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特開2024-155881メタノールを含まない有機過酸化物エマルション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155881
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】メタノールを含まない有機過酸化物エマルション
(51)【国際特許分類】
   C08L 31/04 20060101AFI20241024BHJP
   C08F 14/06 20060101ALI20241024BHJP
   C08F 14/00 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L31/04 A
C08F14/06
C08F14/00 510
C08K5/14
C08K5/12
C08K5/05
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068291
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】23168827
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ゲリットセン ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダフェル コーエン アントゥーン コーネリス
(72)【発明者】
【氏名】ケイジャー エスター エリザベス アントニア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BE021
4J002DE029
4J002EC038
4J002EC039
4J002EC049
4J002EH137
4J002EK086
4J002GT00
4J002HA07
4J100AC03P
4J100FA03
4J100FA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ジブチルペルオキシジカルボナートのメタノールを含まないエマルションを提供する。
【解決手段】エマルションであって
a)25~70重量%のジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートまたはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートと、
b)50~90モル%の加水分解度を有するポリ酢酸ビニルと、
c)少なくとも一つの乳化剤と、
d)少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルと、
e)エタノールと、
f)e)とは異なる少なくとも一つのC2-C6一価アルコールまたは多価アルコールと、
g)水と、を含むエマルションとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションであって、
a)25~70重量%のジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートまたはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートと、
b)50~90モル%の加水分解度を有するポリ酢酸ビニルと、
c)少なくとも一つの乳化剤と、
d)少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルと、
e)エタノールと、
f)e)とは異なる少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールと、
g)水と、を含む。
【請求項2】
a)が、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートである、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記少なくとも一つの乳化剤c)が、非イオン性界面活性剤である、請求項1または2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルd)が、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラートである、請求項1~3のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項5】
前記少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールf)が、エチレングリコール、2-プロパノール、1-プロパノール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、グリセロール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項6】
前記少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールf)がグリセロールである、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項7】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、30~65重量%の成分a)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項8】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.5~10重量%の成分b)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項9】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.5~5重量%の成分c)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項10】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.1~10重量%の成分d)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項11】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、5~20重量%の成分e)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項12】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、5~20重量%の成分f)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項13】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、20~70重量%の成分f)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項14】
一つ以上のエチレン性不飽和モノマーの重合または共重合のための、請求項1~13のいずれか一項に記載のエマルションの使用。
【請求項15】
