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特開2024-155853樹脂組成物、合成樹脂成形体及び合成樹脂成形用マスターバッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155853
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物、合成樹脂成形体及び合成樹脂成形用マスターバッチ
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/40 20060101AFI20241024BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241024BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241024BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A01N43/40 101N
A01P1/00
A01N25/10
C08L101/00
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067609
(22)【出願日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2023068427
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松木 信緒
(72)【発明者】
【氏名】西原 和也
【テーマコード(参考)】
4F070
4H011
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AC46
4F070AC66
4F070AE10
4F070FA03
4F070FB03
4H011AA04
4H011BA05
4H011BB09
4H011BC19
4H011DH03
4J002AA001
4J002BB121
4J002CH022
4J002EC067
4J002EH037
4J002EH047
4J002EP017
4J002EU076
4J002EU086
4J002FD186
4J002FD207
(57)【要約】
【課題】 本発明は、優れたウイルス感染阻止効果を有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、分子内に環状アミノ構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、分散剤とを含むので、優れたウイルス感染阻止効果を長期間に亘って安定的に奏し、また、樹脂組成物を含む合成樹脂成形用マスターバッチを用いることによって、優れたウイルス感染阻止効果を長期間に亘って安定的に有する合成樹脂成形体を製造することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に環状アミノ構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、分散剤とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
上記ウイルス感染阻止化合物は、分子内に第2級の環状アミノ構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
上記ウイルス感染阻止化合物は、環状アミノ構造を1~10個有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
上記ウイルス感染阻止化合物の分子量が100~1000であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
上記ウイルス感染阻止化合物は、分子内にエステル結合を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
上記環状アミノ構造は、式(1)で示される構造を有するテトラメチルピペリジル基、又は、式(2)で示される構造を有するペンタメチルピペリジル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【化1】

但し、式(1)中の*1及び式(2)中の*2はそれぞれ、結合手であって単結合を意味する。
【請求項7】
上記分散剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
上記分散剤は、分子中にポリオキシアルキレン構造を有していることを特徴とする請求項1又は請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1の樹脂組成物の成形体であることを特徴とする合成樹脂成形体。
【請求項10】
上記合成樹脂100質量部に対して上記ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止化合物0.3~10質量部を含有していることを特徴とする請求項9に記載の合成樹脂成形体。
【請求項11】
上記合成樹脂100質量部に対して上記分散剤0.1~5質量部を含有していることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の合成樹脂成形体。
【請求項12】
請求項1の樹脂組成物を含むことを特徴とする合成樹脂成形用マスターバッチ。
【請求項13】
上記合成樹脂100質量部に対して上記ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止化合物10~80質量部を含有していることを特徴とする請求項12に記載の合成樹脂成形用マスターバッチ。
【請求項14】
上記合成樹脂100質量部に対して上記分散剤3~40質量部を含有していることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の合成樹脂成形用マスターバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、合成樹脂成形体及び合成樹脂成形用マスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、季節性インフルエンザウイルスの流行に加え、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に大流行している。
【0003】
又、高病原性のトリインフルエンザウイルスが変異してヒト間で感染が確認されており、更に、致死率のきわめて高いサーズウイルスも懸念されており、ウイルスへの不安感は高まる一方である。
【0004】
これらの問題に対して、特許文献1には、硬化物層を有する物品であって、前記硬化物層は、硬化性樹脂組成物の硬化物と、担体に銀イオンを担持あるいは含有してなる抗ウイルス剤と、酸化防止剤とを含み、前記酸化防止剤としてリン系酸化防止剤を含む、抗ウイルス性物品が提案されている。
【0005】
特許文献2には、ジヨードメチル-p-トリルスルホンおよび/または3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートと、ポリヘキサメチレングアニジンとを含有する抗ウイルス性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-27514号公報
