(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155859
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】短いセルロース短繊維からなるコアスパン糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/36 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
D02G3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068030
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】23169026.4
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファティー コヌコウルー
(72)【発明者】
【氏名】エスレフ トゥンサー
(72)【発明者】
【氏名】セレフ アグズィカラ
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】セダット デミルビューケン
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA09
4L036MA33
4L036MA35
4L036MA37
4L036MA39
4L036RA13
4L036RA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糸及びファブリックのリサイクルから得られる短いセルロース、例えば綿の短繊維を使用した糸、及び前記糸の製造方法を提供する。
【解決手段】糸を製造する方法であって、次のステップa、b、cを含む。ステップa:複数のポリエステルフィラメントを含むフィラメントコアを選択する。フィラメントコアのポリエステルフィラメントの破断伸びは、DINISO2062でテストした場合、5%から15%の範囲、より好ましくは10%から12%の間である。ステップb:短繊維鞘を選択する。鞘の少なくとも95%は、第1短繊維と第2短繊維から成り、前記第1短繊維はリサイクル綿繊維であり、前記第2短繊維は再生セルロース繊維である。ステップc:リング紡糸によって、前記フィラメントコアと前記短繊維鞘を組み合わせる。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸の製造方法であって、
a.複数のポリエステルフィラメントを含むフィラメントコアを選択するステップと、
b.短繊維鞘を選択するステップと、
c.リング紡糸により、前記フィラメントコアと前記短繊維鞘とを組み合わせるステップとを含み、
前記ステップaにおいて、前記フィラメントコアの前記ポリエステルフィラメントの破断伸びは、DINISO 2062でテストした場合、5%から15%の範囲の間であり、
前記ステップbにおいて、前記鞘の重量の少なくとも95%は、第1短繊維と第2短繊維からなり、前記第1短繊維はリサイクル綿繊維であり、前記第2短繊維は再生セルロース繊維である、ことを特徴とする糸の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1短繊維と前記第2短繊維との重量比が20/80から70/30(未満)までの範囲であることを特徴とする糸の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の糸の製造方法であって、前記リサイクル綿繊維の平均長さL(n)が6~16mmであり、及び/又は前記再生セルロース繊維の平均長さL(n)が25~40mmであることを特徴とする糸の製造方法。
【請求項4】
糸の製造方法であって、
a.複数のポリエステルフィラメントを含むフィラメントコアを選択するステップであって、前記フィラメントコアのポリエステルフィラメントの破断伸びが、DINISO2062でテストした場合に5%から15%の範囲、より好ましくは10%から12%の間であるステップと、
b.天然セルロース繊維である第1短繊維を選択するステップと、
c.再生セルロース繊維である第2短繊維を選択するステップと、
d.前記第1短繊維と前記第2短繊維の混合物が少なくとも95重量%含まれる、短繊維鞘を提供するステップと、
e.リング紡糸により、前記フィラメントコアと前記短繊維鞘とを組み合わせるステップとを含み、
前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は20/80から70/30(未満)の範囲であり、
前記鞘の前記繊維の平均長さは10から34mmであり、
前記鞘の前記繊維の5%(n)指数は25mmから40mmであり、
前記鞘の短繊維含有量SFC(n)は2%から70%であることを特徴とする糸の製造方法。
【請求項5】
前記コアのポリエステルフィラメントがリサイクルポリエステルから作られる、請求項1又は4の何れか1項に記載の糸の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は4の何れか1項に記載の糸の製造方法であって、
a.前記第1短繊維と前記第2短繊維との重量比は、20/80(以上)から30/70(未満)の範囲であり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは、19~34mmの範囲であり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は、2%~41%であり、
又は
b.前記第1短繊維と前記第2短繊維との重量比は、30/70(以上)から40/60(未満)の範囲であり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは18~33mmの範囲であり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は3%~43%であり、