前記不飽和モノマーがビニルモノマー、好ましくはハロゲン化ビニルモノマー、より好ましくは塩化ビニルである、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジブチルペルオキシジカルボナートのメタノールを含まないエマルション、その調製のためのプロセス、ならびに一つ以上のエチレン性不飽和モノマーの重合または共重合のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、有機過酸化物は熱的に不安定な化合物である。これらの過酸化物の分解は発熱性であるため、例えば、周辺領域への熱損失によって分解の熱を放散できない場合、危険である。熱が蓄積すると、分解反応が制御されなくなる可能性がある。こうした望ましくない状況を避けるために、過酸化物は典型的には、一つ以上の鈍感剤と共に製剤化される。鈍感剤の一例は水である。
【0003】
過酸化物は、水相で分散され、小さな液滴を形成するため、水性有機過酸化物エマルションは一般的に安全な生成物とみなされ、水相は、例えば、対流および/または蒸発による分解の熱の除去に好適である。しかしながら、多くの水性有機過酸化物エマルションは、貯蔵時には十分に安定していない。エマルション製剤は、粘度および液滴のサイズに関して良好に最適化されているが、液滴の成長は依然として問題であり、結果として短いエマルション貯蔵寿命をもたらす。液滴の成長は、(最終的に)エマルションの層分離をもたらし、安全ではないと考えられる製剤を引き起こす場合がある。
【0004】
商業的に使用されるほとんどの水性有機過酸化物エマルションは、低温、典型的には-25℃~0℃で保存される。これは、不凍剤の使用を必要とし、最も一般的に使用される不凍剤はメタノールである。メタノールの揮発性が高いこと(規制上の問題、すなわち、メタノールはEPA-HAPリストで有害性大気汚染物質であるため、米国では有機過酸化物エマルション中でのメタノールの使用は禁止されている)を考慮すると、メタノールを含有しない有機過酸化物エマルションを生成することが好ましい。
【0005】
安定なエマルションとして製剤化することが特に困難であることが証明されている有機過酸化物は、ジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートおよびジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナート、特にジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートである。
【0006】
Arkema Franceの国際特許公開第2021/234322号は、エタノールを含有する安定した有機過酸化物エマルションを開示している。国際特許公開第2021/234322号は、同号で開示されるプロセスによって安定的に乳化され得る多くの過酸化物のうちの一つとしてジブチルペルオキシジカルボナートを推測的に列挙しているが、国際特許公開第2021/234322号では具現化されてはいない。
【0007】
Arkema Franceの国際特許公開第2022/243610号は、13.5%エタノールを含むジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナート(「Luperox(登録商標)225」)の「エマルション」の一つの加工例(実施例1、組成物番号8)を提供する。表4に示すように、当該エマルションは完全に不安定であり、2時間以内に坑乳化した。
【0008】
Arkema Franceの国際特許公開第2021/234311号はまた、10%エタノールを含むジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナート(「Luperox(登録商標)225」)のエマルションの例(実施例1、エマルションA3)を提供する。表3に示すように、エマルションA3は、試験期間中に坑乳化したLuperox 225の唯一のエマルションであった。表3に提供される安定性データは、エマルションA3(4か月間安定しているように見える)が、国際特許公開第2022/243610号の完全に不安定なエマルション「組成物番号8」と(組成物的に)本質的に同一である(同量中の同じ過酸化物、本質的に同量中のエトキシル化非イオン性界面活性剤、本質的に同量中のプロパン-1,2-ジオール、同様の量のエタノール)ため、信頼できないことに留意されたい。特に国際特許公開第2021/234323号に開示される内容を考慮すると、2つの本質的に同一のエマルションが、このような劇的に異なる安定性プロファイルを有することは不可能である。
【0009】
その点で、国際特許公開第2022/243610号および国際特許公開第2021/234311号の上述の加工例の貯蔵安定性の欠如は、Arkema Franceの国際特許公開第2021/234323号に説明されており、上記の国際特許公開刊行物(Arkema France)のすべてに共通する著者によって、メタノールおよび/またはエタノールが製剤中に存在する場合、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートの安定したエマルション(「安定」とは、国際特許公開第2021/234323号により3か月以上安定であると定義される)を形成することができないことが明示的に述べられている。ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートの安定したエマルションを形成することができないことは、国際特許公開第2021/234323号にさらに具現化されており、エタノール(組成物2、4、6、および10)を含むエマルションの全てが、2か月未満で坑乳化した。国際特許公開第2021/234323号の組成物番号6はまた、国際特許公開第2021/234311号のエマルションA3と非常に類似しており、国際特許公開第2022/243610号の組成物番号8と同様に不安定である(1か月未満で坑乳化する)ことが示された。したがって、国際特許公開第2021/234323号の開示は、国際特許公開第2021/234323号と同じ日付で同じ著者(Arkema France)により出願された国際特許公開第2021/234311号(2021年5月20日)が、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートのエタノールとの安定したエマルション(すなわち、3か月以上安定している)を不凍剤として生成することは、メタノール/エタノールとジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートとの間に存在する既知の適合性の問題により可能ではないことが、明示的に述べられ、実証的研究により示されているため、国際特許公開第2021/234311号に提示される安定性データの真ぴょう性がさらに疑われる。
【0010】
したがって、国際特許公開第2021/234322号、国際特許公開第2022/243610号、国際特許公開第2021/234311号、および国際特許公開第2021/234311号の共通著者(Arkema France)によると、メタノールおよび/またはエタノールが製剤中に存在する場合、ジブチルペルオキシジカルボナートの安定したエマルション(すなわち、3か月以上安定している)を形成することは可能ではない(すなわち、これらの国際特許公開刊行物の共通著者によれば、これらの開示はいずれも、当業者がメタノールおよび/またはエタノールを含有するジブチルペルオキシジカルボナートの安定したエマルションを生成することを可能にしない)。国際特許公開第2022/243610号で提案されている解決策は、単にエマルション中にメタノールまたはエタノールを使用しないことであった(実施例1、組成物番号6、7および9)。国際特許公開第2021/234311号で提案されている解決策は、過酸化物と、エマルションの微量成分(12%)であるジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートとの組み合わせ(実施例2)を使用することであるが、これは、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートのエマルションを調製することが目的である場合には、有用な技術的解決策ではない。国際特許公開第2021/234323号で提案されている解決策はまた、単にエマルション中にエタノールまたはメタノールを使用しないこと、および代わりに相当量(>20重量%)のプロピレングリコールを不凍剤として使用することであった。