【特許文献2】特開2018-193337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ウイルス感染阻止化合物を配合した塗料や表面処理剤を用いて物品の表面に加工処理を施すだけではなく、ウイルス感染阻止化合物を配合した樹脂組成物を射出成形などの成形方法で加工することにより、ウイルス感染阻止効果を有する合成樹脂成形体を製造する方法が検討されている。
【0008】
しかしながら、従来のウイルス感染阻止化合物を配合した場合、得られる合成樹脂成形体のウイルス感染阻止効果が十分ではないことがある。
【0009】
本発明は、優れたウイルス感染阻止効果を長期間に亘って安定的に有する樹脂組成物、並びにこれを用いた合成樹脂成形体及び合成樹脂成形用マスターバッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、分子内に環状アミノ構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、分散剤とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の合成樹脂成形体は、上記樹脂組成物の成形体であることを特徴とする。
【0012】
本発明の合成樹脂成形用マスターバッチは、上記樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ウイルス感染阻止化合物の作用によって、優れたウイルス感染阻止効果を有する合成樹脂成形体を製造することができる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、特定の分子構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と分散剤とを併用しているので、優れたウイルス感染阻止効果を長期間に亘って安定的に奏する合成樹脂成形体を製造することができる。
【0015】
また、本発明の合成樹脂成形用マスターバッチを用いることによっても、優れたウイルス感染阻止効果を長期間に亘って安定的に有する合成樹脂成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、分子内に環状アミノ構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、分散剤とを含む。
【0017】
[ウイルス感染阻止剤]
樹脂組成物は、分子内に環状アミノ構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤を含有している。
【0018】
ウイルス感染阻止剤は、分子内に環状アミノ構造を有するウイルス感染阻止化合物を有効成分として含む。ウイルス感染阻止剤は、ウイルス感染阻止化合物中に含まれている環状アミノ構造に起因して優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0019】
ウイルス感染阻止剤中におけるウイルス感染阻止化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0020】
ウイルス感染阻止化合物は、分子内に環状アミノ構造を有している。環状アミノ構造は、化合物を構成する原子が環構造を構成しており、この環構造中に第2級アミノ基又は第3級アミノ基を含む構造をいう。
【0021】
なお、第2級アミノ基は、アミノ基(-NH2)から1個の水素原子を引き抜いて生じる二価の置換基(-NH-)を意味する。なお、-NH-及び-NH2の「-」は、結合手であって単結合を意味する。第3級アミノ基は、アミノ基(-NH2)から2個の水素原子を引き抜いて生じる三価の置換基[式(3)]を意味する。なお、式(3)中、*3~5は、結合手であって単結合を意味する。
【0022】
【化1】
【0023】
詳細には、環状アミノ構造とは、化合物を構成する原子が環構造を構成しており、この環構造を構成している原子に窒素原子を含み、この窒素原子の2個の結合手が環構造を構成している他の原子に結合し且つ窒素原子の残りの1個の結合手が水素原子又はその他の原子若しくは置換基に結合している構造をいう。
【0024】
ウイルス感染阻止化合物は、分子内に環状アミノ構造を有しているので、環状アミノ構造部分においてウイルスと効果的に相互作用でき、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0025】
ウイルス感染阻止化合物において、環状アミノ構造の数は、1個以上であり、2個以上が好ましい。ウイルス感染阻止化合物において、環状アミノ構造の数は、10個以下が好ましく、7個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。環状アミノ構造の数が10個以下であると、環状アミノ構造の嵩高さによる相互干渉を低減することによって、ウイルス感染阻止化合物とウイルスとの相互作用を向上させて、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果を向上させることができる。更に、ウイルス感染阻止化合物の耐熱性を向上させることができ、樹脂組成物を用いて得られた合成樹脂成形体の黄変を低減化して、優れた外観を有する合成樹脂成形体を得ることができる。
【0026】
環状アミノ構造は、複数個の炭素原子及び1個の窒素原子が環状に結合した脂環式構造であって、脂環式構造中に第2級アミノ基又は第3級アミノ基を含む環構造が好ましく、複数個の炭素原子及び1個の窒素原子が環状に結合した脂環式構造であって、脂環式構造中に第2級アミノ基を含む環構造がより好ましい。
【0027】
環状アミノ構造は、4個の炭素原子及び1個の窒素原子が環状に結合した五員環の脂環式構造であって、脂環式構造中に第2級アミノ基又は第3級アミノ基を含む環構造、及び、5個の炭素原子及び1個の窒素原子が環状に結合した六員環の脂環式構造であって、脂環式構造中に第2級アミノ基又は第3級アミノ基を含む環構造がより好ましい。
【0028】
環状アミノ構造は、4個の炭素原子及び1個の窒素原子が環状に結合した五員環の脂環式構造であって、脂環式構造中に第2級アミノ基を含む環構造、及び、5個の炭素原子及び1個の窒素原子が環状に結合した六員環の脂環式構造であって、脂環式構造中に第2級アミノ基を含む環構造がより好ましい。
【0029】
環状アミノ構造が、脂環式構造を有していることによって、第2級アミノ基又は第3級アミノ基部分において、ウイルスとの相互作用を効果的に生じさせることができ、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0030】
環状アミノ構造は、芳香族環を含まないことが好ましい。この理由は明らかでないが、芳香族環の環状π電子雲が、環状アミノ構造とウイルスとの相互作用を阻害すると推察される。芳香族環は、単環状の芳香族環の他に、単環状の芳香族環が複合して縮合してなる縮合芳香族環も含まれる。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル、フェノキシフェニルなどが挙げられる。芳香族環は、芳香族環及び縮合芳香族環の何れか1個又は複数個の水素原子が引き抜かれ、他の原子と共有結合により結合している。
【0031】
