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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015586
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】バルブユニット
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/04 20060101AFI20240130BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20240130BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240130BHJP
   F25B 41/335 20210101ALI20240130BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F16K15/04 Z
F25B43/00 L
F25B1/00 304B
F25B41/335 Z
F16K27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117734
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】吉廣 良介
(72)【発明者】
【氏名】梶原 盛光
(72)【発明者】
【氏名】池田 英生
【テーマコード(参考)】
3H051
3H058
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB10
3H051CC01
3H051FF08
3H058AA04
3H058EE17
3H058EE18
(57)【要約】
【課題】バルブユニットの構成により冷凍サイクルのシステム効率を高める。
【解決手段】ある態様のバルブユニットは、冷媒を導入する導入ポートとレシーバの入口ポートとをつなぐ冷媒通路が設けられたユニットボディを備える。逆止弁18は、ユニットボディにおける冷媒通路に固定され、中途に弁座164が形成された内部通路174を有する筒状のバルブボディ168と、弁座164に下流側から着脱して内部通路174を開閉する弁体162と、を含む。バルブボディ168は、弁座164の上流側に弁座164の内径よりも断面が小さいオリフィス166を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を気液分離するレシーバが一体に設けられるバルブユニットであって、
上流側から冷媒を導入する導入ポートと、下流側へ冷媒を導出する導出ポートと、前記レシーバの入口と連通する入口ポートと、前記レシーバの出口と連通する出口ポートと、前記導入ポートと前記入口ポートとをつなぐ第1冷媒通路と、前記出口ポートと前記導出ポートとをつなぐ第2冷媒通路とを有し、前記レシーバのタンクが組み付けられるユニットボディと、
前記第1冷媒通路における冷媒の逆流を防止する逆止弁と、
を備え、
前記逆止弁は、
前記ユニットボディにおける第1冷媒通路に固定され、中途に弁座が形成された内部通路を有する筒状のバルブボディと、
前記弁座に下流側から着脱して前記内部通路を開閉する弁体と、
を含み、
前記バルブボディは、前記弁座の上流側に前記弁座の内径よりも断面が小さいオリフィスを有することを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記バルブボディの下流側端部に組み付けられるガイド部材をさらに備え、
前記弁体が前記ガイド部材に軸線方向に変位可能に支持され、
前記ガイド部材は、前記バルブボディの内方に向けて延出し、内周面にて前記弁体を支持するガイド部と、前記ガイド部の外側で前記バルブボディとの間に流路を形成する流路形成部とを含み、
前記弁体が球状のボール弁体であり、
前記ガイド部の前記弁座側の端部と前記弁座との距離が、前記弁体の直径よりも小さく、
前記バルブボディの内方には、前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記逆止弁としての第1逆止弁と、
前記第2冷媒通路における冷媒の逆流を防止する第2逆止弁と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記ユニットボディは、前記導入ポートとしての第1導入ポートと、前記第1導入ポートとは別に上流側から冷媒を導入する第2導入ポートと、前記第2導入ポートと前記導出ポートとを前記レシーバを介することなくつなぐ第3冷媒通路と、前記第3冷媒通路と連通する第1取付孔とを有し、前記第2冷媒通路と前記第3冷媒通路とが、前記第2逆止弁の下流側にて合流し、
