(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155857
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ギアポンプとその使用方法
(51)【国際特許分類】
F16C 17/24 20060101AFI20241024BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20241024BHJP
F16N 7/18 20060101ALI20241024BHJP
F04C 2/18 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16C17/24
F16C17/02 Z
F16N7/18
F04C2/18 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067940
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】23168853.2
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523410573
【氏名又は名称】マーグ ポンプ システムズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】レーネ トリーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック ブランズ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュタインマン
【テーマコード(参考)】
3H041
3J011
【Fターム(参考)】
3H041AA04
3H041BB02
3H041CC06
3H041DD04
3H041DD09
3H041DD15
3J011AA07
3J011BA02
3J011CA01
3J011KA02
3J011MA06
3J011MA27
3J011PA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリマーが汲み出される媒体として用いられるとき、滑り軸受の潤滑溝に未融解のポリマー粒子(小さな塊)も異物粒子も入り込まない、かなり堅牢なギアポンプを提供する。
【解決手段】シャフト軸9に配置され、各々がギアホイールから横方向に突き出しているジャーナル軸受を有するハウジングによって囲われた噛み合うギアホイールを有しており、各々が滑り軸受長さを有する滑り軸受によってハウジングにおいて取り付けられ、その各々が半径方向伸長部を有する潤滑剤ポケット2を有するギアポンプであって、潤滑剤ポケットは、滑り軸受表面に対応する軸方向伸長部を有する第1バー幅D1を有する第1バー11が存在するように、それぞれの滑り軸受のギア側端面から第1距離d1だけ離間している。ボアは、滑り軸受を貫通し、注入点13で潤滑剤ポケットと連通し、ボアは、潤滑剤ポケットに潤滑媒体を移送するための移送装置に作動可能に結合される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト軸(9)に配置され、各々がギアホイール(1)から横方向に突き出している、ジャーナル軸受(5、6)を有するハウジングによって囲われた噛み合うギアを有するギアポンプであって、前記ギアポンプは、各々が滑り軸受長さ(L)を有し且つ各々が放射状伸長部を有する潤滑剤ポケット(2)を有する滑り軸受(3)によって、ハウジング内に取り付けられ、潤滑剤ポケット(2)は、滑り軸受表面に対応する軸方向伸長部を有する第1バー幅(D1)を有する第1バー(11)が存在するように第1距離(d1)だけそれぞれの滑り軸受(3)のギア側端面(7)から離間していて、滑り軸受表面に対応する軸方向伸長部を有する第1バー幅(D1)を有する前記第1バー(11)が存在するようになっており、
前記潤滑剤ポケット(2)もまた、滑り軸受表面に対応する軸方向伸長部を有する第2バー幅(D2)を有する第2バー(12)が存在するように、前記ギア端面(7)と反対にある前記軸受端面(8)から離間しており、
ボア(4)は、前記滑り軸受(3)を貫通するとともに、注入点(13)において前記潤滑剤ポケット(2)と連通し、
前記ボア(4)は、潤滑媒体を前記潤滑剤ポケット(2)に移送するための移送装置に動作可能に接続される、
ことを特徴とするギアポンプ。
【請求項2】
