに押し付けられる、バルブディスクの閉鎖側に配設された封止リングによって達成することもできるし、バルブディスクの閉鎖側が押し当てられる、バルブシート上の封止リングによって達成することもできる。二工程閉鎖プロセスのおかげで、第二の工程中のバルブディスクの動きは本質的にバルブシートに対して垂直な線上であるため、バルブディスクとバルブシートとの間の封止リングは、封止リングを破壊するであろう剪断力をほとんど受けない。
【0007】
様々な封止デバイスが従来技術、たとえばUS6,629,682B2(Duelli)から公知である。真空バルブにおける封止リング及びシールに適した材料は、たとえば、FKMとも知られるフッ素ゴム、特に商品名「Viton」として知られるフルオロエラストマー及びパーフルオロゴム(略してFFKM)である。
【0008】
上述のバルブはとりわけ、非常に傷つきやすい半導体素子の製造に使用されるため、特にバルブの作動及びバルブ閉鎖部材に対する機械的負荷によって生じる粒子生成ならびにバルブチャンバ内の自由粒子の数は、可能な限り低く維持されなければならない。粒子生成は主に、たとえば金属-金属接触による摩擦及び摩耗の結果である。
【0009】
上記のように、真空制御バルブは、プロセスチャンバ中に所定のプロセス環境を設定するために使用される。調節は通常、内部チャンバ圧に関する情報を提供する圧力信号及び目標値、すなわち調節によって達成されるべき目標圧に基づく。そして、一定の期間内に目標圧に到達するよう、バルブ閉鎖(バルブディスク)の位置を調節の一部として変更する。
【0010】
調節に代わるものとして、既知のプロセスパラメータ、たとえばプロセスチャンバ中で指定の時間内に到達すべき目標圧を使用して、真空調節弁を制御されたやり方で作動させることもできる。このために、たとえば、バルブディスクのための該当する目標位置を提供し、同じくこの位置に対し、予め決められた時間で接近する。
【0011】
上記方法はいずれもそれら特有の利点及び欠点を有する。たとえば、プロセスチャンバ中の目標圧は、所定の制御システムを使用すると比較的短時間で設定することができるが、フィードバック(たとえば現時点の圧力情報)の一般的な欠如のせいで、実圧(actual pressure)に関する言明は、条件付きでしか出すことができない。製造プロセスに対する望まれない影響、たとえばガス入口の変更又はプロセスチャンバ中の漏れは、完全に検知されないままであり、通常、製造品質の低下を招く。
【0012】
制御システムとは対照的に、プロセスチャンバ内の圧力の調整はより多くの時間を要する。フィードバック信号(通常、現時点のチャンバ圧を測定する圧力センサによって生成される)が自然な遅れをもって記録され、処理される。したがって、これに基づく調節は、相応の遅れをもって実施され、相応に遅れた目標圧の設定を招く。しかし、圧力の調節は、ガス入口の変更又はプロセスチャンバ内の圧力変動があるとしても、それを確実に設定することができる。決定的な内部チャンバ圧に関してより信頼し得るプロセス安全性のせいで、大部分の場合、バルブ調節のほうが好まれる。
【0013】
加えて、最新の加工サイクルは、特定の目標圧の提供を必要とするだけでなく、所定の圧力曲線、すなわち、そのようなサイクル中のチャンバ内の圧力の所望の時間的変動の経過をも必要とする。たとえば、真空チャンバ中での基板の加工部分の間、異なるコーティング又は準備工程のために異なる圧力が求められる。各工程は特定の圧力で実行されるべきである。
【0014】
そのようなプロセスのために特定の圧力プロファイルを指定することができる。たとえば、そのようなプロセスサイクルの工程は、異なる圧力レベル又は圧力点において降下中の圧力で実行される。したがって、そのようなプロセスサイクルの調整のためには、一定時間後に一定のチャンバ圧に到達することが重要であるだけでなく、チャンバ内の圧力の全過程を相応に調整すること、又は全過程中に異なる圧力を提供することもまた重要である。
【0015】
そのような圧力曲線を提供するための公知の手法は、チャンバ内に現時点で存在する圧力(実圧)及び達成すべき目標圧に基づく調節手法を踏襲する。たとえば、チャンバの排気に関して圧力を測定し、目標圧とで比較する。目標圧が実圧よりも低いような偏差があるならば、チャンバの出口側に提供されたバルブを開放してチャンバ内の圧力を減少させる。このバルブは、たとえば真空ポンプに接続されている。