前記第1取付孔に取り付けられ、前記第3冷媒通路を開閉する電磁弁をさらに備え、
前記第1取付孔の内周面に、前記第2逆止弁を前記ユニットボディに取り付けるための第2取付孔が開口し、
前記第2取付孔が前記第2冷媒通路の一部を構成し、
前記第2冷媒通路と前記第3冷媒通路との合流点が前記第1取付孔に位置することを特徴とする請求項3に記載のバルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を気液分離するレシーバが一体に設けられるバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気自動車の普及に伴い、その空調システムの開発も進められている。電気自動車は内燃機関による熱源そのものがないため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いてサイクル運転を行うヒートポンプ式の冷暖房装置が採用される(特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、膨張装置、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒は、膨張装置により減圧膨張されて気液二相冷媒となり、蒸発器にて蒸発される。その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。また、電気自動車に搭載されるバッテリの冷却にもこの冷凍サイクルが利用される。バッテリを冷却するための冷水循環路と、冷凍サイクルの冷媒循環路との間で熱交換が行われる。
【0004】
このような冷凍サイクルでは、蒸発器における安定した熱交換を維持するために、室外熱交換器から導出された冷媒を気液分離して溜め置くレシーバドライヤ(以下、単に「レシーバ」という)が設けられることがある。室外熱交換器による凝縮が不十分であってもレシーバの液相部の冷媒を膨張装置に導出することで、蒸発器での熱交換に必要な気液二相冷媒を供給できる。また、余剰液冷媒についてはレシーバに溜め置くことで、膨張装置に対して適量の液冷媒を供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-91578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートポンプ式の冷暖房装置を採用する場合、冷媒循環路に配置される各種制御弁等のデバイスの数も多くなる。このように冷凍サイクルの構成が複雑化するなかでそのシステム効率を高めることは重要である。
【0007】
本発明の目的の一つは、バルブユニットの構成により冷凍サイクルのシステム効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、冷媒を気液分離するレシーバが一体に設けられるバルブユニットである。このバルブユニットは、上流側から冷媒を導入する導入ポートと、下流側へ冷媒を導出する導出ポートと、レシーバの入口と連通する入口ポートと、レシーバの出口と連通する出口ポートと、導入ポートと入口ポートとをつなぐ第1冷媒通路と、出口ポートと導出ポートとをつなぐ第2冷媒通路とを有し、レシーバのタンクが組み付けられるユニットボディと、第1冷媒通路における冷媒の逆流を防止する逆止弁と、を備える。逆止弁は、ユニットボディにおける第1冷媒通路に固定され、中途に弁座が形成された内部通路を有する筒状のバルブボディと、弁座に下流側から着脱して内部通路を開閉する弁体と、を含む。バルブボディは、弁座の上流側に弁座の内径よりも断面が小さいオリフィスを有する。
【0009】
この態様によると、バルブユニットが共用のユニットボディを備え、そのユニットボディにレシーバのタンクが組み付けられる。ユニットボディには、冷媒の導入ポートとレシーバの入口ポートとをつなぐ冷媒通路に逆止弁が組み込まれ、その逆止弁にオリフィス機能がもたされる。このため、導入される冷媒を減圧してエンタルピーを低下させ、過冷却を発生させた状態でレシーバに供給できる。それにより、冷凍サイクルのシステム効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バルブユニットに組み込まれた逆止弁により、冷凍サイクルのシステム効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るバルブユニットの外観を表す図である。
図2】実施形態に係るバルブユニットの外観を表す図である。
図3】実施形態に係るバルブユニットの外観を表す図である。
図4】ユニットボディ2の通路構成および各制御弁の配置構成を表す図である。