前記第1バー幅(D1)は、前記滑り軸受長さ(L)の少なくとも、5%~20%、好ましくは、15%であることを特徴とする請求項1に記載のギアポンプ。
【請求項3】
前記第2バー幅(D2)は、前記滑り軸受長さ(L)の少なくとも、5%~15%、好ましくは、10%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のギアポンプ。
【請求項4】
前記潤滑剤ポケット(2)は、2つの前記シャフト軸(9)に及ぶ平面に対して、前記ギアホイールの前記回転方向(R)に、210°~315°の角度範囲で、好ましくは、270°で開始することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項5】
前記潤滑剤ポケット(2)は、2つの前記シャフト軸(9)に及ぶ平面に対して、前記ギアホイール(1)の回転方向(R)に、300°から30°の角度範囲で、好ましくは、355°で終了することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項6】
前記注入点(13)は、前記潤滑剤ポケット(2)の前記軸方向伸長部における前記潤滑剤ポケット(2)において、中心に配置されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項7】
前記注入点(13)は、2つの前記シャフト軸(9)に及ぶ平面対して、前記ギアホイール(1)の前記回転方向(R)に、225°から315°までの角度範囲で、好ましく、240°から300°までの角度範囲で、好ましくは、270°で配置されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項8】
前記潤滑剤ポケット(2)は、前記注入点(13)の領域において最も深いことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項9】
前記注入点(13)は、前記ギアホイール(1)の前記回転方向(R)に見て、前記潤滑剤ポケット(2)の前記開始部に配置されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項10】
前記潤滑剤ポケット(2)は、前記注入点(13)から始まって、前記ギアホイール(1)の前記回転方向(R)に見て、より広くなっていることを特徴とする請求項9に記載のギアポンプ。
【請求項11】
前記潤滑剤ポケット(2)の断面積は、前記注入点(13)から始まって、前記ギアホイール(1)の前記回転方向(R)に見て、それらの巻いていない長さの2/3にわたって同じ大きさであり、前記潤滑剤ポケット(2)の断面積は、前記潤滑剤ポケット(2)の端までの残りの巻いていない長さにわたって連続して減少するように設計されることを特徴とする請求項10に記載のギアポンプ。
【請求項12】
前記ボア(4)の断面積は、前記潤滑剤ポケット(2)の前記巻いていない長さの前記最初の2/3における前記潤滑剤ポケット(2)の前記断面積と同じ大きさであることを特徴とする請求項11に記載のギアポンプ。
【請求項13】
前記ボア(4)は、前記それぞれの滑り軸受(3)の外径に対して、半径方向に配置されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項14】
前記ジャーナル軸受(5、6)の少なくとも1つは、関連するギアホイール(1)の歯(1)の歯底円直径(DF)の90%~100%の範囲にある、その軸方向の広がりの少なくとも一部にわたってジャーナル軸受直径(DL)を有することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のギアポンプ。
【請求項15】
汲み出される媒体の総合質量の60%以上の無機充填剤の質量パーセントを有する、ポリマー等の高粘性の汲み出される媒体を移送するための請求項1~14のいずれか1項に記載のギアポンプの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴の前の部分及び請求項15に記載のギアポンプの使用方法によるギアポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ギアポンプは、本来、一対の噛み合うギアから成り、ギアはハウジングで囲われ、かつ、ギアから縦軸のまわりで横方向に配置されるジャーナル軸受が突き出し、ジャーナル軸受は汲み出される媒体によって潤滑される滑り軸受にある。
【0003】
