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特開2024-155864統合型の温度測定機能を備えたバッテリモジュール用の電気的相互接続基板
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  • 特開-統合型の温度測定機能を備えたバッテリモジュール用の電気的相互接続基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155864
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】統合型の温度測定機能を備えたバッテリモジュール用の電気的相互接続基板
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/505 20210101AFI20241024BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/519 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241024BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M50/505
H01M50/503
H01M50/519
H01M50/522
H01M50/209
H01M50/204 401D
H01M50/284
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068165
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】23168911.8
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508178711
【氏名又は名称】エアバス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フリートベルガー アロイス
(72)【発明者】
【氏名】キューン ラース
(72)【発明者】
【氏名】フリードル シュテファン
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040DD03
5H040LL04
5H043AA19
5H043CA03
5H043FA04
5H043FA32
5H043KA07F
5H043KA08F
(57)【要約】      (修正有)
【課題】統合型の温度測定機能を備えたバッテリモジュール用の電気的相互接続基板を提供する。
【解決手段】複数のバッテリセル21を有するバッテリモジュール用の統合型のセル温度測定機能を備えた電気的相互接続基板10、及びそのような電気的相互接続基板を備えるバッテリモジュールが提供される。電気的相互接続基板は、プリント回路基板11及び読出しデバイスを備える。プリント回路基板は、絶縁層12、第1の導電層13、及び第2の導電層を備える。第1の導電層と第2の導電層とは、絶縁層の反対側に配置される。プリント回路基板は、バッテリモジュールの対応するバッテリセルを収容するようにそれぞれ構成された複数のレセプタクル16を備える。第1の導電層は、複数のバッテリセルを電気的に相互接続するように構成される。第1の導電層と第2の導電層とは、異なる導電性材料から形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセル(21)を有するバッテリモジュール(20)用の統合型のセル温度測定機能を備えた電気的相互接続基板(10)であって、プリント回路基板(11)及び読出しデバイス(19)を備え、
前記プリント回路基板(11)が、絶縁層(12)、第1の導電層(13)、及び第2の導電層(14)を備え、
前記第1の導電層(13)と前記第2の導電層(14)とが、前記絶縁層(12)の反対側に配置され、
前記プリント回路基板(11)が、前記バッテリモジュール(20)の対応するバッテリセル(21)を収容するようにそれぞれ構成された複数のレセプタクル(16)を備え、
前記第1の導電層(13)が、前記複数のバッテリセル(21)を電気的に相互接続するように構成され、
前記第1の導電層(13)と前記第2の導電層(14)とが、異なる導電性材料から形成され、
前記第1の導電層(13)と前記第2の導電層(14)とが、複数の垂直相互接続アクセス(18)、すなわちVIA(18)によって複数の位置で前記絶縁層(12)を介して互いに接続され、
各VIA(18)が、熱電インターフェースを構築し、それにより、前記熱電インターフェースでの温度に応じて電圧を発生する統合型の熱センサ素子を形成し、
前記読出しデバイス(19)が、前記VIA(18)の前記発生された電圧を感知し、対応する温度値を決定する、
電気的相互接続基板(10)。
【請求項2】
前記複数のレセプタクル(16)が、対応する凹部(16)であり、
前記第1の導電層(13)が、複数の前記凹部(16)のそれぞれの中に突出し、それにより、前記バッテリセル(21)のうちの対応する1つの電極(22)に接触するように構成された接触要素(17)を構築し、前記バッテリモジュール(20)の前記バッテリセル(21)が互いに電気的に接続されて、複数のバッテリセル(21)を含む電気回路を構築する、
請求項1に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項3】
前記第1の導電層(13)が銅から形成された、請求項1又は2に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項4】
前記第2の導電層(14)が銅-ニッケル合金から形成された、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項5】