【0011】
プロピレングリコールと比べてエタノールの存在量、生体再生性、および(一般的に)はるかにコストが低いことを考慮すると、グリコールの少なくとも一部をエタノールで置き換えることが可能であるかどうかが、産業的な観点からみて非常に有益であろう。しかしながら、Arkema France(国際特許公開第2021/234322号、国際特許公開第2022/243610号、および国際特許公開第2021/234323号)によると、こうした置換は、エマルションの貯蔵安定性を著しく損わずには不可能であろう。
【0012】
この点を考慮すると、エタノールを不凍剤として含むジブチルペルオキシジカルボナートの高度に安定した水性エマルションを形成する方法(すなわち、化学成分の特定の組み合わせ)を本発明者らが見出したことは、非常に驚くべきことである。上記によれば、エタノールは非常に安価かつ存在量が高く、容易に再生可能な不凍剤であるため、これは有益である。
【発明の概要】
【0013】
したがって、第一の態様では、本開示は、水性有機過酸化物エマルションに関し、水性有機過酸化物エマルションは、
a)25~70重量%のジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートまたはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートと、
b)50~90モル%の加水分解度を有するポリ酢酸ビニルと、
c)少なくとも一つの乳化剤と、
d)少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルと、
e)エタノールと、
f)e)とは異なる少なくとも一つのC2-C6一価アルコールまたは多価アルコールと、
g)水と、を含む。
【0014】
この製剤は、不凍剤としてエタノールを含むだけでなく、安定した有機過酸化物エマルションを形成するためにメタノールも必要としない。このように、これは、ジブチルペルオキシジカルボナートのメタノールを含まない水性エマルションとみなされ得る。国際特許公開第2021/234323号の技術的教示によると、この安定した水性エマルションを生成することは可能ではなかったはずである。
【0015】
成分a)は、ジ-n-ブチルペルオキシジカルボナート(CAS番号16215-49-9)またはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナート(CAS番号19910-65-7)である。好ましくは、成分a)は、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートである。水性有機過酸化物エマルションは、エマルションの総重量に基づいて25~70重量%の量で、ジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートまたはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートを含有する。エマルション中の有機過酸化物の量は、好ましくは30~65重量%、より好ましくは35~60重量%、最も好ましくは40~60重量%である。
【0016】
成分b)は、50~90モル%、好ましくは55~80モル%、最も好ましくは60~70モル%の加水分解度を有するポリ酢酸ビニル(PVA)である。本発明によるエマルションに使用されるPVAの量は、典型的には、エマルションの総重量に基づいて、0.5~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは1重量%~4重量%であり得る。
【0017】
成分c)は、少なくとも一つの乳化剤である。好適な乳化剤は、当業者に公知であり、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤、ならびにそれらの混合物を含む。これらは、典型的には約0.5重量%~約5重量%の量で組み込まれてもよい。好ましくは、7以上、さらにより好ましくは16以上のHLB(親水性親油性バランス)値を有する非イオン性界面活性剤が使用される。
【0018】
成分d)は、少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルである。好適なシクロヘキサンジカルボキシラートエステルの例は、
・ジ-アルキル-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、例えば、ジ-n-オクチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソオクチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-ノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-デシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-ウンデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソドデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、din-オクタデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソオクタデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-エイコシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、モノシクロヘキシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジシクロヘキシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、din-ヘキシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソヘキシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-ヘプチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソヘプチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-2-プロピルヘプチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソウンデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-ドデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-トリデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソトリデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジ-n-ペンチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソペンチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、