又は
c.前記第1短繊維と前記第2短繊維との重量比は、40/60(以上)から50/50(未満)の範囲であり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは16~31mmの範囲であり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は8%~48%であり、
又は
d.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は、50/50(以上)から60/40(未満)の範囲であり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは15~30mmの範囲であり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は14%~54%であり、
又は
e.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は、60/40(以上)から70/30(未満)の範囲であり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは13~28 mmの範囲であり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は21%~61%であることを特徴とする糸の製造方法。
【請求項7】
フィラメントコアと短繊維鞘とを含む糸であって、
前記短繊維鞘は、第1短繊維と第2短繊維の混合物から作られ、又は少なくとも95重量%の前記混合物を含み、前記第1短繊維は天然セルロース繊維であり、前記第2短繊維は再生セルロース繊維であり、
前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は、20/80~70/30(未満)の範囲であり、
前記鞘の前記繊維の平均長さは、10~34mmの範囲であり、
前記鞘の前記繊維の5%(n)指数は、25~40mmであり、
前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は2%から70%の間であり、
前記フィラメント コアは複数のポリエステルフィラメントを含み、
DINISO2062に従って測定された前記フィラメントコアの前記ポリエステルフィラメントの破断伸びは5%から15%の範囲であることを特徴とする糸。
【請求項8】
請求項7に記載の糸であって、
a.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は20/80(以上)から30/70(未満)の範囲にあり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは19から34mmの範囲にあり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は2%から41%の範囲にあり、
又は
b.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は30/70(以上)から40/60(未満)の範囲にあり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは18から33mmの範囲にあり、
ii前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は3%~43%であり、
又は
c.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は40/60(以上)から50/50(未満)の範囲にあり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは16から31mmの範囲にあり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は8%から48%の間であり、
又は
d.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は50/50(以上)から60/40(未満)の範囲にあり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは15から30mmの範囲にあり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は14%から54%の間であり、
又は
e.前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は60/40(以上)から70/30(未満)の範囲であり、
i.前記鞘の前記繊維の平均長さは13から28mmの範囲であり、
ii.前記鞘の前記短繊維含有量SFC(n)は21%から61%の間であることを特徴とする糸。
【請求項9】
請求項7又は8の何れか1項に記載の糸であって、前記再生セルロース繊維の平均長さと前記第1短繊維の平均長さの比が1.5~3.8の範囲にあることを特徴とする糸。
【請求項10】
請求項7又は8の何れか1項に記載の糸であって、前記コアが1本以上のエラストマーフィラメントを含み、そのドラフトが2.0~4.0であることを特徴とする糸。
【請求項11】
請求項7又は8の何れか1項に記載の糸であって、前記ポリエステルフィラメントのドラフトが1.5~2.5であることを特徴とする糸。
【請求項12】
請求項7又は8の何れか1項に記載の糸であって、
前記ポリエステルフィラメントがテクスチャードフィラメントであることを特徴とする糸。
【請求項13】
請求項7又は8の何れか1項に記載の糸であって、
前記コアの前記ポリエステルフィラメントの量は、前記糸の重量の10%から30%の範囲であることを特徴とする糸。
【請求項14】
請求項7又は8の何れか1項に記載の糸であって、
前記ポリエステルフィラメントの総数は、50から150デニールであることを特徴とする糸。