前記第2の導電層(14)がコンスタンタンから形成された、請求項4に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項6】
各VIA(18)の位置が、関連する凹部(16)の対応する接触要素(17)の近くにあり、前記対応するVIA(18)によって形成される前記熱センサ素子が、前記対応する接触要素(17)の位置の近くの温度を測定する、
請求項2~5のいずれか一項に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項7】
前記対応する接触要素(17)が、関連するバッテリセル(21)から前記対応するVIA(17)に熱を伝導するように構成され、前記対応するVIA(18)によって形成された前記熱センサ素子が、前記関連するバッテリセル(21)の温度を示す、請求項6に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項8】
各凹部(16)の接触要素(17)が、前記バッテリセル(21)の正極に接触するように構成された正極接触要素(17p)と、前記バッテリセル(21)の負極に接触するように構成された負極接触要素(17n)とを含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項9】
前記正極接触要素(17p)及び前記負極接触要素(17n)のうちの少なくとも一方が、接続セクション(17c)及びセンサセクション(17s)に分割された、請求項8に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項10】
前記センサセクション(17s)と前記接続セクション(17c)とが、互いに電気的及び/又は熱的に隔離された、請求項9に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項11】
前記接続セクション(17c)が、前記バッテリセル(21)を電気的に接続し、それにより、前記バッテリセル(21)を、複数のバッテリセル(21)からなる前記電気回路に組み込むように構成された、請求項10に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項12】
前記センサセクション(17s)が、対応するVIA(18)に関連付けられ、前記バッテリセル(21)の熱エネルギーを前記対応するVIA(18)に伝導するように構成された、請求項10又は11に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項13】
前記読出しデバイス(19)が、少なくとも1つのセンサチップ(19)を含み、
対応するVIA(18)に関連付けられた、前記第1の導電層(13)の導電性トラック(23)と、前記第2の導電層(14)の導電性トラック(23)とが、前記センサチップ(19)のうちの対応する1つに接続され、前記対応するセンサチップ(19)が、前記第1の導電層(13)と前記第2の導電層(14)との前記対応する導電性トラック(23)間の電圧を測定し、前記測定された電圧に基づいて対応する温度値を決定するように構成された、
請求項1~12のいずれか一項に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのセンサチップ(19)の近傍に配置された少なくとも1つの専用の基準温度センサ(30)をさらに備える、請求項13に記載の電気的相互接続基板(10)。
【請求項15】
複数のバッテリセル(21)と、
請求項1~14のいずれか一項に記載の電気的相互接続基板(10)と
を備えるバッテリモジュール(20)であって、
前記複数のバッテリセル(21)のそれぞれが、前記レセプタクル(16)の対応する1つの中に配置され、前記バッテリセル(21)が互いに接続されて、複数のバッテリセル(21)を含む回路を形成する、
バッテリモジュール(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリモジュール用の電気的相互接続基板に関する。特に、本開示は、バッテリモジュールの単一バッテリセルに関する統合型の温度測定機能を備えた電気的相互接続基板、及びそのような電気的相互接続基板を含むバッテリモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、温度は、電子機器の寿命に対して最も大きな影響を及ぼす要因の1つである。さらに、バッテリモジュールは、通常は直列接続と並列接続とが組み合わされたマトリックスとして相互接続された複数のバッテリセルから製造される。特に単一バッテリセルの熱暴走状態の場合、バッテリモジュール及びその電子回路への損傷を避けるために対策を講じることができるように、そのような状態を早期に検出することが重要である。
【0003】
そのような温度測定には、通常は専用の温度センサが使用され、それらのセンサは、(例えばケーブルによって)ワイヤ接続する必要があり、又は例えばPCB(プリント回路基板)用途では、そのようなセンサ(或いはそのようなセンサシステムの一部)は、PCBにはんだ付けする必要がある。熱暴走状態などの過熱状態の早期検出を可能にするために、理想的には個々のバッテリセルの温度測定を実装すべきである。しかし、これは、配線の手間がかなりかかるので特に困難である。この配線の手間と膨大な量の接続点とが測定障害の根本原因であり、そのような実装によって測定システムの信頼性及び平均故障間隔に影響が及ぼされる。
【0004】