【0016】
この調節により、実圧は通常、定期的に目標圧よりも低下する(したがって、チャンバ内の圧力は、はじめ、目標圧よりも高く、その後、目標圧よりも低くなる)。この状態が起こると、バルブを閉じて負圧のさらなる増大を防ぐ。その場合、チャンバ圧が目標圧レベルに戻るまで待つことが好ましい。その後、加工プロセスを開始することができる。
【0017】
前記実圧の(複数回の)平準化のせいで、従来技術による前記調節は、所望のプロセス条件を提供するためにかなりの量の時間を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、上述の欠点を解消することができる改善された真空プロセスを提供する目的に基づく。
【0019】
特に、本発明の目的は、改善された、すなわち、より高速、より確実かつより簡単な物品の加工を許す改善された真空システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、独立請求項の特徴部分の実現によって解決される。本発明を代替的又は好都合なやり方でさらに発展させる特徴を従属請求項に見ることができる。
【0021】
本発明の基本的概念は、プロセスチャンバ内の実圧の設定に関して改善された可変性を達成することができるようなやり方で真空プロセスの制御又は調節を適合させることである。このために、排気又は換気プロセスのために、換気バルブ(上流)とポンプダウンバルブ(下流)との複合制御を提供することが提案される。所望の目標圧をより速やかに達成するためには、二つのバルブを調整され、正確に制御されたやり方で同時に開放することが可能であるべきである。
【0022】
たとえばチャンバを換気するとき、チャンバの内圧の一定の増大を提供するために、まず換気バルブを開放する。目的は、圧力増大を指定の目標圧(たとえば目標圧曲線)と可能な限り近く一致させる、又はそれに可能な限り近づかせることである。実圧を増大させることにより、一定の時点における実圧は、この時点に関して決定された目標圧を超える。従来技術とは対照的に、この正圧条件が起こると、圧力の増大を打ち消すために、換気バルブを閉じ、待機するだけでなく、換気バルブに加えてポンプダウンバルブをも開放する。これが、より速やかに目標圧に到達することを可能にする。同じことがチャンバの排気にも当てはまる。
【0023】
加えて、この手法は、単一の圧力発生方向、たとえば正又は負の勾配を示す圧力曲線を創出するだけでなく、圧力の増大と圧力の減少とを交互に表す曲線を創出するためにも使用することができる。したがって、負の圧力変化と正の圧力変化の両方を含む圧力プロファイルを提供することが可能である。これが、たとえば、加工サイクル中にプロセスチャンバ中の制御された粒子管理及び制御された清浄プロセスを可能にする。
【0024】
したがって、本発明によるそのような加工システムは、孤立した唯一のバルブの統合的かつ複合的制御及び調節をもはや提供せず、そのような制御・調節ユニットは、少なくとも一つのさらなるバルブをアクティブに調節及び制御し、圧力センサから情報を受け取る。いくつかの構成部品のそのような集中的制御及び調節が個々のプロセス工程の改善された実行を生じさせることができる。さらなる例として、制御装置は、たとえば、目標圧曲線への実圧曲線の平坦な近似を達成し、目標圧のオーバーシュート又はアンダーシュートを減少させるために、どの時点で目標圧に到達する可能性が高いかを認識し、目標圧に到達する前に第二のバルブを制御することができる。これもまた、有意な量の時間を節約することができる。
【0025】
したがって、本発明は、物品を加工するための真空システムに関する。真空システムは、少なくとも第一の開口部及び第二の開口部を有する少なくとも一つの排気可能な真空容積、特にプロセスチャンバを有する。物品を、その加工のために真空容積に導入することができる。
【0026】
真空プロセス容積は、たとえば、物品をたとえばロボットによって挿入し、取り出すことができる、必要ならば気密に封止することができるプロセスチャンバである。物品は、たとえば、コーティングされるべき基材又はウェーハ(半導体ウェーハ)であることができる。
【0027】