ウイルス感染阻止化合物において、環状アミノ構造は、式(1)で示される構造を有するテトラメチルピペリジル基又は式(2)で示される構造を有するペンタメチルピペリジル基であることが好ましい。環状アミノ構造が、式(1)で示されるテトラメチルピペリジル基又は式(2)で示される構造を有するペンタメチルピペリジル基であると、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0032】
【化2】

但し、式(1)中の*1及び式(2)中の*2はそれぞれ、結合手であって単結合を意味する。
【0033】
ウイルス感染阻止化合物において、環状アミノ構造は塩を形成していてもよい。環状アミノ構造の塩としては、特に限定されないが、酸付加塩が好ましい。酸付加塩の酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、リノレン酸、フマル酸が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
【0034】
ウイルス感染阻止化合物は、分子内にエステル結合を有していることが好ましい。ウイルス感染阻止化合物の環状アミノ構造は、エステル結合[式(4)]を構成している酸素原子[ケト基(-CO-)の炭素原子に結合している酸素原子]に直接結合していることが好ましい。ウイルス感染阻止化合物が複数個の環状アミノ構造を有している場合、全ての環状アミノ構造がそれぞれ、エステル結合を構成している酸素原子に直接結合していることが好ましい。ウイルス感染阻止化合物がエステル結合を有している場合、又は、ウイルス感染阻止化合物の環状アミノ構造の少なくとも1個がエステル結合を構成している酸素原子に直接結合している場合には、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0035】
【化3】

但し、式(4)中、*6及び*7は、結合手であって、単結合を意味する。
【0036】
ウイルス感染阻止化合物は、式(5)~(8)で示される構造を有していることが好ましい。但し、式(5)中、nは、自然数である。式(6)中、mは、自然数である。式(8)中、*8は、結合手であって、単結合を意味する。
【0037】
【化4】
【0038】
式(5)において、nは自然数であるが、2以上が好ましく、4以上がより好ましい。nは、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。nが上記範囲内であると、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0039】
式(6)において、mは自然数であるが、2以上が好ましく、4以上がより好ましい。mは、14以下が好ましく、12以下がより好ましい。mが上記範囲内であると、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0040】
ウイルス感染阻止化合物の分子量は、100以上が好ましく、250以上がより好ましく、400以上がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の分子量は、9000以下が好ましく、7000以下がより好ましく、5000以下がより好ましく、1000以下がより好ましく、750以下がより好ましく、500以下がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の分子量が100以上であると、ウイルス感染阻止化合物がウイルスと相互作用しやすい分子構造となり、樹脂組成物は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。ウイルス感染阻止化合物の分子量が1000以下であると、ウイルス感染阻止化合物と合成樹脂との相溶性が向上し、ウイルス感染阻止化合物の合成樹脂中における分散性が向上することによって、樹脂組成物は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0041】
ウイルス感染阻止化合物が、分子量1万未満のオリゴマーである場合、ウイルス感染阻止化合物の分子量は、ウイルス感染阻止化合物の重量平均分子量とする。
【0042】
なお、本発明において、ウイルス感染阻止化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。
【0043】
例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ:Waters社製 商品名「2690SeparationsModel」
カラム:昭和電工社製 商品名「GPCKF-806L」
検出器:示差屈折計
サンプル流量:1mL/min
カラム温度:40℃
溶出液:THF
【0044】
ここで、ウイルス感染阻止効果とは、ウイルスの細胞への感染力をなくし或いは低下させ又は感染しても細胞中で増殖できなくする効果をいう。このようなウイルスの感染性の有無を確認する方法としては、例えば、繊維製品ではISO18184やJIS L1922、繊維製品以外のプラスチックや非多孔質表面の製品では、ISO21702が挙げられる。他にも「医・薬科ウイルス学」(1990年4月初版発行)に記載されているようなプラック法や赤血球凝集価(HAU)測定法などが挙げられる。
【0045】
ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果は、例えば、下記の要領で測定することができる。ウイルス感染阻止化合物5質量部を含むウイルス感染阻止剤と、合成樹脂93質量部と、分散剤2質量部とを溶融混練して混合して樹脂組成物を製造し、この樹脂組成物をプレス成形して平均厚みが1mmのシート状の合成樹脂成形品を作製する。得られた合成樹脂成形品の表面を一辺が10cmの平面正方形状の不織布を用いて不織布を10往復させて拭き取り、この合成樹脂成形品を試験体とする。
【0046】
得られた試験体について、抗ウイルス試験をISO21702に準拠して行なう。反応後のウイルス懸濁液について、プラック法により試験塗膜のウイルス感染価(常用対数値)(PFU/cm2)を算出する。
【0047】
ウイルス感染阻止剤を含有させないこと以外は上記と同様の要領でブランク基準体を作製し、このブランク基準体に基づいて上記と同様の要領でウイルス感染価(常用対数値)(PFU/cm2)を算出する。
【0048】
ブランク基準体のウイルス感染価から試験体のウイルス感染価を引くことによって抗ウイルス活性値を算出する。
【0049】
ウイルス感染阻止剤について、ISO21702に準拠した抗ウイルス試験の反応開始から10分経過後の抗ウイルス活性値は、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、2.8以上がより好ましい。評価するウイルスの種類を問わず、少なくとも1種のウイルスにおいて、抗ウイルス活性値が2.0以上となることが好ましい。
【0050】
ウイルス感染阻止化合物の窒素原子含有率は、0.1%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の窒素原子含有率は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がより好ましく、7%以下がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の窒素原子含有率が上記範囲内であると、ウイルス感染阻止剤は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0051】