ギアポンプは、剛体特性曲線を有するので、汲み出される媒体を吸込側から吐出側に移送することに特に適している。下流ユニットで運搬される体積流量により、圧力勾配が、吐出側と吸込側の間で引き起こされ、その勾配は、高粘性媒体の場合において特に大きくなり、各々のギアに対して力の伝達をもたらす。
【0004】
例えば、欧州特許出願公開第1790854号明細書において、ジャーナル軸受の直径がギアの歯底円直径に近い又は等しいギアポンプである、公知のギアポンプは記載される。
【0005】
公知のギアポンプは、汲み出される媒体によって潤滑される滑り軸受を有する。ギアポンプの出口側の滑り軸受の片方には高い圧力が存在する一方で、滑り軸受の後ろの圧力はギアポンプの吸込側の圧力におおよそ等しく、ポンプ出口側の圧力よりもかなり低い。この圧力差により、滑り軸受における潤滑油膜を形成するために必要とされる汲み出される媒体は、ポンプ出口から滑り軸受に流れる。滑り軸受の面における圧力潤滑溝は、可能な限り良好に滑り軸受における潤滑溝に汲み出される媒体を供給するために、出口側から滑り軸受に直接結合を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1790854号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第4083428号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリマー溶融物が、同様に、臨界サイズより上の高い割合の固体又は固体(一般的には、異物粒子と称される)を含む運搬媒体、として使用される場合、滑り軸受における十分な潤滑に問題を引き起こす。滑り軸受が適切に機能するためには、汲み出される媒体の潤滑油膜を形成することが重要である。多すぎる或いは大きすぎる異物粒子が、シャフトと滑り軸受との間の狭い潤滑間隙に入る場合、滑り軸受又はシャフトに対して損傷のリスクがあり、ギアポンプの破損につながり得る。これは特に、粒径が最小潤滑油膜の高さより大きい場合に、滑り軸受における詰まりによる潤滑剤流れの妨害、かくして、ギアポンプの破損につながることが理由である。滑り軸受に入る溶融物が少なすぎると、潤滑が不十分になるリスクがある。粒子を含む溶融物(汲み出される媒体)の流量が増加すると、スライド・ベアリング表面の摩耗が増加する可能性もある。
【0008】
更に、ポリマーは運搬媒体として使用される場合、潤滑溝を介して滑り軸受に入る未融解のポリマー粒子(小さな塊)が、潤滑の流れを遮り、ギアポンプを破損させ得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
異物粒子の課題は、例えば、欧州特許出願公開第4083428号明細書において、説明されるように、充填ポケットを有する滑り軸受を用いることによって、一定の範囲内で取り組むことが可能ある。滑り軸受に組み込まれる充填ポケットは、ギアホイール側の滑り軸受の端面と充填ポケットとの間のバーによって特徴付けられ、それによって、バーは汲み出される媒体中の大きい異物粒子が、ギアホイールシャフトと滑り軸受との間の潤滑間隙に入ることを防ぐ。多くの適用に対して、このアプローチは、ろ過された媒体が滑り軸受に入って潤滑膜を形成する前に、メインフローから固体を「ろ過」するための優れた解決策をすでに提供している。
【0010】
しかしながら、低粘度の汲み出される媒体としてすべり軸受に薄い潤滑膜しか形成できないポリマー溶融物がある場合には、、汲み出される媒体をろ過するこの公知の方法では十分ではない。潤滑間隙に異物が多く入りすぎると、損傷(いわゆる焼き付き)のリスクが高まる。
【0011】
従って、公知の解決策よりもかなり堅牢である改良されたギアポンプを提供することが、本発明の課題である。
【0012】
本課題は、請求項1の特徴付けられる部分において特定される特徴によって解決される。本発明及び使用方法の更なる実施形態は、更なる請求項において画定される。
【0013】
本発明のギアポンプは、ジャーナル軸受がシャフト軸に配置され、各々がギアホイールから横方向に突き出している、ハウジングにより囲われた噛み合うギアを備え、各々が滑り軸受長さを有する、滑り軸受によってハウジング内に取り付けられ、各々は、放射状の広がりを有する潤滑剤ポケット有し、潤滑剤ポケットは第1距離によって、それぞれの滑り軸受のギア側端面から離間されていて、滑り軸受表面に対応する軸方向の広がりを有する第1のバー幅を有するバーが存在するようになっている。本発明は、