・ジ-アルキル-シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、例えば、ジ-n-オクチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソオクチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、モノ-2-エチルヘキシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-ノニルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-デシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-ウンデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソドデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-オクタデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソオクタデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-エイコシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、モノシクロヘキシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジシクロヘキシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-ヘキシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソヘキシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-ヘプチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソヘプチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-2-プロピルヘプチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソウンデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-ドデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジ-n-トリデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソトリデシルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、din-ペンチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、ジイソペンチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシラート、および
・ジ-アルキルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、例えば、ジ-n-オクチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソオクチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-2-エチルヘキシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-ノニルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-デシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-ウンデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソドデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、din-オクタデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソオクタデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-エイコシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、モノシクロヘキシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジシクロヘキシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、din-ヘキシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソヘキシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-ヘプチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソヘプチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-2-プロピルヘプチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソウンデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-ドデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-トリデシルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラート、ジイソトリデシルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジ-n-ペンチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラート、ジイソペンチルシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシラートである。
【0019】
好ましくは、シクロヘキサンジカルボキシラートエステルは、ジ-アルキルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシラートである。最も好ましくは、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート(より一般的には、「DINCH」と称される)である。シクロヘキサンジカルボキシラートエステルは、典型的には、エマルションの総重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%、より好ましくは0.5重量%~3重量%、最も好ましくは0.5重量%~2重量%の量で使用され得る。
【0020】
成分e)はエタノールである。水性有機過酸化物エマルションは、エマルションの総重量に基づいて5~20重量%の量のエタノールを含有することが好ましい。エマルション中のエタノールの量は、7~15重量%であることが好ましく、8~12重量%であることがより好ましい。
【0021】