ウイルス感染阻止化合物の窒素原子含有率は、ウイルス感染阻止化合物を構成している総原子量に対する窒素原子量の百分率をいう。
【0052】
ウイルス感染阻止化合物の窒素原子含有率(%)
=100×(ウイルス感染阻止化合物に含まれる総窒素原子量)
/ウイルス感染阻止化合物に含まれる総原子量
【0053】
ウイルス感染阻止化合物の5質量%水溶液の25℃におけるpHは、8以上が好ましい。ウイルス感染阻止化合物の5質量%水溶液の25℃におけるpHが8以上であると、ウイルス感染阻止化合物の表面が適切な電荷状態となり、又は、ウイルスの表面をアニオン化することで、ウイルス感染阻止剤との静電相互作用が大きくなり、ウイルス感染阻止剤の感染阻止効果が向上する。なお、ウイルス感染阻止化合物の5質量%水溶液の25℃におけるpHとは、ウイルス感染阻止化合物5gを精製水95gに加えて均一に混合した混合液における25℃でのpHの値をいう。混合液は、ウイルス感染阻止化合物の全量が精製水に溶解しているか、又は、ウイルス感染阻止化合物の一部が精製水に溶解して飽和水溶液となっていればよい。
【0054】
ウイルス感染阻止化合物の25℃におけるpKa1は、8以上が好ましく、8.5以上がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の25℃におけるpKa1が8以上であると、ウイルス感染阻止化合物とウイルスとの相互作用において、ウイルス感染阻止化合物の表面が適切な電荷状態となり、ウイルスを効果的に捕捉し、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果が向上する。ウイルス感染阻止化合物の25℃におけるpKa1は12以下が好ましく、11以下がより好ましい。ここで、電解質B-Hが、BとHとに電離して電離平衡 式(a)をとるとき、酸解離定数Kaは、式(b)で定義され、pKaは、酸解離定数Kaの逆数の常用対数(c)で定義される。
【0055】
本発明におけるpKa1は、ウイルス感染阻止化合物の共役酸の酸解離定数と定義される。ウイルス感染阻止化合物は多価アミンであり、多価アミンの共役酸は多段階に電離が進むが、pKa1は、一段階目の電離定数に基づいて算出されたpKaをいう。
【0056】
【数1】
【0057】
ウイルス感染阻止化合物の25℃におけるpKa1は、滴定によって測定された値をいう。具体的には、ウイルス感染阻止化合物の塩酸塩と水酸化ナトリウムを使用して25℃にて滴定を行い、半当量点(中和が完結する量の半量を滴下した点)での25℃におけるpHを測定することで、pKa1を求めることができる。ウイルス感染阻止化合物の第2級アミノ基がフリー体である場合は、塩酸塩に変換した後、上述の方法でpKa1を求めることができる。フリー体の第2級アミノ基を塩酸塩に変換する方法としては、例えば、ウイルス感染阻止化合物を1mol%塩酸水溶液に混合し、ウイルス感染阻止化合物に含まれる第2級アミノ基の全てを塩酸塩に変換した後、凍結乾燥などの汎用の要領により塩酸と水を取り除く方法が挙げられる。
【0058】
ウイルス感染阻止化合物の融点は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の融点は、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の融点が40℃以上であると、ウイルス感染阻止化合物が固体で存在できる温度範囲が広がり、ウイルス感染阻止剤の加工性が向上する。ウイルス感染阻止化合物の融点が110℃以下であると、ウイルス感染阻止剤と合成樹脂との混練時に溶融されて均一に混合され、樹脂組成物に優れたウイルス感染阻止効果を付与することができる。なお、ウイルス感染阻止化合物の融点は、JIS K7121:1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定された温度をいう。
【0059】
ウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤は、後述するように合成樹脂中に含有される。ウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤は、合成樹脂中に均一に分散させることができ、樹脂組成物に優れたウイルス感染阻止効果を付与することができるので、粒子状に形成されていることが好ましい。ウイルス感染阻止化合物のD90粒子径は、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、2.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、3.5μm以上がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物のD90粒子径は、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、22μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、18μm以下がより好ましく、16μm以下がより好ましく、14μm以下がより好ましく、12μm以下がより好ましい。D90粒子径が1μm以上であると、ウイルス感染阻止化合物全体の表面積が小さくなり、ウイルス感染阻止剤の凝集性が低減され、ウイルス感染阻止化合物とウイルスとが相互作用しやすい形態となり、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果が向上する。D90粒子径が50μm以下であると、ウイルス感染阻止剤の凝集を防止し且つ表面積を増加させてウイルスとの接触を容易にして、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果を向上させることができる。
【0060】
ウイルス感染阻止化合物のD90粒子径は、レーザー散乱法による体積基準の粒度分布における頻度の累積(粒径が小さい粒子からの累積)が90%となる粒子径(90%累積粒子径)である。ウイルス感染阻止化合物が複数種類のウイルス感染阻止化合物を含む場合、ウイルス感染阻止化合物のD90粒子径は、ウイルス感染阻止化合物全体を基準として測定された値とする。
【0061】
ウイルス感染阻止剤は、ベース粒子の表面に付着(担持)させて用いてもよい。ウイルス感染阻止剤をベース粒子の表面に付着させておくことによって、ウイルス感染阻止剤を基材中においてより均一に分散させることができる。更に、ウイルス感染阻止剤の表面積を大きくすることができる。したがって、ウイルス感染阻止剤とウイルスとの接触を十分に確保し、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果を十分に発揮させることができる。
【0062】
ウイルス感染阻止剤を表面に付着させるベース粒子としては、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果を阻害しなければ、特に限定されない。ベース粒子は、樹脂粒子又は無機粒子の何れであってもよい。ベース粒子は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0063】