さらに、パワーエレクトロニクス用途又はバッテリ内の有線センサの場合、絶縁調整はワイヤによって影響を及ぼされ、ワイヤがシステム全体に分散されている場合、アークトレースに関する問題が発生する可能性がある。これは、現況技術のバッテリシステムに当てはまる。さらに、専用のセンサのはんだ付け又は配線接続は、センサを製造又は調達しなければならず、接続の確立に追加のステップが必要となるので、製造コストに影響を及ぼす。また特に航空機用途では、一般に、重量低減が、航空機用の任意のシステムを設計する際の主な制約の1つである。これらの理由により、バッテリシステムの場合、通常はいくつかのセンサ(例えば50個のセンサ)のみが使用され、個々のセルの温度監視(通常、例えば最大2000個以上のセンサが必要)は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、個々のバッテリセル用の統合型の個別温度測定機能を備える、バッテリモジュール用の電気的相互接続基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項及び以下の説明で述べる。
【0007】
第1の態様によれば、複数のバッテリセルを有するバッテリモジュール用の統合型のセル温度測定機能を備えた電気的相互接続基板が提供される。電気的相互接続基板は、プリント回路基板及び読出しデバイスを備える。プリント回路基板は、絶縁層、第1の導電層、及び第2の導電層を備える。第1の導電層と第2の導電層とは、絶縁層の反対側に配置される。プリント回路基板は、バッテリモジュールの対応するバッテリセルを収容するようにそれぞれ構成された複数のレセプタクルを備える。第1の導電層は、複数のバッテリセルを電気的に相互接続するように構成される。第1の導電層と第2の導電層とは、異なる導電性材料から形成される。第1の導電層と第2の導電層とは、複数の垂直相互接続アクセス(VIA)によって複数の位置で絶縁層を介して互いに接続される。各VIAは、熱電インターフェースを構築し、それによって、熱電インターフェースでの温度に応じて電圧を発生する統合型の熱センサ素子を形成する。読出しデバイスは、VIAの発生された電圧を感知し、対応する温度値を決定する。
【0008】
一般に、プリント回路基板(PCB;プリント配線板又はPWBとも呼ばれる)は、電気及び電子工学において、制御下で電子部品を互いに接続するために使用される手段である。プリント回路基板は、導電層と絶縁層との積層サンドイッチ構造の形態を取る。各導電層は、例えば、非導電性基板のシート層上及び/又はシート層間に積層された導電性材料(銅であることが多い)の1つ又は複数のシート層からエッチングされた、導電性トラック(又はトレース)、平面、及び他のフィーチャ(平坦な表面上のワイヤに類似)のアートワークパターンを有して設計されている。電気部品は、部品の端子を受け入れるように設計された形状をした外層の導電性パッドに、通常ははんだ付けによって固定することができ、電気的に接続すると共に機械的に固定する。
【0009】
しかし、バッテリモジュールの個々のバッテリセルを相互接続するためにそのようなPCBを使用することもできる。本開示によれば、この目的のために、PCBは、個々のバッテリセルを収容し、それらを所定の電気回路、例えば直列接続と並列接続とのマトリックスで互いに接続するように設計された複数のレセプタクルを有する。個々のセルを相互接続するために、第1の導電層は、個々のバッテリセルの所望の相互接続パターンを実現するように構造化/設計することができ、特に、以下でさらに述べる接触要素など、バッテリセルの電極に接触するように構成された対応する接続点を有する。例えば、PCBの延在方向の1つに一列に配置されたバッテリセル用のレセプタクルは、直列接続で相互接続されることがあり、そのような各列は並列接続で相互接続されることがある。しかし、任意の他の接続方式も可能である。
【0010】
レセプタクルは、例えば、個々のバッテリセルを収容するようにサイズ設定された絶縁層の対応する切欠き又は凹部でよく、第1の導電層は、バッテリセルがレセプタクル内に配置されるときにこれらのバッテリセルを相互接続するように形作られる。第1の導電層は、例えば、通常のPCBにおけるような不均一層でよく、導電性トラックが、各レセプタクルまで引き回されて、バッテリセルのための対応する接続点、すなわち端子を提供する。
【0011】
統合型の温度測定機能を提供するために、PCBは、第2の導電層をさらに備える。一般に、第2の導電層は、絶縁層によって第1の導電層から分離される。
【0012】
開示される電気的相互接続基板は、熱電効果(「ゼーベック効果」、時として「ペルチェ・ゼーベック効果」とも呼ばれる)を利用して、電気的相互接続基板の特定の場所/位置(特に、レセプタクルの位置の近く、したがって、バッテリセルが電気的相互接続基板によって接続されているときには個々のバッテリセルの位置の近く)での温度測定を提供する。
【0013】
一般に、熱電気は、導電体に沿った温度勾配と電圧との関係である。この関係は、導体材料ごとに異なる。2つの異なる導体材料からなる開回路では、これらの内部電圧に差があり、この電圧は、自由端で熱起電圧として外部からアクセス可能である。閉回路では、熱起電圧が電流、したがって電気エネルギーを直接生成し、これは、材料間の接合点での熱エネルギーから取り出される。温度と電圧との関係は、関連する材料のいわゆるゼーベック係数によって表される。これらのゼーベック係数は、それぞれの材料の材料定数である。関連する材料のゼーベック係数が異なる場合、上述したようなゼーベック効果が生じる。
【0014】