【請求項15】
請求項7又は8の何れか1項に記載の前記糸を含むファブリック又は衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、典型的には糸及びファブリックのリサイクルから得られる短いセルロース、例えば綿の短繊維を使用した糸、及び前記糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然繊維の生産にはコストがかかり、環境への影響もあるため、繊維廃棄物から天然繊維をリサイクルして再利用する方法が開発されてきた。顕著な例としては、廃棄繊維、特にファブリックや糸の廃棄物から綿をリサイクルして、リサイクル綿繊維を得る方法が挙げられる。
【0003】
既知のファブリック及び糸のリサイクルプロセスには、一般に、ファブリックを機械的に分解して、新しい糸を紡ぐために使用できる緩い繊維にすることが含まれる。このプロセスでは、金属ピンを備えた回転ドラムなどによってファブリックを分解する機械が使用される。糸の繊維に機械的負荷がかかると、元の繊維がより短い繊維に切断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リサイクル綿繊維の問題点は、短い繊維が含まれているため、糸の製造、特にデニム生産用のリング紡績機には不適切であるか、又はあまり適していないことである。未使用綿の短繊維は、リサイクル綿繊維よりも長い繊維が多く含まれている。例えば、(1本の糸の繊維全体を考慮すると)、未使用綿の平均長さL(n)は通常20mmを超えるが、リサイクル綿の短繊維の平均長さL(n)は通常15mm未満、通常は6~15mm、より一般的には9~12mmである。
【0005】
そのため、リング紡績による糸製造において、リサイクル(短)綿繊維を適切に使用することは困難である。
【0006】
綿繊維の長さが短いと、糸の強度が低くなりすぎてファブリックの品質が悪くなり、また、糸製造機械で複合繊維が破損して糸に加工できない場合もある。そのため、リサイクル綿繊維を未使用綿繊維と混合することにより、最終的な糸に、未使用綿などの100%未使用天然繊維を含む糸の許容できる機械的特性と、かさばりや外観などの物理的特性を付与している。糸に含まれる未使用綿繊維(CO)とリサイクル綿繊維(RCO)の重量比は、糸の生産技術によって異なる。通常、オープンエンド糸は最大100%のリサイクル綿で構成されるが、リングスパン糸ではRCO含有量は40%(重量比)を超えず、一般的にCO/RCOの重量比は70/30~90/10の範囲である。
【0007】
ポリエステルの長繊維及び繊維を使用して、リサイクル綿繊維を含む糸の機械的特性を改善することも提案されている。一つの形態では、ポリエステル短繊維を綿繊維と混合してから糸に紡ぐが、これらの糸は、ポリエステルが存在するため、容易に染色できず、外観が悪く、綿らしくない外観になるという欠点がある。
リサイクル綿鞘内のコアフィラメントとしてポリエステル長繊維が設けられた実施形態は、必然的にリサイクル綿繊維の含有量が低いという上記の欠点がある。さらに、リサイクル綿繊維鞘は、引き伸ばされたり張力がかかったりすると簡単に破れてしまうため、特にこの問題を解決することができなかった。
【0008】
従って、このような従来技術の問題を解決し、綿繊維が全てリサイクル繊維であり、リングスパン糸であり、外観が良好で、機械的特性が良好から優れている糸を提供する必要がある。
【0009】
本発明の1つの目的は、全ての綿繊維がリサイクルされた糸を提供することであり、かつ、この糸は、短い綿繊維であり、良好もしくは優れた機械的特性と、未使用の綿繊維を含む糸のような外観及び様相とを有するものである。
【0010】
本発明の他の目的は、弾性及び伸縮性を有する短い綿繊維を含む、コアスパン糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は、独立請求項に係る糸及び方法に関する本発明によって達成される。
【0012】
特に、本発明は、添付の独立請求項に記載の糸及び関連する製造方法に関するものであり、好ましい態様は従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明によれば、糸はフィラメントコアと短繊維鞘とを含み、前記短繊維鞘は、第1短繊維と第2短繊維の混合物のみで作られるか、又は少なくとも95重量%が第1短繊維と第2短繊維の混合物を含み、前記第1短繊維は天然セルロース繊維であり、前記第2短繊維は再生セルロース繊維である。
前記鞘の繊維の平均長さは10~34mm、好ましくは12~29mmの範囲であり、前記鞘の繊維の5%(n)指数は25~40mm、より好ましくは28~36mm、さらに好ましくは30~34mmの範囲であり、前記鞘の短繊維含有量SFC(n)は2%~70%、好ましくは10%~60%であり、前記フィラメントコアは複数のポリエステルフィラメントを含む。
前記フィラメントコアのポリエステルフィラメントの破断伸びは、DINISO2062に従って測定すると、5%から15%の範囲にあり、より好ましくは10%から12%の間である。
【0014】
前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は、20/80~80/20の範囲、好ましくは20/80~70/30(未満)の範囲である。平均長さは、DIN53805:1980‐06に従って測定されたL(n)値である。
【0015】
上記の指標、すなわちL(n)、5%(n)、SFC(n)を測定できるテスト機、例えばUSTER AFIS PRO 2 やTextechno FCS-Fibrotestは、当該技術分野で既知である。
平均繊維長さ(Ln)は、以下の式で計算することができる。
【0016】
【0017】
ここで、Lnは平均繊維長さ、niは長さliの繊維の数、liは繊維iの長さである。
【0018】