樹脂粒子を構成している合成樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)などの合成ゴムなどが挙げられ、スチレン系樹脂及びアクリル系樹脂が好ましい。なお、本発明において、「合成樹脂」とは、分子主鎖が主に共有結合からなる分子量が1万以上の化合物をいう。合成樹脂の分子量は、合成樹脂の重量平均分子量とする。合成樹脂の重量平均分子量は、上述のウイルス感染阻止化合物の重量平均分子量と同様の要領で測定することができる。
【0064】
スチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系モノマーをモノマー単位として含む単独重合体又は共重合体、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能な一種又は二種以上のビニルモノマーとをモノマー単位として含む共重合体などが挙げられる。
【0065】
スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなど)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)などのアクリル系モノマー、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられる。
【0066】
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーをモノマー単位として含む単独重合体又は共重合体、アクリル系モノマーと、このアクリル系モノマーと共重合可能な一種又は二種以上のビニルモノマーとをモノマー単位として含む共重合体などが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0067】
アクリル系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられる。
【0068】
無機粒子を構成している無機材料としては、特に限定されず、例えば、ゼオライト、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0069】
樹脂粒子を構成している合成樹脂は、芳香族環を含有していることが好ましい。芳香族環が、樹脂粒子の表面に付着しているウイルス感染阻止化合物の疎水性部分を引き付け、第2級アミノ基を外方に配向させる作用を奏し、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果をより効果的に発揮させることができる。
【0070】
芳香族環は、単環状の芳香族環であっても、単環状の芳香族環が複合して縮合(縮合芳香族環)していてもよい。芳香族環としては、特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル、フェノキシフェニルなどが挙げられる。芳香族環は、芳香族環及び縮合芳香族環の何れか1個又は複数個の水素原子が除かれ(引き抜かれ)、他の原子と共有結合により結合している。
【0071】
ベース粒子に対するウイルス感染阻止化合物の付着量は、ベース粒子100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の付着量が1質量部以上であると、ベース粒子の表面にウイルス感染阻止剤を均一に付着させることができ、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果をより効果的に発揮させることができる。
【0072】
ベース粒子に対するウイルス感染阻止化合物の付着量は、ベース粒子100質量部に対して1000質量部以下が好ましく、800質量部以下がより好ましく、600質量部以下がより好ましく、400質量部以下がより好ましい。ウイルス感染阻止化合物の付着量が1000質量部以下であると、ウイルス感染阻止剤同士の結合が行われず、効率的にベース粒子表面にウイルス感染阻止剤が配置されウイルス感染阻止効果が向上する。
【0073】
ベース粒子表面へのウイルス感染阻止剤の付着要領は、特に限定されず、例えば、ウイルス感染阻止剤の接着力によってもよいし、バインダー樹脂を用いてベース粒子の表面にウイルス感染阻止剤を接着してもよいが、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止効果を効果的に発揮させることができるので、ウイルス感染阻止化合物自体の接着力によって、ウイルス感染阻止化合物がベース粒子の表面に付着していることが好ましい。
【0074】
ウイルス感染阻止剤は、ウイルス感染阻止化合物の作用によって、各種ウイルスに対してウイルス感染阻止効果を有し、優れたウイルス感染阻止効果を発揮する。ウイルスとしては、エンベロープウイルス及びノンエンベロープウイルスが挙げられる。
【0075】
エンベロープウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス(例えばA型、B型等)、風疹ウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス[例えば、SARSウイルス、新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)]、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルスなどが挙げられる。
【0076】
ノンエンベロープウイルスとしては、例えば、ネコカリシウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ライノウイルスなどが挙げられる。
【0077】
樹脂組成物(合成樹脂成形用マスターバッチとして用いられる場合を除く)中のウイルス感染阻止化合物の含有量は、後述する合成樹脂100質量部に対して0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がより好ましい。樹脂組成物(合成樹脂成形用マスターバッチとして用いられる場合を除く)中のウイルス感染阻止化合物の含有量は、合成樹脂100質量部に対して10質量部以下がより好ましく、7質量部以下がより好ましい。樹脂組成物中のウイルス感染阻止化合物の含有量が0.3質量部以上であると、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果を向上させることができる。樹脂組成物中のウイルス感染阻止化合物の含有量が10質量部以下であると、合成樹脂の物性に影響を与えることなく、ウイルス感染阻止化合物が凝集せず均一に分散しやすくなることで、ウイルス感染阻止効果が向上する。
【0078】
[合成樹脂]
樹脂組成物は、合成樹脂を含有している。ウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤は、合成樹脂に対して優れた分散性を有している。更に、樹脂組成物は、後述する分散剤を含有している。ウイルス感染阻止化合物は、分散剤の影響を略受けることなく、優れたウイルス感染阻止効果を奏すると共に、合成樹脂中への分散性が向上している。その結果、樹脂組成物は、ウイルス感染阻止剤を合成樹脂中に均一に分散させることによって、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止化合物の表面積を増大させており、ウイルス感染阻止化合物とウイルスとの相互作用が向上している。したがって、樹脂組成物は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0079】