したがって、第1の導電層と第2の導電層とは、異なる導電性材料(特に、異なるゼーベック係数を有する材料)から形成され、いわゆる垂直相互接続アクセス(VIA)を介して互いに接続される。言い換えると、VIAは、第1の導電層と第2の導電層との間に貫通めっき接合を提供する。すなわち、第1の導電層と第2の導電層とは、VIAを介して互いに接続される対応する導電性トラックを備える。一方、それぞれの導電性トラックは、読出しデバイスに接続される。第1の導電層と第2の導電層と(すなわち、これらの層の導電性トラック)が異なる(導電性)材料から形成されているので、これらの接合部は、第1の導電層と第2の導電層との対応するトラックの電位の差(すなわち、熱電気的に生成された電圧)を分析することによって、統合型の温度センサ(熱電対又は熱電素子)として使用することができる。このために、読出しデバイスは、電圧を測定し、第1の導電性材料と第2の導電性材料との材料の既知のゼーベック係数に基づいて、測定された電圧に対応する温度値を決定するように構成される。原則として、そのような熱電対は、PCB上の任意の位置に配置することができる。したがって、バッテリセルに関するあらゆるレセプタクルの近くに対応するVIAを設けることによって、電気的相互接続基板によって相互接続された各バッテリセルの個別のバッテリセル温度監視を実現することができる。しかし、対応するVIAは、レセプタクルのうちのいくつかの近くにのみ配置されてもよい。
【0015】
第1の導電層(上でさらに述べたように、バッテリセルのための電気的相互接続層としても機能する)と第2の導電層とを接続するものとして述べているが、PCBは、第3の(又はさらなる)導電層を備えていてもよく、この導電層は、例えば1つ又は複数の追加の絶縁層によって他の導電層から隔離される。次いで、熱電対は、例えば対応するVIAによって第2の導電層と第3の導電層とを相互接続することによって作成されてもよく、第2の導電層と第3の導電層とが純粋に熱電対層として機能する。そのような構成においても、少なくとも熱電効果に関与する層(すなわち第2及び第3の導電層)は、異なる導電性材料、特に異なるゼーベック係数を有する材料から形成され、(VIAでの)接合部での温度差により、層の対応する導電性トラックで電圧降下が生じる。
【0016】
全体として、センサの数は、PCB及びセンサ電子回路のサイズによってのみ制限される。したがって、電気的相互接続基板を利用してバッテリモジュールに関する高分解能の温度マップを測定することができる。したがって、特に個々のバッテリセルの熱暴走状態の早期検出が可能である。これは、限界セル温度が生じ得る前に、バッテリシステム/バッテリモジュールをシャットダウンすることを可能にする。そのような状況は、例えば、低い製造品質により個々のバッテリセルが他のバッテリセルよりも高い温度に達した場合、又は1つ若しくはいくつかのバッテリセルの領域での冷却が機能していない場合に発生し得る。バッテリセル間のばらつきは、非常に老化したセルでも生じる可能性があり、これは、いくつかのバッテリセルが他のバッテリセルよりも高温に達し得る原因となる。
【0017】
はんだ付け又は配線接続される必要がある専用の温度センサ部品(例えば、様々な技術に基づくSMDセンサ)の代わりに、(VIAによって実装される)本願で開示される熱センサ素子は、追加の導電層及び貫通めっき要素(VIA)を追加することによってPCBの一部として直接構築される。
【0018】
読出しデバイスは、対応するVIAからの対応する信号を分析するのに適した任意のデバイス又はデバイスの構成でよい。読出しデバイスは、例えば、PCB上のマイクロチップの構成でよく、各マイクロチップは、特定のVIAに関連付けられて、それらの信号を分析する。しかし、読出しデバイスは、CPU及び対応するメモリコンポーネント、並びに信号を分析するためのプログラミングを有する汎用コンピュータなど、PCBの外部のデバイスでもよい。そのような構成では、VIAに対応する第1及び第2の導電層の導電性トラックは、外部コンピュータ又はデバイスに接続され得るPCBの外部からアクセス可能な端子まで引き回され得る。そのような端子は、専用のマイクロチップを使用して、コンピュータなどの外部デバイスによってこれらのマイクロチップを制御する及び読み出すときにも存在し得る。この場合、マイクロチップからの対応する導電性トラックを、外部からアクセス可能な端子まで引き回すことができる。
【0019】
本願で開示される電気的相互接続基板は、個々のバッテリセルの温度監視など、マルチセンサ用途に高い可用性を提供する。特に、本実装は非常にコスト効率が高く、本実装のための追加の製造時間は必要ない。さらに、本センサ原理は、積層バスバーにも適用可能である。しかし、この場合、VIAをセンサとして使用することもできるが、必ずしもそのように使用する必要はない。積層バスバーでは箔が積層されるので、さらなる自由度が生じる。そのような箔は、異なるブランクを有することができる。積層バスバーでは、互いに上下に重なった2つの異なる材料で形成された舌部又はタブをバッテリセルの上方まで案内することができ、バッテリセルの1つの電気端子でのこれらの舌部/タブの両方の溶接点が、上述したVIAと同様に接点、したがってまた温度センサを形成する。本願で開示される電気的相互接続基板の製造は、通常のPCBの製造と非常に似ている。したがって、本願で開示されるセンサ原理は、本願で開示される電気的相互接続基板だけでなく、任意のPCBにも適用可能である。PCBと積層バスバーとの両方に関して、標準の絶縁調整プロセスが適用可能である。本願で定義されるプロセス、及びセンサ及びセンサ電子回路(読出しデバイス)間の接続の利用される実装形態は、有線センサの実装形態よりもはるかに安全である。また、専用の温度センサ(例えば、PCBにはんだ付けされたセンサ素子)が不要になるので、バッテリモジュール全体の重量を大幅に軽減することができる。安全性、信頼性、コスト効率の向上、及び重量の低減により、本願で開示される電気的相互接続基板は、バッテリモジュール用の個別バッテリセル温度監視を可能にする。
【0020】
一実施形態によれば、複数のレセプタクルは、プリント回路基板の対応する凹部である。第1の導電層は、複数の凹部のそれぞれの中に突出し、それにより、バッテリセルのうちの対応する1つの電極に接触するように構成された接触要素を構築し、バッテリモジュールのバッテリセルが互いに電気的に接続されて、複数のバッテリセルを含む電気回路を構築する。