鞘において、繊維の5%(n)指数(前述の通り、DIN53805:1980-06で測定)は少なくとも25mm、好ましくは25mm~40mm、より好ましくは28~38mmであり、鞘の短繊維含有量SFC(n)(DIN 53805:1980-06で測定)は30%~70%であり、好ましい値は35%以上、より好ましくは40%以上、すなわち40~70%である。
【0019】
請求の範囲に記載された破断時の伸びは、コアの全てのフィラメントを一緒にテストした伸びである。特に、コアの伸びが低い場合(すなわち、上記のように15%未満)、糸の製造及び製織プロセスが容易になることがわかった。特に、これらの実施形態では、コアの伸びは通常、綿繊維の伸びと同様である。
実際、最終的な糸に張力がかかった場合、ポリエステルコアの伸び率が高い(すなわち、15%以上又は20%以上)と、鞘がコアから滑り落ちたり、短繊維鞘が破損したりする可能性がある。
【0020】
コアに伸び率の低いポリエステルフィラメントを使用すると、上記の問題を回避するのに役立つ。低伸長ポリエステルフィラメントは、当業界では既知であり、市販されている。これらは、様々な方法で得ることができる。可能な解決策としては、POYポリエステルフィラメントのテクスチャリング工程中にドラフト(引き伸ばし)を提供することが挙げられる。このようなドラフトは、好ましくは1.7~2.5、より好ましくは1.8~2.1である。
【0021】
ポリエステルフィラメントは、実際にはテクスチャリングされていることが好ましく、前述のように、通常はテクスチャリング工程の引き伸ばし工程中にフィラメントを加熱することによっても、テクスチャリング工程中に引き伸ばしを行うことができる。
【0022】
本発明の一態様によれば、コアのポリエステルフィラメントの量は、糸の重量の10%~35%、より好ましくは15%~25%、さらに好ましくは約20%である。上記の%は、ポリエステルフィラメントの全体の番手、すなわちフィラメントの全体の番手の合計に関連する。
【0023】
本発明の一態様によれば、ポリエステルフィラメントの全体の番手は50~150デニール、より好ましくは60~120デニール、さらに好ましくは75~100デニールである。低伸長ポリエステルの使用は、最終的な糸の機械的特性を向上させ、糸製造中の芯の滑りなどの問題を防ぐという点で有益である。これは、特に綿の割合が高い実施形態に当てはまる。ただし、低伸長ポリエステルは、綿の割合が低い実施形態でもコアの滑りを防ぐのに役立つことが確認されている。
【0024】
本発明は、その一態様によれば、フィラメントコアと短繊維鞘とを含む糸にも関し、短繊維鞘は、第1短繊維と第2短繊維の混合物であるか、又は少なくとも95重量%の混合物を含み、第1短繊維は天然セルロース繊維であり、第2短繊維は再生セルロース繊維である。
第1短繊維と第2短繊維の重量比は、20/80(以上)~80/20(以上)の範囲、好ましくは20/80(以上)~70/30(未満)であり、鞘の繊維の平均長さは13~34mmの範囲、好ましくは15~29mmであり、鞘の繊維の5%(n)指数は25~40mmであり、より好ましくは28~36mmの範囲、さらに好ましくは30~34mmであり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は2%~61%であり、好ましくは10%~51%であり、フィラメントコアは複数のポリエステルフィラメントを含む。
DINISO2062に従って測定されたフィラメントコアのポリエステルフィラメントの破断時の伸びは、5%から15%の範囲未満であり、より好ましくは10%から12%の間である。
【0025】
複数の糸のテストにより、L(n)指数は混紡糸中の第1繊維の割合の増加に応じて増加するのに対し、SFC(n)指数は混紡糸の第1繊維の割合の増加に応じて減少することがわかった。
後で詳しく説明するように、混紡糸中の綿の割合とL(n)指数及びSFC(n)指数の関係はほぼ直線であり、より近似的な関係は放物線であり、二次係数が非常に低い。
【0026】
対照的に、第1繊維と第2繊維の比率が20/80~70/30の範囲では、5%(n)指数は実質的に一定のままであることがわかった。結果として、ブレンドのL(n)指数とSFC(n)指数の好ましい値について以下で説明する。
【0027】
本発明の一態様によれば、第1短繊維と第2短繊維の重量比が20/80(以上)~30/70(未満)の範囲であり、鞘の繊維の平均長さが19~34mm、好ましくは21~29mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)が2%~41%、好ましくは10%~31%である。
【0028】
本発明の一態様によれば、第1短繊維と第2短繊維の重量比が30/70(以上)~40/60(未満)の範囲であり、鞘の繊維の平均長さが18~33mm、好ましくは20~28mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)が3%~43%、好ましくは13%~33%である。
【0029】
本発明の一態様によれば、第1短繊維と第2短繊維の重量比が40/60(以上)~50/50(未満)の範囲であり、鞘の繊維の平均長さが16~31mm、好ましくは18~26mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)が8%~48%、好ましくは18%~38%である。
【0030】
本発明の一態様によれば、第1短繊維と第2短繊維の重量比が50/50(以上)~60/40(未満)の範囲であり、鞘の繊維の平均長さが15~30mm、好ましくは17mm~25mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)が14%~54%、好ましくは24%~44%である。
【0031】
本発明の一態様によれば、第1短繊維と第2短繊維の重量比が60/40(以上)~70/30(未満)の範囲であり、鞘の繊維の平均長さが13~28mm、好ましくは15~23mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)が21%~61%、好ましくは31%~51%である。