合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドなど)、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなど)などが挙げられる。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0080】
また、ウイルス感染阻止剤は、耐熱性に優れていることから、合成樹脂に含有させて樹脂組成物を構成する場合、得られる樹脂組成物及びこれを成形して得られる合成樹脂成形体の製造工程において黄変などの変色を生じさせることはなく、優れた外観を有する樹脂組成物及び合成樹脂成形体を得ることができる。
【0081】
[分散剤]
樹脂組成物は、分散剤を含有している。樹脂組成物が分散剤を含有していることによって、ウイルス感染阻止剤の合成樹脂中における分散性を向上させ、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止化合物の表面積を増大させて、ウイルスとの相互作用を効果的に向上させており、樹脂組成物は、優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0082】
また、分散剤の作用によって、樹脂組成物及びこの樹脂組成物から製造された合成樹脂成形体の表面にウイルス感染阻止化合物を偏析(ブリードアウト)させやすくなり、樹脂組成物及び合成樹脂成形体のウイルス感染阻止効果を更に高めることができる。
【0083】
分散剤としては、特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)などが挙げられ、ポリアルキレングリコール、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が好ましく、ポリアルキレングリコール、ノニオン系界面活性剤がより好ましい。
【0084】
アニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ドデシルリン酸ナトリウム、ドデシルリン酸カリウム、ステアリルリン酸ナトリウム、ステアリルリン酸カリウム、などのアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸カリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレン(3)ラウリルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルフェニルエーテルリン酸カリウムなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアンモニウム塩など)、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0085】
ノニオン系界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどのポリオキシプロピレンアルキルエーテルなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリプロピレングリコール、ジステアリン酸ポリプロピレングリコールなどのポリオキシプロピレン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルカノールアミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジメタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジプロパノールアミドなどのヤシ脂肪酸アルカノールアミドなど)、脂肪族アルコール[例えば、カプリルアルコール(1-オクタノール)、ペラルゴンアルコール(1-ノナノール)、カプリンアルコール(1-デカノール)、ラウリルアルコール(1-ドデカノール)、ミリスチルアルコール(1-テトラデカノール)、セチルアルコール(1-ヘキサデカノール)、パルミトレイルアルコール(シス-9-ヘキサデカン-1-オール)、ステアリルアルコール(1-オクタデカノール)、イソステアリルアルコール(16-メチルヘプタデカン-1-オール)、エライジルアルコール(9E-オクタデセン-1-オール)、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール(シス-9-オクタデセン-1-オール)、リノレイルアルコール(9Z,12Z-オクタデカジエン-1-オール)及びこれらの混合物など]、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸ジアルカノールアミドがより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミドがより好ましい。又、ノニオン系界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸ジアルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪族アルコールが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、セトステアリルアルコールがより好ましい。
【0086】
両性界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、スルホベタイン、アルキルアミノ(モノ又はジ)プロピオン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルアミノエチルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、グリシンn-(3-アミノプロピル)C10~16誘導体、アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルβアラニン、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ジアミンのオキシエチレン付加型界面活性剤などが挙げられる。
【0087】
分散剤は、分子中にポリオキシアルキレン構造を含有していることが好ましい。分散剤がポリオキシアルキレン構造を含有していることによって、ウイルス感染阻止化合物の環状アミノ構造との相互作用を向上させることができる。また、分子中にポリオキシアルキレン構造を有している分散剤は、樹脂組成物及びこの樹脂組成物から製造された合成樹脂成形体の表面に更に偏析(ブリードアウト)しやすい。したがって、樹脂組成物及び合成樹脂成形体の表面に存在するウイルス感染阻止剤が、水拭きなどの清掃や人の手の接触などによって除去された場合にあっても、ウイルス感染阻止化合物を樹脂組成物及び合成樹脂成形体の表面に更に効果的に偏析(ブリードアウト)させて、樹脂組成物及び合成樹脂成形体に優れたウイルス感染阻止効果をより安定的に付与することができる。
【0088】
ポリオキシアルキレン構造とは、下記一般式で表される繰り返し単位を意味する。
-(R6-O)p-
(式中、R6は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、pは、繰り返し単位の数であって2以上の自然数である。)
【0089】
アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。なお、分岐状とは、1個の炭素(メチル基)が側鎖として結合している場合が含まれる。