図5】ユニットボディ2の通路構成および各制御弁の配置構成を表す図である。
図6】ユニットボディ2の通路構成および各制御弁の配置構成を表す図である。
図7】ユニットボディ2の通路構成および各制御弁の配置構成を表す図である。
図8図4のE部拡大図である。
図9】第1逆止弁18の構成を表す図である。
図10】第2逆止弁20の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
【0013】
図1図3は、実施形態に係るバルブユニットの外観を表す図である。図1は正面図、図2は側面図、図3は平面図である。
図1に示すように、バルブユニット1は、ブロック状のユニットボディ2にレシーバ10、第1電磁弁12、第2電磁弁14、電動膨張弁16、第1逆止弁18および第2逆止弁20を組み付けて構成される。
【0014】
図2に示すように、ユニットボディ2は、第1ボディ4および第2ボディ6を含む。第1ボディ4に第1電磁弁12および第2電磁弁14が配設され、第2ボディ6に電動膨張弁16が配設されている。第1ボディ4の下部にレシーバ10のタンク22が組み付けられている。レシーバ10は、上流側からの冷媒を気液分離して溜め置き、下流側へ液相部の冷媒を導出するデバイスである。
【0015】
図3にも示すように、第1電磁弁12および第2電磁弁14は、ユニットボディ2に上方から組み付けられ、各電磁弁の駆動部(ソレノイド)が上方に露出している。電動膨張弁16もユニットボディ2に上方から組み付けられ、その駆動部(モータユニット)が上方に露出している。
【0016】
図4図7は、ユニットボディ2の通路構成および各制御弁の配置構成を表す図である。図4図1のA-A矢視断面図であり、図5はB-B矢視断面図である。図6図2のC-C矢視断面図であり、図7はD-D矢視断面図である。
図4に示すように、第1ボディ4の一側面には室外熱交換器からの冷媒を導入する導入ポート30(「第1導入ポート」として機能する)が設けられ、第1ボディ4の底面にはレシーバ10の入口と連通する入口ポート32が設けられている。導入ポート30と入口ポート32とをつなぐ冷媒通路31が直交通路とされ、その上流側に第1逆止弁18が配設されている。
【0017】
第1ボディ4の上面には、入口ポート32と同軸状に取付孔34が設けられている。第1電磁弁12は、バルブボディ36が取付孔34に挿入される態様で第1ボディ4に組み付けられている。取付孔34と同軸状に下流側通路38が設けられ、取付孔34の軸線からオフセットした位置に上流側通路37が設けられている。
【0018】
上流側通路37は、連通路39を介して取付孔34と連通する。上流側通路37と下流側通路38とはそれぞれの延在方向が直角をなし、冷媒通路35を構成する。冷媒通路31と冷媒通路35とは、それらの下流側において合流する。第1電磁弁12は、いわゆるパイロット作動式の電磁弁であり、ソレノイド13の駆動によりその弁部ひいては冷媒通路35を開閉する。これらの詳細については後述する。
【0019】
図5に示すように、第1ボディ4と第2ボディ6とは、互いの側面が当接するように組み付けられ、ボルト8を介して固定されている。第1ボディ4の一側面には蒸発器に向けて冷媒を導出するための導出ポート40が設けられ、第1ボディ4の底面にはレシーバ10の出口と連通する出口ポート42が設けられている。第1ボディ4には、導出ポート40と出口ポート42とをつなぐ冷媒通路43と、冷媒通路43における出口ポート42の下流側で導出ポート40を含む下流側通路44と、冷媒通路43から分岐して下流側通路44と同軸状に延びる直線通路46が設けられている。その直線通路46の一端に第2逆止弁20が配設されている。
【0020】
第1ボディ4の上面には、比較的大きな取付孔48(「第1取付孔」として機能する)が設けられている。第2電磁弁14は、そのバルブボディ50が取付孔48に挿入される態様で第1ボディ4に組み付けられている。直線通路46は、バルブボディ50の下方において取付孔48と直交する。言い換えれば、取付孔48の下部内側面に直線通路46が開口する。その上流側の開口部が、第2逆止弁20を挿入する態様で取り付けるための取付孔56(「第2取付孔」として機能する)となっている。また、取付孔48の上部内側面には、冷媒通路52(後述)の上流側通路54が開口している。直線通路46は、出口ポート42につながる冷媒通路59を構成する。冷媒通路59と冷媒通路52とが、取付孔48の下部(つまり第2電磁弁14の下流側)にて合流する。
【0021】
第2電磁弁14は、いわゆるパイロット作動式の電磁弁であり、ソレノイド15の駆動によりその弁部ひいては冷媒通路52を開閉する。第2電磁弁14の具体的構成については、例えば特願2022-32707号に記載の構造を採用できるが、その詳細については説明を省略する。