【0032】
本発明の一態様によれば、第1短繊維と第2短繊維の重量比が70/30(以上)~80/20(以下)の範囲、好ましくは約75/25であり、鞘の繊維の平均長さが10~25mm、好ましくは12mm~20mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)が30%~70%、好ましくは40%~60%である。
【0033】
本明細書における「繊維の混合物」という語句は、コアスパン糸の鞘を形成するためにリング紡糸工程で使用するのに適した異なる繊維の混合物を指すために使用されている。本発明の糸の鞘内の単一繊維は識別可能であり、必要に応じて鞘を形成する混合物から物理的に除去することができる。
本発明において、「再生セルロース繊維」又は「人造繊維」という用語は、工業的に生産されるあらゆる種類のセルロース系短繊維を指す。この用語には、リヨセル、ビスコース、モダール、竹(市販の竹繊維は通常、竹から生成された再生セルロース繊維、つまり竹から抽出されたセルロースから作られた合成レーヨンである)、ポリノジック繊維、キュプロ、アセテートなど、あらゆる種類の再生セルロース繊維が含まれる。
このような人造短繊維は実質的に一定の長さを有するため、これらの繊維の長さは非常に狭い範囲内に収まり、すなわちCV(変動係数)の値が低くなる。本発明では、DIN53805:1980-06で測定されたこれらの繊維の平均長さは、25mm~38mmの範囲であり、好ましくは29mm~35mmである。本発明に適した再生繊維の好ましい番手は、1dtx~3dtxの範囲であり、好ましくは約1.2dtxである。
本発明に好ましい再生セルロース繊維は、FSC認証再生セルロース繊維などの持続可能なセルロース繊維である。
【0034】
本発明において、「未使用繊維」という用語は、糸やファブリックに加工されていない綿から得られる、従って繊維の平均長さが長い綿の短繊維を指す。
【0035】
本発明において、「天然セルロース繊維」という用語は、植物又は動物の体から得られる繊維を指す。好ましい天然セルロース繊維は、綿、麻、リネンなどの植物由来のファブリック及び繊維のリサイクルプロセスから得られる、又は得られる繊維である。
通常、本発明で使用される天然セルロース繊維は、互いに近い番手を有するリサイクル繊維であり、通常、再生セルロース繊維の番手範囲内である。
【0036】
以下の説明における「リサイクル綿繊維」という用語は、糸及びファブリックの機械的処理、例えば開繊及び選別から得られる綿の短繊維を指し、これらの繊維を識別するための可能な方法は、それらの平均繊維長を測定することである。
実施形態では、DIN 53805:1980-06で測定された繊維平均長L(n)は、6~16mmの範囲である。ノイルはリサイクル綿繊維の定義に該当する。周知のように、ノイルは糸製造時に廃棄物として生成される短い繊維であり、通常はコーミング工程中に糸から除去される。
【0037】
鞘の最終混合物において、高い5%(n)指数は主に長い再生セルロース繊維の存在によるものであり、高いSFC(n)値は主に短い第1短繊維、例えば短い繊維の割合が高いリサイクル綿繊維の存在によるものである。
【0038】
本発明によれば、糸は、ポリエステルフィラメントを含むかポリエステルフィラメントからなるコアを有するコアスパン糸である。ポリエステルフィラメントの線密度は20~300デニールの範囲である。フィラメント数は6~288の範囲であり、最終糸の総数は5/1~60/1Neの範囲である。好ましい実施形態では、ポリエステルフィラメントの重量比は糸の総重量に対して10~35%の範囲である。
【0039】
本発明の一態様によれば、糸はフィラメントコアと短繊維鞘とを含む。繊維鞘は第1短繊維と第2短繊維でできている。第1短繊維は天然セルロース繊維であり、好ましくは平均長さが6~16mm、さらに好ましくは約10mmであるリサイクル綿の短繊維である。
【0040】
第2短繊維は、合成繊維、例えば再生短繊維、好ましくはビスコースであり、平均長さは第1短繊維の平均長さよりも長く、好ましくは25mm~40mm、より好ましくは28mm~36mmである。特に、30mm~34mmなどの約32mmの第2短繊維で高品質の糸が得られている。
【0041】
鞘の繊維の少なくとも95%は、前述の第1及び第2短繊維であり、第1短繊維と第2短繊維の重量比は20/80~70/30(未満)である。言い換えれば、好ましい実施形態は、鞘が(その重量の少なくとも95%)20%~70%の第1短繊維、すなわちリサイクル綿繊維からなる混合物を含み、混合物の残りの80%~30%の重量は第2短繊維、すなわちビスコースからなる。
【0042】
前述のように、繊維鞘のブレンドと芯部の1本以上のポリエステルフィラメントの存在により、特許請求された繊維とフィラメントは糸に加工可能となり、その結果、市場で優れた特性を有するファブリックが加工可能となる。特に、得られた糸はリング紡糸が可能であり、これはリサイクル綿繊維などの短繊維の割合が高い糸ではこれまで不可能であったプロセスである。
フィラメントコアのポリエステルフィラメントの破断伸びは、DINISO2062でテストした場合、15%未満、好ましくは5%~15%、より好ましくは8%~12%、さらに好ましくは10%~12%である。
【0043】
前述のように、鞘の第2短繊維の平均長さは、第1短繊維の平均長さよりも長い。繊維の長さは、Uster Afis Pro 2やTexTechno FCS-Fibroテストなどの適切な機械で、DIN 53805:1980-06に準拠した(高度繊維情報システム)やASTM D1447などの当業界で知られている方法で測定できる。
【0044】
完成した糸の鞘の繊維の性質と繊維長(すなわち、L(n)、SFC(n)、及び5%(n)値)を測定するためには、最初に鞘を芯から分離する必要がある。これは、糸の撚りを戻す(すなわち、糸の1つと反対の撚りを適用する、例えばZ撚りの糸にS撚りを適用する)ことによって行うことができる。これは手動で行うことも、撚糸機で行うこともできる。