システムはまた、第一のバルブシート及び第一のバルブクロージャを有する第一の真空バルブを有し、第一の真空バルブは、第一の開口部に接続され、真空容積中に第一の圧力変化を提供するために提供されている。加えて、第二のバルブシート及び第二のバルブクロージャを有する第二の真空バルブが配設され、第二の真空バルブは、第二の開口部に接続され、真空容積中に、第一の圧力変化を打ち消す第二の圧力変化を提供するために提供されている。
【0028】
システムはまた、真空容積内の実圧を測定するために使用することができるようなやり方で真空容積に接続された圧力センサを有する。
【0029】
調節・制御ユニットが、第一の真空バルブ、第二の真空バルブ及び圧力センサに接続されている。調節・制御ユニットは、別個のユニットとして設計され、他の構成部品との有線又は無線通信接続を有することができる。
【0030】
本発明にしたがって、調節・制御ユニットは、真空容積に関して予め決められた目標圧であって、負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する目標圧に基づいて実圧を調節するように設計されている。調節は、特に、物品を加工するための加工プロセス又はサイクルの一部として実行される。
【0031】
予め決められた目標圧は、たとえば、ユーザが指定することもできるし、メモリユニット又は調節・制御ユニットに記憶されることもできるし、たとえばネットワーク又はデータクラウド内で外部に提供されることもできる。特に、予め決められた目標圧は、目標圧曲線(圧力曲線)として提供されることができる。
【0032】
調節・制御ユニットによって提供される調節の一部として、実圧を圧力センサによって連続的に検知し、検知された実圧及び予め決められた目標圧に基づいて負圧又は正圧を測定し、第一又は第二の真空バルブを開放して、第一の圧力偏差が減少するようなやり方で真空容積内の圧力を変化させる。
【0033】
たとえば、計画的なチャンバ排気中に第一の圧力偏差として正圧が検知されるならば、真空ポンプに接続されたバルブを開放することができる。
【0034】
圧力偏差の検知は、特に、測定された実圧と指定された目標圧との比較に基づく。特に、この比較は、加工サイクル中、連続的に実行される。
【0035】
また、第一の圧力偏差をモニタリングする。特に、偏差の減少、すなわち、目標圧への実圧の接近をモニタリングする。
【0036】
加えて、第一の圧力偏差とは異なる第二の圧力偏差を検知する。特に、第二の圧力偏差は、特に負圧及び正圧に関して、第一の圧力偏差とは正反対である。圧力偏差の差は、たとえば、量、すなわち偏差もしく圧力差の異なる大きさの点で、又は圧力特性、すなわち正圧と比べた負圧の点で、顕著であることができる。
【0037】
また、第二の圧力偏差が減少するようなやり方で真空容積内の圧力を変化させるための、他方の、特に第二又は第一の真空バルブのさらなる開放がある。
【0038】
両方の真空バブルの同時開放、すなわち第二のバルブのさらなる開放は圧力偏差をアクティブに補償することができる。これは、特に、圧力曲線に対して反対の動き、すなわち、たとえば、正圧の場合には圧力のアクティブな制御された減少又は負圧の場合には圧力のアクティブな制御された増大を生じさせることにより、達成することができる。
【0039】
特に、補償は、実圧曲線の面積の勾配の大きさを減らすことによって達成することができる。
【0040】
一実施形態において、第一の真空バルブは、真空容積中に圧力増大を提供するために提供されることができ、特に、第一の真空バルブは、流体ソース、特にプロセスガスソースに接続され、第二の真空バルブは、真空容積中に圧力減少を提供するために提供されることができ、特に、第二の真空バルブは真空ポンプに接続されている。
【0041】
したがって、第一の真空バルブは、上流バルブ、すなわち、プロセスチャンバの入口側に提供されるバルブであることができ、チャンバへの流体の流入を許可又は調節することができる。したがって、第二の真空バルブは、下流バルブ、すなわち、プロセスチャンバの出口側に提供されるバルブであることができ、チャンバからの流体の流出を許可又は調節することができる。
【0042】
一実施形態にしたがって、調節・制御ユニットは、真空容積を換気するための、又は真空容積内の圧力を増大させるための、換気機能を有することができる。換気機能の一実施形態において、第一の圧力偏差として負圧を検知し、第一の真空バルブを開放して実圧を増大させ、その後、第二の圧力偏差として正圧を検知し(特に、正圧は実圧の増大と相関する)、第一の真空バルブが開いているとき、第二の真空バルブを開放して実圧を減少させる。