【0022】
第2ボディ6の上面には、取付孔58が設けられている。電動膨張弁16は、そのバルブボディ60が取付孔58に挿入される態様で第2ボディ6に組み付けられている。第2ボディ6の一側面、つまり第1ボディ4との対向面の下部には、接続ポート62が設けられている。接続ポート62は、直線通路46の他端にある接続ポート47と対向配置され、両接続ポートをつなぐように接続管63が挿通される。接続管63は、第1ボディ4と第2ボディ6との境界を跨ぐように配置され、両接続ポートに同軸状に嵌合する。接続管63の内部通路は、冷媒通路52の一部を構成する。
【0023】
一方、図6にも示すように、第2ボディ6の他の側面の上部には、室外熱交換器に向けて冷媒を導出する導出ポート64が設けられている。第2ボディ6には、接続ポート62と導出ポート64とをつなぐ直交通路66が設けられ、直交通路66の中途に電動膨張弁16の弁部が設けられる。
【0024】
電動膨張弁16は、大口径の第1弁70と小口径の第2弁72とを備え、これらの弁を共用のモータ17により開閉駆動する。電動膨張弁16は、第1弁70を開閉させることで開閉弁として機能する一方、第2弁72の開度を調整することにより膨張弁として機能する。電動膨張弁16の具体的構成については、例えば特願2018-169017号に記載の構造を採用できるが、その詳細については説明を省略する。
【0025】
図7に示すように、第1ボディ4の他の側面には、室内熱交換器からの冷媒を導入する導入ポート74(「第2導入ポート」として機能する)が設けられている。導入ポート74は、上述した上流側通路37に連通する(図4参照)。上流側通路37は、冷媒通路35と冷媒通路52とに分岐している。上流側通路37の中途に連通路39の一端が開口している。
【0026】
ここで、ユニットボディ2に設けられる冷媒通路をまとめると、導入ポート30と入口ポート32とをつなぐ冷媒通路31と、導入ポート74と入口ポート32とをつなぐ冷媒通路35と、導入ポート74と導出ポート64とをつなぐ冷媒通路52と、出口ポート42と導出ポート40とをつなぐ冷媒通路43と、出口ポート42と導出ポート64とをつなぐ冷媒通路59とがある。本実施形態において、冷媒通路31が「第1冷媒通路」として機能し、冷媒通路59が「第2冷媒通路」として機能し、冷媒通路52が「第3冷媒通路」として機能する。
【0027】
次に、本実施形態の主要部について説明する。
本実施形態では、ユニットボディ2における第1電磁弁12の構造およびその周辺の通路配置を工夫することで、ユニットボディ2ひいてはバルブユニット1のコンパクト化を図っている。以下、その詳細について説明する。
【0028】
図8は、図4のE部拡大図である。
第1電磁弁12は、バルブボディ36とソレノイド13とを軸線方向に組み付けて構成される。バルブボディ36は、取付孔34に対する取り付けが容易となるよう、下方に向けて外径が段階的に小さくなる段付円筒状をなす。バルブボディ36は、基端側の大径部80と先端側の小径部82を有する。その大径部80の上端部を覆うようにソレノイド13が組み付けられている。
【0029】
バルブボディ36とソレノイド13との間(つまり大径部80の内方)には弁室84が形成されている。小径部82の半径方向外側に位置する大径部80の底部には、内外を連通する複数の連通孔86が設けられている。これらの連通孔86は、上流側からの冷媒を導入する「導入ポート」として機能する。一方、小径部82の内部通路156の先端(下端)が、下流側へ冷媒を導出する「導出ポート」として機能する。バルブボディ36において、これら導入ポートと導出ポートとをつなぐ流路の中途に弁室84が形成される。
【0030】
大径部80と小径部82の外周面には、それぞれOリング88,90(シールリング)が嵌着されている。Oリング88はバルブボディ36の基端部(上端部)に位置し、Oリング90はバルブボディ36の先端部(下端部)に位置する。小径部82の下部内方には通路形成部材92が形成され、通路形成部材92の軸線に沿ってオリフィス94が形成されている。
【0031】
大径部80の底部中央には、小径部82の開口端から円ボス状の主弁座96が突設され、その主弁座96の内方に主弁孔98が形成されている。主弁孔98は、冷媒通路35の一部を構成する。弁室84には、段付円柱状の主弁体100が配設されている。主弁体100が主弁孔98に近接又は離間(主弁座96に着脱)することにより主弁(弁部)が開閉される。また、ソレノイド13側から弁室84に向けて段付円筒状のガイド部104が延設され、主弁体100がガイド部104に内挿されている。ガイド部104は、Oリング106(シールリング)を介してバルブボディ36と連結されている。
【0032】