得られた繊維は、その性質、すなわち天然セルロース繊維と再生セルロース繊維の存在を判断するためにテストすることができる。既知の方法としては、AATCC 20及び20A、又はISO1833が挙げられる。
その後、繊維の長さは、例えばDIN 53805又はASTM D1447、Uster Afis Pro 2又はTexTechno FCS-Fibroテストを介してテストすることができる。
【0045】
好ましくは、鞘の第1短繊維と第2短繊維との間の相互作用をより良くするために、第2短繊維の長さは、第1短繊維の長さよりもあまり大きくない。第2短繊維の平均長さL(n)と第1短繊維の平均長さL(n)との間の好ましい比率は、1.5~3.8であり、より好ましくは2~3.5である。上記の比率が2.5~3.3のときに最良の結果が得られることがわかった。
【0046】
前述の態様の1つ以上による糸は、ファブリック、特にファブリックの(好ましくはデニム)ファブリック、及びそのようなファブリックを含む衣服を製造するために使用することができる。特に、本発明による糸を縦糸方向及び横糸方向の両方に使用したファブリックを製造することが可能である。
【0047】
このようなファブリック、特にこのようなファブリックから作られた衣服は、未使用(すなわち通常の)綿を使わずに作ることができ、通常の綿糸から作られたファブリックと同様の着用特性(手触り、柔らかさなど)及び光学特性(明度、染色性など)を有することがわかった。また、通常の綿糸から作られたファブリックと比較して、本発明のファブリックは、同様の引張強度などの同様の機械的特性、ならびにより優れた摩耗特性を示す。
【0048】
一例として、ファブリックの摩耗はBS ENISO 12947-2法eテストでテストすることができ、25,000~30,000サイクルが実行される。
これらのサイクル数の後も、布地が破断するまで試験を継続した場合、本発明の布地は、標準的な綿糸布地、またはリサイクル綿糸で作られた布地と比較して、より大きな耐性を有する(すなわち、より多くのサイクル数後に破断する)。
【0049】
3枚の同一の衣服をテストした場合、衣服の唯一の違いは、第1の衣服は未使用の綿糸で作られ、第2の衣服はリサイクル綿を含む糸で作られ、第3の衣服はリサイクル綿繊維を第1短繊維として本発明に従って作られたという点であり、テストされた衣服が破れるまで摩耗テストを続けると、第3の衣服は第1の衣服の2~3倍、第2の衣服の3~4倍の耐久性があることがテストされている。
【0050】
コアは、複数のポリエステルフィラメントから構成されてもよいし、エラスタンなどのエラストマーフィラメントも含んでもよい。典型的には、この場合、コアはポリエステルフィラメントとエラストマーフィラメントから構成される。
エラストマーフィラメントは通常40~140デニールの範囲であり、鞘に適用される前に通常少なくとも2.0倍、より好ましくは約3倍ドラフト(引き伸ばし)され、糸中のその番手は小さくなる(3.0ドラフトでは約13~47デニールとなる)。
【0051】
本発明はまた、以下の工程を含む糸の製造方法に関する。
a)複数のポリエステルフィラメントを含むフィラメントコアを選択する工程;
b)天然セルロース繊維である第1短繊維を選択する工程;
c)再生セルロース繊維である第2短繊維を選択する工程;及び
d)前記第1短繊維と前記第2短繊維の混合物の重量比が20/80から70/30の範囲にある、短繊維鞘を提供する工程。
ここで、鞘の繊維の平均長さは10から34mm、好ましくは12から29mmであり、鞘の繊維の5%(n)指数は25mmから40mm、好ましくは28から38mmであり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は2%から70%、より好ましくは10%から60%であり、前記フィラメントコアと前記短繊維鞘をリング紡糸により組み合わせる。
【0052】
本発明は、以下の工程を含む糸の製造方法にも関する。
a)複数のポリエステルフィラメントを含むフィラメントコアを選択する工程;
b)鞘の少なくとも95%が第1短繊維と第2短繊維でできている短繊維鞘を選択する工程;及び、
c)好ましくは、リング紡糸によって、前記フィラメントコアと前記短繊維鞘を組み合わせる工程。
ここで、前記第1短繊維は天然セルロース繊維であり、平均長さが6~16mmであることが好ましく、前記第2短繊維は再生セルロース繊維であり、平均長さが前記第1繊維よりも長く、好ましくは25mmを超え、より好ましくは30mmを超え、
前記第1短繊維はリサイクル綿繊維であり、前記第2短繊維は再生セルロース繊維であり、前記第1短繊維と前記第2短繊維の重量比は20/80~70/30(未満)の範囲である。
前述のように、好ましくはリサイクル材料が使用され、その結果、鞘の第1短繊維はリサイクル綿繊維であり、及び/又はポリエステルフィラメントはリサイクルポリエステルから作られる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2a】本発明による糸の鞘の繊維の混合物のヒストグラムであり、混合物(重量パーセント)は、リサイクル綿20%とビスコース 80%である。
【
図2b】本発明による糸の鞘の繊維の混合物のヒストグラムであり、混合物(重量パーセント)は、リサイクル綿50%とビスコース50%である。
【
図3a】本発明に従って製造された同じ糸の繊維に対して行われたテストの比較であり、ファブリックから取り出された状態を示している。
【
図3b】本発明に従って製造された同じ糸の繊維に対して行われたテストの比較であり、織られる前の状態を示している。
【
図4】天然セルロース繊維の割合の関数としてL(n)の好ましい範囲を示す図である。
【
図5】天然セルロース繊維の割合の関数としてSFC(n)の好ましい範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