【0043】
プロセスサイクルの一部としての、この両バルブのアクティブな制御は、第一の圧力偏差が存在するときと、第二の圧力偏差が存在するときの両方で、速やかに目標圧に到達することができることを意味する。したがって、チャンバ内の実圧を調整するために求められるプロセス時間を短縮することができる。
【0044】
特に、換気機能を実行するとき、第三の圧力偏差としてさらなる負圧を検知することができ(特に、さらなる負圧は、第二の真空バルブの開放の結果である)、第一の真空バルブが開いているとき、第二の真空バルブを閉じて実圧を減少させる、又はその開放を減少させることができる。
【0045】
一実施形態において、調節・制御ユニットは、真空容積を排気するための、又は真空容積内の圧力を減少させるための、排気機能を有することができる。排気機能が実装されるとき、第一の圧力偏差として正圧を検知し、第二の真空バルブを開放して実圧を減少させ、その後、第二の圧力偏差として負圧を検知し(特に、負圧は実圧の減少と相関する)、第二の真空バルブが開いているとき、第一の真空バルブを開放して実圧を増大させる。
【0046】
特に、排気機能を実行するとき、第三の圧力偏差としてさらなる正圧を検知することができ、特に、さらなる正圧は、第一の真空バルブの開放の結果であり、第二の真空バルブが開いているとき、第一の真空バルブを閉じて実圧を減少させる、又はその開口(開口部断面積又は質量もしくは体積流量)を減少させる。
【0047】
一実施形態において、調節・制御ユニットは、特定の容積状態を提供するための容積清浄機能を有することができる。容積清浄機能が実行されるとき、
―第二の真空バルブを開放して実圧を減少させ、
―真空容積内の圧力低下を第一の圧力偏差として検知し、
―第二の真空バルブが開いているとき、第一の真空バルブを速やかに開放して真空容積を断続的に換気し、
―相対的な圧力増大を第二の圧力偏差として検知する。
【0048】
したがって、容積清浄機能は、あり得る不純物を断続的な換気によってチャンバから除去する、又はチャンバの該当するプロセス区域から洗い流す、もしくは押し退けることができるようなやり方で容積中の粒子管理を提供する。該当するプロセス区域は、たとえば、プラズマ発生のためのチャンバ中の区域であることができる。
【0049】
特に、第一の真空バルブは、許容可能な換気圧範囲の実圧の存在に依存して開放することができ、特に、許容可能な換気圧範囲は、目標圧に関連した圧力許容範囲によって画定される。第一の真空バルブは、たとえば、プロセスチャンバ内の圧力がすでに許容偏差まで目標圧に近づいた場合にのみ開放される。
【0050】
一実施形態において、第一及び/又は第二の真空バルブは真空制御バルブとして設計されることができる。この場合、第一又は第二の真空バルブの開放は、真空バルブを通過する体積又は質量流量を増すことを含み、及び/又は、第一又は第二の真空バルブの閉鎖は、真空バルブを通過する体積又は質量流量を減らすことを含む。
【0051】
バルブの開閉は、排他的な状態(開、閉)として理解されるべきではなく、むしろ、特に調節バルブに関連して、すでにこの状態の変化に関する。
【0052】
一実施形態において、目標圧は、目標圧の時間曲線を目標圧曲線として指定することができ、圧力偏差は、実圧と、特定の時点に関して目標圧曲線によって提供される目標圧との差を指定することができる。目標圧を圧力曲線として記憶することができる。したがって、真空容積(プロセスチャンバ)中の所望の圧力変化は、圧力曲線によって表すことができる。したがって、プロセスサイクル中の時点ごとに目標圧を指定することができる。プロセスチャンバ中の圧力発生は、この目標圧曲線を可能な限り正確にたどり、それに一致するべきである。
【0053】
一実施形態において、目標圧は目標圧曲線によって提供されることができ、目標圧曲線は負の圧力範囲を正の圧力範囲から切り離す。時間-圧力図中で目標圧曲線よりも上に位置する範囲を正の圧力範囲と理解することができ、相応に、目標圧曲線よりも下に位置する範囲を負の圧力範囲と理解することができる。
【0054】
一実施形態において、実圧曲線の少なくとも一部分の勾配が第一及び/又は第二の圧力偏差を提供することもできるし、第一及び/又は第二の圧力偏差は、第一及び/又は第二の実圧曲線として提供されることもできる。