【0021】
そのような凹部は、例えば、PCB、特に絶縁層の対応する切欠きでもよい。次いで、第1の導電層は、例えば第1の導電層の一部である接触タブ又は他の接触要素(すなわち端子)の形でこれらの凹部内に突出することがある。これらの接触要素は、第1の導電層の対応する導電性トラックによって互いに相互接続されることがあり、接触要素間(すなわち、電気的相互接続基板が使用されているときにはバッテリセル間)の所望の回路構成が確立される。特に、対応するバッテリセルのための正端子及び負端子が提供されるように、2つのそのような接触要素が各凹部ごとに存在してもよい。
【0022】
凹部及び接触要素は、所望の設計のバッテリセルタイプをサポートして接続するように形成される。設計バッテリセルタイプが円筒型セルである場合、凹部は円筒型でよく、設計バッテリセルタイプが角型セルである場合、凹部は長方形でよく、他の場合も同様である。接触要素はこれらの凹部に突出し、対応するバッテリセルタイプの端子に接触することができる。バッテリセルは、バッテリセルの一方の側から正端子と負端子との両方にアクセス可能であるように構成することができる。例えば、円筒型バッテリセルでは、負端子(通常は、正端子の反対側に配置される)を、バッテリセルの円筒型ハウジングに電気的に接続することができ、それにより、負端子を、正端子が位置するバッテリセルの側の縁部に接触させることができる。このようにして、バッテリセルの両方の端子が、バッテリセルの同じ側から電気的相互接続基板の接触要素によって接触され得る。次いで、第1の導電層の導電性トラックを適切に設計することによって、所望の回路構成を実現することができる。
【0023】
別の実施形態によれば、第1の導電層は銅から形成される。
【0024】
銅は、優れた導電性を備えたPCB用の一般的な材料である。
【0025】
別の実施形態によれば、第2の導電層は、銅-ニッケル合金から形成される。
【0026】
そのような銅-ニッケル合金は、第1の導電性材料の銅材料と容易に接合することができ、銅との組合せで、上述したゼーベック効果を示す。
【0027】
別の実施形態によれば、第2の導電層はコンスタンタンから形成される。
【0028】
コンスタンタンは通常、銅55%及びニッケル45%からなる銅-ニッケル合金である。しかし、他の組成も可能である。第2の導電性材料の材料は、例えば、銅50%及びニッケル50%、銅60%及びニッケル40%、銅65%及びニッケル35%、又は銅とニッケルの任意の他の組成を含んでいてもよい。
【0029】
コンスタンタンは、銅と共に、T型熱電対と呼ばれる標準化された熱的素子/熱電対を構築する。そのような熱電対の物理的特性はよく理解されている。コンスタンタンは銅ベースであるので、コンスタンタン層を銅層と同様に処理して、(VIAによって形成される)熱センサ素子を読出しデバイスに接続するために導電性トラックを構築することができる。したがって、銅層とコンスタンタン層との間のVIAは、PCBのための一般的な製造プロセスで製造することができる。したがって、第1の導電層としての銅層と、第2の導電層としてのコンスタンタン層との組合せは、比較的簡単な製造プロセスを可能にするので好ましい。
【0030】
別の実施形態によれば、各VIAの位置は、関連する凹部の対応する接触要素の近くにあり、対応するVIAによって形成される熱センサ素子が、対応する接触要素の位置の近くの温度を測定する。
【0031】
各VIAを、対応する接触要素の近くに配置することにより、VIAによって形成された熱センサ素子が、対応するバッテリセルのすぐ近傍で温度を測定し、バッテリセル自体の温度を示す。
【0032】
別の実施形態によれば、対応する接触要素は、関連するバッテリセルから対応するVIAに熱を伝導するように構成され、対応するVIAによって形成された熱センサ素子が、関連するバッテリセルの温度を示す。
【0033】
電気的相互接続基板によって接続されるとき、接触要素は、バッテリセルの端子に直接接触する。接触要素は導電性材料から形成されるので、少なくともいくらかの熱伝導性も提供する。したがって、バッテリセルの1つが熱暴走状態を示した場合など、バッテリセルからの熱は、バッテリセルから対応するVIAに伝導される。バッテリセルからの熱がVIAに伝導されるので、VIAでの熱電効果によって測定される温度は、バッテリセル自体の温度に実質的に対応する。好ましくは、第1の導電層の材料は、大きな熱伝達能力を有する。
【0034】
別の実施形態によれば、各凹部の接触要素は、バッテリセルの正極に接触するように構成された正極接触要素と、バッテリセルの負極に接触するように構成された負極接触要素とを含む。
【0035】
別の実施形態によれば、正極接触要素及び負極接触要素のうちの少なくとも一方が、接続セクション及びセンサセクションに分割される。
【0036】
各凹部内の接触要素はバッテリセルの端子要素として機能するので、接触要素は電流を伝導する。したがって、接触要素の電気抵抗により、接触要素を通る電流は、接触要素の温度の上昇をもたらす。対応する熱が対応するVIAに伝達されることがあり、したがって温度測定結果に影響を与える又は温度測定結果を変えてしまう可能性がある。これを回避するために、対応する熱センサ素子(VIA)に関連付けられた接触要素を、接続セクションとセンサセクションという2つの異なる部分又はセクションに分割することができる。センサセクションは、バッテリセルから対応するVIAに熱を伝導するだけの役割を果たし、対応するバッテリモジュールから電流を伝導しない。このため、センサセクションは対応するVIAに接続される。接続セクションは、対応するVIAから隔離され、関連するバッテリセルから電流を伝導する役割のみを果たす。言い換えると、センサセクションは、バッテリセルから熱センサ素子に熱のみを伝導して、対応するバッテリセルの温度を感知し、接続セクションは、個々のバッテリセルを互いに電気的に接続する。