例示的かつ非限定的な実施形態について、添付の非限定的な図を参照して以下に説明する。
議論を容易にするために、以下の一般的な議論では、以下を参照する。
鞘の第1繊維としてのリサイクル綿繊維:ただし、特に指定がない限り、以下の説明は鞘の第1繊維としてのその他の天然セルロース繊維に適用される。
鞘の第2繊維としてのビスコース繊維:ただし、特に指定がない限り、以下の説明は鞘の第2繊維としてのその他の再生セルロース繊維に適用される。
エラスタンフィラメントは、コア内に1本以上のエラストマーフィラメントとして存在する可能性がある:ただし、特に指定がない限り、以下の説明は、単一のエラスタンフィラメント、及び1本以上の異なるエラストマーフィラメントを含むコアに適用される。
【0055】
好ましい実施形態では、糸は、ポリエステルフィラメント、及び場合によってはエラスタンフィラメントも備えたコアを含み、鞘は、リサイクルされた綿繊維及びビスコース繊維を含む短繊維で作られる。
ポリエステルフィラメントは、通常、糸の総重量の10%~35%以内、通常は糸の約20%である。ポリエステルフィラメントの全体の番手は、典型的には20~300デニールであるが、最も好ましい実施形態では、75~100デニールのポリエステルの番手を使用する。
ポリエステルフィラメント(すなわち、コアのポリエステル成分)の破断時の伸びは15%未満、より好ましくは8%~12%、さらに好ましくは10%~12%である。破断時の伸びを測定するためのテストは、DINISO 2062である。
【0056】
比較すると、当初は同じ方法で製造されるが、請求の範囲に記載されたドラフトなしで製造された従来のポリエステル糸は、より重くなり(すなわち、より大きな番手を持ち)、同じテストでテストした場合、破断時の伸びは15%を超え、通常は約17%-25%の範囲になる。
エラスタンは、存在する場合、通常、高度に引き延ばされており(ドラフトは2.0以上、通常は約3.0)、糸中に少量存在し、従って通常は糸の総重量の約5~15%である。
【0057】
本発明のある態様によれば、ポリエステルフィラメントとエラスタンフィラメントは、既知の方法で、好ましくは混紡、撚り合わせ、又は機械的共押し出しによって、少なくとも複数の接続点で、結合される。前述のように、エラスタンフィラメントは、ポリエステルフィラメントと結合される前に引き延ばされることが好ましい。
本発明のある態様によれば、連続コア繊維とエラストマーフィラメントは、好ましくは張力のかかった状態で、フィラメントの「機械的共押し出し」によって、連続的又は実質的に連続的に結合される。このような共押し出し(共供給とも呼ばれる)中、2つ(又はそれ以上)の繊維束(張力のかかった状態)が制限部を通過(一緒に供給)され、制限部を出た後も繊維が付着したままになる程度にまで繊維が付着する。
【0058】
鞘は短繊維でできており、鞘の短繊維の少なくとも95%はリサイクル綿繊維と再生セルロース繊維、好ましくはビスコース繊維の混紡である。
好ましい実施形態では、リサイクル綿繊維が重量比で20%から80%(より好ましくは20%から70%)含まれ、混合物の残りの部分はビスコース繊維である。
リサイクル綿繊維の平均長さは、6~16mmである。通常、リサイクル綿繊維の90%以上(数で)は30mm未満である。繊維の50%が15mm未満である実施形態も考えられる。
【0059】
ビスコ-ス繊維は、鞘に強度を与えるために、リサイクル綿繊維よりも長くなっている。しかし、前述のように、鞘の繊維の結合と混合を促進するために、ビスコ-ス繊維はリサイクル綿繊維よりも長すぎないことが好ましい。
ビスコ-ス繊維の平均長さは25mmを超え、好ましくは30mmを超え、通常は28mm~36mmである。
特に、ビスコ-ス繊維が長すぎると、最終的な糸の品質が低下する可能性があることが指摘されている。それを考慮すると、最も好ましい実施形態では、約32mm、例えば30mm~34mmのビスコ-ス繊維が使用される。通常、ビスコース短繊維などの再生セルロース短繊維は、ビスコースフィラメントを切断して生成されるため、長さが均一である。
【0060】
ビスコ-スフィラメントは、その平均長さがリサイクル綿繊維の平均長さの1.5倍~3.8倍、好ましくは2倍~3.5倍、さらに好ましくは2.5倍~3.3倍になるように選択される。
前述のように、ビスコ-ス繊維とリサイクル綿繊維は、鞘の繊維の重量の少なくとも95%となるように混合される。ビスコ-ス繊維とリサイクル綿繊維との比率(重量)は、20/80~80/20、好ましくは20/80~70/30である。
【0061】
鞘の繊維の平均長さL(n)は10~34mm、好ましくは12~29mmであり、鞘の繊維の5%(n)指数は少なくとも25mm、好ましくは25mm~40mm、より好ましくは28~38mmである。鞘の短繊維含有量SFC(n)は2%~70%である。
前述のように、L(n)指数と5%(n)指数は混紡中の綿の割合(つまり綿とビスコースの重量比)の関数である。
【0062】
綿の割合が増加すると、L(n)指数が低下することが分かっている。この関係は、大まかに反比例関係として近似できる。より良い近似は、非常に小さな二次成分を持つ負の放物線関係である。
同様に、綿の割合が増加すると、5%(n)指数が上昇することが分かっている。この関係は、大まかに比例関係として近似できる。より良い近似は、非常に小さな二次成分を持つ放物線関係である。例示的な実施形態における綿の割合の関数としてのL(n)は
図4に、SFC(n)指数の可能な傾向は
図5に示されている。
【0063】
上記を考慮すると、好ましい実施形態では、綿/ビスコース混紡における綿の割合の関数として、L(n)及びSFC(n)指数の範囲が狭くなる。
特に、第1短繊維と第2短繊維の比率が20/80(以上)から30/70(未満)の範囲にある実施形態では、鞘の繊維の平均長さは19~34mm、好ましくは21~29mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は2%~41%、好ましくは10%~31%である。