【0055】
したがって、実圧曲線中の異なる勾配のせいで、第一の圧力偏差は第二の圧力偏差とは異なることができる。これは特に不変的な目標圧に当てはまる。
【0056】
本発明はまた、上記のような真空システムのための調節・制御ユニットに関する。真空システムは、少なくとも第一の開口部及び第二の開口部を有する少なくとも一つの排気可能な真空容積を有し、その真空容積の中に、物品をその加工のために導入することができる。加えて、真空システムは、第一のバルブシート及び第一のバルブクロージャを有する第一の真空バルブであって、第一の開口部に接続され、真空容積中に第一の圧力変化を提供するために提供される第一の真空バルブと、第二のバルブシート及び第二のバルブクロージャを有する第二の真空バルブであって、第二の開口部に接続され、真空容積中に、第一の圧力変化を打ち消す第二の圧力変化を提供するために提供される第二の真空バルブとを有する。システムはまた、真空容積内の実圧を測定するために使用することができるようなやり方で真空容積に接続された圧力センサを有する。
【0057】
調節・制御ユニットは、真空容積に関して予め決められた目標圧であって、負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する目標圧に基づいて実圧を調節するように設計されている。特に、調節・制御ユニットは、この目的のために相応に構成された調節機能を有することができる。調節は、圧力センサによる実圧の連続的検知、検知された実圧及び予め決められた目標圧に基づく、第一の圧力偏差としての負圧又は正圧の測定、第一の圧力偏差が減少するような真空容積内の圧力変化のための、第一又は第二の真空バルブの開放、第一の圧力偏差、特にその減少のモニタリング、第一の圧力偏差とは異なる、特に第一の圧力偏差とは正反対である(特に、負圧又は正圧に関して)第二の圧力偏差の測定及び第二の圧力偏差が減少するような真空容積内の圧力変化のための、他方の真空バルブ、特に第二又は第一の真空バルブのさらなる開放によって実行される。
【0058】
本発明はまた、少なくとも第一の制御される閉鎖可能な開口部及び第二の制御される閉鎖可能な開口部を有する真空容積(プロセスチャンバ)内の圧力を調節する方法であって、
―予め決められた目標圧、特に目標圧曲線であって、負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する目標圧を提供する工程、
―真空容積内の実圧を連続的に検知する工程、
―検知された実圧及び予め決められた目標圧に基づいて、第一の圧力偏差として負圧又は正圧を測定する工程、
―第一又は第二の閉鎖可能な開口部を開放することにより、第一の圧力偏差が減少するような圧力変化を真空容積中に発生させる工程、
―第一の圧力偏差、特にその減少をモニタリングする工程、
―第一の圧力偏差とは異なる、特に、特に負圧又は正圧に関して第一の圧力偏差とは正反対である第二の圧力偏差を測定する工程、及び
―他方の閉鎖可能な開口部、特に第二又は第一の開口部のさらなる開放により、特に前記第一及び第二の閉鎖可能な開口部が開いている状態で、第二の圧力偏差が減少するような圧力変化を真空容積中にさらに発生させる工程
を有する方法に関する。
【0059】
一実施形態において、それぞれの圧力変化は、各場合とも真空バルブによって生成されることができ、第一の真空バルブが、真空容積中に圧力増大を提供するために提供され、特に、第一の真空バルブは、流体ソース、特にプロセスガスソースに接続され、第二の真空バルブが、真空容積中に圧力減少を提供するために提供され、特に、第二の真空バルブは真空ポンプに接続されている。真空容積は、第一の圧力偏差として負圧を検知し、第一の真空バルブを開放して実圧を増大させ、その後、第二の圧力偏差として正圧を測定し(特に、正圧は実圧の増大と相関する)、第一の真空バルブが開いているとき第二の真空バルブを開放して実圧を減少させることにより、換気することができる。
【0060】