潤滑剤ポケットが同様に、ギア端面の反対にある軸受端面からの第2距離によって離間し、滑り軸受表面に対応する軸方向に広がりを有する第2バー幅を有する第2バーが存在するようになっており、
ボアは、滑り軸受を貫通し、注入点において、充填ポケットと通じ、
ボアは、潤滑剤を潤滑剤ポケットに移送するための移送装置に動作可能に接続される、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るギアポンプは、従って、ポリマーが汲み出される媒体として用いられるとき、未融解のポリマー粒子(小さな塊)も異物粒子も滑り軸受の潤滑溝に入り込まないので、公知のギアポンプと比較すると、かなり堅牢である。これは、潤滑剤の流れの妨害のリスクをかなり減らす。潤滑剤の流れは、従って、はるかに少なく阻害され、本発明に係るギアポンプの破損の可能性を減らす。
【0015】
本発明に係るギアポンプの一実施形態は、第1のバー幅が滑り軸受長さの、少なくとも5%から20%、好ましくは15%である。
【0016】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、第2のバー幅が滑り軸受長さの、少なくとも5%から15%、好ましくは10%である。
【0017】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、2つのシャフト軸に及ぶ平面に関して且つギアホイールの回転方向において、210度から315度の角度範囲、好ましくは270度で、潤滑剤ポケットが、始まる。
【0018】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、2つのシャフト軸に及ぶ平面に関して且つギアホイールの回転方向において、300度から30度の角度範囲、好ましくは355度で、潤滑剤ポケットが、終わる。
【0019】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、潤滑剤ポケットの軸方向の広がりにおいて潤滑剤ポケットの中心に、注入点が配置されている。
【0020】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、2つのシャフト軸に及ぶ平面に関して且つギアホイールの回転方向において、225度から315度、好ましくは240度から300度の角度範囲、好ましくは270度で、注入点が配置される。
【0021】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、潤滑剤ポケットが、注入点の領域において、最も深い。
【0022】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、ギアの回転方向から見られる注入点が潤滑剤ポケットの始部に配置される。
【0023】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、注入点から始まり、ギアホイールの回転方向から見られる潤滑剤ポケットがより幅広くなっている。
【0024】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、注入点から始まり、ギアホイールの回転方向から見られる、潤滑剤ポケットの断面領域が、その巻いていない長さの2/3にわたって同じ大きさであって、潤滑剤ポケットの断面領域は、潤滑剤ポケットの終部までの残りの巻いていない長さにわたって着実に減少するように設計される。
【0025】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、ボアの断面領域が、潤滑剤ポケットの巻いていない長さの最初の2/3において、潤滑剤ポケットの断面領域と同じ大きさである。
【0026】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、ボアが、それぞれの滑り軸受の外径に対して半径方向に配置される。
【0027】
本発明に係るギアポンプの更なる実施形態は、少なくとも1つのジャーナル軸受が、その軸方向の広がりの少なくとも一部にわたって、関連するギアホイールの歯底円直径の90%から100%の範囲にあるジャーナル軸受直径を有する。
【0028】
最終的に、本発明は、移送媒体の総合質量の60%以上の充填物(例えば、二酸化チタン TiO2、炭酸カルシウム、木粉、石、チョーク、獣脂、ケイ酸塩、炭素、特にカーボンブラックの形態)の質量パーセントを有する、ポリマー等の高粘性移送媒体のための上述の実施形態の1又はそれ以上に係るギアポンプの使用方法を含む。