成分f)は、エタノールとは異なる少なくとも一つのC2-C6一価アルコールまたは多価アルコールである。好ましいC2-C6一価アルコールまたは多価アルコールは、エチレングリコール、2-プロパノール、1-プロパノール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、グリセロール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびそれらの混合物から選択される。C2-C6多価アルコールが好ましい。グリセロールが最も好ましい。水性有機過酸化物エマルションは、エマルションの総重量に基づいて5~20重量%の量の少なくとも一つのC2-C6一価アルコールまたは多価アルコール(エタノールを除く)を含有することが好ましい。エマルション中のC2-C6一価アルコールまたは多価アルコール(エタノールを除く)の量は、7~15重量%であることが好ましく、8~12重量%であることがより好ましい。
【0022】
成分e)およびf)の合計組み合わせ量は、エマルションの総重量に基づいて、10~40重量%、好ましくは12~30重量%、より好ましくは15~25重量%であることが好ましい。成分e)~f)の重量比は、3:1~1:3であることが好ましく、2:1~1:2であることが好ましく、約1:1であることがより好ましい。
【0023】
最終成分g)は水である。エマルション中の水の量は、好ましくは20~70重量%、より好ましくは25~50重量%、最も好ましくは25~40重量%の範囲である。
【0024】
本発明の水性有機過酸化物エマルションはまた、任意選択的に、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液、隔離剤、殺生物剤、例えば、殺菌剤、オゾン劣化防止剤、抗酸化剤、分解防止剤、紫外線安定剤、共剤、コモノマー、抗静電剤、発泡剤、離型剤、およびプロセスオイルなどのpH調整剤を含む他の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、通常の量で添加されてもよい。
【0025】
本発明のエマルションは、従来の方法で製造することができる。典型的には、エマルションの成分は、高速ミキサー、コロイドミル、パールミル、ボールミル、圧力ホモジナイザー、フリューダイザー、および超音波ホモジナイザーなどの周知の装置を使用して混合および/または均質化される。本発明に従って使用される有機過酸化物の多くは、より高い温度では安定していないため、混合および/または均質化は、典型的には、有機過酸化物の自己加速分解温度(SADT)をはるかに下回る15℃の温度未満で実施されることが好ましい。
【0026】
本発明はまた、重合プロセス、架橋反応、不飽和ポリエステル樹脂の硬化、ポリマー改質プロセス、および特定の化学物質の合成などのフリーラジカルを伴う他の反応における上述の水性有機過酸化物エマルションの使用に関する。
【0027】
本発明のエマルションは、重合プロセスで使用されることが好ましく、塩化ビニルモノマー(VCM)の重合およびスチレンまたは(メタ)アクリラートとのVCMの共重合で使用されることがより好ましい。最も好ましいのは、PVCを調製するための懸濁重合プロセスにおける、本発明によるエマルションの使用である。
【0028】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例0029】
一般手順
以下の実施例では、水性有機過酸化物エマルションを、以下の一般手順によって作製した:PVA(ポリ酢酸ビニル、加水分解度62.5~67.5%)、乳化剤(C16/C18エトキシル化アルコール)、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート(DINCH)、エタノール、グリセロール、および水を含む予め調製されたPVAアルコール混合物を含有する冷却容器(-10℃)に、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナート(エマルションの総重量に基づいて、最終含有量は50重量%)を添加した。各成分の量を以下の表に示す。有機過酸化物を、UltraTurraxタイプS25N-25GM(2.5分/kgのエマルション)を使用して完全出力で分散させ、その間、エマルションの温度を0℃未満に保った。
【0030】
液滴体積分布を、Malvernタイプ3000装置を使用して、光散乱技術によって決定した。表中、d99(μmで表示)は、エマルション中の有機過酸化物の液滴体積分布の99パーセンタイルであり、表中、d50(μmで表示)は、エマルション中の有機過酸化物の液滴体積分布の50パーセンタイルである。エマルション試料を-20℃で保存し、データを室温で収集した。
【0031】
粘度を、Brookfield LVT(スピンドル3、12RPMおよび30RPM)を用いて-10℃で測定した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
上記のデータは、水性有機過酸化物エマルションが、少なくとも12週間、高度に安定であったことを示す(<10μmの12週間の液滴サイズD99値は、高度に安定な水性有機過酸化物エマルションを示す)。粘度はほぼ一定であり、12週間の貯蔵安定性試験中、水性エマルションの層分離は観察されなかった。したがって、国際特許公開第2021/234323号によって技術的に可能であるとみなされたものとは対照的に、発明者らは、ジブチルペルオキシジカルボナートの高度に安定した水性エマルションを生成することができ、かなりの量の不凍剤がエタノールによって置き換えられる。上述のように、これはコストおよび持続可能性の観点から非常に有益である。
【0036】
本明細書において、明示的に別段の指示がない限り、「または」という用語は、条件の一方のみが満たされることを必要とする「排他的または」という演算子とは対照的に、記載された条件のいずれかまたは両方が満たされたときに真値を返す演算子という意味で使用される。「含む(comprising)」という言葉は、「からなる(consisting of)」という意味ではなく、「含む(including)」という意味で使用される。上記で確認したすべての以前の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の以前に公開されたいかなる文書の承認も、その教示が、本明細書の日付において欧州または他の場所での一般知識であったことを認めるまたは表明するものと解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションであって、
a)25~70重量%のジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートまたはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートと、
b)50~90モル%の加水分解度を有するポリ酢酸ビニルと、
c)少なくとも一つの乳化剤と、
d)少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルと、
e)エタノールと、
f)e)とは異なる少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールと、
g)水と、を含む。
【請求項2】
a)が、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートである、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記少なくとも一つの乳化剤c)が、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項4】