一実施形態において、それぞれの圧力変化は、それぞれの真空バルブによって生成されることができ、第一の真空バルブが、真空容積中に圧力増大を提供するために提供され、特に、第一の真空バルブは、流体ソース、特にプロセスガスソースに接続され、第二の真空バルブが、真空容積中に圧力減少を提供するために提供され、特に、第二の真空バルブは真空ポンプに接続されている。真空容積は、第一の圧力偏差として正圧を検知し、第二の真空バルブを開放して実圧を減少させ、その後、第二の圧力偏差として負圧を検知し(特に、負圧は実圧の減少と相関する)、第二の真空バルブが開いているとき第一の真空バルブを開放して実圧を増大させることにより、排気することができる。
【0061】
本発明はさらに、上記方法の少なくとも以下の工程:
―真空容積内の実圧を連続的に検知する工程、
―検知された実圧及び予め決められた目標圧に基づいて、第一の圧力偏差として負圧又は正圧を測定する工程、
―第一又は第二の閉鎖可能な開口部を開放して、第一の圧力偏差が減少するような圧力変化を真空容積中に発生させる工程、
―第一の圧力偏差をモニタリングする工程、
―第一の圧力偏差とは異なる第二の圧力偏差を測定する工程、及び
―他方の閉鎖可能な開口部をさらに開放して、第二の圧力偏差が減少するような圧力変化を真空容積中に発生させる工程
を実行又は制御するためのプログラムコードを含む、機械可読担体に記憶されている、特に上述の調節・制御ユニットに記憶されているコンピュータプログラム製品に関する。
【0062】
特に、プログラム又はプログラムコードは、真空システムの電子データ処理ユニット、特に調節・制御ユニット中で、又は調節・制御ユニット中で実行される。したがって、対応する(コンピュータ実装)アルゴリズムを実行することにより、(全)プロセスサイクルを制御し、調節することが可能である。
【0063】
以下、図面に示す具体的な例示的実施形態を参照しながら本発明のデバイス及び本発明の方法を純粋に実例としてさらに詳細に説明し、また、本発明のさらなる利点をも詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明による、プロセスサイクルの制御・調節された動作のための真空システムの第一の実施形態の模式図を示す。
図2a】従来技術による排気及び換気における二つの例示的な圧力プロファイルを示す。
図2b】従来技術による排気及び換気における二つの例示的な圧力プロファイルを示す。
図3a】排気及び換気の場合の本発明による二つの例示的な圧力プロファイルを示す。
図3b】排気及び換気の場合の本発明による二つの例示的な圧力プロファイルを示す。
図4】真空調節バルブの例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、物品5、たとえば半導体ウェーハを真空条件下で加工するための本発明による真空システム1の構造を模式的に示す。構造は、真空容積10(真空プロセスチャンバ)と、第一の真空バルブ20と、第二の真空バルブ30とを有する。入口ライン11がプロセスチャンバ10を第一の真空バルブ20に接続し、出口ライン12がプロセスチャンバ10を第二の真空バルブ30に接続する。
【0066】
この実施形態において、第一の真空バルブ20は、(上流)換気バルブとして提供され、バルブ20が開いているときチャンバの中への質量又は体積流入を提供する。真空バルブ20は、調節バルブとして設計され、したがって、開口部断面積の制御された設定、ひいては単位時間あたりバルブ20を通過する流体の量の設定を可能にする。流体は、プロセスガス、前駆体ガス又は、たとえばチャンバ10を洗い流すために使用される(不活性)ガスであることができる。流体ソースは、タンクとして提供されることもできるし、マスフローコントローラ(MFC)を備えることもできる。
【0067】
この実施形態において、第二の真空バルブ30は、(下流)排気バルブとして提供され、バルブ30が開いているときチャンバからの流体の質量又は体積流出を提供する。真空バルブ30はまた、調節バルブとして設計され、したがって、開口部断面積の制御された設定、ひいては単位時間あたりバルブ30を通過する流体の量の設定を可能にする。容積10への接続に加えて、第二の真空バルブ30は、好ましくは、真空ポンプに接続され、それにより、容積10からの流体の汲み出しを提供する。
【0068】
より簡単な「オン/オフ」バルブと比べ、真空調節バルブは、それぞれの流量をそのようなバルブによって非常に正確に設定することができるという利点を提供する。本発明と関連して、これは、内部チャンバ圧のさらなる改善された調節を提供することができる。
【0069】