主弁体100とガイド部104は、主弁孔98と同軸状に配設されている。主弁体100は、ガイド部104との間に背圧室108を区画する。主弁体100は、その外周面がガイド部104の内周面に摺動可能に支持され、軸線方向(主弁の開閉方向)に安定に動作する。また、主弁体100の中央を軸線方向に貫通する小径のパイロット弁孔110が設けられている。ガイド部104の下端部と主弁体100との間には、主弁体100を開弁方向に付勢するスプリング112(付勢部材)が介装されている。
【0033】
一方、ソレノイド13は、スリーブ114と、スリーブ114の上端開口部を封止するように固定されたコア116と、スリーブ114内でコア116に対向配置されたプランジャ118と、スリーブ114およびコア116に外挿嵌合されたボビン120と、ボビン120に巻回された電磁コイル122とを含む。
【0034】
プランジャ118は、コア116と主弁体100との間に配設されている。電磁コイル122を上下に挟むように一対の端部材124が設けられている。端部材124は、磁気回路を構成するヨークとしても機能する。ソレノイド13は、シールリング126を介してバルブボディ36と連結されている。バルブボディ36とソレノイド13との間には、バルブボディ36を第1ボディ4に固定するための接続部材128が設けられる。シールリング126は、接続部材128の内方に位置する。
【0035】
スリーブ114は段付円筒状をなし、その下半部が拡径されてガイド部104と連設されている。コア116は段付円柱状をなし、その下端部がスリーブ114の上端部に嵌合し、スリーブ114の上端開口部を封止する。プランジャ118は有底円筒状をなし、側部に内外を連通する連通路130が設けられる。プランジャ118とコア116との間の空間は、その連通路130と、プランジャ118の外周面に形成された連通溝(図示せず)を介して背圧室108と連通している。
【0036】
プランジャ118の下端中央部には細径のパイロット弁体132が一体に設けられている。パイロット弁体132は、下部が下方に向かって小径化するテーパ状をなす。パイロット弁体132は、背圧室108に延出し、パイロット弁孔110に近接又は離間してパイロット弁を開閉する。コア116の下面中央部とプランジャ118との間には、パイロット弁体132を閉弁方向に付勢するスプリング136(付勢部材)が介装されている。
【0037】
主弁体100は、円筒状の本体140の内方に円柱状の弾性体からなる弁部材142を固定したものであり、その弁部材142が主弁座96に着脱することにより主弁を開閉する。弁部材142の軸線に沿ってパイロット弁孔110が貫通している。パイロット弁孔110の背圧室108側の端部にはパイロット弁座144が形成されている。本体140の周縁部近傍には、背圧室108の内外を連通する小径のリーク通路146が形成されている。
【0038】
取付孔34は、開口端側から大径孔150および小径孔152を有し、下方に向けて内径が段階的に縮径される段付円孔状をなす。バルブボディ36は、取付孔34の開口端を閉止するようにユニットボディ2に組み付けられる。すなわち、バルブボディ36の大径部80が大径孔150に挿通され、小径部82が小径孔152に挿通される。接続部材128がボルト154により第1ボディ4に締結されることにより、第1電磁弁12がユニットボディ2に対して固定される。
【0039】
図示のように、大径部80の底面がバルブボディ36の軸線Lに対して直角な平面状とされる一方で、大径孔150の底面が軸線Lに近づくほど低くなるよう傾斜するテーパ面151を有する。それにより、大径部80とテーパ面151との間に上流側圧力が導入される高圧室153が形成される。連通路39は、下流側通路38と平行(つまり軸線Lの方向)に延びてテーパ面151に開口し、上流側通路37と高圧室153とを連通させる。高圧室153は、連通孔86を介して弁室84に連通する。
【0040】
連通路39が上流側通路37と大径孔150とを連通し、連通孔86が弁室84と大径孔150とを連通する。小径部82の内部通路156が小径孔152を介して下流側通路38と連通している。冷媒通路35を流れる冷媒は、上流側通路37から連通路39を介して高圧室153に導入され、さらに連通孔86を介して弁室84に導入される。主弁が開弁されることで弁部を経た冷媒は、内部通路156に導かれてオリフィス94を通過することで減圧され、下流側通路38に導出される。
【0041】
第1電磁弁12は、ソレノイド13がオフ(非通電状態)の状態では、コア116とプランジャ118との間に吸引力が作用しない。このため、スプリング136の付勢力によりパイロット弁体132が付勢され、パイロット弁体132がパイロット弁座144に着座してパイロット弁を閉じる。このとき、弁室84の冷媒がリーク通路146を介して背圧室108に導入されるため、主弁体100に閉弁方向の差圧が作用する。その結果、主弁は閉弁状態を維持する。