【0029】
本発明はまた、低粘性(1パスカル秒以上)の媒体、ならびに異物粒子を充填したポリマー溶融物を移送するための、上述の実施形態のうちの1つ又はそれ以上に係るギアポンプの使用方法も含み、異物粒子は、滑り軸受における最小潤滑膜と同等またはそれ以上の大きさを有する。
【0030】
本発明の前述の実施形態は、任意の順序で組み合わせることができる。組み合わせによる矛盾を生じさせる、実施形態の組み合わせのみが除外される。
【0031】
本発明の実施形態例は、図面を参照して以下でより詳細に説明される。これらは説明のみを目的としており、限定的に解釈されるべきではない。それらは以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係るギアポンプのためのジャーナル軸受を有する公知のギアホイールの斜視図を示す。
【
図2】潤滑剤ポケットを有するボアが観察できる、ギアホイールの長手方向軸に平行な本発明に係るすべり軸受を通る断面を示す。
【
図3】ボアの領域における本発明に係る滑り軸受を通る部分断面を示す。
【
図4】ボアおよび潤滑剤ポケットの位置を決定するための角度を有する本発明に係る滑り軸受を通る
図3による断面を示す。
【
図5】回転角度の関数としての本発明に係る潤滑剤ポケットの断面のグラフ表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に係るギアポンプのためのジャーナル軸受5および6を有するそれ自体公知のギアホイール1の斜視図を示す。軸方向伸長部の一部にわたって、ジャーナル軸受5および6は、歯の歯底円直径D
Fとほぼ同じ大きさのジャーナル軸受直径D
Lを有する。ジャーナル軸受直径D
Lは、少なくとも歯底円直径D
Fの90%~100%の範囲である。当然ながら、これは
図1に示されていない第2ギアホイールのジャーナル軸受にも適用される。しかしながら、上述で定義されたジャーナル軸受直径及び歯底円直径を有する上述の設計変形例は、必ずしもこの方法で実現する必要はないことが明白に指摘される。ジャーナル軸受直径が歯底円直径の90%より小さい従来の設計変形例も同様に考えられる。
【0034】
溝を通って滑り軸受に充填される汲み出される媒体による軸受潤滑剤の証明された原理(例えば、欧州特許第833068号明細書参照)とは対照的に、潤滑膜形成のための、きれいな、汚染のない潤滑媒体が、別の外部ポンプ装置によって提供されるとともに、ボア4(
図2)を介して滑り軸受3(
図2)の潤滑剤ポケット2(
図2)に押し込まれる。このようにして、滑り軸受3と、ジャーナル軸受5、6との間の潤滑膜形成は、この作業が適切で、清潔で、大部分が異物のない潤滑媒体によって実行されるため、概ね、汲み出される媒体の潤滑膜形成性質から独立している。潤滑膜形成のためのこの外部潤滑媒体が、再循環される汲み出される媒体と異なり得る利点に明白に言及される。外部潤滑剤は、汲み出される媒体とかなり異なり得ることが明白に協調される。特に、ごくわずかな量のみが、滑り軸受の潤滑に必要であるため、適用データに対応して、特定の性質を有する適切な外部の汲み出される媒体(潤滑媒体)を選択することができる。例えば、潤滑剤は、汲み出し可能な状況において1Pasの粘性を有するものが使用される。
【0035】
図2は、滑り軸受長さLを有する本発明に係る滑り軸受3を通る断面を示す。切断面は、シャフト軸9に対して平行になっており、滑り軸受3に組み込まれる潤滑剤ポケット2が見えるように位置付けられている。
【0036】
図2から既に見受けられるように、潤滑剤ポケット2は、第1距離d
1によって滑り軸受3のギア側端面7(軸受の内側としても言及される)から離間され、滑り軸受3の摺動面に対応する放射状伸長部を有する第1バー11が存在するようになっている。第1バー11は、第1バー幅D
1を有しており、これによって、滑り軸受3の摺動面から端面までの遷移が第1バー11の一部ではないため、第1距離d
1より小さい。バー幅D
1は滑り軸受長さLの5%~20%、好ましくは15%であるべきことが示されている。なお、バー幅D
1は、最小仕様であり、すなわち、潤滑剤ポケット2のギア側縁部は、ギア側端面と平行に走る必要はない。さらに、潤滑剤ポケット2は、最小バー幅D
1を有する必要が全く無い。
【0037】