真空システム1はまた、圧力センサ40を有する。圧力センサ40は、真空容積10内の現時点の実圧をセンサ40によって測定することができるようなやり方で真空容積10に接続されている。
【0070】
真空システム1はまた、調節・制御ユニット50を有する。調節・制御ユニット50は、圧力センサ40、第一の真空バルブ20及び第二の真空バルブ30に接続されている。
【0071】
圧力センサ40との接続は好ましくは一方向性である。すなわち、調節・制御ユニット50が、圧力センサ40によって提供される圧力情報を受け取る。他方、二つのバルブ20及び30との接続は一方向性又は双方向性であることができる。すなわち、一方では、バルブ20及び30が、バルブ開放を制御し、変更するための信号を受信し、他方で、接続は、調節・制御ユニット50がそれぞれのバルブから情報、特に開放状態に関する情報を受け取るように設計されることができる。
【0072】
本発明にしたがって、調節・制御ユニットは、真空容積に関して予め決められた目標圧に基づいて実圧を調節するように設計されている。予め決められた目標圧は負の圧力範囲及び正の圧力範囲を画定する。実圧の調節は、特に、加工プロセスのための真空容積内の圧力の調節又は制御に関する。調節・制御ユニット50は、この目的のために相応に構成された調節機能を有する。調節機能は、特に、アルゴリズム又はコンピュータ実装メソッドとして実現することができる。
【0073】
実圧は、圧力センサを使用して実圧を連続的に記録し、記録された実圧及び予め決められた目標圧に基づいて第一の圧力偏差として負圧又は正圧を測定することによって調節される。負圧又は正圧は、特に、現時点で測定された実圧と、該当する加工工程又は時点に関して指定された目標圧とを比較することによって測定される。
【0074】
次いで、第一又は第二の真空バルブを開放して、第一の圧力偏差が減少するようなやり方で真空容積内の圧力を変化させる。たとえば、正圧が検知されるならば、排気バルブ30を開放する。さらに、第一の圧力偏差、特にその減少をモニタリングする。
【0075】
結果として、第一の圧力偏差とは正反対である、特に、負圧又は正圧に関して正反対である第二の圧力偏差が測定される。本発明に関連して、正反対の圧力偏差はまた、圧力曲線のうち、方向(曲線の勾配)が圧力曲線の別の部分の方向とは異なる部分として理解することができる。
【0076】
次いで、他方の、特に第二又は第一の真空バルブをさらに開放して、第二の圧力偏差が減少するようなやり方で真空容積内の圧力を変化させる。たとえば、第二の圧力偏差として負圧が検知されるならば、排気バルブ30に加えて換気バルブ20をも開放して、負圧を減少させる。
【0077】
図2a及び2bは、それぞれ、従来技術にしたがって調節された真空チャンバ内の実圧の圧力曲線を示す。一方で、ここでは、ポンピング及び換気サイクルの要件を満たすために、調節バルブがすでに提供されている。しかし、以前から公知の構成では、ポンピングサイクルの場合の負のプロファイル(図2a)又は換気サイクルの場合の正のプロファイル(図2b)のいずれかしか実現することができない。これに関連して、負のプロファイルとは、その勾配(方向)が変化することはできるが、終始、負のままである圧力曲線61と理解されるべきである。同じことが、圧力曲線62の正の勾配を有する正のプロファイルにも当てはまる。
【0078】
図3a及び3bは、それぞれ、本発明にしたがって調節された真空チャンバ内の実圧の圧力曲線を示す。
【0079】
上述した第一の真空バルブと第二の真空バルブとの複合アクティブ化により、各サイクル中に負及び正の目標曲線区分を生成することができる。それぞれの圧力曲線63、64はもはや純粋には負又は正ではなく、それぞれが、負の勾配を有する曲線区分と、正の勾配を有する曲線区分とを有することができる。そのような圧力プロファイルは、たとえば、制御された粒子管理及び制御された真空容積清浄を可能にする。たとえば、チャンバ排気(圧力曲線の負の勾配)の一部として、中間の換気(圧力曲線の正の勾配)によって過剰及び不要な粒子を洗い流すことができる。これが、図3aに示すような圧力曲線を生じさせることができる。
【0080】