【0042】
一方、ソレノイド13がオン(通電状態)にされると、コア116とプランジャ118との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体132がパイロット弁座144から離間し、パイロット弁が開く。この結果、背圧室108内の冷媒がパイロット弁孔110を介して内部通路156に導出され、背圧室108の圧力が低下する。その結果、スプリング112の付勢力により主弁体100が付勢され、主弁が開弁状態となる。
【0043】
以上のような構成において、上流側通路37を小径孔152ではなく大径孔150に開口させることで、小径部82の小径孔152への挿入長さを小さくできる。より詳細には、高圧室153から下流側通路38への冷媒の漏れを防止するために、小径部82の外周面と小径孔152の内周面との間にOリング90が介装されている。このため、連通路39はOリング90の位置よりも上流側で開口させなければならない。連通路39を小径孔152に連通させるとすると、Oリング90をその連通路39よりも下方に配置しなければならず、結果的に小径部82の長さが大きくなる。
【0044】
この点、本実施形態では連通路39を大径孔150に開口させているため、Oリング90が位置する小径部82の先端部を大径孔150に近い高さ位置に設定できる。それにより、小径部82を短くできる。つまり、バルブボディ36を小さくするとともに、下流側通路38の長さを小さくしやすい。
【0045】
さらに、上流側通路37は、第1電磁弁12の軸線方向に対して直角方向に延在するところ、図示のように大径孔150の角部近傍、つまり大径部80の軸線方向下方かつ小径部82の側方に位置する。このため、上流側通路37と主弁の距離が近くなり、冷媒通路35の配置についても省スペース化を実現できる。
【0046】
図9は、第1逆止弁18の構成を表す図である。(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は背面図、(D)は(B)のF-F矢視断面図である。なお、ここでは上流側面を正面、下流側面を背面とする。
図9(D)に示すように、第1逆止弁18は、弁室160に弁体162のみが変位可能に配設された簡素な構造を有し、弁座164の上流側にオリフィス166を有することを特徴とする。弁体162を閉弁方向に付勢するスプリングは設けられていない。
【0047】
すなわち、第1逆止弁18は、バルブボディ168に弁体162を収容して構成される。バルブボディ168は段付円筒状をなし、その外周面には環状溝170が形成され、シール用のOリング172(シールリング)が嵌着されている(図9(A))。バルブボディ168の上流側開口端にはフランジ状の係止部169が設けられている(図9(B))。図4に示したように、係止部169が冷媒通路31の段差に係止されることにより、第1逆止弁18のユニットボディ2に対する挿入位置が規定される。第1逆止弁18は、スナップリング33によりユニットボディ2に固定される。
【0048】
バルブボディ168は、直線状の内部通路174を有する。内部通路174の一端に冷媒の導入ポート176が設けられ、他端に導出ポート178が設けられている。内部通路174の中途が部分的に縮径されることで環状の弁座164が形成され、その縮径部の内方に弁孔182が形成される。
【0049】
弁孔182の上流側に通路形成部材184が配設され、その内方にオリフィス166が形成されている。オリフィス166は、弁座164と同軸状に設けられ、弁座164の内径(つまり弁孔182の内径)よりも断面が小さい。通路形成部材184は段付円筒状をなし、バルブボディ168の上流側開口端から挿通されて弁座164の背面で係止され、その上流側開口端を部分的に加締めることによりバルブボディ168に固定されている。
【0050】
弁孔182の下流側にガイド部材186が配設され、その内側に弁体162が配置されている。弁体162は、球状のボール弁体であり、弁座164に下流側から着脱して内部通路174を開閉する。ガイド部材186は、バルブボディ168の下流側領域に組み付けられている。ガイド部材186は正面視十字状の本体187を有し、その本体187の中心を軸線方向に貫通する貫通孔185を有する。ガイド部材186は、本体187からバルブボディ168の内方に向けて延出する円筒状のガイド部188を有する。本体187は、ガイド部188の内側に弁体162を下流側で受ける曲面状の受け面189を有し、開弁時には弁体162を安定に支持できる。ガイド部188と弁座164との間に弁室160が形成される。弁体162は、ガイド部188の内周面によって軸線方向に変位可能に支持される。