【0064】
第1短繊維と第2短繊維の重量比が30/70(以上)~40/60(未満)の範囲である実施形態では、鞘の繊維の平均長さは18~33mm、好ましくは20~28mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は3%~43%、好ましくは13%~33%である。
第1短繊維と第2短繊維の重量比が40/60(以上)~50/50(未満)の範囲である実施形態では、鞘の繊維の平均長さは16~31mm、好ましくは18~26mmの範囲であり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は8%~48%、好ましくは18%~38%である。
【0065】
第1短繊維と第2短繊維の重量比が50/50(以上)~60/40(未満)の範囲にある実施形態では、鞘の繊維の平均長さは15~30mm、好ましくは17mm~25mmの範囲にあり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は14%~54%、好ましくは24%~44%である。
第1短繊維と第2短繊維の重量比が60/40(以上)~70/30(未満)の範囲にある実施形態では、鞘の繊維の平均長さは13~28mm、好ましくは15mm~23mmの範囲にあり、鞘の短繊維含有量SFC(n)は21%~61%、好ましくは31%~51%である。
【0066】
第1短繊維と第2短繊維の重量比が70/30(以上)~80/20(以上)の範囲、好ましくは約75/25である実施形態では、鞘の繊維の平均長さは10~25mm、好ましくは12~20mmの範囲であり、一方、鞘の短繊維含有量SFC(n)は30%~70%、好ましくは40%~60である。
【0067】
上記の全ての実施形態では、鞘の繊維の5%(n)指数は25mm~40mm、より好ましくは28~36mm、さらに好ましくは30~34mmである。
製造装置は当該技術分野で既知であり、ここでは詳細には説明しない。
【0068】
本発明による糸の製造方法は、ポリエステルフィラメントを延伸してコアを用意し、場合によってはエラスタンフィラメントと組み合わせることを含む。
次に、コアを鞘と組み合わせる。鞘は通常、1本以上の短繊維のロービングの形で提供される。
次に、得られた製品を、好ましくはリング紡糸によって糸に紡ぐ。
得られた糸はファブリックの製品に使用でき、特に、本発明による複数の糸はファブリックに使用できる。特に、それらはファブリックの縦糸及び/又は横糸として使用できる。
【0069】
特に、本発明の目的は、全ての縦糸及び横糸が本発明による糸であるファブリック、好ましくはデニムファブリックである。
縦糸は、例えばインディゴ染めで染色することができ、一方、横糸は染色しないままにすることができる(染色は可能である)。
前述のように、本発明の糸で得られたファブリックは、標準的な綿糸及びリサイクル綿糸で作られたファブリックに比べて、耐摩耗性能が向上している。
【0070】
以下に、例示的な比較を示す。
ファブリック1は標準的な綿糸で作られたファブリックであり、ファブリック2は本発明による縦糸と横糸で作られたファブリックである。
ファブリック1は、以下のパラメータに従って作られている:
-縦糸の組成:綿100%
-縦糸の番手:10/1 Ne
-横糸の組成:綿94%/エラスタン6%
-横糸の番手:16/1 Ne
-ファブリックの織り:デニムファブリック3/1
-ファブリックの組成:綿98%/エラスタン2%。
【0071】
ファブリック2は、以下のパラメータに従って作られている:
-縦糸の組成:61%リサイクル綿/20%ビスコース/19%リサイクルポリエステル
-縦糸の番手:10/1 Ne(ファブリック1と同じ)
-横糸の組成:60%リサイクル綿/20%ビスコース/14リサイクルポリエステル/6% エラスタン
-横糸の番手:16/1 Ne(ファブリック1と同じ)
-ファブリックの織り:3/1デニムファブリック(ファブリック1と同じ)
-ファブリックの組成:60%綿/20%ビスコース/18% リサイクルポリエステル/2% エラスタン。
2組のファブリックは表1のようにテストされた。
【0072】
【0073】
引裂きテストはISO13937-1に従って実施され、通常の手順で40°Cで5回および10回の家庭での洗濯が行われ、その後タンブル乾燥された。各セルでは、上の線は横方向の値を示し、下の線は縦方向の値を示している。
【0074】
【0075】
引張強度テストはISO1393-1に従って実施され、通常の手順で40°Cで5回および10回の家庭での洗濯が行われ、その後タンブル乾燥された。各セルでは、上の線は横方向の値を示し、下の線は縦方向の値を示している。
【0076】
【0077】
この摩耗試験はIS012947-2に従って実施され、試験対象のファブリックが破れるまで続けられた。
【0078】
上記のテストからわかるように、本発明のファブリックは、標準的な未使用の綿ファブリックと比較して、引張強度は同等で、引裂強度はわずかに向上している。その結果、本発明のファブリックは、標準的な未使用の綿ファブリックと比較して、同様の光学特性を維持しながら、同様の耐摩耗性を有する。
【0079】
また、本発明のファブリックは、より優れた耐摩耗性を示し、ファブリックの寿命を向上させる。繊維の組成および長さは、上記の方法に従ってテストすることができる。
【0080】
織られる前と織られた後にファブリックから取り除いてテストすることができ、結果は同様であった。この点で、
図1と
図2はファブリックに織り込まれていない繊維に対して行われたテストである。
図3aと
図3bは、本発明による同じ糸セットからの繊維の比較を示しており、
図3aのテストの繊維はファブリックから取り除かれた糸からのものであり、
図3bのテストの繊維はファブリックに織り込まれる前の糸製造後の糸からのものである。見て分かるように、繊維長分布は実質的に同じである。
【外国語明細書】