さらに、他方の軸受側の潤滑剤ポケット2は、第2距離d2だけ、滑り軸受3のギア側端面7と反対に位置する第2端面8(外側軸受側とも呼ばれる)から離間し、これにより第2バー幅D2を有する、第2バー12が存在しており、それによって、次は、滑り軸受3の摺動面から滑り軸受3の第2端面までの遷移が、再び、第2バー12の一部としてカウントされないので、これが第2距離d2より小さくなる。バー幅D2は、滑り軸受長さLの5%~15%、好ましくは、10%であるべきことが示されている。なお、ここでも、バー幅D2が、最小仕様であり、すなわち、潤滑剤ポケット2の軸受外側縁部は、軸受外側と平行に走る必要はない。加えて、潤滑剤ポケット2は、最小バー幅D2を有する必要が全く無い。
【0038】
これは、潤滑剤ポケット2の(シャフト軸に関する)最大軸方向広がりが、第1及び第2バー11、12の上述の定義によって決定されることを意味する。滑り軸受3の摺動面に沿う潤滑剤ポケット2の最大広がりは、
図3及び
図4を参照して以下で説明される。
【0039】
図3は、ボア4及び関連する潤滑剤ポケット2の領域における発明に係る滑り軸受3を通る部分的な断面図を示しており、図示された潤滑剤ポケット2は、本発明の多数の可能な実施形態のうちの1つに過ぎない。潤滑剤ポケット2の位置は、2つのシャフト軸9におよぶ平面、いわゆる角度基準面10に対する角度によって表され、角度は、滑り軸受3におけるシャフトの回転方向Rにおいて示される。角度基準面10は、かくして、滑り軸受3の弦面14に対して垂直である。潤滑剤ポケット2は、潤滑剤ポケット2への入口縁部16から始まる。回転方向R及び角度基準面10に対して見ると、潤滑剤ポケット2は、開始角度αの後の入口縁部16で始まり、終了角度βの後の出口縁部15で終わる。
図3において示されるような本発明に係る潤滑剤ポケット2の実施形態において、開始角度はα=265°、終了角度はβ=355°である。潤滑剤が潤滑剤ポケット2に供給されるボア4は、前方縁部16と少なくとも部分的に一致する注入点13を有する。注入点13の後、潤滑剤は、一方ではシャフト又はジャーナル軸受5、6によって形成され、他方では滑り軸受3によって形成され、潤滑膜を形成する、出口縁部15における潤滑間隙に潤滑剤が入るまで、潤滑剤ポケット2内の軸方向と回転方向Rの両方に分配される。
【0040】
図3に係る滑り軸受3全体を通る断面を示す
図4は、本発明による角度範囲を画定しており、その範囲内で、開始角度αと終了角度βの両方、並びに潤滑剤ポケット2へのボア4の注入点13がある。潤滑剤ポケット2は、210°の最小開始角度α及び30°の最大終了角度βを有しており、そのような潤滑剤ポケット2は、210°から30°の最大角度範囲をカバーすることを意味することが示されてきた。注入点13及びかくして、潤滑剤ポケット2におけるボア4の一端は、225°から315°の角度範囲内にあり、それによって、制限的に、注入点13は、常に潤滑剤ポケット2内で終わらなければならない。換言すれば、注入点13は、選択された潤滑剤ポケット2の開始角度αの後及び終了角度βの前に必ず配置されなければならないが、同時に、225°から315°の角度範囲内にもなければならない。注入点13は、好ましくは、240°から300°の角度範囲内に位置する。また、注入点13は、特に、270°の注入点角度δに位置することも示されている。その一部に関して、潤滑剤ポケット2は、好ましくは、265°から355°の角度範囲にわたって延びる。
【0041】
上記の角度仕様から、たとえこれが好ましい意図であったとしても、注入点13は、必ずしも開始角度αの直後に位置する必要はないことになる。むしろ、注入点13は、注入点13の角度範囲および潤滑剤ポケット13の広がりに関する上述の条件を考慮すると、特に終了角度βの領域においても、任意の点にすることができると考えられる。
【0042】
注入点13の位置が十分に画定されている一方、関連するボア4は、例えば、滑り軸受3を通る半径方向ボア4として設計される。しかし、すべり軸受3を貫通する注入点13までの任意の穴あけ方向が考えられる。
【0043】
これは、潤滑剤ポケット2が位置する或いは潤滑剤ポケット2が最大まで充填される、最大フレーム20(ここで
図2をもう一度参照して)を画定する。この最大フレーム20は、破線で
図2において示される。
【0044】
図2の説明に関連して既に簡単に指摘されるように、滑り軸受3に組み込まれた潤滑剤ポケット2は、潤滑媒体が供給され、潤滑媒体は、注入点13を介して、ボア4を通って、潤滑剤ポケット2に押し込まれる。
【0045】