【0037】
別の実施形態によれば、センサセクションと接続セクションとは、互いに電気的及び/又は熱的に隔離されている。
【0038】
このために、例えば、接続セクションとセンサセクションとの間にエアギャップを設けることによって、センサセクションと接続セクションとを互いに隔離することができる。このエアギャップは、例えば、PCB製造プロセス中のエッチングによって、又は後のレーザ切断によって提供され得る。任意選択で、エアギャップは、対応する樹脂又は他の絶縁材料などの電気的及び熱的隔離材料で充填されてもよい。
【0039】
別の実施形態によれば、接続セクションは、バッテリセルを電気的に接続し、それにより、バッテリセルを、複数のバッテリセルを含む電気回路に組み込むように構成される。
【0040】
別の実施形態によれば、センサセクションは、対応するVIAに関連付けられ、バッテリセルの熱エネルギーを対応するVIAに伝導するように構成される。
【0041】
別の実施形態によれば、読出しデバイスは、少なくとも1つのセンサチップを備える。対応するVIAに関連付けられた、第1の導電層の導電性トラックと、第2の導電層の導電性トラックとが、センサチップのうちの対応する1つに接続され、対応するセンサチップが、第1の導電層と第2の導電層との対応する導電性トラック間の電圧を測定し、測定された電圧に基づいて対応する温度値を決定するように構成される。
【0042】
センサチップは、例えばそれに従って構成されたマイクロチップでよく、バッテリセルを相互接続してバッテリモジュールを構築するために電気的相互接続基板が使用されるときに、対応する各VIAでの電圧を測定し、(上述したように)対応するVIA、したがって対応するバッテリセルでの関連の温度を決定する。各センサチップを、複数のVIAに関連付けることも、単一のVIAに関連付けることもできる。さらに、センサチップ自体は、測定された温度値をユーザが表示及び/又は処理できるようにするために、ディスプレイデバイス又は任意の他の適切なデバイスを有するコンピュータなどの上位制御デバイスに接続されてもよい。
【0043】
別の実施形態によれば、電気的相互接続基板は、少なくとも1つのセンサチップの近傍に配置された少なくとも1つの専用の基準温度センサをさらに備える。
【0044】
対応するVIAからセンサチップへの導電性トラック間に追加の接続が必要であるので、異なる材料間のさらなる熱電対が存在することがあり、全体の測定電圧に影響を与える可能性がある。したがって、専用の基準温度センサは各センサチップの近くに存在することがあり、対応するセンサチップの近くの温度が基準温度センサによって決定され得る。センサチップの近くの基準温度センサからの検出された温度値を使用することによって、センサチップは、決定された温度値から第2の熱電対の影響を計算することができる。
【0045】
第2の態様によれば、バッテリモジュールが提供される。バッテリモジュールは、複数のバッテリセルと、上述した実施形態の任意の1つの電気的相互接続基板とを備える。複数のバッテリセルのそれぞれが、レセプタクルの対応する1つの中に配置され、バッテリセルが、互いに接続されて、バッテリセルの回路を形成する。
【0046】
電気的相互接続基板は、本明細書で述べる実施形態の任意の1つに従って構成され得る。したがって、電気的相互接続基板に関して述べた各特徴は、バッテリモジュールにも同様に適用可能である。
【0047】
要約すると、本開示は、バッテリモジュール用の電気的相互接続基板、及び配線接続又ははんだ付けされた温度センサに依拠しない統合型の温度測定機能を備えたそのような電気的相互接続基板を備える対応するバッテリモジュールを提供する。本明細書で述べる電気的相互接続基板は、プリント回路基板内のVIAの形態で、本質的に統合型の熱センサ素子を備える。したがって、配線の手間及び接続点が大幅に低減され、バッテリモジュールの単一のバッテリセルの温度測定を実施することができる。
【0048】
本開示はバッテリモジュール用途に関して述べているが、本願で開示される測定原理は、所定の位置での温度測定に依拠する任意の電子部品にも同様に適用可能であることを理解されたい。
【0049】
以下、添付図面を参照して例示的実施形態をより詳細に述べる。図示は概略的なものであり、正確な縮尺では描かれていない。同一の参照符号は同一又は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】バッテリモジュール内の円筒型バッテリセルのための、統合型の単一セル温度測定機能を備える電気的相互接続基板の概略斜視図である。
図2図1の電気的相互接続基板のレセプタクルの概略上面図及び斜視図である。
図3】接続セクションとセンサセクションとに分割された接続要素を有する図1の相互接続基板のレセプタクルの概略上面図及び斜視図である。
図4】電気的相互接続基板のプリント回路基板の取り得るレイアウトを示す、相互接続基板のレセプタクルの概略断面図である。
図5】垂直相互接続アクセス(VIA)によって実装される統合型の熱センサ素子の引き回し、及び対応するセンサチップへの接続を図示する、バッテリモジュール用の相互接続基板の概略上面図である。