【0090】
アルキレン基としては、例えば、メチレン基[-CH2-]、エチレン基[-CH2-CH2-]、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられ、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0091】
分散剤のHLB値は、10以上が好ましく、14以上がより好ましく、18以上がより好ましい。分散剤のHLB値が10以上であると、樹脂組成物の表面にウイルス感染阻止剤を効果的に偏析(ブリードアウト)させることができ、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果を向上させることができる。なお、分散剤のHLB値は、グリフィン法により下記式に基づいて算出された値である。
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
【0092】
分散剤の融点は、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上がより好ましい。分散剤の融点は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましい。分散剤の融点が40℃以上であると、分散剤が固体で存在できる温度範囲が広がり、ウイルス感染阻止剤の加工性が向上する。分散剤の融点が100℃以下であると、合成樹脂及びウイルス感染阻止剤と分散剤との混錬時に、分散剤が溶融することで分散剤がウイルス感染阻止化合物と接触しやすくなり、ウイルス感染阻止化合物の分散性が向上し、合成樹脂に優れたウイルス感染阻止効果を付与することができる。なお、分散剤の融点は、JIS K7121:1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定された温度をいう。
【0093】
樹脂組成物(合成樹脂成形用マスターバッチとして用いられる場合を除く)中の分散剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して0.1質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.4質量部以上がより好ましい。樹脂組成物(合成樹脂成形用マスターバッチとして用いられる場合を除く)中の分散剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がより好ましい。樹脂組成物中の分散剤の含有量が0.1質量部以上であると、樹脂組成物の表面にウイルス感染阻止剤を効果的に偏析(ブリードアウト)させることができ、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果を向上させることができる。樹脂組成物中の分散剤の含有量が5質量部以下であると、合成樹脂の物性に影響を与えることなく、ウイルス感染阻止化合物が凝集せず均一に分散しやすくなることで、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果が向上する。
【0094】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、ウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、分散剤とを合成樹脂を必要に応じて溶融させた上で汎用の要領で混合することによって製造することができる。例えば、ウイルス感染阻止剤と合成樹脂と分散剤とを押出機に供給して溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0095】
樹脂組成物において、ウイルス感染阻止剤は合成樹脂中に均一に分散しており、ウイルス感染阻止剤のウイルス感染阻止化合物の表面積が増大されており、ウイルス感染阻止化合物とウイルスとの相互作用を向上させることができ、樹脂組成物は優れたウイルス感染阻止効果を奏する。
【0096】
樹脂組成物は、優れた耐黄変性を有しているので、熱が加えられる環境下においても樹脂組成物本来の色彩を保持することができ、長期間に亘って優れた外観を維持することができる。
【0097】
また、樹脂組成物は、特定の分子構造を有するウイルス感染阻止化合物を含むウイルス感染阻止剤と分散剤とを併用しているので、樹脂組成物の表面に存在するウイルス感染阻止剤が、水拭きなどの清掃や人の手の接触などによって除去された場合にあっても、分散剤とウイルス感染阻止化合物の環状アミノ構造との相互作用によってウイルス感染阻止化合物を樹脂組成物の表面に円滑に偏析(ブリードアウト)させることができ、樹脂組成物は、優れたウイルス感染阻止効果を安定的に奏する。
【0098】
樹脂組成物は、汎用の合成樹脂の成形方法により、所望形状に成形され、合成樹脂を含む成形体本体と、この成形体本体に含有されたウイルス感染阻止剤とを含む合成樹脂成形体を得ることができる。汎用の合成樹脂の成形方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法などが挙げられる。
【0099】
樹脂組成物を合成樹脂成形用マスターバッチとして用い、原料となる合成樹脂に合成樹脂成形用マスターバッチを混合して汎用の合成樹脂の成形方法を用いて合成樹脂成形体を製造してもよい。なお、合成樹脂成形用マスターバッチに用いられる合成樹脂は、上記にて例示された合成樹脂を用いることができる。なお、合成樹脂は、一種のみが用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0100】
合成樹脂成形用マスターバッチは、成形性に優れているので、樹脂ペレットであることが好ましい。樹脂ペレットを溶融し、成形することで、ウイルス感染阻止効果に優れた合成樹脂成形体を得ることができる。
【0101】
樹脂ペレットの形状としては、特に限定されず、球形、円柱形及び角柱形等が挙げられる。ペレット形状の安定性の観点から、円柱形が好ましい。上記樹脂ペレットの最大長さ方向の寸法は、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上である。上記樹脂ペレットの最大長さ方向の寸法は、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。
【0102】
合成樹脂成形用マスターバッチは、他の樹脂材料と混合して用いることができる。他の樹脂材料は、樹脂ペレットであってもよい。上記合成樹脂成形用マスターバッチと上記他の樹脂材料とを混合して、混合樹脂材料を得た後、該混合樹脂材料を成形することで、ウイルス感染阻止効果に優れた合成樹脂成形体を得ることができる。
【0103】
合成樹脂成形用マスターバッチ中におけるウイルス感染阻止化合物の含有量は、合成樹脂100質量部に対して10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がより好ましい。合成樹脂成形用マスターバッチ中におけるウイルス感染阻止化合物の含有量は、合成樹脂100質量部に対して80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がより好ましい。
【0104】