ジャーナル軸受5、6の回転方向Rで見ると、潤滑剤ポケット2は、最小潤滑剤ポケット開始部において、注入点13で又は注入点13の正面で開始し、最大潤滑剤ポケット終了部において終了することができる。なので、
図4を参照して説明されたように、潤滑剤ポケット2の最大幅は、滑り軸受長さLの比率としてバー幅D
1及びD
2によって画定されるのに対して、潤滑剤ポケット2の最大長さは、ジャーナル軸受5、6の回転方向Rで見て、角度によって、潤滑剤ポケット開始部16及び潤滑剤ポケット終了部15によって、画定される。
【0046】
既に述べたように、注入点13は、最大フレーム20(
図2)内の任意の場所に配置され得る。好ましくは、注入点13は、フレーム20の中心に位置し、
図2の潤滑剤ポケット2の特定の実施例において示されるように、角度が増加するにつれて、着実に大きくなる。
【0047】
技術水準に係る滑り軸受に溝を通して供給される移送媒体による軸受潤滑の証明された原理とは対照的に、潤滑膜形成のための、きれいで、不純物の少ない潤滑媒体は、例えば、押し出し成型機又はギアポンプ等の別の外部搬送装置によって、提供され、滑り軸受3に押し込まれる。このようにして、この作業が、適切な、きれいで、何よりも、不純物の少ない潤滑媒体によって実行されるとき、潤滑膜形成は、移送媒体の潤滑膜形成特性とは大きく独立している。この外部潤滑媒体は、潤滑膜を形成するための移送媒体とは異なることが可能である利点を明示的に参照される。しかしながら、潤滑剤は、潤滑剤がその後汲み出された媒体と混合するとき、すなわち滑り軸受間隙を出た後に、潤滑剤と適合するように選択されなければならない。
【0048】
本発明によると、滑り軸受3の構造及び滑り軸受3における潤滑剤ポケット2の設計は、潤滑媒体の最も小さく可能な量が流体力学的滑り軸受3に必要とされるように設計される。同時に、滑り軸受3の設計及び潤滑剤ポケット2の構造は、できるだけ少ない汚染された汲み出される媒体が主流から滑り軸受3に入ることことを確実にしなければならず、そうでなければ、きれいな外部の供給される潤滑剤の良い潤滑特性を利用することができない。滑り軸受3のための構造及び潤滑剤ポケット2の適切な選択は、ギアポンプ自体の付加的な構成要素(シャフトシールなど)を有することなく、汚染された汲み出される媒体が、滑り軸受3の潤滑間隙に大部分が入るのを防ぐことを確実にする。
【0049】
上記説明の更なる発展において、本発明は、異物粒子が汲み出される媒体に含まれていないが、それにもかかわらず、非常に薄い潤滑膜が滑り軸受において望まれる、すなわち、汲み出される媒体は、そのような薄い潤滑膜を許容しない重要な応用のために非常によく使用されることもあることは、明示的に指摘される。
【0050】
図5は、潤滑剤ポケット2の開始縁部16(
図2)から始まり、増加する回転角度rの関数として、回転角度rが増加すると、連続的に広がる断面積Qのグラフを示す。これは、回転方向Rにおいてかなりの広がりにわたって、一定の断面積Qを有する潤滑剤ポケット2の実施形態の変形例である。好ましくは、ボア4の断面積、したがって同様に注入点13の断面積もまた、その広がりの大きな面積にわたって(例えば、境界線21までの、回転方向Rにおける潤滑剤ポケット2の広がり全体の2/3にわたって)一定である。潤滑剤ポケット2の最後の1/3(再び回転方向Rで見て)においては、断面積Qは、例えば、出口縁部15まで着実に減少する。回転方向Rにおいて着実に広がる潤滑剤ポケット2により(
図2参照)、潤滑剤ポケット2の深さは、断面積Qが一定であるように、回転方向Rにおける潤滑剤ポケット2の広がりの最初の2/3において減少する。これは、潤滑剤がシャフトと滑り軸受との間の滑り軸受間隙に達する或いは押し込まれる前に、潤滑剤ポケット2内の潤滑剤の最適な分配を達成する。
【符号の説明】
【0051】
1 ギアホイール
2 潤滑剤ポケット
3 滑り軸受
4 ボア
5、6 ジャーナル軸受
7 軸受内側、ギア側端面、ギア端面
8 軸受外側、ギア側の端面と反対の端面、軸受端面
9 シャフト軸
10 角度基準面
11 第1バー
12 第2バー
13 注入点
14 弦面
15 出口縁部
16 開始縁部
20 最大フレーム
21 境界線
R シャフトの回転方向
r 回転角度
α 開始角度
β 終了角度
δ 注入点角度
DL ジャーナル軸受直径
DF 基礎円直径
LG 滑り軸受長さ
Q 断面積
d1 ギア側の滑り軸受の面から潤滑剤ポケットの第1距離
d2 ギア側の滑り軸受の反対面から潤滑剤ポケットの第1距離
D1 第1バー幅
D2 第2バー幅
【外国語明細書】