【0051】
ガイド部188の外周面に雄ねじが突設され、バルブボディ168の内周面に雌ねじが設けられている。本実施形態では、ガイド部188の周方向に等間隔で4つの雄ねじ片が設けられ、それら4つの雄ねじ片が1つの雄ねじとして機能する。これらの雄ねじと雌ねじを螺合させることにより、ガイド部材186がバルブボディ168に組み付けられる。ガイド部材186の下流側端部には、本体187において半径方向外向きに延出する4つの係止部190が周方向に等間隔で設けられている(図9(C))。それらの係止部190がバルブボディ168の下流側開口端面に係止されることで、バルブボディ168に対するガイド部材186の位置決めがなされる。各係止部190の前方(上流側)に向けてガイド部188が延出している。隣接する係止部190の間に流路形成部192が設けられている。流路形成部192は、ガイド部188の外側でバルブボディ168との間に流路を形成する。
【0052】
以上のような構成において、ガイド部188の先端と弁座164との距離が、弁体162の直径よりも小さい。このため、弁体162がガイド部188から脱落することはなく、その軸線方向への安定した作動を確保できる。また、バルブボディ168の内方には、弁体162を閉弁方向に付勢するスプリング等の付勢部材は設けられていない。このため、冷媒が第1逆止弁18を通過する際の圧力損失を小さくでき、また、バルブボディ168ひいては第1逆止弁18を非常にコンパクトに構成できる。
【0053】
このような構成により、上流側圧力(一次圧)が下流側圧力(二次圧)より大きいとき、弁体162が弁座164から離脱し、第1逆止弁18が開弁状態となる。すなわち、内部通路174ひいては冷媒通路31が開放される。上流側から導入ポート176に導入された冷媒は、オリフィス166にて減圧された後、弁孔182、流路形成部192の流路を介して下流側に導出される。
【0054】
一次圧よりも二次圧が高くなったときには、弁体162が弁座164に着座する。すなわち、第1逆止弁18が閉弁状態となり、内部通路174が遮断される。それにより、冷媒の逆流が防止される。
【0055】
図10は、第2逆止弁20の構成を表す図である。(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は背面図、(D)は(B)のF-F矢視断面図である。なお、ここでは上流側面を正面、下流側面を背面とする。
第2逆止弁20は、オリフィスを有しない点を除き、第1逆止弁18とほぼ同様の構成を有する。このため、第1逆止弁18と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図10(D)に示すように、第2逆止弁20は、バルブボディ268に弁体162を収容して構成される。バルブボディ268は段付円筒状をなし、その外周面にOリング172(シールリング)が嵌着されている(図10(A))。ガイド部材286の係止部290は、第1逆止弁18の係止部190と比較して半径方向にやや大きい。図5に示したように、係止部290が取付孔56の段差に係止されることにより、第2逆止弁20のユニットボディ2に対する挿入位置が規定される。第2逆止弁20は、スナップリング57によりユニットボディ2に固定される。
【0057】
バルブボディ268は、内部通路174の一端に冷媒の導入ポート276が設けられ、他端に導出ポート278が設けられている。内部通路174の中途に弁座164および弁孔182が形成される。ガイド部材186の下流側端部に半径方向外向きに延出する複数の係止部290が周方向に等間隔で設けられている(図10(C))。
【0058】
第2逆止弁20においても、ガイド部188の先端と弁座164との距離が、弁体162の直径よりも小さい。バルブボディ268の内方に、弁体162を閉弁方向に付勢するスプリング等の付勢部材は設けられていない。このため、冷媒が第2逆止弁20を通過する際の圧力損失を小さくでき、また、バルブボディ268ひいては第2逆止弁20を非常にコンパクトに構成できる。
【0059】
上流側圧力(一次圧)が下流側圧力(二次圧)より大きいとき、弁体162が弁座164から離脱し、第2逆止弁20が開弁状態となる。すなわち、内部通路174が開放される。上流側から導入ポート176に導入された冷媒は、弁孔182、流路形成部192の流路を介して下流側に導出される。一次圧よりも二次圧が高くなったときには、弁体162が弁座164に着座する。すなわち、第2逆止弁20が閉弁状態となり、内部通路174が遮断される。それにより、冷媒の逆流が防止される。
【0060】