図6】本願で開示される電気的相互接続基板と相互接続された複数のバッテリセルを有するバッテリモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、バッテリモジュール20(図1には図示せず。図6を参照)用の統合型のセル温度測定機能を備える電気的相互接続基板10を概略的に示す。電気的相互接続基板10は、絶縁層12、第1の導電層13、及び第2の導電層14(図1には明示的に図示せず、図4の断面を参照)を有するプリント回路基板(PCB)11を備える。絶縁層12は、個々のバッテリセル21(図2及び6を参照)を収容するように形作られた絶縁層の凹部16(又は切欠き)の形状での複数のレセプタクル16(そのうちの2つに参照符号が付されている)を備える。第1の導電層13は、PCB11の底面に配置され、バッテリセル21の電極22(図2を参照)に接触するための複数の接触要素17を備える。接触要素17は、正極接触要素17pと負極接触要素17nとに区別される。正極接触要素17pは、バッテリセル21の正極22p(図2)に接触するように構成される。負極接触要素17n(図2)は、バッテリセル21の負極22nに接触するように構成される。円筒型バッテリセル21用に構成されているものとして示されているが、レセプタクル/凹部16及び接触要素17は、パウチ型セルや角型セルなど任意の他の種類のバッテリセル21を収容するように構成されてもよいことを理解されたい。
【0052】
図1には、複数の垂直相互接続アクセス(VIA)18が示されている。そのようなVIA18は、PCB11を通って垂直方向に延び、第1の導電層13を第2の導電層14と相互接続する。
【0053】
第1の導電層13と第2の導電層14とは異なる導電性材料から形成され、特に、上述したように異なるゼーベック係数を有する材料から形成され、それにより熱電対(熱電効果を受ける異なる材料間の接合)が形成される。例えば、第1の導電層13は、銅から形成されることがあり、第2の導電層14は、コンスタンタンなどの銅-ニッケル合金から形成されることがある。しかし、他の適切な材料の組合せも可能である。第1の導電層13と第2の導電層14との異なる材料を相互接続するVIA18は、そのような熱電対(すなわち熱センサ素子)として機能する。VIA18は(或いはVIA18内の異なる材料の接合部で)、対応する接合部での温度に応じて電圧を生成する。この電圧は、導電性トラック23によって少なくとも1つの読出しデバイス19に伝送される(図5を参照)。次いで、読出しデバイス19は、電圧を分析し、異なる導電層13、14の既知の材料定数に基づいて、対応する温度を決定することができる。
【0054】
図1に示される構成では、第2の導電層14はPCB11の内層であり、絶縁層12の上に、導電性トラック23を有する追加の導電層15が配置され、導電層15は、VIA18を介して第1の導電層13に接続され、読出しデバイス19(図5)への信号伝送層としてのみ機能する。しかし、第2の導電層14が絶縁層12の上側に直接配置されてもよい。一般に、異なるゼーベック係数を有する導電性材料間のインターフェースを提供する導電層の任意の配置が可能である。
【0055】
図2は、図1のレセプタクル/凹部16のうちの1つの概略上面図(左側)及び概略斜視図(右側)を示す。図2において、レセプタクル16に関連付けられた異なるVIA18からの導電性トラック23による信号伝送が明瞭である。さらに、図2には、電極22を有する、特にそれぞれが正極22p及び負極22nを有する2つの円筒型バッテリセル21が概略的に示されている。負極22nは、円筒型バッテリセル21の周縁領域に、バッテリセル21の長手方向で正極22pと同じ側に設けられている。例えば、負極22n(円筒型セルでは通常、長手方向で正極22pとは反対の側に配置される)を、バッテリセル21の導電性シェルを介して、長手方向で正極22pの側での周縁領域まで引き回すことができる。このようにして、すべてのバッテリセル21の相互接続を、実質的に平面状の電気的相互接続基板内で実現することができる。見てわかるように、第1の導電層13の正極接触要素17p及び負極接触要素17nは、図1に示される2つのバッテリセル21を直列接続で相互接続する。
【0056】
複数のVIA18のうちの1つが、第1の導電層13の正極接触要素17pに配置されているものとして図2に示されている。それにより、VIA18は、上述したように熱センサ素子として機能する。接触要素17は、個々のバッテリセル21の電気的相互接続を確立する機能に加えて、上述したように、バッテリセル21からVIA18に、したがって熱電対に熱を伝導する。これにより、熱電対で測定された温度がバッテリセル21の温度を示す。
【0057】
VIA18が負極接触要素17nに配置されてもよいことを理解されたい。これは、負極接触要素17nが円筒型バッテリセル21の周縁領域に直接接触し、周縁領域がバッテリセル21の筐体と直接接触するので、さらに有利であり得る。したがって、特に急速な温度上昇を伴う状況(熱暴走状態など)では、VIA18によって構築された熱電対に熱がほぼ即時に伝達されるので、温度上昇の迅速な検出が可能である。
【0058】
図3は、電気的相互接続基板10の代替構成を示す。この構成は、VIA18を含む接触要素17がエアギャップ24によって接続セクション17cとセンサセクション17sとに分割されている点で、図2の構成とは異なる。エアギャップ24は、電気的及び熱的隔離材料で充填されることがある。エアギャップ24は、例えば、PCB11の製造プロセス中に例えばエッチングによって、又は後で例えばレーザ切断によって実現することができる。しかし、他の製造方法も可能である。セクション17c、17sへの分割は、個々のバッテリセル21間の電流によって引き起こされるVIA18への熱流束が回避されるという利点を有する。したがって、VIA18(すなわちVIA18内の熱電対)に伝達される熱は、VIA18に関連付けられたバッテリセル21からの「実際の」熱である。したがって、熱電対によって示される温度は、対応するバッテリセル21の温度をより正確に反映する。
【0059】
図4は、図1~3の電気的相互接続基板10のレセプタクル16の1つの断面図を示し、取り得るレイアウトを示す。PCB11は、第1の導電層13と、第2の導電層14と、第3及び第4の導電層15(第nの導電層15)とを備える。