合成樹脂成形用マスターバッチ中における分散剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましい。合成樹脂成形用マスターバッチ中の分散剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【実施例0105】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超える」として定義されている数値)に代替することができる。
【0106】
ウイルス感染阻止化合物1~6及び分散剤1~9を用意した。
【0107】
[ウイルス感染阻止化合物]
・ウイルス感染阻止化合物1[式(5-1)、ADEKA社製 商品名「アデカスタブLA-77Y」]
【0108】
【化5】
【0109】
・ウイルス感染阻止化合物2[式(6-1)、BASF社製 商品名「Tinuvin765」]
【0110】
【化6】
【0111】
・ウイルス感染阻止化合物3[式(7)、ADEKA社製 商品名「アデカスタブLA-87」]
【0112】
【化7】
【0113】
・ウイルス感染阻止化合物4[式(8)、ADEKA社製 商品名「アデカスタブLA-52」、式(8)中、*8は結合手であって単結合を意味する。]
【0114】
【化8】
【0115】
・ウイルス感染阻止化合物5[PHMB(ポリヘキサメチレンビグアナイド)]
ポリヘキサメチレンビグアナイドは、環状アミノ構造を有しない。
・ウイルス感染阻止化合物6[式(9)]
ニットーボーメディカル社から商品名「PAA-15C」にて市販されているウイルス感染阻止化合物を凍結乾燥し、ウイルス感染阻止化合物6の粉末を得た。なお、式(9)中、qは繰り返し単位の数であって、2以上の自然数である。表1の「分子量」の欄には、重量平均分子量を記載した。
【0116】
【化9】
【0117】
[分散剤]
・ジステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値:18.9、融点:56℃)
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値:19.4、融点:59℃)
・ポリエチレングリコールA(HLB値:20、融点:57.5℃、分子量:3100)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB値:9.7、融点:16℃)
・ラウリン酸ジエタノールアミド(HLB値:5.8、融点:40℃)
・グリセリン脂肪酸エステル(HLB値:2.8、融点:56~60℃)
・セトステアリルアルコール(HLB値:1.3、融点:51~54℃)
・ポリエチレングリコールB(HLB値:20、融点:60℃、分子量:8800)
・ポリエチレングリコールC(HLB値:20、融点:58℃、分子量:11000)
【0118】
[合成樹脂]
・ポリプロピレン(PP、日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP BC6C」)
【0119】
[ウイルス感染阻止化合物の粒子の作製]
ウイルス感染阻止化合物をロールプレス装置(セイシン企業社 商品名「150型」)を用いて回転数25rpm、押力25tの運転条件にて粗粉砕後、ジェットミル装置(日清エンジニアリング社製 商品名「SJ-500」)を用いて、ウイルス感染阻止化合物の供給速度1kg/h、圧縮空気圧力0.75MPaの運転条件下にて粉砕してウイルス感染阻止化合物の粒子を得た。
【0120】
実施例及び比較例で用いられたウイルス感染阻止化合物について、窒素原子含有率、分子量及び融点を表1に示した。
【0121】
(実施例1~13及び比較例1~6)
表1に示した種類のウイルス感染阻止化合物の粒子をウイルス感染阻止剤として用意した。ウイルス感染阻止化合物の粒子と、ポリプロピレンと、表1に示した種類の分散剤とを表1に示したマスターバッチの質量比(質量%)で溶融混練して混合し、合成樹脂成形用マスターバッチを作製した。なお、表1の「マスターバッチの質量比」の欄に「ウイルス感染阻止化合物の質量/ポリプロピレンの質量/分散剤の質量」の表記にて各成分の量を示した。
【0122】
得られた合成樹脂成形用マスターバッチと、別途用意したポリプロピレン(日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックPP BC6C」)とを、ウイルス感染阻止化合物と、ポリプロピレンと、表1に示した種類の分散剤とが表1に示した樹脂組成物の質量比(質量%)となるように配合し、180℃にて5分間に亘って溶融混練して樹脂組成物を作製した。なお、表1の「樹脂組成物の質量比」の欄に「ウイルス感染阻止化合物の質量/ポリプロピレンの質量/分散剤の質量」の表記にて各成分の量を示した。
【0123】
得られた樹脂組成物をプレス成形して、平均厚みが1mmのシート状の合成樹脂成形体を得た。
【0124】
得られた合成樹脂成形体について、下記の要領で分散性及び耐黄変性を測定し、その結果を表1に示した。
【0125】
得られた合成樹脂成形体について、下記の要領で初期及び耐水試験後の抗ウイルス活性値を測定し、その結果を表1に示した。
【0126】
[分散性]
得られた合成樹脂成形体について、表面の任意部分に、一辺50mmの平面正方形の測定範囲を定め、この測定範囲にウイルス感染阻止化合物の凝集体が存在するか否かを目視で確認した。下記基準に基づいて分散性を評価した。
○・・・凝集体が存在しなかった。
×・・・凝集体が存在した。
【0127】
[耐黄変性]
得られた合成樹脂成形体について、分光測色計(コニカミノルタ社製 商品名「CM-5」)を使用して黄変性b*1を測定した。ウイルス感染阻止剤を含有させないこと以外は上記と同様の要領でブランクの合成樹脂成形体を作製し、黄変性b*2を測定した。下記式に基づいて黄変性Δb*を算出し、下記基準に基づいて評価した。
黄変性Δb*=b*1-b*2
【0128】
[ウイルス感染阻止効果]
得られた合成樹脂成形体について、インフルエンザウイルス(エンベロープウイルス)を用いて下記の要領で抗ウイルス試験を行った。
【0129】
(初期の抗ウイルス試験)
合成樹脂成形体について、一辺が5.0cmの平面正方形状を切り出すことによって試験片を作製した。
【0130】
得られた試験片の表面を一辺が10cmの平面正方形状の不織布(日本製紙クレシア社製 商品名「キムワイプ S-200」)で10往復させて拭き取り、試験体とした。
【0131】
得られた試験体について、インフルエンザウイルスの抗ウイルス試験(試験時間:24時間)をISO21702に準拠して行った。反応(試験開始)後10分経過したウイルス懸濁液について、プラック法により試験体のウイルス感染価(常用対数値)(PFU/cm2)を算出した。
【0132】
ウイルス感染阻止剤を含有させないこと以外は上記と同様の要領でブランク基準体を作製し、このブランク基準体に基づいて上記と同様の要領でウイルス感染価(常用対数値)(PFU/cm2)を算出した。ブランク基準体のウイルス感染価(常用対数値)は、6.5PFU/cm2であった。
【0133】
ブランク基準体のウイルス感染価から試験体のウイルス感染価を引くことによって、初期の抗ウイルス活性値を算出した。
【0134】
(耐水試験後の抗ウイルス試験)
試験体を25℃の水に18時間に亘って浸漬させた。水に浸漬させた後の試験体を用いたこと以外は、初期の抗ウイルス試験と同様の要領で、試験体及びブランク基準体のウイルス感染価(常用対数値)を測定した。
【0135】
ブランク基準体のウイルス感染価から試験体のウイルス感染価を引くことによって、耐水試験後の抗ウイルス活性値を算出した。
【0136】
【表1】