なお、第2逆止弁20は、第1逆止弁18と類似した構成および大きさを有するが、冷媒通路に係止させるための係止部290が設けられる箇所が第1逆止弁18とは異なる。すなわち、第1逆止弁18の係止部169がバルブボディ168の一端に設けられるのに対し、第2逆止弁20の係止部290はガイド部材286の一端に設けられる。このため、外観上も両逆止弁の区別は容易であり、それぞれをユニットボディ2に組み付ける際のミスが生じ難くなっている。
【0061】
第2逆止弁20については、図5に示したように、取付孔48の下部内側面に設けられた取付孔56に組み付けられる。取付孔48が比較的大きいことから、第2逆止弁20を取付孔48の開口端から挿入し、取付孔48の内側から取付孔56に組み付けることが可能とされている。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態では、バルブユニット1における第1電磁弁12の近傍において、上流側通路37を大径孔150に開口させることで、バルブボディ36を小さくするとともに、下流側通路38の長さを小さくできる。また、上流側通路37と下流側通路38とを直角に配置しつつも近接させることで、冷媒通路35の省スペースを実現できる。さらに、第1逆止弁18および第2逆止弁20を付勢部材のない簡素な形状とすることで、これらをコンパクトに構成できる。これらの結果、これらの制御弁が組み付けられるユニットボディ2ひいてはバルブユニット1のコンパクト化を図ることができる。ユニットボディ2の車両への搭載スペースも確保しやすくなる。
【0063】
また、第1逆止弁18および第2逆止弁20をユニットボディ2の冷媒通路に組み込むことで、冷媒循環用の配管を削減できる。その結果、車両用冷暖房装置を製造する際の継手接続工数を削減でき、作業効率も高められる。第1逆止弁18にオリフィス機能をもたせることで、室外熱交換器から導入される冷媒を減圧してエンタルピーを低下させ、過冷却を発生させることができる。それにより、冷凍サイクルのシステム効率を高めることもできる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0065】
上記実施形態では、図8に示したように、連通路39を軸線Lに対して平行に形成する例を示した。変形例においては、連通路39を例えばテーパ面151に対して垂直方向に延ばすなど、軸線Lに対して斜め方向に形成してもよい。
【0066】
上記実施形態では、第1逆止弁18に通路形成部材184を組み付け、その内方にオリフィス166を形成する例を示した。変形例においては、バルブボディ168の弁孔182を段差形状として上流側を小径にし、オリフィスとして機能させてもよい。
【0067】
上記実施形態では、バルブユニットを構成する制御弁として、第1電磁弁12、第2電磁弁14、電動膨張弁16、第1逆止弁18および第2逆止弁20を例示した。変形例においては、これらのいずれかを省略してもよいし、さらに他の制御弁を追加してもよい。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 バルブユニット、2 ユニットボディ、10 レシーバ、12 第1電磁弁、13 ソレノイド、14 第2電磁弁、15 ソレノイド、16 電動膨張弁、17 モータ、18 第1逆止弁、20 第2逆止弁、22 タンク、30 導入ポート、31 冷媒通路、32 入口ポート、34 取付孔、35 冷媒通路、36 バルブボディ、37 上流側通路、38 下流側通路、39 連通路、40 導出ポート、42 出口ポート、43 冷媒通路、44 下流側通路、46 直線通路、47 接続ポート、48 取付孔、50 バルブボディ、52 冷媒通路、54 上流側通路、56 取付孔、58 取付孔、60 バルブボディ、62 接続ポート、63 接続管、64 導出ポート、66 直交通路、70 第1弁、72 第2弁、74 導入ポート、80 大径部、82 小径部、84 弁室、86 連通孔、90 Oリング、94 オリフィス、96 主弁座、98 主弁孔、100 主弁体、104 ガイド部、108 背圧室、110 パイロット弁孔、116 コア、118 プランジャ、122 電磁コイル、128 接続部材、132 パイロット弁体、144 パイロット弁座、146 リーク通路、150 大径孔、151 テーパ面、152 小径孔、153 高圧室、156 内部通路、160 弁室、162 弁体、164 弁座、166 オリフィス、168 バルブボディ、174 内部通路、176 導入ポート、178 導出ポート、182 弁孔、186 ガイド部材、188 ガイド部、192 流路形成部、268 バルブボディ、276 導入ポート、278 導出ポート、286 ガイド部材、290 係止部。
図1
図2
図3
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図10