【0060】
第nの導電層15は任意選択であることに留意されたい。最小限のレイアウトは、第1の導電層13及び第2の導電層14だけでも機能する。この場合、読出しデバイス19、19c(図4には図示せず、図5を参照)への対応する信号伝送路を提供する対応する導電性トラック23が、第1及び第2の導電層13、14のそれぞれに存在することになる。
【0061】
各導電層13、14、15は、絶縁層12によって互いに隔離されている。垂直相互接続アクセス(VIA)18は、PCB11を貫通し、各層13、14、15を電気的に相互接続する。第1の導電層13は、レセプタクル若しくは凹部16に達する又はその中に突出する、正極接触要素17p及び負極接触要素17nなどの接触要素17を備える。特に、正極接触要素17p及び負極接触要素17nは、隣接するレセプタクル16内に達し、これらのレセプタクルに挿入されたバッテリセル21を直列に接続する。レセプタクル16は、上述したように、バッテリセル21を収容するように構成される。
【0062】
第1の導電層13と第2の導電層14とは異なる導電性材料から形成され、特に、異なるゼーベック係数を有する導電性材料から形成される。例えば、第1の導電層13は、銅から形成されることがあり、第2の導電層14は、コンスタンタンなどの銅-ニッケル合金から形成されることがある。しかし、任意の他の適切な材料の組合せも考えられる。VIA18は、第1の導電層13と同じ材料から形成されてもよい。したがって、第2の導電層14とVIA18との間(したがって、第1及び第2の導電層13、14の間)の接合部に熱電対が構築され、VIA18が熱センサ素子として機能する。したがって、第1及び第2の導電層13、14の間に差動電圧が生成され、この差動電圧は、VIA18の位置(或いは層間の接合部の位置)での温度に依存する。次いで、第2の導電層14及び第1の導電層13を、本明細書で述べるように、対応する導電性トラック23を介して、対応する読出しデバイス19(すなわち、例えば図5に示されるセンサチップ19c)に接触及び接続することができる。任意選択の第nの導電層15は、例えば、第1及び第2の導電層13、14の少なくとも一方に接触するための別個の信号通知又は読出し層として機能することができる。
【0063】
図5は、電気的相互接続基板10の可能な接続方式を示す。プリント回路基板(PCB)12のレイアウト及びPCB12内のレセプタクル/凹部16の構成は、図1~4に関して述べた又は本明細書の別の箇所で述べる実施形態の任意の1つに従って構成することができる。図示される電気的相互接続基板10は、垂直列を成すバッテリセル21(図示されるように、それぞれ3つのバッテリセル)を直列に接続するように構成される。バッテリセル21のこれらの直列接続は、並列接続部25によって互いに並列に接続され、並列接続部25は、例えば第1の導電層13の一部であるバスバーでもよい。しかし、任意の他の接続法も可能である。
【0064】
図5では、さらに上で述べたように、特定のレセプタクル16(したがって、使用時には特定のバッテリセル21)にそれぞれ関連付けられるVIA18、したがって対応する熱電対が、対応する導電性トラック23を介して対応する読出しデバイス19、例えばセンサチップ19cにどのように接続されているかが明確に見られる。図示される例では、各センサチップ19cは、水平列を成すレセプタクル16(或いはレセプタクル16のVIA18)を担当する。しかし、単一のセンサチップ19cが、任意の他の数のVIA18を担当してもよい。
【0065】
図6は、本明細書で述べる、複数のバッテリセル21及び電気的相互接続基板10を備えるバッテリモジュール20を示す。電気的相互接続基板10は、本明細書で述べる実施形態の任意の1つに従って構成され得る。図6の下部は、バッテリモジュール20の上側部分、したがって電気的相互接続基板10を拡大して示している。電気的相互接続基板10の接触要素17は、例えばバッテリセル21の電極にレーザ溶接されてもよい。しかし、任意の他の接続も考えられる。
【0066】
要約すると、開示される電気的相互接続基板10は、複数のバッテリセル21を備えるバッテリモジュール20の単一セル温度測定機能を提供する。提案される解決策は配線接続又ははんだ接続されるセンサ素子を不要にし、したがって重量を低減し、各セルの温度を監視することによって安全性を高め、多用途の電気的相互接続を提供する。特に、各バッテリセルの温度を継続的に監視することができるので、バッテリセル21の熱暴走状態などの潜在的に危険な状況を非常に迅速に検出することができる。
【0067】
「備える」又は「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、「1つの」又は「ある」は、複数を排除するものではないことに留意されたい。さらに、上述した実施形態のいずれかを参照して述べた特徴又はステップは、上述した他の実施形態の他の特徴又はステップと組み合わせて使用することもできることに留意されたい。特許請求の範囲における参照符号は、限定とみなすべきではない。
【符号の説明】
【0068】
10 電気的相互接続基板
11 プリント回路基板(PCB)
12 絶縁層
13 第1の導電層
14 第2の導電層
15 第nの導電層
16 レセプタクル、凹部
17 接触要素
17c (接触要素の)接続セクション
17s (接触要素の)センサセクション
17p 正極接触要素
17n 負極接触要素
18 垂直相互接続アクセス(VIA)
19 読出しデバイス
19c センサチップ
20 バッテリモジュール
21 バッテリセル
22 電極
22p 正極
22n 負極
23 導電性トラック
24 エアギャップ、隔離材料
25 並列接続部
30 基準温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6