本発明による真空システムの調節のさらなる利点は、予め決められた目標曲線(目標圧又は目標圧曲線)を超えた場合及び下回った場合、それを比較的ずっと速やかに補償することができることである。これは、第二のバルブを追加的に開放することによって圧力偏差をアクティブに打ち消すことによって達成することができる。そのような、正圧又は負圧のアクティブな補償が、より高速のプロセスサイクル及びより短いサイクル時間を生じさせる。
【0081】
図4は、真空バルブ70の実施形態を示す。真空バルブ70は、ここでは、調節アングルバルブ70として設計されている。そのような調節アングルバルブ70は、特に、図1のシステムの第一及び/又は第二の真空バルブ20、30として提供することができる。しかし、図示する調節アングルバルブ70は、真空バルブの一つの具体的な実施形態を表すだけであり、代替の真空バルブタイプが追加的又は代替的に本発明の真空システムに提供されてもよいことが理解されるべきである。
【0082】
アングルバルブ70は、第一の接続部72及び第二の接続部73を有するバルブハウジング71を有する。接続部72、73は互いに対して本質的に垂直である。第一の接続部72は相応に第一の軸72′を画定し、第二の接続部73は第二の軸73′を画定し、これらの軸72′、73′もまた相応に互いに対して垂直である。軸交点がハウジング71内に位置する。
【0083】
二つの接続部72、73は、媒体又は流体(たとえばプロセスガス)のための流路を画定する。流路はフローチャンバ75を通って延び、このフローチャンバが二つの接続部72、73を接続する。流路は、バルブ70によって遮断されることもできるし、解放されることもできる。
【0084】
バルブは駆動ユニット80を有する。特に、駆動ユニット70は制御可能な電気モータを有し、その駆動軸が駆動機構(ギヤ)によってバルブ70のバルブクロージャ77(バルブディスク)に構造的に接続されている。図示する実施形態における駆動ユニット80はスピンドルドライブを有し、スピンドルドライブは、ねじ付きロッドと、ねじ付きロッドと係合する、ねじ付きロッドを回すことによって軸72′に沿って動かすことができるガイド要素とを有する。ガイド要素はバルブディスク77に結合されている。
【0085】
可動バルブディスク77はバルブハウジング71内に配設されている。バルブディスク77は、周方向に配設された封止材料78を有する封止面を有し、それにより、ハウジング側でバルブシート76と接触したとき流路の気密な遮断を提供することができる。バルブディスク77は、たとえばピストンのような形状であることができる。封止材料は、たとえば、フルオロポリマー製のOリング又は加硫ゴム製シールを有することができる。
【0086】
バルブ70はまた、ベロー79を有する。ベロー79は、一方ではバルブディスク77に接続され、他方ではバルブ70の内部ハウジング部分に接続されている。ベロー79は、金属製の波形ベロー又はコンサーティーナ(蛇腹楽器)状ベローとして設計されていることができる。ベロー79は、駆動ユニット(たとえばねじ付きロッド)及びフローチャンバ75の少なくとも部分どうしの大気分離を提供する。これが、駆動側で生成された粒子がフローチャンバ75に入るのを防ぐことができる。
【0087】
バルブ70はまた、バルブディスク77の変位を制御するための調節・制御ユニット51を有する。調節・制御ユニット51は電気モータに接続されて電気モータを制御する。調節・制御ユニット51はまた、真空システムの調節・制御ユニット50を提供することができる。
【0088】
したがって、調節・制御ユニット51は、真空バルブ70とで一体化された設計であることができる。すなわち、調節・制御ユニットは、バルブと、調節・制御ユニットによって動かされる、又は読み取られるさらなるシステム構成部品とによって提供され、それらを備える。特に、圧力センサ及びさらなる真空バルブがバルブ又はその調節・制御ユニットに接続されている。
【0089】
図示する実施形態において、真空バルブ70はさらに、スリーブ81を、スリーブ壁中のスリーブリセス82とともに含む。しかし、本発明はまた、そのようなスリーブ81を有しない代替態様にも関する。
【0090】
図面は考え得る例示的な実施形態を模式的に表すだけであることが理解されよう。本発明にしたがって、様々な手法を互いならびに従来技術の真空プロセス用の圧力調節又は制御のための方法及びデバイスと組み合わせることもできる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
【外国語明細書】