前記少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルd)が、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラートである、請求項1に記載のエマルション。
【請求項5】
前記少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールf)が、エチレングリコール、2-プロパノール、1-プロパノール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、グリセロール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のエマルション。
【請求項6】
前記少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールf)がグリセロールである、請求項1に記載のエマルション。
【請求項7】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、30~65重量%の成分a)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項8】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.5~10重量%の成分b)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項9】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.5~5重量%の成分c)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項10】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.1~10重量%の成分d)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項11】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、5~20重量%の成分e)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項12】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、5~20重量%の成分f)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項13】
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、20~70重量%の成分f)を含む、請求項1に記載のエマルション。
【請求項14】
一つ以上のエチレン性不飽和モノマーの重合または共重合のための、請求項1に記載のエマルションの使用。
【請求項15】
前記不飽和モノマーがビニルモノマー、好ましくはハロゲン化ビニルモノマー、より好ましくは塩化ビニルである、請求項14に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本明細書において、明示的に別段の指示がない限り、「または」という用語は、条件の一方のみが満たされることを必要とする「排他的または」という演算子とは対照的に、記載された条件のいずれかまたは両方が満たされたときに真値を返す演算子という意味で使用される。「含む(comprising)」という言葉は、「からなる(consisting of)」という意味ではなく、「含む(including)」という意味で使用される。上記で確認したすべての以前の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の以前に公開されたいかなる文書の承認も、その教示が、本明細書の日付において欧州または他の場所での一般知識であったことを認めるまたは表明するものと解釈されるべきではない。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
エマルションであって、
a)25~70重量%のジ-n-ブチルペルオキシジカルボナートまたはジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートと、
b)50~90モル%の加水分解度を有するポリ酢酸ビニルと、
c)少なくとも一つの乳化剤と、
d)少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルと、
e)エタノールと、
f)e)とは異なる少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールと、
g)水と、を含む。
項2.
a)が、ジ-sec-ブチルペルオキシジカルボナートである、項1に記載のエマルション。
項3.
前記少なくとも一つの乳化剤c)が、非イオン性界面活性剤である、項1または2に記載のエマルション。
項4.
前記少なくとも一つのシクロヘキサンジカルボキシラートエステルd)が、ジ-イソノニル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラートである、項1~3のいずれか一項に記載のエマルション。
項5.
前記少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールf)が、エチレングリコール、2-プロパノール、1-プロパノール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、グリセロール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはそれらの混合物から選択される、項1~4のいずれか一項に記載のエマルション。
項6.
前記少なくとも一つのC2-C6の一価アルコールまたは多価アルコールf)がグリセロールである、項1~5のいずれか一項に記載のエマルション。
項7.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、30~65重量%の成分a)を含む、項1~6のいずれか一項に記載のエマルション。
項8.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.5~10重量%の成分b)を含む、項1~7のいずれか一項に記載のエマルション。
項9.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.5~5重量%の成分c)を含む、項1~8のいずれか一項に記載のエマルション。
項10.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、0.1~10重量%の成分d)を含む、項1~9のいずれか一項に記載のエマルション。
項11.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、5~20重量%の成分e)を含む、項1~10のいずれか一項に記載のエマルション。
項12.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、5~20重量%の成分f)を含む、項1~11のいずれか一項に記載のエマルション。
項13.
前記エマルションが、前記エマルションの前記総重量に対して、20~70重量%の成分f)を含む、項1~12のいずれか一項に記載のエマルション。
項14.
一つ以上のエチレン性不飽和モノマーの重合または共重合のための、項1~13のいずれか一項に記載のエマルションの使用。
項15.
前記不飽和モノマーがビニルモノマー、好ましくはハロゲン化ビニルモノマー、より好ましくは塩化ビニルである、項14に記載の使用。
【外国語明細書】